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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】画像形成装置及び搬送制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018201470
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020066199
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 祐樹
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-004787(JP,A)
【文献】特開2010-167629(JP,A)
【文献】特開2003-039650(JP,A)
【文献】特開2009-040007(JP,A)
【文献】特開2007-106088(JP,A)
【文献】特開2003-276269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を所定の搬送経路に沿って移動させる搬送部と、
前記記録媒体に対し、前記搬送経路上の所定の位置で当該搬送経路に沿った方向と交差する方向に前記記録媒体の記録可能幅にわたって記録動作を行う記録動作部と、
前記搬送部による記録媒体の搬送動作と前記記録動作とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、形成対象の画像の解像度に応じて定められた搬送速度で前記搬送部により前記搬送動作を行わせ、解像度の異なる複数の画像を形成させる場合に、形成対象である第1の画像の第1の解像度よりも、当該第1の画像の次に形成対象となる第2の画像の第2の解像度のほうが低いときには、前記第1の画像に係る前記記録動作が終了した以降、前記第2の画像に係る前記記録動作中に前記第2の解像度に応じて定められた前記搬送速度に上昇させ、解像度の異なる複数の画像の形成命令を取得した場合に、前記記録動作部により解像度の高い順に前記複数の画像の形成を行わせる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の画像に係る前記記録動作が終了するタイミングで前記搬送速度の上昇を開始させるように前記搬送動作を制御することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送速度は、前記記録動作部の最大駆動周波数で前記形成対象の画像の解像度を得ることのできる最大速度にそれぞれ定められていることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録動作部は、前記所定の位置が各々異なる複数の記録ユニットを有し、
前記制御部は、前記複数の記録ユニットのうち前記所定の位置が前記搬送経路の最も下流側にある記録ユニットにより前記第1の画像に係る前記記録動作が終了した以降に、前記搬送速度を上昇させる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記搬送速度の変更に係る加速度が所定の基準値以下となるように前記搬送速度を変化させることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記搬送速度の変更の開始から第1の所定期間及び当該変更の終了までの第2の所定期間における前記搬送速度に係る加速度が、前記第1の所定期間の後かつ前記第2の所定期間の前における前記加速度よりも小さくなるように前記搬送速度を変化させることを特徴とする請求項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の所定期間における前記加速度が漸増し、前記第2の所定期間における前記加速度が漸減するように前記搬送速度を変化させることを特徴とする請求項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送経路に沿った方向について前記記録動作部よりも下流側に乾燥部を備え、
前記記録動作部は、インクを吐出することで前記記録動作を行い、
前記乾燥部は、前記記録媒体上のインクを乾燥させる
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送経路へ前記記録媒体を送り出す媒体供出部を備えることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
記録媒体を所定の搬送経路に沿って移動させる搬送部と、前記記録媒体に対し、前記搬送経路上の所定の位置で当該搬送経路に沿った方向と交差する方向に前記記録媒体の記録可能幅にわたって記録動作を行う記録動作部と、を備える画像形成装置の搬送制御方法であって、
形成対象の画像の解像度に応じて定められた搬送速度で前記搬送部により前記記録媒体の搬送動作を行わせる搬送動作ステップ、
解像度の異なる複数の画像を形成させる場合に、形成対象である第1の画像の第1の解像度よりも、当該第1の画像の次に形成対象となる第2の画像の第2の解像度のほうが低いときには、前記第1の画像に係る前記記録動作が終了した以降、前記第2の画像に係る前記記録動作中に前記第2の解像度に応じて定められた前記搬送速度に上昇させる速度変更ステップ、
解像度の異なる複数の画像の形成命令を取得した場合に、前記記録動作部により解像度の高い順に前記複数の画像の形成を行わせる順番入替ステップ、
を含むことを特徴とする搬送制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置及び搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に対して記録動作を行って画像形成する画像形成装置がある。近年では、高解像度化の要求に従って、記録動作を行う記録動作部の移動距離や、記録媒体の搬送距離に比して記録動作部の動作頻度が増加している。
【0003】
画像形成装置では、記録動作部の動作頻度を調整することで、複数種類の解像度で画像形成を行うことができる。しかしながら、記録動作部が単位時間当たりに動作可能な回数(最大周波数)には上限がある。特許文献1には、搬送速度と最大周波数との組み合わせで設定され得る最大解像度での記録動作が可能となるように搬送速度を定め、形成画像の解像度に応じて記録動作部の動作周波数を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-48344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の解像度を切り替えながら画像を形成する画像形成装置では、最大解像度以外の画像を形成する場合に必要以上に画像の形成速度が遅くなり、効率がよくないという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より効率的に画像を形成することのできる画像形成装置及び搬送制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
記録媒体を所定の搬送経路に沿って移動させる搬送部と、
前記記録媒体に対し、前記搬送経路上の所定の位置で当該搬送経路に沿った方向と交差する方向に前記記録媒体の記録可能幅にわたって記録動作を行う記録動作部と、
前記搬送部による記録媒体の搬送動作と前記記録動作とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、形成対象の画像の解像度に応じて定められた搬送速度で前記搬送部により前記搬送動作を行わせ、解像度の異なる複数の画像を形成させる場合に、形成対象である第1の画像の第1の解像度よりも、当該第1の画像の次に形成対象となる第2の画像の第2の解像度のほうが低いときには、前記第1の画像に係る前記記録動作が終了した以降、前記第2の画像に係る前記記録動作中に前記第2の解像度に応じて定められた前記搬送速度に上昇させ、解像度の異なる複数の画像の形成命令を取得した場合に、前記記録動作部により解像度の高い順に前記複数の画像の形成を行わせる
ことを特徴とする画像形成装置である。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記第1の画像に係る前記記録動作が終了するタイミングで前記搬送速度の上昇を開始させるように前記搬送動作を制御することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記搬送速度は、前記記録動作部の最大駆動周波数で前記形成対象の画像の解像度を得ることのできる最大速度にそれぞれ定められていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記記録動作部は、前記所定の位置が各々異なる複数の記録ユニットを有し、
前記制御部は、前記複数の記録ユニットのうち前記所定の位置が前記搬送経路の最も下流側にある記録ユニットにより前記第1の画像に係る前記記録動作が終了した以降に、前記搬送速度を上昇させる
ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記搬送速度の変更に係る加速度が所定の基準値以下となるように前記搬送速度を変化させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項記載の発明は、請求項記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記搬送速度の変更の開始から第1の所定期間及び当該変更の終了までの第2の所定期間における前記搬送速度に係る加速度が、前記第1の所定期間の後かつ前記第2の所定期間の前における前記加速度よりも小さくなるように前記搬送速度を変化させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項記載の発明は、請求項記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記第1の所定期間における前記加速度が漸増し、前記第2の所定期間における前記加速度が漸減するように前記搬送速度を変化させることを特徴とする。
【0015】
また、請求項記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記搬送経路に沿った方向について前記記録動作部よりも下流側に乾燥部を備え、
前記記録動作部は、インクを吐出することで前記記録動作を行い、
前記乾燥部は、前記記録媒体上のインクを乾燥させる
ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記搬送経路へ前記記録媒体を送り出す媒体供出部を備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10記載の発明は、
記録媒体を所定の搬送経路に沿って移動させる搬送部と、前記記録媒体に対し、前記搬送経路上の所定の位置で当該搬送経路に沿った方向と交差する方向に前記記録媒体の記録可能幅にわたって記録動作を行う記録動作部と、を備える画像形成装置の搬送制御方法であって、
形成対象の画像の解像度に応じて定められた搬送速度で前記搬送部により前記記録媒体の搬送動作を行わせる搬送動作ステップ、
解像度の異なる複数の画像を形成させる場合に、形成対象である第1の画像の第1の解像度よりも、当該第1の画像の次に形成対象となる第2の画像の第2の解像度のほうが低いときには、前記第1の画像に係る前記記録動作が終了した以降、前記第2の画像に係る前記記録動作中に前記第2の解像度に応じて定められた前記搬送速度に上昇させる速度変更ステップ、
解像度の異なる複数の画像の形成命令を取得した場合に、前記記録動作部により解像度の高い順に前記複数の画像の形成を行わせる順番入替ステップ、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、画像形成装置において、より効率的に画像を形成することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】インクジェット記録装置の全体構成の概略を説明する正面図である。
図2】ヘッドユニットのインク吐出面を示す底面図である。
図3】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】解像度と搬送速度との時間変化を模式的に示す図である。
図5】画像記録制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
図6】画像形成に係る解像度と搬送速度の関係の変形例を示す図である。
図7】画像記録制御処理の制御手順を示すフローチャートの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の画像形成装置であるインクジェット記録装置100の全体構成の概略を説明する正面図である。
【0021】
インクジェット記録装置100は、媒体供出部10と、記録動作部20と、乾燥部30と、媒体排出部40などを備える。
【0022】
媒体供出部10は、媒体ロール11と、送り出しローラー12などを有する。媒体ロール11には、連続した記録媒体M、例えばロール紙や布帛などが巻回されている。媒体ロール11は、搬送部による搬送速度に応じた速さで回転して記録媒体Mを搬送部70の搬送経路へ送出する。送り出しローラー12は、適宜な張力で記録媒体Mを引き伸ばしながら搬送部70(記録動作部20)へ当該記録媒体Mを送出する。記録媒体Mは、しわやたるみなどが伸ばされて水平に記録動作部20へ送られる。
【0023】
記録動作部20は、駆動ローラー21と、従動ローラー22と、搬送ベルト23と、エンコーダー24と、ヘッドユニット25(記録ユニット)などを備える。
【0024】
駆動ローラー21は、図示略の駆動モーターの動作に応じて回転動作し、搬送ベルト23を所定の速さで周回移動させる。搬送ベルト23は、無端状(環状)のベルト部材であり、駆動ローラー21と従動ローラー22との間に架け渡されている。搬送ベルト23は、駆動ローラー21の回転動作に応じて周回移動する。これに伴って、搬送ベルト23の外周面(搬送面)上に所定範囲で載置された記録媒体Mが搬送移動される。搬送ベルト23の外周面は、記録媒体Mが粘着可能に、粘着剤などが塗布されていてもよい。また、記録媒体Mを外周面に粘着させるための図示略の押さえローラーが設けられていてもよい。従動ローラー22は、搬送ベルト23の周回移動に応じて回転動作する。
【0025】
エンコーダー24は、ロータリーエンコーダーであり、駆動ローラー21の回転を検出する。エンコーダー24は、回転方向に応じた検出信号を所定の角度の回転ごとに制御部50(図3参照)に出力する。
【0026】
ヘッドユニット25は、搬送ベルト23上に載置されている記録媒体Mに対して当該記録媒体Mの搬送方向(搬送経路に沿った方向)に垂直な(交差する)幅方向について記録媒体Mの記録可能幅(全幅又は両端に所定の余白を含む)にわたって記録素子20a(図3参照)が設けられているラインヘッドを有する。記録素子20aは、それぞれインクを吐出することで、帯状(線状)に記録動作を行い、搬送動作との組み合わせにより形成対象の画像(二次元画像)を形成する。ヘッドユニット25は、複数、ここでは、4個が搬送方向について異なる位置(所定の位置)に順番に設けられていてよい。これらのヘッドユニット25は、各々異なる色のインクを吐出するように設定されていてよく、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(黄色)、K(黒色)の各色のインクが吐出される。
【0027】
乾燥部30は、ヘッドユニット25(記録動作部20)よりも搬送方向について下流側で記録媒体M上のインクを乾燥固着させる。乾燥部30は、搬送ローラー31、32と、乾燥動作部35などを有する。
【0028】
搬送ローラー31、32は、記録動作部20から送出された記録媒体Mを乾燥部30内で移動させる。搬送ローラー32は、インクの乾燥後に記録媒体Mを狭持する2つの搬送ローラーである。この搬送ローラー32が記録媒体Mを引っ張る力を生じさせ、搬送ベルト23上に載置、特に、粘着している記録媒体Mを当該搬送ベルト23から引き剥がして乾燥部30内に引き込む。
【0029】
乾燥動作部35は、記録媒体M上のインクを乾燥固着させるための動作を行う。ここでは、乾燥動作部35は、水系インクの水分を蒸発させるための加熱及び/又は送風を行う。特に限られるものではないが、乾燥部30は、筐体を有し、乾燥動作部35は、この筐体内部に設けられて、乾燥動作部35が生じさせた熱が維持されやすい構造を有する。水蒸気を含む内部の空気は、筐体の隙間から自然排出(記録媒体Mや搬送ベルト23の移動により生じる風に流されるものを含む)されてもよいし、排気ファンなどにより強制排出されてもよい。
【0030】
媒体排出部40は、排出ローラー41を備え、インクが乾燥固着して乾燥部30から送出された記録媒体Mを図示略の底部のトレイなどに振り落とす。排出された記録媒体Mは、適宜後処理装置などに送られて裁断などがなされてもよい。
【0031】
図2は、ヘッドユニット25のインク吐出面を示す底面図である。
ここでは、ヘッドユニット25は、16個の記録ヘッド251を有し、2個1組で幅方向についてそれぞれ所定の範囲へのインク吐出を行う。各記録ヘッド251は、搬送方向について2箇所にそれぞれ幅方向に延びるノズル開口27aの配列が設けられている。各組の記録ヘッド251における4箇所の配列のノズル開口27aは、それぞれ幅方向について均一な幅でずらして設けられ、全体として所定のノズルピッチの配列をなしている。なお、ここで示したノズル開口27aの数、大きさや位置関係は、説明のための例示的なものであり、実際の数、大きさや位置関係を反映したものではない。
【0032】
図3は、インクジェット記録装置100の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置100は、上述の記録動作部20及び乾燥部30に加えて、制御部50と、記憶部60と、搬送部70と、通信部81と、表示部82と、操作受付部83と、バス90などを備える。
【0033】
記録動作部20は、ヘッド駆動部26を備える。ヘッド駆動部26は、ヘッドユニット25の各ノズル27からインクを吐出させるための駆動信号を出力する。駆動信号は、例えば、ノズル27に連通するインク流路(特にインク室)を変形させる電気機械変換素子28(圧電素子)に出力される。駆動信号の電圧が印加された電気機械変換素子28が変形し、当該変形に応じてインク流路が変形することにより当該インク流路内のインクに圧力変動が生じて、ノズル27からインク液滴が吐出される。駆動信号の出力周波数は、所定の最大駆動周波数以下の範囲で調整が可能となっている。各ノズル27及び対応するインク流路と電気機械変換素子28とが記録素子20aを構成する。なお、記録素子20aの配列は、幅方向に一列である必要はなく、幅方向について記録可能幅にわたってインクを吐出可能であればよい。
【0034】
乾燥部30は、乾燥動作駆動部36を備える。乾燥動作駆動部36は、乾燥動作部35に対して駆動信号を出力して発熱動作や送風動作などを行わせる。発熱動作の有無などは、図示略の温度センサーにより計測される筐体内の温度などに応じて制御部50が制御してよい。
【0035】
搬送部70は、搬送駆動部76と、エンコーダー24などを備える。搬送駆動部76は、媒体ロール11、送り出しローラー12、駆動ローラー21、搬送ローラー32及び排出ローラー41などを回転動作させる。これにより、搬送部70は、記録媒体Mを所定の搬送経路に沿って移動させる搬送動作を行う。各ローラーの回転速度は、設定された搬送速度に応じて同期されるが、制御部50の制御により各々微調整されてよい。例えば、媒体ロール11の回転速度は、巻回されている記録媒体Mの半径などに応じて変化する。また、これらの速度はヘッドユニット25による記録画像の画質精度などに応じて変更され得る。これらを同期させて逆回転させる(回転速度を負の値とする)ことにより記録媒体Mを巻き戻すのは、通常では手間を要し、容易ではない。特に、搬送ベルト23の外周面に粘着剤が塗布されている場合には、搬送方向の上流側で記録媒体Mを当該搬送ベルト23から剥離させて記録媒体Mを巻き戻すのが困難である。また、搬送速度の変更は、瞬間的には行えず、所定の変更時間を要する。
【0036】
制御部50は、CPU51(Central Processing Unit)及びRAM52(Random Access Memory)などを有し、各種演算処理を行って、インクジェット記録装置100の各部の動作を統括制御する。制御部50は、記憶部60に記憶された制御プログラムなどを読み出して実行し、搬送動作、記録動作及び乾燥動作などの制御を行う。制御部50は、特に、形成画像の解像度に応じて搬送速度を適切に調整する。
【0037】
記憶部60は、各種プログラム、設定データ及び画像形成命令に係る画像データなどを記憶する。記憶部60は、DRAMなどの揮発性メモリーと、フラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーを含んでよく、また、HDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置を含んでいてよい。形成対象の画像の画像データなどは、揮発性メモリーに記憶されて高速処理がなされ、処理の終了後に消去される。プログラムや設定データなどは、不揮発性メモリーに記憶され、インクジェット記録装置100への電力供給の有無によらず保持される。プログラムには、搬送制御プログラム61が含まれ、設定データには、解像度対応速度表62が含まれる。解像度対応速度表62は、形成対象の画像の解像度に対応して予め定められた記録媒体Mの搬送部70による搬送速度を各々記憶している。
【0038】
通信部81は、ネットワークを介して行う外部機器との通信を制御する。通信部81は、例えば、ネットワークカードを有し、LAN(Local Area Network)などを介した通信の制御を行う。外部機器としては、PC(Personal Computer)や画像形成のサーバー(プリントサーバー)などのコンピューターが含まれ、形成対象の画像の画像データや設定データを画像形成命令とともにジョブデータとしてこれらのコンピューターから受信する。また、通信部81は、制御部50の制御に応じて画像形成(記録動作)のステータス情報を送信する。
【0039】
表示部82は、制御部50の制御に基づいて表示画面に表示を行う。表示画面としては、特には限られないが、例えば、液晶表示画面などが用いられる。表示画面には、操作の受付メニューやステータスの表示などが行われる。また、表示部82は、LEDランプなどを有し、電力供給の有無や異常の発生有無などを示してもよい。
【0040】
操作受付部83は、外部からの入力操作を受け付けて、操作内容に応じた入力信号を出力する。操作受付部83は、例えば、タッチセンサーを有し、表示画面に重ねて設けられることで、タッチパネルとして動作する。また、操作受付部83は、主電源のオンオフ切り替え用の押しボタンスイッチやロッカースイッチなどを有していてもよい。
【0041】
次に、インクジェット記録装置100における記録動作及び搬送動作について説明する。
インクジェット記録装置100では、記録媒体Mを搬送経路に沿って移動させながら、当該記録媒体M上に各ヘッドユニット25からインクを吐出させていくことで、シングルパスで画像を形成する。画像の幅方向についての解像度は、各ヘッドユニット25のノズルピッチに依存し、搬送方向についての解像度は、すなわち、ヘッドユニット25により帯状に記録動作が行われる記録媒体M上の搬送方向についての間隔であるので、記録媒体Mの搬送速度とインクの吐出周波数(すなわち、駆動信号の出力周波数)との関係による。このインクジェット記録装置100では、上述のように、解像度対応速度表62に搬送速度が解像度に対して定められており、吐出周波数は、最大駆動周波数以下の範囲で調整されることで、解像度に応じた間隔での画像形成(記録動作)がなされる。
【0042】
画像形成速度を落とさずに画像の形成効率を上げるためには、搬送速度が大きいほうがよい。一方で、吐出周波数には、インクの特性やインク流路の形状などに応じて好適にインクを吐出可能な圧力波を生じさせることのできる上限(最大駆動周波数)があるので、搬送速度が大き過ぎると、最大駆動周波数に応じた解像度以上の画像を得ることができない。ここでは、吐出周波数を最大駆動周波数(設定可能な周波数が離散値の場合には、その中で最大の周波数でよい。また、連続的に設定可能な場合には、設定に対して実際に生じ得るぶれ、誤差やマージンなどを考慮して理論上の最大駆動周波数を超えるおそれのない最大の周波数でよい)又はこれよりも若干低い程度に保ちながら、搬送速度を所望の解像度の画像が得られる最大速度(設定可能な速度が離散値の場合には、そのうちの最大速度でよい。また、連続的に設定可能な場合には、設定に対して実際に生じ得るぶれ、誤差やマージンなどを考慮して理論上の最大速度を超えるおそれのない最大速度でよい)又はこれよりも若干低い速度に調整する。すなわち、解像度が高いほど搬送速度が小さくなるように調整されることになる。
【0043】
図4は、解像度と搬送速度との時間変化を模式的に示す図である。
解像度の異なる複数の画像、ここでは、図4(a)に示すように、高解像度の画像、低解像度の画像及び中解像度の画像が順番に形成される場合、記録媒体Mの搬送位置に応じて、複数のヘッドユニット25の間で各画像の形成期間がずれる。すなわち、最も上流側のヘッドユニット25による各画像の形成開始タイミングufに対し、最も下流側のヘッドユニット25による各画像の形成開始タイミングulは、それぞれ搬送速度に応じたタイミング遅れることになる。
【0044】
このインクジェット記録装置100では、図4(b)に示すように、相対的に高解像度の画像形成から低解像度の画像形成に移行する場合、最も下流側のヘッドユニット25による先に形成対象となる高解像度側の画像(第1の画像)の形成が終了した以降、次に形成対象となる低解像度側の画像(第2の画像)を形成させながら、当該第2の画像形成が可能な搬送速度に上昇させる。一方で、相対的に低解像度側の画像形成から高解像度側の画像形成に移行する場合、最も上流側のヘッドユニット25が高解像度側の画像形成に移行する前に、当該高解像度側での次の画像形成が可能な搬送速度への低下を完了させるように、低解像度側の画像形成中に予め搬送速度を変化させる。
【0045】
速度変化に要する時間は、速度差に依存する。また、低解像度側の画像形成中の搬送速度は、その解像度によって異なるので、上流側のヘッドユニット25による画像形成が終了するまでの残り時間に応じた残り画像の長さ(所定距離)も当然異なる。よって、搬送速度の低下を開始させるタイミングを記録媒体M上の位置で取得する場合には、これらの条件に基づいて残りの画像の長さを予め算出しておいてよい。これにより、記録媒体M上には、第1の画像と第2の画像との間に余白を設けなくてよいことになり(必要な微小間隔が設けられてもよい)、また、余白を取る間の待機時間も不要となる。
【0046】
このとき、時間当たりの速度変化(加速度)が大き過ぎると、インクジェット記録装置100の各部に大きな力がかかり、形成画像がぶれるなどの問題が生じやすくなる。また、インクの吐出タイミングは、エンコーダー24の検出信号(すなわち搬送速度)に基づいて定められるので、直近の検出信号後に速度変化(加速度)があると、その分だけインクの吐出タイミング、すなわち、着弾位置にずれが生じる。したがって、搬送速度を短時間で急激に変化させずに、漸次変化させる。すなわち、加速度(速度変化を単位時間ごとに離散的に行う場合には、当該単位時間内における速度の変化量)を所定の上限値以内(基準値以下)に収めることとする。基準値は、着弾位置のずれ量の許容量(本来の搬送方向についての間隔に対するずれ量の上限など)に応じて定められてよい。これにより、当該上限値に応じた距離以上の着弾位置のずれを生じさせない。また、この上限値を着弾位置ずれの許容量に基づいて定めることで、画質に悪影響を生じさせない。
【0047】
さらに、図4(c)、(d)に示すように、速度変化の開始時及び終了時に急激な速度の切り替わりを生じさせないように、開始から所定期間t1(第1の所定期間)及び終了までの所定期間t3(第2の所定期間)における加速度(速度変化)を、これら以外の速度変化中の期間t2(すなわち所定期間t1より後かつ所定期間t3より前の期間)における加速度(速度変化)よりも小さくすることで、緩やかに速度変化を開始及び終了させることができる。ここでは、第1の所定期間では加速度の大きさ(絶対値)を漸増させ、第2の所定期間では加速度の大きさを漸減させることで、滑らかな速度変化としている。
【0048】
図5は、インクジェット記録装置100で実行される画像記録制御処理の制御部50による制御手順を示すフローチャートである。この画像記録制御処理は、通信部81を介して外部から、又は操作受付部83を介して、画像形成命令が取得された場合に開始される。取得される命令は複数であってよい。操作受付部83を介して命令を受け付ける場合には、予め各解像度の画像データが記憶部60に保持されていてよい。
【0049】
画像記録制御処理が開始されると、制御部50(CPU51)は、画像形成命令に係る画像データ及び設定データを取得する(ステップS101)。制御部50は、画像データの解像度を取得し、当該解像度に応じた搬送速度を解像度対応速度表62から取得して、搬送部70により、取得した搬送速度での記録媒体Mの搬送動作を開始させる(ステップS102;搬送動作ステップ)。制御部50は、記録動作部20による記録動作を開始させる(ステップS103)。
【0050】
制御部50は、現在設定されている搬送速度(解像度)に基づいて搬送部70を動作させながら、取得された画像形成命令において最後の画像データに基づく画像形成を行っている途中か否かを判別する(ステップS104)。最後の画像データに基づく画像形成中ではないと判別された場合には(ステップS104で“NO”)、制御部50は、次の形成対象の画像の画像データが現在の形成対象の画像の画像データよりも低解像度(同一解像度を含む)のものであるか否かを判別する(ステップS105)。より低解像度なものであると判別された場合には(ステップS105で“YES”)、制御部50は、最下流側のヘッドユニット25での現在の対象画像の画像形成が終了したか否かを判別する(ステップS106)。終了していないと判別された場合には(ステップS106で“NO”)、制御部50は、ステップS106の処理を繰り返す。
【0051】
現在の対象画像の画像形成が終了したと判別された場合には(ステップS106で“YES”)、制御部50は、解像度対応速度表62に基づいて、搬送速度を次の形成対象の画像の解像度に応じた速度へ上昇させる処理を行う(ステップS107;速度変更ステップ)。速度変化は、上述のように、漸次変化である。制御部50は、インクの吐出周波数を解像度の変更に応じて一度低下させた後、搬送速度の変化(上昇)に応じて再度上昇させていく。なお、解像度に変更がない場合には、搬送速度の変化量はゼロであり、制御部50は、即座にステップS107の処理を終了する。それから、制御部50の処理は、ステップS104に戻る。
【0052】
ステップS105の判別処理で、次の形成対象の画像データが現在の形成対象の画像データよりも低解像度のものではない(高解像度である)と判別された場合には(ステップS105で“NO”)、制御部50は、最上流のヘッドユニット25による現在の形成対象画像の画像形成が終了する位置よりも所定距離前の位置に画像形成(記録動作)がなされたか否かを判別する(ステップS116)。所定距離前の位置に記録動作がまだなされていないと判別された場合には(ステップS116で“NO”)、制御部50は、ステップS116の処理を繰り返す。
【0053】
現在の形成対象の画像の形成が終了する位置よりも所定距離前の位置に画像形成(記録動作)がなされたと判別された場合には(ステップS116で“YES”)、制御部50は、次の形成対象の画像の解像度と解像度対応速度表62とに基づいて、次の解像度に応じた速度へ搬送速度を低下させる処理を行う(ステップS117)。上記所定距離前の位置でこの搬送速度の低下が開始されることで、最上流側のヘッドユニット25で次の対象画像の画像形成が開始される直前に搬送速度の低下が終了する。それから、制御部50の処理は、ステップS104に戻る。
【0054】
ステップS104の判別処理で、現在の形成対象画像(画像形成)が最後の画像データによるものであると判別された場合には(ステップS104で“YES”)、制御部50は、最下流側のヘッドユニット25による対象画像の画像形成が終了したか否かを判別する(ステップS121)。終了していないと判別された場合には(ステップS121で“NO”)、制御部50は、ステップS121の処理を繰り返す。最下流側のヘッドユニット25による対象画像の画像形成が終了したと判別された場合には(ステップS121で“YES”)、制御部50は、搬送部70による搬送動作を停止させる(ステップS122)。なお、必要がある場合には、制御部50は、最後の画像が形成されてから、当該画像が媒体排出部40に排出されるまで記録媒体Mの搬送を継続させてもよい。
【0055】
図6は、画像形成に係る解像度と搬送速度の関係の変形例を示す図である。
ここでは、画像形成の順番は、解像度が単調減少するように並んでおり、これに応じて搬送速度は単調増加する。解像度の異なる複数の画像形成に係る命令が取得された場合に、解像度の降順(解像度の高い順)で並び替えて画像形成を行わせてもよい場合、このように、降順で画像形成を行わせると、搬送速度の変更が全て下流側のヘッドユニット25による画像形成の終了後に行われる場合に統一される。
【0056】
図7は、画像記録制御処理の制御部50による制御手順を示すフローチャートの変形例である。この変形例は、図6に示したものに対応し、図5に示した画像記録制御処理に対してステップS151の処理が追加され、ステップS105、S116、S117、S121の各処理が削除され、また、ステップS104以降の処理の順番が一部入れ替えられている。同一の処理内容には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0057】
ステップS101の処理の後、制御部50(CPU51)は、取得された形成対象の複数の画像データを解像度で降順にソートして、画像形成の順番を定める(ステップS151)。それから、制御部50の処理は、ステップS102に移行する。
【0058】
ステップS103の処理のあと、制御部50は、ステップS106の処理に移行し、最下流側のヘッドユニット25で現在の形成対象の画像形成動作が終了したか否かを判別する(ステップS106)。最下流側のヘッドユニット25による画像形成動作が終了したと判別された場合には(ステップS106で“YES”)、制御部50の処理は、ステップS104に移行する。
【0059】
ステップS104の判別処理で、現在の画像形成に係る形成対象画像が最後の画像データに応じたものであると判別された場合には(ステップS104で“YES”)、制御部の処理は、ステップS122に移行する。最後の画像データに応じたものではないと判別された場合には(ステップS104で“NO”)、制御部50の処理は、ステップS107に移行する。ステップS107の処理で、制御部50は、搬送速度を上昇させ、その後、処理をステップS106に戻す。
【0060】
以上のように、画像形成装置の本実施形態であるインクジェット記録装置100は、記録媒体Mを所定の搬送経路に沿って移動させる搬送部70と、記録媒体Mに対し、搬送経路上の所定の位置で当該搬送経路に沿った方向と交差する方向に記録媒体Mの記録可能幅にわたって設けられた記録素子20aにより記録動作を行う記録動作部20と、搬送部70による記録媒体Mの搬送動作と記録動作とを制御する制御部50と、を備える。制御部50は、形成対象の画像の解像度に応じて定められた搬送速度で搬送部70により搬送動作を行わせ、解像度の異なる複数の画像を形成させる場合に、形成対象である第1の画像の第1の解像度よりも次に形成対象となる第2の画像の第2の解像度のほうが低いときには、第1の画像に係る記録動作が終了した以降、第2の画像に係る記録動作中に搬送速度を上昇させる。
このように、解像度に応じて搬送速度を変化させることで、上限の駆動周波数付近で画像の記録動作を行うように定めることができるので、必要以上に画像の形成の時間を要しない。よって、このインクジェット記録装置100では、効率よく画像形成を行うことができる。また、搬送速度を変化させながら記録動作を行うことで、搬送速度の変化をさせている間に記録動作を中止する必要がなく、不要な待機時間を必要としない。また、当該待機時間の間記録媒体Mを不要に移動させないので、当該記録媒体M上に不要な余白を生じさせず、記録媒体Mを無駄にしない。
特に、複数の解像度で切り替えながら少量ずつサンプル画像を形成するような場合に、サンプル画像の形成時間や記録媒体の消費量に比して、切り替えに要する時間や切り替え時の記録媒体の余白などが従来大きかったが、これらを効率的に抑制、除去することができる。
【0061】
また、制御部50は、高精度側の画像に係る記録動作が終了するタイミングで搬送速度の上昇を開始させるように搬送動作を制御する。これにより、必要以上に搬送速度が遅い状態を維持しないので、無駄なく速やかに可能な搬送速度に上昇させて、より効率よく画像を形成させることができる。
【0062】
また、搬送速度は、記録動作部20の最大駆動周波数で形成対象の画像の解像度を得ることのできる最大速度にそれぞれ定められている。すなわち、インクジェット記録装置100において所望の解像度の画像を最速で得ることができるように搬送速度が設定されているので、最大限効率よく画像形成を行うことができる。
【0063】
また、記録動作部20は、搬送経路上で記録動作を行う位置が異なる複数のヘッドユニット25を有し、制御部50は、複数のヘッドユニット25のうち記録動作を行う位置が搬送経路の最も下流側にあるヘッドユニット25により高解像度の第1の画像に係る記録動作が終了した以降に、搬送速度を上昇させる。すなわち、搬送速度を低下させておく必要のある解像度での記録動作が全て終了した以降に搬送速度を上昇させるので、各解像度での画像形成に問題のない搬送速度で適切に画像が形成される。また、最下流側でのヘッドユニット25での画像形成が終了した後、搬送速度を変換してから最上流側でのヘッドユニット25での画像形成を開始すると、タイムラグが非常に大きく、また、記録媒体の余白も長大になるが、これらを排除することができるので、画像形成の効率が大きく向上する。
【0064】
また、制御部50は、解像度の異なる複数の画像の形成命令を取得した場合に、記録動作部20により解像度の高い順に複数の画像の形成を行わせる。
このように、解像度を下げていく方向で順番に複数の解像度の画像形成を行うので、解像度の変更に応じた搬送速度の変更タイミングが最下流側のヘッドユニット25の動作のみを基準として容易に定められ、制御が簡便になる。
【0065】
また、制御部50は、搬送速度の変更に係る加速度が所定の基準値以下となるように搬送速度を変化させる。これにより、インクジェット記録装置100の構造に比して強すぎる力が加わるのを避け、また、急激な加減速によるインク吐出位置のずれを、画質の低下を生じさせない範囲にとどめることができる。また、前後の乾燥部30や媒体供出部10の速度変化を連動させやすく、安定して記録媒体Mを搬送させることができる。
【0066】
また、制御部50は、搬送速度の変更の開始から第1の所定期間t1及び当該変更の終了までの第2の所定期間t3における搬送速度に係る加速度が、当該第1の所定期間t1の後かつ前記第2の所定期間t3の前の期間t2における加速度よりも小さくなるように搬送速度を変化させる。このように、速度変化の開始及び終了時に速度変化の小さい切り替わり部分を設けることで、より安定して搬送速度の変化中の画質を維持することができる。
【0067】
また、制御部50は、第1の所定期間における加速度が漸増し、第2の所定期間における加速度が漸減するように搬送速度を変化させる。すなわち、速度変化がより滑らかに行われるので、インクジェット記録装置100では、搬送速度の変化中の画質をよりよく維持することができる。
【0068】
また、搬送経路に沿った方向について記録動作部20よりも下流側に乾燥部30を備え、記録動作部20は、記録素子20aがインクを吐出することで記録動作を行い、乾燥部30は、記録媒体M上のインクを乾燥させる。このように、インクジェット記録装置100で画像形成後に乾燥に係る構成を有しているような場合には、特に、連続した記録媒体Mを逆転移動させるのが難しく手間を要するので、搬送させながら搬送速度を変更して不要な余白を生じさせないことで、容易に記録媒体の無駄を効率的に省くことができる。また、逆転させる動作を挟むことによる時間の消費も防ぐこともできる。
【0069】
また、搬送経路へ記録媒体Mを送り出す媒体供出部10を備える。このように、搬送部70と別個に媒体供出部10から、特に、連続的な記録媒体Mが送出される場合には、一度進めた記録媒体Mを逆転移動させるのが難しく手間を要するので、搬送させながら搬送速度を変更して不要な余白を生じさせないことで、より容易に記録媒体の無駄を効率的に省くことができる。
【0070】
また、本実施形態の搬送制御方法は、形成対象の画像の解像度に応じて定められた搬送速度で搬送部70により記録媒体Mの搬送動作を行わせる搬送動作ステップ、解像度の異なる複数の画像を形成させる場合に、形成対象である第1の画像の第1の解像度よりも、第1の画像の次に形成対象となる第2の画像の第2の解像度のほうが低いときには、第1の画像に係る記録動作が終了した以降、第2の画像に係る記録動作中に第2の解像度に応じて定められた搬送速度に上昇させる速度変更ステップ、を含む。
このような搬送制御方法を用いることで、いずれの解像度の画像についてもそれぞれ上限の駆動周波数付近で画像の記録動作を行うように定めることができるので、必要以上に画像の形成の時間を要しない。よって、効率よく画像形成を行うことができる。また、搬送速度を変化させながら記録動作を行うことで、搬送速度の変化をさせている間に記録動作を中止する必要がなく、不要な待機時間を必要としない。また、当該待機時間の間の記録媒体Mの不要な移動をなくすことができるので、当該記録媒体M上に不要な余白を生じさせず、記録媒体Mを無駄にしない。
【0071】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、最大駆動周波数でのインク吐出動作を行うものとして、所望の解像度に応じた最大速度での搬送が行われるものとして制御を行ったが、これより遅い搬送速度であってもよい。例えば、インクジェット記録装置100の構造上の強度などに応じて上限の搬送速度が別途定められて、この搬送速度以下で搬送動作が行われてもよい。また、最大駆動周波数でのインク吐出では、ある程度以上の画質が得られない場合などには、高解像度の画像形成時や別途画質設定などに応じて最大駆動周波数より低い駆動周波数でインク吐出がなされる場合があってもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、CMYK4色のインクを各々吐出する4個のヘッドユニット25を備えることとしたが、これに限られない。一つであってもよいし、2個以上の任意のヘッドユニット25を備えるものであってもよい。
【0073】
また、上記実施の形態では、インクジェット記録装置100は、熱及び/又は送風によりインクが着弾した記録媒体Mを乾燥させる乾燥部30を備えることとしたが、備えていなくてもよい。また、他の方法、例えば、紫外線などにより硬化するインクを用いる場合には、乾燥部30の代わりに紫外線を照射する照射部などを備えてもよい。また、筐体内部における乾燥動作部35の配置は、適宜定められてよい。あるいは、乾燥動作部35は、筐体の外部に設けられ、配管を介してファンにより加熱乾燥空気が筐体の内部に送り込まれる構成であってもよい。
【0074】
また、搬送経路への記録媒体Mの供給や排出に係る構成は、上記実施の形態で説明したものに限られない。
【0075】
また、上記実施の形態では、最初に全ての画像形成対象の画像を取得することとしたが、画像形成の途中で次の形成対象の画像データが追加されていってもよい。この場合、搬送速度を変更する処理の開始に間に合う範囲内に画像データが取得されていればよい。また、画像形成対象として設定されている画像データ間で逐次解像度順にソートがやり直されてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態では、各解像度の画像データが外部から取得されて保持されているものとして説明したが、一種類の元データ(ベクトル画像データなど)が取得保持されて、設定された複数の解像度に応じたビットマップ画像(ラスター画像)が各々制御部50により生成されてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態では、インクを吐出する記録動作を行う画像形成装置について説明したが、これに限られない。LEDプリンターなどのように他の種類の記録素子が配列されて、あるいは、行単位で幅方向に延びる画像を形成する他の機構により、所定の最大駆動周波数内で記録動作を行うものであってもよい。
その他、上記実施の形態で示した構成、構造、制御内容やその手順などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 媒体供出部
11 媒体ロール
12 送り出しローラー
20 記録動作部
20a 記録素子
21 駆動ローラー
22 従動ローラー
23 搬送ベルト
24 エンコーダー
25 ヘッドユニット
251 記録ヘッド
26 ヘッド駆動部
27 ノズル
27a ノズル開口
28 電気機械変換素子
30 乾燥部
31 搬送ローラー
32 搬送ローラー
35 乾燥動作部
36 乾燥動作駆動部
40 媒体排出部
41 排出ローラー
50 制御部
51 CPU
52 RAM
60 記憶部
61 搬送制御プログラム
62 解像度対応速度表
70 搬送部
76 搬送駆動部
81 通信部
82 表示部
83 操作受付部
90 バス
100 インクジェット記録装置
M 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7