(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】展示用住宅
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20221206BHJP
G09B 25/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G09B9/00 K
G09B25/04
(21)【出願番号】P 2018202711
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕也
(72)【発明者】
【氏名】梶 彩子
(72)【発明者】
【氏名】上井 ひろみ
(72)【発明者】
【氏名】和田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】荒井 佑輔
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3139873(JP,U)
【文献】特表2016-534408(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151766(WO,A1)
【文献】特開2008-163726(JP,A)
【文献】特開2014-202888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00、25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間に面した窓領域と、
前記窓領域の両側に設けられた第1袖壁および第2袖壁と、
前記第1袖壁に交差する第1側壁と、
前記第2袖壁に交差する第2側壁と、
前記窓領域の室内側に配されて前記窓領域を覆うように昇降可能に設けられた昇降スクリーンと、
前記昇降スクリーン、前記第1側壁および前記第2側壁に対して映像を投影する映像投影装置
と、
第1天井高と前記第1天井高よりも高い第2天井高との間で昇降可能に設けられた吊天井とを備え、
前記昇降スクリーンは、前記第2天井高よりも高い位置に設けられており、映像投影用のスクリーン面を最上位置まで巻き上げた状態では、前記吊天井によって隠蔽されることを特徴とする展示用住宅。
【請求項2】
請求項
1に記載の展示用住宅であって、
前記第1天井高よりも高く、前記第2天井高よりも低い位置に、外部空間に面した上部窓領域を備えることを特徴とする展示用住宅。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の展示用住宅であって、
前記映像投影装置は、前記第1側壁、前記第1袖壁のうち前記昇降スクリーンから露出した領域、前記昇降スクリーン、前記第2袖壁のうち前記昇降スクリーンから露出した領域、前記第2側壁のそれぞれに対して、連続した映像を投影することを特徴とする展示用住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展示用住宅に関し、特に室内に設けられたスクリーンに映像を投影する展示用住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅展示場などでは、実際の住宅を展示して内部を閲覧可能にするだけではなく、住宅建築に用いられている技術について構造の断面図や模型の展示装置で来場者に提示することも行われている。また、設計コンセプトや居住イメージについて映像と音声を交えて大面積のスクリーンに表示する展示用住宅も提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-093851号公報
【文献】特開2007-024976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、専用に設けたプロジェクションルームにおいて眺望のシミュレーション映像をスクリーンに投影することで、仮想の眺望を来場者に提示して実際の居住時をイメージしやすくしている。特許文献2に記載された技術では、展示施設の出入口に映写室を設けておき、展示施設への入場前にイメージ映像を上映することで、展示施設のコンセプトを理解しやすく提示するとともに、演出効果を高めている。
【0005】
これらの技術では、映像投影のために専用の空間を用意することで、仮想の眺望や設計コンセプトを効果的に上映できる。しかし、実際の居住スペースとは異なる空間を用意する必要があるため、展示用住宅での居住空間における体験との連動性を高めることが困難であった。また、投影される映像への没入感をさらに高めて、演出効果をより向上させたいという要請もあった。
【0006】
そこで本発明は、居住空間での体験との連動性を高め、演出効果を向上させることができる展示用住宅を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の展示用住宅は、外部空間に面した窓領域と、前記窓領域の両側に設けられた第1袖壁および第2袖壁と、前記第1袖壁に交差する第1側壁と、前記第2袖壁に交差する第2側壁と、前記窓領域の室内側に配されて前記窓領域を覆うように昇降可能に設けられた昇降スクリーンと、前記昇降スクリーン、前記第1側壁および前記第2側壁に対して映像を投影する映像投影装置と、第1天井高と前記第1天井高よりも高い第2天井高との間で昇降可能に設けられた吊天井とを備え、前記昇降スクリーンは、前記第2天井高よりも高い位置に設けられており、映像投影用のスクリーン面を最上位置まで巻き上げた状態では、前記吊天井によって隠蔽されることを特徴とする。
【0008】
このような本発明の展示用住宅では、昇降スクリーン、第1側壁および第2側壁に対して映像を投影することで没入感を高め、昇降スクリーンを上昇させると背後に設けられた窓領域から外部空間を視認できるので、居住空間での体験との連動性を高め、演出効果を向上させることができる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記第1天井高よりも高く、前記第2天井高よりも低い位置に、外部空間に面した上部窓領域を備える。
【0012】
また本発明の一態様では、前記映像投影装置は、前記第1側壁、前記第1袖壁のうち前記昇降スクリーンから露出した領域、前記昇降スクリーン、前記第2袖壁のうち前記昇降スクリーンから露出した領域、前記第2側壁のそれぞれに対して、連続した映像を投影する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、居住空間での体験との連動性を高め、演出効果を向上させることができる展示用住宅を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の展示用住宅100において室内に映像を投影している状態を説明する模式図である。
【
図3】吊天井10の上側から見た展示用住宅100の模式平面図である。
【
図4】映像を投影している状態における室内を示す模式平面図である。
【
図5】映像投影終了後に昇降スクリーン14を巻き上げている途中の室内を示す模式図である。
【
図7】吊天井10を最も高い位置にまで上昇させた状態の室内を示す模式図である。
【
図9】昇降スクリーン14とスクリーンケース50の構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本発明の展示用住宅100において映像投影室1内に映像を投影している状態を説明する模式図である。
図1に示すように、展示用住宅100の映像投影室1は、吊天井10と、床面11と、袖壁12R,12Lと、側壁13(および
図3に示す側壁15)と、昇降スクリーン14によって空間が仕切られている。
【0016】
吊天井10は、後述するように床面11からの高さを変更可能に吊り下げられた天井である。吊天井10を構成する材料は限定されず、石膏ボード材や木材などの板状部材を用い、クロスを貼り付けた通常の居室に用いられる天井と同様の構造を用いることができる。また、
図1に示すように吊天井10にはダウンライト等の照明器具10aを取り付け、通常の居室における天井と同等にすることが好ましい。
【0017】
床面11は、映像投影室1の床であり、展示用住宅100の他室と同様の構造で構成され、フローリング材やカーペット、畳等で仕上げられている。
【0018】
袖壁12R,12Lは、映像投影室1を構成する壁であり、後述する窓領域40の両側に設けられて外部空間と映像投影室1内とを隔てており、それぞれ本発明における第1袖壁と第2袖壁に相当している。また、袖壁12R,12Lの一部は昇降スクリーン14によって覆われている。袖壁12R,12Lの構造は特に限定されず耐力壁であってもよく、表面にはクロスや塗装で通常の居室と同様の仕上げを施している。
【0019】
側壁13,15は、映像投影室1を構成する壁であり、それぞれ袖壁12R,12Lに直角に交差しており、それぞれ本発明における第1側壁と第2側壁に相当している。側壁13,15の構造は特に限定されず耐力壁であってもよく、表面にはクロスや塗装で通常の居室と同様の仕上げを施している。
【0020】
昇降スクリーン14は、窓領域40の映像投影室1内側に配置された映像投影用のスクリーンであり、昇降可能に設けられている。昇降スクリーン14の幅は窓領域40の幅よりも大きく、昇降スクリーン14を最も下の位置にまで伸ばした状態では、袖壁12R,12Lの一部と窓領域40全体を昇降スクリーン14が覆う。
【0021】
図1に示すように、昇降スクリーン14を最も下の位置にまで伸ばした状態で、後述する映像投影装置20a~20dから昇降スクリーン14、側壁13および側壁15に対して映像を投影する。このとき、袖壁12L,袖壁12Rのうち昇降スクリーン14から露出した領域にも映像が投影され、映像投影室1内の3面に連続した映像が投影される。映像の投影時には照明器具10aは制御装置によって消灯される。
【0022】
展示用住宅100には、
図1で示した映像投影室1の他にも、玄関やリビング、キッチン、ベッドルーム等の他の空間が展示されており、映像投影室1との空間的な連続性を演出するためには、床面11の仕上げを他の空間と統一しておくことが好ましい。また、他の居住空間での体験との連動性を高めるためには、袖壁12R,12Lと側壁13,15は、通常の居室と同様の仕上げを施していることが好ましい。
【0023】
本発明の展示用住宅100では、映像投影室1の3面に連続した映像を投影することで、来場者は3方向を映像で囲まれるため没入感が高まり、演出効果を向上させることができる。また、投影された映像を良好に視認するためには、袖壁12R,12Lと側壁13,15の全てを白色系の色調で仕上げることが好ましい。また、昇降スクリーン14の投影面と袖壁12R,12Lと側壁13,15は、連続した映像を投影する際に境界を目立たなくするために、色調を統一しておくことが好ましい。
【0024】
図2は、
図1に示した状態を示す模式断面図である。
図3は、吊天井10の上側から見た展示用住宅100の模式平面図である。
図2,3に示すように、映像投影室1の上方には、吹抜空間2が設けられており、中間壁16と、上部壁17と、吹抜天井部18と、一階天井部19が設けられている。また、一階天井部19の縁部には衝立部19aが立設されており、吹抜空間2から納戸空間3が仕切られている。
【0025】
中間壁16は、窓領域40の上方に位置する壁であり、映像投影室1と吹抜空間2を外部空間から隔てている。中間壁16が設けられている高さは、一階天井部19と略同程度である。
図2に示したように昇降スクリーン14を映像投影室1内にまで下ろした状態では、中間壁16は昇降スクリーン14の背後に隠れているが、後述するように昇降スクリーン14を吹抜空間2まで上昇させると、映像投影室1内から中間壁16を視認できるようになる。
【0026】
上部壁17は、吹抜天井部18の下方に位置する壁であり、吹抜空間2と外部空間を隔てている。昇降スクリーン14を映像投影室1内にまで下ろした状態では、上部壁17は吊天井10と昇降スクリーン14に隠れるが、後述するように昇降スクリーン14を最も上昇させると、映像投影室1内から上部壁17の下端近傍を視認できるようになる。
【0027】
吹抜天井部18は、吹抜空間2および納戸空間3の上部を覆う天井であり、展示用住宅100の2階部分に相当する天井である。吹抜天井部18は、吊天井10と一階天井部19に隠されて映像投影室1内からは見えず、後述する吊下梁32等がアンカーによって吊り下げて保持されている。
【0028】
一階天井部19は、映像投影室1のうち窓領域40とは反対側における吊天井10が無い領域の天井である。一階天井部19の上方には納戸空間3が形成されており、後述するモータ部31やドラム部34が載置されている。衝立部19aは、一階天井部19の縁部に立設された仕切りであり、吊天井10の上方である吹抜空間2と、一階天井部19の上方である納戸空間3とを仕切っている。
【0029】
図2に示すように、吊天井10は中間壁16から一階天井部19まで吹抜空間2の略全体を覆うように設けられており、吊天井10と中間壁16との間隙から昇降スクリーン14が映像投影室1内に下ろされている。また、吊天井10を最も下げた状態では、床面11からの高さはH1であり、一階天井部19と略面一とされている。これにより、映像投影室1で3面に映像を投影している状態では、吊天井10と一階天井部19とが一つの天井面を構成するように認識される。
【0030】
中間壁16の表面仕上げを袖壁12L,12Rと同一にすると、窓領域40を囲む袖壁12L,12Rと中間壁16が一体の壁として統一感を持たせることができる。中間壁16の表面仕上げを一階天井部19や吊天井10と同一にすると、中間壁16を映像投影室1の天井の一部として意識させることができる。
【0031】
図2に示すように、吊天井10と一階天井部19よりも上方には、モータ部31と、吊下梁32と、セルフロック装置33とが配置されており、ドラム部34、ワイヤ35、吊ボルト36を用いて吊天井10が昇降可能に吊り下げられている。
【0032】
モータ部31は、図示しない電源と制御装置に接続されて、制御装置からの制御信号にしたがってドラム部34を回転する動力源である。吊下梁32は、吹抜空間2から納戸空間3にわたって延びる梁であり、吹抜天井部18にアンカー等によって吊り下げられている。吊下梁32には元滑車や枝滑車が設けられており、ワイヤ35が吊下梁32に沿って配線される。
【0033】
セルフロック装置33は、吊天井10の落下を防止するための安全装置であり、吹抜天井部にアンカー等によって吊り下げられている。セルフロック装置33では、ロープの先端を吊天井10の裏側に接続しておき、吊天井10が急激に落下した場合には機械的な減速機構や停止機構を作動させて、吊天井10が映像投影室1に落下することを防止する。
【0034】
ドラム部34は、モータ部31が供給する動力によって駆動される円筒状の装置であり、正方向および逆方向に回転することでワイヤ35の巻取りと送り出しを行う。ワイヤ35は、一端が吊ボルト36に接続され、他端がドラム部34に巻回されている。
図2に示すように、ワイヤ35はドラム部34から吊下梁32の元滑車と枝滑車を介して配線されており、枝滑車から鉛直方向に下ろされて吊ボルト36で吊天井10を吊り下げている。吊ボルト36は、吊天井10の裏面に固定されたボルトであり、ワイヤ35の一端が接続されている。
【0035】
また、昇降スクリーン14の背面側には窓領域40が設けられており、窓領域40の上方には中間壁16を介して上部窓領域41が設けられている。昇降スクリーン14はスクリーンケース50から下方に延伸され、下端に取り付けられたテンションバー51が床面11にまで到達している。したがって、映像投影室1の3面に映像を投影する際には、窓領域40と中間壁16と上部窓領域41は昇降スクリーン14の裏側に隠されている。
【0036】
窓領域40は、袖壁12R,12Lの間に設けられた窓であり、映像投影室1と外部空間とを隔てている。窓領域40には通常の住宅で用いられるガラス窓やサッシを用いることができ、掃出し窓等の各種構造を用いることができる。
【0037】
上部窓領域41は、中間壁16と上部壁17の間に設けられた窓であり、吹抜空間2と外部空間とを隔てている。上部窓領域41にも通常の住宅で用いられるガラス窓やサッシを用いることができる。また、窓領域40と上部窓領域41とを同様の材質で構成することで、後述するように吊天井10を最も高い位置にまで上昇させた際にも、映像投影室1の空間に統一性をもたせることができる。
【0038】
スクリーンケース50は、昇降スクリーン14を巻き取って収容する装置であり、電源および制御装置に接続されて、制御信号に従って昇降スクリーン14の巻取りと送り出しを行う。テンションバー51は、昇降スクリーン14の幅方向全体にわたって下端に取り付けられた円柱状の部材であり、昇降スクリーン14の所定のテンションをかけて平坦性を確保する。
【0039】
図1,2に示したように、吊天井10を最も下の位置にまで下ろした状態では、床面11からの高さH1は一階天井部19の高さと同一であり、例えば約2400mm等の一般の住宅における居室の天井高と同程度とする。また、床面11や袖壁12R,12L、側壁13,15、吊天井10、中間壁16、一階天井部19は通常の住宅で用いられる仕上げとされている。したがって、昇降スクリーン14を最も下の位置にまで下ろした状態では、来場者は映像投影室1を展示用住宅100の他室と同様の居室空間と認識し、居住空間での体験との連動性を高め演出効果が向上する。
【0040】
図4は、映像を投影している状態における室内を示す模式平面図である。映像投影室1にはプロジェクター等の映像投影装置20a~20dが配置されている。図中破線で示した直線は、映像投影装置20a~20dそれぞれから投影される映像光の範囲を示している。映像投影装置20a~20dを映像投影室1内に固定する方法は限定されず、吊天井10や一階天井部19にブラケットを用いて吊り下げるとしてもよく、映像投影室1の何れかの壁面にブラケットを用いて固定するとしてもよく、スタンドを用いて床面11上に配置するとしてもよい。
【0041】
映像投影装置20a~20dはそれぞれ電源および制御装置に接続されており、接続装置からの制御信号にしたがって映像の投影を行う。また、制御装置からは投影する映像の情報が映像投影装置20a~20dに送信されており、各映像投影装置20a~20dは映像信号にしたがって映像を投影する。
【0042】
図4に示した例では、映像投影装置20aは側壁13に対して映像を投影し、映像投影装置20bは昇降スクリーン14の右側と袖壁12Rに対して映像を投影し、映像投影装置20cは昇降スクリーン14の左側と袖壁12Lに対して映像を投影し、映像投影装置20dは側壁15に対して映像を投影している。
【0043】
このとき、映像投影装置20bと20cから投影される映像は、昇降スクリーン14上で重なり合っている。また、映像投影装置20aが投影する映像の端部は映像投影装置20cが投影する映像の端部と連続している。また、映像投影装置20dが投影する映像の端部は映像投影装置20cが投影する映像の端部と連続している。制御装置は、上記映像の重なりと連続性に基づき、各映像投影装置20a~20dに送信する映像情報を制御して1つの連続した映像を構成する。
【0044】
これにより、映像投影室1の三方向の面を構成している側壁13、袖壁12Lのうち昇降スクリーン14から露出した領域、昇降スクリーン14、袖壁12Rのうち昇降スクリーン14から露出した領域、および側壁15には連続した映像が投影される。このように、映像投影室1の3面に連続した映像を投影することで、来場者は3方向を映像で囲まれるため没入感が高まり、演出効果を向上させることができる。
【0045】
図4では映像投影装置20a~20dを4台用いた例を示したが、映像投影室1の3方向の面である側壁13,15と袖壁12R,12Lと昇降スクリーン14に対して映像を投影できればどのような構成であってもよい。また、映像投影装置20a~20dの例としてプロジェクターを挙げたが、ミラーボールやレーザプロジェクション等の投影技術やプロジェクションマッピング技術などを用いるとしてもよい。
【0046】
次に、映像投影後の映像投影室1について
図5~
図8を用いて説明する。
図5は、映像投影終了後に昇降スクリーン14を巻き上げている途中の室内を示す模式図である。
図6は、
図5に示した状態を示す模式断面図である。
【0047】
制御装置は、映像投影装置20a~20dを用いた映像の投影が終了すると、昇降スクリーン14を巻き上げる。このとき、映像投影が終了するタイミングと、昇降スクリーン14の上昇を開始するタイミングを合わせることで、空間の変化をシームレスに違和感なく行うことができる。
【0048】
また、吊天井10は高さH1の状態で保持しておくことが好ましい。昇降スクリーン14が上昇するに従い、昇降スクリーン14で隠されていた袖壁12R,12Lと窓領域40および外部空間の庭等が映像投影室1内から見えるようになる。昇降スクリーン14の背面に隠されていた窓領域40が見えるようになると、映像投影室1は通常の住宅における居室である印象が強くなる。
【0049】
映像投影室1の3面に映像を投影している際は、来場者に映像投影室1内は投影された映像の世界に入り込んだような印象を与えるが、映像終了と共に昇降スクリーン14を上昇させることで、窓領域40と外部空間を見せることができる。これにより、来場者は映像で提供された印象を受けた状態で展示用住宅100の内容を見学することができ、演出効果を高めることができる。
【0050】
また、
図5,6に示した昇降スクリーン14の巻き上げ途中では、吊天井10の高さはH1で映像投影時と変化しないため、映像投影時と映像終了後の空間的な一体感も保持され、違和感なく展示用住宅100の見学に移行できる。
【0051】
図7は、吊天井10を最も高い位置にまで上昇させた状態の室内を示す模式図である。
図8は、
図7に示した状態を示す模式断面図である。吊天井10を最も高い位置にまで上昇させた際の高さはH2である。ここで高さH1は本発明における第1天井高に相当し、高さH2は本発明における第2天井高に相当している。上部窓領域は、高さH1よりも高くH2よりも低い位置に設けられている。
【0052】
制御装置は、昇降スクリーン14が高さH1よりも上昇した時点で、吊天井10の上昇を開始させる。このとき、昇降スクリーン14の上昇速度と吊天井10の上昇速度を合わせることで、空間の変化をシームレスに違和感なく行うことができる。
【0053】
昇降スクリーン14は高さH1よりも上に位置しているため、吊天井10によって隠されて映像投影室1からは視認できなくなる。吊天井10が上昇するに従い、吊天井10で隠されていた中間壁16と上部窓領域41が映像投影室1内から見えるようになる。吊天井10を最も高い位置に上昇させた後に、制御装置は照明器具10aを点灯する。
【0054】
吊天井10の高さがH1からH2に変化することで、映像投影室1の空間が広がり、映像投影時と昇降スクリーン14の巻き上げ時よりも解放感を高めることができる。また、昇降スクリーン14の上昇と吊天井10の上昇が連続して実行されるため、映像投影室1内にいる来場者の視線は自然に窓領域40およびその上方に誘導される。これにより、吊天井10で隠されていた中間壁16と上部窓領域41の存在と、外部空間とのつながりをより強く認識させることができる。
【0055】
また、上部窓領域41を介して外部領域を視認できるため、映像投影室1内から庭の高い位置や空を見ることができ、さらに解放感を高めることができる。このように、映像投影から昇降スクリーン14の巻き上げ、吊天井10の上昇までを一連の動作として制御装置が実行することで、来場者は一連の場面転換を違和感なく体験でき、演出効果が高まる。
【0056】
例えば、高さH1を一般の住宅における天井高である約2400mm程度とし、高さH2を約3500mm程度とすると、天井の高い居室空間における視界の広さや解放感、屋外空間との連続性を強調することができる。
【0057】
図8に示しように、スクリーンケース50は、吊天井10が最も高い位置にまで上昇された高さH2よりも高い位置に設けられている。したがって、昇降スクリーン14のスクリーン面を最上位置まで巻き上げた状態では、スクリーンケース50は吊天井10によって隠蔽される。
【0058】
図9は、昇降スクリーン14とスクリーンケース50の構造を示す模式断面図である。スクリーンケース50は、上部壁17の吹抜空間2側に取り付けられており、内部に昇降スクリーン14とテンションバー51と光漏洩防止部52とロール部53を収容している。
【0059】
光漏洩防止部52は、昇降スクリーン14のスクリーン面と同一素材の生地であり、テンションバー51の幅方向全域にわたって上部壁17側に取り付けられて、テンションバー51よりも下方に延出されている。光漏洩防止部52を設けることで、テンションバー51が床面11に接触した状態では、テンションバー51と床面11とのわずかな間隙も光漏洩防止部52で遮ることができ、窓領域40から映像投影室1内に光が漏洩することを防止できる。ロール部53は、スクリーンケース50の内側に取り付けられ、昇降スクリーン14のスクリーン面を巻き取る円柱状の部材である。
【0060】
また展示用住宅100では、吹抜空間2内が明るくなると、一階天井部19や上部壁17、側壁13,15等と吊天井10との隙間から吹抜空間2内部が見えてしまうため好ましくない。昇降スクリーン14を上部窓領域41よりも下方に下ろした状態では、昇降スクリーン14によって上部窓領域41が覆われるため、吹抜空間2への光の侵入が防止される。また、昇降スクリーン14が上部窓領域41よりも上方に上げた状態では、スクリーンケース50が吹抜空間2に入る光を遮り、吹抜空間2内が明るくなることを防止できる。
【0061】
上述したように、本発明の展示用住宅100では、映像投影室1の3面に連続した映像を投影することで、来場者は3方向を映像で囲まれるため没入感が高まり、演出効果を向上させることができる。また、昇降スクリーン14を最も下の位置にまで下ろした状態では、来場者は映像投影室1を展示用住宅100の他室と同様の居室空間と認識し、居住空間での体験との連動性を高め演出効果が向上する。
【0062】
また、映像投影から昇降スクリーン14の巻き上げ、吊天井10の上昇までを一連の動作として制御装置が実行することで、来場者は一連の場面転換を違和感なく体験でき、演出効果が高まる。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
100…展示用住宅
1…映像投影室
2…吹抜空間
3…納戸空間
10…吊天井
10a…照明器具
11…床面
12R,12L…袖壁
13,15…側壁
14…昇降スクリーン
16…中間壁
17…上部壁
18…吹抜天井部
19…一階天井部
19a…衝立部
20a~20d…映像投影装置
31…モータ部
32…吊下梁
33…セルフロック装置
34…ドラム部
35…ワイヤ
36…吊ボルト
40…窓領域
41…上部窓領域
50…スクリーンケース
51…テンションバー
52…光漏洩防止部
53…ロール部