(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】点検システム、点検支援方法および点検支援プログラム
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20221206BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20221206BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20221206BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20221206BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20221206BHJP
G06K 7/14 20060101ALI20221206BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02G1/02
B64D47/08
B64C39/02
B64C13/18 Z
H02G7/00
G06K7/14 017
G06K7/10 412
(21)【出願番号】P 2018211565
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】片本 隆
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/163699(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199940(WO,A1)
【文献】特開2017-124666(JP,A)
【文献】国際公開第2018/138942(WO,A1)
【文献】特開2005-265699(JP,A)
【文献】特開平02-036707(JP,A)
【文献】特開2013-130919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00-1/10
H02G 7/00-7/22
B64D 47/08
B64C 39/02
B64C 13/18
G06K 7/14
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象物を目視することによっておこなう点検作業に用いる点検システムであって、
前記点検対象物において、目視による点検が必要な各所に設けられる、外形が同じサイズの複数のマークと、
カメラを搭載した無人航空機と、
前記無人航空機に搭載され、当該無人航空機の飛行動作および前記カメラの撮影動作を制御して
、前記カメラが撮影する画像において前記複数のマークのそれぞれが均等な大きさになるように、前記複数のマークのうち前記カメラの撮像範囲内に存在するマークにピントを合わせた画像を撮影する
ことで、前記点検作業に供する当該マーク周辺の前記点検対象物の画像情報を取得する制御部と、
を備えたことを特徴とする点検システム。
【請求項2】
前記複数のマークは、それぞれ固有の識別情報を示すことを特徴とする請求項
1に記載の点検システム。
【請求項3】
前記複数のマークは、コード情報を含むことを特徴とする請求項
2に記載の点検システム。
【請求項4】
前記コード情報は、次の撮影位置に関する情報を含み、
前記制御部は、前記カメラが撮影する画像に含まれる前記コード情報に基づいて次の撮影位置を特定し、前記無人航空機の飛行動作および前記カメラの撮影動作を制御して、特定された次の撮影位置の画像を撮影する、
ことを特徴とする請求項
3に記載の点検システム。
【請求項5】
前記無人航空機に搭載され、前記制御部の制御によって前記カメラが撮影した画像を記憶する記憶部を備えたことを特徴とする請求項1~
4のいずれか一つに記載の点検システム。
【請求項6】
前記カメラが撮影した画像を、無線通信により所定の外部装置に出力することを特徴とする請求項1~
5のいずれか一つに記載の点検システム。
【請求項7】
点検対象物を目視することによっておこなう点検作業を支援する点検支援方法であって、
カメラを搭載する無人航空機のコンピュータが、
前記カメラが撮影する画像において、
前記点検対象物
の目視による点検が必要な各所に設けられ
、外形が同じサイズの複数のマークのそれぞれが均等なサイズになるように、当該無人航空機の飛行動作および当該カメラの撮影動作を制御して、前記複数のマーク
のうち前記カメラの撮像範囲内に存在するマークにピントを合わせた画像を撮影することで、前記点検作業に供する当該マーク周辺の前記点検対象物の画像情報を取得する、
ことを特徴とする点検支援方法。
【請求項8】
点検対象物を目視することによっておこなう点検作業を支援する点検支援プログラムであって、
カメラを搭載する無人航空機のコンピュータに、
前記カメラが撮影する画像において、
前記点検対象物
の目視による点検が必要な各所に設けられ
、外形が同じサイズの複数のマークのそれぞれが均等なサイズになるように、当該無人航空機の飛行動作および当該カメラの撮影動作を制御して、前記複数のマーク
のうち前記カメラの撮像範囲内に存在するマークにピントを合わせた画像を撮影させることで、前記点検作業に供する当該マーク周辺の前記点検対象物の画像情報を取得させる、
ことを特徴とする点検支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄塔などの電気設備の点検に用いる点検システム、点検支援方法および点検支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電線や鉄塔などの電気設備の点検作業は、作業員が鉄塔へ昇塔して電気設備を目視することによって実施していた。目視は、鉄塔上部の他、地上から、直接あるいは双眼鏡を用いておこなっていた。作業員の目視によって電気設備の点検作業をおこなう場合、作業員の安全を確保するために、制御所での給電操作によって該当線路を停電させるなどの安全措置をとる必要があった。
【0003】
また、従来、ドローンやラジコンヘリコプターなどのような無人航空機にカメラを搭載し、当該カメラによって撮影した画像を確認することによって送電線や鉄塔などの電気設備の点検作業を実施する技術が考案されている。このような技術においては、無人航空機を、無線を利用した作業者による遠隔操作によって飛行させたり、点検対象とする送電線や鉄塔などの電気設備との安全離隔を確保しながら自動操縦により飛行させたりすることができる。また、このような技術においては、無人航空機に搭載されたカメラのフォーカスを、手動で調整したり、自動で調整したり(オートフォーカス)して撮影をおこなうことができる。
【0004】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、受信したGPS信号に基づいて電線に沿って予め定められた飛行経路に沿うように飛行動作を制御するとともに、電線を流れる電流が生成する磁束を受信することによりアンテナに流れる誘導電流の大きさに基づいて電線との距離を一定に保つように飛行動作を制御する無人飛行体および飛行システムに関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0005】
また、関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、遠隔操作可能な推進装置およびカメラを搭載した本体フレームを、調査対象の構造物を構成する一部部材の長手方向に沿って遠隔操作によって移動させるとともに、移動に際して本体フレームに干渉する一部部材をガイド部として当該本体フレームの一部を形成させることによって当該一部部材を回避するようにした近接目視装置システムに関する技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-114807号公報
【文献】特開2017-166241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、作業員の目視によって電気設備の点検作業をおこなう従来の技術は、該当線路を停電させなくてはならないため、電力系統の状況による送電線停止制約があると該当線路の停電ができず、点検作業をおこなうことができないという問題があった。また、高所において電気設備の点検作業をおこなう作業員は、鉄塔昇降の技能や、安全帯(胴綱)などの安全防護具の使用に関する知識や技術などを身に付けた作業員に限定されるという問題があった。
【0008】
また、無人航空機に搭載されたカメラにより撮影された画像に基づいて電気設備の点検作業をおこなう従来の技術は、撮影したい箇所のすべてを撮影できているかを確認することができず、点検結果の信頼性に劣るという問題があった。また、鉄塔を構成する鉄塔部材や送電線などの撮影対象物は類似した構造や部位が多く、点検対象設備数が多いことから、撮影した映像を確認する際に、どの鉄塔のどこを撮影した画像であるかがわかりづらく点検結果の信頼性に劣るという問題があった。
【0009】
さらに、無人航空機に搭載されたカメラにより撮影された画像に基づいて電気設備の点検作業をおこなう従来の技術は、安全離隔を確保するために電気設備から離間した状態で撮影するため、鉄塔を構成する鉄塔部材や送電線などの撮影対象物が、周囲の非撮影対象物に比べ細くなりがちであり、また撮影対象物の色彩が低いことから、撮影対象物にピントが合いにくく、背景などの非撮影対象物にピントが合ってしまい、撮影対象の高精細な画像が得られず、点検結果の信頼性に劣るという問題があった。
【0010】
また、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、直流パルスを発生させるパルス発生装置が必須であり、また、点検作業に先立ちパルス発生装置を設置し、点検作業後にパルス発生装置を撤去する作業をおこなわなくてはならず、作業が煩雑であるという問題があった。
【0011】
また、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、無人飛行体が電線との距離を一定に保って飛行できる範囲が、パルス発生装置が発生した直流パルスが還流する範囲に制限されるため、飛行経路(電力系統)ごとに、パルス発生装置の設置作業および撤去作業を複数回にわたっておこなわなくてはならず、作業が煩雑になるという問題があった。
【0012】
また、上述した特許文献2に記載された従来の技術は、本体フレームを取り付けることができる調査対象物が、橋桁の下フランジのように特定の形状をなす構造物に限定されるため、送電線や鉄塔などのように多様な形状をなす送電設備の巡視をおこなうことは難しいという問題があった。さらに、上述した特許文献2に記載された従来の技術は、作業者による遠隔操作が必要であるため、作業が煩雑になるという問題があった。
【0013】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、電気設備の点検作業を精度よくおこなって点検結果の信頼性を確保することができる点検システム、点検支援方法および点検支援プログラムを提供することを目的とする。
【0014】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、電気設備の点検作業にかかる作業者の負担軽減を図るとともに、作業者の安全性を確保することができる点検システム、点検支援方法および点検支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる点検システムは、点検対象物に取り付けられた複数のマークと、カメラを搭載した無人航空機と、前記無人航空機に搭載され、当該無人航空機の飛行動作および前記カメラの撮影動作を制御して前記複数のマークのうち前記カメラの撮像範囲内に存在するマークにピントを合わせた画像を撮影する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる点検システムは、上記の発明において、前記複数のマークが、外形が同じサイズであり、前記制御部が、前記カメラが撮影する画像において前記複数のマークのそれぞれが均等な大きさになるように当該無人航空機の飛行動作および当該カメラの撮影動作を制御することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる点検システムは、上記の発明において、前記複数のマークが、それぞれ固有の識別情報を示すことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる点検システムは、上記の発明において、前記複数のマークが、コード情報を含むことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる点検システムは、上記の発明において、前記コード情報が、次の撮影位置に関する情報を含み、前記制御部が、前記カメラが撮影する画像に含まれる前記コード情報に基づいて次の撮影位置を特定し、前記無人航空機の飛行動作および前記カメラの撮影動作を制御して、特定された次の撮影位置の画像を撮影する、ことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる点検システムは、上記の発明において、前記無人航空機に搭載され、前記制御部の制御によって前記カメラが撮影した画像を記憶する記憶部を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる点検システムは、上記の発明において、前記カメラが撮影した画像を、無線通信により所定の外部装置に出力することを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる点検支援方法は、カメラを搭載する無人航空機のコンピュータが、前記カメラが撮影する画像において、点検対象物に取り付けられて外形が同じサイズの複数のマークのそれぞれが均等なサイズになるように、当該無人航空機の飛行動作および当該カメラの撮影動作を制御して前記複数のマークを撮影し、撮影された画像を出力する、ことを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる点検支援プログラムは、カメラを搭載する無人航空機のコンピュータに、前記カメラが撮影する画像において、点検対象物に取り付けられて外形が同じサイズの複数のマークのそれぞれが均等なサイズになるように、当該無人航空機の飛行動作および当該カメラの撮影動作を制御させて前記複数のマークを撮影させ、撮影された画像を出力させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
この発明にかかる点検システム、点検支援方法および点検支援プログラムによれば、電気設備の点検作業を精度よくおこなって点検結果の信頼性を確保することができるという効果を奏する。
【0025】
また、この発明にかかる点検システム、点検支援方法および点検支援プログラムによれば、電気設備の点検作業にかかる作業者の負担軽減を図るとともに、作業者の安全性を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明にかかる実施の形態の点検システムのシステム構成を示す説明図である。
【
図3】無人航空機のハードウエア構成を示す説明図である。
【
図4】コントローラのハードウエア構成を示す説明図である。
【
図5】無人航空機の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる点検システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
(点検システムのシステム構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の点検システムのシステム構成について説明する。
図1は、この発明にかかる実施の形態の点検システムのシステム構成を示す説明図である。
図1において、この発明にかかる実施の形態の点検システム100は、複数のマーク101が取り付けられた鉄塔102や架空送電線103などの点検対象物を、無人航空機104に搭載されたカメラ114によって撮影する。
【0029】
点検対象物は、具体的には、たとえば、鉄塔102のほか、高層の建造物によって実現することができる。また、点検対象物は、具体的には、たとえば、鉄塔102間に張り渡された架空送電線103のほか、当該架空送電線103を支持する碍子連105や、建造物の頂部など高所に設置されている部材によって実現することができる。
【0030】
鉄塔102は、基礎部106と、鉄塔上部構造物107と、によって構成されている。基礎部106は、たとえば、掘削穴内に据え付けられた基礎材や当該掘削穴内に充填されたコンクリートなどによって構成される。鉄塔上部構造物107は、主柱材(メインポスト)108、腕金部材(アーム)109、斜材(ブレーシング)110、水平材111などの各鉄塔部材を、図示を省略するボルトなどを用いて固定することによって構成されている。
【0031】
主柱材108、腕金部材109、斜材110などの鉄塔部材は、たとえば、主柱材108に溶接などの方法で設けられた主柱材プレート(図示を省略する)に、腕金部材109、斜材110、水平材111などの端部をボルトで固定することによって互いに連結されていてもよい。鉄塔102は、さらに、対辺材、補助材、対角材などの鉄塔部材を含んで構成されていてもよい。各鉄塔部材は、たとえば、重防食塗装により灰色に塗装されたアングル材(
図1における吹き出し部を参照)によって実現することができる。
【0032】
主柱材108は、基礎部106から起立して設けられる。主柱材108は、鉄塔102を水平方向に切断した断面がなす四角形の頂点に位置するように設けられる。主柱材108は、腕金部材109を所定の高さにおいて支持する。腕金部材109は、主柱材108に固定され、腕金を構成する。腕金部材109は、主柱材108がなす四角形の外周側に向かって、水平方向に沿って突出している。腕金は、先端部分において、架空送電線103を支持する。
【0033】
斜材110は、水平方向および鉛直方向に対して傾斜させた状態で、隣接する主柱材108の間に架け渡されている。斜材110を設けることにより、鉄塔上部構造物107の強度を高めることができる。水平材111は、水平方向に沿って、隣接する主柱材108の間に架け渡されている。対辺材は、鉄塔102を水平方向に切断した断面において隣り合う水平材111の中央どうしをつなぐように、当該隣り合う水平材111の間に架け渡されている。
【0034】
対角材は、主柱材108がなす四角形の対角に位置する主柱材108の間に架け渡されている。同一水平面内において主柱材108がなす四角形の対角線が交差する位置には、対角材を支持する鋼板が設けられていてもよい。対角材は、たとえば、腕金部材109と同じ高さに設けられている。
【0035】
鉄塔102および架空送電線103には、複数のマーク101が設けられている。マーク101は、各鉄塔部材における所定の位置、鉄塔部材どうしの交点など、目視による点検が必要な各所に設けられている。マーク101は、主柱材108、腕金部材109、斜材110などの各鉄塔部材、および、架空送電線103のそれぞれに、1または複数設けられている。
【0036】
複数のマーク101は、それぞれ、外形が同じサイズであり、固有の識別情報を示す。固有の識別情報は、たとえば、鉄塔102における各マーク101の位置を示す。また、固有の識別情報は、さらに、各マーク101が取り付けられた鉄塔102の識別情報を示すものであってもよい。
【0037】
マーク101は、たとえば、コード情報によって実現することができる。具体的には、コード情報は、たとえば、QR(Quick Response)コード(登録商標)などの2次元コードによって実現することができる。コード情報は、QRコードに限るものではなく、マイクロQRコード、iQRコード、DataMatrix、MaxiCode、PDF417、MicroPDF417など、公知の各種の2次元コードを用いることができる。
【0038】
2次元コードは、当該2次元コードの記録面における縦方向および横方向に情報を持っているため、面積あたりの情報密度が高い。このため、鉄塔番号、各鉄塔102におけるマーク101の位置などの情報を、2次元コードに含めることができる。また、2次元コードは、各鉄塔所在地に関する情報を含んでいてもよい。
【0039】
2次元コードは、データの誤り検出機能と訂正機能を備えているため、2次元コードが汚れていたり一部が破損していたりしても、汚れや破損している面積が所定範囲内であれば、データを復元することができる。これによって、屋外に設置される鉄塔102や架空送電線103などの電気設備を長期にわたって確実に識別することができる。
【0040】
2次元コードは、それぞれ、次の撮影位置に関する情報を含んでいてもよい。次の撮影位置は、たとえば、移動先の3次元位置座標を示す情報などによって特定することができる。あるいは、次の撮影位置は、たとえば、無人航空機104の現在の3次元位置座標と、移動先の3次元位置座標との差分値を示す情報によって特定されるものであってもよい。次の撮影位置に関する情報は、無人航空機104を、移動先の3次元位置座標によって特定される位置まで飛行させるプログラムによって実現してもよい。
【0041】
また、2次元コードは、それぞれ、前の撮影位置に関する情報を含んでいてもよい。前の撮影位置は、次の撮影位置と同様に、たとえば、移動先の3次元位置座標を示す情報や、無人航空機104の現在の3次元位置座標と前の撮影位置の3次元位置座標との差分値を示す情報などによって特定することができる。
【0042】
コード情報は、2次元コードに限るものではなく、バーコードなどの1次元コードによって実現されるものであってもよい。また、コード情報は、アルファベットや数字などの文字によって実現されるものであってもよい。この場合、マーク101は、アルファベットや数字などの文字の周囲を、同じサイズの枠画像によって囲んだ態様とすることが好ましい。
【0043】
無人航空機104は、遠隔操作や自動制御によって人が搭乗していない状態で飛行できる飛行体であって、具体的には、たとえば、ドローンと称される飛行体によって実現することができる。あるいは、無人航空機104は、たとえば、無線操縦が可能なラジコン型ヘリコプターなどによって実現してもよい。
【0044】
無人航空機104は、プロペラ112を備えた航空装置113と、レンズを備えたカメラ114と、を備えている。無人航空機104は、コントローラ115(
図4を参照)などを用いた作業員116による遠隔操作を必要とせず、自律飛行することができる。無人航空機104は、コントローラ115を用いた作業員116の遠隔操作によって飛行するものであってもよい。無人航空機104については、
図2および
図3を参照して以下に説明する。
【0045】
(無人航空機104の外観構成)
つぎに、無人航空機104の外観構成について説明する。
図2は、無人航空機104の外観構成を示す説明図である。
図2において、無人航空機104の航空装置113は、筐体と、筐体に取り付けられたプロペラ112と、を備えている。
【0046】
航空装置113は、具体的には、たとえば、4つのプロペラ112を備えたクアッドコプター、6つのプロペラ112を備えたヘキサコプター、8つのプロペラ112を備えたオクトコプターなど、各種のマルチコプターによって実現することができる。マルチコプターによって無人航空機104を実現することにより、プロペラ112の回転数を調整するだけで、前進後退の移動やホバリングをおこなわせることができ、無人航空機104の良好な操作性を確保することができる。
【0047】
カメラ114は、レンズ201の画角内に含まれる画像を撮影する。カメラ114が撮影する画像は、静止画であってもよく、動画であってもよい。カメラ114は、それぞれ、レンズ201を支持する筐体202や、撮像素子(
図3を参照)などを備えている。カメラ114の筐体202は、無人航空機104の筐体203と一体であってもよい。この場合、レンズ201は、無人航空機104の筐体203に取り付けられる。カメラ114は、たとえば、汎用的なデジタルカメラによって実現することができる。
【0048】
汎用的なデジタルカメラによってカメラ114を実現する場合、無人航空機104は、夜間の事故点探査に備え、撮像補助用の光源(図示を省略する)を備えていてもよい。撮像補助用の光源は、たとえば、高輝度LEDなどのように、軽量かつ低消費電力の発光体を用いることができる。
【0049】
カメラ114は、汎用的なデジタルカメラに限るものではなく、たとえば、光に対して感度を増幅させることによって暗い場所を撮影する暗視カメラや、赤外線に感度を有する赤外線カメラによって実現してもよい。このような赤外線カメラを搭載することにより、夜間の事故点探査をおこなう場合にも、撮像補助用の光源を用いることなく鮮明な画像を得ることができる。これによって、無人航空機104の重量や消費電力の増大を抑制することができる。
【0050】
カメラ114は、レンズ201を可動式とし、撮像範囲を変更・調整できるように構成してもよい。また、レンズ201を等距離射影方式の魚眼レンズとしてもよい。180度以上の画角を有する魚眼レンズを用いることにより、無人航空機104の軽量化を図るため、小型のカメラ114を用いる場合にも広範囲を撮像し、無人航空機104を遠隔操作する作業員116に提供する情報を多くすることができる。
【0051】
無人航空機104は、2台以上のカメラ114を搭載していてもよい。この場合、それぞれのカメラ114は、無人航空機104の周囲のうち、同時にそれぞれが異なる範囲を撮像するように取り付けられている。この場合、各カメラ114の撮像範囲は固定されているものに限らず、各カメラ114におけるレンズ201などをそれぞれ可動式とし、カメラ114ごとに撮像範囲を変更・調整できるように構成してもよい。
【0052】
(無人航空機104のハードウエア構成)
つぎに、無人航空機104のハードウエア構成について説明する。
図3は、無人航空機104のハードウエア構成を示す説明図である。
図3において、無人航空機104のハードウエアは、カメラ114、GPS(Global Positioning System)受信機301、無線機302、各種センサ303、FC(Flight Controller)304、ESC(Electronic Speed Controller)305、モータ306、制御回路307、通信I/F(InterFace)308によって構成される。
【0053】
カメラ114は、撮像素子309と、画像処理回路310と、を備えている。撮像素子309は、レンズ201を介して入射した光を電気信号に変換する素子であって、具体的には、たとえば、CCD(Charge Coupled Devices)素子やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)素子によって実現することができる。
【0054】
画像処理回路310は、撮像素子309から出力される電気信号に基づいて画像処理をおこない、撮影画像データを生成する。画像処理回路310は、具体的には、たとえば、デモザイク処理、ノイズ除去処理、階調補正処理などの各種の画像処理をおこなう。画像処理回路310は、生成した撮影画像データを、制御回路307に出力する。
【0055】
カメラ114は、オートフォーカス機能を備えている。カメラ114は、制御回路307によって駆動制御される。具体的に、カメラ114は、制御回路307から出力される制御信号に基づいて、オートフォーカス機能を作動させ、撮影した画像におけるマーク101にピントを合わせるように動作する。
【0056】
オートフォーカス機能は、たとえば、カメラ114のレンズ201を動かしながら、撮像素子309から得られる画像データのコントラスト情報を逐次解析し、コントラストの変化の傾向に基づいてピントを合わせるコントラストAF(AutoFocus)を採用することができる。コントラストAFを採用することにより、カメラ114の小型軽量化を図り、無人航空機104の軽量化を図ることができる。
【0057】
GPS受信機301は、GPSアンテナ311と、RF(Radio Frequency)部312と、ベースバンド部313と、を備えている。GPSアンテナ311は、GPS衛星が放送する電波を受信する。RF部312は、GPSアンテナ311が受信した変調前の信号をベースバンド信号に復調する。ベースバンド部313は、RF部312が復調したベースバンド信号に基づいて無人航空機104の現在位置を算出する。GPS受信機301は、ベースバンド部313によって算出した無人航空機104の現在位置に関する情報を、制御回路307に出力する。
【0058】
無人航空機104の現在位置は、複数のGPS衛星から送信される電波に基づく測位によって特定することができる。ベースバンド部313は、4機のGPS衛星との距離をそれぞれ算出し、それぞれの距離が一つに交わる位置を算出することによって測位をおこなう。GPS衛星から受信した電波に基づいて、GPS衛星と無人航空機104との幾何学的位置を求めるGPSに代えて、みちびき、グローナス(GLONASS)、ガリレオ(Galileo)などの衛星測位システムを用いて無人航空機104の現在位置を特定してもよい。
【0059】
無線機302は、アンテナ314と、RF部315と、ベースバンド部316と、を備えている。アンテナ314は、電磁波を受信してアナログの電気信号に変換する。RF部315は、アンテナ314が受信した変調前のアナログの電気信号をベースバンド信号に復調する。ベースバンド部316は、RF部315が復調したベースバンド信号を制御回路307に出力する。
【0060】
また、ベースバンド部316は、制御回路307から出力された各種の情報を、RF部315に出力する。RF部315は、ベースバンド部316からD/A変換されて出力されたアナログ信号の信号処理をおこないアンテナ314に出力する。アンテナ314は、制御回路307から出力される電気信号を電磁波に変換して、外部に出力する。
【0061】
無線機302は、無人航空機104が作業員116によるコントローラ115を用いた遠隔操作によって飛行する場合に、当該コントローラ115との間で電磁波の送受信をおこなう。これにより、作業員116による無人航空機104の遠隔操作を実現することができる。無線機302は、さらに、不要成分を除去するフィルタや、LNA(Low Noise Amplifier)やパワーアンプPA(Power Amplifier)などの増幅器を備えていてもよい。
【0062】
各種センサ303は、たとえば、ジャイロセンサ、加速度センサ、気圧センサ、地磁気センサ(コンパス)などによって実現される。ジャイロセンサは、無人航空機104の軸方向の回転(角速度)を検出し、検出結果を制御回路307に出力する。加速度センサは、無人航空機104に働く前後・左右・上下方向の加速度を検出し、検出結果を制御回路307に出力する。
【0063】
気圧センサは、気圧に基づいて無人航空機104が現在位置する高度を検出し、検出結果を制御回路307に出力する。気圧センサは、ピエゾ抵抗方式、静電容量方式、成膜方式など公知の各種の方式を利用して気圧を検出する。地磁気センサは、地磁気の大きさや方向を検出し、検出結果を制御回路307に出力する。位置情報のみを取得するGPS受信機301に加えて地磁気センサを備えることにより、航空装置113の向きを検出することができる。
【0064】
FC304は、無人航空機104の飛行動作や飛行姿勢を制御する。FC304は、たとえば、各種センサ303からの出力信号に基づく制御信号を、ESC305に出力することによって、無人航空機104の飛行動作や飛行姿勢を制御する。具体的に、FC304は、プロペラ112(プロペラ112のモータ306)の回転方向や回転数を制御する制御信号を出力する。
【0065】
より具体的に、FC304は、たとえば、隣り合うプロペラ112どうしを逆回転させるように制御することによって自装置の回転を防止する。また、FC304は、たとえば、前方のプロペラ112を後方のプロペラ112よりも遅く回転させるように制御することによって自装置を前進させる。また、FC304は、たとえば、右側のプロペラ112を左側のプロペラ112よりも遅く回転させるように制御することによって自装置を右方向に旋回させる。
【0066】
また、FC304は、制御回路307からの出力信号に応じた制御信号を生成し、生成した制御信号をESC305に出力する。FC304は、無人航空機104の飛行中、各種センサ303から出力される信号に基づいて無人航空機104の傾きなどを検知して演算を繰り返しおこない、ESC305に対して制御信号を再帰的に出力する。
【0067】
ESC305は、FC304から出力される制御信号に基づいて、モータ306の回転スピードを調整する。具体的に、ESC305は、FC304から出力される制御信号に基づいて、モータ306に印加する電圧を調整する。ESC305はモータ306ごとに設けられているため、モータ306ごとに印加する電圧を調整することができ、これによりプロペラ112ごとに回転数を調整することができる。マルチコプターによって航空装置113を実現することにより、プロペラ112の回転数を調整するだけで、前進後退の移動やホバリングをおこなわせることができ、航空装置113の良好な飛行性を確保することができる。
【0068】
制御回路307は、CPUやメモリなどによって構成され、無人航空機104が備える各部を駆動制御する。メモリは、各種の制御プログラムを記憶している。メモリは、航空装置113に対して取り外し可能に取り付けられていてもよい。CPUは、メモリに記憶された制御プログラムに基づいて演算を実行することにより、無人航空機104の飛行や飛行姿勢、および、カメラ114の撮影動作などを制御する。
【0069】
具体的に、CPUは、カメラ114が撮影する画像のピントが、撮像範囲内に存在するマーク101に合うように、カメラ114による撮影動作を制御する。また、具体的に、CPUは、カメラ114による撮影画像に基づいて、マーク101が設けられている位置を示す位置情報を特定し、特定した位置情報を、撮影画像と関連付けた画像情報をメモリに記憶する。画像情報は、撮影日時に関する情報を含んでいてもよい。
【0070】
CPUは、通信I/F308を介して外部装置から所定のコマンドを受け付けた場合に、メモリに記憶した画像情報を、通信I/F308を介して外部装置に出力する。外部装置は、たとえば、スマートフォンやタブレット端末などのような通信機能を備えた端末装置によって実現することができる。
【0071】
メモリが航空装置113に対して取り外し可能に取り付けられている場合、メモリを航空装置113から取り外して外部装置に装着し、外部装置に対する入力操作によって、メモリに記憶した画像情報を、メモリから外部装置へ直接出力するようにしてもよい。また、CPUは、画像情報をメモリに記憶せず、カメラ114が撮影する画像に基づく画像情報を通信I/F308を介して外部装置へ出力するようにしてもよい。
【0072】
そして、撮影した画像をスマートフォンなどの外部装置に出力することにより、当該画像に含まれるマーク101を認識して解析し、どこの位置をいつ撮影した画像であるかを判定する処理を、当該外部装置においておこなうことができる。これにより、制御回路307の処理負担の軽減を図ることができる。
【0073】
また、撮影した画像におけるマーク101を認識して解析し、どこの位置をいつ撮影した画像であるかを判定する処理を、外部装置においておこなうことにより、従来、点検作業の現場においておこなっていた、当該現場の位置や点検日時などをメモするなどして記録する作業を不要とすることができる。電気設備などの点検対象物の点検作業にかかる作業員116の負担軽減を図り、作業効率の向上を図ることができる。
【0074】
また、具体的に、CPUは、カメラ114が撮影する画像において、複数のマーク101のそれぞれが均等な大きさになるように無人航空機104の飛行動作を制御して、点検対象物と無人航空機104との距離を調整する。また、具体的に、CPUは、カメラ114による撮影画像に基づいて、次の撮影位置を特定し、特定した次の撮影位置に基づいて無人航空機104の飛行位置を指定する制御信号をFC304に出力する。これにより、作業員116による操作を介することなく、いわゆる自動操縦によって、次の撮影位置まで無人航空機104を移動させることができる。この実施の形態においては、制御回路307によって、この発明にかかる制御部を実現することができる。
【0075】
無人航空機104が作業員116によるコントローラ115を用いた遠隔操作によって飛行する場合、FC304は、コントローラ115との通信が不能になった場合に、自装置を、あらかじめ定められた基準地点に自動帰還させるように制御信号を出力する。基準地点は、たとえば、作業員116が所属する事業所の位置であって、基準地点に関する情報は、たとえば、制御回路307を構成するメモリに記憶されている。
【0076】
無人航空機104は、さらに、モータ306を駆動させる第1のバッテリと、制御回路307、FC304、各種センサ303を動作させる第2のバッテリと、を備えている(いずれも図示を省略する)。第1のバッテリは、ESC305を介してモータ306と直接接続されている。第2のバッテリは、第2のバッテリからの電圧を所定電圧まで降圧する専用の半導体部品を介して、FC304や各種センサ303と接続されている。バッテリは、たとえば、リチウムポリマーバッテリを用いることができる。また、バッテリは、水素電池などであってもよい。あるいは、バッテリは、無線給電によって給電可能な二次電池であってもよい。
【0077】
(コントローラ115のハードウエア構成)
つぎに、コントローラ115のハードウエア構成について説明する。
図4は、コントローラ115のハードウエア構成を示す説明図である。
図4において、コントローラ115は、CPU401、メモリ402、通信I/F403、操作部404、ディスプレイ405などを備えている。コントローラ115は、たとえば、スマートフォンやタブレット端末などのような通信機能を備えた端末装置によって実現することができる。
【0078】
操作部404は、たとえば、コントローラ115の電源のON/OFFを切り替える電源スイッチや、あらかじめ設定された帰還地点に戻るRTH(Return To Home)スイッチなどの各種スイッチ(図示を省略する)によって実現することができる。また、操作部404は、操作されることによって、作業員116の操作を介することなく無人航空機104を飛行させ、点検対象を撮影させる、いわゆる自動点検の開始を指示するスイッチによって実現することができる。操作部404は、たとえば、スロットル制御棒や方向操作棒などの操作部(操作スティック)などによって実現してもよい。
【0079】
CPU401は、電源がONの状態において、メモリ402に記憶された制御プログラムに基づいて演算を実行することにより、通信I/F403を介した無人航空機104との通信を制御する。CPU401は、たとえば、操作部404に対する操作に応じて、無人航空機104における航空装置113やカメラ114に対する動作指示を出力する。
【0080】
また、CPU401は、たとえば、無人航空機104と通信をおこなうことにより、無人航空機104から出力される信号や無人航空機104に搭載されたカメラ114が撮影した画像を受信する。また、CPU401は、無人航空機104から出力された画像を、ディスプレイ405に表示する。ディスプレイ405は、たとえば、液晶ディスプレイによって実現することができる。
【0081】
コントローラ115は、ディスプレイをあらかじめ備えたものに限らない。スマートフォンやタブレット端末などのディスプレイを備えた別体の端末装置を装着することによって当該別体の端末装置が備えるディスプレイに画像を出力して表示させるものであってもよい。
【0082】
また、コントローラ115は、通信距離を伸ばすためにWi-Fi(登録商標)の電波を増幅させる増幅機構を備えていてもよい。これにより、点検対象とする鉄塔102の高さにかかわらず、点検作業を確実におこなうことができる。なお、コントローラ115は、スマートフォンやタブレット端末などのような通信機能を備えた端末装置によって実現するものに限らず、スカイコントローラなどと称される、ディスプレイをあらかじめ備え、無人航空機104の操縦を専用におこなうものであってもよい。
【0083】
(無人航空機104の処理手順)
つぎに、無人航空機104の処理手順について説明する。
図5は、無人航空機104の処理手順を示すフローチャートである。
図5のフローチャートにおいて、まず、無人航空機104の電源が投入されるまで待機する(ステップS501:No)。
【0084】
ステップS501において、無人航空機104の電源が投入されると(ステップS501:Yes)、カメラ114を起動し(ステップS502)、カメラ114によって当該カメラ114の画角内に収まる画像を撮影する(ステップS503)。そして、自動点検のスイッチが操作されるまで(ステップS505:No)、通信I/F308を介して、コントローラ115に対して、カメラ114が撮影する画像を出力する。(ステップS504)。ステップS502において起動したカメラ114は、ステップS503以降、継続して画像を撮影する。
【0085】
コントローラ115は、カメラ114が撮影した画像を無人航空機104から受信すると、受信した画像をディスプレイ405に表示する。これにより、作業員116は、カメラ114の向きを把握することができる。点検システム100の運用において、作業員116は、電源を投入した後、ディスプレイ405に表示された画像を見ながらコントローラ115を操作して、鉄塔102に取り付けられた複数のマーク101のうちのいずれかのマーク101が表示される位置に無人航空機104を飛行させる。そして、ディスプレイ405にマーク101が表示された状態で、自動点検のスイッチを操作する。
【0086】
ステップS505において、自動点検のスイッチが操作された場合(ステップS505:Yes)、ステップS502において起動したカメラ114が、ステップS503において撮影する画像を解析する(ステップS506)。そして、ステップS506における解析結果に基づいて、カメラ114が撮影した画像におけるマーク101を特定する(ステップS507)。
【0087】
そして、ステップS507において特定したマーク101に基づいて、マーク101に対するカメラ114の位置およびピントを調整する(ステップS508)。ステップS508においては、たとえば、鉄塔102に設けられた複数のマーク101のうち、カメラ114の撮像範囲内に存在するマーク101にピントを合わせた画像を撮影するように、無人航空機104の飛行動作、および、カメラ114の撮影動作を制御することによって、マーク101に対するカメラ114の位置およびピントを調整する。
【0088】
また、ステップS508においては、たとえば、外形が同じサイズの複数のマーク101のそれぞれが、カメラ114が撮影する画像において均等な大きさになるように、無人航空機104の飛行動作、および、カメラ114の撮影動作を制御することによって、マーク101に対するカメラ114の位置およびピントを調整する。
【0089】
つぎに、ステップS506における解析結果に基づいて、画像に含まれるコード情報を解析する(ステップS509)。ステップS509においては、たとえば、ステップS506における解析結果に基づいて、画像に含まれるコード情報を抽出し、抽出したコード情報を解析することによって、各コード情報に含まれる各マーク101ごとに固有の識別情報を取得する。
【0090】
つぎに、ステップS509におけるコード情報の解析結果に基づいて、撮影された画像に含まれるコード情報をあらわすマーク101を撮影した撮影位置が、最初の撮影位置であるか否かを判断する(ステップS510)。具体的には、上記のように、コード情報に前の撮影位置に関する情報を含めておくことにより、当該前の撮影位置に関する情報を含まないコード情報をあらわすマーク101を、最初の撮影位置に設けられたマーク101であると判断することができる。
【0091】
ステップS510において、最初の撮影位置ではない場合(ステップS510:No)、無人航空機104の飛行動作、および、カメラ114の撮影動作を制御して、撮影位置を変更する(ステップS511)。ステップS511においては、たとえば、マーク101によってあらわされるコード情報に含まれる前の撮影位置に関する情報に基づいて、当該前の撮影位置に移動するように無人航空機104の飛行動作、および、カメラ114の撮影動作を制御する。
【0092】
そして、撮影位置を変更した後、ステップS510に戻り、変更後の位置が最初の撮影位置であるか否かを判断する(ステップS510)。ここで、変更後の位置が最初の撮影位置ではない場合(ステップS510:No)、変更後の位置が最初の撮影位置であると判断するまで、繰り返し、さらに前の撮影位置に移動する。
【0093】
一方、ステップS510において、最初の撮影位置である場合(ステップS510:Yes)、カメラ114が撮影する画像を記憶する(ステップS512)。ステップS512においては、カメラ114が撮影する画像をメモリに累積記憶する。また、ステップS512においては、カメラ114が撮影する画像と、当該画像の撮影日時に関する情報とを関連付けて、メモリに記憶する。
【0094】
つぎに、ステップS512において記録した画像に含まれるマーク101によってあらわされるコード情報に基づいて、当該次の撮影位置があるか否かを判断する(ステップS513)。ステップS513においては、たとえば、ステップS512において記録した画像に含まれるマーク101によってあらわされるコード情報に、次の撮影位置に関する情報が含まれるかどうかを判断することにより、次の撮影位置があるか否かを判断することができる。
【0095】
ステップS513において、次の撮影位置がある場合(ステップS513:Yes)、無人航空機104の飛行動作、および、カメラ114の撮影動作を制御して、カメラ114の撮影範囲内に次の撮影位置に設けられたマーク101が含まれるように、撮影位置を変更する(ステップS514)。ステップS514においては、たとえば、マーク101によってあらわされるコード情報に含まれる次の撮影位置に関する情報に基づいて、当該次の撮影位置に移動するように無人航空機104の飛行動作、および、カメラ114の撮影動作を制御する。
【0096】
そして、変更後の次の撮像位置において撮影された画像を解析して(ステップS515)、ステップS515における解析結果に基づいて、カメラ114が撮影した画像におけるマーク101を特定する(ステップS516)。その後、ステップS516において特定したマーク101に基づいて、マーク101に対するカメラ114の位置およびピントを調整する(ステップS517)。
【0097】
ステップS517においては、たとえば、ステップS508と同様に、鉄塔102に設けられた複数のマーク101のうち、カメラ114の撮像範囲内に存在するマーク101にピントを合わせた画像を撮影するように、無人航空機104の飛行動作、および、カメラ114の撮影動作を制御することによって、マーク101に対するカメラ114の位置およびピントを調整する。
【0098】
また、ステップS517においては、たとえば、ステップS508と同様に、外形が同じサイズの複数のマーク101のそれぞれが、カメラ114が撮影する画像において均等な大きさになるように、無人航空機104の飛行動作、および、カメラ114の撮影動作を制御することによって、マーク101に対するカメラ114の位置およびピントを調整する。
【0099】
つぎに、マーク101に対するカメラ114の位置およびピントを調整した状態で、カメラ114が撮影する画像を記憶する(ステップS518)。ステップS518においては、ステップS512と同様に、カメラ114が撮影する画像をメモリに累積記憶する。また、ステップS518においては、ステップS512と同様に、カメラ114が撮影する画像と、当該画像の撮影日時に関する情報とを関連付けて、メモリに記憶する。
【0100】
つぎに、ステップS518において撮影した画像に含まれるコード情報を解析する(ステップS519)。ステップS519においては、たとえば、ステップS509と同様に、ステップS518において撮影した画像に含まれるコード情報を抽出し、抽出したコード情報を解析することによって、各コード情報に含まれる各マーク101ごとに固有の識別情報を取得する。
【0101】
そして、ステップS513に移行して、ステップS518において記録した画像に含まれるマーク101によってあらわされるコード情報に基づいて、当該次の撮影位置があるか否かを判断する(ステップS513)。この場合も、ステップS513においては、たとえば、ステップS518において記録した画像に含まれるマーク101によってあらわされるコード情報に、次の撮影位置に関する情報が含まれるかどうかを判断することにより、次の撮影位置があるか否かを判断することができる。
【0102】
ステップS518において記録した画像に含まれるマーク101によってあらわされるコード情報に、次の撮影位置に関する情報が含まれていなければ、当該マーク101が最後のマーク101であると判断することができる。また、最後のマーク101には、当該マーク101が最後のマーク101であることを示す情報が含まれていてもよい。ステップS513において、次の撮影位置がない場合(ステップS513:No)、無人航空機104をあらかじめ設定されたホームポジションに帰還させて(ステップS520)、一連の処理を終了する。
【0103】
上述した実施の形態においては、カメラ114が撮影した画像に基づいて、作業員116の操作を解することなく無人航空機104を移動させ、点検に必要な画像を記録するようにしたが、これに限るものではない。たとえば、作業員116によるコントローラ115の操作によって無人航空機104を移動させながらカメラ114によって撮影した画像を記録するようにしてもよい。
【0104】
この場合、鉄塔102全体の画像を記録した後に、当該記録された画像のうち、作業員116が詳細に確認したい部分の画像に含まれるマーク101を、スマートフォンなどを用いて読み取って識別情報を解析させるようにしてもよい。これにより、作業員116は、詳細な確認が必要な部分のマーク101のみを読み取り、当該マーク101が設けられている位置の周辺における鉄塔102の状態を確認するだけでよいため、電気設備などの点検対象物の点検作業にかかる作業員116の負担軽減を図ることができる。
【0105】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の点検システム100は、鉄塔102や架空送電線103などの点検対象物に取り付けられた複数のマーク101と、カメラ114を搭載した無人航空機104と、無人航空機104に搭載され、当該無人航空機104の飛行動作およびカメラ114の撮影動作を制御して複数のマーク101のうちカメラ114の撮像範囲内に存在するマーク101にピントを合わせた画像を撮影するようにしたことを特徴としている。
【0106】
この発明にかかる実施の形態の点検システム100によれば、マーク101にピントを合わせることにより、当該マーク101が取り付けられている点検対象物にピントを合わせた画像を得ることができる。これにより、作業員116が鉄塔102など、点検対象物となる電気設備に昇塔することなく、カメラ114によって撮影された画像を目視することによって、電気設備などの点検対象物の点検作業を精度よくおこなうことができる。
【0107】
これによって、送電線停止制約の有無や、電気設備などの点検対象物の点検作業をおこなう作業員116の知識や技術などにかかわらず、電気設備などの点検対象物の点検作業を精度よくおこなって点検結果の信頼性を確保することができる。
【0108】
また、この発明にかかる実施の形態の点検システム100によれば、従来の点検作業における電気設備への昇塔作業を省略することができる。これにより、電気設備などの点検対象物の点検作業にかかる作業員116の負担軽減を図るとともに、作業員116の安全性を確保することができる。
【0109】
また、この発明にかかる実施の形態の点検システム100によれば、送電を停止することなく電気設備などの点検対象物の点検作業をおこなうことができるので、従来の電気設備の点検作業においておこなっていた停電調整作業を不要とすることができる。これにより、電気設備の点検作業にかかる作業員116の負担軽減を図ることができる。また、電気設備などの点検対象物の点検作業にかかる作業計画の自由度を高め、作業効率の向上を図ることができる。
【0110】
また、この発明にかかる実施の形態の点検システム100は、制御部が、同じサイズの複数のマーク101のそれぞれが、カメラ114が撮影する画像において均等な大きさになるように当該無人航空機104の飛行動作および当該カメラ114の撮影動作を制御することを特徴としている。
【0111】
この発明にかかる実施の形態の点検システム100によれば、カメラ114が撮影する画像におけるマーク101の大きさを均等に揃えることにより、電気設備などの点検対象物とカメラ114との距離を統一することができる。これにより、無人航空機104と電気設備などの点検対象物との安全離隔を確保した状態で、マーク101が取り付けられている点検対象物にピントを合わせた画像を得ることができる。
【0112】
また、この発明にかかる実施の形態の点検システム100は、複数のマーク101が、それぞれ固有の識別情報を示すことを特徴としている。
【0113】
この発明にかかる実施の形態の点検システム100によれば、カメラ114によって撮影された画像に基づいて、たとえば、どの鉄塔102のどこを撮影した画像であるかのように、当該画像が電気設備などの点検対象物におけるいずれの部分を撮影した画像であるかを容易かつ確実に特定することができる。これにより、撮影漏れがないかを確認することができ、電気設備などの点検対象物の点検作業を精度よくおこなって点検結果の信頼性を確保することができる。
【0114】
また、カメラ114によって撮影された画像が電気設備などの点検対象物におけるいずれの部分を撮影した画像であるかを容易かつ確実に特定することができるので、画像の管理が容易になる。さらに、画像の撮影日時をあわせて管理することにより、画像の管理を一層容易にすることができるとともに、従来の点検作業において点検した場所や日時をメモするなどして記録していた手間を省くことができるので、電気設備などの点検対象物の点検作業にかかる作業員116の負担軽減を図り、作業効率の向上を図ることができる。
【0115】
また、この発明にかかる実施の形態の点検システム100は、複数のマーク101が、コード情報を含むことを特徴としている。
【0116】
この発明にかかる実施の形態の点検システム100によれば、複雑な画像処理をおこなうことなく所定のコード情報を解析するプログラムの演算によって、カメラ114によって撮影された画像が電気設備などの点検対象物におけるいずれの部分を撮影した画像であるかを容易かつ確実に特定することができる。これにより、制御部における処理負担の軽減を図り、作業効率の向上を図ることができる。
【0117】
また、この発明にかかる実施の形態の点検システム100は、コード情報が、次の撮影位置に関する情報を含み、制御部が、カメラ114が撮影する画像に基づいて次の撮影位置を特定し、無人航空機104の飛行動作およびカメラ114の撮影動作を制御して、特定された次の撮影位置の画像を撮影することを特徴としている。
【0118】
この発明にかかる実施の形態の点検システム100によれば、マーク101を含む画像を撮影するごとに無人航空機104を次の撮影位置に移動させて次の撮影位置の画像を撮影することができる。これにより、電気設備などの点検対象物の点検作業にかかる作業員116の負担軽減を図り、作業効率の向上を図ることができる。
【0119】
また、この発明にかかる実施の形態の点検システム100は、無人航空機104に搭載され、制御部の制御によってカメラ114が撮影した画像を記憶する記憶部を備えたことを特徴としている。
【0120】
この発明にかかる実施の形態の点検システム100によれば、カメラ114が撮影した画像を記憶部に記憶させることにより、撮影のタイミングに依存することなく、カメラ114によって撮影された画像を目視する作業をおこなうことができる。これにより、電気設備などの点検対象物の点検作業にかかる作業員116の負担軽減を図り、作業効率の向上を図ることができる。
【0121】
また、たとえば、見過ごしたおそれのある箇所、後日に確認が必要になった箇所などを、撮影後の任意のタイミングで確認することができる。これにより、点検漏れをなくし、電気設備などの点検対象物の点検作業を精度よくおこなうことができるので、点検結果の信頼性を確保することができる。
【0122】
具体的には、たとえば、撮影した画像を、撮影現場から事業所などに持ち帰り、事業所において大型の画面を備えたパーソナルコンピュータを用いて目視することができる。撮影後に、落ち着いた環境において画像を目視することによって、電気設備などの点検対象物の点検作業を精度よくおこなうことができる。
【0123】
また、この発明にかかる実施の形態の点検システム100は、カメラ114が撮影した画像を、無線通信により所定の外部装置に出力することを特徴としている。
【0124】
この発明にかかる実施の形態の点検システム100によれば、カメラ114が撮影した画像を無線通信によって所定の外部装置に出力することにより、撮影のタイミングに依存することなく、カメラ114によって撮影された画像を目視する作業をおこなうことができる。これにより、電気設備などの点検対象物の点検作業にかかる作業員116の負担軽減を図り、作業効率の向上を図ることができる。
【0125】
なお、この実施の形態で説明した点検支援方法は、あらかじめ用意された点検支援プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。この点検支援プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリその他公知の各種の記録媒体であってコンピュータによる読み取りが可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、この点検支援プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、この発明にかかる点検システム、点検支援方法および点検支援プログラムは、鉄塔などの電気設備などの点検対象物の点検に用いる点検システム、点検支援方法および点検支援プログラムに有用であり、特に、電気設備の点検作業にかかる作業員の負担軽減および安全性の確保に配慮した点検システム、点検支援方法および点検支援プログラムに適している。
【符号の説明】
【0127】
100 点検システム
101 マーク
102 鉄塔
103 架空送電線
104 無人航空機
114 カメラ