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特許7188002生体情報取引の方法およびATMシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】生体情報取引の方法およびATMシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/18 20120101AFI20221206BHJP
【FI】
G06Q20/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018213767
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020080100
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-087316(JP,A)
【文献】特開2017-069894(JP,A)
【文献】特開2009-176127(JP,A)
【文献】特開2003-208407(JP,A)
【文献】特開2018-032302(JP,A)
【文献】特開2017-182199(JP,A)
【文献】特開2017-167875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/30-21/46
G06Q 10/00-99/00
G06V 40/00-40/19
40/30-40/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータに接続されたATMにおいてキャッシュカードを用いても生体情報取引が可能である生体情報取引の方法であって、
利用者がATMにキャッシュカードを挿入することでキャッシュカードの情報を読み取らせるステップと、
ホストコンピュータに利用者の顔情報が登録されている場合は、ATMに備えられているカメラにより利用者の顔を撮影する事で顔情報を取得し、その顔情報とホストコンピュータに登録されている顔情報を照合して本人認証を行うステップに進み、本人であると認証された場合は取引を継続し、本人であると認証されなかった場合は取引を中止し、
ホストコンピュータに利用者の顔情報が登録されていない場合は、ATMに備えられているスキャナーにより利用者の本人確認証の顔写真と文字情報を読み込むステップと、ATMのカメラにより利用者の顔を撮影する事で顔情報を取得するステップを経て、本人確認証の顔写真から取得した顔情報とカメラにより取得した顔情報を照合し、本人確認証の文字情報とホストコンピュータに記憶されている顧客情報とを照合して本人認証を行うステップに進み、本人であると認証された場合はカメラが取得した顔情報をホストコンピュータに登録してから取引を継続し、本人であると認証されなかった場合は取引を中止することを特徴とする生体情報取引の方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生体情報取引の方法を実施するプログラムを備えていることを特徴とするATMシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関などで現金預け払い機(以後、ATM(Automatic Teller Machine)とも記す。)を使用した取引を行う際に、ATMの利用者の本人確認を行う技術に関する。具体的には、生体情報を登録していない発行済のキャッシュカードであっても、生体情報を利用した本人認証を可能とする生体情報取引の方法と、その生体情報取引の方法を使用したATMシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ATMで使用するキャッシュカードとしては、主に磁気ストライプのみの磁気カードと、ICチップ内蔵のICキャッシュカード(以後、ICカードとも記す。)の2種類が使われている。磁気カードの場合、ATMでの取引時の本人確認方法として暗証番号を入力する方法で運用されている(暗証番号取引)。一方、ICキャッシュカードの場合は、ICチップ内に指紋や静脈などの生体情報を予め登録しておき、ATM操作時にICチップ内の生体情報と、ATMが取得した操作者の生体情報と、を照合することにより、本人確認を行っている(生体情報取引)。
【0003】
磁気カードとICカードでは、磁気カードの方が、歴史が古いため膨大な枚数の磁気カードが発行され、世の中に出回っている。また、キャッシュカードには有効期限が無く、再発行されることが無い。そのため、多くの磁気カードが出回っており、そのATMの取引はすべて暗証番号取引となっている状況である。
【0004】
ATMにおける磁気カードの暗証番号取引では、第三者が暗証番号を入手してしまえば、本人以外でも容易に現金取引ができてしまう。また、磁気カードではスキミングなどの不正行為が簡単にできる為、偽造や改ざんが容易であるという問題がある。
【0005】
これらの問題を解決するため、ICチップをカードに埋め込んだICキャッシュカード(以後、ICカードとも記す。)が利用されるようになった。ICキャッシュカードは、ICチップ内に本人情報や生体情報の書き込みを行い、ATMでの取引時に本人との照合を行うことで本人認証を行う。
【0006】
ICチップ内に書き込まれた情報は暗号化されているため、容易には解析ができないため、偽造や改ざんが困難となる。また、ATM取引時の本人認証においても生体情報の照合を行うため、第三者による不正利用が不可能となり、セキュリティ性が非常に高い方法であるが、以下に説明する様な幾つかの阻害要因があるため、ICキャッシュカードにおける生体情報取引が普及していない状況がある。
【0007】
(生体情報取引普及の阻害要因)
(1)磁気カードからICキャッシュカードへの切り替え手数料が有料であること。
ICカード自体の価格が高いため、既存の磁気カードからICカードへの切り替えが有料となる場合が多い。その為に、切り替えが進んでいない。金融機関としては不正利用防止や偽造・改ざん防止の為に、生体情報取引への移行を進める目的で、キャンペーンなどで無償切り替えを行う場合もある。しかしながら、経済的に余裕が無い金融機関においては対応が難しく、全国的な普及が進んでいない状況にある。
(2)利用者の負荷の問題
金融機関によっては、磁気カードを廃止してICカードのみを新規発行しているところも多くなって来ている。その為、今後、新規発行されるキャッシュカードのICカード率が高まる傾向となっている。しかしながら、生体情報取引を行うにはICカード発行に、
生体情報をICチップに書き込む必要がある。その為、利用者はICカードを受取った後、金融機関の窓口に出向き、生体情報を登録しなければならない。しかしながら、金融機関の営業時間内に利用者が訪問できない事も多く、また都合を付けて金融機関を訪問しも、窓口が混んでいて直ぐに対応して貰えない、などの状況がある。その為、利用者にとって、非常に手間がかかり、煩わしいものになっており、これが生体情報の登録が進んでいない原因の1つとなっている。そのため、キャッシュカードはICカードになっているが、従来と同じ暗証番号取引になっていることが多い。この事は無料キャンペーンを行う場合も同様であり、金融機関の窓口を訪問しなければならないことが、生体情報取引への切り替えが進まない大きな要因となっている。
(3)利用者の生体情報の読取精度が低い問題
ICキャッシュカードで取り扱う生体情報としては、指紋や静脈がある。指紋においては、指の傷や汚れで読取精度が落ちる可能性がある。静脈においては、外気温の寒暖により血管の収縮が起こるため、読取精度が落ちる可能性がある。
これらが原因となり、ATM取引時に読取エラーが発生し、スムーズな取引が行えない可能性があり、利用者の不満となる虞がある。その様なことが原因で、ICカードは保有しているが、生体認証は使用しない場合が多い。
【0008】
以上に説明した様に、金融機関が発行した磁気カードは膨大な数量であり、これらは全て暗証番号取引となっているため、セキュリティ性が低い。そのため、キャッシュカードの不正使用が後を絶たない。キュリティ性が高い生体情報取引が可能なキャッシュカードへの移行を進める必要があるが、生体情報の登録が不可欠であり、その為には金融機関の窓口に出向き手続きを行う必要がある。その事が障害となり、ICカードへの切り替えは進んでいるが、生体情報取引の利用は進んでいない。
【0009】
金融機関の窓口に出向いて、顔などの生体情報を登録することなく、生体情報取引を可能とする技術としては、例えば特許文献1に、予め登録された顔写真とATMに備えられたカメラにより撮影された顔写真を照合して本人認証を行う技術が開示されている。
【0010】
具体的には、端末装置(ATM)と、端末装置がネットワークを介して接続されているホストコンピュータと、を備えた現金取引システムである。
【0011】
この現金取引システムの端末装置は、利用者の顔写真を撮影する撮像部と、操作部と、ホストコンピュータと顔写真などの情報通信を行う制御部と、備えている。
【0012】
また、この現金取引システムのホストコンピュータは、
予め利用者の身分証から読み取られた顔写真と撮像部が撮影した利用者の顔写真との照合回数と、今回の取引時における撮像した顔写真と身分証による照合率と、その照合率とそれまでの取引時の照合率との乗算によって得られた累積照合率と、各取引時に対応付けて記憶する取引履歴記憶部と、
端末システムから利用者顔写真を受信した場合に、身分証顔写真と利用者顔写真とを照合して照合率を算出するとともに、累積照合率を算出する本人照合部と、
本人照合部によって算出された累積照合率が本人か否かを判定するための限界値を示す限界照合率以上である場合に照合回数をカウントアップし、カウントアップした照合回数と今回の取引時に算出された照合率と累積照合率とを取引履歴記憶部に記憶させ、照合回数が、累積照合回数が連続して限界照合率以上である場合に本人とみなす回数である規定照合回数以上になった場合、照合回数を、初回取引時の値にするとともに、今回の取引時の累積照合率を、初回取引時と同じ値の照合回数に対応付けて取引履歴記憶部に記憶されている累積照合率にして、取引の実行を許可する可否判定部と、を備えていることを特徴とする現金取引システムである。
【0013】
このシステムにより、従来必要であったオペレータによる本人確認をせずにICキャッシュカードを発行することができ、且つ発行されたICキャッシュカードを用いて生体情報取引による現金の取引が可能となる。
【0014】
しかしながら、この現金取引システムは、新規に発行するカードには適用できるが、既に発行済のキャッシュカードには対応できない問題がある。その為、膨大な数量が出回っている磁気キャッシュカードを生体情報取引可能とすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特許第5147426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の事情に鑑み、本発明は、生体情報取引ができない発行済みのキャッシュカードを使用して、生体情報取引を可能とするATMシステムと、そのATMシステムにおける生体情報取引の方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、ホストコンピュータに接続されたATMにおいて、利用者が暗証番号取引しかできないキャッシュカードを用いても生体情報取引が可能である生体情報取引の方法であって、
利用者がATMにキャッシュカードを挿入することでキャッシュカードの情報を読み取らせるステップと、
ホストコンピュータに利用者の顔情報が登録されている場合は、ATMに備えられているカメラにより利用者の顔を撮影する事で顔情報を取得し、その顔情報とホストコンピュータに登録されている顔情報を照合して本人認証を行うステップに進み、本人であると認証された場合は取引を継続し、本人であると認証されなかった場合は取引を中止し、
ホストコンピュータに利用者の顔情報が登録されていない場合は、ATMに備えられているスキャナーにより利用者の本人確認証の顔写真と文字情報を読み込むステップと、ATMのカメラにより利用者の顔を撮影する事で顔情報を取得するステップを経て、本人確認証の顔写真から取得した顔情報とカメラにより取得した顔情報を照合し、本人確認証の文字情報とホストコンピュータに記憶されている顧客情報とを照合して本人認証を行うステップに進み、本人であると認証された場合はカメラが取得した顔情報をホストコンピュータに登録してから取引を継続し、本人であると認証されなかった場合は取引を中止することを特徴とする生体情報取引の方法である。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の生体情報取引の方法を実施するプログラムを備えていることを特徴とするATMシステムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の生体情報取引の方法によれば、金融機関のATMにおいて、利用者が、キャッシュカードを初めて使用する場合であり、且つホストコンピュータに顔情報が登録されていない場合であっても、ATMシステムに備えられたカメラが利用者の顔を撮影して顔情報を取得し、またスキャナーが個人番号カードや運転免許証などの本人確認証の顔写真と文字情報を読み取り、それらの情報から、カメラが取得した顔写真の顔情報と、本人確認証の顔写真の顔情報と、本人確認証の文字情報とホストコンピュータに記憶されている顧客情報と、を照合することで本人確認する事が可能である。そのため、生体情報取引が可能となる。2回目からは、カメラがその都度取得する顔写真の顔情報と、ホストコンピュータに登録された顔情報と、を照合することにより本人であるかどうかを判定することが可能であるため生体情報取引が可能となる。
【0020】
以上のことは、金融機関の既存のATMに備えられた機能を使用して実施することができるため、利用者や金融機関には特別な負荷をかけることなく実施することができる。
【0021】
また、本発明のATMシステムにおいては、生体情報として顔情報を使用している。近年、顔認証技術が飛躍的に進歩したため、指紋や静脈を使用した生体認証と比較して認証エラーが発生し難い。そのため、利用者にストレスを感じさせないものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のATMシステムにおける生体情報取引の方法一例を説明するフロー図。
図2】本発明のATMシステムの機能構成を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<生体情報取引の方法>
本発明の生体情報取引の方法は、ホストコンピュータに接続されたATMにおいて、利用者が暗証番号取引しかできないキャッシュカードを用いても生体情報取引が可能である生体情報取引の方法である。
【0024】
利用者がATMのタッチパネルなどに表示された所定の部位に触れることによってスタートし、利用者がATMの所定の部分にキャッシュカードを挿入することでキャッシュカードの情報を読み取らせるステップを備えている。
【0025】
ホストコンピュータに利用者の顔情報が登録されている場合は、ATMに備えられているカメラにより利用者の顔を撮影する事で顔情報を取得し、その顔情報とホストコンピュータに登録されている顔情報を照合して本人認証を行うステップに進み、本人であると認証された場合は取引を継続するステップと、本人であると認証されなかった場合は取引を中止するステップを備えている。
【0026】
また、ホストコンピュータに利用者の顔情報が登録されていない場合は、ATMに備えられているスキャナーにより利用者の本人確認証の顔写真と文字情報を読み込むステップと、ATMのカメラにより利用者の顔を撮影する事で顔情報を取得するステップを経て、本人確認証の顔写真から取得した顔情報とカメラにより取得した顔情報を照合して本人認証を行うステップに進み、本人であると認証された場合はカメラが取得した顔情報をホストコンピュータに登録してから取引を継続するステップと、本人であると認証されなかった場合は取引を中止するステップを備えていることが特徴である。なお、本人確認証の文字情報と、ホストコンピュータに登録されている利用者本人を特定する文字情報と、を照合することによって、本人確認を行う。
【0027】
次に、図1に例示した本発明の生体情報取引の方法を説明するフロー図および図2に例示した本発明のATMシステムの構成図を参照しながら更に詳しく説明する。
【0028】
本発明の生体情報取引の方法は、暗証番号取引しかできないキャッシュカードを用いても生体情報取引を可能とする方法であり、ステップ1(S1)からステップ16(S16)のステップを備えている場合を例として、以下に説明するが、このステップ数に限定することを意味するものではない。作業フローを逸脱しない範囲でステップ数が増減しても構わない。
【0029】
本発明の生体情報取引の方法は、まず、ATMの利用者が、ATMのタッチパネルに表示された所定のメニューに触れることで取引を開始するステップ(S1)と、キャッシュカードの読み込み指示がタッチパネルに表示された後、利用者がATMのカード情報読取
部にキャッシュカードを挿入するステップ(S2)を経て、そのキャッシュカードの情報を読み取るステップ(S3)と、利用者の顔情報が登録されているかどうかをホストコンピュータに確認するステップ(S4)と、を備えている。S4では、まずATMの外部通信部から金融機関のホストコンピュータに問い合わせを行い、顔情報が登録されているかを確認し、その結果をATMに返す。
【0030】
ホストコンピュータに顔情報が登録されている場合には、カメラにより利用者の顔を撮影し顔情報を取得するステップ(S5)と、取得した顔情報と、ホストコンピュータに記憶されている顔情報と、を照合するステップ(S6)を経て、本人であるかどうかを判定する判定ステップA(S7)へと進む。
【0031】
また、ホストコンピュータに顔情報が登録されていない場合には、スキャナーにより利用者の本人確認証の顔写真と文字情報を読み込むステップ(S10)と、本人確認証が本物であるかどうかを確認するステップ(S11)と、カメラにより利用者の顔を撮影し顔情報を取得するステップ(S12)と、取得した顔情報と本人確認証の顔写真とを顔認証部にて照合し、本人確認証の文字情報とホストコンピュータに記憶されている顧客情報とを照合するステップ(S13)を経て、本人であるかどうかを判定する判定ステップB(S14)へと進む。
【0032】
判定ステップAにおいて、利用者が本人であると判定された場合は取引を継続し(S8)、本人であると判定されなかった場合は取引を中止(S9)する。
【0033】
また判定ステップB(S14)において、利用者が本人であると判定された場合は、カメラが取得した顔情報をホストコンピュータに登録するステップ(S15)を経て、取引を継続するステップ(S16)に進み、利用者が本人であると判定されなかった場合は、取引を中止するステップ(S17)に進む。
【0034】
以上のS1~S17により、暗証番号取引しかできないキャッシュカードであっても生体情報取引が可能となる。
【0035】
なお、S10において、本人確認証の顔写真を読み込むが、その顔写真に傷や汚れがある場合は、顔写真を正常に読み取ることができない場合が出てくる。その様な場合には、別途窓口での確認や、ATMを介してオペレータが利用者の顔を確認し、利用者が真正であることを確認する。
【0036】
また、新規発行の磁気カードの場合は、口座開設時に顔情報の登録を行う。この場合は、金融機関の職員による本人確認後、窓口に設置されたカメラにより撮影した顔写真の顔情報を登録すれば良い。
【0037】
<ATMシステム>
次に、本発明のATMシステムについて、図2を使用して説明する。
本発明のATMシステムは、ATMと、ATMと通信可能に接続されたホストコンピュータを備えたATMシステムである。図2には、ATM1台とホストコンピュータ1台の例を示しているが、通常はATMが複数台備えられている。ホストコンピュータとATMを接続する通信回線は、専用に設置した通信回線でも良いし、インターネット回線を使用したものであっても良い。
【0038】
ATMは、利用者が情報を入力する入力部と、キャッシュカードの情報を読み取るカード情報読取部と、現金の預け払いを実行する取引実行部と、利用者の顔を撮影し、撮影した顔情報に基づいて本人であるかどうかを認証する顔認証部と、通信回線を介してホスト
コンピュータと通信する外部通信部と、入力部とカード情報読取部と取引実行部と顔認証部と外部通信部の動作を制御する主制御部と、を備えている。
【0039】
ホストコンピュータは、少なくとも顧客情報と、顧客の顔情報と、を記憶した顧客管理データベースを備えている。
【0040】
入力部は、利用者が必要に応じて情報を入力するタッチパネルと、利用者の顔を撮影して顔情報を取得するカメラと、本人確認証の顔写真と文字情報を取得するスキャナーとを備えている。
【0041】
(タッチパネル)
ここで言うタッチパネルとは、液晶表示装置などの表示画面に表示された表示部を指で触れる事によって入力する事が可能なタッチパネル機能を備えた表示装置を指す。液晶表示装置に限定する必要は無く、有機EL表示装置、無機EL表示装置、CRT(Cathode Ray Tube)、電気泳動方式表示装置、エレクトロクロミック表示装置などの文字、図形、絵柄などを表示可能な表示装置の表示画面にタッチパネル機能を備えた表示装置であれば良い。
【0042】
(カメラ)
カメラとしては、ATMの利用者の顔を撮影可能な撮影装置であれば良い。撮影に必要な明るさが得られない場合には、利用者の顔を撮影可能とする明るさが得られる照明装置またはフラッシュを備えていても良い。撮影装置としては、スチルカメラであっても良いし、ビデオカメラの様に動画を撮影可能なものであっても良い。
【0043】
(スキャナー)
スキャナーは、主に本人確認証の顔写真と文字情報を読み取ることが可能なものであれば良い。光学的な読取装置であるラインセンサであっても良いし、エリアセンサであっても良い。
【0044】
(カード情報読取部)
カード情報読取部は、キャッシュカードを挿入することにより、キャッシュカードに記録されている情報を読み取る機能を備えている。キャッシュカードの券面に記録されている文字情報と、磁気テープやICチップに記録された電子的な情報を読み取ることができる機能を備えている。キャッシュカードが磁気カードである場合は、磁気テープに記録された情報を読み取る為の磁気ヘッドなどを使用した読取手段を備えている。キャッシュカードがICカードである場合は、通常は接触型のICモジュールが備えられているため、接触型のICモジュール用の読取手段を備えている。また、カード情報読取部は、キャッシュカードを途中まで挿入するとキャッシュカードを自動的に吸い込む機構を備えており、情報の読み取りが終了した後、キャッシュカードを途中まで自動的に排出する機構を備えている。
【0045】
(顔認証部)
顔認証部は、ATMのカメラが利用者の顔を撮影して取得した顔画像およびスキャナーが個人番号カード、運転免許証、パスポートなどの本人確認証を読みとる事により取得した顔写真を、ホストコンピュータの顧客管理DB(データベース)に登録されている顔情報と照合することにより、本人かどうかを判定する。スキャナーが取得した顔写真と、ホストコンピュータに記憶されている顔情報と、を照合する方法は特に限定されないが、顔写真と顔情報のそれぞれの顔の特徴点を抽出して、両者を比較する事によって照合を行うことによって顔認証を行う事ができる。この機能は主制御装置が備えていても構わない。また、顔認証の方法はこれに限定する必要は無く、近年、進歩が著しい顔認証技術を適用
すれば良い。
【0046】
(外部通信部)
外部通信部は、ATMシステムの主制御部がホストコンピュータとの通信を可能とするインターフェース回路である。
【0047】
(取引実行部)
取引実行部は、ATMシステムが、利用者が真正の利用者であると判定した時に、取引を許可し、利用者が要求した現金を利用者が取り出し可能に提出する装置である。逆に、利用者が取引実行部に現金を入れると、その現金がいくらであるかをカウントし、ATMに取り込むこともできる。
【0048】
(主制御部)
主制御部は、少なくとも、入力部とカード情報読取部と取引実行部と顔認証部と外部通信部の動作を制御する装置である。コンピュータ装置を好適に使用する事ができる。
例えば、利用者がATMシステムのタッチパネルに表示されたメニューの所定の部位に触れることによって、ATMの動作を開始し、その後の一連の動作、すなわち本発明の生体情報取引の方法を実行するプログラムを主制御装置が備えている。
【0049】
(顧客管理データベース(DB))
顧客管理データベースは、ホストコンピュータの記憶領域の一部を使用して、キャッシュカードの利用者の顧客情報と、顔情報と、を記憶している。ATMの主制御装置は、このホストコンピュータの顧客管理データベースにアクセスして、必要な情報を読み出す。また、逆に必要な情報を記憶または登録する。
【0050】
以上に説明したATMシステムは、従来のATMとホストコンピュータからなるATMシステムと同等であるが、本発明のATMシステムの特徴は、ATMの主制御装置に、本発明の生体情報取引の方法を実施可能とするプログラムがインストールされていることを特徴とする。このことにより、本発明のATMシステムは、本発明の生体情報取引の方法を実施可能となる。
【0051】
なお、本発明のATMシステムの顔認証部で取り扱う顔の特徴点に関する情報は暗号化されている。その為、顔の特徴点の情報が万一漏洩したとしても、それを見ただけでは顔の特定ができない様になっている。また、顔の特徴点に関する情報は、不可逆の情報であるため、その情報から顔を復元する事は不可能である。
図1
図2