(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 23/00 20060101AFI20221206BHJP
G21F 1/06 20060101ALI20221206BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20221206BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C03C23/00 A
G21F1/06
B08B3/02 C
B08B3/08 A
(21)【出願番号】P 2018214899
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 勇二
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 元
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-121095(JP,A)
【文献】特開2000-246188(JP,A)
【文献】特開昭57-146252(JP,A)
【文献】特開2013-112585(JP,A)
【文献】特開2000-251799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0111267(US,A1)
【文献】特開平02-038337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 23/00
G21F 1/06
B08B 3/02
B08B 3/04
C11D 3/02
C11D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛ガラスを用いたガラス物品の製造方法であって、
ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が0.1mg/kg以上
2.8mg/kg以下である鉛含有洗浄水を用いて鉛ガラスを洗浄する洗浄工程を有することを特徴とするガラス物品の製造方法。
【請求項2】
前記鉛含有洗浄水は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が1.0mg/kg以上
2.8mg/kg以下である請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄工程に用いた前記鉛含有洗浄水を回収し、前記鉛含有洗浄水から鉛成分を分離して廃棄する工程を有する請求項1
又は請求項2に記載のガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛ガラスを用いたガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛ガラスを用いたガラス物品としては、例えば、特許文献1に開示される放射線遮蔽窓用のガラス板が知られている。
鉛ガラスは、表面に水分が付着すると、可溶性成分が水分付着箇所から選択的に溶出し、水分が蒸発乾燥する際に空気中の気体と反応して粒子状の化合物が生成し、表面に粉が吹いたように見える状態(ヤケと称される状態)になる。鉛ガラスにヤケが生じると、外観が損なわれるばかりでなく、視野を遮るといった性能低下の問題がある。そのため、特許文献1に開示される放射線遮蔽窓用のガラス板は、鉛ガラスの表面にシリカの透明膜を形成することによって、鉛ガラスの表面に水分が直接、付着することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉛ガラスのヤケは、鉛ガラスを用いたガラス物品を製造する過程においても生じる場合がある。例えば、ガラス物品を製造する場合には、所定形状に切断する等の様々な加工が行われるが、こうした加工の後には、加工屑等を除去する洗浄作業が行われる。その洗浄作業に用いられる洗浄水に含まれる水分によって鉛ガラスにヤケが生じてしまう場合がある。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉛ガラスを用いたガラス物品の製造過程におけるヤケの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラス物品の製造方法は、鉛ガラスを用いたガラス物品の製造方法であって、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が0.1mg/kg以上である鉛含有洗浄水を用いて鉛ガラスを洗浄する洗浄工程を有する。
【0007】
上記構成によれば、特定量の鉛成分を含有する鉛含有洗浄水を用いて洗浄工程を行うことにより、鉛を含有しない洗浄水を用いた場合と比較して、洗浄工程後の鉛ガラスの表面に生じるヤケを抑制できる。
【0008】
上記ガラス物品の製造方法において、前記鉛含有洗浄水は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が1.0mg/kg以上であることが好ましい。
上記構成によれば、洗浄工程後の鉛ガラスの表面に生じるヤケを更に効果的に抑制できる。
【0009】
上記ガラス物品の製造方法において、前記鉛含有洗浄水は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が2.8mg/kg以下であることが好ましい。
上記構成によれば、鉛成分の使用量を抑えることができ、使用後の鉛含有洗浄水の廃棄が容易になる。
【0010】
上記ガラス物品の製造方法において、前記洗浄工程に用いた前記鉛含有洗浄水を回収し、前記鉛含有洗浄水から鉛成分を分離して廃棄する工程を有することが好ましい。
上記構成によれば、鉛含有洗浄水を適切に廃棄できる。したがって、環境に及ぼす影響を抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉛ガラスを用いたガラス物品の製造過程におけるヤケの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態のガラス物品の製造方法は、鉛ガラスを洗浄する洗浄工程を有している。
洗浄工程としては、例えば、鉛ガラスに対して切断、切削、穴あけ等の加工を行う加工工程の後に、鉛ガラスに付着した切削屑及び切削水等の加工水を除去するために行われる洗浄工程、鉛ガラスに対して他のガラスを貼り合わせたり、鉛ガラスの表面に膜を形成したりする加工工程の前に、鉛ガラスの表面の汚れ等を除去するために行われる洗浄工程が挙げられる。
【0014】
洗浄工程に供される鉛ガラスは、酸化鉛(PbO)等の鉛成分を含有する。鉛ガラスにおける鉛成分の含有量は、例えば、酸化物換算の質量百分率で、35~80質量%であることが好ましい。鉛ガラスの組成としては、例えば、酸化物換算の質量百分率で、SiO2:10~55質量%、PbO:35~80質量%、B2O3:0~10質量%、Al2O3:0~10質量%、SrO:0~10質量%、BaO:0~10質量%、Na2O:0~10質量%、K2O:0~10質量%の組成が挙げられる。
【0015】
洗浄工程に供される鉛ガラスは、表面の少なくとも一部に鉛ガラスにより構成される部分(水分の付着によってヤケが生じ得る部分)を有するものであればよい。したがって、洗浄工程に供される鉛ガラスは、その一部に被膜等の鉛ガラス以外の物質により構成される部分が設けられていてもよい。洗浄工程に供される鉛ガラスの形状としては、例えば、板状、塊状が挙げられる。
【0016】
洗浄工程では、鉛含有洗浄水を用いて、供給された鉛ガラスを水洗する水洗処理を行う。鉛含有洗浄水は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が0.1mg/kg以上であり、1.0mg/kg以上であることが好ましい。上記濃度の鉛含有洗浄水を用いることにより、洗浄工程後の鉛ガラスに生じるヤケを抑制できる。また、鉛含有洗浄水は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が2.8mg/kg以下であることが好ましく、2.3mg/kg以下であることがより好ましい。鉛含有洗浄水に含有される鉛成分としては、例えば、鉛、鉛イオン、酸化鉛(PbO)、鉛化合物が挙げられる。
【0017】
鉛含有洗浄水における水(H2O)の含有量は、例えば、99~99.998質量%である。また、鉛含有洗浄水は、鉛成分及び水以外のその他成分を含有していてもよい。その他成分としては、例えば、SiO2、B2O3、Al2O3、SrO、BaO、Na2O、K2O等の酸化物が挙げられる。なお、その他成分は、酸化物に限られない。
【0018】
水洗処理の具体的な方法は特に限定されるものではなく、例えば、鉛ガラスに鉛含有洗浄水を噴き付ける方法、鉛含有洗浄水の存在下で鉛ガラスの表面を擦る方法、鉛ガラスを鉛含有洗浄水に浸漬させる方法等の公知の方法を適用できる。
【0019】
鉛含有洗浄水を用いて鉛ガラスを水洗する処理の後は、鉛ガラスに付着した鉛含有洗浄水を除去する除去処理を行う。除去処理の方法は特に限定されるものではなく、拭き取りによる除去処理、エアナイフを用いた除去処理等の公知の方法を適用できる。
【0020】
次に、
図1及び
図2に基づいて、洗浄工程の具体例について説明する。ここでは、板状の鉛ガラスを所定形状に切断する加工工程の後に、鉛ガラスに付着した切削屑及び切削水等の加工水を除去するために行われる洗浄工程について説明する。
【0021】
図1に示すように、洗浄対象となる板状の鉛ガラスGは、横置きの状態とされて、搬送装置10により洗浄装置11へと搬送される。洗浄装置11は、搬送装置10による鉛ガラスGの搬送経路上に設けられている。なお、以降の記載における「上流側」及び「下流側」は、鉛ガラスGの搬送経路における上流側及び下流側を意味する。
【0022】
洗浄装置11は、第1洗浄室11Aと、第1洗浄室11Aの下流側に設けられる第2洗浄室11Bとを備えている。第1洗浄室11A内には、鉛ガラスGの搬送経路の一部を上下に挟むように間隔をあけて配置される一対のブラシローラー12が設けられている。各ブラシローラー12の外周部分には、径方向に突出する複数の線状部からなるブラシ部分が設けられている。
【0023】
第1洗浄室11A内におけるブラシローラー12の上流側及び下流側には、搬送経路上の鉛ガラスGに向かって鉛含有洗浄水を噴射する第1噴射部13が設けられている。各第1噴射部13には、鉛含有洗浄水が貯留された第1貯留部14が接続されている。第1貯留部14に貯留された鉛含有洗浄水は、ポンプPによって各第1噴射部13に供給される。
【0024】
第1洗浄室11A内において、下流側に位置する第1噴射部13の更に下流側には、搬送経路上の鉛ガラスGに向かって空気を吹き付けるエアナイフ15が設けられている。なお、各第1噴射部13及びエアナイフ15は、横置きの状態で搬送される鉛ガラスGの上面側及び下面側の両側にそれぞれ配置されるが、
図1では、鉛ガラスGの下面側に配置される各第1噴射部13及びエアナイフ15の図示を省略している。
【0025】
第2洗浄室11B内には、搬送経路上の鉛ガラスGに向かって無鉛洗浄水を噴射する第2噴射部16が設けられている。第2噴射部16には、無鉛洗浄水が貯留された第2貯留部17が接続されている。無鉛洗浄水は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が0.1mg/kg未満である洗浄水であり、例えば、真水が挙げられる。また、無鉛洗浄水は、鉛成分及び水以外のその他成分を含有していてもよい。その他成分としては、例えば、鉄又はその化合物、カルシウム又はその化合物、マグネシウム又はその化合物、ナトリウム又はその化合物、カリウム又はその化合物が挙げられる。
【0026】
第2洗浄室11B内における第2噴射部16の下流側には、搬送経路上の鉛ガラスGに向かって空気を吹き付けるエアナイフ18が設けられている。なお、第2噴射部16及びエアナイフ18は、横置きの状態で搬送される鉛ガラスGの上面側及び下面側の両側にそれぞれ配置されるが、
図1では、鉛ガラスGの下面側に配置される第2噴射部16及びエアナイフ18の図示を省略している。
【0027】
第1洗浄室11Aには、第1噴射部13から噴射された鉛含有洗浄水を回収する第1貯留部14が接続されている。第2洗浄室11Bには、第2噴射部16から噴射された無鉛洗浄水を回収する回収部19が接続されている。なお、図示は省略しているが、第1洗浄室11Aには、第1噴射部13から噴射された鉛含有洗浄水を第1洗浄室11Aの外に漏らさないように第1貯留部14に排水する排水機構が設けられている。第2洗浄室11Bについても同様の排水機構が設けられている。
【0028】
図1に示すように、加工工程後の洗浄対象となる板状の鉛ガラスGは、搬送装置10へと供給されて、搬送装置10によって洗浄装置11の第1洗浄室11A及び第2洗浄室11Bを順に通過するように搬送される。
【0029】
第1洗浄室11Aに搬送された鉛ガラスGは、上流側の第1噴射部13から鉛含有洗浄水が噴き付けられる吹き付け領域を通過する。これにより、鉛ガラスGの表面に付着した付着物(切削屑及び切削水等の加工水)が洗い流される。その後、鉛ガラスGは、ブラシローラー12の間を通過する。このとき、回転するブラシローラー12に設けられたブラシ部分によって鉛ガラスGの表面が擦られることにより、鉛ガラスGの表面に強く付着した付着物が除去又は浮き上がる。
【0030】
ブラシローラー12を通過した鉛ガラスGは、下流側の第1噴射部13から鉛含有洗浄水が噴き付けられる吹き付け領域を通過する。これにより、ブラシローラー12により浮き上がった付着物が洗い流される。その後、鉛ガラスGは、第1洗浄室11Aの下流側を通過する際に、エアナイフ15から噴き付けられる空気によって、表面に付着した鉛含有洗浄水が噴き飛ばされて水切り(除去)される。そして、鉛ガラスGは、第2洗浄室11Bへと搬送される。
【0031】
第2洗浄室11Bに搬送された鉛ガラスGは、第2噴射部16から無鉛洗浄水が噴き付けられる吹き付け領域を通過する。これにより、無鉛洗浄水由来の鉛成分が鉛ガラスGの表面に付着していた場合に、その鉛成分が洗い流される。その後、鉛ガラスGは、第2洗浄室11Bの下流側を通過する際に、エアナイフ18から噴き付けられる空気によって、表面に付着した無鉛洗浄水が噴き飛ばされて水切り(除去)される。そして、第2洗浄室11Bを通過した鉛ガラスGは、ガラス物品の製造方法における次工程に供給される。なお、第1洗浄室11Aにおける鉛含有洗浄水を用いた洗浄処理が第1洗浄工程に相当し、第2洗浄室11Bにおける無鉛洗浄水を用いた洗浄処理が第2洗浄工程に相当する。
【0032】
また、
図1及び
図2に示すように、第1洗浄室11Aで使用された鉛含有洗浄水は、第1貯留部14に回収されて貯留される。そして、第1貯留部14に貯留された鉛含有洗浄水は、ポンプPにより各第1噴射部13に供給されて再利用される、又は含有される鉛成分を分離する処理がなされて廃棄される。
【0033】
第1貯留部14に回収した鉛含有洗浄水には、繰り返しの使用により、鉛成分、及び鉛ガラスGから除去された付着物(切削屑)等の固形分14aが含まれている。そのため、回収した鉛含有洗浄水に対して固液分離処理を行うことにより、回収した鉛含有洗浄水を固形分と液分とに分離する。固液分離処理としては、加圧脱水機(フィルタープレス)を用いる方法等の公知の方法を適用できる。固液分離処理により分離された固形分は、薬剤の添加により、含有される鉛成分を安定な化合物に化学変化させる処理が施されて廃棄される。
【0034】
一方、固液分離処理により分離された液分は、必要に応じて、鉛濃度を調整する処理を行った後に再利用される。再利用の用途としては、例えば、第1噴射部13から噴射される鉛含有洗浄水、加工工程に用いる切削水等の加工水が挙げられる。
【0035】
上記の洗浄工程を有する本実施形態の製造方法により製造されるガラス物品としては、例えば、放射線遮蔽窓用の窓ガラス、耐熱結晶化ガラスが挙げられる。
次に、本実施形態の作用及び効果について記載する。
【0036】
(1)鉛ガラスGを用いたガラス物品の製造方法は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が0.1mg/kg以上である鉛含有洗浄水を用いて鉛ガラスGを洗浄する洗浄工程を有する。
【0037】
上記構成によれば、特定量の鉛成分を含有する鉛含有洗浄水を用いて洗浄工程を行うことにより、鉛を含有しない洗浄水を用いた場合と比較して、洗浄工程後の鉛ガラスGの表面に生じるヤケを抑制できる。
【0038】
(2)鉛含有洗浄水は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が1.0mg/kg以上である。
上記構成によれば、洗浄工程後の鉛ガラスの表面に生じるヤケを更に効果的に抑制できる。
【0039】
(3)鉛含有洗浄水は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度が2.8mg/kg以下である。
上記構成によれば、鉛の使用量を抑えることができ、使用後の鉛含有洗浄水の廃棄が容易になる。
【0040】
(4)洗浄工程に用いた鉛含有洗浄水を回収し、鉛含有洗浄水から鉛成分を分離して廃棄する工程を有する。
上記構成によれば、鉛含有洗浄水を適切に廃棄できる。したがって、環境に及ぼす影響を抑えることができる。
【0041】
(5)鉛含有洗浄水を用いて鉛ガラスGに付着した付着物を洗い流し、鉛ガラスGから鉛含有洗浄水を除去する第1洗浄工程と、第1洗浄工程の後、鉛を含まない無鉛洗浄水を用いて鉛ガラスGに付着した付着物を洗い流し、鉛ガラスGから無鉛洗浄水を除去する第2洗浄工程とを有する。
【0042】
上記構成によれば、第1洗浄工程後の鉛ガラスGに、鉛ガラスGから除去された付着物(切削屑)等の固形分14aを含む含有洗浄水が残留していても、第2洗浄工程によって固形分14aを含む鉛含有洗浄水が除去される。これにより、鉛ガラスGをより確実に洗浄することができる。特に、第1洗浄工程に用いる含有洗浄水を繰り返し使用する場合には、含有洗浄水に含まれる固形分14aの量が徐々に増えていくため、第2洗浄工程による洗浄効果がより顕著になる。なお、第2洗浄工程で使用する無鉛洗浄水の量は可能な限り少なくすることが好ましい。
【0043】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、無鉛洗浄水を用いて第2洗浄工程を行ったが、鉛含有洗浄水を用いて第2洗浄工程を行ってもよい。この場合、第1貯留部14に回収した鉛含有洗浄水とは別に調製した鉛含有洗浄水(固形分14aを含まない鉛含有洗浄水)を用いる。また、第2洗浄工程を省略してもよい。
【0044】
・第1貯留部14に回収した鉛含有洗浄水の処理方法は、特に限定されるものではない。例えば、固液分離処理後の固形分について、薬剤を添加する方法以外の公知の廃棄方法で処理した後に廃棄してもよい。また、固液分離処理を省略して、第1貯留部14に回収した鉛含有洗浄水の全てに対して廃棄処理を行ってもよい。
【0045】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記洗浄工程は、前記鉛含有洗浄水を用いて前記鉛ガラスに付着した付着物を洗い流し、前記鉛ガラスから前記鉛含有洗浄水を除去する第1洗浄工程と、前記第1洗浄工程の後、第2の洗浄水を用いて、前記鉛ガラスに付着した付着物を洗い流し、前記鉛ガラスから前記第2の洗浄水を除去する第2洗浄工程とを有する前記ガラス物品の製造方法。
【実施例】
【0046】
以下に試験例を挙げ、上記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
(試験例1~4)
鉛濃度が異なるように鉛又はその化合物を含有させた洗浄水を用意した。各験例に用いた洗浄水の鉛濃度を表1に示す。表1に示す鉛濃度は、ICP発光分光分析法で測定される鉛濃度である。各試験例の洗浄水を鉛含有洗浄水として、それぞれ1750枚の板状の鉛ガラスに対して、
図1に示す洗浄装置を用いた洗浄工程を実施した。洗浄工程後、24時間経過した鉛ガラスの表面を観察してヤケの有無を確認し、ヤケの発生率(ヤケが確認された鉛ガラスの枚数/洗浄した鉛ガラスの枚数)を算出した。その結果を表1に示す。
【0047】
なお、鉛ガラスとしては、板状の鉛ガラス(日本電気硝子株式会社製LX-57B)を用い、ダイヤモンドホイールを用いて、縦600mm×横900mm×厚さ9mmに切断する加工工程を経たものを洗浄工程に供した。
【0048】
(試験例5)
鉛含有洗浄水に代えて、鉛を含有しない洗浄水を用いた点を除いて、試験例1~4と同様にして、
図1に示す洗浄装置を用いた洗浄工程を実施し、ヤケの発生率を求めた。具体的には、鉛を含有しない洗浄水として水道水を用いるとともに、鉛ガラス3枚分の洗浄に相当する期間に1回、回収した洗浄水及び固形分を除去するように第1貯留部14を掃除し、第1貯留部14内の洗浄水を新たな水道水に入れ替える操作を行った。
【0049】
【表1】
表1に示すように、鉛を含有しない洗浄水を用いた試験例5と比較して、鉛濃度が0.1mg/kg以上である洗浄水を用いた試験例1~4は、ヤケの発生率が低下した。特に、鉛濃度が1.0mg/kg以上である洗浄水を用いた試験例2~4は、ヤケの発生率が更に低下した。
【符号の説明】
【0050】
G…鉛ガラス、10…搬送装置、11…洗浄装置、11A…第1洗浄室、11B…第2洗浄室、12…ブラシローラー、13…第1噴射部、14…第1貯留部、14a…固形分、15,18…エアナイフ、16…第2噴射部、17…第2貯留部、19…回収部。