(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】熱マネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20221206BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20221206BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20221206BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20221206BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20221206BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20221206BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221206BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20221206BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20221206BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20221206BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221206BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20221206BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20221206BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221206BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20221206BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M10/6556
B60L3/00 H
B60L3/00 J
H01M8/00 Z
H01M8/04029
H01M8/04014
H01M8/04 N
H01M10/613
H01M10/6568
H01M10/6569
H01M10/663
H01M10/625
H01M10/651
F25B1/00 391
B60L50/60
B60L50/70
(21)【出願番号】P 2018243348
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 沙織
(72)【発明者】
【氏名】布施 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】笠松 伸矢
(72)【発明者】
【氏名】小早川 竜太
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-335154(JP,A)
【文献】特開2007-100984(JP,A)
【文献】特開平05-129027(JP,A)
【文献】特開平06-055162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 10/6556
B60L 3/00
H01M 8/00
H01M 8/04029
H01M 8/04014
H01M 10/613
H01M 10/6568
H01M 10/6569
H01M 10/663
H01M 10/625
H01M 10/651
F25B 1/00
B60L 50/60
B60L 50/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放充電または電力変換に伴って発熱する発熱体(12)の熱を管理する熱マネジメントシステムであって、
前記発熱体から受けた熱を輸送する液状の熱輸送媒体(14)と、
前記熱輸送媒体が流れる回路(20)とを備え、
前記回路は、
前記熱輸送媒体と熱交換媒体との熱交換により、前記回路の外部へ前記熱輸送媒体の熱を放出する熱交換器(22)と、
前記熱輸送媒体を貯留するリザーバタンク(23)と有し、
前記回路の一部に、前記熱輸送媒体から生じたガスを前記回路の外部へ抜去する抜去部
(252、255)が形成されて
おり、
前記回路は、前記回路を構成する構成部品を互いにつなぐとともに、前記熱輸送媒体が流れる流路を形成する流路形成部(25)を有し、
前記流路形成部は、第1流路部(251、254)と、前記第1流路部よりもガス透過性が高い第2流路部(252、255)とを有し、
前記抜去部は、前記第2流路部である、熱マネジメントシステム。
【請求項2】
前記熱輸送媒体は、水を含み、
前記熱交換器のうち前記熱輸送媒体と接触する部分は、アルミニウムを含む部材で構成されており、
前記ガスは、水素ガスである、請求項
1に記載の熱マネジメントシステム。
【請求項3】
前記熱輸送媒体は、液状の基材と、オルト珪酸エステルとを含み、イオン性防錆剤を含まない、請求項
1に記載の熱マネジメントシステム。
【請求項4】
前記熱交換媒体は、空気、オイルまたは冷凍サイクルの冷媒である、請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の熱マネジメントシステム。
【請求項5】
前記熱マネジメントシステムは、車両に搭載され、
前記発熱体は、車両走行用の電池、車両に搭載された燃料電池、車両に搭載されたインバータまたは車両に搭載されたモータジェネレータである、請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の熱マネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱マネジメントシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンを冷却するシステムが記載されている。このシステムは、エンジンと、エンジンを冷却する冷却水と、冷却水を放熱させるラジエータと、冷却水を貯留するリザーバタンクとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、充放電または電力変換に伴って発熱する発熱体の熱を管理する熱マネジメントシステムにおいて、次の課題が生じることを見出した。このシステムは、発熱体から受けた熱を輸送する液状の熱輸送媒体と、この熱輸送媒体が流れる回路とを備える。この回路は、熱交換媒体との熱交換によって熱輸送媒体を放熱させる熱交換器と、熱輸送媒体を貯留するリザーバタンクとを有する。熱輸送媒体の漏れを防止するため、リザーバタンクの内部は密閉される。
【0005】
このシステムでは、熱交換媒体からガスが発生する場合がある。例えば、熱輸送媒体に水が含まれ、かつ、熱交換器のうち熱交換媒体と接触する部分がアルミニウムで構成される場合、熱交換器のうち熱交換媒体と接触する部分において水から水素ガスが発生する。また、他の例として、熱輸送媒体に有機溶剤が含まれる場合、有機溶剤が気化してガスが発生する場合がある。この発生したガスは、リザーバタンクの内部に溜まる。これにより、リザーバタンクの内部の圧力が上昇する。このため、リザーバタンクの劣化が早まる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、リザーバタンクの劣化が早まることを抑制できる熱マネジメントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
放充電または電力変換に伴って発熱する発熱体(12)の熱を管理する熱マネジメントシステムであって、
発熱体から受けた熱を輸送する液状の熱輸送媒体(14)と、
熱輸送媒体が流れる回路(20)とを備え、
回路は、
熱輸送媒体と熱交換媒体との熱交換により、回路の外部へ熱輸送媒体の熱を放出する熱交換器(22)と、
熱輸送媒体を貯留するリザーバタンク(23)と有し、
回路の一部に、熱輸送媒体から生じたガスを回路の外部へ抜去する抜去部(252、255)が形成されており、
回路は、回路を構成する構成部品を互いにつなぐとともに、熱輸送媒体が流れる流路を形成する流路形成部(25)を有し、
流路形成部は、第1流路部(251、254)と、第1流路部よりもガス透過性が高い第2流路部(252、255)とを有し、
抜去部は、第2流路部である。
【0008】
これによれば、熱輸送媒体から生じたガスを、抜去部によって抜き去ることができる。このため、熱交換媒体から生じたガスがリザーバタンクに溜まり、リザーバタンクの内圧が上昇することを抑制することができる。よって、リザーバタンクの劣化が早まることを抑制することができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態における熱マネジメントシステムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態におけるリザーバタンクの断面図である。
【
図4】第2実施形態におけるリザーバタンクの一部の断面図である。
【
図5】第3実施形態におけるリザーバタンクの断面図である。
【
図6】第4実施形態におけるリザーバタンクの断面図である。
【
図7】第5実施形態におけるリザーバタンクの一部の断面図である。
【
図8】第6実施形態におけるホースの一部の外観図である。
【
図9】第7実施形態におけるホースの一部の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示す熱マネジメントシステム10は、電動車両に搭載される。以下では、熱マネジメントシステム10は、単に、システム10と呼ばれる。電動車両は、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る。電動車両としては、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電動2輪等が挙げられる。電動車両の車輪数や車両用途は限定されない。電動車両には、走行用電動モータ、電池、インバータが搭載されている。燃料電池自動車では、車両に燃料電池が搭載されている。
【0013】
走行用電動モータは、電池から供給された電力を車両走行用の駆動力に変換するとともに、減速時に車両の動力を電力に変換する電力に変換するモータジェネレータである。走行用電動モータは、動力と電力との変換に伴い発熱する。
【0014】
電池は、走行用電動モータに電力を供給する車両走行用の電池である。電池は、車両減速時に走行用電動モータからの電力を充電する。電池は、車両停車時に外部電源(すなわち、商用電源)から供給される電力の充電が可能である。電池は、充放電に伴い発熱する。
【0015】
インバータは、電池から走行用電動モータへ供給される電力を直流から交流へ変換する電力変換装置である。また、インバータは、走行用電動モータから電池へ充電される電力を交流から直流へ変換する。インバータは、電力の変換に伴い発熱する。
【0016】
燃料電池は、電気化学反応によって燃料の化学エネルギを電力に変換する。燃料電池は、燃料から電力への変換に伴って発熱する。
【0017】
図1に示すように、システム10は、発熱体12と、熱輸送媒体14と、回路20とを備える。発熱体12は、充放電または電力変換に伴って発熱する。発熱体12は、上記した電池、燃料電池、インバータまたはモータジェネレータである。
【0018】
熱輸送媒体14は、液状であり、発熱体12から受けた熱を輸送する。熱輸送媒体14は、液状の基材と、オルト珪酸エステルとを含み、イオン性防錆剤を含まない。
【0019】
基材は、熱輸送媒体14のベースとなる材料である。液状の基材とは、使用状態で液体の状態であることを意味する。基材としては、凝固点降下剤が添加された水が用いられる。水が用いられるのは、水は熱容量が大きく、安価であり、粘性が低いからである。凝固点降下剤が水に添加されるのは、環境温度が氷点下であっても液体の状態を確保するためである。凝固点降下剤は、水に溶解し、水の凝固点を降下させる。凝固点降下剤としては、有機アルコール、例えば、アルキレングリコールまたはその誘導体が用いられる。アルキレングリコールとしては、例えば、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、グリセリンが単独または混合物として用いられる。凝固点降下剤としては、有機アルコールに限らず、無機塩等が用いられてもよい。
【0020】
オルト珪酸エステルは、熱輸送媒体14に防錆の機能を持たせるための化合物である。オルト珪酸エステルが熱輸送媒体14に含まれることで、熱輸送媒体14は防錆の機能を有する。このため、熱輸送媒体14にイオン性防錆剤が含まれなくてもよい。
【0021】
オルト珪酸エステルとしては、一般式(I)で示される化合物が用いられる。
【0022】
【化1】
一般式(I)において、置換基R
1~R
4は、同じ又は異なり、かつ、炭素数1~20のアルキル置換基、炭素数2~20のアルケニル置換基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル置換基、置換又は非置換の炭素数6~12のアリール置換基及び/又は式-(CH
2-CH
2-O)n-R
5のグリコールエーテル-置換基を表す。R
5は、水素又は炭素数1~5のアルキルを表す。nは、1~5の数を表す。
【0023】
オルト珪酸エステルの典型的な例は、純粋なテトラアルコキシシラン、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(イソプロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(t-ブトキシ)シラン、テトラ(2-エチルブトキシ)シラン、又はテトラ(2-エチルヘキソキシ)シラン、並びにさらにテトラフェノキシシラン、テトラ(2-メチルフェノキシ)シラン、テトラビニルオキシシラン、テトラアリルオキシシラン、テトラ(2-ヒドロキシエトキシ)シラン、テトラ(2-エトキシエトキシ)シラン、テトラ(2-ブトキシエトキシ)シラン、テトラ(1-メトキシ-2-プロポキシ)シラン、テトラ(2-メトキシエトキシ)シラン又はテトラ[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]シランである。
【0024】
オルト珪酸エステルとしては、一般式(I)において、置換基R1~R4は、同じであり、かつ、炭素数1~4のアルキル置換基又は式-(CH2-CH2-O)n-R5のグリコールエーテル置換基を表し、R5は水素、メチル又はエチルを表し、nは1、2又は3の数を表す化合物が用いられることが好ましい。
【0025】
オルト珪酸エステルは、熱輸送媒体14の全体に対するケイ素の濃度が1~10000質量ppmとなるように、熱輸送媒体14に含まれる。このケイ素の濃度は、1質量ppm以上2000質量ppm以下であることが好ましい。また、このケイ素の濃度は、2000質量ppmより高く10000質量ppm以下であることが好ましい。上記のオルトケイ酸エステルは、市販されているか又は1当量のテトラメトキシシランを、4当量の相応する長鎖アルコール又はフェノールで簡単にエステル交換し、メタノールを留去することにより製造可能である。
【0026】
熱輸送媒体14にイオン性防錆剤が含まれないため、熱輸送媒体14の導電率は、熱輸送媒体にイオン系防錆剤が含まれる場合と比較して低い。熱輸送媒体14の導電率は、50μS/cm以下であり、好ましくは、1μS/cm以上5μS/cm以下である。
【0027】
なお、熱輸送媒体14には、オルト珪酸エステルに加えて、防錆剤としてのアゾール誘導体が含まれていてもよい。
【0028】
回路20は、受熱部21と、熱交換器22と、リザーバタンク23と、ポンプ24と、ホース25とを有する。
【0029】
受熱部21は、発熱体12から熱輸送媒体14に受熱させる。受熱部21は、発熱体12に隣接して流れる流路によって構成される。受熱部21を構成する部材を介して、発熱体12から熱輸送媒体14へ熱が移動する。
【0030】
熱交換器22は、熱輸送媒体14と熱交換媒体との熱交換により、回路20の外部へ熱輸送媒体14の熱を放出する。熱交換媒体は、空気、オイルまたは冷凍サイクルの冷媒である。
【0031】
リザーバタンク23は、熱輸送媒体14を貯留するタンクである。ポンプ24は、熱輸送媒体14を送る流体機械である。ホース25は、回路20を構成する回路構成部品である受熱部21、熱交換器22およびリザーバタンク23を互いにつなぐとともに、熱輸送媒体14が流れる流路を形成する流路形成部である。
【0032】
ポンプ24の作動によって熱輸送媒体14が回路20を循環する。受熱部21で、熱輸送媒体14は発熱体の熱を受ける。熱交換器22で、熱輸送媒体14の熱が放出される。これにより、発熱体12が冷却される。
【0033】
本実施形態では、熱交換器22のうち熱輸送媒体14と接触する部分は、アルミニウムを含む部材で構成されている。熱輸送媒体14は、水を含む。このため、熱交換器22のうち熱輸送媒体14と接触する部分において、水の電気化学反応により、水素ガスが発生する。そこで、本実施形態では、リザーバタンク23に、熱輸送媒体14から生じた水素ガスを回路20の外部へ抜去する抜去部が形成されている。
【0034】
図2に示すように、リザーバタンク23は、タンク本体部231と、蓋部232とを有する。タンク本体部231の内部には、熱輸送媒体14を貯留するタンク空間233が形成されている。タンク本体部231の内部に、熱輸送媒体14が貯留されている。蓋部232は、タンク本体部231が有する開口部234を塞いでいる。
【0035】
タンク本体部231は、側壁部235と、底壁部236と、上壁部237とを有する。側壁部235は、上下方向に延びている。底壁部236は、側壁部235の下端に連なっている。上壁部237は、側壁部235の上端に連なっている。
【0036】
また、
図3に示すように、タンク本体部231は、第1壁部31と、第2壁部32とを有する。第1壁部31は、タンク空間233を形成する。第2壁部32は、第1壁部31とともにタンク空間233を形成する。第1壁部31は、タンク本体部231の一部である。第2壁部32は、タンク本体部231の他の一部であって、第1壁部31よりもタンク空間233に面する表面の面積が小さい部分である。なお、本実施形態では、第2壁部32は側壁部235に位置する。しかしながら、第2壁部32は、上壁部237に位置していてもよい。
【0037】
第1壁部31と第2壁部32とは同じ厚さである。第2壁部32の水素ガスの透過係数は、同じ厚さで比較したときの第1壁部31の水素ガスの透過係数よりも大きい。このため、第2壁部32は、第1壁部31よりも水素ガスの透過性が高くなっている。第1壁部31を構成する材料としては、例えば、合成樹脂であるポリプロピレンが用いられる。第2壁部32を構成する材料としては、例えば、第1壁部31を構成するポリプロピレンよりも結晶性が低いポリプロピレンが用いられる。
【0038】
以上の説明の通り、本実施形態では、回路20の一部であるリザーバタンク23に、熱輸送媒体14から生じた水素ガスを抜去する抜去部としての第2壁部32が形成されている。これによれば、リザーバタンク23の内部の水素ガスを第2壁部32から回路20の外部へ抜き去ることができる。このため、熱輸送媒体14から生じた水素ガスがリザーバタンク23に溜まることによって、リザーバタンク23の内圧が上昇することを抑制することができる。よって、リザーバタンク23の劣化が早まることを抑制することができる。
【0039】
また、熱輸送媒体14には、オルト珪酸エステルが含まれ、イオン系防錆剤を含まない。このため、熱輸送媒体14にイオン系防錆剤が含まれる場合と比較して、熱輸送媒体14の導電率を低くすることができる。よって、導電率が低い熱輸送媒体14を用いることで、漏れた熱輸送媒体14が発熱体12に触れた場合の液洛の発生を回避することができる。
【0040】
(第2実施形態)
本実施形態では、リザーバタンク23の一部の構成が第1実施形態と異なる。システム10の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0041】
図4に示すように、タンク本体部231は、第1壁部33と、第2壁部34とを有する。第1壁部33、第2壁部34は、それぞれ、第1実施形態の第1壁部31、第2壁部32に対応する。
【0042】
第1壁部33および第2壁部34は、同じ合成樹脂材料、例えば、結晶性が高いポリプロピレンで構成されている。第2壁部34の厚さは、第1壁部33の厚さよりも薄い。換言すると、第2壁部34の厚さ方向で第2壁部34の内部を水素ガスが拡散するときの水素ガスの拡散距離は、第1壁部33の厚さ方向で第1壁部33の内部を水素ガスが拡散するときの水素ガスの拡散距離よりも小さい。これにより、第2壁部34は、第1壁部33よりも水素ガスの透過性が高くなっている。
【0043】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、リザーバタンク23に、水素ガスを抜去する抜去部としての第2壁部34が形成されている。このため、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、第2壁部34の方が第1壁部33よりも拡散距離が小さく、水素ガスの透過性が高くなっていれば、第2壁部34を構成する材料は、第1壁部33を構成する材料と異なっていてもよい。
【0044】
(第3実施形態)
本実施形態では、リザーバタンク23の一部の構成が第1実施形態と異なる。システム10の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0045】
図5に示すように、タンク本体部231の側壁部235に、凸形状部35が形成されている。凸形状部35は、リザーバタンク23の内部に向かって凸の形状である。タンク本体部231の全部は、同じ合成樹脂材料、例えば、結晶性が高いポリプロピレンで構成されている。
【0046】
本実施形態では、
図5の一点鎖線で示す、側壁部235のタンク空間233に面する内側表面が平坦な場合と比較して、側壁部235の内側表面の表面積が増大している。単位面積当たりのガス透過性が同じ材料を比較した場合、水素ガスの接触面積が大きいほど、水素ガスの透過量が多くなる。このため、凸形状部35での水素ガスの透過量は、
図5中の一点鎖線で示される平坦部36での水素ガスの透過量よりも多い。
【0047】
これによれば、リザーバタンク23の内部の水素ガスを凸形状部35からリザーバタンク23の外部へ積極的に抜き去ることができる。このため、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。本実施形態では、凸形状部35が水素ガスを抜去する抜去部に相当する。
【0048】
なお、凸形状部35は、リザーバタンク23の外側に向かって凸の形状であってもよい。また、凸形状部35は、側壁部235のうち
図5に示す部位とは異なる部位に形成されてもよい。また、凸形状部35は、上壁部237に形成されてもよい。なお、一般的なタンクでは、タンクの強度向上を目的として、タンクの底壁部に凸形状部が形成されるが、タンクの側壁部または上壁部に凸形状部は形成されない。
【0049】
(第4実施形態)
本実施形態では、リザーバタンク23の一部の構成が第1実施形態と異なる。システム10の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0050】
図6に示すように、タンク本体部231の上壁部237に貫通した穴41が形成されている。穴41は、タンク本体部231のうち熱輸送媒体14の液面よりも上の位置にある。穴41は、タンク空間233からリザーバタンク23の外部に向けて水素ガスを流すガス通路を構成している。
【0051】
本実施形態によれば、リザーバタンク23の内部の水素ガスを穴41からリザーバタンク23の外部へ抜き去ることができる。このため、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。本実施形態では、穴41が水素ガスを抜去する抜去部に相当する。なお、穴41は、側壁部235のうち熱輸送媒体14の液面よりも上の位置に形成されていてもよい。穴41は、蓋部232に形成されていてもよい。
【0052】
(第5実施形態)
本実施形態では、リザーバタンク23の一部の構成が第1実施形態と異なる。システム10の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0053】
図7に示すように、タンク本体部231は、開口部234を形成する開口形成部238を有する。開口形成部238は、筒状であり、上壁部237から上方に延伸している。
【0054】
蓋部232は、開口部234に挿入される被挿入部261を有する。被挿入部261は、一方向に延伸している。被挿入部261には、2つのOリング262、263が取り付けられている。これらのOリング262、263は、開口形成部238と蓋部232との間からの熱輸送媒体14の漏れを防ぐパッキンである。
【0055】
開口部234に被挿入部261が挿入された状態において、2つのOリング262、263と、開口形成部238の内壁との間に、水素ガスが通過できる隙間42が形成されている。この隙間42の大きさは、下記のように、熱輸送媒体14が通過しないように設定される。発熱体12の冷却時では、ポンプ24の作動によって熱輸送媒体に圧力がかかる。この圧力状態のときのリザーバタンク23の内部と外部との圧力差によって、熱輸送媒体14が隙間42を通過するかしないかが決まる。そこで、この圧力状態のときに、水素ガスが隙間42を通過し、熱輸送媒体14が隙間42を通過しない大きさの圧力損失が隙間42に生じるように、隙間42の大きさが設定される。
【0056】
また、蓋部232のうち2つのOリング262を除く部分と開口形成部238との間にも、水素ガスが通過できる隙間43が形成されている。これらの隙間42、43は、タンク空間233からリザーバタンク23の外部に向けて水素ガスを流すガス通路を構成している。
【0057】
本実施形態によれば、これらの隙間42、43から、リザーバタンク23の内部の水素ガスをリザーバタンク23の外部へ抜き去ることができる。このため、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。本実施形態では、これらの隙間42、43が水素ガスを抜去する抜去部に相当する。
【0058】
(第6実施形態)
本実施形態では、ホース25に抜去部が形成されている点が第1実施形態と異なる。回路20の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0059】
図8に示すように、ホース25は、第1流路部251と第2流路部252とを有する。第1流路部251は、ホース25の一部である。第2流路部252は、ホース25の他の一部である。第1流路部251と第2流路部252とは、継手253を介して、接続されている。第1流路部251と第2流路部252とのそれぞれは、ゴム層のみで構成されている。第2流路部252のゴム層を構成する材料は、第1流路部251のゴム層を構成する材料と比較して、水素ガスのガス透過係数が高い。これにより、第2流路部252は、第1流路部251よりも水素ガスの透過性が高い。
【0060】
第1流路部251のゴム層を構成する材料としては、合成ゴムであるEPDMが用いられる。第2流路部252のゴム層を構成する材料としては、合成ゴムであるシリコーンゴムが用いられる。
【0061】
本実施形態によれば、第2流路部252から水素ガスを回路20の外部へ抜き去ることができる。このため、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。本実施形態では、第2流路部252が、ガスを抜去する抜去部に相当する。
【0062】
なお、第1流路部251と第2流路部252とのそれぞれは、ゴム層とゴム層以外の層との積層体で構成されていてもよい。この場合においても、第2流路部252のゴム層を構成する材料が第1流路部251のゴム層を構成する材料と比較して、水素ガスのガス透過係数が高い。これにより、第2流路部252を構成する積層体全体の水素ガスの透過性が、第1流路部251を構成する積層体全体の水素ガスの透過性よりも高くなっていればよい。
【0063】
また、本実施形態では、第1流路部251と第2流路部252とは、継手253を介して接続されていた。しかしながら、第1流路部251と第2流路部252とは、直に連なっていてもよい。
【0064】
(第7実施形態)
本実施形態では、ホース25に抜去部が形成されている点が第1実施形態と異なる。回路20の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0065】
図9に示すように、ホース25は、第1流路部254と第2流路部255とを有する。第1流路部254は、ホース25の一部である。第2流路部255は、ホース25の他の一部である。第1流路部254と第2流路部255とのそれぞれは、ゴム層のみで構成されている。第1流路部254のゴム層と第2流路部255のゴム層とは、同じ材料で構成されており、かつ、連続している。第2流路部255のゴム層は、第1流路部254のゴム層よりも薄い。これにより、第2流路部255は、第1流路部254よりも水素ガスの透過性が高い。これらのゴム層を構成する材料としては、合成ゴムであるEPDMが用いられる。
【0066】
本実施形態によれば、第2流路部255から水素ガスを回路20の外部へ抜き去ることができる。このため、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。本実施形態では、第2流路部255が、ガスを抜去する抜去部に相当する。
【0067】
なお、第2流路部255のゴム層が第1流路部254のゴム層よりも薄いことにより、第2流路部255の水素ガスの透過性が第1流路部254よりも高ければ、第1流路部254のゴム層と第2流路部255のゴム層とは、異なる材料で構成されていてもよい。
【0068】
第1流路部254と第2流路部255とのそれぞれは、ゴム層とゴム層以外の層との積層体で構成されていてもよい。この場合においても、第2流路部255のゴム層が第1流路部254のゴム層よりも薄い。これにより、第2流路部255を構成する積層体全体の水素ガスの透過性が、第1流路部254を構成する積層体全体の水素ガスの透過性よりも高くなっていればよい。
【0069】
(他の実施形態)
(1)上記した各実施形態では、熱輸送媒体14の基材として、凝固点降下剤が添加された水が用いられていた。しかしながら、熱輸送媒体14の基材として、有機溶剤が用いられてもよい。熱輸送媒体14に有機溶剤が含まれる場合、有機溶剤が気化することで、熱輸送媒体14からガスが発生する。この場合、上記した各実施形態に記載の水素ガスを有機溶剤が気化したガスに読み替えればよい。また、この場合、熱交換器22のうち熱輸送媒体14と接触する部分は、アルミニウムを含む材料で構成されていなくてよい。
【0070】
(2)上記した各実施形態では、ガスを抜去する抜去部は、リザーバタンク23またはホース25に形成されている。しかしながら、抜去部は、熱交換器22、ポンプ24等に形成されてもよい。抜去部は、回路20の一部に形成されていればよい。
【0071】
(3)上記した各実施形態では、発熱体12および回路20は、車両に搭載されていたが、車両に搭載されていなくてもよい。すなわち、発熱体12は、放充電または電力変換に伴って発熱するものであれば、車両に搭載されるものでなくてもよい。このような発熱体12としては、例えば、電動車両の電池を充電する定置用の充電ステーションが備えるインバータ等の電気機器が挙げられる。
【0072】
(4)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0073】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、放充電または電力変換に伴って発熱する発熱体の熱を管理する熱マネジメントシステムは、発熱体から受けた熱を輸送する液状の熱輸送媒体と、熱輸送媒体が流れる回路とを備える。回路は、熱輸送媒体と熱交換媒体との熱交換により、回路の外部へ熱輸送媒体の熱を放出する熱交換器と、熱輸送媒体を貯留するリザーバタンクと有する。回路の一部に、熱輸送媒体から生じたガスを回路の外部へ抜去する抜去部が形成されている。
【0074】
また、第2の観点によれば、抜去部は、リザーバタンクに形成されている。このように、抜去部がリザーバタンクに形成されていることが好ましい。
【0075】
また、第3の観点によれば、リザーバタンクは、熱輸送媒体を貯留するタンク空間を形成する第1壁部と、第1壁部とともにタンク空間を形成し、第1壁部よりもタンク空間に面する表面の面積が小さい第2壁部とを有する。第2壁部は、第1壁部よりもガスの透過性が高くなっている。抜去部は、第2壁部である。このように、抜去部が形成されていることが好ましい。
【0076】
また、第4の観点によれば、リザーバタンクには、熱輸送媒体を貯留するタンク空間からリザーバタンクの外部に向けてガスを流すガス通路が形成されている。抜去部は、ガス通路である。このように、抜去部が形成されていることが好ましい。
【0077】
また、第5の観点によれば、回路は、回路を構成する構成部品を互いにつなぐとともに、熱輸送媒体が流れる流路を形成する流路形成部を有する。抜去部は、流路形成部に形成されている。このように、抜去部が流路形成部に形成されていることが好ましい。
【0078】
また、第6の観点によれば、流路形成部は、第1流路部と、第1流路部よりもガス透過性が高い第2流路部とを有する。抜去部は、第2流路部である。このように、抜去部が形成されていることが好ましい。
【0079】
また、第7の観点によれば、熱輸送媒体は、水を含む。熱交換器のうち熱輸送媒体と接触する部分は、アルミニウムを含む部材で構成されている。ガスは、水素ガスである。第1~第6の観点の熱マネジメントシステムは、第7の観点の構成の場合に、特に有効である。
【0080】
また、第8の観点によれば、熱輸送媒体は、液状の基材と、オルト珪酸エステルとを含み、イオン性防錆剤を含まない。これによれば、熱輸送媒体は、オルト珪酸エステルを含む。このため、熱輸送媒体に防錆機能を持たせることができる。このため、熱輸送媒体に、イオン性防錆剤が含まれなくてもよい。さらに、熱輸送媒体には、オルト珪酸エステルが含まれ、イオン系防錆剤を含まない。このため、熱輸送媒体にイオン系防錆剤が含まれる場合と比較して、熱輸送媒体の導電率を低くすることができる。よって、導電率が低い熱輸送媒体を用いることで、漏れた熱輸送媒体が発熱体に触れた場合の液洛の発生を回避することができる。
【0081】
また、第9の観点によれば、熱交換媒体は、空気、オイルまたは冷凍サイクルの冷媒である。このように、熱交換媒体として、空気、オイルまたは冷凍サイクルの冷媒を用いることができる。
【0082】
また、第10の観点によれば、熱マネジメントシステムは、車両に搭載される。発熱体は、車両走行用の電池、車両に搭載された燃料電池、車両に搭載されたインバータまたは車両に搭載されたモータジェネレータである。このように、第1~第9の観点の熱マネジメントシステムは、第10の観点の構成の場合に、特に有効である。
【符号の説明】
【0083】
12 発熱体
14 熱輸送媒体
20 回路
22 熱交換器
23 リザーバタンク
32 第2壁部
34 第2壁部
35 凸形状部
41 穴
42 隙間