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特許7188085マルチコア光ファイバ増幅器およびマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】マルチコア光ファイバ増幅器およびマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20221206BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20221206BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01S3/067
G02B6/02 461
H01S3/10 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018562449
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2018001602
(87)【国際公開番号】W WO2018135621
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2017009725
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/空間多重フォトニックノード基盤技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】中村 滋
(72)【発明者】
【氏名】ル タヤンディエ ドゥ ガボリ エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】柳町 成行
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219753(JP,A)
【文献】特開平05-206557(JP,A)
【文献】特開2016-220163(JP,A)
【文献】特開2016-127241(JP,A)
【文献】特開2015-167158(JP,A)
【文献】特開2015-095808(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179604(WO,A1)
【文献】特開2012-109653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0229438(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0085352(US,A1)
【文献】特許第7160680(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
G02B 6/02 - 6/036
H04B 10/00 - 10/90
H04J 14/00 - 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素が添加された複数のコアをクラッド内に備えたマルチコア光ファイバ増幅媒体と、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれる波長の信号光を、前記複数のコアの少なくとも一に導入し、前記複数のコアのうち前記信号光を通過させない無信号コアがある状態も許容するように構成された信号光導入手段と、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するための励起光を、前記クラッドに導入するように構成された励起光導入手段と、
前記複数のコアに制御光をそれぞれ導入するように構成された制御光導入手段と、
前記励起光を生成する励起光源と、
前記制御光導入手段を通過する前記制御光であって、前記マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためのコア励起光を生成するコア励起光源と、
前記励起光源および前記コア励起光源の動作を制御する第1の制御手段、を有し、
前記第1の制御手段は、前記複数のコアのうち前記信号光が導入されている信号コアにのみ前記コア励起光が導入されている状態で、前記励起光の前記クラッドへの導入を中止するように、前記励起光源および前記コア励起光源を制御する
マルチコア光ファイバ増幅器。
【請求項2】
希土類元素が添加された複数のコアをクラッド内に備えたマルチコア光ファイバ増幅媒体と、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれる波長の信号光を、前記複数のコアの少なくとも一に導入し、前記複数のコアのうち前記信号光を通過させない無信号コアがある状態も許容するように構成された信号光導入手段と、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するための励起光を、前記クラッドに導入するように構成された励起光導入手段と、
前記複数のコアに制御光をそれぞれ導入するように構成された制御光導入手段と、
前記制御光導入手段を通過する前記制御光であって、波長が前記マルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれるダミー光を生成するダミー光用光源と、
前記制御光導入手段を通過する前記制御光であって、前記マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためのコア励起光を生成するコア励起光源、を有し、
前記制御光導入手段は、
前記複数のコアのうち前記信号光が導入されていない無信号コアに対しては、前記励起光が導入されている場合だけ、前記ダミー光を導入し、
記コア励起光を前記複数のコアのうち前記信号光が導入されている信号コアに導入するように構成されている
マルチコア光ファイバ増幅器。
【請求項3】
請求項2に記載したマルチコア光ファイバ増幅器において、
前記ダミー光および前記コア励起光を合成し、合成制御光を生成する合成手段をさらに有し、
前記制御光導入手段は、前記合成制御光を前記複数のコアにそれぞれ導入するように構成されている
マルチコア光ファイバ増幅器。
【請求項4】
請求項2に記載したマルチコア光ファイバ増幅器において、
前記制御光導入手段は、第1の制御光導入手段と第2の制御光導入手段を含み、
前記第1の制御光導入手段は、前記ダミー光を前記複数のコアにそれぞれ導入するように構成され、
前記第2の制御光導入手段は、前記コア励起光を前記複数のコアにそれぞれ導入するように構成されている
マルチコア光ファイバ増幅器。
【請求項5】
請求項4に記載したマルチコア光ファイバ増幅器において、
前記第1の制御光導入手段は、前記マルチコア光ファイバ増幅媒体の前記信号光の入力側に位置し、
前記第2の制御光導入手段は、前記マルチコア光ファイバ増幅媒体の前記信号光の出力側に位置し、
前記第2の制御光導入手段は、前記マルチコア光ファイバ増幅媒体を伝搬した後の前記ダミー光である伝搬後ダミー光を分離するダミー光分離手段を備え、
前記伝搬後ダミー光の光強度をモニタするモニタ手段と、
前記励起光を生成する励起光源と、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体による利得の前記複数のコア間における差を減少させるように、前記光強度に基いて前記励起光源および前記コア励起光源の出力光パワーを制御する第2の制御手段、をさらに有する
マルチコア光ファイバ増幅器。
【請求項6】
希土類元素が添加された複数のコアをクラッド内に備えたマルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれる波長の信号光を、前記複数のコアの少なくとも一に導入し、前記複数のコアのうち前記信号光を通過させない無信号コアがある状態も許容し、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するために前記クラッドに導入する励起光を生成し、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためのコア励起光を生成し、
前記複数のコアのうち前記信号光が導入されている信号コアにのみ前記コア励起光が導入されている状態で、前記励起光の前記クラッドへの導入を中止する
マルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法。
【請求項7】
希土類元素が添加された複数のコアをクラッド内に備えたマルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれる波長の信号光を、前記複数のコアの少なくとも一に導入し、前記複数のコアのうち前記信号光を通過させない無信号コアがある状態も許容し、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するために前記クラッドに導入する励起光を生成し、
波長が前記マルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれるダミー光を生成し、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためのコア励起光を生成し、
前記ダミー光を、前記無信号コアに導入し、
前記コア励起光を前記複数のコアのうち前記信号光が導入されている信号コアに導入し、
前記マルチコア光ファイバ増幅媒体による利得の前記複数のコア間における差を減少させるように、前記コア励起光の光パワーを制御する
マルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコア光ファイバ増幅器およびマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法に関し、特に、光通信システムや装置間光接続システムに用いられるマルチコア光ファイバ増幅器およびマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信システムにおいては、通信容量の拡大に対応するため、光ファイバのコアを伝送する光信号を時間多重化または波長多重化する技術が研究開発されてきた。近年、コアあたりの光信号パワーの限界が顕在化しつつあり、さらなる通信容量の拡大に向けて、空間多重化技術への取り組みが活発化している。
【0003】
空間多重化技術には、クラッド中に複数のコアが形成されたマルチコア光ファイバが用いられる。複数のコアのそれぞれにより光信号を伝送することによって、光ファイバあたりの信号伝送容量を高めることが可能になる。
【0004】
マルチコア光ファイバを利用する光通信システムを実現するためには、これに対応した光増幅器が必要となる。このような光増幅器として、マルチコア光ファイバの複数のコアにエルビウム(Er)などの希土類元素をドープして光励起を行う光増幅器が提案されている。増幅媒体が添加された複数のコアを光励起する励起方法として、励起光をコアに個別に入射するコア励起法と、励起光をクラッドに入射し複数のコアを一括して光励起するクラッド励起法ある。このクラッド励起法によれば、励起光源は1台だけとすることができ、また、励起光の横モードを多モード化することにより発光部の幅を拡大して発熱を抑制することができる。そのため、低消費電力の光増幅器を実現することが可能である。
【0005】
上述したクラッド励起法とコア励起法を併用したマルチコア光ファイバ増幅器の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された関連するマルチコア光ファイバ増幅器は、増幅用マルチコアファイバ、クラッド励起部、コア励起部、および利得等化器を有する。
【0006】
増幅用マルチコアファイバは、ダブルクラッド構造で構成されるとともにエルビウムイオンを添加した複数のコアを有する。クラッド励起部は、マルチコア光ファイバ増幅器の入力端に接続された第1の伝送用マルチコアファイバと増幅用マルチコアファイバとの間に設けられている。コア励起部は、マルチコア光ファイバ増幅器の出力端に接続された第2の伝送用マルチコアファイバと増幅用マルチコアファイバとの間に設けられている。利得等化器は、コア励起部と第2の伝送用マルチコアファイバとの間に設けられ、利得を平坦化する。
【0007】
関連するマルチコア光ファイバ増幅器においては、WDM(Wavelength Division Multiplexing)信号の主な励起をクラッド励起部が行う。そして、増幅用マルチコアファイバの各コアに入射されるWDM信号の信号数の変化によって生じた出力パワー及び利得の波長依存性に対応するように各コア励起部でコア励起用光源をそれぞれ独立に制御して励起光を補う構成としている。このような構成としたことにより、関連するマルチコア光ファイバ増幅器によれば、利得の平坦性を実現することができるとしている。
【0008】
また、関連技術としては、特許文献2および3に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-219753号公報
【文献】特開平5-206557号公報
【文献】特開2016-127241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
マルチコア光ファイバを用いた伝送路においては、全てのコアに信号光が常に入射されるとは限らない。そのため、複数のコアの一部にのみ信号光が入射され、それ以外のコアには信号光が入射されず無信号光となっている場合が生じえる。この場合、励起光をクラッドに入射し複数のコアを一括して光励起するクラッド励起法によるマルチコア光ファイバ増幅器においては、無信号光の状態では信号光による誘導放出が生じないため、強い反転分布が形成される。
【0011】
このように光ファイバ増幅器において強い反転分布が形成されている状態で信号光を入射する場合について、図7Aおよび図7Bを用いて説明する。図7Aに示したような入力波形を有する信号光を、強い反転分布が形成されている光ファイバ増幅器に入射すると、図7Bに示すように、数100マイクロ秒(μs)程度の間、光強度が極めて大きい光パルスが発生する。このような光パルスは光サージと呼ばれる。光サージが発生すると、光ファイバ増幅器の出力側に位置している光部品や光受信器は損傷を受けることになる。
【0012】
信号光を入射した後に励起光の入射を開始する構成とすれば、強い反転分布が形成されることはないので光サージは発生しない。すなわち、励起光の入射を一旦中止し、信号光が入射されていないコアに信号光を新たに入射し、その後に励起光の入射を再度開始することとすれば、光サージは発生しない。しかし、励起光をクラッドに入射し複数のコアを一括して光励起する構成とした場合、信号光が既に入射されているコアにおける利得も、このような励起光強度の変更動作によって大きく変動することになる。
【0013】
このように、クラッド励起法によるマルチコア光ファイバ増幅器においては、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することが困難であるという問題があった。
【0014】
本発明の目的は、上述した課題を解決するマルチコア光ファイバ増幅器およびマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のマルチコア光ファイバ増幅器は、希土類元素が添加された複数のコアをクラッド内に備えたマルチコア光ファイバ増幅媒体と、マルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれる波長の信号光を、複数のコアにそれぞれ導入するための信号光導入手段と、マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するための励起光を、クラッドに導入するための励起光導入手段と、複数のコアに制御光をそれぞれ導入するための制御光導入手段、とを有し、制御光導入手段は、複数のコアのうち信号光が導入されていない無信号コアに対しては、励起光が導入されている場合だけ、制御光を導入する。
【0016】
本発明のマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法は、希土類元素が添加された複数のコアをクラッド内に備えたマルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれる波長の信号光を、複数のコアの少なくとも一に導入し、マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためにクラッドに導入する励起光を生成し、複数のコアに導入する制御光を生成し、複数のコアのうち信号光が導入されていない無信号コアに対しては、励起光が導入されている場合だけ、制御光を導入する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のマルチコア光ファイバ増幅器によれば、クラッド励起法による場合であっても、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することができる。
【0018】
本発明のマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法によれば、クラッド励起法による場合であっても、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第4の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器の別の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第5の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器の構成を示すブロック図である。
図7A】光ファイバ増幅器で発生し得る光サージ効果について説明する図であって、光ファイバ増幅器の入力光の波形を示す図である。
図7B】光ファイバ増幅器で発生し得る光サージ効果について説明する図であって、光ファイバ増幅器の出力光の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器100の構成を示すブロック図である。
【0022】
マルチコア光ファイバ増幅器100は、マルチコア光ファイバ増幅媒体110、信号光導入部(信号光導入手段)120、励起光導入部(励起光導入手段)130、および制御光導入部(制御光導入手段)140を有する。
【0023】
マルチコア光ファイバ増幅媒体110は、希土類元素が添加された複数のコア111をクラッド112内に備える。ここで、希土類元素として、典型的にはエルビウム(Er)を用いることができる。これにより、マルチコア光ファイバ増幅媒体110は、光通信システムで用いられる波長が1.55マイクロメートル(μm)帯の信号光を増幅することが可能である。また、クラッド112は、二層化したダブルクラッド構造とすることができる。
【0024】
信号光導入部120は、マルチコア光ファイバ増幅媒体110の利得帯域に含まれる波長の信号光11を、複数のコア111にそれぞれ導入するように構成されている。
【0025】
励起光導入部130は、マルチコア光ファイバ増幅媒体110を励起するための励起光12を、クラッド112に導入するように構成されている。ここで、希土類元素としてエルビウム(Er)をコア111に添加(ドープ)した場合、励起光12として、波長が0.98マイクロメートル(μm)または1.48マイクロメートル(μm)であるレーザ光を用いることができる。
【0026】
制御光導入部140は、複数のコア111に制御光13をそれぞれ導入するように構成されている。ここで、制御光導入部140は、複数のコア111のうち信号光11が導入されていない無信号コアに対しては、励起光12が導入されている場合だけ、制御光13を導入する。
【0027】
このように、本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器100においては、励起光12が導入されている場合だけ、制御光13が無信号コアに導入される。そのため、制御光13が増幅されることにより励起光12による強い反転分布の形成は回避される。このとき、複数のコア111のうち信号光11が導入されている信号コアの利得は、励起光12が導入されているので、変動することはない。
【0028】
上述したように、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器100によれば、クラッド励起法による場合であっても、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することができる。
【0029】
次に、本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法について説明する。
【0030】
本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法においては、まず、希土類元素が添加された複数のコアをクラッド内に備えたマルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれる波長の信号光を、複数のコアの少なくとも一に導入する。このマルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためにクラッドに導入する励起光を生成する。また、複数のコアに導入する制御光を生成する。そして、複数のコアのうち信号光が導入されていない無信号コアに対しては、励起光が導入されている場合だけ、制御光を導入する。
【0031】
上述したように、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法によれば、クラッド励起法による場合であっても、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することができる。
【0032】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図2に、本発明の第2の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器200の構成を示す。
【0033】
本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器200は、マルチコア光ファイバ増幅媒体としての増幅用光ファイバ222、励起光導入手段としてのクラッド励起導入部241、信号光導入部221、および制御光導入手段としてのダミー光導入部225を有する。
【0034】
増幅用光ファイバ222は、図2に示した例では例えば7個のコアC01~C07を有するマルチコア光ファイバに希土類元素がドープされた構成である。希土類元素として、典型的にはエルビウム(Er)を用いることができる。これにより、増幅用光ファイバ222は、光通信システムで用いられる波長が1.55マイクロメートル(μm)帯の信号光を増幅することが可能である。
【0035】
クラッド励起導入部241は、クラッド励起光源230から出力されたクラッド励起光240を増幅用光ファイバ222のクラッドに入力する。信号光導入部(信号光導入手段)221は、増幅用光ファイバ222のそれぞれのコアに信号光201~207を入力する。ダミー光導入部225は、ダミー光源251~257から出力されたダミー光261~267をそれぞれのコアに入力する。ここで、ダミー光(制御光)は、波長が増幅用光ファイバ222の利得帯域に含まれる。
【0036】
クラッド励起導入部241およびダミー光導入部225として、典型的には光ファイバカプラ等の光合波器を用いることができる。
【0037】
さらに、本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器200は、増幅用光ファイバ222を伝搬した後の信号光である伝搬後信号光211~217をそれぞれのコアから出力する信号光出力部223を備えた構成とした。
【0038】
次に、本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器200の動作について説明する。ここでは、信号光201~206はマルチコア光ファイバ増幅器200に入力されているが、信号光207は入力されていない状態、すなわち、コアC07は無信号光状態である場合を例として説明する。
【0039】
マルチコア光ファイバ増幅器200は励起光源230をオン状態とし、励起光240が増幅用光ファイバ222のクラッドに入力される。この光励起により信号光201~206は増幅される。また、コアC01~C07には、ダミー光源251~257からダミー光261~267が入力される。これにより、無信号光状態のコアC07においては、ダミー光源257からのダミー光267が入力されて増幅されるので、強い反転分布が形成されるのを回避することができる。そのため、この状態でコアC07への信号光207の入力を開始する場合には、光サージ効果が生じることを抑制することができる。
【0040】
このとき、信号光201~206が導入されているコアC01~C06の利得は、励起光240が導入されているので、変動することはない。
【0041】
このように、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器200においては、励起光をクラッドに入射し複数のコアを一括して光励起している状態で無信号光状態にあるコアへ信号光を入力する際に、ダミー光を用いて強い反転分布状態の形成を回避する。これにより、光サージ効果が抑制される。すなわち、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器200によれば、クラッド励起法による場合であっても、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することができる。
【0042】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図3に、本発明の第3の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器300の構成を示す。第2の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器200と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0043】
本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器300は、マルチコア光ファイバ増幅媒体としての増幅用光ファイバ222、励起光導入手段としてのクラッド励起導入部241、信号光導入部221、および制御光導入手段としてのコア励起光導入部324を有する。
【0044】
増幅用光ファイバ222は、図3に示した例では例えば7個のコアC01~C07を有するマルチコア光ファイバに希土類元素がドープされた構成である。希土類元素として、典型的にはエルビウム(Er)を用いることができる。
【0045】
クラッド励起導入部241は、クラッド励起光源230から出力されたクラッド励起光240を増幅用光ファイバ222のクラッドに入力する。信号光導入部221は、増幅用光ファイバ222のそれぞれのコアに信号光201~207を入力する。
【0046】
コア励起光導入部324は、励起光源としてのコア励起光源331~337から出力されたコア励起光341~347をそれぞれのコアに入力する。ここで、コア励起光源331~337は、制御光であって、増幅用光ファイバ222を励起するためのコア励起光を生成する。
【0047】
本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器300は、さらに、クラッド励起光源230およびコア励起光源331~337の動作を制御する第1の制御部(第1の制御手段)371を有する。そして、第1の制御部371は、複数のコアC01~C07のうち信号光が導入されている信号コアにのみコア励起光が導入されている状態で、クラッド励起光240のクラッドへの導入を中止するように、クラッド励起光源230およびコア励起光源331~337を制御する。すなわち、第1の制御部371は、無信号光状態にあるコアに信号光を入力する際に、クラッド励起光源230およびコア励起光源331~337の制御を行う。
【0048】
クラッド励起導入部241およびコア励起光導入部324として、典型的には光ファイバカプラ等の光合波器を用いることができる。
【0049】
なお、図3には、増幅用光ファイバ222を伝搬した後の信号光である伝搬後信号光211~217をそれぞれのコアから出力する信号光出力部223を備えた構成を示す。
【0050】
次に、本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器300の動作について説明する。ここでは、信号光201~206はマルチコア光ファイバ増幅器300に入力されているが、信号光207は入力されていない状態、すなわち、コアC07は無信号光状態である場合を例として説明する。
【0051】
マルチコア光ファイバ増幅器300が備える第1の制御部371は、励起光源230をオン状態とする。これにより、励起光240が増幅用光ファイバ222のクラッドに入力される。この光励起により信号光201~206は増幅される。
【0052】
この状態において、信号光207の入力を開始する場合、第1の制御部371はコア励起光源331~336をオン状態とし、コア励起光源337はオフ状態とする。この後、第1の制御部371は、クラッド励起光源230を一旦オフ状態にする。これによりクラッド励起光240はクラッドに入力されなくなる。しかし、コアC01~C06にはそれぞれ、コア励起光341~346が入力されているので、信号光201~206に対する増幅動作は維持される。
【0053】
第1の制御部371は、コアC07に信号光207が入力された後、クラッド励起光源230を再びオン状態とする。このとき、コア励起光源337もオン状態として、コア励起光347およびコア励起光341~346の光パワーを制御することにより、増幅用光ファイバ222による利得の複数のコア間における差を減少させることができる。
【0054】
上述した第1の制御部371の動作により、信号光207の入力を開始する際における、光サージ効果を抑制することができる。
【0055】
次に、本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法について説明する。
【0056】
本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法においては、まず、希土類元素が添加された複数のコアをクラッド内に備えたマルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれる波長の信号光を、複数のコアの少なくとも一に導入する。このマルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためにクラッドに導入する励起光を生成する。また、複数のコアに導入する制御光を生成する。そして、複数のコアのうち信号光が導入されていない無信号コアに対しては、励起光が導入されている場合だけ、制御光を導入する。
【0057】
ここで、上記の制御光は、マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためのコア励起光である。そして、複数のコアのうち信号光が導入されている信号コアにのみコア励起光が導入されている状態で、励起光のクラッドへの導入を中止する。
【0058】
上述したように、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器300およびマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法においては、励起光をクラッドに入射し複数のコアを一括して光励起している状態で無信号光状態にあるコアへ信号光を入力する。このとき、各励起光源の動作を制御する構成としている。これにより、光サージ効果を抑制することが可能になる。すなわち、クラッド励起法による場合であっても、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することができる。
【0059】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図4に、本発明の第4の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器400の構成を示す。第2の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器200および第3の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器300と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0060】
本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器400は、マルチコア光ファイバ増幅媒体としての増幅用光ファイバ222、励起光導入手段としてのクラッド励起導入部241、信号光導入部221、および信号光出力部223を有する。
【0061】
増幅用光ファイバ222は、図4に示した例では例えば7個のコアC01~C07を有するマルチコア光ファイバに希土類元素がドープされた構成である。希土類元素として、典型的にはエルビウム(Er)を用いることができる。
【0062】
クラッド励起導入部241は、クラッド励起光源230から出力されたクラッド励起光240を増幅用光ファイバ222のクラッドに入力する。信号光導入部221は、増幅用光ファイバ222のそれぞれのコアに信号光201~207を入力する。また、信号光出力部223は、増幅用光ファイバ222を伝搬した後の信号光である伝搬後信号光211~217をそれぞれのコアから出力する。
【0063】
マルチコア光ファイバ増幅器400は、さらに、ダミー光用光源としてのダミー光源251~257、コア励起光源331~337、および制御光導入部(制御光導入手段)を備える。ダミー光源251~257は、制御光であって、波長が増幅用光ファイバ222の利得帯域に含まれるダミー光261~267を生成する。コア励起光源331~337は、制御光であって、増幅用光ファイバ222を励起するためのコア励起光341~347を生成する。そして、制御光導入部は、ダミー光261~267およびコア励起光341~347を複数のコアにそれぞれ導入するように構成されている。
【0064】
制御光導入部は、具体的には例えば、図4に示したように、第1の制御光導入部(第1の制御光導入手段)425および第2の制御光導入部(第2の制御光導入手段)424を含む構成とすることができる。ここで、第1の制御光導入部425は、ダミー光261~267を複数のコアC01~C07にそれぞれ導入するように構成されている。また、第2の制御光導入部424は、コア励起光341~347を複数のコアC01~C07にそれぞれ導入するように構成されている。第1の制御光導入部425および第2の制御光導入部424として、典型的には光ファイバカプラ等の光合波器を用いることができる。
【0065】
次に、本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器400の動作について説明する。ここでは、信号光201~206はマルチコア光ファイバ増幅器400に入力されているが、信号光207は入力されていない状態、すなわち、コアC07は無信号光状態である場合を例として説明する。
【0066】
マルチコア光ファイバ増幅器400は励起光源230をオン状態とする。これによって、励起光240が増幅用光ファイバ222のクラッドに入力される。この光励起により信号光201~206は増幅される。このとき、コア励起光源331~336をオン状態とし、コア励起光341~346の光パワーを制御することにより、増幅用光ファイバ222による利得の複数のコア間における差を減少させることができる。
【0067】
また、コアC01~C07のうち少なくともコアC07には、ダミー光源257からダミー光267が入力されている。すなわち、無信号光状態であるコアC07においては、ダミー光源257からのダミー光267が入力されて増幅されるので、強い反転分布が形成されるのを回避することができる。そのため、この状態でコアC07への信号光207の入力を開始する場合には、光サージ効果が生じることを抑制することができる。
【0068】
このとき、信号光201~206が導入されているコアC01~C06の利得は、励起光240およびコア励起光341~346が導入されているので、変動することなく一定に保つことが可能である。
【0069】
コアC07に信号光207が入力された後、ダミー光源257はオフ状態にされる。このとき、コア励起光源337をオン状態とし、コア励起光347の光パワーも制御することにより、増幅用光ファイバ222による利得の複数のコア間における差を減少させることができる。
【0070】
このように、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器400においては、励起光をクラッドに入射し複数のコアを一括して光励起している状態で無信号光状態にあるコアへ信号光を入力する際に、ダミー光を用いて強い反転分布状態の形成を回避する。これにより、光サージ効果が抑制される。すなわち、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器400によれば、クラッド励起法による場合であっても、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することができる。
【0071】
上記説明では、制御光導入部は、第1の制御光導入部425および第2の制御光導入部424を含む構成とした。しかし、これに限らず、図5に示したマルチコア光ファイバ増幅器401のように、第1の制御光導入部425および第2の制御光導入部424に替えて、制御光導入部としての一の合成制御光導入部426を備えた構成としてもよい。マルチコア光ファイバ増幅器401は、さらに、合成部481~487および光源制御部472を備える。
【0072】
ここで、合成部481~487はそれぞれ、ダミー光261~267およびコア励起光341~347を合成し、合成制御光491~497を生成する。合成部481~487は、典型的には合波器により構成される。合成制御光導入部426は、合成制御光491~497を複数のコアC01~C07にそれぞれ導入するように構成されている。合成制御光導入部426として、典型的には光ファイバカプラ等の光合波器を用いることができる。光源制御部472は上述したように、各コアC01~C07に入力される信号光201~207の有無に応じて、コア励起光源331~337およびダミー光源251~257のオンオフ制御を行う。
【0073】
このような構成としたマルチコア光ファイバ増幅器401によっても、上述したマルチコア光ファイバ増幅器400と同様の動作をすることにより、光サージ効果を抑制することができる。さらに、マルチコア光ファイバ増幅器401においては、ダミー光261~267およびコア励起光341~347をそれぞれ増幅用光ファイバ222に入力するために、合成制御光導入部426を共通に用いる構成としている。そのため、マルチコア光ファイバ増幅器401によれば、装置構造を簡単化し、小型化することが可能になる。
【0074】
次に、本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法について説明する。
【0075】
本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法においては、まず、希土類元素が添加された複数のコアをクラッド内に備えたマルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれる波長の信号光を、複数のコアの少なくとも一に導入する。このマルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためにクラッドに導入する励起光を生成する。また、複数のコアに導入する制御光を生成する。そして、複数のコアのうち信号光が導入されていない無信号コアに対しては、励起光が導入されている場合だけ、制御光を導入する。
【0076】
上記の制御光には、波長がマルチコア光ファイバ増幅媒体の利得帯域に含まれるダミー光と、マルチコア光ファイバ増幅媒体を励起するためのコア励起光が含まれる。ここで、ダミー光を、複数のコアのうち少なくとも信号光が導入されていない無信号コアに導入し、コア励起光を複数のコアのうち信号光が導入されている信号コアに導入する。そして、マルチコア光ファイバ増幅媒体による利得の複数のコア間における差を減少させるように、コア励起光の光パワーを制御する。
【0077】
上述したように、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器400、401およびマルチコア光ファイバ増幅媒体を用いた光増幅方法においては、励起光をクラッドに入射し複数のコアを一括して光励起している状態で無信号光状態にあるコアへ信号光を入力する。このとき、ダミー光を用いて強い反転分布状態の形成を回避することにより、光サージ効果を抑制することができる。すなわち、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器400によれば、クラッド励起法による場合であっても、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することができる。
【0078】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図6に、本発明の第5の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器500の構成を示す。第2の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器200および第3の実施形態に係るマルチコア光ファイバ増幅器300と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0079】
本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器500は、マルチコア光ファイバ増幅媒体としての増幅用光ファイバ222、励起光導入手段としてのクラッド励起導入部241、信号光導入部221、および信号光出力部223を有する。
【0080】
増幅用光ファイバ222は、図6に示した例では例えば7個のコアC01~C07を有するマルチコア光ファイバに希土類元素がドープされた構成である。希土類元素として、典型的にはエルビウム(Er)を用いることができる。
【0081】
クラッド励起導入部241は、クラッド励起光源230から出力されたクラッド励起光240を増幅用光ファイバ222のクラッドに入力する。信号光導入部221は、増幅用光ファイバ222のそれぞれのコアに信号光201~207を入力する。また、信号光出力部223は、増幅用光ファイバ222を伝搬した後の信号光である伝搬後信号光211~217をそれぞれのコアから出力する。
【0082】
マルチコア光ファイバ増幅器500は、さらに、ダミー光用光源としてのダミー光源251~257、コア励起光源331~337、および制御光導入部(制御光導入手段)を備える。ダミー光源251~257は、制御光であって、波長が増幅用光ファイバ222の利得帯域に含まれるダミー光261~267を生成する。コア励起光源331~337は、制御光であって、増幅用光ファイバ222を励起するためのコア励起光341~347を生成する。そして、制御光導入部は、ダミー光261~267およびコア励起光341~347を複数のコアにそれぞれ導入するように構成されている。
【0083】
制御光導入部は、第1の制御光導入部(第1の制御光導入手段)525および第2の制御光導入部(第2の制御光導入手段)524を含む構成とした。ここで、第1の制御光導入部525は、ダミー光261~267を複数のコアC01~C07にそれぞれ導入するように構成されている。また、第2の制御光導入部524は、コア励起光341~347を複数のコアC01~C07にそれぞれ導入するように構成されている。第1の制御光導入部525および第2の制御光導入部524として、典型的には光ファイバカプラ等の光合波器を用いることができる。
【0084】
本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器500においては、第1の制御光導入部525は、増幅用光ファイバ222の信号光201~207の入力側に位置し、第2の制御光導入部524は、出力側に位置する構成とした。ここで、第2の制御光導入部524は、増幅用光ファイバ222を伝搬した後のダミー光である伝搬後ダミー光を分離するダミー光分離部(ダミー光分離手段)を備えている。
【0085】
マルチコア光ファイバ増幅器500はさらに、伝搬後ダミー光の光強度をモニタする光強度モニタ(モニタ手段)591~597、光強度モニタ591~597に伝搬後ダミー光を導入する分波部581~587、および第2の制御部(第2の制御手段)573を備える。ここで、第2の制御部573は、増幅用光ファイバ222による利得の複数のコアC01~C07間における差を減少させるように、モニタした光強度に基いてクラッド励起光源230およびコア励起光源331~337の出力光パワーを制御する。
【0086】
次に、本実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器500の動作について説明する。ここでは、信号光201~206はマルチコア光ファイバ増幅器500に入力されているが、信号光207は入力されていない状態、すなわち、コアC07は無信号光状態である場合を例として説明する。
【0087】
マルチコア光ファイバ増幅器500が備える第2の制御部573は励起光源230をオン状態とする。これによって、励起光240が増幅用光ファイバ222のクラッドに入力される。この光励起により信号光201~206は増幅される。このとき、コア励起光源331~336をオン状態とし、コア励起光341~346の光パワーを制御することにより、増幅用光ファイバ222による利得の複数のコア間における差を減少させることができる。
【0088】
また、コアC01~C07には、ダミー光源251~257からダミー光261~267が入力されている。すなわち、無信号光状態であるコアC07においては、ダミー光源257からのダミー光267が入力されて増幅されるので、強い反転分布が形成されるのを回避することができる。そのため、この状態でコアC07への信号光207の入力を開始する場合、光サージ効果が生じることを抑制することができる。
【0089】
このとき、信号光201~206が導入されているコアC01~C06の利得は、励起光240およびコア励起光341~346が導入されているので、変動することなく一定に保つことが可能である。
【0090】
また、増幅用光ファイバ222を伝搬し第2の制御光導入部524に到達した伝搬後ダミー光は、第2の制御光導入部524が備えるダミー光分離部によって分離され、分波部581~587を介して光強度モニタ591~597に導入される。このとき、第2の制御部573が、モニタした光強度に基づいて、クラッド励起光源230およびコア励起光源331~337を制御することにより、コアC01~C07間の利得差を低減することができる。
【0091】
上述したように、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器500においては、励起光をクラッドに入射し複数のコアを一括して光励起している状態で無信号光状態にあるコアへ信号光を入力する際に、ダミー光を用いて強い反転分布状態の形成を回避する。これにより、光サージ効果が抑制される。すなわち、本実施形態のマルチコア光ファイバ増幅器500によれば、クラッド励起法による場合であっても、信号光が入射されているコアの利得の変動を生じることなく、無信号光状態のコアに信号光を入射することによる光サージの発生を抑制することができる。
【0092】
さらに、マルチコア光ファイバ増幅器500においては、コア励起光341~347を増幅用光ファイバ222に入力し、増幅された伝搬後ダミー光を分離するために、第2の制御光導入部524を共通に用いる構成としている。そのため、マルチコア光ファイバ増幅器500によれば、装置構造を簡単化し、小型化することが可能になる。
【0093】
上述した各実施形態においては、7個のコアC01~C07を有するマルチコア光ファイバに希土類元素がドープされた構成である増幅用光ファイバ222を例に説明した。しかし、コアの個数はこれに限定されず、異なるコア数の場合であっても、上述した各実施形態によるマルチコア光ファイバ増幅器と同様の効果を得ることができる。
【0094】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0095】
この出願は、2017年1月23日に出願された日本出願特願2017-009725を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0096】
100、200、300、400、401、500 マルチコア光ファイバ増幅器
110 マルチコア光ファイバ増幅媒体
111 コア
112 クラッド
120 信号光導入部
130 励起光導入部
140 制御光導入部
201~207 信号光
211~217 伝搬後信号光
221 信号光導入部
222 増幅用光ファイバ
223 信号光出力部
225 ダミー光導入部
230 クラッド励起光源
240 クラッド励起光
241 クラッド励起導入部
251~257 ダミー光源
261~267 ダミー光
324 コア励起光導入部
331~337 コア励起光源
341~347 コア励起光
371 第1の制御部
424、524 第2の制御光導入部
425、525 第1の制御光導入部
426 合成制御光導入部
472 光源制御部
481~487 合成部
491~497 合成制御光
573 第2の制御部
581~587 分波部
591~597 光強度モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B