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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】携帯型印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221206BHJP
   B41J 3/28 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J3/28
B41J2/175 119
B41J2/175 113
B41J2/175 501
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019003682
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020110985
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 昌伸
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-103839(JP,A)
【文献】特開平09-277565(JP,A)
【文献】特表2005-516827(JP,A)
【文献】特開2002-052732(JP,A)
【文献】特開2001-293884(JP,A)
【文献】特開2014-141019(JP,A)
【文献】特開2018-062389(JP,A)
【文献】特開2002-052734(JP,A)
【文献】特開2002-052741(JP,A)
【文献】特表2018-535860(JP,A)
【文献】実公平03-010885(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0076045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
B41J 2/01
B41J 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが貯留される少なくとも1つの内部空間を有する球状のカートリッジと、
鉛直方向に対する傾きが所定範囲内の前記カートリッジの姿勢である基準姿勢において、前記カートリッジの下部に設けられた錘と、
前記カートリッジを収容するケースと、
前記ケースと前記カートリッジとの間に配置され、前記カートリッジの外表面に沿った全方向に、前記カートリッジを前記基準姿勢のまま前記ケースに対して相対移動可能に支持する軸受ユニットと、
複数のノズルが形成されたノズル面を有し、前記ケースに支持されたインクヘッドと、
一端が前記インクヘッドに接続されると共に、前記基準姿勢における前記カートリッジの上部を通して前記内部空間内にまで延び、他端が前記カートリッジの下部近傍に配置されて、前記カートリッジと前記インクヘッドとを連通するチューブと、
前記インクヘッドのインクを吐出する吐出動作を制御する制御ユニットと、を備えた携帯型印刷装置。
【請求項2】
前記チューブの前記他端の一部が、前記カートリッジの下部に当接している、請求項1に記載の携帯型印刷装置。
【請求項3】
前記チューブの前記他端の一部が、鉛直方向において、前記基準姿勢にある前記錘の上端より下方に配置されている、請求項1又は2に記載の携帯型印刷装置。
【請求項4】
前記カートリッジの外表面に沿った前記インクヘッドと前記カートリッジの上部との間の距離の変化に応じて、前記チューブの余剰分の巻き取り又は前記チューブの不足分の送り出しを行う巻取ユニットを更に備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の携帯型印刷装置。
【請求項5】
前記チューブは、前記インクヘッドと前記カートリッジの上部との間の距離の変化に応じた長さの部分が、前記ケースと前記カートリッジとの間に配置される、請求項4に記載の携帯型印刷装置。
【請求項6】
前記カートリッジの前記上部には、前記内部空間と連通する開口が設けられ、
前記カートリッジの外表面には、前記開口から鉛直方向に延びる案内溝が設けられ、
前記チューブは、前記開口を通じて前記内部空間内にまで延びると共に、前記案内溝に案内されつつ、前記案内溝に嵌まり込んで配置される、請求項4又は5に記載の携帯型印刷装置。
【請求項7】
前記巻取ユニットは、前記カートリッジを前記チューブの不足分の送り出し量が最小の状態から前記チューブの不足分の送り出し量が最大の状態に変位させた際に、前記チューブの他端と前記カートリッジの回動中心とを結ぶ仮想直線と、前記回動中心を通る鉛直線とが作る仮想平面内において、前記鉛直線に対する前記仮想直線の交差角度の変化が0°以上10°以下にある前記基準姿勢を前記カートリッジが維持できるように、前記チューブの巻取力が設定されている、請求項4~6のいずれか1項に記載の携帯型印刷装置。
【請求項8】
前記巻取ユニットは、前記チューブを螺旋状に巻き取る円柱状の巻取体を有し、その周面には、前記巻取体の軸心を中心として螺旋状に周回する巻取溝が形成され、
前記チューブが、前記巻取溝に嵌るように前記巻取ユニットに巻き取られる、請求項4~7のいずれか1項に記載の携帯型印刷装置。
【請求項9】
前記軸受ユニットは、前記カートリッジの外表面に沿って分散して配置されて前記カートリッジの外表面を支持する複数のベアリング球と、前記ベアリング球同士の相対位置を維持しつつ前記複数のベアリング球の各々を回転自在に支持する支持部材とを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の携帯型印刷装置。
【請求項10】
前記ケースは、前記複数のベアリング球と接触することにより前記カートリッジを支持する球状の内壁面を有する、請求項9に記載の携帯型印刷装置。
【請求項11】
前記カートリッジと前記インクヘッドとを連通するインク流路の途中に設けられ、前記カートリッジが連通する連通先を切り替えるバルブユニットと、
外部を前記バルブユニットに連通する連通流路と、を更に備え、
前記バルブユニットは、
前記カートリッジと前記インクヘッドとの間を連通して印刷用インク経路を形成すると共に、外部に対して前記印刷用インク経路が遮断された第1の形態と、
前記インクヘッドと外部との間を連通してパージ用インク経路を形成すると共に、前記カートリッジに対して前記パージ用インク経路が遮断された第2の形態と、
前記カートリッジと外部との間を連通して補充用インク経路を形成すると共に、前記インクヘッドに対して前記補充用インク経路が遮断された第3の形態と、
の間で切替可能に構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の携帯型印刷装置。
【請求項12】
前記カートリッジの前記内部空間は、前記鉛直方向の上方から見下ろしたときに異なる種類のインク毎に区画される複数のサブ空間で構成され、
前記チューブは、前記サブ空間から前記インクを個別に前記インクヘッドへ供給可能に配置されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の携帯型印刷装置。
【請求項13】
印刷対象物の表面に沿って、前記インクヘッドと前記印刷対象物との相対移動距離を計測すると共に、その計測結果を前記制御ユニットに送信するエンコーダを更に備え、
前記制御ユニットは、前記相対移動距離に基づいて前記インクヘッドの前記吐出動作を制御する、請求項1~12のいずれか1項に記載の携帯型印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型印刷装置に関し、特に使用中におけるインクの漏出を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型印刷装置として、例えば特許文献1に開示されるように、グリップ部と、電源と、インクを貯留するカートリッジと、電源からの供給電力によりカートリッジ内のインクを吐出するインクヘッドと、画像データに応じてインクヘッドからのインクの吐出を制御する制御部とを備えるものがある。
【0003】
この印刷装置では、印刷対象物の表面に印刷するとき、印刷対象物の表面にインクヘッドを対向させた状態で、制御部がインクヘッドからインクを吐出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-106339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような携帯型印刷装置では、印刷対象物の表面の位置に合わせて、印刷装置の姿勢を変更する場合がある。インクヘッドとカートリッジが固定の位置関係にあると、カートリッジ内のインク液面の位置が変動することで、インクヘッドがエアを吸い込んでインクの吐出不良を生じるおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、カートリッジを備える携帯型印刷装置において、使用中に印刷装置の姿勢を変更する際、カートリッジ内のインク液面の位置が変動し難く、良好な吐出特性を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る携帯型印刷装置は、インクが貯留される少なくとも1つの内部空間を有する球状のカートリッジと、鉛直方向に対する傾きが所定範囲内の前記カートリッジの姿勢である基準姿勢において、前記カートリッジの下部に設けられた錘と、前記カートリッジを収容するケースと、前記ケースと前記カートリッジとの間に配置され、前記カートリッジの外表面に沿った全方向に、前記カートリッジを前記基準姿勢のまま前記ケースに対して相対移動可能に支持する軸受ユニットと、複数のノズルが形成されたノズル面を有し、前記ケースに支持されたインクヘッドと、一端が前記インクヘッドに接続されると共に、前記基準姿勢における前記カートリッジの上部を通して前記内部空間内にまで延び、他端が前記カートリッジの下部近傍に配置されて、前記カートリッジと前記インクヘッドとを連通するチューブと、前記インクヘッドのインクを吐出する吐出動作を制御する制御ユニットと、を備えている。
【0008】
上記構成によれば、例えば、印刷装置の姿勢が変更された場合であっても、ケースとカートリッジとの間に配置された軸受ユニットにより、ケースに対してカートリッジの外表面に沿った全方向にカートリッジが自在に相対移動し、カートリッジの下部に設けられた錘が常に鉛直方向下方を向くようにカートリッジの姿勢が調整される。これにより、使用中に印刷装置の姿勢を変更する際でも、カートリッジ内のインク液面の位置が変動し難く、チューブを介してインクがインクヘッドへ安定して供給される。
【0009】
よって、印刷装置の姿勢の変更により、インクヘッドがエアを吸い込んで吐出不良を生じるのを防止できる。従って、印刷対象物の表面に良好に印刷できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクを貯留するカートリッジを備える携帯型印刷装置において、使用中に印刷装置の姿勢を変更する際にカートリッジ内のインク液面の位置が変動するのを防止することにより、印刷対象物の表面に良好に印刷できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るプリンタの外観図である。
図2図1のプリンタのインクヘッドが上側に配置された状態の断面図である。
図3図1のプリンタのインクヘッドが下側に配置された状態の断面図である。
図4図1のプリンタの巻取ユニットの外観図である。
図5図1のプリンタのインクヘッドの位置を変更した状態を示す断面図である。
図6図1のプリンタのバルブユニットの内部構造を示す図である。
図7】第2実施形態に係るプリンタのカートリッジの上方から見下ろした模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るプリンタ1の外観図である。プリンタ1は、ケース4及びインクヘッド7を含む。軸受ユニット5については、複数のベアリング球14のみを図示する。図2は、インクヘッド7が、ケース4の上側に位置した状態の断面図である。図3は、インクヘッド7が、ケース4の下側に位置した状態の断面図である。図2及び3は、いずれもインクヘッド7の内部構造を模式的に示している。
【0014】
プリンタ1は、図1~3に示すように、ケース4及びインクヘッド7に加えて、カートリッジ2、錘3、軸受ユニット5、巻取ユニット6、チューブ8、制御ユニット9、エンコーダ10、複数のホイール12、バルブユニット13、バッテリ18等を備える。本実施形態のプリンタ1は、巻取ユニット6(後述)を介して、インクヘッド7がケース4に支持された構成を有している。
【0015】
プリンタ1は携帯型であり、任意の姿勢で印刷対象物40に印刷できる。プリンタ1は、バッテリ18の電力により駆動される。プリンタ1は、オペレータに保持されて使用されるが、例えば、ロボットアーム等の装置に設置されて使用されてもよい。
【0016】
カートリッジ2は、球状に形成され、少なくとも1つの内部空間Sを有する。内部空間Sには、インク30が貯留される。後述する基準姿勢において、カートリッジ2の上部には、開口2aが設けられている。また開口2aの近傍には、通気口2cが設けられている。内部空間Sに対して、インク30が開口2aを介して流通し、外気が通気口2cから流入する。
【0017】
カートリッジ2の外表面には、案内溝2bが設けられている。案内溝2bは、開口2aから鉛直方向に沿って延び、一例として、カートリッジ2の全周にわたる。なお、案内溝2bは、カートリッジ2の半周にだけ形成されていてもよい。案内溝2bの溝幅は、チューブ8の外径以上である。巻き出されるチューブ8が案内され、さらに嵌まり込むことになる。
【0018】
錘3は、基準姿勢において、カートリッジ2の下部に配置されている。本実施形態の錘3は、内部空間Sの下側に位置する。鉛直方向から見て、錘3は円形の周縁形状を有し、錘3の中心はカートリッジ2の中心と重なっている。
【0019】
ケース4は、カートリッジ2を収容する。ケース4は、球状の内壁面4aと、開口4bとを有する。内壁面4aは、複数のベアリング球14と接触することにより、カートリッジ2を支持する。開口4bは、基準姿勢において、ケース4の上部に位置し、チューブ8が挿通される。ケース4の外観形状は、一例として、球状である。もちろん、外観形状は、立方体形状のように、球状以外でもよい。一例として、ケース4は、オペレータがハンドリングし易い外径寸法とされる。
【0020】
軸受ユニット5は、ケース4とカートリッジ2との間に配置されている。軸受ユニット5は、複数のベアリング球14と、支持部材15とを有する。軸受ユニット5は、カートリッジ2の外表面及びケース4の内壁面4aと組み合わされる。軸受ユニット5は、カートリッジ2の外表面に沿った全方向に、カートリッジ2を基準姿勢のままケース4に対して相対移動可能に支持する。これによりケース4は、基準姿勢のカートリッジ2に対して、その外周面に沿った全方向に移動できる。
【0021】
複数のベアリング球14は、カートリッジ2の外表面に沿って、離散的に配置されている。このとき、ベアリング球14は、ケース4の内壁面4aと、カートリッジ2の外表面(外壁面)とに接する。支持部材15は、全てのベアリング球14を回転自在に支持する。これにより、各ベアリング球14は、支持部材15により相対位置が固定される。また、いずれのベアリング球14も、案内溝2bに嵌まり込むことがない。
【0022】
支持部材15は、一例として、枠状に形成されている。もちろん、支持部材15は、枠状のものに限定されず、ベアリング球14が球状面に沿ってほぼ等分散されればよい。また、軸受ユニット5は、上述の玉軸受以外の形式であってもよい。例えば、カートリッジ2が、複数の支持部材を外表面に備え、ベアリング球14がこれらに支持されていてもよい。
【0023】
プリンタ1では、ケース4、軸受ユニット5及びカートリッジ2を有し、カートリッジ2が球体である。軸受ユニット5がケース4及びカートリッジ2に挟持されており、ケース4及びカートリッジ2は、相対移動自在である。また図2及び3に示すように、カートリッジ2の下部には、錘3が設けられている。そのため、カートリッジ2は、常に錘3を一番下にする。言い換えると、当該相対移動時において、カートリッジ2は、鉛直方向に対する傾きが、常に所定範囲内に保持されている。このとき、カートリッジ2内のインク30は、その液面の位置がほぼ一定の位置に止まる。ここで、鉛直方向に対する傾きが所定範囲内のカートリッジ2の姿勢を、基準姿勢と称する。
【0024】
インクヘッド7は、略立方体形状であり、ノズル面7aと厚み方向に対向する支持面とを有する。ノズル面7aは、平坦面であり、複数のノズル7bが開口している。複数のノズル7bは、一方向に並んで、ノズル列を構成している。一方、支持面には、いくつかの機能部が配置されている。
【0025】
インクヘッド7の内部には、サブタンク7c、及び複数の個別インク流路7dが形成されている。各個別インク流路7dは、サブタンク7cに接続し、ノズル7bに加えて圧力室及び圧電素子を含む。
【0026】
インクヘッド7の内部には、サブタンク7c、及び複数の個別インク流路7dが形成されている。サブタンク7cは、チューブ8と接続している。各個別インク流路7dは、サブタンク7cに接続し、末端のノズル7bに加えて圧力室及び圧電素子を含む。
【0027】
インクは、チューブ8から供給され、サブタンク7cに一時的に貯留される。サブタンク7cのインクは、その出口から各個別インク流路7dに分配され、圧力室を介して、ノズル7bに至る。ここで、圧力室の容積が、圧電素子により変化されると、ノズル7bからインク滴が吐出されることになる。
【0028】
インクヘッド7の支持面には、バッテリ18、制御ユニット9、及びエンコーダ10が配置されている。バッテリ18は、一例として充電式であり、制御ユニット9、エンコーダ10、及び圧電素子の駆動源である。制御ユニット9は、インクヘッド7のインクを吐出する吐出動作を制御する。
【0029】
なお、バッテリ18は、商用電源に接続される形式であってもよい。また、制御ユニット9、エンコーダ10、及びバッテリ18の配置は、これに限定されず、少なくともいずれかがインクヘッド7と離隔していてもよい。
【0030】
巻取ユニット6は、カートリッジ2の外表面に沿ったインクヘッド7とカートリッジ2の上部との間の距離の変化に応じて、チューブ8の余剰分の巻き取り又はチューブ8の不足分の送り出しを行う。巻取ユニット6は、インクヘッド7とケース4との間に介在し、両者を繋いでいる。
【0031】
図4は、巻取ユニット6の外観図である。巻取ユニット6は、チューブ8を螺旋状に巻き取る円柱状の巻取体16と、巻取体16を付勢する付勢部材17とを有する。図4では、巻取体16と付勢部材17とが分離された状態が示されている。
【0032】
巻取体16は、インクヘッド7に軸支され、付勢部材17により周方向一方側に付勢されている。付勢部材17は、一例として、渦巻バネが好適である。巻取体16の周面には、巻取体16の軸心を中心として螺旋状に周回する巻取溝16aが形成されている。巻取体16は、軸回りに回転可能である。チューブ8は、巻取溝16aに嵌るように巻取ユニット6に巻き取られる。これによりチューブ8は巻取溝16aに収容される。このときチューブ8は、一端8aがサブタンク7cに連通され、他端8bがカートリッジ2内の所定位置にあるので、途中部分が巻取体16に巻き取られる。
【0033】
チューブ8は、一端がインクヘッド7に接続されると共に、基準姿勢におけるカートリッジ2の上部を通して内部空間S内にまで延び、他端がカートリッジ2の下部近傍に配置される。本実施形態では、チューブ8の他端8bの一部が、カートリッジ2の下部に当接している。
【0034】
チューブ8は、少なくとも、カートリッジ2の直径よりも長い。インクヘッド7が任意の姿勢にあるとき、チューブ8は、3つの部分チューブに分けることができる。内部空間S内の第1部分チューブと、巻取ユニット6に巻き取られている第2部分チューブと、カートリッジ2の案内溝2bに嵌まり込んだ第3部分チューブである。このうち、第3部分チューブは、インクヘッド7とカートリッジ2の上部との間の距離の変化に応じた長さを有し、ケース4とカートリッジ2との間に配置される。
【0035】
ここでプリンタ1では、インクヘッド7の姿勢に関わらず、カートリッジ2の鉛直方向に対する傾きは、常に所定範囲内に保持される(図2及び3)。内部空間S内では、チューブ8の他端8bとインク30との位置関係が保持される。これにより、インク30をインクヘッド7に供給する際、内部空間Sのエアの吸い込みが防止される。
【0036】
本実施形態では、バルブユニット13が、インクヘッド7と巻取ユニット6との間に介在する。チューブ8の一端8aは、バルブユニット13を介して、サブタンク7cに連通している。
【0037】
図6は、バルブユニット13の内部構造を示す概略図である。バルブユニット13は、インク流路R4の途中に設けられ、カートリッジ2が連通する連通先を切り替える。インク流路R4は、巻取ユニット6とインクヘッド7とを連通する。さらに、プリンタ1は、外部をバルブユニット13に連通する連通流路R5を備える。
【0038】
図6に示すように、バルブユニット13は、三方流路11aが形成されたベース部11と、三方流路11aに配置された3つのバルブV1~V3とを有する。三方流路11aは、第1流路部11b、第2流路部11c、及び第3流路部11dを有する。このうち、第1流路部11b及び第2流路部11cは、インク流路R4の途中に介在する。第3流路部11dは、連通流路R5に接続している。
【0039】
第1流路部11bは、インクヘッド7側のインク流路R4に接続され、バルブV2が途中に配置されている。第2流路部11cは、カートリッジ2側のインク流路R4に接続され、バルブV3が途中に配置されている。第3流路部11dは、連通流路R5を介して外部のインクタンクと連通し、バルブV1が途中に配置されている。バルブV1~V3の開閉動作は、一例として制御ユニット9により制御されるが、手動により行われてもよい。バルブユニット13は、開閉状態の組み合わせにより、流路の連通状態を第1~第3形態の間で切替可能である。
【0040】
第1形態は、カートリッジ2とインクヘッド7との間を連通して印刷用インク経路R1を形成すると共に、外部に対して印刷用インク経路R1が遮断される形態である。第1形態では、バルブV1が閉塞され、バルブV2,V3が開放される。これにより、印刷動作でインク30が消費されると、インク30が印刷用インク経路R1を介してインクヘッド7に補給される。
【0041】
第2形態は、インクヘッド7と外部との間を連通してパージ用インク経路R2を形成すると共に、カートリッジ2に対してパージ用インク経路R2が遮断される形態である。第2形態では、バルブV3が閉塞され、バルブV1,V2が開放される。これにより、メンテナンス動作としてパージを行う場合、インク30が外部のインクタンクからインクヘッド7に圧送できる。
【0042】
第3形態は、カートリッジ2と外部との間を連通して補充用インク経路R3を形成すると共に、インクヘッド7に対して補充用インク経路R3が遮断される形態である。第3形態では、バルブV2が閉塞され、バルブV1,V3が開放される。これにより、カートリッジ2内のインク残量が少なくなった場合、インク30が外部のインクタンクからカートリッジ2に補充できる。
【0043】
制御ユニット9は、ユニット本体の他、入力部を含む。ユニット本体は、一例として、演算部及び記憶部を有する。演算部は、所定のプログラムに基づいて動作し、プリンタ各部の動作を司る。記憶部には、この所定のプログラムが格納されており、外部から入力される画像データ、指示データ等も一時的に記憶される。例えば、印刷対象物40に画像を形成する場合、演算部は、記憶部の画像データを参照し、このデータに基づいて圧電素子を駆動する。
【0044】
ここで、制御ユニット9には、後述のエンコーダから、インクヘッド7の印刷対象物40に対する相対移動距離と相対移動速度とに関するデータが送られる。この2つのデータに基づいて、制御ユニット9は、インクヘッド7の吐出動作(ここでは圧電素子の駆動)を制御する。これにより、所定サイズのインク滴が、所定のタイミングで吐出されることになる。
【0045】
制御ユニット9の入力部には、インターフェース及び操作部が含まれる。インターフェースは、有線又は無線により、外部からの画像データや指示データを受け付ける。操作部は、キーボード、タッチパネル等がこれに相当し、オペレータが印刷ジョブ等の指示を入力する。
【0046】
エンコーダ10は、印刷対象物40の表面に沿って、インクヘッド7と印刷対象物40との相対移動距離を計測すると共に、その計測結果を制御ユニット9に送信する。本実施形態のエンコーダ10は、エンコーダ本体10a及びエンコーダホイール19を含む。このうち、エンコーダホイール19は、複数のホイール12の1つでもある。プリンタ1が印刷対象物40の表面に沿って移動すると、エンコーダ本体10aは、エンコーダホイール19の回転状態を検知する。このとき、インクヘッド7に対する相対移動距離及び相対移動速度が計測される。
【0047】
具体的には、複数のホイール12が、回転自在にインクヘッド7に軸支されている。複数のホイール12は、ノズル面7aから所定距離だけ突出し、印刷対象物40の表面に接触する。このとき、エンコーダホイール19の回転数及び回転速度は、エンコーダ本体10aで相対移動距離及び相対移動速度に変換され、制御ユニット9に送信される。なお、制御ユニット9、エンコーダ10、及びバッテリ18の少なくともいずれかは、インクヘッド7とは離隔した位置に配置されていてもよい。
【0048】
ここで、付勢部材17の付勢力(巻取力F)について考察する。本実施形態では、付勢部材17の付勢力が巻取体16の回転力として働き、チューブ8には、これを巻き取る方向の力F(巻取力F)が作用する。これにより、チューブ8は、弛むことなく、巻取体16に巻き取られる。インクヘッド7の姿勢が変化するときは、チューブ8の送り出しに伴い、チューブ8には、巻取力Fに逆らう力が働く。しかし、この巻取力Fは、チューブ8の送り出しにかかわらず、カートリッジ2が基準姿勢を維持できるように設定されている。
【0049】
つまり、図5に示すように、巻取ユニット6は、カートリッジ2(インクヘッド7)をチューブ8の不足分の送り出し量が最小の状態からチューブ8の不足分の送り出し量が最大の状態に変位させた際に、チューブ8の他端8bとカートリッジ2の回動中心Oとを結ぶ仮想直線Lと、回動中心Oを通る鉛直線Vとが作る仮想平面内において、鉛直線Vに対する仮想直線Lの交差角度θの変化Δθが0°以上10°以下にある基準姿勢をカートリッジ2が維持できるように、チューブ8の巻取力Fが設定されている。なお図5では、説明のためΔθを若干大きく図示している。
【0050】
ここで、付勢部材17が例えば渦巻バネにより構成される場合、Rを付勢部材17の半径(以降も同様)とすると、付勢部材17の巻取トルクTは、以下の式1により表される。
[式1]

=R×F
【0051】
式1が示すように、巻取トルクTは、付勢部材17の半径Rに依存する。カートリッジ2を基準姿勢のまま、チューブ8を巻き取れるようにするため、付勢部材17の長さは、巻取トルクTの変動を抑制できる寸法とすることが望ましい。
【0052】
また、インクヘッド7の姿勢変化に伴って、カートリッジ2の姿勢も若干変化する。そこで、Rをカートリッジ2の半径、Fをカートリッジ2に周方向に作用する力、Rcwをカートリッジ2の中心と錘3の重心位置との間の最短距離、Wを錘3の重量(以降も同様)とすると、カートリッジ2からチューブ8に作用する姿勢トルクTは、以下の式2により表される。
[式2]

=R×F=Rcw×W×sin(θ)
【0053】
このとき、チューブ8の屈曲や摩擦に伴う力の伝達ロスを考慮する。これをFとすると、巻取力Fの限界強さは、以下の式3、4に基づいて設定される。
[式3]

≦F+F

[式4]

≦(F+Rcw×W×sin(θ)/R)/R
【0054】
式3、4が成立するように、交差角度θの限界値を設定することで、付勢部材17の付勢(バネ)強さが適切に決定される。また、式3が成立するように巻取力Fを設定し、且つ、式4が成立するように巻取トルクTを設定することで、カートリッジ2の姿勢を所望の状態に維持しながら、チューブ8を巻取ユニット6から送り出せる。巻取力Fの目安としては、インク30とチューブ8の他端8bとの位置関係の変化を極力抑えることを考慮して、例えば、交差角度θの変化Δθが0°以上10°以下とする基準姿勢をカートリッジ2が維持できるように設定することが望ましい。
【0055】
以下に、使用時のプリンタ1の動作について説明する。印刷対象物40の表面に画像を形成する際、オペレータは、インクヘッド7のノズル面7aを印刷対象物40に向け、ホイール12を当該表面に接触させる。この状態でオペレータは、入力部を通じて、印刷ジョブの開始を制御ユニット9に指示する。
【0056】
まず、制御ユニット9は、圧電素子をスタンバイ状態とする。このとき、制御ユニット9は、バッテリ18を制御して、圧電素子に所定の電圧を印加する。この後、制御ユニット9は、エンコーダ10からの信号(上述の相対移動距離及び相対移動速度の計測結果)の入力を待つ。
【0057】
圧電素子をスタンバイ状態とした後、制御ユニット9は、印刷準備が整った旨をオペレータに報知してもよい。報知形態としては、ブザー音の発報、ランプの発光、プリンタ1自体の振動等、いずれかが採用される。この後、オペレータは、当該表面に対して、プリンタ1の相対移動(印刷)を始めることになる。
【0058】
プリンタ1が相対移動を始めると、ホイール12とともに、エンコーダホイール19も回転する。このときエンコーダ10は、エンコーダホイール19の回転により、相対移動速度及び相対移動距離を計測し、計測結果を制御ユニット9に送信する。
【0059】
制御ユニット9は、この計測結果に基づき、圧電素子の駆動を制御する。制御ユニット9は、計測結果から、ノズル7bの位置及びこの位置における変位速度を求め、インク滴の吐出タイミングと吐出量を決める。これにより、印刷対象物40の表面に、画像データに応じた印刷が行われる。
【0060】
この印刷動作中において、鉛直方向に対するプリンタ1の姿勢は、印刷対象物40の表面の位置に応じて変化する。しかし、上述のケース4とカートリッジ2との構造的関係により、カートリッジ2の姿勢は、基準姿勢に保持される。
【0061】
また、鉛直方向に対してプリンタ1が傾斜する場合、ケース4は、カートリッジ2を元の位置に残して相対移動する。さらに、鉛直方向から見て、案内溝2bが、インクヘッド7のカートリッジ2に対する傾斜方向に沿って配置される。これにより、インクヘッド7がカートリッジ2に対して傾斜すると、チューブ8は、巻取ユニット6から必要な量だけ繰り出され、その屈曲や摩擦に伴う力の伝達ロスは低く抑えられる。
【0062】
なお、プリンタ1の傾斜に伴う傾斜方向への案内溝2bの配向は、例えば、カートリッジ2の上部において、チューブ8が案内溝2bに嵌まり込むことで実現される。鉛直方向から見たとき、案内溝2bの延在方向とインクヘッド7の傾斜方向が異なると、チューブ8は、案内溝2bに斜め側方から敷設されていく。
【0063】
このとき、チューブ8自身の剛性により、カートリッジ2には、その中心を軸にして斜め側方へ回転力が働く。カートリッジ2とケース4は、相対移動自在に構成されているので、インクヘッド7の傾斜方向と案内溝2bの延在方向が揃うことになる。
【0064】
プリンタ1では、カートリッジ2が通気口2cを有し、内部空間Sが大気に連通している。印刷によりインク30が使用されると、その減少量に応じて、通気口2cから外気が内部空間Sに取り込まれる。これにより、内部空間Sの気圧が、大気圧に保持される。プリンタ1の姿勢が変化しても、ノズル7bのメニスカスは、その背圧の変化が所定範囲で収まるので、破壊されることがない。
【0065】
以上説明したように、プリンタ1によれば、ケース4とカートリッジ2との間には、軸受ユニット5が配置されている。そのため、カートリッジ2の外表面に沿った全方向に、ケース4及びカートリッジ2が、自在に相対移動できる。またカートリッジ2の下部には、錘3が配置されている。カートリッジ2の姿勢は、錘3が常に鉛直方向の一番下となるように調整される。これにより、プリンタ1の姿勢が変化しても、カートリッジ2内のインク30の液面とチューブ8の他端8bとの位置関係が保たれ、チューブ8を介してインク30がインクヘッド7へ安定して供給される。加えて、チューブ8の他端8b(インクの取入口)は、エアに暴露されにくくなる。よって、プリンタ1の良好な吐出特性を維持できる。
【0066】
またプリンタ1では、チューブ8の他端8bの一部が、カートリッジ2の下部に当接している。そのため、プリンタ1の姿勢が変化しても、チューブ8の他端8bには、内部空間S内のエアが侵入するのを良好に防止できる。
【0067】
またプリンタ1は、巻取ユニット6を備える。これにより、プリンタ1の姿勢変化に合わせて、巻取ユニット6は、必要な分だけチューブ8を出し入れできる。チューブ8が長くても、プリンタ1をコンパクトに纏めることができる。
【0068】
またチューブ8は、インクヘッド7とカートリッジ2の上部との距離の変化に応じた長さの部分が、ケース4とカートリッジ2との間に配置される。このため、カートリッジ2とケース4との円滑な相対移動が、チューブ8により妨げられるのを防止できる。
【0069】
また、カートリッジ2の外表面に、開口2aから鉛直方向に延びる案内溝2bが設けられ、チューブ8が、開口2aを通じて内部空間S内にまで延びると共に、案内溝2bに案内されつつ、案内溝2bに嵌まり込んで配置されるので、カートリッジ2とケース4との円滑な相対移動がチューブ8により妨げられるのを一層良好に防止できる。
【0070】
また巻取ユニット6は、基準姿勢をカートリッジ2が維持できるように、チューブ8の巻取力Fが設定されている。このため、プリンタ1の姿勢変化に伴うチューブ8の出し入れに際し、カートリッジ2の姿勢が必要以上に変化しない。よって、インク30の液面とチューブ8の他端8bとの位置関係が保たれ、プリンタ1の良好な吐出特性を維持できる。
【0071】
また巻取ユニット6は、巻取体16を有し、その周面に巻取溝16aが形成されている。チューブ8は、巻取溝16aに嵌るようにして、巻取ユニット6に巻き取られる。このため、巻取ユニット6によりチューブ8をコンパクトに巻き取ることができ、プリンタ1の携帯性を維持できる。
【0072】
また軸受ユニット5は、複数のベアリング球14と、各ベアリング球14を回転自在に支持する支持部材15とを有する。複数のベアリング球14は、カートリッジ2の外表面に分散して配置されてカートリッジ2の外表面を支持する。支持部材15は、ベアリング球14同士の相対位置(複数のベアリング球14の配置の分散状態)を維持しつつ複数のベアリング球14の各々を回転自在に支持する。これにより、カートリッジ2とケース4との円滑な相対移動が実現できる。
【0073】
またケース4は、内壁面4aが複数のベアリング球14と接触することにより、内側にカートリッジ2を支持する。このため、カートリッジ2の外表面に沿った全方向に、カートリッジ2とケース4とを円滑に相対移動し易くできる。よって、プリンタ1の使用時には、インク30の波立ちを効果的に防止できると共に、チューブ8にエアが侵入するのを防止できる。
【0074】
またプリンタ1は、バルブユニット13と、これを大気に連通する連通流路R5とを備える。バルブユニット13は、プリンタ1を第1~第3形態の間で切替可能である。よって、例えばプリンタ1を分解することなく、カートリッジ2へのインク30の補充及びインクヘッド7のメンテナンスを行えると共に、印刷動作を良好に行うことができる。
【0075】
次に、本実施形態の変形例に係るプリンタを説明する。第1の変形例は、チューブ8の他端8bの一部が、鉛直方向において、基準姿勢にある錘3の上端より下方に配置されている。このとき、錘3の上面は、平坦面ではなく、部分的に形成された凹部を有する。チューブ8の他端8bの一部は、この凹部内に位置すればよい。凹部の形態としては、ピット状、スリット状すり鉢状等の何れかが採用されてもよい。これにより、カートリッジ2に貯留されたインク30の残量が少なくなっても、チューブ8の他端8bに内部空間S内のエアが侵入するのをより一層良好に防止できる。
【0076】
第2の変形例は、チューブ8の他端8bは、カートリッジ2の下部に当接していなくてもよい。この場合、他端8bは、カートリッジ2の下部に対して、極近傍で対向していてもよい。第1の変形例と同様の効果を享受できる。
【0077】
次に第3の変形例を説明する。本実施形態では、図3に示すように、鉛直方向に見たとき、チューブ8の他端部が案内溝2bの延在方向と略反対の方向に屈曲している。しかし、第3の変形例では、他端部の屈曲方向が、鉛直方向に見たときの案内溝2bの延在方向である。プリンタ1の姿勢変化により、カートリッジ2も若干傾くことが想定される場合、その傾斜方向は、プリンタの姿勢変化の方向に倣う。インク30も同じ方向に片寄るが、チューブ8の他端部も同じ方向に屈曲して伸びているので、インク30の残量がさらに少なくなっても、確実にインク30をインクヘッド7に供給できる。同様の観点から、チューブ8の他端部が、案内溝2bの延在方向に屈曲しており、他端8bがカートリッジ2の内壁近傍にあってもよい。
【0078】
以下、その他の実施形態等について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0079】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係るプリンタの模式図である。カートリッジ102の内部空間は、鉛直方向から見下ろしたときに異なる種類のインク毎に区画される複数のサブ空間Sbで構成されている。サブ空間Sb毎に充填されるインク30は、例えば色等の種類が異なっている。隣接するサブ空間Sbとは、仕切壁102eにより、仕切られている。チューブ8は、サブ空間Sb毎に配置され、サブ空間Sbからインク30を個別にインクヘッド7へ供給できる。カートリッジ102の上部には、各サブ空間Sbに対応して、チューブ8を個別に挿通する複数の開口102aが設けられている。
【0080】
全ての仕切壁102eは、カートリッジ2の中心を通る鉛直線を共有する。錘3は、鉛直方向に見たとき、これと同じ鉛直線が重心を通り、全てのサブ空間Sbに均等に跨って配置されている。
【0081】
この構成においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。また、異なる種類のインク30を用いることで、例えばプリンタを用いて、印刷対象物40の表面に任意の姿勢でカラー印刷を行うことができる。
【0082】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、又は削除できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように本発明は、カートリッジを備える携帯型印刷装置において、使用中に印刷装置の姿勢を変更する際、カートリッジ内のインク液面の位置が変動し難く、良好な吐出特性を維持できる優れた効果を有する。従って、この効果の意義を発揮できる携帯型印刷装置に本発明を広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0084】
S 内部空間
Sb サブ空間
1 プリンタ(携帯型印刷装置)
2,102 カートリッジ
2a,102a 開口
2b 案内溝
3 錘
4 ケース
4a 内壁面
5 軸受ユニット
6 巻取ユニット
7 インクヘッド
7a ノズル面
7b ノズル
8 チューブ
8a チューブの一端
8b チューブの他端
9 制御ユニット
10 エンコーダ
14 ベアリング球
15 支持部材
16 巻取体
16a 巻取溝
30 インク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7