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特許7188100ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20221206BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20221206BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20221206BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08L93/04
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/103
B60C1/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019004188
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020111688
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】高橋 建人
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175958(JP,A)
【文献】特開2009-242576(JP,A)
【文献】特開2018-203937(JP,A)
【文献】特開2018-039912(JP,A)
【文献】特開2016-037556(JP,A)
【文献】特開2012-149146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/02
C08L 93/04
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを90~100質量部含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が70~145m/gのカーボンブラックを30~60質量部、シリカを15~35質量部、ロジン系樹脂を0.2~10質量部、および炭素数6~24の脂肪酸を由来とするポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5~20質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが下記式(1)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【化1】
式(1)中、Rは前記脂肪酸に由来する炭素鎖を表し、nは0~8を表す。
【請求項4】
前記式(1)中、nが0または1であることを特徴とする請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
建設車両のトレッドに用いられる、請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに用いた建設車両用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、実用上十分な耐カット性を維持しながら、加工性および耐発熱性に優れるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
採石場や大規模な建設作業場で稼働する大型ダンプなどの建設車両は、重荷重積載の状態で長時間稼働する。このような建設車両に装着される重荷重用大型タイヤは、耐カット性に優れるとともに、発熱性を抑えタイヤが過熱状態になるのを抑制すること(耐発熱性)によりタイヤ故障を防ぐことが要求されている。耐カット性は、タイヤが障害物や外部の物体に接触または衝突したときタイヤの損傷を起き難くする特性であり、発熱性は、このような物理的な衝撃によりタイヤに負荷されたエネルギーを熱に換えてゴムを発熱させて衝撃を緩和する特性である。このためタイヤの耐カット性を優れたものにするためにはゴムの発熱性が大きいことが求められる。一方上記のようにタイヤの過熱およびこれに伴う故障を防ぐためにはゴムの発熱性が小さいことが求められるので、耐カット性と耐発熱性とはトレードオフの関係にある。
【0003】
一方、上述した建設車両用空気入りタイヤは、タイヤサイズがかなり大きいため、タイヤ成形が非常に困難である。例えばこのような大型タイヤのタイヤトレッド部を成形するとき、小型タイヤのようにトレッド部を形成するゴム部分を一体に押出し成形して、カーカスおよびベルト層の外側に巻き付けてグリーンタイヤを成形することができない。このため通常、設計されたトレッド部の厚さより厚さが薄いゴムシートを複数枚積層したり、ゴムストリップをらせん状に巻き重ねたりすることにより、大型タイヤのトレッド部が成形される。ここでゴムシートを積層したり、ゴムストリップを巻き重ねたりする成形方法では、耐カット性を向上させるためにフィラーの配合量を増加させると、粘度が上昇し良好な成形加工性を確保できない。しかしながら、フィラーの配合量を制限すると、耐カット性を確保することが困難であった。
【0004】
下記特許文献1には、グリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステルが、グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのエステルであって、該グリセリン脂肪酸エステルを構成する2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分が全脂肪酸中に10~90質量%であり、さらにモノエステル成分をグリセリン脂肪酸エステル中に50~100質量%含むシリカ配合ゴム組成物用添加剤組成物が開示されている。
しかし、特許文献1に開示された技術では、耐カット性を維持しながら、加工性および耐発熱性を向上させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2016/139916号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、実用上十分な耐カット性を維持しながら、加工性および耐発熱性に優れるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定のカーボンブラック、シリカおよびロジン系樹脂を特定量で配合するとともに、さらに特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0008】
1.天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを90~100質量部含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が70~145m/gのカーボンブラックを30~60質量部、シリカを15~35質量部、ロジン系樹脂を0.2~10質量部、および炭素数6~24の脂肪酸を由来とするポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5~20質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
2.前記脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸であることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが下記式(1)で表されることを特徴とする前記1または2に記載のゴム組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)中、Rは前記脂肪酸に由来する炭素鎖を表し、nは0~8を表す。
4.前記式(1)中、nが0または1であることを特徴とする前記3に記載のゴム組成物。
5.建設車両のトレッドに用いられる、前記1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
6.前記1~4のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに用いた建設車両用タイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定のカーボンブラック、シリカおよびロジン系樹脂を特定量で配合するとともに、さらに特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量でもって配合したので、実用上十分な耐カット性を維持しながら、加工性および耐発熱性に優れるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)および/または合成イソプレンゴム(IR)を必須成分とする。本発明の効果の観点から、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、NRおよび/またはIRの配合量は90~100質量部が好ましい。なお、NR、IR以外のジエン系ゴムを使用することもでき、例えばスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等を挙げることができる。また、ジエン系ゴムの分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0014】
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が70~145m/gであることが必要である。窒素吸着比表面積(NSA)が70m/g未満であると、ゴム組成物のゴム強度などの機械的特性が低下し耐カット性が悪化する。逆に窒素吸着比表面積(NSA)が145m/gを超えると、発熱性が悪化する。なお、本発明の効果が向上するという観点から、窒素吸着比表面積(NSA)は85~130m/gであることが好ましい。なお、窒素吸着比表面積(NSA)はJIS K6217-2に準拠して求めた値である。
【0015】
(シリカ)
本発明で使用するシリカは特に限定されず、例えばタイヤ用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ等が挙げられる。シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
なお、本発明の効果向上の観点から、シリカのCTAB比表面積は、110~200m/gであることが好ましく、150~180m/gであることがさらに好ましい。なおシリカのCTAB比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定される。
【0016】
(ロジン系樹脂)
本発明で使用するロジン系樹脂としては、例えばガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジンおよびフマル化ロジン等の変性ロジン、これらのロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステルおよびトリエチレングリコールエステルなどのエステル誘導体、並びにロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ロジンのエステル誘導体、ロジン変性樹脂、重合ロジン、変性ロジンを好ましく挙げることができる。
【0017】
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数6~24の脂肪酸を由来とするエステルである。
脂肪酸としては、具体的には、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の直鎖脂肪酸類が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の効果をさらに高めるという観点から、前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸が好ましい。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、フィラーの分散性が向上するという理由から、実用上十分な耐カット性を維持しながら、加工性および耐発熱性を向上させることができる。なお、当該効果は、モノグリセリン脂肪酸エステルには奏されない作用効果である。
【0018】
また、本発明の効果をさらに高めるという観点から、本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、下記式(1)で表されるモノ脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0019】
【化2】
【0020】
式(1)中、Rは前記脂肪酸に由来する炭素鎖を表し、nは0~8を表し、0~3が好ましく、0または1であることがとくに好ましい。
なお、ポリグリセリンの第2級ヒドロキシ基を選択的にエステル化したグリセリンエステル化合物では、前記式(1)で表されるモノ脂肪酸エステルに比べて、耐カット性、加工性および耐発熱性を共に満足させることができない。
【0021】
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、市販されているものであることができ、式(1)で表されるモノ脂肪酸エステルとして、例えば理研ビタミン株式会社製DS100A(ジグリセリンモノステアレート)、DO100V(ジグリセリンモノオレート)、S71D(ジグリセリンステアレート)、ポエムJ-4081V(テトラグリセリンステアレート)、J-0021(デカグリセリンラウレート)、J-0081HV(デカグリセリンステアレート)、J-0381V(デカグリセリンオレート)等が挙げられる。
【0022】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が70~145m/gのカーボンブラックを30~60質量部、シリカを15~35質量部、ロジン系樹脂を0.2~10質量部、および炭素数6~24の脂肪酸を由来とするポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5~20質量部配合してなることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が30質量部未満では、耐カット性が悪化する。または60質量部を超えると、発熱性が悪化する。
前記シリカの配合量が15質量部未満では耐発熱性が悪化し、逆に35質量部を超えると粘度が上昇し成形加工性が悪化する。
前記ロジン系樹脂の配合量が0.2質量部未満であると、耐カット性が悪化する。逆に10質量部を超えると発熱性が悪化する。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が0.5質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量部を超えると耐カット性が悪化する。
【0023】
また、本発明のゴム組成物において、前記カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、35~50質量部であることが好ましい。
前記シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、20~30質量部であることが好ましい。
前記ロジン系樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、2~8質量部であることが好ましい。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1~15質量部であることが好ましい。
【0024】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤;樹脂;硬化剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0025】
本発明のゴム組成物は、実用上十分な耐カット性を維持しながら、加工性および耐発熱性に優れることから、建設車両のトレッド、とくにキャップトレッドに好適に用いられ得る。
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。
【実施例
【0026】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0027】
標準例、実施例1~3および比較例1~8
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0028】
耐発熱性:JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、標準例の値を100として指数表示した。指数が大きいほど低発熱性であり、耐発熱性に優れることを示す。
【0029】
耐カット性: タイヤサイズ2700R49の建設車両用空気入りタイヤを成形した。上述したゴム組成物を使用して、幅30mm、厚さ3mmのゴムシートを押出成形した。得られたゴムシートをアンダートレッドの外側に複数回巻き付けることにより、キャップトレッド部分を構成し、得られたグリーンタイヤを成形し、これを加硫して建設車両用空気入りタイヤを製造した。得られた建設車両用空気入りタイヤを大型ダンプに装着して、オフロードを1500時間走行した時のカットキズの大小・数を目視で判定した。結果は、標準例の値を100として指数表示した。指数が大きいほど耐カット性に優れ、タイヤ耐久性が優れることを意味する。
【0030】
粘度:JIS K6300に準拠して、L形ローターを使用し、ムーニー粘度ML(1+4)100℃を求めた。結果は標準例の値を100として指数表示した。指数が小さいほどムーニー粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
【0031】
【表1】
【0032】
*1:NR(RSS#3)
*2:SBR(日本ゼオン(株)製Nipol 1502)
*3:モノグリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製S100)
*4:ジグリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製DS100A、前記式(1)においてn=0であり、R-COOはステアリン酸に由来する)
*5:ジグリセリンモノオレート(理研ビタミン株式会社製DO100V、前記式(1)においてn=0であり、R-COOはオレイン酸に由来する)
*6:ジグリセリンステアレート(理研ビタミン株式会社製S71D、前記式(1)においてn=0であり、R-COOはステアリン酸に由来する)
*7:カーボンブラック1(キャボットジャパン社製商品名ショウブラックN220)、窒素吸着比表面積(NSA)=115m/g)
*8:シリカ(Evonik 社製商品名ULTRASIL VN3GR、CTAB比表面積=160m/g)
*9:シランカップリング剤(Evonik Degussa社製Si69、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*10:オイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*11:ロジン系樹脂:(ロジン変性樹脂、ハリマ化成社製ハリタックAQ-90A)
*12:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸YR)
*13:亜鉛華(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*14:老化防止剤(FLEXSYS社製SANTOFLEX 6PPD)
*15:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS)
*16:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
*17:カーボンブラック2(新日化カーボン社製商品名N550、窒素吸着比表面性(NSA)40m2/g)
【0033】
表1の結果から、実施例1~3のゴム組成物は、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定のカーボンブラック、シリカおよびロジン系樹脂を特定量で配合するとともに、さらに特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量でもって配合したので、標準例に比べて、耐カット性を維持しながら、加工性および耐発熱性に優れることが分かった。
これに対し、比較例1はモノグリセリンモノ脂肪酸エステルを配合した例であるので、標準例に対し耐カット性が悪化した。
比較例2はポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、標準例と同様の結果を示した。
比較例3はポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、耐カット性が悪化した。
比較例4はカーボンブラックの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、標準例に対し耐カット性が悪化し、また粘度が低くなり過ぎて加工性が悪化した。
比較例5はジエン系ゴムにおけるNRの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、耐発熱性が悪化した。
比較例6はロジン系樹脂を配合していないので、標準例に対し耐カット性が悪化し、また加工性が悪化した。
比較例7はシリカの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、耐発熱性および加工性が悪化した。
比較例8はカーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が本発明の範囲外であるので、標準例に対し耐カット性が悪化した。