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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/63 20180101AFI20221206BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20221206BHJP
   F24F 120/12 20180101ALN20221206BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F110:10
F24F120:12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019005582
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020112337
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 智文
(72)【発明者】
【氏名】島村 豊
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-157314(JP,A)
【文献】特開平11-270889(JP,A)
【文献】特開2000-257939(JP,A)
【文献】特開2012-042184(JP,A)
【文献】特開2017-015339(JP,A)
【文献】特開2009-103389(JP,A)
【文献】特開2010-096474(JP,A)
【文献】国際公開第2014/076793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機と、
学習モデルに基づいて設定変更指示を出力する学習制御部と、
前記空気調和機に設定される設定温度に基づいて前記空気調和機が冷暖房するように、かつ、前記設定温度が前記設定変更指示に基づいて変更されるように、前記空気調和機を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
室内温度と前記設定温度との差が所定範囲に含まれないときに、前記設定変更指示に基づいて前記設定温度が変更されないように、前記空気調和機を制御し、
前記室内温度と前記設定温度との差が前記所定範囲に含まれるときに、前記設定変更指示に基づいて前記設定温度が変更されるように、前記空気調和機を制御する
空気調和機。
【請求項2】
前記空気調和機は、前記室内温度を測定する温度センサを有する
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記設定変更指示は、体感温度アップ指示または体感温度ダウン指示を示し、
前記制御部は、
冷房運転時に利用者が過去に設定した設定温度のうち最も高い温度を冷房用上限値とし、最も低い温度を冷房用下限値としたとき、前記設定温度が前記冷房用上限値よりも高い場合、または前記冷房用下限値よりも低い場合は、前記設定温度を変更しない
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、
おやすみタイマーモードが前記空気調和機に設定されているときに、前記空気調和機に設定される設定値が前記設定変更指示に基づいて変更されないように、前記空気調和機を制御し、
前記おやすみタイマーモードが前記空気調和機に設定されていないときに、前記設定値が前記設定変更指示に基づいて変更されるように、前記空気調和機を制御する
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記空気調和機は、不在状態または在室状態を検出する人感センサを有し、
前記制御部は、
不在エコモードが前記空気調和機に設定されていないときに、前記空気調和機に設定される設定値が前記設定変更指示に基づいて変更されるように、前記空気調和機を制御し、
前記不在エコモードが前記空気調和機に設定されている場合で、前記人感センサが前記在室状態を検出したときに、前記設定値が前記設定変更指示に基づいて変更されるように、前記空気調和機を制御し、
前記不在エコモードが前記空気調和機に設定されている場合で、前記人感センサが前記不在状態を検出したときに、前記設定値が前記設定変更指示に基づいて変更されないように、前記空気調和機を制御する
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記制御部は、
前記空気調和機が除霜していないときに、前記設定変更指示に基づいて前記空気調和機に設定される設定値が変更されるように、前記空気調和機を制御し、
前記空気調和機が除霜しているときに、前記設定変更指示に基づいて前記設定値が変更されないように、前記空気調和機を制御する
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記学習モデルは、
冷房用設定変更指示を出力する冷房用学習モデルと、
暖房用設定変更指示を出力する暖房用学習モデルとを含み、
前記制御部は、
前記空気調和機が暖房しているときに、前記空気調和機に設定される設定値を前記暖房用設定変更指示に基づいて変更する一方、前記冷房用設定変更指示を受け付けず、
前記空気調和機が冷房しているときに、前記設定値を前記冷房用設定変更指示に基づいて変更する一方、前記暖房用設定変更指示を受け付けない、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空調を自動で効率的に制御する空調システムが知られている(特許文献1)。この空調システムは、記憶部が学習機能を有し、標準仕様設定による制御に、居住者等の好みや行動パターン等による時系列的に好適な温度環境を反映させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-117933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、学習モデルに基づく空気調和機の設定変更(例えば、運転モード、設定温度、設定風量などの変更)は、利用者が望む空気調和機の制御に合致しないことがある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、学習モデルに基づく設定変更が、利用者が望む空気調和機の制御を妨げることを防止する空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一つの態様における空気調和機は、空気調和機と、学習モデルに基づいて設定変更指示を出力する学習制御部と、前記空気調和機に設定される設定温度に基づいて前記空気調和機が冷暖房するように、かつ、前記設定温度が前記設定変更指示に基づいて変更されるように、前記空気調和機を制御する制御部とを備えている。前記制御部は、室内温度と前記設定温度との差が所定範囲に含まれないときに、前記設定変更指示に基づいて前記設定温度が変更されないように、前記空気調和機を制御し、前記室内温度と前記設定温度との差が前記所定範囲に含まれるときに、前記設定変更指示に基づいて前記設定温度が変更されるように、前記空気調和機を制御する。
【発明の効果】
【0007】
開示の空気調和機は、学習モデルに基づく設定変更指示が、利用者の利用目的を妨げることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例の空気調和機が設けられる空気調和システムの一例を示す説明図である。
図2図2は、アダプタのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、空気調和機を示すブロック図である。
図4図4は、空気調和機を制御する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる空気調和機について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例
【0010】
図1は、実施例の空気調和機が設けられる空気調和システム1の一例を示す説明図である。空気調和システム1は、空気調和機2と、アダプタ3と、アクセスポイント4と、サーバ装置5と、中継装置6と、通信端末7と、通信網8とを有する。空気調和機2は、室内を冷暖房する装置である。通信端末7は、利用者のスマートフォン等の端末装置である。
【0011】
アダプタ3は、空気調和機2とアクセスポイント4との間を無線通信で接続する通信機能と、空気調和機2をAI(Artificial Intelligence)制御する制御機能とを有する。アクセスポイント4は、例えば、WLAN(Wireless Local Area Network)等を使用してアダプタ3と通信網8とを無線通信で接続する装置である。通信網8は、例えば、インターネット等の通信網である。サーバ装置5は、サービス提案時期調整装置の一例であり、空気調和機2を制御するAIの学習モデルを生成する機能や運転履歴データ等を記憶するデータベース等を有する。尚、サーバ装置5は、例えば、データセンタに配置されている。中継装置6は、通信網8と通信で接続すると共に、サーバ装置5と通信で接続する機能を有する。中継装置6は、通信網8経由で空気調和機2に適用される学習モデルの生成又は更新に使用する運転履歴データ等をアダプタ3からサーバ装置5に送信する。また、中継装置6は、サーバ装置5で生成又は更新した学習モデルを通信網8経由でアダプタ3に送信する。尚、中継装置6は、例えば、データセンタ等に配置されている。
【0012】
中継装置6は、第1の中継部6Aと、第2の中継部6Bと、第3の中継部6Cとを有する。第1の中継部6Aは、アダプタ3とサーバ装置5との間でAI制御に関わる各種データを中継する。第1の中継部6Aは、アダプタ3から受信した学習モデルの生成又は更新に使用する運転履歴データ等を通信網8経由でサーバ装置5に送信すると共に、サーバ装置5が生成又は更新した学習モデルを通信網8経由でアダプタ3に送信する。第2の中継部6Bは、利用者が外出先から通信端末7を使用して設定した空気調和機2の運転条件(冷房/暖房といった運転モードや設定温度など)を通信網8経由で取得し、これを通信網8経由で空気調和機2に送信する。第3の中継部6Cは、例えば、インターネット等の通信網8から天気予報等の外部データを取得し、取得した外部データをサーバ装置5に送信する。また、第3の中継部6Cは、外部データを通信網8経由でアダプタ3に送信する。
【0013】
図2は、アダプタ3のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2に示すアダプタ3は、第1の通信部11と、第2の通信部12と、記憶部13と、CPU(Central Processing Unit)14とを有する。第1の通信部11は、空気調和機2と通信接続する、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)等の通信IF(Interface)である。第2の通信部12は、アクセスポイント4と通信接続する、例えば、WLAN等の通信IFである。記憶部13は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を有し、データやプログラム等の各種情報を記憶する。CPU14は、アダプタ3全体を制御する。
【0014】
CPU14は、送信部21と受信部22と学習制御部23とを備えている。送信部21は、空気調和機2に設定される複数の設定値(例えば、冷房運転や暖房運転などの運転モード、設定温度、設定風量など)と、複数の日時に対応する複数の運転履歴データとを空気調和機2から収集し、その収集された複数の設定値と複数の運転履歴データとを記憶部13に記憶する。複数の運転履歴データのうちのある日時に対応する運転履歴データは、その日時に空気調和機2が動作している動作設定(例えば、運転モード、設定温度、設定風量など)と、その日時に空気調和機2に入力された操作設定(例えば、外気温の変化などに応じて利用者により変更された運転モード、設定温度、設定風量など)と、空気調和機2に設けられたセンサにより検出された検出結果(例えば、室内温度、室内湿度、室内熱交換器温度、外気温度、外気湿度、室外熱交換器温度など)とを示している。送信部21は、記憶部13に記憶された複数の設定値と複数の運転履歴データとを示す運転状況情報を作成し、通信網8を介して、その作成された運転状況情報をサーバ装置5に送信する。
【0015】
受信部22は、通信網8経由でサーバ装置5から学習モデルを受信し、受信した学習モデルを記憶部13に記憶する。学習モデルは、冷房用学習モデルと暖房用学習モデルとを含んでいる。学習制御部23は、記憶部13に記憶された冷房用学習モデルに基づいて冷房用設定変更指示を出力し、記憶部13に記憶された暖房用学習モデルに基づいて暖房用設定変更指示を出力する。冷房用設定変更指示は、「体感温度アップ指示」または「体感温度ダウン指示」を示している。暖房用設定変更指示も冷房用設定変更指示と同様に、「体感温度アップ指示」または「体感温度ダウン指示」を示している。「体感温度アップ指示」は、学習制御部23が空気調和機2に対して、利用者の体感温度が上がるような運転を行うように指示することをいう。「体感温度ダウン指示」は、学習制御部23が空気調和機2に対して、利用者の体感温度が下がるような運転を行うように指示することをいう。学習制御部23は、その出力された冷房用設定変更指示と暖房用設定変更指示とを空気調和機2に出力する。
【0016】
学習モデルとしては、例えば、各家庭の空気調和機の運転状況に応じて室内の利用者に対する5分後の体感温度を予測し、予測する体感温度に応じて空気調和機を制御する体感温度設定予測モデルがある。体感温度設定予測モデルは、例えば、時系列の室内温度、室内湿度、室外温度等に応じて、利用者が快適に感じるように空気調和機を調整する際に実行するプログラムである。たとえば、空気調和機は、体感温度設定予測モデルに基づいて制御されることにより、利用者が快適に感じるように、空気調和機の設定温度が変更される。空気調和機2は、このような体感温度設定予測モデルに基づいて制御されることにより、利用者が快適になるように、適切に冷暖房することができる。
【0017】
図3は、空気調和機2を示すブロック図である。空気調和機2は、図3に示されているように、室内機15と室外機16と温度センサ17と人感センサ18とリモコン19と制御部20とを備えている。室内機15は、室内に配置され、図示されていない室内ファンとフィルタとフィルタ清掃機構と室内熱交換器とをさらに備えている。室内ファンは、室内機15が配置される室内の空気が室内熱交換器を通過する空気の流れを生成し、室内熱交換器を通過した空気を室内に吹き出す。フィルタは、室内熱交換器を通過する前の空気から塵埃を捕集する。フィルタ清掃機構は、フィルタに補修された塵埃をフィルタから除去する。室内熱交換器は、室外機16から供給される冷媒と、室内ファンにより流れが生成される空気との熱交換を行うことにより、室内の空気を加熱または冷却する。室内機15は、室内熱交換器が室内の空気を加熱または冷却することにより、室内を冷暖房する。
【0018】
室外機16は、室外に配置され、図示されていない室外ファンと室外熱交換器と圧縮機と膨張弁とを備えている。室外ファンは、室外機16が配置される屋外の外気が室外熱交換器を通過する空気の流れを生成する。室外熱交換器は、室外ファンにより流れが生成される外気と冷媒との熱交換を行うことにより、冷媒を加熱または冷却する。圧縮機は、冷媒を室内機15と室外機16との間で循環させる。膨張弁はその開度を調整することで、室内機15に流れる冷媒の量を調整する。室外機16は、圧縮機が冷媒を室内機15と室外機16との間で循環させることにより、室外熱交換器により冷却または加熱された冷媒を室内機15に供給する。
【0019】
温度センサ17は、室内機15に設けられ、室内機15が配置される室内の温度を測定する。人感センサ18は、室内機15に設けられ、室内機15が配置される室内に人またはペットがいるか否かを検出し、「不在状態」または「在室状態」を検出する。リモコン19は、図示されていない操作部と表示部とを備えている。リモコン19は、操作部が操作されることにより生成される情報を制御部20に出力し、操作部の操作情報、室内温度などの各種センサの検出結果、および、制御部20により生成された情報を利用者が認識できるように表示部に表示する。
【0020】
制御部20は、コンピュータであり、複数の設定値を記憶し、空気調和機2の各部を制御し、アダプタ3と通信する。たとえば、制御部20は、リモコン19の操作により複数の設定値を変更し、通信網8とアダプタ3とを経由して通信端末7から取得された情報に基づいて複数の設定値を変更する。複数の設定値は、設定温度を含んでいる。制御部20は、さらに、リモコン19の操作により「暖房」が選択されたときに、設定温度に基づいて室内機15が室内を暖房するように、室内機15と室外機16とを制御する。制御部20は、リモコン19の操作により「冷房」が選択されたときに、設定温度に基づいて室内機15が室内を冷房するように、室内機15と室外機16とを制御する。制御部20は、リモコン19の操作により「停止」が選択されたときに、室内機15が冷暖房を停止するように、室内機15と室外機16とを制御する。
【0021】
制御部20は、さらに、リモコン19の操作により空気調和機2に「不在エコモード」が設定されたときに、室内機15が配置される室内に人またはペットがいるか否かが検出されるように、人感センサ18を制御する。制御部20は、空気調和機2に「不在エコモード」が設定された場合で、人感センサ18により「不在状態」が検出されたときに、節電されるように、空気調和機2の各部を制御する。
【0022】
制御部20は、さらに、リモコン19の操作により空気調和機2に「おやすみタイマーモード」が設定されたときに、所定時間ごとに設定温度を変更する。たとえば、制御部20は、空気調和機2が冷房している場合で、「おやすみタイマーモード」が設定されたときに、所定時間ごとに設定温度が所定温度だけ高くなるように、設定温度を変更する。制御部20は、空気調和機2が暖房している場合で、「おやすみタイマーモード」が設定されたときに、所定時間ごとに設定温度が所定温度だけ低くなるように、設定温度を変更する。
【0023】
制御部20は、さらに、空気調和機2に「除霜」が設定されたときに、室外機16が除霜されるように、すなわち、室外機16の室外熱交換器が加熱されるように、室内機15と室外機16とを制御する。空気調和機2は、室外熱交換器を加熱するときに、暖房を停止し、このとき、室内の温度が低下することがある。空気調和機2は、このような温度の低下を抑制するために、室外熱交換器が加熱される前に、予め強めに暖房するホットキープ除霜を実行することがある。
【0024】
制御部20は、さらに、室内の温度が間欠的に測定されるように、温度センサ17を制御する。制御部20は、空気調和機2の動作設定に基づいて、温度センサ17により測定された室温Trを算出する。制御部20は、さらに、冷房用上限値と冷房用下限値と暖房用上限値と暖房用下限値とが記憶されている。ここで、冷房用上限値は、冷房運転時に利用者が過去に設定した設定温度のうち最も高い温度をいう。また、冷房用下限値は、冷房運転時に利用者が過去に設定した設定温度のうち最も低い温度をいう。さらに、暖房上限値は、暖房運転時に利用者が過去に設定した設定温度のうち最も高い温度をいう。また、暖房下限値は、暖房運転時に利用者が過去に設定した設定温度のうち最も低い温度をいう。
【0025】
[空気調和システム1の動作]
空気調和システム1の動作は、学習モデルを継続的に学習させて学習モデルを改良し続ける動作と、空気調和機2を制御する動作とを備えている。
【0026】
学習モデルを継続的に学習させる動作では、アダプタ3が、5分周期の取得タイミングに空気調和機2の制御部20から運転履歴データを取得し、その取得された運転履歴データを記憶部13に記憶する。アダプタ3は、さらに、空気調和機2の制御部20から複数の設定値を取得し、その取得された複数の設定値を記憶部13に記憶する。アダプタ3は、所定時間毎(例えば48時間毎)に、運転状況情報を作成し、その作成された運転状況情報をサーバ装置5に通信網8を介して送信する。運転状況情報は、記憶部13に記憶された複数の運転履歴データのうちの48時間分の運転履歴データと、複数の設定値とを示している。サーバ装置5は、アダプタ3から送信された運転状況情報を受信すると、運転状況情報を記憶装置32に記憶する。サーバ装置5は、記憶装置32に記憶された運転状況情報に基づいて学習モデルを継続的に学習させ、その従来改良された学習モデル(最新の学習モデル)を記憶装置32に記憶する。最新の学習モデルは、冷房用学習モデルと暖房用学習モデルとを含んでいる。サーバ装置5は、中継装置6を介して、記憶装置32に記憶された最新の学習モデルをアダプタ3に送信する。アダプタ3は、サーバ装置5から送信された最新の学習モデルを受信したときに、その受信された最新の学習モデルを記憶部13に記憶する。
【0027】
図4は、空気調和機2を制御する動作を示すフローチャートである。アダプタ3は、記憶部13に記憶された冷房用学習モデルに基づいて冷房用設定変更指示を空気調和機2に出力し、記憶部13に記憶された暖房用学習モデルに基づいて暖房用設定変更指示を出力する(ステップS1)。アダプタ3は、空気調和機2に出力された冷房用設定変更指示と暖房用設定変更指示とを空気調和機2に出力する。
【0028】
空気調和機2の制御部20は、アダプタ3から出力された冷房用設定変更指示と暖房用設定変更指示とを受信すると、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たしているか否かを判定する(ステップS2)。すなわち、制御部20は、冷房運転と暖房運転とのどちらの運転をしているかを判定する。制御部20は、さらに、温度センサ17により測定された室温Trと設定温度とに基づいて次の(1)式が満足するか否かを判定する。
(設定温度)-1.5℃≦Tr≦(設定温度)+1.5℃…(1)
【0029】
制御部20は、さらに、空気調和機2が冷房をしているときに、設定温度が冷房用上限値より高いか否かを判定し、設定温度が冷房用下限値より低いか否かを判定する。制御部20は、まだ、空気調和機2が暖房をしているときに、設定温度が暖房用上限値より高いか否かを判定し、設定温度が暖房用下限値より低いか否かを判定する。制御部20は、さらに、空気調和機2に「おやすみタイマーモード」が設定されているか否かを判定する。制御部20は、さらに、空気調和機2に「不在エコモード」が設定されているか否かを判定する。制御部20は、空気調和機2に「不在エコモード」が設定されているときに、人感センサ18により「不在状態」が検出されたか「在室状態」が検出されたかを判定する。制御部20は、さらに、空気調和機2が除霜しているか否かを判定する。
【0030】
制御部20は、室温Trが(1)式を満足していないときに、動作設定が所定条件を満たしていないと判定する。(1)式を満足していない場合には、空気調和機2が室内温度を利用者の設定温度に近づけるように運転している最中だと考えられる。従って、このような条件のときに空気調和機2の設定値を変更してしまうと、利用者の快適性を損なうおそれがある。このため、室温Trが(1)式が満足していないとき、動作設定が所定条件を満たしていないと判定し、制御部20は冷房用設定変更指示と暖房用設定変更指示を受け付けない。
【0031】
制御部20は、さらに空気調和機2に「おやすみタイマーモード」が設定されているときに、動作設定が所定条件を満たしていないと判定する。制御部20は、さらに空気調和機2に「不在エコモード」が設定されている場合で、人感センサ18が「不在状態」検出しているときに、動作設定が所定条件を満たしていないと判定する。制御部20は、さらに空気調和機2が冷房している場合で、設定温度が冷房上限値より高いときに、動作設定が所定条件を満たしていないと判定する。
【0032】
制御部20は、さらに空気調和機2が冷房している場合で、設定温度が冷房下限値より低いときに、動作設定が所定条件を満たしていないと判定する。制御部20は、さらに空気調和機2が暖房している場合で、設定温度が暖房上限値より高いときに、動作設定が所定条件を満たしていないと判定する。制御部20は、さらに空気調和機2が暖房している場合で、設定温度が暖房下限値より低いときに、動作設定が所定条件を満たしていないと判定する。制御部20は、さらに空気調和機2が除霜しているときに、動作設定が所定条件を満たしていないと判定する。
【0033】
一方、制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たすと判定したときに(ステップS2、Yes)、冷房用設定変更指示または暖房用設定変更指示に基づいて設定温度を変更する(ステップS3)。すなわち、制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たし、空気調和機2が冷房しているときに、冷房用設定変更指示に基づいて設定温度を変更する。詳細には、制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たさないで、空気調和機2が冷房している場合で、冷房用設定変更指示が「体感温度アップ指示」を示すときに、例えば設定温度が0.5度だけ高くなるように、設定温度を変更する。制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たさないで、空気調和機2が冷房している場合で、冷房用設定変更指示が「体感温度ダウン指示」を示すときに、例えば設定温度が0.5度だけ低くなるように、設定温度を変更する。
【0034】
また、制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たし、空気調和機2が暖房しているときに、暖房用設定変更指示に基づいて設定温度を変更する。詳細には、制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たし、空気調和機2が暖房している場合で、暖房用設定変更指示が「体感温度アップ指示」を示すときに、例えば設定温度が0.5度だけ高くなるように、設定温度を変更する。制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たし、空気調和機2が暖房している場合で、暖房用設定変更指示が「体感温度ダウン指示」を示すときに、例えば設定温度が0.5度だけ低くなるように、設定温度を変更する。
【0035】
制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たさないと判定されたときに(ステップS2、No)、冷房用設定変更指示または暖房用設定変更指示に基づいて設定温度が変更されないように、空気調和機2を制御する。具体的には、制御部20が、冷房用設定変更指示または暖房用設定変更指示を受け付けないことにより、設定温度を維持する。
【0036】
このため、空気調和機2は、「おやすみタイマーモード」が設定されているときに、学習モデルにより設定温度が変更されることがなく、所定時間ごとに設定温度が適切に変更され、たとえば、室内の冷えすぎや暖めすぎの発生を防止することができる。空気調和機2は、さらに、「不在エコモード」が設定されている場合で、人感センサ18が「不在状態」検出しているときに、学習モデルにより設定温度が変更されることがなく、適切に節電することができる。利用者は、必ずしも快適性の向上を目的とせず、快適性以外の目的で空気調和機2を利用することがある。このとき、設定温度は、(1)式が満足しなかったり、上下限値の間の範囲から外れたりする。空気調和機2は、(1)式が満足しないときに、または、設定温度が上下限値の間の範囲から外れるときに、学習モデルにより設定温度が変更されることがなく、利用者が冷暖房する目的を妨げることを防止することができる。なお、本実施例では、冷房用設定変更指示と暖房用設定変更指示とが同時に空気調和機2に出力され、変更指示を受けた空気調和機2がどの変更指示を受け入れるかを判断するが、本発明はこれに限られない。従って、例えば冷房用設定変更指示を冷房運転時のみ、暖房用設定変更指示を暖房運転時のみに出力するようにしてもよい。
【0037】
[実施例の空気調和機2の効果]
実施例の空気調和機2は、室内機15と学習制御部23と制御部20とを備えている。室内機15は、室内を冷暖房する。学習制御部23は、学習モデルに基づいて設定変更指示を出力する。制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たすときに、空気調和機2に設定される設定温度の設定変更指示を受け付ける。制御部20は設定変更指示に基づいて設定温度が変更されるように、空気調和機2の各部を制御する。制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たさないときに、設定変更指示を受け付けない。制御部20は設定変更指示を受け付けないため、この指示に基づいて設定温度が変更されない。このとき、空気調和機2は、利用者が快適性以外の目的(例えば、不在エコモードが設定されている場合など)で冷暖房するときに、学習モデルにより設定温度が変更されることを防止し、利用者の目的(例えば、省電力運転など)の達成を妨げることを防止することができる。
【0038】
また、実施例の空気調和機2の制御部20は、「おやすみタイマーモード」が設定されているときに(所定条件を満たさないときに)、設定温度が設定変更指示に基づいて変更されないように、空気調和機2の各部を制御する。制御部20は、「おやすみタイマーモード」が空気調和機2の各部に設定されていないときに(所定条件を満たすときに)、設定温度が設定変更指示に基づいて変更されるように、空気調和機2の各部を制御する。このとき、空気調和機は、利用者の「おやすみタイマーモード」の設定による空気調和機2の運転の目的の達成が、学習モデルによる制御により妨げられることを防止することができ、室内の冷えすぎや暖めすぎの発生を防止することができる。
【0039】
また、実施例の空気調和機2は、「不在状態」または「在室状態」を検出する人感センサ18を備えている。制御部20は、「不在エコモード」が設定されている場合で、人感センサ18が「不在状態」を検出したときに(所定条件を満たさないときに)、設定温度が設定変更指示に基づいて変更されないように、空気調和機2の各部を制御する。制御部20は、「不在エコモード」が設定されている場合で、人感センサ18が「在室状態」を検出したときに、設定温度が設定変更指示に基づいて変更されるように、空気調和機2の各部を制御する。制御部20は、「不在エコモード」が設定されていないときに(所定条件を満たすときに)、設定温度が設定変更指示に基づいて変更されるように、空気調和機2の各部を制御する。このとき、空気調和機2は、利用者の「不在エコモード」の設定による空気調和機2の運転の目的の達成が、学習モデルによる制御により妨げられることを防止することができ、適切に節電することができる。
【0040】
また、実施例の空気調和機2の制御部20は、空気調和機2が除霜していないときに(所定条件を満たすときに)、設定変更指示に基づいて設定温度が変更されるように、空気調和機2の各部を制御する。制御部20は、空気調和機2が除霜しているときに(所定条件を満たさないときに)、設定変更指示に基づいて設定温度が変更されないように、空気調和機2の各部を制御する。このとき、空気調和機2は、学習モデルによる制御により室外機の除霜が妨げられることを防止することができ、室外機16を適切に除霜することができる。
【0041】
また、実施例の空気調和機2の制御部20は、設定温度に基づいて室内が冷暖房されるように、空気調和機2の各部を制御する。このとき制御部20は、室温Trと設定温度との差が所定範囲に含まれないときに(所定条件を満たさないときに)、冷房用設定変更指示または暖房用設定変更指示を受け付けない。一方、設定温度が所定範囲に含まれるときに(所定条件を満たすときに)、冷房用設定変更指示または暖房用設定変更指示に基づいて設定温度を変更する。このとき、学習モデルによる制御が利用者の目的の達成を妨げることを防止することができる。
【0042】
また、実施例の空気調和機2の冷房用設定変更指示または暖房用設定変更指示は、「体感温度アップ指示」または「体感温度ダウン指示」を示している。制御部20は、これら設定変更指示としての「体感温度アップ指示」が出力され、かつ、暖房されている場合で、設定温度が暖房用上限値より高い場合、設定温度を変更しない。一方、設定温度が暖房用上限値より高くない場合は、設定温度が高くなるように、設定温度を変更する。制御部20は、これら設定変更指示としての「体感温度アップ指示」が出力され、かつ、冷房されている場合で、設定温度が冷房用上限値より高い場合、設定温度を変更しない。一方、設定温度が冷房用上限値より高くない場合は、設定温度が高くなるように、設定温度を変更する。制御部20は、これら設定変更指示としての「体感温度ダウン指示」が出力され、かつ、暖房されている場合で、設定温度が暖房用下限値より低い場合、設定温度を変更しない。一方、設定温度が暖房用下限値より低くない場合は、設定温度が低くなるように、設定温度を変更する。制御部20は、これら設定変更指示としての「体感温度ダウン指示」が出力され、かつ、暖房されている場合で、設定温度が冷房用下限値より低いとき、設定温度を変更しない。一方、設定温度が冷房用下限値より低くない場合は、設定温度が低くなるように、設定温度を変更する。この場合も、空気調和機2は、室温Trと設定温度との差が所定範囲に含まれないときに、冷房用設定変更指示または暖房用設定変更指示を受け付けないことにより、利用者により設定された設定温度を維持し、学習モデルによる制御が利用者の目的の達成を妨げることを防止することができる。
【0043】
また、実施例の空気調和機2の学習モデルは、冷房用設定変更指示を出力する冷房用学習モデルと、暖房用設定変更指示を出力する暖房用学習モデルとを含んでいる。制御部20は、空気調和機2が室内を暖房しているときに、冷房用設定変更指示を受け付けず、暖房用設定変更指示を受け付ける。空気調和機2が室内を冷房しているときに、暖房用設定変更指示を受け付けず、冷房用設定変更指示を受け付ける。このとき、アダプタ3の学習制御部23は、冷房用学習モデルと暖房用学習モデルとから一方を選択する必要がなく、設定変更指示を容易に出力することができる。
【0044】
ところで、既述の実施例の空気調和機2の制御部20とアダプタ3とは、別個であるが、1つの制御装置から形成されてもよい。この場合も、空気調和機2は、動作設定が所定条件を満たすときに設定温度を変更しないことにより、利用者の目的の達成を妨げることを防止することができる。
【0045】
ところで、既述の実施例の空気調和機2の制御部20は、学習モデルにより「体感温度アップ指示」または「体感温度ダウン指示」が出力された場合、設定温度を変更しているが、これに限らず他の設定値を変更してもよい。その設定値としては、風向、流量が例示される。たとえば、制御部20は、冷房時に冷房用設定変更指示が「体感温度ダウン指示」を示すときに、人の方向に風向が向くように、風量が上昇するように、室内機15を制御してもよい。制御部20は、冷房時に冷房用設定変更指示が「体感温度アップ指示」を示すときに、人がいない方向に風向が向くように、風量が下降するように、室内機15を制御してもよい。制御部20は、暖房時に暖房用設定変更指示が「体感温度ダウン指示」を示すときに、人がいない方向に風向が向くように、風量が下降するように、室内機15を制御してもよい。制御部20は、暖房時に暖房用設定変更指示が「体感温度アップ指示」を示すときに、人の方向に風向が向くように、風量が上昇するように、室内機15を制御してもよい。制御部20は、空気調和機2の動作設定が所定条件を満たすときに、冷房用設定変更指示と暖房用設定変更指示とに基づいて風向、流量が変更されるように、室内機15を制御する。この場合も、空気調和機2は、動作設定が所定条件を満たさないときに設定値を変更しないことにより、利用者の目的の達成を妨げることを防止することができる。
【0046】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 :空気調和システム
2 :空気調和機
3 :アダプタ
15 :室内機
16 :室外機
17 :温度センサ
18 :人感センサ
20 :制御部
21 :送信部
22 :受信部
23 :学習制御部
図1
図2
図3
図4