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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】画像形成装置、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20221206BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G03G21/00 314
G03G15/00 303
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019005684
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020112761
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】茂永 靖典
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-086107(JP,A)
【文献】特開2008-009316(JP,A)
【文献】特開2018-077296(JP,A)
【文献】特開2017-068157(JP,A)
【文献】特開2013-033177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体上のトナー画像を用紙に転写する転写部と、
前記像担持体上の転写残トナーを清掃する清掃部と、
前記像担持体で発生する像流れの第1、第2の発生原因の推定を、前記第1、第2の発生原因それぞれに対応した第1、第2の発生条件を満たすか否かを判定することにより行う推定部と、
前記推定部が推定した前記発生原因に応じて、前記第1、第2の発生原因にそれぞれ対応する前記清掃部による前記像担持体に対する摺擦力を増加させる第1の像流れ解消処理、および前記清掃部に到達するトナー量を増加させる第2の像流れ解消処理の少なくとも一方を選択し、実行する選択処理部と、
を備え
前記発生原因は、像担持体の周辺で生じる放電により発生する放電生成物を起因とする前記第1の発生原因と、用紙からの紙粉を起因とする前記第2の発生原因が含まれ、
前記推定部は、
前記第1の発生原因に対応する第1の発生条件を満たしたか否かを、放電生成物滞留量を示す指標により判定し、
前記第2の発生原因に対応する第2の発生条件を満たしたか否かを、紙粉量を示す指標により判定し、
前記選択処理部は、
前記第1の発生条件を満たし、前記第2の発生条件を満たさない場合には、前記第1の像流れ解消処理のみを選択し、実行し、
前記第2の発生条件を満たし、前記第1の発生条件を満たさない場合には、前記第2の像流れ解消処理のみを選択し、実行し、
前記第1、第2の発生条件の両方を満たした場合には、前記第1、第2の像流れ解消処理の両方を選択し、実行する、
画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の像流れ解消処理では、未転写のトナー帯を前記清掃部に供給する、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の像流れ解消処理では、前記清掃部の前記像担持体に対する当接圧を増加させる、請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記清掃部は、前記像担持体に当接して、回転する回転部材を含み、
前記第1の像流れ解消処理では、前記回転部材の前記像担持体への当接圧を増加させる、または、回転数を増加させる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1、第2の像流れ解消処理は、非画像形成時に実行し、
前記第1の像流れ解消処理では、前記回転部材の回転数を、通常の画像形成時よりも増加させる、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1、第2の像流れ解消処理は、非画像形成時に実行する、請求項1から請求項のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
像担持体と、前記像担持体上のトナー画像を用紙に転写する転写部と、前記像担持体上の転写残トナーを清掃する清掃部と、を備える画像形成装置を制御するコンピューターで実行させる制御プログラムであって、
前記像担持体で発生する像流れの第1、第2の発生原因の推定を、前記第1、第2の前記発生原因それぞれに対応した第1、第2の発生条件を満たしたか否かにより判定するステップ(a)と、
前記ステップ(a)で推定した前記発生原因に応じて、前記第1、第2の発生原因にそれぞれ対応する前記清掃部による前記像担持体に対する摺擦力を増加させる第1の像流れ解消処理、および前記清掃部に到達するトナー量を増加させる第2の像流れ解消処理の少なくとも一方を選択するステップ(b)と、
選択した前記像流れ解消処理を実行させるステップ(c)と、を含み、
前記発生原因は、像担持体の周辺で生じる放電により発生する放電生成物を起因とする前記第1の発生原因と、用紙からの紙粉を起因とする前記第2の発生原因が含まれ、
前記ステップ(a)では、
前記第1の発生原因に対応する第1の発生条件を満たしたか否かを、放電生成物滞留量を示す指標により判定し、
前記第2の発生原因に対応する第2の発生条件を満たしたか否かを、紙粉量を示す指標により判定し、
前記ステップ(b)、およびステップ(c)では、
前記第1の発生条件を満たし、前記第2の発生条件を満たさない場合には、前記第1の像流れ解消処理のみを選択し、実行し
前記第2の発生条件を満たし、前記第1の発生条件を満たさない場合には、前記第2の像流れ解消処理のみを選択し、実行し、
前記第1、第2の発生条件の両方を満たした場合には、前記第1、第2の像流れ解消処理の両方を選択し、実行する、
処理を、前記コンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンター、複写機等の画像形成装置においては、トナー画像を感光体ドラム等の像担持体上に形成し、形成したトナー画像を用紙上に転写し、その後、加熱・加圧定着することによりトナー画像が形成された用紙を得る。
【0003】
感光体ドラムの表面は、用紙上にトナー画像を転写した後、クリーニングブレードやブラシローラーを備える清掃部により、清掃される。
【0004】
感光体ドラム表面の清掃が不十分であると、表面に紙粉、または放電生成物が付着し、蓄積する。このような紙粉や放電生成物等の感光体ドラム表面上の付着物は、高湿環境下では、水分が吸着するため低抵抗化する。感光体ドラム表面が低抵抗化することで、その部分では、形成したドットの静電潜像が維持できずに周囲に流れ、これをトナーにより現像した場合には、像流れと呼ばれる画像不良を生じさせる。
【0005】
特許文献1では、ブラシローラーと、その下流側に配置したクリーニングブレードから構成される清掃部で感光体ドラム表面を清掃する画像形成装置において、湿度、用紙の搬送速度、用紙のカバレッジ、または、感光体ドラムもしくはブラシローラーの使用履歴に応じて、ブラシローラーによるトナーの回収能力を低下させている。これにより、ブラシローラー下流側のクリーニングブレードに供給するトナー量を増加させる技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、画像流れを低減させるためのクリーニングモードにおいては、感光体ドラムと中間転写ベルトに、クリーニング用のトナー像を形成し、これにより、感光体ドラムと中間転写ベルトの表面の清掃を行う画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-142785号公報
【文献】特開2012-103542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2では、クリーニング用のトナー像を形成する等により、クリーニングブレードに供給するトナー量を増加させるものであるが、像流れを低減するためには、必ずしもクリーニングブレードへのトナーの供給が必要とは限らない。また、不必要にトナーのクリーニングブレードへの供給を行う場合には、無駄なトナーの消費を生じさせることになる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、像流れの発生原因を推定し、推定した発生原因に対応する像流れ解消処理を選択することで、適切に像流れの発生を低減させる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0011】
(1)像担持体と、
前記像担持体上のトナー画像を用紙に転写する転写部と、
前記像担持体上の転写残トナーを清掃する清掃部と、
前記像担持体で発生する像流れの第1、第2の発生原因の推定を、前記第1、第2の発生原因それぞれに対応した第1、第2の発生条件を満たすか否かを判定することにより行う推定部と、
前記推定部が推定した前記発生原因に応じて、前記第1、第2の発生原因にそれぞれ対応する前記清掃部による前記像担持体に対する摺擦力を増加させる第1の像流れ解消処理、および前記清掃部に到達するトナー量を増加させる第2の像流れ解消処理の少なくとも一方を選択し、実行する選択処理部と、
を備え
前記発生原因は、像担持体の周辺で生じる放電により発生する放電生成物を起因とする前記第1の発生原因と、用紙からの紙粉を起因とする前記第2の発生原因が含まれ、
前記推定部は、
前記第1の発生原因に対応する第1の発生条件を満たしたか否かを、放電生成物滞留量を示す指標により判定し、
前記第2の発生原因に対応する第2の発生条件を満たしたか否かを、紙粉量を示す指標により判定し、
前記選択処理部は、
前記第1の発生条件を満たし、前記第2の発生条件を満たさない場合には、前記第1の像流れ解消処理のみを選択し、実行し、
前記第2の発生条件を満たし、前記第1の発生条件を満たさない場合には、前記第2の像流れ解消処理のみを選択し、実行し、
前記第1、第2の発生条件の両方を満たした場合には、前記第1、第2の像流れ解消処理の両方を選択し、実行する、
画像形成装置。
【0015】
)前記第2の像流れ解消処理では、未転写のトナー帯を前記清掃部に供給する、上記()に記載の画像形成装置。
【0017】
)前記第1の像流れ解消処理では、前記清掃部の前記像担持体に対する当接圧を増加させる、上記(1)または上記(2)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0018】
)前記清掃部は、前記像担持体に当接して、回転する回転部材を含み、
前記第1の像流れ解消処理では、前記回転部材の前記像担持体への当接圧を増加させる、または、回転数を増加させる、上記()から上記()のいずれかに記載の画像形成装置。
【0019】
)前記第1、第2の像流れ解消処理は、非画像形成時に実行し、
前記第1の像流れ解消処理では、前記回転部材の回転数を、通常の画像形成時よりも増加させる、上記()に記載の画像形成装置。
【0020】
)前記第1、第2の像流れ解消処理は、非画像形成時に実行する、上記(1)から上記()のいずれかに記載の画像形成装置。
【0021】
)像担持体と、前記像担持体上のトナー画像を用紙に転写する転写部と、前記像担持体上の転写残トナーを清掃する清掃部と、を備える画像形成装置を制御するコンピューターで実行させる制御プログラムであって、
前記像担持体で発生する像流れの第1、第2の発生原因の推定を、前記第1、第2の前記発生原因それぞれに対応した第1、第2の発生条件を満たしたか否かにより判定するステップ(a)と、
前記ステップ(a)で推定した前記発生原因に応じて、前記第1、第2の発生原因にそれぞれ対応する前記清掃部による前記像担持体に対する摺擦力を増加させる第1の像流れ解消処理、および前記清掃部に到達するトナー量を増加させる第2の像流れ解消処理の少なくとも一方を選択するステップ(b)と、
選択した前記像流れ解消処理を実行させるステップ(c)と、を含み、
前記発生原因は、像担持体の周辺で生じる放電により発生する放電生成物を起因とする前記第1の発生原因と、用紙からの紙粉を起因とする前記第2の発生原因が含まれ、
前記ステップ(a)では、
前記第1の発生原因に対応する第1の発生条件を満たしたか否かを、放電生成物滞留量を示す指標により判定し、
前記第2の発生原因に対応する第2の発生条件を満たしたか否かを、紙粉量を示す指標により判定し、
前記ステップ(b)、およびステップ(c)では、
前記第1の発生条件を満たし、前記第2の発生条件を満たさない場合には、前記第1の像流れ解消処理のみを選択し、実行し
前記第2の発生条件を満たし、前記第1の発生条件を満たさない場合には、前記第2の像流れ解消処理のみを選択し、実行し、
前記第1、第2の発生条件の両方を満たした場合には、前記第1、第2の像流れ解消処理の両方を選択し、実行する、
処理を、前記コンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体で発生する像流れの複数の発生原因の推定を、複数の発生原因それぞれに対応した発生条件を満たすか否かを判定することにより行う推定部と、推定部が推定した発生原因に応じて、発生原因に対応する像流れ解消処理を選択し、実行する選択処理部と、を備える。これにより、発生原因に応じた適切な像流れ解消処理により像流れの発生を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の概略を示す図である。
図2】清掃部の周辺の構成を示す図である。
図3】画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】像流れが解消するまでのプリント数を示すグラフである。
図5】像流れが解消するまでのプリント数を示すグラフである。
図6】像流れが解消するまでのプリント数を示すグラフである。
図7】像流れ解消処理を示すフローチャートである。
図8図7のサブルーチンを示すフローチャートである。
図9】紙粉量に関する重み付け係数の例である。
図10】有効化されたフラグと、像流れ解消処理の条件を示すテーブルである。
図11】測定治具を説明する模式図である。
図12】帯電極に印加した帯電電流値(総和)に対する放電生成物滞留量の関係を示すグラフである。
図13】放置時間に対する像流れ発生閾値を示すテーブルである。
図14】第2の実施形態に係る画像形成装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の概略を示す図である。図2は、図1の一部拡大図であり、清掃部の周辺の構成を示す図である。図3は、画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0027】
図1から図3に示すように画像形成装置1は、制御部10、記憶部20、画像形成部30、給紙搬送部40、操作パネル50、読取部80、および温湿度計90を備える。
【0028】
制御部10は、CPUであり、プログラムにしたがって装置各部の制御や各種の演算処理を行う。また、制御部10は、詳細は後述するように、推定部11、および選択処理部12として機能する。推定部11は、像流れの発生原因それぞれに対応した発生条件を満たすか否かにより、像流れの発生原因を推定する。選択処理部12は、推定部11が推定した発生原因に応じて、発生原因に対応する像流れ解消処理を選択し、実行する。
【0029】
記憶部20は、予め各種プログラムや各種データを格納しておくROM、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM、および各種プログラムや各種データを格納するハードディスク等から構成される。
【0030】
(画像形成部30)
画像形成部30は、作像部31、および定着部32を含む。図1に示すように作像部31は、感光体ドラム311、帯電極312、露光部313、現像装置314、転写部315、および清掃部316を備える。
【0031】
感光体ドラム311は、像担持体である。感光体ドラム311は、例えばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体よりなり、図2において矢印に示すように時計方向に回転する。感光層を構成する樹脂として、例えばポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0032】
帯電極312は、スコロトロンチャージャ方式の電極であり、感光体ドラム311の表面を一定の電位に帯電する。なお、帯電極312の方式としてはコロトロンチャージャまたは帯電ローラーを適用してもよい。
【0033】
露光部313は、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、レンズ光学系、等により構成され、画像データに基づいて、帯電極312より一様に帯電された感光体ドラム311の表面を露光し、静電潜像を形成する。
【0034】
現像装置314は、ブラック色の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。2成分現像剤は、フェライトをコアとしてその周りに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、ポリエステルを主材料としてカーボンブラック等の着色剤、荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等の外添剤を加えたトナーとからなる。キャリアは粒径15~100μm、飽和磁化10~80emu/g、トナーは粒径3~15μm、トナーの帯電特性は負帯電特性であり平均電荷量としては-20~-60μC/gである。2成分現像剤としてはこれらのキャリアとトナーとを、トナー濃度4~10質量%になるよう混合したものを用いる。
【0035】
転写部315は、材料がNBR(Nitrile Butadiene Rubber:ニトリルゴム)の発泡ローラーやソリッドローラー等が用いられる。転写部315は、感光体ドラム311に当接することで転写ニップを形成する。転写部315の回転軸に転写用電源(図示せず)から供給される電圧により、トナーの極性(負帯電)と逆極性の電圧が印加され、搬送された用紙S上に、感光体ドラム311上のトナー画像が転写される。
【0036】
感光体ドラム311に残った転写残トナーは、下流側の清掃部316で除去される。清掃部316の構成については後述する。
【0037】
(定着部32)
定着部32は、ヒーターを内蔵する加熱ローラー、および加圧ローラーを備える。加熱ローラーに加圧ローラーが所定の圧力で当接し、両ローラーで形成される定着ニップに搬送された用紙S上の転写トナーは、加熱、加圧処理される。これにより用紙S上に画像が形成される。
【0038】
(給紙搬送部40)
給紙搬送部40は、複数の給紙トレイ41と、用紙搬送路42、43、44を備える。給紙トレイ41には、複数枚の用紙Sが積載され、最上位の用紙Sを1枚ずつ給紙する。給紙搬送部40は、用紙搬送路42、43に沿って配置された複数の搬送ローラー対とこれを駆動する駆動モーター(図示せず)を備え、給紙トレイ41から給紙された用紙Sを、転写部315の転写位置や、その下流側の定着部32の定着位置に搬送する。
【0039】
(操作パネル50)
操作パネル50はタッチパネル、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備えており、ユーザーによる装置に関する各種設定の入力や、装置の状態の表示および各種指示の入力に使用される。給紙トレイ41に収納された用紙Sの種類(銘柄、または紙種)は、操作パネル50を通じた入力により設定できる。設定された用紙Sの種類情報は、記憶部20に記憶される。
【0040】
(読取部80)
読取部80は、定着部32の下流側の用紙搬送路44上に配置され、用紙Sを搬送させながら、搬送された用紙S上の画像の読み取りを行う。読取部80は、センサーアレイ、レンズ光学系、LED(Light Emitting Diode)光源およびこれらを収納する筐体等を備える。センサーアレイは、複数の光学素子(例えばCCD(Charge Coupled Device))を主走査方向に沿ってライン状に配置したラインセンサーであり、幅方向における読取領域は用紙Sの全幅に対応している。このラインセンサーは、カラーのラインセンサーを用いてもよい。用紙S上を読み取って得られた画像データは、制御部10に送られる。制御部10は、画像形成部30により、調整用のトンボ画像やパッチ画像を用紙S上に形成させ、読取部80により読み取って得られた画像データを解析することで、画像濃度、または画像形成位置の調整を行う。また画像データを解析することで、像流れの発生有無も判定する。
【0041】
詳細は後述するが、像流れは、感光体ドラム311の表面が、低抵抗化することで露光により形成された静電潜像が維持できないことにより発生する。像流れの発生有無の判定に用いる評価パターンとしては、例えばドット、またはラインで形成した面積率70%のハーフトーン画像を用紙Sの全幅領域に渡って形成する。像流れが発生した場合には、ドット、またはラインを形成した位置の周囲の白地部に、トナーが付着するため濃度が濃くなる。一方で、面積率30%のハーフトーン画像の場合にはドット、またはラインを形成した位置の潜像が広がるが、十分な量のトナーを現像できないため濃度が薄くなる。すなわち、像流れの発生有無を評価するためには、1枚の用紙、または2枚の用紙に、面積率が高いハーフトーン画像と、低いハーフトーン画像を形成し、このハーフトーン画像を読み取って得られた画像データから、濃度の不均一を評価することにより、像流れが発生したことを判定できる。
【0042】
(温湿度計90)
温湿度計90は、画像形成装置1の本体内部に配置され、画像形成部30周辺の温湿度を測定する。
【0043】
(清掃部316)
清掃部316は、図2に示すように、クリーニングブレード61(以下、単に「ブレード61」という)、ブラシローラー62、および回収スクリュー63、およびこれらの部材を保持するとともに、全体を覆う筐体64を備える。
【0044】
ブレード61は、ゴム材料で構成される。ゴム材料としては、好ましくはウレタンゴムが用いられるが、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム、またはニトリルゴムを適用してもよい。ブレード61は、筐体64に保持された(例えば固定方式の)ホルダ610に取り付けられ、例えば厚み2mmで、自由長9mmである。当接角は10~20°であり、所定の当接圧で感光体ドラム311の表面に当接する。
【0045】
ブラシローラー62は、回転部材としてのブラシ状のローラーであり、プレ清掃部として機能し、残トナーの一部を除去し、下流側のブレード61に到達する残トナーを減らす。ブラシローラー62は、金属製の回転軸621と、この回転軸621の周囲に配置された多数のブラシ毛622から構成される。ブラシ毛622は、回転軸621に巻かれた基布(図示せず)に植設されている。例えば、ブラシ毛622の材料は、6-ナイロン、12-ナイロン、PET等のポリエステル、アクリル、ビニロン、アラミド等の合成樹脂、または、これらの2種以上からなる混合物であり、繊度は2~15デニール(D)であり、密度(植密度)は、50~300kF/(inch)であり、毛長(高さ)は、2~8mmである。なお、ブラシ状のローラーに替えてスポンジ状のローラーを採用してもよい。
【0046】
ローラー駆動部71、およびローラー移動部72は、ブラシローラー62の回転軸621と接続する。ローラー駆動部71は、モーター、および複数のギア系列を含み、ブラシローラー62を回転駆動する。ブラシローラー62の回転速度、および回転方向は変更できる。ブラシローラー62の回転方向は、感光体ドラム311の回転方向に対して、ウィズ方向(表面が同一方向に移動する方向)でもカウンタ方向(表面が逆方向に移動する方向)のいずれでもよい。本実施形態においては、図2において矢印に示すように、ブラシローラー62は、反時計方向に回転するウィズ方向に設定している。
【0047】
また、ローラー移動部72は、駆動源とアクチュエーターを含み、ブラシローラー62の回転軸621を移動する。この移動は、ブラシローラー62の回転軸621と感光体ドラム311との回転軸621を結んだ線に沿って行われる。回転軸621を移動させることで、ブラシローラー62の感光体ドラム311への押圧力を変更する。押圧力と、回転軸621の位置との対応関係は、予め記憶部20に記憶されている。
【0048】
回収スクリュー63は、筐体64の下部に設けられている。ブレード61、およびブラシローラー62により掻き取られたトナー、外添剤、紙粉等は、筐体64の内面に沿って下方に落下し、その後、回収スクリュー63により装置本体背面側に搬送され、背面側に配置されている回収ボックス(図示せず)に回収される。
【0049】
(像流れ発生原因と像流れ解消処理)
像流れの発生原因としては、主に像担持体表面に放電生成物が付着することを原因とする第1の発生原因と、像担持体表面に紙粉が付着することを原因とする第2の発生原因がある。第1の発生原因においては、放電生成物(例えばNOx)が感光体ドラム311の表面に付着する、または放電により発生するオゾンにより感光体ドラム311の表層そのものの改質により、表層自体が親水化する。感光体ドラム311の表面に付着した放電生成物、または改質して親水化した表層には、大気中の水分が吸着するため低抵抗化する。この放電生成物の影響は、長時間放置した後に帯電極312の直下にある感光体ドラム311の表面領域で発生し易い。これは、放電により帯電極312の表面(帯電極のバックプレート、ワイヤー等)に放電生成物が蓄積し、これが長時間の放置により徐々に放出される(数時間から1日以上は飽和)。このとき、帯電極312の真下にある感光体ドラム311の表面により多く付着し、表面が低抵抗化すると考えられる。この影響は、新品の帯電極312よりも、使用時間が多い、耐久が進んだ帯電極312の方がより影響が大きい傾向である。
【0050】
第2の発生原因においても、感光体ドラム311の表面に付着した紙粉(タルク等)に大気中の水分が吸着するため低抵抗化する。低抵抗化は、特に、水分が吸着し易い高湿環境下において発生する。低抵抗化した場合には、静電潜像が維持できずに、像流れの画像不良を生じさせる。なお、像担持体としては、感光体に限られず、中間転写ベルトにおいても、第1、第2の発生原因に関する同様の現象が生じる。中間転写ベルトの場合には、静電潜像に関する不具合は発生しないが、表層の低抵抗化の影響として、転写性の不均一の不具合が生じる。本発明においては、以下に示すように、それぞれの発生原因に対して有効な像流れ解消処理が異なることを見出した。
【0051】
(第1の発生原因(放電生成物))
図4は、ブラシローラー62の押圧力と回転数(線速比θ)の各条件下において、像流れが解消するまでのプリント数を示すグラフである。
【0052】
同図の像流れは、放電生成物を起因とする像流れを評価したものであり、30℃/80%RHの高温高湿度環境下にて、耐久の進んだ(使用時間が多い)帯電極312(帯電極自体に放電生成物の付着が多い)を使用してA4サイズ用紙を使用して10000プリントを実施した後に、装置本体の電源を落として10時間放置した。その後に、用紙にプリントした。この用紙上の画像では、感光体ドラム311の帯電極312に対向して放置された位置に像流れが発生した。図4において縦軸は、この像流れが発生した状態で、A4サイズのプリントを継続しその後に「像流れが解消したプリント数」である。解消したか否かの評価は、ハーフトーン画像を目視評価することにより行った(後述の図5図6においても同様である)。
【0053】
横軸は、ブラシローラー62の回転数(線速比θ)である。同図では、ウィズ方向で、感光体ドラム311の一定の線速に対する、可変したブラシローラーの線速の比を示している。図4において、実線で結んだ黒丸のプロットでは、ブラシローラー62の感光体ドラム311への押圧力は標準である。破線で結んだ白丸のプロットでは、同押圧力は、標準の2倍に設定している。図4の結果から、放電生成物は、ブラシローラー62の研磨力(摺擦力)を向上させることで除去することが可能であることが分かる。押圧力が低い場合(標準)では、回転数の影響は大きい。一方で、押圧力が高い場合(2倍)では、回転数の影響は小さく、回転数が低くても効果的に除去できる。
【0054】
このことから、第1の発生原因(放電生成物)による像流れに対しては、感光体ドラム311への摺擦力を増加させる処理(以下、「第1の像流れ解消処理」という)が、有効である。
【0055】
(第2の発生原因(紙粉))
図5は、図4と同様のグラフであり、紙粉の発生レベルが異なる2種類の用紙と、ブラシローラー62の回転数(線速比θ)の各条件下において、像流れが解消するまでのプリント数を示すグラフである。
【0056】
同図の像流れは、紙粉を原因とする像流れが発生した状態を初期状態として、紙粉の発生、付着が少ない用紙Aと、紙粉の発生、付着が多い用紙Bの2種類のA4サイズの用紙を用いて連続プリントを行い、像流れが解消したプリント数を縦軸にプロットした。この初期状態は、30%/80%RHの高温高湿環境で、A3サイズの紙粉の多い用紙Bを用いて、2500プリントを行い、その後、10時間放置した。その後、消滅プリント数の調査として、紙粉の少ない紙Aを用いて、図5に示す線速比θでハーフトーンを連続して行い、像流れが解消するまでのプリント数を調査した。同様のテストを、線速比θを換えて複数回行った。また、同じ初期状態から、紙粉の多い紙Bで、線速比θを換えて同様のテストを行った。紙粉が少ない用紙Aの場合には、ブラシローラー62の線速比を標準よりも少し上げだけで、改善が見られる。一方で紙粉が多い用紙Bの場合には、ブラシローラー62の線速比を極端(θ=8)に上げなくてはならない。実用的な範囲は、θ=2.5以下であり、この範囲以上に上げる場合には、感光体層の膜減耗から現実的ではない。実用的な範囲内では、像流れに対して十分な効果が得られなかった。このことから紙粉は、比較的、感光体ドラム311の表面に強固に付着していると考えられる。以上のことから、紙粉による第2の発生原因による像流れに対しては、第1の像流れ解消処理(摺擦力)は有効ではないことが判明した。
【0057】
図6は、図5と同様のグラフであり、横軸をトナー帯幅として、像流れが解消するまでのプリント数を示すグラフである。トナー帯幅は、副走査方向の長さであり、連続して搬送する用紙の紙間に対応する領域に、トナー帯を毎回形成し、清掃部316に未転写のトナーを供給した。図6に示すようにトナー帯を形成し、トナーを清掃部316に供給する処理(以下、「第2の像流れ解消処理」という)が、有効である。第1の像流れ解消処理に比べて、現実的に使用可能な範囲で十分に効果が得られることが分かる。
【0058】
以上のことから、第1の発生原因(放電生成物)による像流れに対しては、ブラシローラー62の押圧力を上げたり、線速比を増加させたりして摺擦力を増加させる第1の像流れ解消処理が有効である。また、第2の発生原因(紙粉)による像流れに対しては、トナー帯を形成し、清掃部316に到達するトナー量を増加させ、ブラシローラー62による研磨力を増加させる第2の像流れ解消処理が有効である。
【0059】
(像流れ解消処理)
次に、図7図12を参照し、本実施形態に係る画像形成装置1で実行する像流れ解消処理について説明する。
【0060】
図7は、像流れ解消処理を示すフローチャートである。図8は、図7のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0061】
(ステップS101)
画像形成装置1の電源がONされることで、制御部10は、処理をステップS102に進める。
【0062】
(ステップS102)
制御部10の推定部11は、像流れの発生原因それぞれに対応した発生条件を満たしたか否かにより、発生原因を推定する。また、選択処理部12は、推定した発生原因に応じて、発生原因に対応する像流れ解消処理を選択して実行する。具体的には、図8に示すサブルーチンの処理を実行する。
【0063】
(ステップS201)
図8を参照すると、このステップS201の処理では、第1の発生原因(放電生成物)の発生条件を満たしているか否かを判定する。具体的には、推定部11は、放電生成物の滞留量を算出し、これが閾値以上であるか否かを判定する。この判定の具体例については後述する(図11図13)。算出した滞留量が閾値以上であれば(YES)、処理をステップS202に進め、閾値未満であれば(NO)、処理をステップS203に進める。
【0064】
(ステップS202)
推定部11は、第1フラグ(放電生成物)をON(有効化)して、処理をステップS203に進める。
【0065】
(ステップS203)
推定部11は、第2の発生原因(紙粉)の発生条件を満たしているか否かを判定する。具体的には、推定部11は、紙粉カウンタ(「紙粉量を示す指標」ともいう)が、閾値10000以上であるか否かを判定する。閾値以上であれば(YES)、処理をステップS204に進め、閾値未満であれば(NO)、処理ステップS205に進める。この紙粉カウンタは、記憶部20に記憶されている重み付け係数を参照し、紙種毎にカウントされ、記憶部20に記録される。
【0066】
図9は、紙粉量に関する重み付け係数の例である。給紙トレイ41に収納されている紙種は、操作パネル50を通じて、ユーザーにより選択される。記憶部20は、紙種毎の作像条件(プロセス条件)を細かく指定した最適条件記述したデータリストが記憶されている。使用が想定される紙種に対しては、予め実験により、紙粉の発生量に応じて用紙種類毎(用紙銘柄)に紙粉量ランクを評価し、評価結果により重み付け係数を算出する。そして算出した重み付け係数は、紙種に紐付けてデータリストに記述される。
【0067】
紙粉カウンタは、図9の重み付け係数に、プリントした枚数を乗じることにより算出する。例えば、図9において、紙粉量ランク1の紙銘柄Aの用紙であれば、5000プリントを行うことで、紙粉カウンタは10000(2×5000)に到達する。また、紙粉量ランク1(係数2)の用紙で2000プリント、紙粉量ランク2(係数0.5)の用紙で10000プリントを行った場合には、紙粉カウンタは、9000増加する(2×2000+0.5×10000)。この閾値10000は、30℃/80%RHの高湿環境下に対応するものであり、温湿度計90の出力を参照することにより、画像形成装置1を使用する環境に応じて、閾値を変更してもよい。また、複数の重み付け係数のテーブルも使用環境により、複数用意してもよい。例えば、閾値は、湿度が高い程、像流れは発生し易いので、閾値を小さくする。一方で、重み付け係数は、湿度が低い程(静電気的に)感光体ドラム311に付着し、蓄積する紙粉量が多くなるので、係数が大きくするテーブルを用意する。
【0068】
(ステップS204)
推定部は、第2フラグ(紙粉)をON(有効化)して、処理をステップS205に進める。
【0069】
(ステップS205)
制御部10は、像流れが発生されているかを判定する。具体的には、制御部10は、画像形成部30、および給紙搬送部40を制御することで、用紙Sを給紙搬送し、用紙S上に評価用の画像を形成させる。このときに用いる評価用の画像は、予め記憶部20に記憶されている画像データを出力したものである。評価用の画像は、用紙幅全幅(画像形成可能範囲全幅)に渡るハーフトーン画像で形成されている。このハーフトーンには、高濃度と低濃度の両方が含まれていてもよい(上述の面積率70%、30%のハーフトーン)。そして用紙S上に形成した評価用の画像は、下流側の読取部80により読み取られる。制御部10は、読取部80により得られた画像データを評価することで、像流れの発生有無を判定する。像流れが有れば(YES)、ステップS206に進め、像流れが無ければ(NO)、ステップS206をスキップする。
【0070】
なお、読取部80(あるいは濃度センサー)を、像担持体としての感光体ドラム311に対向して配置させ、感光体ドラム311上に形成した評価用の画像に対応するトナー画像を、読み取ることで、像流れの発生有無を判定するようにしてもよい。これにより、用紙Sの消費を避けることができる。また、読取部80が無い構成であれば、用紙Sに形成した評価用の画像を、ユーザーが目視等で評価し、評価結果を、操作パネル50を通じて受け付けるようにしてもよい。
【0071】
(ステップS206)
ここでは、選択処理部12は、ステップS202、およびステップS204で有効化されたフラグに応じた条件で、実行する像流れ解消処理(感光体リフレッシュモード)の種類を選択し、実行する。図10は、有効化されたフラグと、像流れ解消処理の条件を示すテーブルである。例えば、第1、第2フラグの両方が有効化されていれば、ブラシローラー62の線速比θを標準の1.1から2.0に変更して回転数を大きくする第1の解消処理を選択する。また、トナー帯幅を40mmに設定する第2の像流れ解消処理を選択する。そして、選択した像流れ解消処理の条件で、所定時間の感光体ドラム311の表面をリフレッシュする処理を行う。所定時間は、例えば、A4サイズ、400プリントに相当する時間である。制御部10は、その期間中は、感光体ドラム311、およびブラシローラー62を回転駆動し続けるとともに、(回転軸方向の)全幅に渡る40mm幅のトナー帯を、紙間に相当する周期で作成し続ける。なお、全幅ではなく、回転軸方向の両端部側からのトナーシール漏れによる、飛散を考慮して、感光体ドラム311の両端を避けるように全長よりも20~50mm程度短い幅で形成するようにしてもよい。この像流れ解消処理においては、転写用の用紙Sは搬送しない。そのため、感光体ドラム311上に形成したトナー帯は、未転写のまま、清掃部316に到達する(供給される)。
【0072】
制御部10は、像流れ解消処理が終了すれば、所定のエンド処理を行い、その後は図8のサブルーチンを終了し、図7の処理に戻る(リターン)。このエンド処理には、フラグのリセット、ならびに紙粉カウント、および後述する放電生成物の滞留量の算出値のリセットが含まれる。また、このエンド処理には、感光体ドラム311等の作像部31の各構成部材の停止処理が含まれる。
【0073】
(ステップS103)
図7に示すように、ここでは、ユーザーによりプリントボタン(操作パネル50)が押下された場合には(YES)、制御部10は、処理をステップS104に進める。
【0074】
(ステップS104)
制御部10は、画像形成部30、および給紙搬送部40を制御し、ステップS103で受け付けた印刷データに基づいたプリントをスタートする。
【0075】
(ステップS105)
制御部10は、用紙Sに画像形成するとともに、このとき、使用した用紙Sの給紙トレイ41の紙種設定に応じた重み付け係数(図9参照)をプリント枚数に乗じて得られた値を、紙粉カウンタに加算する。
【0076】
(ステップS106)
制御部10は、ステップS102と同様に、図8に示すサブルーチンの処理を実行し、像流れ発生条件の判定、およびその結果に応じた像流れ解消処理を実行する。なお、ステップS106では、プリントを実行中に、像流れ解消処理を実行する場合には、プリント処理を中断する。すなわち、像流れ解消処理を非画像形成時に行う。
【0077】
(ステップS107)
印刷設定に応じた枚数のプリントが終了していなければ(NO)、ステップS105以降の処理を繰り返す。一方で、プリントが終了すれば(YES)、処理を終了する(エンド)。
【0078】
(放電生成物滞留量の判定)
次に、図11図13を参照し、上述のステップS201で行った第1の発生原因(放電生成物)の発生条件を満たしているか否かを判定について説明する。
【0079】
図11は、測定治具を説明する模式図である。図11に示すように、ドラム311b、およびプローブを配置し、帯電極312の放電により発生したオゾン濃度を測定する。ドラム311bは、感光体ドラム311と同形状である。帯電極312、およびドラム311bの配置位置は、実際の画像形成装置1における、帯電極312、および感光体ドラム311の位置関係にそれぞれ対応する。ドラム311には、帯電極312に対向する位置に開けられた穴にプローブが挿入されている。プローブの先端は、帯電極312の直下に位置している。プローブの先端付近の空気は、プローブに吸い込まれ、下流側に接続されているオゾン測定器に吸い込まれ、オゾン濃度が測定される。このオゾン測定器としてはEG2001R(荏原実業株式会社製)を用いた。
【0080】
図12は、帯電極312に印加した帯電電流値(総和)に対する放電生成物滞留量としてのオゾン滞留量との関係を示すグラフである。縦軸はオゾン濃度(ppm)であり、横軸は、電流量(μA)である。図12では3水準の環境下でのオゾン濃度をプロットしている。
【0081】
図13は、2水準の環境下において、放置時間に対する像流れ発生閾値(ppm)を示すテーブルである。
【0082】
感光体ドラム311の感光体の処方により、像流れが発生し始める放電生成物滞留量(ppm)が異なる。図13は、bizhubPRO1200(コニカミノルタ株式会社製)で使用している感光体での評価結果である。
【0083】
図13に示すように、30℃/80%RHでは、5~10時間の放置では、6ppm以上のオゾン濃度で像流れが発生する。例えば、日本の夏期においては、この条件に当てはまる場合がある。具体的には、夏期においては、日中は、エアコンが作動することで20℃/50%RH付近に保たれた屋内のオフィスで画像形成装置1が使用される。このときの帯電電流値は2500μAであり、6ppm(図12参照)となる。その後の夜間では、エアコンがOFFされるため、温度、湿度共に上昇し、30℃/80%RH程度になってしまうことが十分考えられる。このような状況下では、像流れが発生する。
【0084】
図12図13の参照データは、記憶部20に記憶されている。制御部10の推定部11は、第1の発生原因の発生状況を満たしているか否かを、これらの参照データを用いて、判定する。具体的には、推定部11は、放電生成物の滞留量について、図12の参照データを用いて、印刷プリント中に使用していた帯電電流値と、温湿度計90から取得した使用環境(温湿度)から放電生成物滞留量(「滞留量を示す指標」ともいう)を算出し、これを記憶部20に記録する。そして、翌日の朝等で、電源がONされたタイミング(例えば図7のステップS101、S102)での温湿度から、推定部11は、放置されていた環境を判断する。また、電源がONされた時刻と、直前に印刷プリントを実行した時刻から放置時間を算出する。この算出は、画像形成装置1の制御部10の時計機能により行う。そして推定部11は、記憶部20に記憶していた滞留量(「滞留量を示す指標」)、および算出した放置時間から、図13の参照データの閾値(ppm)以上か否かを判定する。閾値以上であれば、第2の発生原因の発生条件を満たすと判定し(ステップS201:YES)、ステップS202で第1のフラグを有効にし、所定の条件を満たすことにより以降の像流れ解消処理を実行する。
【0085】
このように、本実施形態に係る画像形成装置は、像担持体で発生する像流れの複数の発生原因の推定を、複数の発生原因それぞれに対応した発生条件を満たすか否かを判定することにより行う推定部11と、推定部11が推定した発生原因に応じて、発生原因に対応する像流れ解消処理を選択し、実行する選択処理部12と、を備える。このようにすることで、発生原因に応じた適切な像流れ解消処理により像流れの発生を低減させることが可能となる。特に第2の発生原因(紙粉)ではなく、第1の発生原因(放電生成物)による像流れが発生すると推定した場合には、トナー帯幅を増加させることなく、像流れ解消処理を行うので、不必要にトナーが消費されることを防止できる。
【0086】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態に係る画像形成装置1bを示す図である。図1等に示した第1の実施形態に係る画像形成装置1は、モノクロの画像形成装置であった。これに対して、図14に示す画像形成装置1bは、カラーの画像形成装置である。なお、同図に記載している構成以外は、第1の実施形態と同様の構成であり説明を省略する。例えば、図3のブロック図に示した構成(読取部80、温湿度計90)は、第2の実施形態に係る画像形成装置1bにおいても同様に備えている。
【0087】
画像形成装置1bにおいて、画像形成部30は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各基本色に対応した複数の作像部31Y、31M、31C、31Kを備える。それぞれの作像部31(31Y~31K)は、感光体ドラム311、帯電極312、露光部313、現像装置314、転写部315、および清掃部316をそれぞれ備える。これらの構成は、第1の実施形形態で説明した構成にそれぞれ対応する。なお、図14では、Y色以外については、作像部31の各構成要素の符号は省略している。各作像部31は、現像器に収納されている現像剤のトナーの色が異なるが、それ以外は同一の構成である。
【0088】
また、画像形成部30は、さらに、中間転写ベルト33、2次転写部34、および中間転写ベルト33用の清掃部35を備える。清掃部35の構成は、第1の実施形態の清掃部316の構成に対応し、清掃部35には、ブラシローラー、およびクリーニングブレード等が含まれる。中間転写ベルト33上には、各作像部31で形成されたトナー画像を(1次)転写部315により転写する。中間転写ベルト33上に重畳して転写されたトナー画像(フルカラー)は、2次転写部34により用紙Sに転写される。この2次転写部34は、転写ローラーであり、中間転写ベルト33の内周面側に配置された対向ローラーとの間で転写ニップを形成する。2次転写部34の材料、構成は、1次転写部と同様である。
【0089】
第1の実施形態における画像形成装置1においては、形成されたトナー画像が用紙SDに転写される像担持体として感光体ドラム311を用い、この感光体ドラム311で発生する像流れに対して発生条件を満たすか否かを判定し、発生条件を満たすことにより像流れ解消処理を行った。第2の実施形態における画像形成装置1bにおいては、中間転写ベルト33が像担持体として機能し、この中間転写ベルト33で発生する像流れに対して、発生条件を満たすか否かを判定し、発生条件を満たすことにより像流れ解消処理を行う。
【0090】
このような中間転写ベルト33においても搬送される用紙Sにより、紙粉が表面に付着する。また2次転写部34の転写ニップ近傍で発生する放電により、放電生成物が生成され、これが中間転写ベルト33の表面に付着する。
【0091】
このような、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、推定部11により、像担持体で発生する像流れの複数の発生原因の推定を、複数の発生原因それぞれに対応した発生条件を満たすか否かを判定し、推定部11が推定した発生原因に応じて、選択処理部12は、発生原因に対応する像流れ解消処理を選択し、実行する。これにより、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0092】
以上に説明した、画像形成装置1、1bの構成は、上述の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上述の構成に限られず、特許請求の範囲内において、種種改変することができる。また、画像形成装置1、1bが備える構成を排除するものではない。
【0093】
例えば、上述の実施形態では、清掃部316の感光体ドラム311への摺擦力を増減させる手段として、ブラシローラー62の回転数(線速比θ)を変更した。これに限られず、ブラシローラー62の位置をローラー移動部72により動かして、ブラシローラー62の感光体ドラム311への当接力を増減させることで、摺擦力を増減させるようにしてもよい。また、これに限られず、クリーニングブレード61のホルダ610の位置を変更する機構を設け、これにより、クリーニングブレード61の感光体ドラム311への当接力、および摺擦力を増減させる構成としてもよい。
【0094】
また、上述の実施形態においては、第1、第2の像流れ解消処理は、プリント処理を実行していない非画像形成時に実施したが、これに限られず、画像形成時に行ってもよい。例えば、第1の発生条件を満たす場合には、所定期間の間、画像形成時においてブラシローラー62の回転数を増加する。また、第2の発生条件を満たす場合には、所定期間の間、画像形成時において、用紙間に形成するトナー帯の幅を広くして、清掃部316に供給するトナー量を増加させる。
【0095】
また、図8においては、像流れ解消処理(S206)を行った後に、再び、ステップS205の処理を行い、像流れが解消していない場合には、複数回、ステップS206の像流れ解消処理を実行するようにしてもよい。
【0096】
上述した実施形態に係る画像形成装置1、1bにおける各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えば、USBメモリやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、装置の一機能としてその装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 画像形成装置
10 制御部
11 推定部
12 選択処理部
20 記憶部
30 画像形成部
31 作像部
311 感光体ドラム
312 帯電極
313 露光部
314 現像装置
315 転写部
316 清掃部
61 クリーニングブレード
62 ブラシローラー
63 回収スクリュー
64 筐体
32 定着部
40 給紙搬送部
41 給紙トレイ
42、43、44 用紙搬送路
50 操作パネル
71 ローラー駆動部
72 ローラー移動部
80 読取部
90 温湿度計
(第2の実施形態)
33 中間転写ベルト
34 2次転写部
35 清掃部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14