(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】樹脂混合物、その製造方法及び射出成形方法
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20221206BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20221206BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08L69/00
B29B17/00
B29C45/00
(21)【出願番号】P 2019005785
(22)【出願日】2019-01-17
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 宗夫
(72)【発明者】
【氏名】齊田 靖治
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-235405(JP,A)
【文献】特開2002-059425(JP,A)
【文献】特開2001-226576(JP,A)
【文献】特開平08-142054(JP,A)
【文献】特開2015-003966(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102597111(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107531988(CN,A)
【文献】国際公開第2011/116971(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
B29B7/00-9/16、17/00-17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子
を含有する樹脂混合物であって、
重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子の重量平均分子量が、38000~45000の範囲内であり、
重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子の重量平均分子量が、25000~34000の範囲内であり、
前記重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子と前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子との混合比が、50:50~80:20(質量%)の範囲内であり、
前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の1粒子当たりの体積が、それぞれ、30~200mm
3
の範囲内であり、
メルトフローレート(melt flow rate:MFR)測定装置を用いて、温度300℃かつ荷重1.2kgの条件下で測定した、
前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の混合物のメルトフローレート(MFR-1)と前記
2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の混練物のメルトフローレート(MFR-2)との関係が、下記式(1)を満たす
ことを特徴とする樹脂混合物。
式(1) MFR-2<MFR-1
【請求項2】
前記重量平均分子量の低
いポリカーボネートの粒子の表面積が、前記混合物100g当たり250cm
2以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂混合物。
【請求項3】
前記重量平均分子量の低
いポリカーボネートの粒子の1粒子当たりの体積が、120
~200mm
3
の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂混合物。
【請求項4】
前記重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子が分岐型のポリカーボネートを含有し、前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子が直鎖型のポリカーボネートを含有することを特徴とする請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の樹脂混合物。
【請求項5】
温度300℃かつ荷重1.2kgの条件下で測定する前記混合物のメルトフローレート(MFR-1)が、混練物のメルトフローレート(MFR-2)に比べて、10g/10min以上高いことを特徴とする請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の樹脂混合物。
【請求項6】
前記ポリカーボネートが、再生樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の樹脂混合物。
【請求項7】
請求項1から請求項
6までのいずれか一項に記載の樹脂混合物を製造する樹脂混合物の製造方法であって、
前記樹脂混合物が、ポリカーボネートの廃材から再資源化した樹脂混合物であり、下記工程(a)~工程(d)を有することを特徴とする樹脂混合物の製造方法。
(a)同じ用途に使用されている廃材を集める工程、
(b)集められたポリカーボネートの廃材の重量平均分子量を測定する工程、
(c)前記ポリカーボネートを所定のサイズの粒子に、溶融して加工する工程、
(d)前記粒子を所定の割合に計量して、混合機で混合する工程
【請求項8】
請求項1から請求項
6までのいずれか一項に記載の樹脂混合物を、成形機により加熱溶融させて射出成形することを特徴とする射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂混合物、その製造方法及び射出成形方法に関する。より詳しくは、メルトフローレートと機械強度に優れた再生ポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物等に関する。
【背景技術】
【0002】
廃樹脂のリサイクルは、マテリアルリサイクル(素材としての再利用)とサーマルリサイクル(熱としての再利用)に区分される。軽量で機械的強度に優れる樹脂は、家電製品、OA機器、通信機器等の内部部品や外装材料、包装材料、容器等に多用されている。また、従来の大量生産・大量廃棄の経済から循環型経済への変換が求められる中で樹脂製品のマテリアルリサイクルが盛んに行われるようになった。
【0003】
廃樹脂のマテリアルリサイクルの一般的な処理方法では、(a)廃棄樹脂を単一材料に分別した後、(b)樹脂専用破砕機にて適切な大きさに破砕し、(c)汚れを取るために洗浄し、(d)混入した異物を分離除去し、(e)異物を分離除去した破砕物を乾燥し、(f)一定の大きさに分級した後、(g)押出機にてルーダ加工してペレット化した後、(h)成形機にて任意の形状に成形加工する。
【0004】
再生樹脂を再利用するときは、もともと長期使用による劣化、加工工程での熱劣化により、機械強度が低下するため、再生樹脂でも高分子量のものを使用する必要があるが、高分子量化したときの問題はメルトフローレートが低いことである。
【0005】
ポリカーボネートの再生においても、機械強度を上げるため高分子量のポリカーボネートを用いると、メルトフローレートに問題があり、例えば、樹脂の成形加工時に熱等が均一にかからず、成形ムラ等の問題が発生する。
【0006】
特許文献1には、光学ディスク用の低分子量ポリカーボネートを使用して、機械的物性に優れ、かつ良好なメルトフローレートを有し、成形性にも優れたポリカーボネート含有の樹脂組成物を得る技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記技術は、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)やAS(アクリロニトリル-スチレン樹脂)を改質剤として、低分子量ポリカーボネートに混合して、機械的物性に優れ、かつ良好なメルトフローレートを具備させる技術であり、高分子量のポリカーボネート主体のマテリアルリサイクル技術とはいえない。
【0008】
また、特許文献2には、粘度平均分子量が15000~19000のポリカーボネートに、特定のポリカーボネートオリゴマー、二価フェノール系化合物と分岐化剤とを配合して、メルトフローレートを改善する試みが開示されている、しかしながら、同様に、高分子量のポリカーボネート主体のマテリアルリサイクルについては言及していない。
【0009】
したがって、再生樹脂の機械強度を向上するために、高分子量のポリカーボネートを用いたマテリアルリサイクルにおいて、メルトフローレートと機械強度に優れた再生ポリカーボネートの樹脂混合物を得る方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-2129号公報
【文献】特開昭61-123658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、メルトフローレートと機械強度に優れた再生ポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物、その製造方法及び射出成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物を得る上で、2種のポリカーボネートの粒子の重量平均分子量を特定の範囲内とし、2種のポリカーボネートの粒子の混合比を特定の範囲内とし、2種のポリカーボネートの粒子の1粒子当たりの体積を特定の範囲内とし、当該ポリカーボネートの粒子の混合物と混練物とが、特定のメルトフローレートの関係を有する樹脂混合物によって、メルトフローレートと機械強度に優れた再生ポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物が得られることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0014】
1.2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子を含有する樹脂混合物であって、
重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子の重量平均分子量が、38000~45000の範囲内であり、
重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子の重量平均分子量が、25000~34000の範囲内であり、
前記重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子と前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子との混合比が、50:50~80:20(質量%)の範囲内であり、
前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の1粒子当たりの体積が、それぞれ、30~200mm
3
の範囲内であり、
メルトフローレート(melt flow rate:MFR)測定装置を用いて、温度300℃かつ荷重1.2kgの条件下で測定した、前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の混合物のメルトフローレート(MFR-1)と前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の混練物のメルトフローレート(MFR-2)との関係が、下記式(1)を満たすことを特徴とする樹脂混合物。
式(1) MFR-2<MFR-1
【0015】
2.前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子の表面積が、前記混合物100g当たり250cm2以下であることを特徴とする第1項に記載の樹脂混合物。
【0016】
3.前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子の1粒子当たりの体積が、120~200mm3
の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の樹脂混合物。
【0019】
4.前記重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子が分岐型のポリカーボネートを含有し、前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子が直鎖型のポリカーボネートを含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の樹脂混合物。
【0020】
5.温度300℃かつ荷重1.2kgの条件下で測定する前記混合物のメルトフローレート(MFR-1)が、混練物のメルトフローレート(MFR-2)に比べて、10g/10min以上高いことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の樹脂混合物。
【0021】
6.前記ポリカーボネートが、再生樹脂であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の樹脂混合物。
【0022】
7.第1項から第6項までのいずれか一項に記載の樹脂混合物を製造する樹脂混合物の製造方法であって、
前記樹脂混合物が、ポリカーボネートの廃材から再資源化した樹脂混合物であり、下記工程(a)~工程(d)を有することを特徴とする樹脂混合物の製造方法。
(a)同じ用途に使用されている廃材を集める工程、
(b)集められたポリカーボネートの廃材の重量平均分子量を測定する工程、
(c)前記ポリカーボネートを所定のサイズの粒子に、溶融して加工する工程、
(d)前記粒子を所定の割合に計量して、混合機で混合する工程
【0023】
8.第1項から第6項までのいずれか一項に記載の樹脂混合物を、成形機により加熱溶融させて射出成形することを特徴とする射出成形方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記手段により、メルトフローレートと機械強度に優れた再生ポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物、その製造方法及び射出成形方法を提供することができる。
【0025】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
通常、2種類の固体を混ぜるときに、「混合」と「混練」という手法が用いられる。
最初に、本発明で用いる「混合物」と「混練物」の違いを定義する。
図1は、本発明に係る「混合物」と「混練物」の違いを説明する模式図である。
図1(a)は「混合物」を示し、
図1(b)は「混練物」を示す。
図中、混合又は混練前は、重量平均分子量(以下、単に「分子量」ともいう。)の高い成分1と分子量の低い成分2が存在する。
【0026】
図1(a)で示す「混合物」とは、2種の固体粒子を軟化点以下の温度で、固体状態で混ぜられた状態をいい、一つ一つの固体粒子は、混合前とその性質は同じ状態である。この操作を「ドライブレンド」ともいう。したがって、分子量の高い成分1と分子量の低い成分2がそのまま存在する。「軟化点」とは、樹脂が温度の上昇によって軟化し、変形を始めるときの温度をいう。
【0027】
図1(b)で示す「混練物」とは、2種の固体粒子を溶融温度以上に加熱して、粘稠な状態でせん断力を加えて練りこむことであり、一つ一つの固体粒子が、混練前とその性質は異なる状態になる。この場合は、性質の異なる成分3が生じる。なお、図中、成分3は混練後に混練物を粉砕し粒子状に加工した状態を示している。
【0028】
通常、再生樹脂は、熱をかけて混練すると分子量が低下して、メルトフローレートは高くなる。但し、分子量が低下すると強度が下がるため、再生樹脂の強度を増すために、分子量の高い樹脂を用いると、逆にメルトフローレートが低くなりやすい。当該メルトフローレートが低いと射出成形時に所望の形状を形成しにくく、成形不良が発生しやすくなるという問題につながる。
【0029】
また、メルトフローレートが高い樹脂と、メルトフローレートの低い樹脂を混合するときに、その界面が小さいほど、メルトフローレートの高い成分の影響が大きくなるが、その界面が大きくなるとメルトフローレートの高い成分が、メルトフローレートの低い成分に拘束されるので、全体のメルトフローレートが低くなる。
【0030】
図2は、2種の重量平均分子量が異なる樹脂の混合状態と混練状態を示す模式図である。
図2(a)は、「混合物」に熱をかけて溶融させた状態を示す模式図である。図中、分子量の低い成分2は、図中、分子量の高い成分1との界面部分4の表面積が小さいため、分子量の高い成分1に分子量の低い成分2が拘束されにくく、全体のメルトフローレートは高い。
【0031】
一方、
図2(b)は、「混練物」に熱をかけて溶融させた状態を示す模式図である。図中、分子量の低い成分2は、混練すると、細かく均一に分散して、図中、分子量の高い成分1との界面部分4の表面積が大きくなるため、分子量の高い成分1に分子量の低い成分2が拘束され、全体のメルトフローレートは低くなる。
【0032】
このように2種の異なる分子量の樹脂を用い、前記「混練物」ではなく、前記「混合物」とすることで、分子量の高い樹脂を用いても、メルトフローレートが高くなることで成形性に優れ、また、分子量の高い樹脂を用いているため、強度の高い成形物を製造することができるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】「混合物」と「混練物」の違いを説明する模式図
【
図2】2種の重量平均分子量が異なる樹脂の混合状態と混練状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の樹脂混合物は、2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子を含有する樹脂混合物であって、重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子の重量平均分子量が、38000~45000の範囲内であり、重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子の重量平均分子量が、25000~34000の範囲内であり、前記重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子と前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子との混合比が、50:50~80:20(質量%)の範囲内であり、前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の1粒子当たりの体積が、それぞれ、30~200mm
3
の範囲内であり、メルトフローレート(melt flow rate:MFR)測定装置を用いて、温度300℃かつ荷重1.2kgの条件下で測定した、前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の混合物のメルトフローレート(MFR-1)と前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の混練物のメルトフローレート(MFR-2)との関係が、前記式(1)を満たすことを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0035】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記重量平均分子量の低い成分からなるポリカーボネートの粒子の表面積が、前記混合物100g当たり250cm2以下であることが、好ましい。これは、メルトフローレートの低い樹脂の表面積が小さければ界面の面積が小さくなることから、メルトフローレートの高い成分が、メルトフローレートの低い成分に拘束されることを抑制し、全体のメルトフローレートを高くすることができる。
【0036】
前記重量平均分子量の低い成分からなるポリカーボネートの粒子の1粒子当たりの体積が、120~200mm3
の範囲内であることが、好ましい。これは、メルトフローレートの低い樹脂の一粒子当たりの体積が大きい方が、界面の面積が小さくなる観点から、上記と同様に全体のメルトフローレートを高くすることができる。
【0039】
また、前記重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子が分岐型のポリカーボネートを含有し、前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子が直鎖型のポリカーボネートを含有することが、好ましい。これは、分岐型ポリカーボネートは、分子量が同じ直鎖型ポリカーボネートに比べて、メルトフローレートが低いため分子量の低い直鎖型のポリカーボネートと混合したときにメルトフローレートの改善効果が大きくなるためである。
【0040】
温度300℃かつ荷重1.2kgの条件下で測定する前記混合物のメルトフローレート(MFR-1)が、混練物のメルトフローレート(MFR-2)に比べて、10g/min以上高いことが、本発明の効果をより高める観点から、好ましい。
【0041】
また、前記ポリカーボネートが、再生樹脂であることが、マテリアルリサイクルの対象物として好ましい。ここで「再生樹脂」とは、一度市場に出た製品(使用済み製品)からリサイクルされた樹脂をいい、本発明では、分別・粗破砕等のリサイクルの準備処理が施されたものも含む。
【0042】
本発明の樹脂混合物の製造方法は、前記樹脂混物が、ポリカーボネートの廃材から再資源化した樹脂混合物であり、前記工程(a)~工程(d)を有することを特徴とする。
【0043】
また、本発明の樹脂混合物を、成形機により加熱溶融させて射出成形することが、マテリアルリサイクルの観点から、好ましい成形法である。
【0044】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0045】
≪本発明の樹脂混合物の概要≫
本発明の樹脂混合物は、2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子を含有する樹脂混合物であって、重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子の重量平均分子量が、38000~45000の範囲内であり、重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子の重量平均分子量が、25000~34000の範囲内であり、前記重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子と前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子との混合比が、50:50~80:20(質量%)の範囲内であり、前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の1粒子当たりの体積が、それぞれ、30~200mm
3
の範囲内であり、メルトフローレート(melt flow rate:MFR)測定装置を用いて、温度300℃かつ荷重1.2kgの条件下で測定した、前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の混合物のメルトフローレート(MFR-1)と前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の混練物のメルトフローレート(MFR-2)との関係が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0046】
式(1) MFR-2<MFR-1
さらに、温度300℃かつ荷重1.2kgの条件で測定する前記混合物のメルトフローレート(MFR-1)が、混練物のメルトフローレート(MFR-2)に比べて、10g/min以上高いことが、好ましい。
【0047】
ここで、本発明に係る重量平均分子量、メルトフローレート、表面積及び体積の測定について説明する。
【0048】
〈重量平均分子量〉
重量平均分子量は以下の手順にて測定する。
【0049】
測定対象となる樹脂を、濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過し、得られた溶液をGPC測定用のサンプルとして用いた。GPC測定条件は、下記に示すGPC分析条件を採用し、サンプル中に含まれる樹脂の重量平均分子量を測定する。
【0050】
(GPC測定条件)
GPC装置として「HLC-8320GPC/UV-8320(東ソー株式会社製)」を用い、カラムとして「TSKgel、SupermultiporeHZ-H(東ソー株式会社製4.6mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いた。分析は、流速0.35mL/min、サンプル注入量20μL、測定温度40℃、RI検出器を用いて行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製した。なお、試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
【0051】
〈メルトフローレート〉
メルトフローレート(melt flow rate - MFR)は、ヒーターで加熱された円筒容器内で一定量の合成樹脂を、定められた温度で加熱・加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量を測定する。当該メルトフローレートの測定は、JIS K7210-1(2014)にメルトマスフローレートとメルトボリュームフローレートの2種について規定されており、本発明においては、メルトマスフローレートを用いる。
【0052】
本発明では、「樹脂混合物」と「樹脂混練物」とを、それぞれ温度300℃かつ荷重1.2kgの条件で測定する。なお、「樹脂混練物」は、通常2種の樹脂を混練した後、ペレット化され、当該ペレットを測定試料として用いる。
【0053】
試験機械はJIS K6760で定められた押出し形プラストメータを用い、測定方法はJIS K7210-1(2014)で規定されている。測定値は単位:g/10minで表示される。同様な測定機器としては、高化式フローテスター、ロッシーピークス流れ試験機などがあり、測定方法に若干の違いはあるが原理的には同じく樹脂の吐出量でメルトフローレートを計測する。
【0054】
ポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物の300℃かつ荷重1.2kgにおけるメルトフローレートは、10~40g/10minの範囲が好ましい。特に、メルトフローレートが20~30g/10minの範囲のものは、低温押出が可能であることから、より好ましい。
【0055】
下記に説明するポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物の表面積と体積の測定は、廃棄樹脂を樹脂専用破砕機にて適切な大きさに破砕し、一定の大きさに分級した後、樹脂混合物として調製したものを測定用試料として用いる。
【0056】
〈樹脂混合物の表面積測定〉
ポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物を100g計量して、写真撮影し、撮影画像を画像処理を行って、2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の表面積を求める。単位は、cm2であり、本発明では、重量平均分子量の低い成分からなる粒子の表面積は、前記混合物100g当たり250cm2以下であることが好ましい。
【0057】
〈樹脂混合物に用いたポリカーボネートの粒子の1粒子当たりの体積測定〉
前記2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子(粉砕物)を、それぞれ10g計量して、空気中の質量と水中での質量の差から体積を算出する。その際、粒子の個数を計測し、1粒子当たりの体積に換算する。単位は、mm3である。本発明では、重量平均分子量の低い成分の1粒子当たりの体積が、120~200mm3
の範囲内であることが好ましい。
【0058】
また、本発明の樹脂混合物から成型された再生ポリカーボネートは、機械強度に優れるが、機械強度は以下の「曲げ強度」と「衝撃強度」によって、評価できる。
【0059】
曲げ強度は、テンシロンにて、JIS K7171(2008)の試験条件で測定する。例えば、再生ポリカーボネートの試験片を、JIS K7171に準拠し、曲げ速度100mm/分、治具先端R5mm、スパン間隔100mm、試験片(幅50mm×長さ150mm×厚さ4mm)の条件にて測定して求める。
【0060】
曲げ強度は、60MPa以上であることが好ましく、より好ましくは80MPa以上、特に好ましくは90MPa以上である。
【0061】
また、衝撃強度は、衝撃試験機にて、JIS K7110(1999)の試験条件で、温度23℃、湿度50%RHに16時間試験片を放置した後測定する。例えば、衝撃試験機は神栄テストマシナリー製PST-300を用い、温度23℃、湿度55%RHの条件下で行う。
【0062】
衝撃強度は、10kJ/mm2であることが好ましく、より好ましくは30kJ/mm2以上、特に好ましくは、50kJ/mm2以上である。
【0063】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
〔1〕ポリカーボネート
本発明に係るポリカーボネートは、2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子を含有する樹脂混合物に用いられるものであって、メルトフローレートにおいて、当該ポリカーボネートの粒子の混合物のメルトフローレート(MFR-1)と当該ポリカーボネートの粒子の混練物のメルトフローレート(MFR-2)との関係が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0064】
式(1) MFR-2<MFR-1
この関係を満たすには、ポリカーボネートの種類及び重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子を選択することで達成することができる。
【0065】
本発明に係るポリカーボネートは、重量平均分子量38000~45000の範囲内のポリカーボネートの粒子と、重量平均分子量25000~34000の範囲内のポリカーボネートの粒子を用いて混合物とする。重量平均分子量の高いポリカーボネートの粒子と前記重量平均分子量の低いポリカーボネートの粒子との混合比が、50:50~80:20(質量%)の範囲内とする。
【0066】
本発明でいうポリカーボネートは、式:-[-O-X-O-C(=O)-]-で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。式中、Xは連結基を表し、一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
【0067】
一般に、ポリカーボネートは脂肪族ポリカーボネートと芳香族ポリカーボネートが知られている。脂肪族ポリカーボネートは熱分解温度が低く成形加工できる温度が低いため、通常耐熱性を向上させる方法が取られる。例えば、脂肪族ポリカーボネートの末端水酸基とイソシアネート化合物を反応させることで熱分解温度が向上する。また、二酸化炭素とエポキシドとを金属触媒存在下で共重合する脂肪族ポリカーボネートは、耐衝撃性、軽量性、透明性、耐熱性等の優れた特性を有し、さらに生分解性であることから、環境負荷が低く、また、その特性からエンジニアプラスチック材料、医療用材料としても重要な樹脂である。
【0068】
一方、芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、透明性、衛生性、並びに機械的強度等、優れた諸物性を有しており、種々の用途に広く使用されている。「芳香族ポリカーボネート」とは、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素であるポリカーボネートをいう。例えば、ポリカーボネートを構成するジオール成分として、ビスフェノールA等の芳香族基を含むジオール成分を使用したポリカーボネートが挙げられる。特に、芳香族基を含むジオール成分のみを使用したポリカーボネートが好ましい。またその製造方法は、ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させる方法(界面法)や、ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物やその誘導体とジフエ二ルカーボネートなどの炭酸ジエステル化合物とを、溶融状態でエステル(交換)反応させる方法(溶融法、又はエステル交換法)等が、知られている。
【0069】
本発明では、なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネートを用いることが好ましい。
【0070】
前記芳香族ポリカーボネートは、直鎖型ポリカーボネートと分岐型ポリカーボネートが知られているが、前記重量平均分子量の低いポリカーボネートが直鎖型のポリカーボネートを含有することが、好ましい。これは、分岐型ポリカーボネートは、分子量が同じ直鎖型ポリカーボネートに比べて、メルトフローレートが低いため、分子量の低い直鎖型のポリカーボネートと混合したときにメルトフローレートの改善効果が大きくなるためである。
【0071】
本発明に用いられる分岐型の芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物のモノマー1000単位あたり1.5~10の分岐度を有するものが好ましく、2.5~5.0の分岐度を有するものがより好ましい。
【0072】
分岐型の芳香族ポリカーボネートを得るには、例えば、特開2006-89509号公報や国際公開第2012/005250号記載の炭酸ジエステルに対する反応性のある官能基を分子中に3つ以上有する多官能化合物由来の分岐を有する分岐型の芳香族ポリカーボネートや国際公開第2014/024904号に記載されている3官能以上の脂肪族ポリオール化合物を含む連結剤を、エステル交換触媒の存在下、減圧条件でエステル交換反応させて、分岐型の芳香族ポリカーボネートを製造する方法等を参照することができる。
【0073】
芳香族ポリカーボネートは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、及び環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0074】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が特に好ましく、汎用されている。
【0075】
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の二価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ-トを使用することが可能である。
【0076】
例えば、二価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis-TMC”と略称することがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ-ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の二価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
【0077】
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)~(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBCFが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPAが10~95モル%(より好適には50~90モル%、さらに好適には60~85モル%)であり、かつBCFが5~90モル%(より好適には10~50モル%、さらに好適には15~40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBis-TMCが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0078】
これらのポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
【0079】
これらのポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報及び特開2002-117580号公報等に詳しく記載されている。
【0080】
ポリカーボネートのガラス転移温度Tgは、160~250℃、好ましくは170~230℃である。
【0081】
Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
【0082】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステル又はハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート又は二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0083】
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によって芳香族ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族又は脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート、並びにかかる二官能性カルボン酸及び二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネートを含む。また、得られた芳香族ポリカーボネートの2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0084】
分岐ポリカーボネートは、本発明の樹脂組成物の溶融張力を増加させ、かかる特性に基づいて押出成形、発泡成形及びブロー成形における成形加工性を改善できる。結果として寸法精度により優れた、これらの成形法による成形品が得られる。
【0085】
分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、及び4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。その他多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、並びにトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの酸クロライド等が例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン及び1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0086】
分岐ポリカーボネート樹脂における多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、二価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、0.03~1モル%、好ましくは0.07~0.7モル%、特に好ましくは0.1~0.4モル%である。
【0087】
また、分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換反応時の副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合については1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0088】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、及びトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0089】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤及び有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。
【0090】
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0091】
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、メルトフローレートや耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
【0092】
反応温度は通常0~40℃、反応時間は数分~5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
【0093】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120~350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1~4時間程度である。
【0094】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-9~1×10-5当量、より好ましくは1×10-8~5×10-6当量の範囲で選ばれる。
【0095】
溶融エステル交換法による反応では、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期又は終了後に、例えば2-クロロフェニルフェニルカーボネート、2-メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート及び2-エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
【0096】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5~50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、0.01~500ppmの割合、より好ましくは0.01~300ppm、特に好ましくは0.01~100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
【0097】
前記以外の反応形式の詳細についても、各種文献及び特許公報などで良く知られている。
【0098】
ポリカーボネートの重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは20000~50000の範囲であり、より好ましくは25000~47000の範囲であり、さらに29000~45000の範囲である。粘度平均分子量が20000~50000の範囲であるポリカーボネートによると、耐熱性などの機械的特性とメルトフローレートのバランスに優れる成形加工性の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂混合物となり、強度低下や成形加工時の金型取出し後の後収縮によるヒケの発生しにくい機械的特性と表面外観に特に優れるポリカーボネート樹脂混合物となる。
【0099】
本発明の樹脂混合物には、他の樹脂成分を用いることもできる。
【0100】
例えば、ABS樹脂を配合することも好ましい。ABS樹脂は、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物とをグラフト共重合した熱可塑性グラフト共重合体からなる樹脂をいう。
【0101】
ABS樹脂のジエン系ゴム成分としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体等のゴム成分が用いられ、かかるジエン系ゴム成分のABS樹脂中の割合は、ABS樹脂100質量%中、好ましくは5~80質量%の範囲であり、より好ましくは7~50質量%の範囲であり、さらに好ましくは8~25質量%の範囲であり、特に好ましくは9~18質量%の範囲である。
【0102】
ABS樹脂における芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0103】
ABS樹脂におけるシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0104】
シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の量は、その合計量100質量%に対して、シアン化ビニル化合物が好ましくは5~50質量%、より好ましくは15~35質量%、芳香族ビニル化合物が好ましくは95~50質量%、より好ましくは65~85質量%である。
【0105】
ABS樹脂の具体例としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-α-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体等が好ましく例示される。
【0106】
また、本発明の樹脂混合物には、熱可塑性ポリエステル樹脂を配合することもできる。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレ-ト)樹脂(PCT)、ポリシクロヘキシルシクロヘキシレート(PCC)等が挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)がメルトフローレート、耐衝撃性の点から好ましい。
【0107】
本発明の樹脂混合物には、さらに、エラストマーを配合することも好ましい。エラストマーを配合することで、得られる樹脂組成物の耐衝撃性を改良することができる。
【0108】
本発明に用いるエラストマーは、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴムが好ましい。
【0109】
また、本発明の樹脂混合物には、樹脂添加剤を適宜用いることも好ましく、例えば、熱安定剤(例えば、リン系化合物等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等)、離型剤(例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル等)、充填材、ガラス繊維、紫外線吸収剤、染顔料(カーボンブラックを含む)、酸化チタン、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、メルトフローレート改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が配合されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で配合されていても良い。
〔2〕樹脂混合物の製造方法
通常、廃樹脂から再生樹脂の製造は、前述のとおり、分別工程、粉砕工程、洗浄工程、分離工程、乾燥工程、分級工程、ペレット化工程及び成形加工工程で処理することにより行われている。
【0110】
本発明の樹脂混合物の製造方法は、ポリカーボネートの廃材から、再資源化したポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物であり、上記工程に加えて、下記工程(a)~工程(d)を加えることを特徴とする。
【0111】
(a)同じ用途に使用されている廃材を集める工程、
(b)集められたポリカーボネートの廃材の重量平均分子量を測定する工程、
(c)前記ポリカーボネートを所定のサイズの粒子に、溶融して加工する工程、
(d)前記粒子を所定の割合に計量して、混合機で混合する工程
上記同じ用途とは、例えば、遊技機や複写機の筐体、ガロンボトル及びCD等の光ディスクなどに使用されていた廃材等が例示される。
【0112】
次いで、ポリカーボネートの廃材の分子量を前記重量平均分子量の測定手順にて測定し、当該分子量に応じて区分けし、それぞれを溶融して、本発明に係るポリカーボネートの粒子の表面積及び体積が好ましい範囲に入るように加工してポリカーボネート加工品を得る。次いで、高い分子量のポリカーボネートの加工品である粒子と低い分子量のカーボネート加工品である粒子を所定の割合に計量して、混合機で混合し、混合品として調製して再生樹脂混合物が製造される。
【0113】
混合機としては、例えばタービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びV型混合機などの各種混合機を用いることが好ましい。
【0114】
次いで、前記再生樹脂混合物を、成形機により加熱溶融させて射出成形し再生樹脂成形品を得る。本発明の樹脂混合物は、メルトフローレートに優れることにより、成形機内で均一に加熱や圧力を受けるため、成形性に優れる。
【0115】
成形品として成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0116】
中でも、射出成形法を用いて成形品を作製することが好ましい。
【0117】
再生ポリカーボネート樹脂混合物を成形した成形品は、例えば、電気電子部品、家電部品、自動車用部品、各種建材、容器、雑貨等の各種用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0118】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0119】
〈再生樹脂1a:直鎖型ポリカーボネート〉
遊技機由来のポリカーボネートを粉砕して、下記GPC測定条件にしたがって重量平均分子量を測定して、所定の重量平均分子量のものに選別した。
【0120】
〈再生樹脂1b:分岐型ポリカーボネート〉
ガロンボトル由来のポリカーボネートを粉砕して、同様に重量平均分子量を測定して、所定の重量平均分子量のものに選別した。
【0121】
〈再生樹脂2:直鎖型ポリカーボネート〉
光ディスク由来のポリカーボネートを粉砕して、同様に重量平均分子量を測定して、所定の重量平均分子量のものに選別した。
【0122】
なお、重量平均分子量は以下の測定法を用い、表Iに結果を示した。
【0123】
〈重量平均分子量〉
測定対象となる樹脂を、濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過し、得られた溶液をGPC測定用のサンプルとして用いた。GPC測定条件は、下記に示すGPC分析条件を採用し、サンプル中に含まれる樹脂の重量平均分子量を測定した。
【0124】
(GPC測定条件)
GPC装置として「HLC-8320GPC/UV-8320(東ソー株式会社製)」を用い、カラムとして「TSKgel、SupermultiporeHZ-H(東ソー株式会社製4.6mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いた。分析は、流速0.35mL/min、サンプル注入量20μL、測定温度40℃、RI検出器を用いて行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製した。なお、試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
【0125】
【0126】
選別したポリカーボネートを、神戸製鋼所社製二軸混練機KTX-30で、温度260℃、スクリュー回転数250rpmで、10kg/hrで押し出し、それぞれ樹脂粒子を得た。
【0127】
<樹脂混合物1~9の作製>
表IIに記載の割合で所定のポリカーボネートの粒子を計量し、タンブラー(混合機)で、10分間混合し、100℃4時間オーブンで乾燥後に、日本製鋼所社製射出成型機JSW-110ADで、成形温度280℃、射出速度30mm/min、射出成形厚さ4mmの条件で曲げ強度/衝撃試験用試験片を成形した。
【0128】
<樹脂混合物10>
表IIに記載の割合で所定のポリカーボネートを計量して、タンブラー(混合機)で、10分間混合し、再度、神戸製鋼所製二軸混練機KTX-30で、温度260℃、スクリュー回転数250rpmで、10kg/hrで押し出し樹脂混練物とした。
【0129】
その後、100℃4時間オーブンで乾燥後に、JSW日本製鋼所製射出成型機JSW-110ADで、成形温度280℃、射出速度30mm/min、射出成形厚さ4mmの条件で、曲げ強度/衝撃試験用試験片を成形した。
【0130】
実施例の評価方法及び評価結果を下記に示す。
【0131】
(1)樹脂混合物の表面積測定
ポリカーボネートの粒子からなる樹脂混合物を100g計量して、写真撮影し、撮影画像を画像処理を行って、2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子の表面積を求めた。単位は、cm2である。表II中には、重量平均分子量の低い成分からなるポリカーボネートの粒子の表面積を記載した。
【0132】
(2)樹脂混合物の一粒子当たりの体積測定
ポリカーボネートの樹脂混合物に用いられる2種の重量平均分子量の異なるポリカーボネートの粒子(粉砕物)を、それぞれ10g計量して、空気中の質量と水中での質量の差から体積を算出した。その際、上記粉砕物の個数を計測し、1粒子当たりの体積に換算した。単位は、mm3である。
(3)メルトフローレート
上記樹脂混合物(ドライブレンド品)と下記樹脂混練物をメルトフローレート(MFR)をMFR測定装置(立山化学製 卓上型メルトインデグサL-260)にて、JIS K7210-1(2014)の試験条件で測定した。温度300℃かつ荷重1.2kgの条件で測定した。
【0133】
なお、樹脂混練物は、所定のポリカーボネートの粒子を計量して、タンブラー(混合機)で、10分間混合し、再度、神戸製鋼所製二軸混練機KTX-30で、温度260℃、スクリュー回転数250rpmで、10kg/hrで押し出し溶融脂混練物とした。
【0134】
◎ 26g/min以上であると、メルトフローレートが特に好ましい
〇 23g/min以上、26g/min未満の範囲は、メルトフローレートが好ましい
△ 20g/min以上、23g/min未満の範囲は、メルトフローレートが実用上問題ない
× 20g/min未満は、メルトフローレートに実用上問題がある
(4)曲げ強度
曲げ強度をテンシロンにて、JIS K7171(2008)の試験条件で測定した。上記試験片を、JIS K7171に準拠し、曲げ速度100mm/分、治具先端R5mm、スパン間隔100mm、試験片(幅50mm×長さ150mm×厚さ4mm)の条件にて測定して求めた。
【0135】
測定装置は、オリエンテック社製テンシロンRTC-1225Aを用い、温度23℃、湿度55%RH下で行った。
【0136】
◎ 90MPa以上であると、機械強度に特に優れる
〇 80以上、90MPa未満の範囲であると機械強度に優れる
△ 60以上、80MPa未満の範囲であると実用上問題ない
× 60MPa未満の範囲であると、機械強度に問題がある
(5)衝撃強度
衝撃試験機にて、JIS K7110(1999)の試験条件で、温度23℃、湿度50%RHに16時間試験片を放置した後測定した。衝撃試験機は安田精機製258を用い、温度23℃、湿度55%RHの条件下で行った。
【0137】
◎ 50kJ/mm
2以上であると、機械強度に特に優れる
〇 30以上、50kJ/mm
2未満の範囲であると機械強度に優れる
△ 10以上、30kJ/mm
2未満の範囲であると実用上問題ない
× 10kJ/mm
2未満であると、実用上機械強度に問題がある
【表2】
【0138】
表IIより、本発明の樹脂混合物は、比較例に対して、メルトフローレート、及び曲げ強度、及び衝撃強度等の機械強度に優れていることが明らかである。
【0139】
また、樹脂混合物と樹脂混練物のメルトフローレートの差は、10g/min以上であると、機械強度に特に優れる結果であることが分かった。
【符号の説明】
【0140】
1 分子量の高い成分
2 分子量の低い成分
3 性質の異なる成分
4 界面部分