(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】製紙用表面エマルジョンサイズ剤、製紙用表面エマルジョンサイズ剤の製造方法及び塗工紙
(51)【国際特許分類】
D21H 21/16 20060101AFI20221206BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20221206BHJP
D21H 19/22 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
D21H21/16
C08F2/44 C
D21H19/22
(21)【出願番号】P 2019006666
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018007859
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】久本 謙
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐大郎
(72)【発明者】
【氏名】有賀 哲
(72)【発明者】
【氏名】市村 文孝
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-342467(JP,A)
【文献】特開2008-308787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00 - 27/42
C08F 2/00 - 2/60
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤(A)を含むシェル部と、スチレン類(b1)を含むモノマー成分の重合体(B)及びロジン類(C)を含むコア部とを有
し、
(A)成分の使用量が、固形分重量で、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対して50~200重量部である、製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【請求項2】
(A)成分が、スチレン類(a1)及び/若しくはα-オレフィン(a2)を含むモノマー成分の重合体、又は澱粉類を含む、請求項
1に記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【請求項3】
(B)成分をなすモノマー成分が、更に(メタ)アクリル酸エステル(b2)を含む、請求項1
又は2に記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【請求項4】
(B)成分をなすモノマー成分が、更に親水性基を有する不飽和モノマー(b3)を含む請求項1~
3のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【請求項5】
(C)成分が、未変性ロジン、α,β-不飽和カルボン酸変性ロジン及び未変性ロジンエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~
4のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【請求項6】
(B)成分及び(C)成分の使用比率が、固形分重量で、(B)/(C)=20/80~95/5であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【請求項7】
体積平均粒子径が50~300nmである請求項1~
6のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【請求項8】
(A)成分中に、(B)成分をなすモノマー成分及び(C)成分を滴下して乳化重合することを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤を含む塗工紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙用表面エマルジョンサイズ剤、製紙用表面エマルジョンサイズ剤の製造方法及び塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製紙用表面サイズ剤は、水溶液型とエマルジョン型とに大別できるが、後者は固形分(不揮発分)を高く設定しても比較的低粘度であり、ハンドリング性に長け、塗工液の発泡性も比較的小さい等の利点を有する。
【0003】
しかし、製紙用表面エマルジョンサイズ剤は、機械的シェアに対して不安定であるため、サイズプレス方式等の強い剪断力がかかる塗工方式で紙に塗工した場合にエマルジョンが破壊されて粕や発泡が生じたり、塗工ムラ等を生じ操業性を低下させ、その結果、サイズ効果が低下する等の問題がある。特に工業用水等の金属イオンが溶存する硬水を用いた場合にはこの問題が顕著となる。
【0004】
機械的安定性を改善する方法としては、例えば、アニオン性やノニオン性乳化剤と共に、高分子量化合物を保護コロイドとして用いる手段が考えられ、特定分子量のスチレン-マレイン酸系共重合体塩の存在下で、スチレン類等の疎水性不飽和単量体類を乳化重合してなるエマルジョンを含む表面サイズ剤が提案されている(特許文献1)。しかし、当該表面エマルジョンサイズ剤は、サイズ効果と機械的安定性が依然不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、機械的安定性に優れつつ、発泡も少なく、更に優れたサイズ効果を発揮する製紙用表面エマルジョンサイズ剤;製紙用表面エマルジョンサイズ剤の製造方法及び塗工紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、サイズ効果を高める点に着目してロジン類を用いて、またロジン類の使用により機械的安定性が悪くなることを想定して、種々条件を検討したところ、界面活性剤をシェル部に有し、かつ特定のモノマー成分の重合体をロジン類とともにコア部に有する製紙用表面エマルジョンサイズ剤が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の製紙用表面エマルジョンサイズ剤、製紙用表面エマルジョンサイズ剤の製造方法及び塗工紙に関する。
【0008】
1.界面活性剤(A)を含むシェル部と、スチレン類(b1)を含むモノマー成分の重合体(B)及びロジン類(C)を含むコア部とを有する製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【0009】
2.(A)成分の使用量が、固形分重量で、(B)成分及び(C)成分の合計重量100重量部に対して20~200重量部である、前項1に記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【0010】
3.(A)成分が、スチレン類(a1)及び/若しくはα-オレフィン(a2)を含むモノマー成分の重合体、又は澱粉類を含む、前項1又は2に記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【0011】
4.(B)成分をなすモノマー成分が、更に(メタ)アクリル酸エステル(b2)を含む、前項1~3のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【0012】
5.(B)成分をなすモノマー成分が、更に親水性基を有する不飽和モノマー(b3)を含む前項1~4のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【0013】
6.(C)成分が、未変性ロジン、α,β-不飽和カルボン酸変性ロジン及び未変性ロジンエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前項1~5のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【0014】
7.(B)成分及び(C)成分の使用比率が、固形分重量で、(B)/(C)=20/80~95/5であることを特徴とする、前項1~6のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【0015】
8.体積平均粒子径が50~300nmである前項1~7のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤。
【0016】
9.(A)成分中に、(B)成分をなすモノマー成分及び(C)成分を滴下して乳化重合することを特徴とする前項1~8のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤の製造方法。
【0017】
10.前項1~8のいずれかに記載の製紙用表面エマルジョンサイズ剤を含む塗工紙。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製紙用表面エマルジョンサイズ剤によれば、機械的安定性に優れつつ、発泡も少なく、更に成紙とした際に優れたサイズ効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の製紙用表面エマルジョンサイズ剤(以下、単に“エマルジョンサイズ剤”ともいう)は、界面活性剤(A)(以下、(A)成分という)を含むシェル部と、スチレン類(b1)(以下、(b1)成分という)を含むモノマー成分の重合体(B)(以下、(B)成分という)及びロジン類(C)(以下、(C)成分という)を含むコア部とを有する。以下、各成分につき詳細に説明する。
【0020】
(A)成分は、エマルジョンサイズ剤のシェル部をなす一成分であり、保護コロイドとして機能することにより機械的安定性に優れ、発泡を少なくする効果をも奏する。その種類は特に限定されないが、本発明においては、例えば、スチレン類(a1)(以下、(a1)成分という)及び/若しくはα-オレフィン(a2)(以下、(a2)成分という)を含むモノマー成分の重合体、又は澱粉類が、(B)成分及び(C)成分との乳化性の点から、好ましく使用される。
【0021】
(a1)成分としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、クロルビニルトルエン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0022】
(a1)成分の使用量としては、特に限定されないが、塗工紙のサイズ効果の点から、(A)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、通常20~90重量%程度、好ましくは40~80重量%程度である。
【0023】
(a2)成分としては、特に限定されないが、例えば、ジイソブチレン(2,4,4-トリメチル-1-ペンテン、2,4,4-トリメチル-2-ペンテン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン及び2,4,4-トリメチル-2-ペンテンの混合物)、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン等の分岐型α-オレフィン;1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-テトラコセン、1-トリアコンテン等の直鎖型α-オレフィン;シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、4-ビニルシクロヘキセン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン等の環状α-オレフィン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも塗工紙のサイズ効果の点から、分岐型α-オレフィンが好ましく、ジイソブチレンがより好ましい。
【0024】
(a2)成分の使用量としては、特に限定されないが、塗工紙のサイズ効果の点から、(A)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、通常0~60重量%程度、好ましくは0~50重量%程度である。
【0025】
(A)成分をなすモノマー成分には、(B)成分及び(C)成分との乳化性の点から、更にカルボキシル基を有する不飽和モノマー(a3)(以下、(a3)成分という)、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル(a4)(以下、(a4)成分という)、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(a5)(以下、(a5)成分)を併用した方が好ましい。
【0026】
(a3)成分としては、特に限定されないが、例えば、(無水)アクリル酸(無水アクリル酸またはアクリル酸をいう、以下同様)、(無水)メタクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、又はこれらの中和塩、ハーフエステル、ハーフエステルの中和塩等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも(a1)成分や(a2)成分との重合性の点から、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0027】
(a3)成分の使用量としては、特に限定されないが、(B)成分及び(C)成分との乳化性の点から、(A)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、通常10~80重量%程度、好ましくは20~50重量%程度である。
【0028】
(a4)成分としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸-N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジメチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0029】
(a4)成分の使用量としては、特に限定されないが、(B)成分及び(C)成分との乳化性の点から、(A)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、0~40重量%程度、好ましくは5~30重量%程度である。
【0030】
(a5)成分としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0031】
(a5)成分の使用量としては、特に限定されないが、(B)成分及び(C)成分との乳化性の点から、(A)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、通常0~20重量%程度、好ましくは1~10重量%程度である。
【0032】
なお、(a4)成分、(a5)成分を使用する場合、(a4)及び(a5)成分に由来するアミノ基の一部又は全部を4級化した方が、(B)成分及び(C)成分との乳化性の点から好ましい。4級化の程度としては、特に限定されないが、得られる重合体中に存在する(a4)成分及び/又は(a5)成分のアミノ基の少なくとも10モル%程度が好ましく、50~100モル%程度であることがより好ましい。4級化に用いる4級化剤としては、各種公知のものを使用でき、例えば、塩化ベンジル、塩化メチル、硫酸ジメチル、グリシドール、エチレンクロルヒドリン、アリルクロライド、スチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン等が挙げられる。4級化は、温度が通常50~90℃程度、時間が1~4時間程度で行うと良く、通常、重合体の調製後に行われるが、重合前又は重合中に行われてもよい。
【0033】
更にモノマー成分には、(a1)~(a5)成分以外の不飽和モノマー(a6)(以下、(a6)成分という)を適宜併用しても良い。(a6)成分としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スルホニル基を有する不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0035】
スルホニル基を有する不飽和モノマーとしては、特に限定されず、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリルアミドとしては、アクリルアミド、メタクリルアミドが挙げられる。
【0037】
これらの(a6)成分は、単独でも2種以上を組み合わせても良い。(a6)成分の使用量としては、特に限定されないが、(A)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、1~10重量%程度が好ましい。
【0038】
本発明の(A)成分は、前記モノマー成分を適宜組み合わせて、重合開始剤の存在下、重合することにより得られる。重合方法としては、特に限定されず公知の方法を採用することができる。溶液重合を採用する場合には、溶媒としてベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール等を使用することができる。
【0039】
重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物;また過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキシド、tert-ブチルハイドロパーオキシド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物;その他レドックス触媒系のものをいずれも使用することができる。重合開始剤の使用量としては、特に限定されず、(A)成分をなす全モノマー成分100重量部に対して、0.1~5重量部程度である。
【0040】
また、重合に際しては、2-メルカプトエタノール、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;エタノール、イソプロピルアルコール、ペンタノール等のアルコール;四塩化炭素、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン、α-メチルスチレンダイマー、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン等の連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤の使用量としては、特に限定されず、(A)成分をなす全モノマー成分100重量部に対して、0.01~5重量部程度である。
【0041】
重合反応の条件としては、通常、反応温度70~140℃程度、反応時間1~10時間程度で行えばよい。
【0042】
前記方法により得られる(A)成分の物性としては、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算値)が塗工紙のサイズ効果の点から、5,000~40,000程度であることが好ましい。
【0043】
重合体については、重合時又は重合後にpHを調整しても良い。調整には、各種公知のpH調整剤を使用でき、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン;アンモニア等が挙げられる。pHとしては、特に限定されないが、4~10程度に調整されることが好ましい。
【0044】
澱粉類としては、特に限定されず、例えば、コーン澱粉、馬鈴薯、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴヤシ澱粉等の未変性澱粉;カチオン化澱粉、酸化澱粉、リン酸変性澱粉、カルボキシメチル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カルバミルエチル化澱粉、シアノエチル化澱粉、ジアルデヒド化澱粉、酢酸変性澱粉等の加工澱粉;未変性澱粉又は加工澱粉(以下、“原料澱粉”ともいう。)を無機過酸化物、酵素、無機酸類等の処理剤で変性した変性澱粉等が挙げられる。
【0045】
無機過酸化物としては、特に限定されず、例えば、次亜塩素酸塩;過硫酸アンモニウム(以下、APSともいう)、過硫酸カリウム(以下、KPSともいう)、過硫酸ナトリウム(以下、SPSともいう)等のペルオキソ二硫酸塩;過酸化水素等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。更に過酸化水素に、硫酸鉄又は硫酸銅を組み合わせても良い。
【0046】
酵素としては、特に限定されず、例えば、各種細菌、動植物の生産するα-アミラーゼが挙げられる。
【0047】
無機酸類としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0048】
前記処理剤の使用量としては、特に限定されないが、原料澱粉との反応性の点から、固形分重量で、原料澱粉100重量部に対して、0.01~10重量部程度が好ましく、0.1~6重量部程度がより好ましい。
【0049】
変性澱粉の製造方法としては、特に限定されず、例えば、澱粉類及び処理剤を含む水溶液を温度60~100℃程度で、30~60分程度加熱すること等が挙げられる。
【0050】
前記製造方法で得られた変性澱粉の物性としては、特に限定されず、例えば、固形分濃度15重量%の水溶液におけるブルックフィールド粘度が、温度25℃で5~1000mPa・s程度であり、好ましくは10~200mPa・s程度である。
【0051】
(A)成分の使用量としては、固形分重量で、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対して、通常50~200重量部である。前記数値範囲とすることで、エマルジョンサイズ剤の分散安定性及び塗工紙のサイズ効果を高くすることができる。
【0052】
また(A)成分としては、前述の重合体以外に、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤等を用いることもできる。
【0053】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製のカチオーゲンH、カチオーゲンL、花王(株)製のコータミン24P、コータミン86Pコーンク、コータミン60W、コータミン86W等が入手できる。
【0054】
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの他、分子中に反応性官能基を有するノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0055】
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルスルホコハク酸エステル塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0056】
これらの他の界面活性剤は、単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0057】
(B)成分は、(b1)成分を含むモノマー成分の重合体を含み、エマルジョンサイズ剤のコア部をなす一成分であり、塗工紙のサイズ効果に寄与する。
【0058】
(b1)成分としては、特に限定されず、前述の(a1)成分で例示したもの等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0059】
(b1)成分の使用量としては、特に限定されないが、塗工紙のサイズ効果の点から、(B)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、通常10~80重量%程度、好ましくは20~70重量%程度である。
【0060】
(B)成分をなすモノマー成分としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(b2)(以下、(b2)成分という)、親水性基を有する不飽和モノマー(b3)(以下、(b3)成分という)等を併用できる。
【0061】
(b2)成分としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、塗工紙のサイズ効果の点から、(メタ)アクリル酸イソブチルが好ましい。
【0062】
(b2)成分の使用量としては、特に限定されないが、塗工紙のサイズ効果の点から、(B)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、通常10~80重量%程度、好ましくは20~70重量%程度である。
【0063】
(b3)成分は、(b1)成分及び(b2)成分に該当しないものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ムコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシn-プロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシイソプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和モノアルコール;(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール系不飽和モノマー等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でもアクリル酸が好ましい。
【0064】
(b3)成分の使用量としては、特に限定されないが、エマルジョンサイズ剤の分散安定性及び塗工紙のサイズ効果のバランスの点から、(B)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、通常1~20重量%程度、好ましくは5~20重量%程度である。
【0065】
また、(b2)成分及び(b3)成分以外の他のモノマー成分(b4)(以下、(b4)成分という)として、必要に応じて、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジn-ブチル、マレイン酸イソブチル、マレイン酸ジn-オクチル、マレイン酸ジn-デシル、マレイン酸ジn-ドデシル、マレイン酸ジn-ヘキサデシル等の不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル;(メタ)アクリル酸-N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジエチルアミノブチル等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等の二トリル;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-プロピレンビス(メタ)アクリルアミド、ジアクリルアミドジメチルエーテル等のビスアクリルアミド;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム等のスルホニル基を有する不飽和モノマー等を併用しても良い。また単独でも2種以上を組み合わせても良い。(b4)成分の使用量としては、特に限定されないが、(B)成分をなす全モノマー成分の合計を100重量%として、1~20重量%程度が好ましい。
【0066】
更に必要に応じて、2-メルカプトエタノール、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;エタノール、イソプロピルアルコール、ペンタノール等のアルコール;四塩化炭素、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン、α-メチルスチレンダイマー、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン等の連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤の使用量としては、(B)成分をなす全モノマー成分を100重量部に対して、0.01~5重量部程度である。
【0067】
(C)成分は、(B)成分と同様にエマルジョンサイズ剤のコア部をなす一成分であり、塗工紙のサイズ効果に寄与する。また、(A)成分との親和性により、エマルジョンサイズ剤の機械的安定性も良好となり、塗工装置等の汚れを低減できる。(C)成分としては、特に限定されず、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、メルクシ松ロジン(ジヒドロアガト酸含有ロジン)、湿地松ロジン(コムン酸含有ロジン)等の未変性ロジン;水素化ロジン、α,β―不飽和カルボン酸変性ロジン、不均化ロジン、又はこれらのエステル化物(未変性ロジンエステル、α,β-不飽和カルボン酸変性ロジンエステル、不均化ロジンエステル)等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、塗工紙のサイズ効果の点から、未変性ロジン、α,β-不飽和カルボン酸変性ロジン及び未変性ロジンエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ガムロジン、マレイン化ロジン及びガムロジンエステルから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0068】
また、(C)成分は、公知の減圧留去法、水蒸気蒸留法、抽出法、再結晶法等で精製されていても良い。
【0069】
α,β―不飽和カルボン酸変性ロジンとは、未変性ロジンにα,β-不飽和カルボン酸が付加したものである。α,β-不飽和カルボン酸としては、特に限定されず、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸等が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸の使用量も、特に限定されず、未変性ロジン100重量部に対して通常1~30重量部程度である。
【0070】
α,β―不飽和カルボン酸変性ロジンの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、適当な反応容器内で未変性ロジン及びα,β―不飽和カルボン酸を一括混合後、加熱溶融し、190~230℃程度で1~3時間程度、ディールス・アルダー反応させる方法が挙げられる。
【0071】
α,β―不飽和カルボン酸変性ロジンの物性は特に限定されないが、塗工紙のサイズ効果の点から、通常、軟化点が85~140℃程度及び酸価が195~320mgKOH/g程度であり、好ましくは軟化点が95~130℃程度及び酸価が240~295mgKOH/g程度である。
【0072】
未変性ロジンエステルは、未変性ロジンと多価アルコールとの反応生成物である。
【0073】
多価アルコールとしては、特に限定されないが、3価アルコール及び/又は4価アルコールが好ましく、前者としては例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及び3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール等が、また後者としてはペンタエリスリトロール及びジグリセリン等が挙げられる。
【0074】
未変性ロジンエステルは、各種公知の方法で製造することができる。例えば、未変性ロジンと多価アルコールとを通常200~350℃で6~20時間、エステル化反応させることにより得られる。また、反応は常圧下、減圧下及び加圧下のいずれかで行えばよい。また、未変性ロジンと多価アルコールとの使用量の比率も特に限定されないが、通常、前者のカルボキシル基と後者の水酸基との当量比[OH(eq)/COOH(eq)]が0.2~1.5程度、好ましくは0.4~1.2程度となることが好ましい。また、反応の際には、パラトルエンスルホン酸等のエステル化触媒や、各種酸化防止剤を使用しても良い。また、反応は、窒素気流下で実施してもよい。
【0075】
未変性ロジンエステルの物性は特に限定されないが、塗工紙のサイズ効果の点から、通常、軟化点が80~100℃程度、酸価が0~25mgKOH/g程度及び水酸基価が0~30mgKOH/g程度であり、好ましくは、軟化点が85~95℃程度、酸価が10~20mgKOH/g程度及び水酸基価が0~10mgKOH/g程度である。
【0076】
(B)成分及び(C)成分の使用比率[(B)/(C)]としては、エマルジョンサイズ剤の機械的安定性の点から、固形分重量で、通常は20/80~95/5程度、好ましくは50/50~90/10程度である。
【0077】
本発明の製紙用表面エマルジョンサイズ剤は、各種公知の製造方法により得られる。製造方法としては、特に限定されず、例えば、(A)成分、(B)成分をなすモノマー成分及び(C)成分を一括で仕込み、重合開始剤の存在下で溶液重合、乳化重合、懸濁重合させる方法等が挙げられるが、本発明では、(B)成分をなすモノマー成分及び(C)成分の重合性の点から、(A)成分中に、(B)成分をなすモノマー成分及び(C)成分を滴下して乳化重合する方法、より詳細には、(A)成分及び重合開始剤の存在下、(B)成分及び(C)成分を滴下して乳化重合させる方法が好ましい。特に(B)成分をなすモノマー成分及び(C)成分の混合溶液を添加した方が、得られるエマルジョンサイズ剤が機械的安定性及びサイズ効果に優れるため好ましい。なお、乳化重合の条件としては、特に限定されないが、温度が通常40~150℃程度(好ましくは60~100℃程度)、時間が通常1~10時間程度(好ましくは1~3時間程度)である。
【0078】
重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過酸化物;tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル及びジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、重合開始剤の使用量も特に制限されず、通常は、(B)成分をなす全モノマー成分100重量部に対して、0.1~10重量部程度、好ましくは1~5重量部程度である。
【0079】
なお、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、トリエタノールアミンや硫酸第一銅等を前記重合開始剤と併用しても良い。
【0080】
また、製紙用表面エマルジョンサイズ剤の製造に際しては、必要に応じて、溶媒を用いても良い。
【0081】
溶媒としては、特に限定されず、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒や、水、並びに前記有機溶媒と水との混合溶媒が挙げられる。
【0082】
また、製造中もしくは製造後には、各種公知のpH調整剤で製紙用表面エマルジョンサイズ剤のpHが調整されても良い。pH調整剤としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン;アンモニア等が挙げられる。
【0083】
本発明の製紙用表面エマルジョンサイズ剤の物性としては、特に限定されず、例えば、光散乱法による体積平均粒子径が、通常は50~300nm程度、好ましくは50~150nm程度、より好ましくは50~80nm程度である。このような数値範囲とすることで、エマルジョンサイズ剤の機械的安定性及び塗工紙のサイズ効果のバランスがとれる。
【0084】
また、固形分濃度25重量%、温度25℃におけるブルックフィールド粘度が、通常10~200mPa・s程度、好ましくは30~80mPa・s程度である。
【0085】
また、温度25℃におけるpHが、通常7~11程度、好ましくは7.5~9.5程度である。
【0086】
本発明の製紙用表面エマルジョンサイズ剤は、必要に応じて、酸化防止剤、消泡剤、防腐剤、キレート剤、水溶性アルミニウム化合物等の添加剤を添加しても良い。
【0087】
本発明の製紙用表面エマルジョンサイズ剤を含有する塗工液としては、前記エマルジョンサイズ剤をそのまま、又は水等で希釈しても良いが、必要に応じて、各種公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば、酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、自家変性澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子等の紙力増強剤や、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、耐水化剤、造膜助剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0088】
塗工液の固形分濃度としては、特に限定されないが、通常0.5~30重量%程度、好ましくは1~20重量%の範囲において実用に供される。
【0089】
本発明は、塗工紙に関するものでもある。塗工紙は、製紙用表面エマルジョンサイズ剤を含むものであり、具体的には、前記塗工液を原紙表面に塗工してなるものである。
【0090】
原紙としては、特に限定されず、通常は木材セルロース繊維を原料とする未塗工の紙及び板紙を用いることができる。なお、当該原紙は、抄紙用パルプから得られるものであり、当該抄紙用パルプとしては、LBKP、NBKP等の化学パルプ;GP、TMP等の機械パルプ;古紙パルプ等が挙げられる。また、当該原紙中に填料や内添サイズ剤、紙力増強剤等の各種薬品が添加されていても良い。
【0091】
また、前記塗工液の塗工手段は、特に限定されず、例えば含浸法、サイズプレス法、ゲートロール法、バーコーター法、カレンダー法、スプレー法等の各種公知の方法を適用できる。また、塗工液の塗工量(濃度)も特に限定されないが、通常、0.005~1g/m2程度、好ましくは0.01~0.5g/m2程度である。
【0092】
前記手段により得られる塗工紙としては、特に限定されず、例えば、フォーム用紙、PPC用紙、感熱記録紙等の記録用紙:アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート紙;クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙;ノート用紙、書籍用紙、印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙);マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙;ライナー、中芯等の板紙が挙げられる。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0094】
(粘度)
B型粘度計(東機産業(株)製)を用いて、25℃に調整したサンプルの粘度を測定した。
【0095】
(pH)
市販の測定機(製品名「pH METER F-14」、(株)堀場製作所製)を用いて、25℃に調整したサンプル(固形分濃度25%)のpHを測定した。
【0096】
(軟化点)
JIS K 2531の環球法により測定した。
【0097】
(酸価)
JIS K 0070に準拠して測定した。
【0098】
(水酸基価)
JIS K 0070に準拠して測定した。
【0099】
(体積平均粒子径)
光散乱粒径解析装置(製品名「ELSZ-2」、大塚電子(株)製)を用いて測定した。
【0100】
製造例1-1(重合体(A-1)の製造)
撹拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えたフラスコにイソプロピルアルコール85部、イオン交換水43部、スチレン125.9部(全モノマー成分中70%)、80%アクリル酸67.5部(全モノマー成分中30%)の混合液を窒素気流下に攪拌しながら、70℃まで昇温し、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(商品名「パーブチルO」日本油脂(株)製)を7.3部仕込んだ。更に80~90℃まで昇温させ、4時間保温して重合体を得た後、次いで、イオン交換水200部、ハイドロキノン0.045部及び48%水酸化カリウム水溶液51.0部(重合体中のアニオン性基に対して50モル%相当)仕込んで、中和した後、イソプロピルアルコールを留去した。さらに25%アンモニア水を29.7部(共重合体中のアニオン性基に対して50モル%相当)添加して溶解させ、固形分濃度25%の重合体(A-1)を得た。
【0101】
製造例1-2(重合体(A-2)の製造)
撹拌機、冷却管、2つの滴下ロート、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジイソブチレン(2,4,4-トリメチル-1-ペンテン;純度76%)70.3部(全モノマー成分中53.4%)、無水マレイン酸46.6部(全モノマ-成分中46.6%)、トルエン180部の混合液を窒素気流下に撹拌しながら、70℃まで昇温し、tert-ブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエート(商品名「パ-ブチルO」、日本油脂(株)製)を7.3部仕込んだ。更に80~90℃まで昇温させ、4時間保温して重合体を得た後、次いで、イオン交換水200部、ハイドロキノン0.045部及び48%水酸化カリウム水溶液35.0部(重合体中のアニオン性基に対して100モル%相当)仕込んで、中和した後、トルエンを留去し、固形分濃度20%の重合体(A-2)を得た。
【0102】
製造例1-3(重合体(A-3)の製造)
撹拌機、冷却管、滴下ロ-ト、窒素導入管及び温度計を備えたフラスコに、スチレン70部、ジメチルアミノエチルメタクリレート30部、イソプロピルアルコール42.9部、及び2,2′-アゾビスイソブチロニトリル2.5部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら80~85℃で5時間重合反応を行った。ついで、酢酸11.5部と水300部とを加えた後、エピクロルヒドリン17.7部を加えて80℃で2時間保温し、さらに所定量の水を加えて、固形分濃度を20%に調整し、重合体(A-3)を得た。
【0103】
製造例1-4(APS変性澱粉(A-7)の製造)
撹拌機、冷却管、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに、コーン澱粉(商品名:「王子エ-スA」、王子コーンスターチ(株)製、固形分濃度88%)100部、APS5部、及び水300部を加えて、90℃に昇温し、1時間撹拌した。その後、固形分濃度15%となるように、水を加えた後、40℃まで冷却し、APS変性澱粉(A-7)を得た。
【0104】
製造例1-5(酵素変性澱粉(A-8)の製造)
撹拌機、冷却管、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに、コーン澱粉(商品名:「王子エ-スA」、王子コーンスターチ(株)製、固形分濃度88%)100部、クライスタ-ゼL1(天野エンザイム(株)製)0.1部、及び水300部を加えて、75℃に昇温し、40分撹拌後、90℃に昇温して更に10分間撹拌した。その後、固形分濃度15%となるように、水を加えた後、40℃まで冷却し、酵素変性澱粉(A-8)を得た。
【0105】
製造例1-6(硫酸変性澱粉(A-9)の製造)
撹拌機、冷却管、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに、コーン澱粉(商品名:「王子エ-スA」、王子コーンスターチ(株)製、固形分濃度88%)250.0部、20%硫酸水溶液11部(固形分2.2部)、及び水300部を加えて、90℃に昇温し、1時間撹拌した。その後、固形分濃度15%となるように、水を加えた後、40℃まで冷却し、硫酸変性澱粉(A-9)を得た。
【0106】
製造例2-1(マレイン化ロジン(C-2)の製造)
撹拌機、温度計、窒素導入管及び冷却器を備えた反応容器に、中国産ガムロジンの約160℃の溶融物600.0g、無水マレイン酸42.0gを仕込み、窒素気流下に撹拌しながら200℃で2時間反応させることにより、軟化点が97.4℃、及び酸価が234.5mgKOH/gのマレイン化ロジン(C-2)を得た。
【0107】
製造例2-2(フマル化ロジン(C-3)の製造)
撹拌機、温度計、窒素導入管及び冷却器を備えた反応容器に、中国産ガムロジンの約160℃の溶融物600.0g、フマル酸42.0gを仕込み、窒素気流下に撹拌しながら200℃で2時間反応させることにより、軟化点が104.5℃、及び酸価が219.5mgKOH/gのフマル化ロジン(C-3)を得た。
【0108】
製造例2-3(ガムロジンエステル(C-4)の製造)
撹拌機、温度計、窒素導入管及び冷却器を備えた反応容器に、中国産ガムロジン663.2部と、グリセリン55.6部を仕込み(当量比[OH(eq)/COOH(eq)]=0.91)、酸化防止剤として、ノクラック300(大内新興化学工業(株)製)10部、及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.1部を加えて、窒素気流下に撹拌しながら270℃で15時間反応させることにより、軟化点90.8℃、酸価16.1mgKOH/g及び水酸基価8.1mgKOH/gのガムロジンエステル(C-4)を得た。
【0109】
実施例1
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び2本の滴下ロ-トを備えた反応容器に、重合体(A-1)50部(固形分)、イオン交換水200部、アニオン性界面活性剤(商品名:「ハイテノ-ルLA10」、第一工業製薬(株)製)2部、硫酸鉄(II)七水和物0.08重量部を仕込み、反応容器内の酸素を窒素で充分に置換した後、撹拌しながら系内を80℃まで昇温した。次いで、滴下ロ-ト(I)にスチレン56部及びアクリル酸24部のモノマ-混合物に中国産ガムロジン20部を溶解させた液を、滴下ロ-ト(II)に固形分濃度35%の過酸化水素水10部(モノマ-成分に対して3.5重量部)を水100部に溶解した水溶液をそれぞれ仕込み、約2時間かけて系内に滴下し、更に2時間保温して反応を完結させ、固形分濃度25.5%の製紙用表面エマルジョンサイズ剤を得た。得られた製紙用表面エマルジョンサイズ剤の粘度、pH、体積平均粒子径を表1に示す(以下同様)。
【0110】
実施例2~21、比較例1~3
表1に示す成分及び使用量に変更して、実施例1と同様に合成し、製紙用表面エマルジョンサイズ剤をそれぞれ得た。
【0111】
(機械的安定性)
製紙用表面エマルジョンサイズ剤50gをマ-ロン式安定度試験器(新星産業(株)製)の容器に秤取し、温度25℃、荷重10kg、回転速度1000rpmで5分間強撹拌した後、生じた凝集物を予め秤量した350メッシュ金網で濾取した。105℃の循風乾燥機で3時間乾燥した後、金網及び凝集物の重量を測定し、凝集物の固形分重量を求めた。式1に従って値を算出し、以下の評価基準で判断した。
(式1)機械的安定性(%)=(凝集物の固形分重量(g)/製紙用表面エマルジョンサイズ剤の固形分重量(g))×100
(評価基準)
◎:上記算出値が0.5%未満
○:上記算出値が0.5%以上1.0%未満
△:上記算出値が1.0%以上5.0%未満
×:上記算出値が5.0%以上
【0112】
(塗工液の調製)
コーン澱粉(商品名:「王子エ-スA」、王子コーンスターチ(株)製)を固形分濃度12%となるように脱イオン水で希釈し、澱粉の固形分重量に対して過硫酸アンモニウム(以下、APSという)を1.6%添加して、90℃で20分間保温した。固形分濃度7.5%となるように脱イオン水で希釈し、48%水酸化ナトリウム水溶液でpH5.0に調整し、APS変性澱粉を得た。前記APS変性澱粉50部に、実施例1の製紙用表面エマルジョンサイズ剤を1.47部混合し、塗工液を調製した。なお、塗工液中の製紙用表面エマルジョンサイズ剤の固形分濃度は0.88%である。また、実施例2~21、比較例1~3の製紙用表面エマルジョンサイズ剤についても同様に行い、塗工液を調製した。
【0113】
(塗工液の発泡性)
各塗工液を50℃に加温し、家庭用ミキサ-で2分間処理した後に、処理直後の液面の高さを測定した(初期の液面高さは60mmである)。
【0114】
(塗工紙の作製及びサイズ効果の評価)
バーコーターを用いて、予め液温を50℃に調整した各塗工液を上質中性紙(ステキヒトサイズ度:0.5秒、坪量:70g/m2)の表面に両面塗工した後、105℃の回転ドライヤ-で1分間乾燥させ、塗工紙を作製した。なお、原紙への製紙用表面エマルジョンサイズ剤の付着量は、固形分で約0.08g/m2、澱粉の付着量は、固形分で約2g/m2であった。得られた塗工紙のステキヒトサイズ度をJIS P 8122に準拠して測定した。数値が大きいほどサイズ効果に優れることを意味する。
【0115】
【0116】
<(A)成分>
・A-1:製造例1-1の重合体
・A-2:製造例1-2の重合体
・A-3:製造例1-3の重合体
・A-4:コーン澱粉(商品名:「王子エ-スA」、王子コーンスターチ(株)製)
・A-5:タピオカ澱粉
・A-6:馬鈴薯
・A-7:製造例1-4のAPS変性澱粉
・A-8:製造例1-5の酵素変性澱粉
・A-9:製造例1-6の硫酸変性澱粉
<(B)成分>
・B-1:St/BA=70/30(重量比(固形分換算))
・B-2:St/IBMA=70/30(重量比(固形分換算))
・B-3:St/BA/AA=65/20/15(重量比(固形分換算))
・B-4:St/BA/DM=65/20/15(重量比(固形分換算))
※St-スチレン、BA-アクリル酸-n-ブチル、IBMA-メタクリル酸イソブチル、AA-アクリル酸、DM-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレ-ト
<(C)成分>
・C-1:中国産ガムロジン
・C-2:製造例2-1のマレイン化ロジン
・C-3:製造例2-2のフマル化ロジン
・C-4:製造例2-3のガムロジンエステル