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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20221206BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B60H1/00 101V
H05K7/20 G
H05K7/20 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019008758
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020117027
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小松 博文
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0154468(US,A1)
【文献】特開2008-140831(JP,A)
【文献】特開2014-225659(JP,A)
【文献】特開2010-245357(JP,A)
【文献】特開平10-203132(JP,A)
【文献】特開昭61-035526(JP,A)
【文献】特開2005-303063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン(21)とモータ(22)とを有する送風機(20)と、
前記送風機を収納する送風機ケース(11)と、
前記送風機から送風された空気が流れる空気流路(19)を形成する送風ダクト(12)と、
前記モータを収納するモータハウジング(15)と、
前記モータハウジングと前記送風機ケースとを接続する接続部(17)と、
前記送風ダクトに設けられている発熱部品(50)と、
前記空気流路に突出して前記送風ダクトの内部に設けられ、前記発熱部品からの放熱を促進させる複数の放熱フィン(61)とを備え、
複数の前記放熱フィンは、第1並び方向に互いに離間して並んで設けられているとともに、前記第1並び方向とは交差する方向である第2並び方向にも互いに離間して並んで設けられており、
複数の前記放熱フィンは、前記第1並び方向において、先端部(262a)に近づくほど厚さの小さくなる針状フィン(262)と、円柱フィン(263)とが混在して並んで構成されている車両用空調装置。
【請求項2】
ファン(21)とモータ(22)とを有する送風機(20)と、
前記送風機を収納する送風機ケース(11)と、
前記送風機から送風された空気が流れる空気流路(19)を形成する送風ダクト(12)と、
前記モータを収納するモータハウジング(15)と、
前記モータハウジングと前記送風機ケースとを接続する接続部(17)と、
前記送風ダクトに設けられている発熱部品(50)と、
前記空気流路に突出して前記送風ダクトの内部に設けられ、前記発熱部品からの放熱を促進させる複数の放熱フィン(61)とを備え、
複数の前記放熱フィンは、第1並び方向に互いに離間して並んで設けられているとともに、前記第1並び方向とは交差する方向である第2並び方向にも互いに離間して並んで設けられており、
複数の前記放熱フィンは、前記第2並び方向に並んでいる、先端部(262a)に近づくほど厚さの小さくなる針状フィン(262)の群と、前記第2並び方向に並んでいる円柱フィン(263)の群とが前記第1並び方向に並んで構成されている車両用空調装置。
【請求項3】
前記空気流路における空気の流れ方向は、前記第2並び方向に沿う方向であって、
前記第2並び方向において隣り合う前記放熱フィン同士の距離(Cy)は、前記放熱フィンの前記第2並び方向の長さ(Fy)よりも大きい請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、樹脂材料により回路基板および回路部品の全体とコネクタの一部とを封止した電子回路装置を開示している。この構成により、電子回路装置が振動した場合において、回路基板がケーシングに対して相対的運動をして異音が発生することを防止している。従来技術として挙げられた先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-303106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の構成では、樹脂封止によって回路基板が樹脂に覆われることになる。このため、回路基板の放熱を適切に行うことが困難であった。また、車両用空調装置において異音が発生すると、空調風が通過するためのダクトを通じて異音が乗員に知覚されやすい。このため、静粛性が求められる車両に用いられる車両用空調装置において、乗員に知覚される異音の発生を抑制することは非常に重要である。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、車両用空調装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示される1つの目的は、異音感を低減した車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された一つの車両用空調装置は、ファン(21)とモータ(22)とを有する送風機(20)と、送風機を収納する送風機ケース(11)と、送風機から送風された空気が流れる空気流路(19)を形成する送風ダクト(12)と、モータを収納するモータハウジング(15)と、モータハウジングと送風機ケースとを接続する接続部(17)と、送風ダクトに設けられている発熱部品(50)と、空気流路に突出して送風ダクトの内部に設けられ、発熱部品からの放熱を促進させる複数の放熱フィン(61)とを備え、複数の放熱フィンは、第1並び方向に互いに離間して並んで設けられているとともに、第1並び方向とは交差する方向である第2並び方向にも互いに離間して並んで設けられており、
複数の放熱フィンは、第1並び方向において、先端部(262a)に近づくほど厚さの小さくなる針状フィン(262)と、円柱フィン(263)とが混在して並んで構成されている。
ここに開示されたもう一つの車両用空調装置は、複数の放熱フィンは、第2並び方向に並んでいる、先端部(262a)に近づくほど厚さの小さくなる針状フィン(262)の群と、第2並び方向に並んでいる円柱フィン(263)の群とが第1並び方向に並んで構成されている。
【0007】
開示された車両用空調装置によると、複数の放熱フィンは、第1並び方向に互いに離間して並んで設けられているとともに、第1並び方向とは交差する方向である第2並び方向にも互いに離間して並んで設けられている。このため、放熱フィン同士を離間させることで、放熱フィンを1つの連続した板状のフィンで構成する場合に比べて、複数の放熱フィン全体の重さを軽くして、放熱フィンの共振周波数を高くすることができる。したがって、送風機の低速回転時において放熱フィンに伝達されるモータの振動によって、放熱フィンに共振が引き起こされることを抑制できる。言い換えると、送風機の低速回転時に放熱フィンから大きな異音が発生することを抑制できる。一方、送風機の高速回転時において放熱フィンに伝達されるモータの振動によって、放熱フィンに共振が引き起こされる場合であっても、送風機の高速回転に伴う大きな送風音によって放熱フィンの異音を乗員が知覚しにくい状態とすることができる。以上により、異音感を低減した車両用空調装置を提供できる。
【0010】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両用空調装置の内部構成を示す横断面図である。
図2】送風機ユニットの内部構成を示す縦断面図である。
図3】発熱部品に装着されたヒータコアを示す斜視図である。
図4】ヒータコアにおける放熱フィンの配置を示す図である。
図5】第2実施形態におけるヒータコアを示す斜視図である。
図6】第3実施形態におけるヒータコアを示す斜視図である。
図7】第4実施形態におけるヒータコアを示す斜視図である。
図8】第5実施形態におけるヒータコアを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0013】
第1実施形態
図1において、車両用空調装置1は、送風機ユニット10と、この送風機ユニット10から送風された送風空気の温度調整を行う空調ユニット30とを備えている。車両用空調装置1は、送風機ユニット10によって送風された空気を空調ユニット30によって温度調整して、車室内に供給する。車両用空調装置1は、暖房運転や冷房運転や除湿運転などの空調運転を実施可能な装置である。送風機ユニット10は、車室内の計器盤下方部のうち、中央部から助手席側に近い車両左側に配置されている。これに対し、空調ユニット30は、車室内の計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
【0014】
送風機ユニット10は、送風機20と送風機ケース11と送風ダクト12とを備えている。送風機20は、シロッコファンなどの遠心多翼ファンである。送風機ケース11は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂製の成形品である。送風機ケース11の材料としては、ポリプロピレンなどが使用可能である。送風機ケース11は、渦巻き状であって、渦巻きをなす中心部分に送風機20の回転軸が位置するように送風機20を収納している。
【0015】
送風ダクト12は、送風機ケース11と一体に設けられ、送風機ケース11から空調ユニット30に向かって延びているダクト部材である。送風ダクト12の内側の空間は、送風機20から送られた空気が流れる空気流路19として機能する。空気流路19において、空気は、送風機20から離れて空調ユニット30に近づく方向に流れる。ただし、送風ダクト12を送風機ケース11と別部品で形成してもよい。
【0016】
空調ユニット30は、空調ケース31内に蒸発器41とヒータコア42とを内蔵している。空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂製の成形品である。空調ケース31の材料としては、ポリプロピレンなどが使用可能である。空調ケース31は、上下方向に分割面を有する複数の分割ケースからなる。この複数の分割ケースは、蒸発器41やヒータコア42などの機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合されて空調ケース31を構成している。
【0017】
蒸発器41は、冷凍サイクル装置を構成する1つの部品であって、内部を流れる液相冷媒を気相冷媒に蒸発させる装置である。蒸発器41は、冷媒を蒸発させる際に周囲の空気から熱を奪うことで周囲の空気を冷却する。蒸発器41は、冷却用熱交換器である。ヒータコア42は、内部にエンジン冷却水などの高温の流体が流れる装置である。ヒータコア42は、内部を流れる高温流体の熱を周囲の空気に与えることで周囲の空気を加熱する。ヒータコア42は、加熱用熱交換器である。
【0018】
空調ケース31の内部において、蒸発器41は、ヒータコア42よりも空気の流れにおいて上流に位置している。言い換えると、空調ケース31の内部において、空気は、車両の前方から後方に向かって流れ、蒸発器41は、ヒータコア42よりも前方に位置している。
【0019】
空調ケース31の内部は、第1仕切り部35によって左右方向に仕切られている。空調ケース31の内部は、第2仕切り部36によって左右方向に仕切られている。第2仕切り部36は、第1仕切り部35よりも空気の流れにおいて下流に位置している。空調ケース31の内部において、蒸発器41よりも下流側では、第1仕切り部35または第2仕切り部36によって、空気の流れる風路が左側風路32Lと右側風路32Rとの2つの風路に仕切られている。
【0020】
蒸発器41とヒータコア42との間には、左側エアミックスドア45Lと右側エアミックスドア45Rとが設けられている。左側エアミックスドア45Lが開いている状態では、左側風路32Lを流れる空気がヒータコア42と熱交換することで加熱される。一方、左側エアミックスドア45Lが閉じている状態では、左側風路32Lを流れる空気がヒータコア42と熱交換されず、加熱されない。右側エアミックスドア45Rが開いている状態では、右側風路32Rを流れる空気がヒータコア42と熱交換することで加熱される。一方、右側エアミックスドア45Rが閉じている状態では、右側風路32Rを流れる空気がヒータコア42と熱交換されず、加熱されない。
【0021】
空調ケース31は、左側開口部39Lと右側開口部39Rとを備えている。左側開口部39Lと右側開口部39Rとは、空調風を車両用空調装置1の内部から外部へと吹き出す吹き出し口として機能する。
【0022】
空調ユニット30の内部における空気の流れについて、以下に説明する。送風機ユニット10と連通している空気入口から空調ユニット30の内部に流入する。空調ユニット30の内部に流入した空気は、蒸発器41と熱交換を行い冷却される。その後、蒸発器41よりも下流側では、左側風路32Lまたは右側風路32Rに分かれて流れる。左側風路32Lまたは右側風路32Rを流れる空気は、ヒータコア42と熱交換を行い加熱される。ヒータコア42と熱交換を行った空気は、左側開口部39Lまたは右側開口部39Rのどちらかの開口部から流出する。
【0023】
送風ダクト12には、発熱部品50が固定されている。発熱部品50は、送風ダクト12をなす壁面を貫通した状態で送風ダクト12に固定されている。発熱部品50は、送風機20の駆動制御に用いるパワートランジスタである。ただし、発熱部品50は、パワートランジスタに限られず、レジスタなどの様々な電子部品を採用可能である。また、発熱部品50は、1つの部品ではなく、用途の異なる複数の部品を含んで構成されていてもよい。発熱部品50には、発熱部品50の放熱を促進するための放熱促進部として機能するヒートシンク60が取り付けられている。ヒートシンク60は、発熱部品50の表面において空気流路19に面している側に設けられている。ヒートシンク60は、空気流路19を流れる空気と熱交換をすることで発熱部品50を冷却する。
【0024】
図2において、送風機20は、ファン21とモータ22とを備えている。送風機20は、モータ22を用いてファン21を回転させることで、送風している。モータ22の回転軸は、上下方向に沿う方向である。送風機20は、回転軸の径方向外側に向かって空気を送る。
【0025】
送風機ユニット10は、モータハウジング15を備えている。モータハウジング15は、内側にモータ22を収納することでモータ22を適切な位置に配置するための部品である。モータハウジング15は、有底の筒状部材である。モータハウジング15は、モータ22を収納した状態において、モータ22の側面及び底面と接触している。ただし、モータ22の下半分は、モータハウジング15によって収納されており、モータ22の上半分は、モータハウジング15に収納されておらず、ファン21と接続されている。モータ22の底面とモータハウジング15とは、締結部材であるモータ用ボルト27で締結固定されている。このモータ用ボルト27によって、モータ22とモータハウジング15とが相対的に移動することを抑制している。
【0026】
モータハウジング15からは、モータフランジ16が延び出して設けられている。モータフランジ16は、筒状をなすモータハウジング15の側面から外側に向かって円盤状に設けられている。モータフランジ16は、送風機ケース11の底面に固定されている。モータフランジ16と送風機ケース11とは、締結部材であるボルト17を用いて着脱可能に締結固定されている。ただし、モータフランジ16と送風機ケース11との固定方法は締結固定に限られない。モータフランジ16と送風機ケース11とに嵌合部を形成して嵌合固定してもよい。あるいは、接着剤を用いてモータフランジ16と送風機ケース11とを分離不可能に接着固定してもよい。ボルト17や嵌合部や接着剤は、接続部の一例を提供する。
【0027】
送風ダクト12の側面には、発熱部品50が設けられている。発熱部品50は、送風ダクト12の上面及び下面と接触しない位置に設けられている。発熱部品50は、モータ22の回転駆動を制御するためのパワートランジスタである。このため、制御対象であるモータ22から近い位置に発熱部品50であるパワートランジスタを配置することが好ましい。これによると、モータ22と発熱部品50とを接続するための配線などを短くすることができる。
【0028】
モータ22で発生した振動が発熱部品50に伝達されるまでの流れについて以下に説明する。モータ22を駆動するとモータ22で振動が発生する。この振動は、モータ用ボルト27によってモータ22と連結しているモータハウジング15に伝達されてモータハウジング15が振動する。モータハウジング15の振動は、ボルト17によってモータハウジング15と連結している送風機ケース11に伝達されて送風機ケース11が振動する。送風機ケース11の振動は、送風機ケース11と一体に形成されている送風ダクト12に伝達されて送風ダクト12が振動する。送風ダクト12の振動は、送風ダクト12に取り付けられている発熱部品50に伝達されて発熱部品50が振動する。以上により、モータ22の振動が発熱部品50に伝達されて発熱部品50が振動することとなる。
【0029】
図3において、発熱部品50は、ヒートシンク60と接触している。ヒートシンク60は、放熱フィン61と基部69とを備えている。基部69は、平板状である。基部69は、発熱部品50の1つの面を覆っている。放熱フィン61は、平板状の基部69からZ方向に突出して設けられている。放熱フィン61は、基部69において発熱部品50と接触している側とは反対側の面から突出して複数設けられている。放熱フィン61は、空気流路19を流れる空気と熱交換することで発熱部品50の熱を空気中に放熱する。
【0030】
放熱フィン61は、Z方向を長手方向とする四角柱形状である。放熱フィン61のZ方向長さは、基部69のZ方向長さよりも大きい。放熱フィン61は、X方向に互いに離間して並んで設けられている。放熱フィン61は、X方向と交差する方向であるY方向に互いに離間して並んで設けられている。言い換えると、放熱フィン61は、格子状に並んで設けられている。X方向は、第1並び方向の一例を提供する。Y方向は、第2並び方向の一例を提供する。
【0031】
X方向に並ぶ複数の放熱フィン61において、隣り合う放熱フィン61の間には、X方向隙間66xが形成されている。Y方向に並ぶ複数の放熱フィン61において、隣り合う放熱フィン61の間には、Y方向隙間66yが形成されている。
【0032】
図4において、空気は矢印F1に示す方向に流れる。矢印F1に示す方向は、Y方向に沿った方向である。放熱フィン61のX方向長さFxは、放熱フィン61のY方向長さFyよりも大きい。すなわち、放熱フィン61は、X方向を長手方向とする長方形をZ方向に突出させた四角柱形状である。複数の放熱フィン61の形状は、全て互いに等しい形状である。
【0033】
X方向隙間66xの大きさCxは、放熱フィン61のX方向長さFxと等しい大きさである。また、X方向隙間66xの大きさCxは、Y方向隙間66yの大きさCyよりも小さい。したがって、空気が放熱フィン61の間を流れる際には、隣り合う放熱フィン61同士の隙間の小さなY方向よりも、隣り合う放熱フィン61同士の隙間の大きなX方向に沿って流れやすい。
【0034】
Y方向隙間66yの大きさCyは、放熱フィン61のY方向長さFyよりも大きい。言い換えると、放熱フィン61は、放熱フィン61のY方向長さFyよりも大きな間隔を空けてY方向に並んでいる。このため、Y方向に一列に並んでいる複数の放熱フィン61の合計の重さを、放熱フィン61のX方向長さと同じ厚さの板状のフィンを空気の流れ方向であるY方向に沿って連続して設けた場合の重さの半分以下の重さとすることができる。
【0035】
モータ22の振動が発熱部品50に伝達されると、発熱部品50と接触しているヒートシンク60に振動が伝達されてヒートシンク60が振動する。ヒートシンク60を構成する放熱フィン61は、基部69からZ方向に突出して設けられているため、放熱フィン61がZ方向と交差する方向にしなりやすい。特に、放熱フィン61においては、基部69から離れて先端部に近づくほど大きく振動しやすい。
【0036】
ここで、放熱フィン61の共振周波数がモータ22の駆動時に発生する振動の周波数と一致する場合には、共振現象が引き起こされることとなる。共振現象が引き起こされると、放熱フィン61に大きな振動が発生して異音が生じる場合がある。この放熱フィン61において共振が引き起こされる共振周波数は、放熱フィン61の重さと放熱フィン61の剛性によって決まる。このため、放熱フィン61の質量や放熱フィン61の剛性を変更することで共振周波数を制御することができる。より具体的には、放熱フィン61の重さを軽くすることで共振周波数を高くすることができる。また、放熱フィン61の剛性を高くすることで共振周波数を高くすることができる。
【0037】
放熱フィン61において、X方向長さFxやY方向長さFyを適切な長さに調整することで、放熱フィン61の重さを調整することができる。例えば、Y方向に連続する1つの板状のフィンをX方向に複数並べて配置したプレートタイプのフィンから、X方向とY方向との両方の方向に柱状フィンを複数並べた剣山タイプのフィンに変更することで、放熱フィン61を軽量化できる。言い換えると、プレートタイプから剣山タイプに変更することで、放熱フィン61の共振周波数を高くすることができる。
【0038】
放熱フィン61の共振周波数を高くすることで、モータ22が高速回転して高い周波数の振動が発生している場合に、放熱フィン61において共振現象が引き起こされることとなる。この場合、モータ22が高速回転しているため、送風機20による送風音が大きくなりやすい。したがって、モータ22の振動との共振によって放熱フィン61で発生した異音は、送風音によってマスキングされやすい。言い換えると、放熱フィン61で発生した異音が乗員に知覚されにくい。以上により、送風音によってマスキングされにくいモータ22の低速回転時においては、共振が引き起こされず、送風音によってマスキングされやすいモータ22の高速回転時において、共振が引き起こされるように構成することができる。
【0039】
ヒートシンク60において放熱フィン61間に形成されたY方向隙間66yは、ヒートシンク60の一部をなす放熱フィン61の共振周波数を、送風機20の低速回転時の周波数とは異なる周波数とすることで共振を抑制する共振抑制部として機能している。
【0040】
上述した実施形態によると、放熱フィン61は、X方向に互いに離間して並んで設けられるとともに、Y方向にも互いに離間して並んで設けられている。このため、X方向やY方向に離間していない板状のフィンを並べたプレートタイプに比べて、放熱フィン61を軽量化して放熱フィン61の共振周波数を高くすることができる。したがって、モータ22の振動によって放熱フィン61で共振が引き起こされて異音が発生した場合であっても、高速回転する送風機20の送風音によって異音がマスキングされやすい。言い換えると、放熱フィン61で発生した異音を乗員が知覚しにくい。よって、乗員が不快に感じる異音感を低減した車両用空調装置1を提供できる。
【0041】
Y方向において隣り合う放熱フィン61同士の距離Cyは、放熱フィン61のY方向の長さFyよりも大きい。このため、Y方向に沿って一列に並んでいる放熱フィン61の合計の重さを、放熱フィン61のX方向の長さと同じ厚さでY方向に連続して板状のフィンを設けた場合のフィンの重さの半分以下の重さとすることができる。したがって、放熱フィン61の重さを軽くして共振周波数を高くしやすい。よって、乗員が感じる異音感を低減した車両用空調装置1を提供できる。
【0042】
複数の放熱フィン61は、空気の流れ方向であるY方向に沿って並んでいる。このため、放熱フィン61のY方向に沿う側面だけでなく、放熱フィン61のX方向に沿う側面についても空気と接触して熱交換を行うことができる。したがって、Y方向に沿って連続する板状のフィンを設けた場合に比べて、Y方向に沿って並んでいる放熱フィン61の合計の表面積を大きく確保しやすい。よって、ヒートシンク60としての放熱性能を高く確保しながら、ヒートシンク60に起因する異音感を低減させることができる。
【0043】
放熱フィン61は、四角柱形状である。このため、Y方向に連続する板状のフィンをY方向に離間するように切削加工することで複数の放熱フィン61を形成することができる。したがって、放熱フィン61の製造性が良い。また、切削加工時に切削する幅を調整することで放熱フィン61の重さを容易に調整可能である。
【0044】
放熱フィン61は、互いに同一の形状である。このため、全ての放熱フィン61について共振周波数を高く保ち、ヒートシンク60全体において、低速回転時のモータ22による共振から異音が発生してしまうことを防止しやすい。言い換えると、形状の異なる一部のフィンによって、意図しない周波数で共振が引き起こされて異音が発生することを防止しやすい。
【0045】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、放熱フィン261が針状フィン262と円柱フィン263との形状の異なる2種類のフィンによって構成されている。
【0046】
図5において、放熱フィン261は、針状フィン262と円柱フィン263との2種類のフィンによって構成されている。針状フィン262は、基部69から離れて先端部262aに近づくほどX方向の厚さが小さくなるように形成されている。ただし、Y方向の厚さについては、Z方向の位置によらず一定である。円柱フィン263は、基部69と連続する部分から先端部263aまでのZ方向の断面形状が同一の円形状である。
【0047】
針状フィン262のZ方向長さは、円柱フィン263のZ方向長さと等しい長さである。円柱フィン263の重さは、針状フィン262に比べて重い。このため、円柱フィン263の共振周波数は、針状フィン262の共振周波数よりも低い周波数である。ただし、円柱フィン263の共振周波数は、Y方向に連続する板状のフィンの共振周波数よりも高い周波数である。
【0048】
放熱フィン261は、X方向に互いに離間して並んで設けられている。X方向においては、針状フィン262と円柱フィン263とが混在して並んでいる。放熱フィン261は、X方向と交差する方向であるY方向に互いに離間して並んで設けられている。Y方向においては、針状フィン262のみ、あるいは、円柱フィン263のみが並んでいる。
【0049】
針状フィン262同士は、互いにY方向に離間している。このため、針状フィン262は、Y方向に連続する板状のフィンがX方向に複数並んでいる場合に比べて軽量である。円柱フィン263同士は、互いにY方向に離間している。このため、円柱フィン263は、Y方向に連続する板状のフィンがX方向に複数並んでいる場合に比べて軽量である。
【0050】
上述した実施形態によると、放熱フィン261は、先端部261aに近づくほどX方向の厚さの小さくなる針状フィン262である。このため、先端部261a近傍における重さを軽くして、針状フィン262の振動を小さくしやすい。さらに、先端部261a近傍の重さが軽いため、針状フィン262全体の重さを軽くしやすい。したがって、針状フィン262の共振周波数を高く制御しやすい。
【0051】
放熱フィン261は、針状フィン262と円柱フィン263との形状の異なる2種類のフィンによって構成されている。このため、場所によって放熱フィン261の共振周波数を変更することができる。したがって、放熱フィン261の共振周波数を場所によって変更することで、放熱フィン261全体において共振が同時に引き起こされて異音が発生することを抑制しやすい。
【0052】
放熱フィン261の形状は、針状や円柱に限られない。例えば、三角錐や三角柱のような形状でもよい。また、3種類以上の形状の異なるフィンを用いて放熱フィン261を構成してもよい。
【0053】
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、板状フィン361の先端部361aが連結部365によって連結されている。
【0054】
図6において、ヒートシンク60は、基部69と板状フィン361と連結部365によって構成されている。板状フィン361は、Y方向に連続する板状である。板状フィン361は、X方向に離間して複数並んで設けられている。
【0055】
複数の先端部361aは、連結部365によって互いに連結されている。連結部365は、複数の先端部361aの全体を連結している。ヒートシンク60は、内部が複数の空間に仕切られた筒状をなしている。ヒートシンク60は、板状フィン361の片方の端部が開放されている片持ち形状ではなく、板状フィン361の両方の端部が連結されている両持ち形状である。
【0056】
上述した実施形態によると、板状フィン361において発熱部品50から最も離れた部分である先端部361aは、連結部365によって連結されている。このため、先端部361aが連結されていない場合に比べて、板状フィン361の共振周波数を高くすることができる。したがって、板状フィン361において共振が引き起こされにくい。あるいは、板状フィン361において共振が引き起こされた場合に、送風機20による送風音が大きいため、板状フィン361の共振による異音を乗員が知覚しにくい。
【0057】
先端部361aの全体が連結部365によって連結されている。このため、先端部361aの一部のみを連結する場合に比べて、共振周波数を高くしやすい。また、ヒートシンク60の断面がY方向の位置によらず一定である。このため、ヒートシンク60を押し出し成形によって製造することができる。したがって、ヒートシンク60の成形後に、切削加工などの後工程によって板状フィン361の形状を変更する必要がない。よって、ヒートシンク60の製造性を高めやすい。
【0058】
ヒートシンク60において板状フィン361間に形成された連結部365は、ヒートシンク60の一部をなす板状フィン361の共振周波数を、送風機20の低速回転時の周波数とは異なる周波数とすることで共振を抑制する共振抑制部として機能している。
【0059】
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、板状フィン361の先端部361aのうち、中央部に位置する部分が連結部465によって連結されている。
【0060】
図7において、複数の先端部361aの中央部は、連結部465によって互いに連結されている。連結部465は、X方向に沿う方向を長手方向とする四角柱形状である。連結部465から基部69までの間には、空気が通過可能な空気流路が形成されている。連結部465は、複数の先端部361aをY方向に連結して橋渡しを行う橋渡し部である。
【0061】
上述した実施形態によると、連結部465は、先端部361aの中央部を連結している。このため、連結部465を設けない場合に比べて、板状フィン361の共振周波数を高くすることができる。したがって、板状フィン361において異音が発生した場合であっても、異音が乗員に知覚されにくい車両用空調装置1を提供できる。
【0062】
第5実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、板状フィン361の先端部361aのうち、Y方向の両端部に位置する部分が連結部565によって連結されている。
【0063】
図8において、複数の先端部361aにおけるY方向の一方の端部は、第1連結部565aによって連結されている。また、複数の先端部361aにおけるY方向の他方の端部は、第2連結部565bによって連結されている。言い換えると、先端部361aのY方向の両端部は、連結部565によって連結されている。
【0064】
ヒートシンク60において、空気は、Y方向に通過可能である。また、Y方向に流れる空気の一部は、第1連結部565aと第2連結部565bとの間の空間を通ってZ方向に通過可能である。
【0065】
上述した実施形態によると、連結部565は、先端部361aのY方向の両端部を連結している。このため、先端部361aの中央部において空気が通過可能な空間を確保することができる。したがって、先端部361aの全体を連結する場合に比べて、板状フィン361の周囲の空気の流れを多く確保しやすい。よって、板状フィン361の共振周波数を高めるとともに、ヒートシンク60としての放熱促進効果を高めやすい。
【0066】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用空調装置、 10 送風機ユニット、 11 送風機ケース、 12 送風ダクト、 15 モータハウジング、 16 モータフランジ、 17 ボルト(接続部) 19 空気流路、 20 送風機、 21 ファン、 22 モータ、 30 空調ユニット、 31 空調ケース、 50 発熱部品、 60 ヒートシンク、 61 放熱フィン、 61a 先端部、 69 基部、 261 放熱フィン、 262 針状フィン、 262a 先端部、 263 円柱フィン、 263a 先端部、 361 板状フィン、 361a 先端部、 365 連結部、 465 連結部、 565 連結部、 565a 第1連結部、 565b 第2連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8