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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】媒体排出装置、及び媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/20 20060101AFI20221206BHJP
   B41J 13/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65H31/20
B41J13/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019010028
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020075815
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2018208291
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 祐二
(72)【発明者】
【氏名】下村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中沢 章
(72)【発明者】
【氏名】今江 俊博
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-059655(JP,U)
【文献】特開平04-333462(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194503(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/20
B41J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を排出する排出部と、
第1受け部、及び後退位置と前記後退位置よりも媒体排出方向下流に位置する進出位置とを変位可能な第2受け部を備え、前記排出部により排出された前記媒体を受ける媒体受け部と、
第1位置と、前記第1位置よりも媒体排出方向下流に位置する第2位置と、の間で移動可能に構成され、前記第1位置から前記第2位置に向かう移動に伴って前記第2受け部に当接して前記第2受け部を前記進出位置に向けて押圧し、前記第2受け部の前記後退位置への変位に伴って前記第2受け部に押されて前記第1位置に移動する移動部材と、
前記移動部材を前記第2位置に向けて押圧する押圧部材と、
前記押圧部材の押圧力に抗して前記移動部材の前記第2位置に向かう方向への移動を規制する規制状態と、前記規制状態を解除する規制解除状態とを切り換え可能な規制手段と、を備える、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体排出装置において、前記排出部によって排出される前記媒体の長さを取得する媒体長取得手段と、
前記媒体の長さが所定以上である場合に前記規制手段を前記規制解除状態に切り換える規制手段制御部と、を備える、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の媒体排出装置において、
前記移動部材は、前記第2位置に向けて移動する場合に、前記第2受け部に設けられる被当接部に当接する当接部を備える、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、
前記第2受け部は、前記移動部材が前記第1位置にある場合に、前記移動部材に対して媒体排出方向下流に移動可能であり、
前記移動部材は、前記第2受け部との間で摩擦抵抗を生じさせる接触部を備える、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、
前記排出部及び前記媒体受け部を備える装置本体部を備え、
前記媒体受け部は、前記装置本体部から取り外し可能に構成されている、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、
前記移動部材により押圧されて前記後退位置から前記進出位置に移動する前記第2受け部の移動速度を減速させる緩衝機構を備える、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の媒体排出装置において、
前記緩衝機構は、前記第2受け部の移動方向に並んで複数設けられ、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が変化する、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の媒体排出装置において、
前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が減少する、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項9】
請求項7に記載の媒体排出装置において、
前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が減少した後増加する、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項10】
請求項7に記載の媒体排出装置において、
前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が増加する、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、
前記規制手段は、前記移動部材を前記第1位置で規制する第1規制状態と、前記移動部材を前記第1位置よりも前記第2位置に近い下流位置で規制する第2規制状態と、を切り換え可能に構成されている、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項12】
媒体に処理を行う処理部と、
前記処理部による処理後の前記媒体を排出する請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の前記媒体排出装置と、を備える
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項13】
前記処理部として前記媒体に記録処理を行う記録部を備える記録装置である、ことを特徴とする請求項12に記載の媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を排出する媒体排出装置、及びこれを備える媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に処理を行う媒体処理装置には、媒体を媒体受けトレイに排出する媒体排出装置を備え、処理後の媒体を媒体受けトレイにスタックするように構成されているものがある。尚、媒体受けトレイは、排出または排紙トレイ、排出または排紙スタッカーなどと称される場合がある。媒体処理装置としては、例えばプリンターに代表される記録装置やスキャナーに代表される画像読取装置が挙げられる。
【0003】
例えば、媒体処理装置の一例としてのプリンターが、複数サイズの媒体に対して記録を実行可能である場合、媒体受けトレイには、プリンターにおいて記録可能な最大サイズに対応した長さが必要となる。媒体受けトレイをプリンターにおいて記録可能な最大サイズの媒体に対応する固定サイズにすると装置が大型化するため、媒体受けトレイの長さが、排出される媒体のサイズに応じて自動で変更可能に構成されている場合がある。
【0004】
例えば特許文献1の図1には、媒体受けトレイがモーター等で駆動される駆動系としてのトレイ長さ調整装置により伸縮される構成が開示されている。また、特許文献1の図2には、媒体受けトレイがばねにより縮む方向に引っ張られているおり、排出される媒体によって押されてばね力に抗して媒体受けトレイが伸長し、媒体受けトレイから媒体を取り除かれるとばね力により媒体受けトレイが自動で短縮される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-095515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、媒体受けトレイの長さを自動調整ではなく、任意に調整することを希望するユーザーもいる。特許文献1の図1に開示された媒体受けトレイのように、その長さをモーターで動作するトレイ長さ調整装置で変更する構成では、モーターを駆動せず、媒体受けトレイを手動で操作することが可能であるが、媒体受けトレイに駆動系が接続されていると媒体受けトレイの手動による移動操作が重く感じられることがある。
また、特許文献1の図2に開示のばね力により媒体受けトレイを短縮する構成では、ユーザーが手動で任意の長さにすることが考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の媒体排出装置は、媒体を排出する排出部と、第1受け部、及び後退位置と前記後退位置よりも媒体排出方向下流に位置する進出位置とを変位可能な第2受け部を備え、前記排出部により排出された前記媒体を受ける媒体受け部と、第1位置と、前記第1位置よりも媒体排出方向下流に位置する第2位置と、の間で移動可能に構成され、前記第1位置から前記第2位置に向かう移動に伴って前記第2受け部に当接して前記第2受け部を前記進出位置に向けて押圧し、前記第2受け部の前記後退位置への変位に伴って前記第2受け部に押されて前記第1位置に移動する移動部材と、前記移動部材を前記第2位置に向けて押圧する押圧部材と、前記押圧部材の押圧力に抗して前記移動部材の前記第2位置に向かう方向への移動を規制する規制状態と、前記規制状態を解除する規制解除状態とを切り換え可能な規制手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る媒体排出装置を備えるプリンターの外観斜視図。
図2】第1実施形態に係るプリンターの側断面図。
図3】装置本体部から外した媒体受け部の斜視図。
図4】媒体受け部が外された装置本体部の斜視図。
図5】媒体受け部の第2受け部が進出位置にある状態を示す斜視図。
図6】媒体受け部の第2受け部が進出位置にあり、補助受け部が起立した状態を示す斜視図。
図7図3のC-C矢視断面の概略図。
図8】第2受け部の移動部材の移動に伴う変位について説明する概略側断面図。
図9】上部ユニットを取り外した状態の媒体受け部であり、第2受け部が後退位置に位置する状態を示す斜視図。
図10】上部ユニットを取り外した状態の媒体受け部であり、移動部材により押圧されて第2受け部が進出位置に変位した状態を示す斜視図。
図11】上部ユニットを取り外した状態の媒体受け部であり、移動部材以外からの外力を受けて第2受け部が進出位置に変位した状態を示す斜視図。
図12】下部ユニットを取り外した状態の媒体受け部であり、第2受け部が後退位置に位置する状態を示す斜視図。
図13】下部ユニットを取り外した状態の媒体受け部であり、移動部材により押圧されて第2受け部が進出位置に変位した状態を示す斜視図。
図14】下部ユニットを取り外した状態の媒体受け部であり、移動部材以外からの外力を受けて第2受け部が進出位置に変位した状態を示す斜視図。
図15】規制手段周辺の拡大側断面図。
図16図9の要部拡大斜視図。
図17図10の要部拡大斜視図。
図18図16を別角度から見た斜視図。
図19】規制手段による規制状態の移動部材を示す斜視図。
図20】他動進出動作で変位する第2受け部の動きを表す概略断面図。
図21】規制手段の変更例について説明する図。
図22】制御部による制御について説明するフローチャート。
図23】緩衝機構の第1変更例について説明する図であり、移動部材が規制手段による規制状態である場合を表す斜視図。
図24】緩衝機構の第1変更例について説明する図であり、移動部材が後退位置から進出位置に向けて移動した状態を表す斜視図。
図25】緩衝機構の第1変更例について説明する図であり、移動部材が後退位置から進出位置に向けて更に移動した状態を表す斜視図。
図26】緩衝機構の第1変更例について説明する図であり、移動部材が進出位置まで移動した状態を表す斜視図。
図27】緩衝機構の第2変更例について説明する図。
図28】緩衝機構の第3変更例について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について概略的に説明する。
第1の態様に係る媒体排出装置は、媒体を排出する排出部と、第1受け部、及び後退位置と前記後退位置よりも媒体排出方向下流に位置する進出位置とを変位可能な第2受け部を備え、前記排出部により排出された前記媒体を受ける媒体受け部と、第1位置と、前記第1位置よりも媒体排出方向下流に位置する第2位置と、の間で移動可能に構成され、前記第1位置から前記第2位置に向かう移動に伴って前記第2受け部に当接して前記第2受け部を前記進出位置に向けて押圧し、前記第2受け部の前記後退位置への変位に伴って前記第2受け部に押されて前記第1位置に移動する移動部材と、前記移動部材を前記第2位置に向けて押圧する押圧部材と、前記押圧部材の押圧力に抗して前記移動部材の前記第2位置に向かう方向への移動を規制する規制状態と、前記規制状態を解除する規制解除状態とを切り換え可能な規制手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記第2受け部が前記移動部材によって前記進出位置に向けて押圧される構成であり、そして前記移動部材は、前記規制手段によって移動が規制される状態を取り得るので、前記移動部材の移動が規制された状態では前記第2受け部は前記移動部材による押圧の影響を受けることなくユーザー操作により前記進出位置に向けて移動し、所定の位置で停止することができる。つまり、前記第2受け部をユーザー操作により変位させる際には、モーター等に繋がる駆動機構からの負荷を受けるということがない上に、ユーザー操作により所定の位置で停止することができる。
以上の構成により、媒体排出装置におけるユーザーの使い勝手を向上させることができる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様において、前記排出部によって排出される前記媒体の長さを取得する媒体長取得手段と、前記媒体の長さが所定以上である場合に前記規制手段を前記規制解除状態に切り換える規制手段制御部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記媒体の長さに応じてユーザー操作によらず前記第2受け部が前記退避位置から前記進出位置に変位する構成であるので、ユーザーの前記第2受け部の操作忘れに起因して排出される媒体が前記媒体受け部から落ちてしまう問題を抑制できる。
【0013】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、前記移動部材は、前記第2位置に向けて移動する場合に、前記第2受け部に設けられる被当接部に当接する当接部を備える、ことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記移動部材は、前記第2位置に向けて移動する場合に、前記第2受け部に設けられる被当接部に当接する当接部を備えるので、前記第2位置に向けて移動する前記移動部材によって前記第2受け部を押して、前記第2受け部を前記進出方向に確実に変位させることができる。
【0015】
第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれかにおいて、前記第2受け部は、前記移動部材が前記第1位置にある場合に、前記移動部材に対して媒体排出方向下流に移動可能であり、前記移動部材は、前記第2受け部との間で摩擦抵抗を生じさせる接触部を備える、ことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記第2受け部が、前記移動部材が前記第1位置にある場合に前記移動部材に対して媒体排出方向下流に移動する際に、前記移動部材と前記第2受け部との間で摩擦抵抗を生じさせて、前記第2受け部が前記移動部材に対して勢いよく滑って移動することを抑制できる。また、前記第2受け部を、前記移動部材に対して媒体排出方向における任意の位置で停止させ易くすることができる。
【0017】
第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれかにおいて、前記排出部及び前記媒体受け部を備える装置本体部を備え、前記媒体受け部は、前記装置本体部から取り外し可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記媒体受け部は、前記装置本体部から取り外し可能に構成されているので、例えば、前記媒体受け部を使用しない場合にはこれを取り外し、省スペースで媒体排出装置を設置することができる。
【0019】
第6の態様は、第1の態様から第5の態様のいずれかにおいて、前記移動部材により押圧されて前記後退位置から前記進出位置に移動する前記第2受け部の移動速度を減速させる緩衝機構を備える、ことを特徴とする。
【0020】
前記第2受け部が前記移動部材を介して前記押圧部材の押圧力を受けて前記進出方向に変位すると、前記進出方向へ勢いよく進出する虞がある。
本態様によれば、前記移動部材により押圧されて前記後退位置から前記進出位置に移動する前記第2受け部の移動速度を減速させる緩衝機構を備えるので、前記自動進出動作の際に、前記第2受け部をゆっくりと前記進出位置に変位させることができる。
【0021】
第7の態様は、第6の態様において、前記緩衝機構は、前記第2受け部の移動方向に並んで複数設けられ、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が変化する、ことを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が変化するので、前記第2受け部が前記後退位置から前記進出位置に向かって移動する間に、前記緩衝作用の度合いを変えることができる。以って、前記第2受け部が進出する速さを調整できる。
【0023】
第8の態様は、第7の態様において、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が減少する、
ことを特徴とする。
【0024】
前記緩衝機構の緩衝作用が小さいと、前記第2受け部の変位速度を減速する作用が足りず、前記第2受け部が進出開始直後に勢いよく飛び出す虞がある。一方、緩衝機構の緩衝作用が大きいと前記第2受け部の進出開始時の飛び出しを抑制できるが、前記押圧部材の押圧力に対しての緩衝作用が過剰となり、媒体が排出されるまでに前記第2受け部の進出が完了しない状態となる虞がある。
【0025】
本態様によれば、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が減少するので、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、緩衝作用を小さくすることができる。
以って、前記第2受け部の進出開始直後の飛び出しの抑制と、緩衝作用が大きすぎて前記第2受け部の進出が完了しない状態となる虞の回避と、の双方を実現できる。
【0026】
第9の態様は、第7の態様において、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が減少した後増加する、ことを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が減少した後増加するので、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、緩衝作用を一旦小さくした後、再度大きくすることができる。
【0028】
前記第2受け部の進出に伴って、前記緩衝機構による緩衝作用を一旦小さくすることにより、前記第2受け部の進出開始直後の飛び出しの抑制と、緩衝作用が大きすぎて前記第2受け部の進出が完了しない状態となる虞の回避と、の双方を実現できる。
【0029】
更に、一旦小さくした前記緩衝機構による緩衝作用を再度大きくするので、前記第2受け部が前記進出位置に勢いよく到達することによる衝突音や振動を抑制できる。
【0030】
第10の態様は、第7の態様において、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が増加する、ことを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、前記第2受け部に対して作用する前記緩衝機構の数が増加するので、前記第2受け部の前記後退位置から前記進出位置に向かう移動に伴って、緩衝作用が大きくすることができる。
以って、前記第2受け部の進出開始後、しばらくは前記緩衝機構の作用を小さくして速い速度で前記第2受け部を移動させ、前記第2受け部が前記進出位置に近づいたら前記緩衝機構の作用を大きくし、前記第2受け部が前記進出位置まで勢いよく到達することによる衝突音や振動を抑制できる。
【0032】
第11の態様は、第1の態様から第10の態様のいずれかにおいて、前記規制手段は、前記移動部材を前記第1位置で規制する第1規制状態と、前記移動部材を前記第1位置よりも前記第2位置に近い下流位置で規制する第2規制状態と、を切り換え可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、前記規制手段は、前記移動部材を前記第1位置で規制する第1規制状態と、前記移動部材を前記第1位置よりも前記第2位置に近い下流位置で規制する第2規制状態と、を切り換え可能に構成されているので、前記自動進出動作において、前記第2受け部の前記進出位置を前記進出量の違う2つのポジションで選択可能にすることができる。
【0034】
第12の態様に係る媒体処理装置は、媒体に処理を行う処理部と、前記処理部による処理後の前記媒体を排出する第1の態様から第11の態様のいずれかに記載の前記媒体排出装置と、を備えることを特徴とする。
【0035】
本態様によれば、媒体に処理を行う処理部と、前記処理部による処理後の前記媒体を排出する前記媒体排出装置と、を備える媒体処理装置において、第1の態様から第11の態様のいずれかと同様の作用効果が得られる。
【0036】
第13の態様は、前記処理部として前記媒体に記録処理を行う記録部を備える記録装置である、ことを特徴とする第12の態様の媒体処理装置である。
本態様によれば、前記処理部として前記媒体に記録を行う記録部を備える記録装置において、第12の態様と同様の作用効果が得られる。
【0037】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態に係る媒体処理装置の一例である記録装置について、図を参照しつつ説明する。記録装置の一例として、インクジェットプリンター1について説明する。以下、インクジェットプリンター1を単にプリンター1という。
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は、X方向が装置幅方向であり、Y方向が装置奥行方向であり、Z方向が装置高さ方向である。また、+Y方向側を装置前方とし、-Y方向側を装置後方とする。また、装置前方から見て左側を+X方向、右側を-X方向とする。また、+Z方向を上方と言い、-Z方向側を下方と言う。また、プリンター1において媒体が搬送されていく搬送方向を「下流」と言い、これと反対の方向を「上流」と言う。
【0038】
<<<プリンターの概要>>>
以下、図1を参照して、プリンター1の概要について説明する。
図1に示すプリンター1は、媒体に記録処理を行う「記録部」としての記録ヘッド10を内部に備える装置本体部2と、装置本体部2の上部に設けられるスキャナー部3と、を備えて構成されている。記録ヘッド10は、媒体に処理を行う「処理部」の一例でもある。
プリンター1は、記録ヘッド10と、記録ヘッド10における記録処理後の媒体を排出する媒体排出装置30を備えている。
【0039】
記録ヘッド10は、装置幅方向であるX軸方向に移動可能なキャリッジ11に搭載されており、X軸方向に移動しながら液体であるインクを媒体に吐出して記録を行う、インクジェット式の記録ヘッドとして構成されている。
プリンター1において記録が行われる媒体としては、普通紙、薄紙、厚紙、写真用紙のようなコート紙等の記録用紙が挙げられる。
【0040】
本実施形態の装置本体部2の上部には、前述したスキャナー部3が設けられており、プリンター1は、記録機能だけでなく、原稿を読み取るスキャナー機能を備える複合機として構成されている。プリンター1の前面には、スキャナー部3を含むプリンター1を操作する操作部4が設けられている。操作部4は、記録動作や読取動作の開始や停止を指示する他、媒体または原稿のサイズや紙種等の設定情報を入力可能に構成されている。操作部4において入力された入力情報は、図2に示す制御部21に送られて、プリンター1における各種動作が制御される。
【0041】
プリンター1には、装置本体部2の下部に設けられ、記録を実行するための媒体を収容可能な媒体収容部5を備えている。媒体収容部5は、装置前方である+Y方向に引き出して媒体を収容することができる。また、プリンター1の後方上部には、記録を実行するための媒体をセット可能な媒体セット部6が設けられている。符号7は、媒体セット部6にセットされる媒体を支持するペーパーサポート7である。
プリンター1において、記録ヘッド10に向けて供給される媒体は、媒体収容部5からと、媒体セット部6からのいずれかから送られるようになっている。
装置本体部2内に設けられる記録ヘッド10によって記録処理が行われた後の媒体は、媒体排出装置30によって装置本体部2外に排出される。装置本体部2の前面には、装置本体部2から排出された媒体を受ける媒体受け部31が設けられている。
以下において、プリンター1における媒体の搬送経路について詳しく説明した後、媒体排出装置30に設けられる媒体受け部31の構成について詳しく説明する。
【0042】
<<<プリンターにおける媒体搬送経路>>>
図2を参照してプリンター1における媒体搬送経路について説明する。
図2において、符号T1で示す破線は、媒体収容部5からの媒体搬送経路を示している。以下、この経路を媒体搬送経路T1と言う。また、符号T2で示す一点鎖線は、媒体セット部6からの媒体搬送経路を示している。この経路を媒体搬送経路T2と言う。
まず、媒体搬送経路T1について説明する。
【0043】
図2において、符号Pは、装置本体部2の下部に設けられる媒体収容部5にセットされた媒体Pの束を表している。媒体収容部5の-Y方向の上部には、ピックアップローラー12、給送ローラー13、及び分離ローラー14が設けられている。
媒体収容部5に収容された媒体Pは、ピックアップローラー12によって最上位の媒体がピックアップされ、反転ローラー15に向けて送り出される。ピックアップローラー12が複数枚の媒体をピックアップした場合には、給送ローラー13と分離ローラー14とによって一枚に分離される。
【0044】
反転ローラー15は、その外周面で媒体Pを反転させつつ搬送するローラーである。媒体Pは、反転ローラー15によって反転されて、媒体収容部5において上を向いていた面が下を向いた状態で、下流に位置する送りローラー16に向けて送られ、更に下流に位置する搬送ローラー対17に送られる。
【0045】
搬送ローラー対17は、媒体搬送方向において、記録ヘッド10の上流に設けられている。媒体Pは、搬送ローラー対17によって記録ヘッド10と対向する領域に送られる。記録ヘッド10の下方、すなわち記録ヘッド10に対向する領域には、媒体Pを支持する媒体支持部材20が設けられている。媒体支持部材20に支持されつつ記録ヘッド10の下方を通過する媒体Pに対して記録ヘッド10からインクが吐出されて記録処理が行われる。
【0046】
尚、プリンター1には、記録ヘッド10に供給するインクを収容した不図示の液体収容体が設けられており、液体収容体から不図示のチューブを介してインクが記録ヘッド10に供給されるようになっている。また、媒体支持部材20には、媒体支持部材20の支持面に媒体Pを吸着する吸着機構を設けることができる。吸着機構には、例えば吸引吸着や静電吸着を用いることができる。
【0047】
プリンター1は、記録ヘッド10による記録処理後の媒体Pを排出する媒体排出装置30を備えている。媒体排出装置30は、記録ヘッド10の媒体搬送方向下流に設けられ、媒体Pを排出する「排出部」としての第1排出ローラー対18と第2排出ローラー対19と、第2排出ローラー対19によって排出される媒体Pを受ける媒体受け部31とを備えている。
記録処理後の媒体Pは、第1排出ローラー対18と第2排出ローラー対19とによって下流に送られ、媒体受け部31にスタックされる。尚、媒体受け部31の直上流の第2排出ローラー対19のみを「排出部」とみなすこともできる。
【0048】
媒体セット部6にセットされた媒体が搬送される媒体搬送経路T2は、合流部Gにおいて媒体搬送経路T1に合流し、これ以降は媒体搬送経路T1を搬送され、記録ヘッド10による記録処理が行われた後、第1排出ローラー対18及び第2排出ローラー対19によって媒体受け部31に排出される。
尚、プリンター1は、媒体Pの第1面への記録処理後の媒体を反転して、第1面の反対面である第2面にも記録処理を行う、いわゆる両面記録を実行可能に構成されている。本実施形態においては、媒体Pの第1面への記録処理後の媒体を反転する反転経路については説明を省略する。
【0049】
ここで、プリンター1は複数のサイズの媒体Pに対して記録を実行可能であり、媒体排出装置30は、媒体受け部31の媒体搬送方向(Y軸方向)における長さを変更可能に構成されている。以下において、媒体排出装置30について更に詳しく説明する。
【0050】
<<<媒体排出装置について>>>
媒体排出装置30は、図2に示すように、前述した第1排出ローラー対18及び第2排出ローラー対19と、媒体受け部31と、第1排出ローラー対18及び第2排出ローラー対19によって排出される媒体Pの長さを取得する媒体長取得手段35を備えている。媒体長取得手段35としては、一例として、媒体Pのサイズ設定の情報を入力可能な操作部4を用いることができる。
第1排出ローラー対18、第2排出ローラー対19、及び媒体受け部31は、装置本体部2に設けられている。
【0051】
<<<媒体受け部の装置本体部への着脱について>>>
媒体受け部31は、図3及び図4に示すように、装置本体部2から取り外し可能に構成されている。図3には、装置本体部2から取り外された媒体受け部31が示され、図4には、媒体受け部31が取り外された装置本体部2を示されている。
図4に示す装置本体部2には、取付部23が装置幅方向であるX軸方向に間隔を空けて複数設けられている。図3に示す媒体受け部31の-Y方向の端部には、取付部23(図4)に取り付けられる被取付部36が設けられている。被取付部36は、装置幅方向であるX軸方向に間隔を空けて、取付部23に対応するように複数設けられている。
媒体受け部31の被取付部36(図3)を、装置本体部2の取付部23(図4)に嵌合させることにより、図1に示すように媒体受け部31が装置本体部2に取り付けられて、プリンター1から排出される媒体Pを媒体受け部31で受けることが可能となる。
【0052】
媒体受け部31が、装置本体部2から取り外し可能に構成されていることにより、例えば、媒体受け部31を使用しない場合にはこれを取り外し、プリンター1の設置スペースを小さくすることができる。また、図4に示すように媒体受け部31を取り外すと、媒体収容部5の媒体収容スペースが露呈するので、媒体収容部5を少し引き出すだけで媒体収容部5に媒体を補充することができる。
【0053】
<<<媒体受け部の構成について>>>
図3に示す媒体受け部31は、第1受け部32と第2受け部33とを備えて構成されている。被取付部36は、第1受け部32の-Y方向の端部に設けられおり、媒体受け部31を装置本体部2に取り付けられた図1に示すプリンター1の状態において、装置本体部2に対する第1受け部32の相対位置は固定されている。
【0054】
第2受け部33は、第1受け部32に対してY軸方向に進退可能に構成されている。より具体的には、第2受け部33は、図1に示すように、第1排出ローラー対18及び第2排出ローラー対19による排出方向である+Y方向の先端が、第1受け部32に近い位置に配置される後退位置A1と、図5に示すように、第2受け部33の先端が後退位置A1よりも第1受け部32から離れた位置に配置される進出位置A2と、の間で変位可能に構成されている。第2受け部33は、図7に示されるように、幅方向(X軸方向)の両側に第2受け部用ガイド部38、38を備え、第2受け部用ガイド部38、38が、第1受け部32内に固定された第2受け部用ガイドレール82、82にガイドされてY軸方向に進退する。
尚、各図において、第2受け部33の後退位置A1や進出位置A2は、第2受け部33の+Y方向の先端の位置を基準として示している。
【0055】
本実施形態において、第2受け部33の後退位置A1(図1)は、第1受け部32の先端と、第2受け部33の先端とが同じ位置になる位置である。第2受け部33の進出位置A2(図5)は、第2受け部33の先端が、第1受け部32の先端よりも+Y方向に進出した位置である。
【0056】
また、図3に示す第2受け部33の先端には、補助受け部34が設けられている。補助受け部34は+Y方向に回動軸34aを有し、端部34bを自由端として回動可能に構成されており、図3或いは図5に示すように第2受け部33の載置面と略同一平面を成す状態と、図6に示すように、端部34bを自由端として回動軸34aを軸に回動し、第2受け部33の載置面と交差する方向に起立する状態と、を切り換え可能に構成されている。
【0057】
補助受け部34を、図6に示す起立状態とすることにより、例えば、媒体受け部31に排出された媒体Pが+Y方向にはみ出して載置されることを抑制できる。また、複数枚の媒体Pが媒体受け部31に載置された場合に、媒体Pの先端位置を揃えることができる。
補助受け部34は、第2受け部33が図1に示す後退位置A1に位置する場合でも、起立状態とすることができる。
【0058】
以上のように、媒体受け部31が、装置本体部2に対して固定される第1受け部32と、第1受け部32に対して進退可能な第2受け部33と、を備えることにより、媒体受け部31の排出方向の長さを変えることができる。
ここで、媒体排出装置30は、第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2への変位を、媒体Pのサイズに応じて自動で行う自動進出動作と、ユーザーが手動で行う他動進出動作と、の双方で行える様に構成されている。以下において、第2受け部33を後退位置A1から進出位置A2に変位させる変位機構について説明する。
【0059】
<<<第2受け部の変位機構について>>>
図3に示す媒体受け部31において、第1受け部32は、媒体Pの載置面を成す上部ユニット32aと、上部ユニット32aに設けられる下部ユニット32bとが組み合わされて形成されており、第2受け部33は、図7に示すように、上部ユニット32aと下部ユニット32bとの間のスペースに収容されるようになっている。図9は、第2受け部33が後退位置A1に位置する媒体受け部31において、第1受け部32の上部ユニット32aが外された状態を示している。尚、図9から図11に示す媒体受け部31は、第1受け部32の上部ユニット32aが外された状態で表されている。
【0060】
第2受け部33を後退位置A1から進出位置A2に変位させる変位機構は、図12に示すように、移動部材40と、押圧部材50と、規制手段60とを備えて構成されている。図12は、第2受け部33が後退位置A1に位置する媒体受け部31において、第1受け部32の下部ユニット32bが外された状態を示している。尚、図12から図14に示す媒体受け部31は、第1受け部32の下部ユニット32bが外された状態で表されている。
【0061】
<移動部材について>
移動部材40は、図8の上図に示す第1位置B1と、図8の下図に示すように、第1位置B1よりも第2受け部33の媒体排出方向下流、すなわち+Y方向に位置する第2位置B2と、の間で移動可能に構成されている。移動部材40は、第1位置B1から第2位置B2に向かう移動に伴って第2受け部33に当接して第2受け部33を進出位置A2に向けて押圧し、第2受け部33の後退位置A1への変位に伴って第2受け部33に押されて第1位置B1に移動する。
尚、図8において、移動部材40の第1位置B1や第2位置B2は、移動部材40の+Y方向の先端の位置を基準として示している。
【0062】
移動部材40は、図7に示されるように、幅方向(X軸方向)の両側に移動部材用ガイド部45、45を備え、移動部材用ガイド部45、45が、第2受け部用ガイドレール82、82よりも内側に配置された移動部材用ガイドレール81、81にガイドされてY軸方向に移動する。第2受け部33と移動部材40とは、それぞれ個別のガイドレール(第2受け部用ガイドレール82、82と移動部材用ガイドレール81、81)にガイドされている。
【0063】
より具体的には、移動部材40は、第2位置B2に向けて移動する場合、つまり、図8の上図から下図のように移動する場合に、第2受け部33に設けられる被当接部37に当接する当接部41を備えている。当接部41は、図8の上図に示す第1位置B1において、後退位置A1に位置する第2受け部33の被当接部37の直ぐ後方に位置している。
移動部材40を第2位置B2に向けて移動させると、移動部材40は、当接部41が第2受け部33の被当接部37に当接し、第2受け部33と一体に移動する。すなわち、第2位置B2に向けて移動する移動部材40によって第2受け部33を後方から押して、第2受け部33を進出方向に変位させることができる。移動部材40が第2位置B2まで移動すると、第2受け部33が進出位置A2にまで変位する。
移動部材40は、押圧部材50の押圧力により、第1位置B1から第2位置B2に移動される。
【0064】
<押圧部材について>
押圧部材50は、移動部材40を図8の下図に示す第2位置B2に向けて押圧する。本実施形態では、押圧部材50として捻りコイルバネが用いられている。押圧部材50は、図7に示すようにコイル軸51に設けられて下部ユニット32b側に取り付けられている。コイル軸51の両端にはギア52、52が設けられている。ギア52、52は、図12及び図13に示すように、移動部材40の下面に設けられるラック部44、44に噛合しており、ギア52、52を介して押圧部材50の押圧力が移動部材40に伝達される。
【0065】
押圧部材50は、移動部材40が図12に示す第1位置B1に位置する状態で、移動部材40に所定の押圧力を付与する。移動部材40が第1位置B1に位置する場合には、後に詳述する規制手段60が、押圧部材50の押圧力に抗して移動部材40の第2位置B2に向かう方向への移動を規制している。
規制手段60による規制が解除されると、図13に示されるように押圧部材50の押圧力により移動部材40が第2位置B2に移動する。
【0066】
<規制手段について>
規制手段60は、図12に示すように、第1位置B1に位置する移動部材40の後方(-Y方向)に設けられている。規制手段60は、押圧部材50の押圧力に抗して移動部材40の第2位置B2に向かう方向への移動を規制する規制状態(図12)と、規制状態を解除する規制解除状態(図13)とを切り換え可能に構成されている。
【0067】
規制手段60はフック部61(図15も参照)を有し、フック部61は回動軸62に設けられている。回動軸62は、下部ユニット32bの軸受63(図10参照)に軸支されている。回動軸62を回動させることにより、規制手段60の規制状態と規制解除状態とが切り換えられる。規制手段60の規制状態では、図15において実線で示すように、フック部61が移動部材40の後端に設けられる張り出し部42の孔部43に引っ掛けられ、移動部材40の+Y方向への移動が規制される。また、規制手段60の規制解除状態では、図15において点線で示すように、フック部61が孔部43から外れて移動部材40の移動規制が解除される。規制手段60による移動部材40の+Y方向への移動の規制が解除されると、図13に示すように移動部材40が第2位置B2に移動するとともに、これに伴って第2受け部33が進出位置A2に移動される。
【0068】
回動軸62の回動は、図9及び図10に示す駆動機構70により行われる。駆動機構70は、図9及び図10において図示を省略する装置本体部2に設けられている。本実施形態においては、駆動機構70は媒体受け部31の+X側に配置されている。図16及び図17は、図9及び図10における駆動機構70の周辺の拡大図である。
回動軸62は、不図示の押圧手段により、フック部61(規制手段60)が図15において点線で示す規制解除状態から実線で示す規制状態に向けて回動する方向に押圧されている。図16図9に対応しており、フック部61が規制状態であるときの図である。回動軸62の+X方向の端部にはレバー64が設けられており、フック部61が規制状態であるときには、レバー64は、駆動機構70のカム歯車71のレバー接触部71aと離間している。
【0069】
カム歯車71は、図18に示すモーター75の動力により回転軸72を中心に回動する。カム歯車71が図17に示すように矢印D方向に回動すると、カム歯車71のレバー接触部71aがレバー64を押し上げ、これにより回動軸62が不図示の押圧手段の押圧力に抗して矢印E方向(図15も参照)に回動する。このことにより、フック部61を規制状態から規制解除状態にすることができる。駆動機構70は、図2に示す制御部21により制御され、以って規制手段60の動作が制御される。すなわち、本実施形態において制御部21は、規制手段60の動作を制御する「規制手段制御部」である。
【0070】
図16及び図17に示す駆動機構70は、モーター75(図18)の回転軸に取り付けられる第1ギア74と、第1ギア74とカム歯車71との間に配置される第2ギア73とを備えている。図18に示すモーター75は、スケール76とエンコーダー77により回転の位相が検出されるように構成されている。
【0071】
また、駆動機構70は、図17に示されるように、カム歯車71の姿勢を検出するカム検出部78を備えている。カム検出部78としては、一例として光学式のセンサーが用いることができる。図16に示すように、カム歯車71がカム検出部78を覆い、カム検出部78によってカム歯車71が検出される場合には、カム歯車71はレバー接触部71aがレバー64から離間する姿勢をとり、図17に示すように、カム検出部78にカム歯車71が検出されなくなった場合には、カム歯車71はレバー接触部71aがレバー64を押し上げる姿勢をとっている。
カム検出部78によってカム歯車71の姿勢を検出することにより、レバー64を押し上げてフック部61(規制手段60)が規制解除状態にされたことを検出することができる。以上のような、移動部材40、押圧部材50、及び規制手段60により変位する第2受け部33は、媒体受け部31に排出される媒体Pの長さに応じて自動で進出位置A2に変位させることができる。
【0072】
更に媒体排出装置30は、媒体長取得手段35としての操作部4(図2)によって取得された媒体Pの長さが所定以上である場合に、制御部21(規制手段制御部)は、規制手段60の規制を解除し、押圧部材50の押圧力により移動部材40を第2位置B2に移動させるとともに第2受け部33を進出位置A2に変位させる。このように、移動部材40の第2位置B2への移動に伴って第2受け部33を進出位置A2に変位させる動作を、以下において「自動進出動作」と言う。
操作部4から入力された媒体Pのサイズの情報を基に、制御部21が媒体Pのサイズに応じて駆動機構70(図9)を制御して規制手段60の規制状態(図15において実線)と規制解除状態(図15において点線)とを切り換えることにより、媒体排出装置30から排出される媒体Pのサイズに応じて、媒体受け部31の長さを変えることができる。
【0073】
媒体長取得手段35は、操作部4で入力される設定を取得する制御部21を用いる場合の他、例えば、図2に示すように媒体搬送経路T1に設けられる媒体センサー22を用いて、搬送される媒体Pの長さを取得する構成とすることもできる。
【0074】
また、第2受け部33は、図7に示すように、移動部材40の前方(+Y方向)に配置されるとともに、移動部材用ガイドレール81、81とは別の第2受け部用ガイド部38、38が第2受け部用ガイドレール82、82にガイドされてY軸方向に進退可能である。したがって第2受け部33は、例えば第2受け部33を手で操作して、図11図14に示すように規制手段60によって移動が規制される移動部材40を第1位置B1に残したまま、後退位置A1から進出位置A2に変位させることができる。
すなわち、第2受け部33に対して外力を付与して、移動部材40から独立して第2受け部33を進出位置A2に変位させることができる。尚、このように第2受け部33が移動部材40以外から外力を受けて進出位置A2に変位される動作を、以下において「他動進出動作」と言う。
【0075】
第2受け部33には、モーター等の駆動系が直接連結されていないので、ユーザーが手で第2受け部33を動かす「他動進出動作」の際の操作が軽く良好な操作感とすることができる。
【0076】
制御部21による制御について図22を参照して説明する。制御部21は、ステップS1において媒体長取得手段35(操作部4)から媒体Pの長さを取得する。ステップS2において、取得した媒体Pの長さが所定の長さ以上であるか否かを判断する。媒体Pの長さが所定の長さ以上である場合、すなわち、ステップS2においてYESの場合、ステップS3に進み、規制手段60を規制解除状態にすることにより、移動部材40によって押圧して第2受け部33を進出位置A2に変位させる。一方、媒体Pの長さが所定の長さより短い場合、すなわち、ステップS2においてNOの場合、ステップS4に進み、規制手段60を規制状態のまま保持する。以上の制御により、媒体Pの長さに応じて第2受け部33を進出位置A2に変位させる「自動進出動作」を行うことができる。
【0077】
以上、説明した媒体排出装置30の構成により、媒体Pのサイズに応じて自動で行う「自動進出動作」とユーザーが手動で行う「他動進出動作」との双方を操作性良好に実現することができる。以って、媒体排出装置30におけるユーザーの使い勝手を向上させることができる。
尚、本実施形態において、第2受け部33の進出位置A2から後退位置A1への移動は、第2受け部33に対して-Y方向への外力を加えることにより行われる。図13に示すように、第2受け部33が「自動進出動作」によって進出位置A2に変位された場合には、後退位置A1に戻る第2受け部33と一体に移動部材40も第1位置B1に戻される。図14に示すように、第2受け部33が「他動進出動作」によって進出位置A2に変位された場合には、第2受け部33だけが後退位置A1に戻される。
【0078】
<<<媒体排出装置における他の構成>>>
媒体排出装置30には、「自動進出動作」によって進出位置A2に変位する第2受け部33の変位速度を減速させる緩衝機構53(図7図12)を設けることができる。緩衝機構53は、ダンパーと称される場合がある。本実施形態において緩衝機構53としては、ギア52に連結されてギア52の回転速度を減速する摩擦クラッチが用いられている。
緩衝機構53が設けられていることにより、押圧部材50の押圧力により第2受け部33を変位させる自動進出動作の際に、第2受け部33をゆっくりと進出方向に変位させることができる。
【0079】
本実施形態において、第1受け部32の傾斜と第2受け部33の傾斜とでは、第2受け部33の傾斜の方がやや大きい。このことにより、例えば補助受け部34を起立させていない状態でも、媒体Pが排出された勢いで排出方向に飛び出す虞を抑制することができる。以って、媒体受け部31における媒体Pのスタック性を高めることができる。
【0080】
また、前述した「他動進出動作」を行うため、第2受け部33は、移動部材40が第1位置B1にある場合に、移動部材40に対して媒体排出方向下流に移動可能に構成されている。移動部材40は、図11に示すように、第2受け部33との間で摩擦抵抗を生じさせる接触部40aを備えている。規制手段60によって移動が規制されて第1位置B1に位置する移動部材40の上面側の接触部40aに対して第2受け部33の下面91(図14)が進出方向に摺動し、進出位置A2に向けて変位する。移動部材40の接触部40aは、第2受け部33の下方に位置している。
【0081】
接触部40aを備えることにより、第2受け部33が、第1位置B1にある移動部材40に対して媒体排出方向下流に移動する際に、移動部材40と第2受け部33との間に摩擦抵抗を生じさせて、第2受け部33が移動部材40に対して勢いよく滑って移動することを抑制できる。
【0082】
また、第2受け部33及び移動部材40は、進出方向に向けて上方に傾斜しているので、「他動進出動作」によって進出させた第2受け部33が所望の位置で停止せず、自重で退避方向に下がる虞がある。
本実施形態において、移動部材40と第2受け部33との間の摩擦抵抗は、第2受け部33が、接触部40aとの間の摩擦抵抗によって進出方向における任意の位置で停止可能な大きさにされている。
【0083】
より具体的には、図19に示されるように、移動部材40の接触部40aには、接触部40aの上を摺動する第2受け部33に向かう方向に押圧力を発生する板バネ83が設けられている(図20の中図も参照)。接触部40aに、第2受け部33を押圧する板バネ83が設けられていることにより、接触部40aと第2受け部33との間の摩擦抵抗が高められ、進出した第2受け部33が自重で退避方向に下がる虞を低減することができる。また、第2受け部33の進出量を任意に調整することができる。
【0084】
本実施形態において板バネ83は、幅方向であるX軸方向に間隔を空けて複数設けられているが、例えば幅方向の中央部に一つでもよい。板バネ83の数の他、板バネ83の一つ一つの第2受け部33に対する接触面積を変えることもできる。
【0085】
板バネ83の先端には、山部84が設けられている。一方、第2受け部33の下部には、第2受け部33が図20の上図に示す後退位置A1にある場合に、山部84を受け入れる第1段差部92が設けられている。第1段差部92は、接触部40aに摺接する下面91から一段下がっている。第2受け部33の後退位置A1(図20の上図)において、板バネ83の山部84が第1段差部92に嵌まっていることにより、第2受け部33の後退位置A1からの不用意な変位を抑制することができる。また、第2受け部33が進出位置A2(図20の下図)から後退位置A1への変位が完了した場合に、山部84が第1段差部92に嵌まり込む感覚がクリック感として得られるので、第2受け部33の後退位置A1への変位を確実に行うことができる。
【0086】
また、第2受け部33の下部には、第2受け部33が図20の下図に示す進出位置A2にある場合に、山部84を受け入れる第2段差部93が設けられている。第2段差部93も、接触部40aに摺接する下面91から一段下がっている。第2受け部33の進出位置A2(図20の下図)において、板バネ83の山部84が第2段差部93に嵌まっていることにより、第2受け部33が進出位置A2から退避方向に変位することを抑制できる。また、第2受け部33の進出位置A2への変位が完了した場合に、山部84が第2段差部93に嵌まり込む感覚がクリック感として得られるので、第2受け部33の進出位置A2への変位を確実に行うことができる。
【0087】
板バネ83は、金属材料で形成した板バネ83を、一例として樹脂材料で形成される移動部材40に後付けして取り付けることができる。また、樹脂材料により移動部材40と一体成形して設けることも可能である。
【0088】
<規制手段の変更例>
図21を参照して、規制手段60の変更例である規制手段60Aについて説明する。
規制手段60Aは、図21の上図に示すように、移動部材40を第1位置B1で規制する第1規制状態と、図21の中図に示すように、移動部材40を第1位置B1よりも第2位置B2に近い下流位置B3で規制する第2規制状態と、を切り換え可能に構成されている。
【0089】
規制手段60Aは、二段に形成された第1フック部61Aと第2フック部61Bとを備えている。第1フック部61Aは、図15に示すフック部61に対応する形状をしており、図21の上図に示すように、移動部材40の孔部43に第1フック部61Aが掛けられている場合に、移動部材40は第1位置B1に位置している。
【0090】
第2フック部61Bは、第1フック部61Aよりも回動軸62Aから離れた位置に設けられている。図21の中図に示すように回動軸62Aを矢印E方向に少し回転させると、第1フック部61Aが孔部43から外れ、第1フック部61Aによる移動部材40の移動の規制は解除され、移動部材40が+Y方向に移動する。移動部材40は少し+Y方向に移動するが、孔部43に第2フック部61Bが掛かると移動部材40の+Y方向への移動が規制される。この構成により、移動部材40を、第1位置B1よりも第2位置B2に近い下流位置B3で規制することができる。
【0091】
図21の下図に示すように、回動軸62Aを矢印E方向に更に回転させると、第2フック部61Bが孔部43から外れ、移動部材40は第2位置B2まで移動する。
以上のように、二段に形成された第1フック部61Aと第2フック部61Bとを備える規制手段60Aを用いることにより、移動部材40を第1位置B1と第2位置B2との間の位置で止めることができる。以って、「自動進出動作」において、第2受け部33(図21において不図示)を段階的に進出させる構成とすることができる。フック部の段数は二段に限られず、三段以上とすることも勿論可能である。
【0092】
尚、「自動進出動作」を実行するか否かを操作部4で入力して設定可能に構成することもできる。「自動進出動作」を実行しないモードに設定して媒体Pの排出を行った際に、媒体長取得手段35によって取得された媒体Pの長さが所定以上である場合には、例えば、「自動進出動作」を実行するサイズであることをユーザーに知らせるアラートを発するようにするとよい。その際、「自動進出動作」を実行するか否かを再度選択できるようにすることもできる。
また、媒体排出装置30には、第2受け部33の位置を検出するトレイ位置検出手段を設けることもできる。
【0093】
また、押圧部材50は、捻りコイルバネを用いる構成に限られず、例えば、移動部材40の移動方向に伸縮する圧縮バネを用いることもできる。
【0094】
<緩衝機構の変更例>
以下、図7図12及び図13に示される緩衝機構53の変更例として、第1変更例から第3変更例について説明する。
図23から図26に示される第1変更例、図27に示される第2変更例、及び図28に示される第3変更例は、緩衝機構53が第2受け部33の移動方向であるY軸方向に並んで複数設けられ、第2受け部33の後退位置A1(図23)から進出位置A2(図26)に向かう移動に伴って、第2受け部33に対して作用する緩衝機構53の数が変化するように構成されている。
【0095】
本実施形態のように、押圧部材50として捻りコイルバネが用いられている場合、第2受け部33が進出位置A2(図26)から後退位置A1(図23)に変位し、移動部材40が第2位置B2(図26)から第1位置B1(図23)に移動する際に捻りコイルバネが巻かれる。規制手段60のフック部61による移動部材40の規制が解除されたら、押圧部材50としての捻りコイルバネの巻き込みの力が開放されて、移動部材40に対して押圧力を与える。ここで、捻りコイルバネによる押圧力は、巻き込みの力が開放された直後が最も大きく、次第に収束して小さくなる。
【0096】
このため、図7図12及び図13に示されるように一つの緩衝機構53を設けた場合、緩衝機構53の減速トルクが小さいと、緩衝作用、すなわち第2受け部33の変位速度を減速する作用が足りず、第2受け部33が進出直後に勢いよく飛び出す虞がある。
一方、緩衝機構53の減速トルクが大きいと緩衝作用は大きくなるので、第2受け部33の進出開始時の飛び出しを抑制できるが、次第に小さくなる押圧部材50の押圧力に対しての緩衝作用が過剰となり、媒体が排出されるまでに第2受け部33の進出が完了しない状態となる虞がある。
【0097】
第2受け部33の進出に伴い、第2受け部33に対して作用する緩衝機構53の数が変化するように構成されていることにより、第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2に向かう間に第2受け部33が受ける緩衝作用の度合いを変えることができる。以って、第2受け部33が進出する速さを調整できる。以下、第1変更例、第2変更例、第3変更例の順に詳しく説明する。
【0098】
まず、図23図26を参照して、第1変更例について説明する。
第1変更例では、第2受け部33の後退位置A1(図23)から進出位置A2(図26)に向かう移動に伴って、第2受け部33に対して作用する緩衝機構53の数が減少する。
【0099】
図23に示されるように、第1変更例は、緩衝機構53Aと緩衝機構53Bの二つを備えている。緩衝機構53Aは、ギア52と同軸に回転する外側ギア54に連結されてギア52の回転速度を減速するギアダンパーである。緩衝機構53Bは、-X方向側のラック部44に連結されて移動部材40の移動速度を減速するギアダンパーである。緩衝機構53Bは、Y軸方向において緩衝機構53Aと間隔を空けて下部ユニット32bに設けられている。
緩衝機構53A及び緩衝機構53Bは、移動部材40が+Y方向に移動する際の回転方向に力が加わると、その回転方向に対して所定のトルクを発生しつつ回転するように構成されている。
【0100】
第2受け部33が後退位置A1(図23)から+Y方向に進出し、図24に示されるように緩衝機構53Aがギア52に連結され、緩衝機構53Bがラック部44に連結されている状態では、第2受け部33は、緩衝機構53A及び緩衝機構53Bの双方の緩衝作用を受ける。
【0101】
第2受け部33が更に+Y方向に進むと、図25に示されるように緩衝機構53Bがラック部44から外れる。したがって、これ以降は、第2受け部33に対して緩衝機構53Bによる緩衝作用が作用しなくなる。第2受け部33は、図25の位置から図26に示される進出位置A2まで、緩衝機構53Aのみの緩衝作用を受けつつ進出する。
【0102】
緩衝機構53の数の増減は、緩衝作用の大小に対応する。つまり、緩衝機構53の数が減少すると、第2受け部33が受ける緩衝作用は小さくなる。
第1変更例のように、第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2に向かう移動に伴って、第2受け部33に対して作用する緩衝機構53の数が減少する構成により、第2受け部33が進出方向である+Y方向に移動する間に、緩衝作用が小さくなる構成を実現できる。
【0103】
つまり、規制手段60による規制状態(図23)から規制解除状態(図24)にされたばかりで押圧部材50の押圧力が大きい状態のときには、二つの緩衝機構53A、緩衝機構53Bによる大きい緩衝作用を第2受け部33に与え、第2受け部33の高速の飛び出しを抑制することができる。
また、押圧部材50としての捻りコイルバネの巻き込みが解けて、押圧部材50による押圧力が小さくなってきた場合には、緩衝機構53Aのみが第2受け部33の移動に対して作用するので、第2受け部33を減速させすぎることなく、第2受け部33を進出位置A2まで移動させることができる。
以って、第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2までの移動速度を安定させることができる。
【0104】
緩衝機構53は、二つの場合に限られず、三つ以上設けることも可能である。例えば、緩衝機構53Aと緩衝機構53Bとの間に、ラック部44と連結される不図示の緩衝機構を設けることができる。このことにより、緩衝機構53による緩衝作用を段階的に小さくすることができる。
【0105】
続いて、図27を参照して第2変更例について説明する。
第2変更例では、第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2に向かう移動に伴って、第2受け部33に対して作用する緩衝機構53の数が増加する。
【0106】
図27の左図及び右図に示されるように、第2変更例は、緩衝機構53Aと緩衝機構53Cの二つを備えている。緩衝機構53Aは、第1変更例と同様の構成である。緩衝機構53Cは、-X方向側のラック部44に連結されて移動部材40の移動速度を減速するギアダンパーであり、図27の右図に示されるようにラック部44に連結された状態と、図27の左図に示されるようにラック部44と連結されない状態と、を切り換え可能に構成されている。緩衝機構53Cは、Y軸方向において緩衝機構53Aに隣接する位置に配置され、下部ユニット32bに設けられている。
緩衝機構53Cも、移動部材40が+Y方向に移動する際の回転方向に力が加わった場合に、その回転方向に対して所定のトルクを発生しつつ回転するように構成されている。
【0107】
第2変更例では、第2受け部33が後退位置A1(図27の左図)から+Y方向に進出する際、緩衝機構53Cはラック部44と連結されない状態になっている。第2受け部33が後退位置A1から+Y方向に進出し始めて直ぐは、第2受け部33は緩衝機構53Aからのみの緩衝作用を受ける。
【0108】
第2受け部33が退避位置A1と進出位置A2との間の所定の位置まで進出したら、緩衝機構53Cをラック部44と連結し、これ以降、第2受け部33は緩衝機構53A及び緩衝機構53Cの双方の緩衝作用を受けて、図27の右図に示す進出位置A2まで進む。
緩衝機構53Cのラック部44との連結、非連結の切り換えは、一例としてモーターやソレノイド等の駆動源により行い、例えば第2受け部33の位置を検出するトレイ位置検出手段を設け、第2受け部33が所定の位置まで進出したら切り換えを行うように構成することができる。
【0109】
以上のような構成により、第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2に向かう移動に伴って、第2受け部33に対して作用する緩衝機構53の数が増加させ、緩衝作用を大きくする構成を実現できる。
第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2に向かう移動に伴って、緩衝機構53による緩衝作用を大きくすることにより、第2受け部33の移動開始後、しばらくは緩衝機構53の作用を小さくして速い速度で第2受け部33を移動させ、第2受け部33が進出位置A2に近づいたら緩衝機構53の作用を大きくし、第2受け部33が進出位置A2まで勢いよく到達することによる衝突音や振動を抑制できる。
【0110】
続いて、図28を参照して第3変更例について説明する。
第3変更例では、第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2に向かう移動に伴って、第2受け部33に対して作用する緩衝機構53の数が減少した後増加する。
【0111】
第3変更例の緩衝機構53は、第2変更例と同様の緩衝機構53A及び緩衝機構53Cを備えて構成されている。
第3変更例では、図28の左図に示されるように、第2受け部33が後退位置A1から+Y方向に進出を開始する際、緩衝機構53Cがラック部44と連結された状態になっている。
【0112】
第2受け部33が退避位置A1と進出位置A2との間の所定の位置まで進出したら、図28の右図に示されるように、緩衝機構53Cはラック部44と非連結状態にされる。これ以降、第2受け部33は緩衝機構53Aのみから緩衝作用を受けつつ進出する。
【0113】
そして、図示を省略するが、第2受け部33が更に進んで進出位置A2の手前まできたら、再度緩衝機構53Cをラック部44と連結する。これ以降、第2受け部33は緩衝機構53A及び緩衝機構53Cの双方の緩衝作用を受けつつ進出位置A2まで進む。
第3変更例においても、緩衝機構53Cのラック部44との連結、非連結の切り換えは一例としてモーターやソレノイド等の駆動源により行い、第2受け部33の位置を検出するトレイ位置検出手段を設けるなどして、第2受け部33が所定の位置まで進出したら切り換えるようにすることができる。
【0114】
以上のような構成により、第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2に向かう移動に伴って、第2受け部33に対して作用する緩衝機構53の数を減少させた後増加させ、以って、第2受け部33の後退位置A1から進出位置A2に移動する間に緩衝作用が一旦小さくなった後、再度大きくなる構成を実現できる。
【0115】
第3変更例は、規制手段60による規制状態(図28の左図)から規制解除状態にされて直ぐであって、押圧部材50(捻りコイルバネ)による押圧力が大きい状態では、二つの緩衝機構53A、緩衝機構53Cによる緩衝作用を第2受け部33に与え、第2受け部33の高速の飛び出しを抑制することができる。
一方、押圧部材50としての捻りコイルバネの巻き込みが解けて、押圧部材50による押圧力が小さくなってきた場合には、緩衝機構53Aのみが第2受け部33に対して作用するので、第2受け部33を減速させすぎることなく、第2受け部33を進出位置A2に向けて移動させることができる。
【0116】
更に、第2受け部33が進出位置A2に到達する直前で、再び緩衝機構53A及び緩衝機構53Cの双方の作用を第2受け部33が受けるので、第2受け部33が進出位置A2に勢いよく到達することによる衝突音や振動を抑制できる。
第1変更例から第3変更例において、緩衝機構53Bは、例えば+X方向側のラック部44に取り付けることも可能である。
【0117】
また、第2変更例及び第3変更例の緩衝機構53Cは、図27及び図28においては、ラック部44との非連結状態を分かり易くするためにX軸方向に変位するように表したが、Z軸方向に変位してラック部44との連結状態と非連結状態とを切り換える構成とすることもできる。
【0118】
尚、媒体排出装置30は、別の観点では、プリンター1から記録機能を省いた装置と捉えることもできる。或いは、記録機能を備えていても、媒体排出の観点に着目すれば、プリンター1そのものを媒体排出装置30と捉えることもできる。
【0119】
以上、媒体処理装置の一例としてプリンターを実施形態として説明したが、例えば、媒体に画像読み取り処理を行うスキャナーにおいても同様に対応することができる。
【0120】
また、本発明は上記において説明した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0121】
1…インクジェットプリンター(媒体処理装置、記録装置)、2…装置本体、3…スキャナー部、4…操作部、5…媒体収容部、6…媒体セット部、7…ペーパーサポート、10…記録ヘッド(処理部、記録部)、11…キャリッジ、12…ピックアップローラー、13…給送ローラー、14…分離ローラー、15…反転ローラー、16…送りローラー、17…搬送ローラー対、18…第1排出ローラー対(排出部)、19…第2排出ローラー対(排出部)、20…媒体支持部材、21…制御部、22…媒体センサー、23…取付部、30…媒体排出装置、31…媒体受け部、32…第1受け部、33…第2受け部、34…補助受け部、35…媒体長取得手段、36…被取付部、37…被当接部、38…第2受け部用ガイド部、40…移動部材、40a…接触部、41…当接部、42…張り出し部、43…孔部、44…ラック部、45…移動部材用ガイド部、50…押圧部材、51…コイル軸、52…ギア、53、53A、53B、53C…緩衝機構、60…規制手段、61…フック部、62…回動軸、63…軸受、64…レバー、70…駆動機構、71…カム歯車、71a…レバー接触部、72…回転軸、73…第2ギア、74…第1ギア、75…モーター、76…スケール、77…エンコーダー、78…カム検出部、81…移動部材用ガイドレール、82…第2受け部用ガイドレール、T1…媒体搬送経路、T2…媒体搬送経路、G…合流部、A1…後退位置、A2…進出位置
図1
図2
図3
図4
図5
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