(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】虚像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20221206BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2019017227
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】二宮 康徳
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116157(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016113945(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03327484(EP,A1)
【文献】特開2001-030799(JP,A)
【文献】実開昭55-179932(JP,U)
【文献】国際公開第2017/195741(WO,A1)
【文献】特開2001-105928(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145547(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/126457(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚像を表示する虚像表示装置であって、
前記虚像として結像される表示光を発する表示器(11)と、
前記表示器から発せられた前記表示光を反射する反射面(32)を有する反射鏡(31)と、
前記表示器及び前記反射鏡を収容すると共に、前記反射鏡に反射された前記表示光を外部へと射出する開口部(53)を有する筐体(5
1)と、を備え、
前記反射鏡は、前記筐体の外部の投影部(3)に前記表示光を投影し、前記虚像を結像させ、
前記筐体は、前記筐体の外部からの外光が前記開口部を介して前記筐体の内部へと入り込み、さらに前記反射面により反射されて到達することが想定され、前記筐体の外部に露出して前記投影部と対向する表面部の部位(61
a)において、共通の第1向き(D1)を向く複数の第1壁面(63)と、前記第1向きとは異なる向きであって、共通の第2向き(D2)を向く複数の第2壁面(64)とが設けられた壁面構造(62
,562)を、有し、
前記壁面構造は、前記表面部に沿って、前記第1壁面と前記第2壁面とを、1つずつ交互に連ねて形成され、
前記虚像が視認可能となる空間領域を、視認領域(EB)と定義し、
前記反射面の
上端(32a)から前記第1壁面へ向かう直線を、端基準第1直線(L1)と定義し、
前記端基準第1直線に対して前記第1壁面がつくる角度であり、前記端基準第1直線での前記第1壁面を挟んだ前記反射面の
上端とは反対側を基準とし前記端基準第1直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記第1壁面に現に設定されている角度を、端基準第1壁面角度(αe)と定義し、
前記端基準第1直線に対して前記第1壁面がつくる角度であり、前記端基準第1直線での前記第1壁面を挟んだ前記反射面の
上端とは反対側を基準とし前記端基準第1直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記反射面の
上端から前記端基準第1直線に沿って前記第1壁面に入射する光線(RB1)が、前記第1壁面に反射された後、前記視認領域の
上端(EBa)に到達するように、前記第1壁面に仮想的に設定される角度を、視認領域第1臨界角度(θ1)と定義し、
前記反射面の
下端(32b)から前記第2壁面へ向かう直線を、端基準第2直線(L2)と定義し、
前記端基準第2直線に対して前記第2壁面がつくる角度であり、前記端基準第2直線での前記第2壁面を挟んだ前記反射面の
下端とは反対側を基準とし前記端基準第2直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記第2壁面に現に設定されている角度を、端基準第2壁面角度(βe)と定義し、
前記端基準第2直線に対して前記第2壁面がつくる角度であり、前記端基準第2直線での前記第2壁面を挟んだ前記反射面の
下端とは反対側を基準とし前記端基準第2直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記反射面の
下端から前記端基準第2直線に沿って前記第2壁面に入射する光線(RB2)が、前記第2壁面に反射された後、前記視認領域の
下端(EBb)に到達するように、前記第2壁面に仮想的に設定される角度を、視認領域第2臨界角度(θ2)と定義すると、
各前記第1壁面及び各前記第2壁面に対して、前記端基準第1壁面角度は、前記端基準第2壁面角度よりも大きく、かつ、前記端基準第1壁面角度は、前記視認領域第1臨界角度よりも
小さく、かつ、前記端基準第2壁面角度は、前記視認領域第2臨界角度よりも
大きいという条件が成立する虚像表示装置。
【請求項2】
虚像を表示する虚像表示装置であって、
前記虚像として結像される表示光を発する表示器(11)と、
前記表示器から発せられた前記表示光を反射する反射面(32)を有する反射鏡(31)と、
前記表示器及び前記反射鏡を収容すると共に、前記反射鏡に反射された前記表示光を外部へと射出する開口部(53)を有する筐体(5
1)と、を備え、
前記反射鏡は、前記筐体の外部の投影部(3)に前記表示光を投影し、前記虚像を結像させ、
前記筐体は、前記筐体の外部からの外光が前記開口部を介して前記筐体の内部へと入り込み、さらに前記反射面により反射されて到達することが想定され、前記筐体の外部に露出して前記投影部と対向する表面部の部位(61
a)において、共通の第1向き(D1)を向く複数の第1壁面(63)と、前記第1向きとは異なる向きであって、共通の第2向き(D2)を向く複数の第2壁面(64)とが設けられた壁面構造(62
,562)を、有し、
前記壁面構造は、前記表面部に沿って、前記第1壁面と前記第2壁面とを、1つずつ交互に連ねて形成され、
視認者の眼の位置の分布に基づき予め規定される仮想の空間領域として、アイリプス(EL)を定義し、
前記反射面の
上端(32a)から前記第1壁面へ向かう直線を、端基準第1直線(L1)と定義し、
前記端基準第1直線に対して前記第1壁面がつくる角度であり、前記端基準第1直線での前記第1壁面を挟んだ前記反射面の
上端とは反対側を基準とし前記端基準第1直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記第1壁面に現に設定されている角度を、端基準第1壁面角度(αe)と定義し、
前記端基準第1直線に対して前記第1壁面がつくる角度であり、前記端基準第1直線での前記第1壁面を挟んだ前記反射面の
上端とは反対側を基準とし前記端基準第1直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記反射面の
上端から前記端基準第1直線に沿って前記第1壁面に入射する光線(RL1)が、前記第1壁面に反射された後、前記アイリプスの
上端(ELa)に到達するように、前記第1壁面に仮想的に設定される角度を、アイリプス第1臨界角度(φ1)と定義し、
前記反射面の
下端(32b)から前記第2壁面へ向かう直線を、端基準第2直線(L2)と定義し、
前記端基準第2直線に対して前記第2壁面がつくる角度であり、前記端基準第2直線での前記第2壁面を挟んだ前記反射面の
下端とは反対側を基準とし前記端基準第2直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記第2壁面に現に設定されている角度を、端基準第2壁面角度(βe)と定義し、
前記端基準第2直線に対して前記第2壁面がつくる角度であり、前記端基準第2直線での前記第2壁面を挟んだ前記反射面の
下端とは反対側を基準とし前記端基準第2直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記反射面の
下端から前記端基準第2直線に沿って前記第2壁面に入射する光線(RL2)が、前記第2壁面に反射された後、前記アイリプスの
下端(ELb)に到達するように、前記第2壁面に仮想的に設定される角度を、アイリプス第2臨界角度(φ2)と定義すると、
各前記第1壁面及び各前記第2壁面に対して、前記端基準第1壁面角度は、前記端基準第2壁面角度よりも大きく、かつ、前記端基準第1壁面角度は、前記アイリプス第1臨界角度よりも
小さく、かつ、前記端基準第2壁面角度は、前記アイリプス第2臨界角度よりも
大きいという条件が成立する虚像表示装置。
【請求項3】
前記反射面上の所定の第1所定点から前記第1壁面へ向かう直線を、所定点基準第1直線(L1f)と定義し、
前記所定点基準第1直線に対して前記第1壁面がつくる角度であり、前記所定点基準第1直線での前記第1壁面を挟んだ前記第1所定点とは反対側を基準とし前記所定点基準第1直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記第1壁面に現に設定されている角度を、所定点基準第1壁面角度(αf)と定義すると、
各前記第1壁面に対して、前記所定点基準第1壁面角度が+90度よりも大きく、かつ、+180度よりも小さく設定されている前記第1所定点は、前記反射面上に1点以上存在する請求項1
又は2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
各前記第1壁面は、前記反射面上の任意の点を前記第1所定点としてそれぞれ定義される各前記所定点基準第1壁面角度が、+90度よりも大きく、かつ、+180度よりも小さくなるように設定されている請求項
3に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記反射面上の所定の第2所定点から前記第2壁面へ向かう直線を、所定点基準第2直線(L2f)と定義し、
前記所定点基準第2直線に対して前記第2壁面がつくる角度であり、前記所定点基準第2直線での前記第2壁面を挟んだ前記第2所定点とは反対側を基準とし前記所定点基準第2直線より前記表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、前記第2壁面に現に設定されている角度を、所定点基準第2壁面角度(βf)と定義すると、
各前記第2壁面に対して、前記所定点基準第2壁面角度が-90度よりも大きく、かつ、0度よりも小さく設定されている前記第2所定点は、前記反射面上に1点以上存在する請求項
1から
3のいずれか1項に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
各前記第2壁面は、前記反射面上の任意の点を前記第2所定点としてそれぞれ定義される各前記所定点基準第2壁面角度が、-90度よりも大きく、かつ、0度よりも小さくなるように設定されている請求項
5に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記壁面構造は、前記反射面により反射されて前記第1壁面に到達する前記外光が前記第1壁面にさらに反射されると、前記第2壁面へ到達するように構成されている請求項1から
6のいずれか1項に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記壁面構造は、前記第1壁面及び前記第2壁面が連なる連なり方向(SD)にずれた複数の異勾配領域(A1,A2)を有し、
前記複数の異勾配領域間において、前記第1壁面の勾配及び前記第2壁面の勾配のうち少なくとも一方は、互いに異なるように設定されている請求項1から
7のいずれか1項に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記壁面構造が設けられた前記部位には、前記筐体の内部において、前記開口部を介して前記投影部と対向している部位が含まれている請求項1
から8のいずれか1項に記載の虚像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、虚像を表示する虚像表示装置が知られている。特許文献1に開示の装置では、表示器、反射鏡及び筐体が設けられている。反射鏡は、筐体の外部からの外光を透過光と反射光とに分けるようになっている。筐体の内壁には、鋸歯状の凹凸を有し、光吸収塗料が塗布された放熱部材が設けられており、反射鏡を透過した透過光が放熱部材により効率良く吸収され、熱に変換されるようになっている。そして、変換された熱は、外壁を通じて装置外へ放熱されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、外光が反射鏡の反射面に反射された後、筐体に表面部に入射し、さらに当該表面部に二次的に反射されて虚像の視認者の眼に到達してしまうことが懸念されている。外光の二次的な反射光が眼に到達すると、その眩しさから虚像の視認性が低下してしまう。しかしながら、特許文献1の装置では、反射鏡の反射面に反射された反射光については、十分な対策がなされていない。
【0005】
開示される目的のひとつは、虚像の視認性に優れた虚像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された態様のひとつは、虚像を表示する虚像表示装置であって、
虚像として結像される表示光を発する表示器(11)と、
表示器から発せられた表示光を反射する反射面(32)を有する反射鏡(31)と、
表示器及び反射鏡を収容すると共に、反射鏡に反射された表示光を外部へと射出する開口部(53)を有する筐体(51)と、を備え、
反射鏡は、筐体の外部の投影部(3)に表示光を投影し、虚像を結像させ、
筐体は、筐体の外部からの外光が開口部を介して筐体の内部へと入り込み、さらに反射面により反射されて到達することが想定され、筐体の外部に露出して投影部と対向する表面部の部位(61a)において、共通の第1向き(D1)を向く複数の第1壁面(63)と、第1向きとは異なる向きであって、共通の第2向き(D2)を向く複数の第2壁面(64)とが設けられた壁面構造(62,562)を、有し、
壁面構造は、表面部に沿って、第1壁面と第2壁面とを、1つずつ交互に連ねて形成さ、
虚像が視認可能となる空間領域を、視認領域(EB)と定義し、
反射面の上端(32a)から第1壁面へ向かう直線を、端基準第1直線(L1)と定義し、
端基準第1直線に対して第1壁面がつくる角度であり、端基準第1直線での第1壁面を挟んだ反射面の上端とは反対側を基準とし端基準第1直線より表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、第1壁面に現に設定されている角度を、端基準第1壁面角度(αe)と定義し、
端基準第1直線に対して第1壁面がつくる角度であり、端基準第1直線での第1壁面を挟んだ反射面の上端とは反対側を基準とし端基準第1直線より表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、反射面の上端から端基準第1直線に沿って第1壁面に入射する光線(RB1)が、第1壁面に反射された後、視認領域の上端(EBa)に到達するように、第1壁面に仮想的に設定される角度を、視認領域第1臨界角度(θ1)と定義し、
反射面の下端(32b)から第2壁面へ向かう直線を、端基準第2直線(L2)と定義し、
端基準第2直線に対して第2壁面がつくる角度であり、端基準第2直線での第2壁面を挟んだ反射面の下端とは反対側を基準とし端基準第2直線より表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、第2壁面に現に設定されている角度を、端基準第2壁面角度(βe)と定義し、
端基準第2直線に対して第2壁面がつくる角度であり、端基準第2直線での第2壁面を挟んだ反射面の下端とは反対側を基準とし端基準第2直線より表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、反射面の下端から端基準第2直線に沿って第2壁面に入射する光線(RB2)が、第2壁面に反射された後、視認領域の下端(EBb)に到達するように、第2壁面に仮想的に設定される角度を、視認領域第2臨界角度(θ2)と定義すると、
各第1壁面及び各第2壁面に対して、端基準第1壁面角度は、端基準第2壁面角度よりも大きく、かつ、端基準第1壁面角度は、視認領域第1臨界角度よりも小さく、かつ、端基準第2壁面角度は、視認領域第2臨界角度よりも大きいという条件が成立する。
また開示された態様のひとつは、虚像を表示する虚像表示装置であって、
虚像として結像される表示光を発する表示器(11)と、
表示器から発せられた表示光を反射する反射面(32)を有する反射鏡(31)と、
表示器及び反射鏡を収容すると共に、反射鏡に反射された表示光を外部へと射出する開口部(53)を有する筐体(51)と、を備え、
反射鏡は、筐体の外部の投影部(3)に表示光を投影し、虚像を結像させ、
筐体は、筐体の外部からの外光が開口部を介して筐体の内部へと入り込み、さらに反射面により反射されて到達することが想定され、筐体の外部に露出して投影部と対向する表面部の部位(61a)において、共通の第1向き(D1)を向く複数の第1壁面(63)と、第1向きとは異なる向きであって、共通の第2向き(D2)を向く複数の第2壁面(64)とが設けられた壁面構造(62,562)を、有し、
壁面構造は、表面部に沿って、第1壁面と第2壁面とを、1つずつ交互に連ねて形成され、
視認者の眼の位置の分布に基づき予め規定される仮想の空間領域として、アイリプス(EL)を定義し、
反射面の上端(32a)から第1壁面へ向かう直線を、端基準第1直線(L1)と定義し、
端基準第1直線に対して第1壁面がつくる角度であり、端基準第1直線での第1壁面を挟んだ反射面の上端とは反対側を基準とし端基準第1直線より表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、第1壁面に現に設定されている角度を、端基準第1壁面角度(αe)と定義し、
端基準第1直線に対して第1壁面がつくる角度であり、端基準第1直線での第1壁面を挟んだ反射面の上端とは反対側を基準とし端基準第1直線より表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、反射面の上端から端基準第1直線に沿って第1壁面に入射する光線(RL1)が、第1壁面に反射された後、アイリプスの上端(ELa)に到達するように、第1壁面に仮想的に設定される角度を、アイリプス第1臨界角度(φ1)と定義し、
反射面の下端(32b)から第2壁面へ向かう直線を、端基準第2直線(L2)と定義し、
端基準第2直線に対して第2壁面がつくる角度であり、端基準第2直線での第2壁面を挟んだ反射面の下端とは反対側を基準とし端基準第2直線より表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、第2壁面に現に設定されている角度を、端基準第2壁面角度(βe)と定義し、
端基準第2直線に対して第2壁面がつくる角度であり、端基準第2直線での第2壁面を挟んだ反射面の下端とは反対側を基準とし端基準第2直線より表面部の部位の露出側を正、その反対側を負とした角度であって、反射面の下端から端基準第2直線に沿って第2壁面に入射する光線(RL2)が、第2壁面に反射された後、アイリプスの下端(ELb)に到達するように、第2壁面に仮想的に設定される角度を、アイリプス第2臨界角度(φ2)と定義すると、
各第1壁面及び各第2壁面に対して、端基準第1壁面角度は、端基準第2壁面角度よりも大きく、かつ、端基準第1壁面角度は、アイリプス第1臨界角度よりも小さく、かつ、端基準第2壁面角度は、アイリプス第2臨界角度よりも大きいという条件が成立する。
【0007】
これらのような態様によると、筐体において、第1壁面と第2壁面とが1つずつ交互に連なった壁面構造が設けられている。この壁面構造は、筐体の表面部のうち、筐体の外部からの外光が開口部を介して内部へと入り込み、さらに反射鏡の反射面へと反射されて到達することが想定される部位に形成されている。したがって、反射面に反射された後、壁面構造に到達した外光について、当該壁面構造によって二次的に虚像の視認者の眼に到達することを抑制することが可能となる。少なくとも全ての二次的な反射光が眼に到達することが抑制される。したがって、視認者が外光の眩しさを感じ難くなる。
【0008】
また、第1壁面と第2壁面は、筐体の表面部に沿って配列されている。故に、構造の頂部が大きく突出して、表示器からの表示光による表示光路を阻害することが抑制される。表示光路の阻害の抑制によれば、表示光が良好に視認者の眼に到達し、虚像として結像される。以上により、虚像の視認性に優れた虚像表示装置を提供することができる。
【0010】
これらのような態様によると、上述の条件を満たすことにより、外光が反射面から壁面構造に到達して反射されることによる反射光は、視認領域又はアイリプスの内部に到達し難くなるため、虚像の視認と同時に、外光の二次的な反射光が眼に到達することが抑制される。したがって、視認者が虚像の視認時に外光の眩しさを感じ難くなり、当該虚像の視認性が高まる。
【0011】
なお、括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態のHUD装置の車両への搭載状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態の壁面構造を拡大して示す図であって、端基準第1壁面角度及び端基準第2壁面角度を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態の視認領域第1臨界角度を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態の視認領域第2臨界角度を説明するための図である。
【
図6】第1実施形態のアイリプス第1臨界角度を説明するための図である。
【
図7】第1実施形態のアイリプス第2臨界角度を説明するための図である。
【
図9】第1実施形態の角度の定義等を説明するための図である。
【
図10】第1実施形態の角度の定義等を説明するための図である。
【
図11】第1実施形態において、第1壁面に反射された外光が第2壁面に到達することを説明するための図である。
【
図12】第2実施形態における
図1に対応する図である。
【
図13】第2実施形態の壁面構造を拡大して示す図である。
【
図14】第3実施形態における
図1に対応する図である。
【
図16】
図15のXVI部を拡大して示す図であって、端基準第1壁面角度及び端基準第2壁面角度を説明するための図である。
【
図17】
図15のXVII部を拡大して示す図であって、所定点基準第1壁面角度及び所定点基準第2壁面角度を説明するための図である。
【
図18】
図15のXVIII部を拡大して示す図であって、端基準第1壁面角度及び端基準第2壁面角度を説明するための図である。
【
図19】
図15のXIX部を拡大して示す図であって、所定点基準第1壁面角度及び所定点基準第2壁面角度を説明するための図である。
【
図20】第4実施形態の壁面構造を拡大して示す図である。
【
図21】第5実施形態の第1条件成立領域と壁面構造との関係を示す図である。
【
図22】第5実施形態の第2条件成立領域と壁面構造との関係を示す図である。
【
図23】変形例3における一具体例を示す図である。
【
図24】変形例3における一具体例を示す図である。
【
図25】変形例3における一具体例を示す図である。
【
図26】変形例4における一具体例を示す図である。
【
図27】変形例4における一具体例を示す図である。
【
図28】変形例4における一具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、本開示の第1実施形態による虚像表示装置は、乗り物又は移動体としての車両1に用いられ、当該車両1のインストルメントパネル2に収容されるように構成されているヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置)10である。
【0015】
HUD装置10は、車両1のウインドシールド3へ向けて表示光を投影する。これによりHUD装置10は、車両1の乗員により視認可能な虚像を表示する。すなわち、ウインドシールド3にて反射される表示光が、車両1の室内に設定された視認領域EBに到達する。これにより、インストルメントパネル2とは対向して配置される座席に着座し、視認領域EBにアイポイントEPが位置する乗員は、当該表示光が結像されることによる虚像を知覚する。そして、乗員は、虚像として表示される各種情報を認識することができる。虚像表示される各種情報としては、例えば車速、燃料残量等の車両の状態を示す情報、又は視界補助情報、道路情報等のナビゲーション情報が挙げられる。
【0016】
以下において、特に断り書きがない限り、前、後、上、下、左及び右が示す各方向は、水平面上の車両1を基準として表記される。
【0017】
車両1のウインドシールド3は、例えばガラスないし合成樹脂により透光性の板状に形成され、インストルメントパネル2よりも上方に配置されている。ウインドシールド3は、前方から後方へ向かう程、インストルメントパネル2に対して離間するように傾斜して配置されている。ウインドシールド3は、車両1の室内側に、滑らかな凹面状又は平面状に形成された板面3aを、有している。こうしたウインドシールド3は、HUD装置10から表示光が投影される投影部として機能する。
【0018】
視認領域EBは、HUD装置10により表示される虚像が視認可能となる空間領域であって、アイボックスとも称される。ここでいう視認可能とは、例えば虚像全体が所定の輝度以上となり、表示内容を認識可能な状態を意味する。視認領域EBは、典型的には、車両1に設定されたアイリプスELと重なるように設定される。アイリプスELは、車種ごとに規定される仮想的な空間領域であり、乗員のアイポイントEPの空間分布を統計的に表したアイレンジに基づいて、仮想の楕円体状に設定されている(JISD0021:1998も参照)。例えばアイリプスELは、座席のヘッドレスト近傍に位置する。
【0019】
アイリプスELとしては、90パーセンタイルアイリプス、95パーセンタイルアイリプス、99パーセンタイルアイリプス等の、90パーセンタイル以上99パーセンタイル以下のアイリプスの採用が好ましい。本実施形態においては、90パーセンタイルアイリプスが採用されているものとする。
【0020】
このようなHUD装置10の具体的構成を、
図1,2を用いつつ、以下に説明する。HUD装置10は、表示器11、平面鏡21、凹面鏡31、制御ユニット41及び筐体51等により構成されている。
【0021】
表示器11は、例えば透過型の液晶式の表示器である。表示器11は、液晶パネル及びバックライトをケーシングに収容して形成されている。表示器11は、バックライトにより液晶パネルの画面12を透過照明することで、後に虚像として結像される表示光を発するようになっている。なお、表示器11としては、反射型の液晶式の表示器、エレクトロルミネッセンスを用いて自発光するEL表示器、レーザスキャナ方式の表示器、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing;登録商標)方式の表示器等を採用することもできる。表示器11における画面12は、例えば上方を向き、表示光が上方へ向けて発せられる。
【0022】
平面鏡21及び凹面鏡31は、表示器11から発せられた表示光を、ウインドシールド3へと導光する反射鏡である。平面鏡21は、例えば合成樹脂ないしはガラスにより、矩形板状に形成されている。平面鏡21は、その表面にアルミニウム等の金属膜を蒸着させること等により形成された反射面22を有している。反射面22は、滑らかな平面状に形成されている。平面鏡21は、表示器11に対して上方に位置し、反射面22は、前方かつ後方の斜め方向を向いている。表示器11から平面鏡21に入射した表示光は、反射面22により凹面鏡31へ向けて反射される。
【0023】
凹面鏡31は、例えば合成樹脂ないしガラスにより、矩形板状に形成されている。凹面鏡31は、その表面にアルミニウム等の金属膜を蒸着させること等により形成された反射面32を有している。反射面32は、中央部が凹むように湾曲することで、滑らかな凹面状に形成されている。凹面鏡31は、平面鏡21に対して前方に位置し、反射面32は、後方かつ上方の斜め方向を向いている。平面鏡21から凹面鏡31に入射した表示光は、反射面32により上方に位置するウインドシールド3へ向けて反射される。ここで、反射面32での反射によって、表示光は集光され、虚像は拡大される。
【0024】
より詳細に、ウインドシールド3での表示光の反射角は、フレネルの式を考慮して、45度よりも大きなブリュースター角近傍に設定されることが好ましい。故に、凹面鏡31の反射面32に反射された表示光の進行方向は、後方かつ上方の斜め方向に設定される。すなわち、凹面鏡31からウインドシールド3へ至る表示光路OPは、凹面鏡31を起点として上方かつ後方の斜め方向へ直線的に進行するように構成される。
【0025】
制御ユニット41は、調整スイッチ(図示しない)及び制御回路42等により構成されている。調整スイッチは、筐体51の外部の、例えば車両1のステアリングハンドル等に設置され、乗員により操作可能となっている。
【0026】
制御回路42は、少なくとも1つのプロセッサ、メモリ装置(例えば半導体メモリ)、入出力インターフェース等を基板上に実装した電子回路となっている。
【0027】
制御回路42は、表示器11を制御する。また制御回路42は、調整スイッチの操作に応じて、凹面鏡31及びその反射面32を、左右方向に延伸する回転軸31aのまわりに、所定の角度範囲に回動させることが可能となっている。こうした回動によって、反射面32による反射方向が調整される。すなわち表示光路OPの方向が若干変更されると共に、視認領域EB及び虚像が上下に移動するようになっている。
【0028】
筐体51は、例えば合成樹脂ないし金属により、遮光性を有する中空の箱状に形成されている。筐体51は、表示器11、平面鏡21及び凹面鏡31を内部に収容している。なお、制御回路42は、当該筐体51に対して例えば下方から組付けられる回路ケース43の内部に収容されている。
【0029】
筐体51は、底面部58とは内部の空間を挟んで反対側の天井部52にて、ウインドシールド3の位置する方向である上方に光学的に開口する開口部53を有している。開口部53は、筐体51の天井部52のうち一部分であって、比較的前方、すなわち凹面鏡31に対する上方に設けられている。これにより、開口部53は、凹面鏡31により反射された表示光を通過させて、筐体51の外部へと射出することが可能となっている。なお、開口部53は、透光性の薄板状に形成された防塵シートにより塞がれていてもよい。
【0030】
筐体51の天井部52のうち開口部53よりも後方においては、平面鏡21を上方から覆うように配置された天井壁54が形成されている。天井壁54は、斜め方向に構成された表示光路OPとの干渉を避けるように、当該表示光路OPに略並行して延伸している。
【0031】
こうした筐体51において内部又は外部に露出する表面部が形成されている。表面部のうち天井壁54により構成される部位には、筐体51の外部に露出してウインドシールド3と対向する部位61aが含まれている。
【0032】
こうした部位61aには、凹面鏡31の反射面32に反射された外光の到達が想定されている。例えば、筐体51の外部に配置されたウインドシールド3において、表示光が投影される部分よりも後方にずれた位置から、太陽光等の外光が当該ウインドシールド3を透過して前方かつ下方の斜め方向に進行し得る。こうした外光は、開口部53を介して筐体51の内部へと入り込み、凹面鏡31の反射面32にて反射される。そうすると、外光の反射面32における反射角は、表示光の反射角よりも小さいため、表示光路OPから若干下方にずれた部位61aに、当該外光が到達し得るのである。
【0033】
仮に、部位61aが単一の鏡面状に形成されていると、部位61aに到達した外光が当該部位61aに二次的に反射され、直接的に又はさらにウインドシールド3に反射されて、視認領域EBに到達してしまう可能性がある。そこで本実施形態では、
図2に示すように、部位61aにおいて、反射方向を制御可能な壁面構造62が形成されている。壁面構造62は、表示光路OPに略並行して延伸する表面部の部位61aに沿って、第1壁面63と第2壁面64とを、1つずつ交互に連ねて、ジグザグに(鋸刃状に)形成されている。なお、交互に連なることとは、第1壁面63及び第2壁面64の対が2対以上存在することを意味する。
【0034】
複数の第1壁面63は、共通の第1向きD1を向いている。これに対して複数の第2壁面64は、第1向きD1とは異なる向きであって、共通の第2向きD2を向いている。ここで共通の向きの意義は、概念的に共通と捉えることが可能であればよく、同じ壁面構造62中の第1壁面63の勾配同士又は第2壁面64の勾配同士が厳密に一致していることを要求するものではない。すなわち、各第1壁面63が例えば凹面鏡31側を向いていて、各第2壁面64が例えばウインドシールド3側を向いているなどと、概念的に捉えることが可能であればよい。
【0035】
各壁面63,64は、部位61aに並行する表示光路OPとは交差する方向、すなわち左右方向に延伸することで、平面状かつ細長いストライプ状を呈している。第1壁面63の幅及び第2壁面64の幅は、凹面鏡31の反射面32の寸法に対して十分小さく設定されており、本実施形態では例えば2cm以下、より好ましくは0.5mm以下に設定されているが、壁面63,64の数を少なくすることで10cm程度に大きく設定することもできる。さらには、各壁面63,64の幅は、互いに同じ幅でもよく、適宜異なっていてもよい。
【0036】
また、第1壁面63及び第2壁面64には、外光を吸収する塗膜が形成されている。塗膜を形成する代わりに、第1壁面63及び第2壁面64のシボ加工等により粗面状に形成してもよい。
【0037】
ここで、車両1の縦中心面(直進姿勢にある自動車の左右車輪間の中点を通る鉛直面)に平行な断面上における、各第1壁面63の角度及び各第2壁面64の角度について詳細に説明する。
【0038】
まず、反射面上端32aから所定の第1壁面63(より詳細には第1壁面63の幅方向中心部)へ向かう仮想の直線は、端基準第1直線L1と定義される。次に、端基準第1直線L1に対して第1壁面63がつくる角度であり、端基準第1直線L1での第1壁面63を挟んだ反射面上端32aとは反対側を基準とし端基準第1直線L1より上側を正、下側を負とした角度(正負の値を決め方は
図9,10も参照)であって、第1壁面63に現に設定されている角度は、端基準第1壁面角度αeと定義される。
【0039】
また、反射面下端32bから所定の第2壁面64(より詳細には第2壁面64の幅方向中心部)へ向かう仮想の直線は、端基準第2直線L2と定義される。次に、端基準第2直線L2に対して第2壁面64がつくる角度であり、端基準第2直線L2での第2壁面64を挟んだ反射面下端32bとは反対側を基準とし端基準第2直線L2より上側を正、下側を負とした角度(正負の値の決め方は
図9,10も参照)であって、第2壁面64に現に設定されている角度は、端基準第2壁面角度βeと定義される。
【0040】
ここで、端基準第1直線L1又は端基準第2直線L2より上側は、表面部の部位61aが上側に露出しているので、部位61aの露出側とも称する。また、端基準第1直線L1又は端基準第2直線L2より下側は、表面部の部位61aの構成基材部分である天井壁54が配置されているので、露出側に対する反対側とも称する。
【0041】
次に、
図3に示される角度θ1が定義される。端基準第1直線L1に対して第1壁面63がつくる角度であり、端基準第1直線L1での第1壁面63を挟んだ反射面上端32aとは反対側を基準とし端基準第1直線L1より上側を正、下側を負とした角度(正負の値の決め方は
図9,10も参照)であって、反射面上端32aから端基準第1直線L1に沿って第1壁面63に入射する仮想の光線RB1が、第1壁面63に反射された後、視認領域上端EBaに到達するように、第1壁面63に仮想的に設定される角度は、視認領域第1臨界角度θ1と定義される。
【0042】
また次に、
図4,5に示される角度θ2が定義される。端基準第2直線L2に対して第2壁面64がつくる角度であり、端基準第2直線L2での第2壁面64を挟んだ反射面下端32bとは反対側を基準とし端基準第2直線L2より上側を正、下側を負とした角度(正負の値の決め方は
図9,10も参照)であって、反射面下端32bから端基準第2直線L2に沿って第2壁面64に入射する仮想の光線RB2が、第2壁面64に反射された後、視認領域下端EBbに到達するように、第2壁面64に仮想的に設定される角度は、視認領域第2臨界角度θ2と定義される。
【0043】
そうすると、本実施形態の互いに隣接する第1壁面63及び第2壁面64に対しては、第1の関係として、αe>βeが成立している。また各第1壁面63について、第2の関係として、αe<θ1が成立している。また各第2壁面64について、第3の関係として、βe>θ2が成立している。このような第1,2,3の関係を同時に満たすことによって、凹面鏡31の反射面32から部位61aへ到達した外光は、第1壁面63に反射されても視認領域上端EBaよりさらに上方に到達する。また、かかる外光は、第2壁面64に反射されても視認領域下端EBbよりさらに下方に到達する。故に、反射面32により反射された外光が視認領域EBの内部へ到達することを抑制することができる。
【0044】
また、
図6に示される角度φ1が定義される。端基準第1直線L1に対して第1壁面63がつくる角度であり、端基準第1直線L1での第1壁面63を挟んだ反射面上端32aとは反対側を基準とし端基準第1直線L1より上側を正、下側を負とした角度(正負の値の決め方は
図9,10も参照)であって、反射面上端32aから端基準第1直線L1に沿って第1壁面63に入射する仮想の光線RL1が、第1壁面63に反射された後、アイリプス上端ELaに到達するように、第1壁面63に仮想的に設定される角度は、アイリプス第1臨界角度φ1と定義される。
【0045】
そして、
図7,8に示されるか角度φ2が定義される。端基準第2直線L2に対して第2壁面64がつくる角度であり、端基準第2直線L2での第2壁面64を挟んだ反射面下端32bとは反対側を基準とし端基準第2直線L2より上側を正、下側を負とした角度(正負の値の決め方は
図9,10も参照)であって、反射面下端32bから端基準第2直線L2に沿って第2壁面64に入射する仮想の光線RL2が、第2壁面64に反射された後、アイリプス下端ELbに到達するように、第2壁面64に仮想的に設定される角度は、アイリプス第2臨界角度φ2と定義される。
【0046】
そうすると、本実施形態の各第1壁面63及び各第2壁面64に対しては、第4の関係として、αe<φ1が成立している。第5の関係として、βe>φ2が成立している。このような第1、4、5の関係を同時に満たすことによって、凹面鏡31の反射面33から部位61aへ到達した外光は、第1壁面63に反射されてもアイリプス上端ELaよりさらに上方に到達する。また、かかる外光は、第2壁面64に反射されてもアイリプス下端ELbよりさらに下方に到達する。故に、反射面32により反射された外光がアイリプスELの内部へ到達することを抑制することができる。
【0047】
ここで、端基準第1直線L1とは別に、
図9に示すような所定点基準第1直線L1fが定義される。所定点基準第1直線L1fは、反射面32上の所定の第1所定点から所定の第1壁面63(より詳細には第1壁面63の幅方向の中心部)へ向かう仮想の直線である。次に、所定点基準第1直線L1fに対して第1壁面63がつくる角度であり、所定点基準第1直線L1fでの第1壁面63を挟んだ反射面上端32aとは反対側を基準とし所定点基準第1直線L1fより上側を正、下側を負とした角度であって、第1壁面63に現に設定されている角度は、所定点基準第1壁面角度αfと定義される。
【0048】
そうすると、各第1壁面63に対して、角度αfが90°<αf<180°の式で示される範囲に設定されている第1所定点が、反射面32上に1点以上存在している。1点以上存在している第1所定点は、反射面32上であれば、いずれの箇所に存在していてもよく、第1壁面63毎に異なっていてよい。
【0049】
特に本実施形態では、反射面32上の任意の点を第1所定点としてそれぞれ定義される角度αfが、90°<αf<180°の式で示される範囲に設定されている。ただし、任意の点を、仮想的に、反射面上端32aから反射面下端32bへ向けて漸次移動させていった場合に、αfは、離散的な値を取らず、かつ、極値を有しないのであることが通常である。故に、反射面上端32aを第1所定点として所定点基準第1直線L1fを定義し、角度αfが90°<αf<180°の式で示される範囲に設定され、かつ、反射面下端32bを第1所定点として所定点基準第1直線L1fを定義し、角度αfが90°<αf<180°の式で示される範囲に設定されていれば、任意の点でも条件が成立するとみなすことができる。
【0050】
またここで、端基準第2直線L2とは別に、
図10に示すような所定点基準第2直線L2fが定義される。所定点基準第2直線L2fは、反射面32上の所定の第2所定点から所定の第2壁面64(より詳細には第2壁面64の幅方向の中心部)へ向かう仮想の直線である。次に、所定点基準第2直線L2fに対して第2壁面64がつくる角度であり、所定点基準第2直線L2fでの第1壁面63を挟んだ反射面上端32aとは反対側を基準とし所定点基準第2直線L2fより上側を正、下側を負とした角度であって、第2壁面64に現に設定されている角度は、所定点基準第2壁面角度βfと定義される。
【0051】
そうすると、各第2壁面64に対して、角度βfが-90°<βf<0°の式で示される範囲に設定されている第2所定点が、反射面32上に1点以上存在している。1点以上存在している第2所定点は、反射面32上であれば、いずれの箇所に存在していてもよく、第1壁面63毎に異なっていてよい。
【0052】
特に本実施形態では、反射面32上の任意の点を第2所定点としてそれぞれ定義される角度βfが、-90°<βf<0°の式で示される範囲に設定されている。ただし、任意の点を、仮想的に、反射面上端32aから反射面下端32bへ向けて漸次移動させていった場合に、βfは、離散的な値を取らず、かつ、極値を有しないのであることが通常である。故に、反射面上端32aを第2所定点として所定点基準第2直線L2fを定義し、角度βfが-90°<βf<0°の式で示される範囲に設定され、かつ、反射面下端32bを第1所定点として所定点基準第1直線L1fを定義し、角度βfが-90°<βf<0°の式で示される範囲に設定されていれば、任意の点でも条件が成立するとみなすことができる。
【0053】
図11に示すように、第1壁面63と第2壁面64とが露出側(換言すると筐体51の外部側)の谷部に、鋭角γを形成するように連なっている。そして、部位61aに設けられた壁面構造62においては、凹面鏡31の反射面32により反射されて第1壁面63に到達する外光が当該第1壁面63にさらに反射されると、当該外光は、当該第1壁面63とは反射面32側に隣接して鋭角γを形成している第2壁面64へ到達する。また、上述のβfの範囲の設定により、反射面32により反射された外光は、第2壁面64へ直接入射することはない。
【0054】
また、壁面構造62にて各第1壁面63は、実質的に同じ勾配に形成されると共に、各第2壁面64は、実質的に同じ勾配に形成されている。なお、本実施形態に「勾配」と記載した物理量は、水平面状の車両1を基準とした座標系における各壁面63,64の傾き度合として定義される。
【0055】
これに対し、αe,αf,βe,θ1,θ2,φ1,φ2等の「角度」と記載した物理量は、各第1壁面63及び各第2壁面64それぞれの反射面32に対する相対位置に対応して、定義が異なる端基準第1直線L1又は端基準第2直線L2を基準とするものである。故に、仮に同じ角度αeをそれぞれの第1壁面63に適用したとしても、それぞれの第1壁面63に対応する角度の基準線が異なるので、同じ勾配にならないことに注意されたい。角度βeの第2壁面64への適用についても同様である。
【0056】
また、本実施形態では、反射面上端32aが「反射面の一端」に対応し、反射面下端32bが「反射面の他端」に対応している。「反射面の一端」と「反射面の他端」とは、当該反射面を挟んで対向するように配置されている。なお、鏡面状の反射面32が凹面鏡31の縁まで形成されていれば、反射面上端32a、反射面下端32bは凹面鏡31の上端、下端と実質的に一致する。鏡面状の反射面32が例えば遮光性の合成樹脂等からなる外枠部に囲まれていれば、当該外枠部を除外した鏡面状部分の上端が反射面上端32aであり、鏡面状部分の下端が反射面下端32bである。
【0057】
さらに本実施形態では、視認領域上端EBaが「視認領域の一端」に対応し、視認領域下端EBbが「視認領域の他端」に対応している。「視認領域の一端」と「視認領域の他端」とは、当該視認領域を挟んで対向するように配置されている。
【0058】
加えて本実施形態では、アイリプス上端ELaが「アイリプスの一端」に対応し、アイリプス下端ELbが「アイリプスの他端」に対応している。「アイリプスの一端」と「アイリプスの他端」とは、当該アイリプスを挟んで対向するように配置されている。
【0059】
(作用効果)
以上説明した第1実施形態の作用効果を以下に改めて説明する。
【0060】
第1実施形態によると、筐体51において、第1壁面63と第2壁面64とが1つずつ交互に連なった壁面構造62が設けられている。この壁面構造62は、筐体51の表面部のうち、筐体51の外部からの外光が開口部53を介して内部へと入り込み、さらに凹面鏡31の反射面32へと反射されて到達することが想定される部位61aに形成されている。したがって、反射面32に反射された後、壁面構造62に到達した外光について、当該壁面構造62によって二次的に虚像の視認者の眼に到達することを抑制することが可能となる。具体的に、第1壁面63及び第2壁面64は、互いに異なる向きD1,D2を向いているから、外光が第1壁面63と第2壁面64とで別方向に反射されるので、少なくとも全ての二次的な反射光が眼に到達することが抑制される。したがって、視認者が外光の眩しさを感じ難くなる。
【0061】
また、第1壁面63と第2壁面64は、筐体51の表面部に沿って配列されている。故に、構造62の頂部が大きく突出して、表示器11からの表示光による表示光路OPを阻害することが抑制される。表示光路OPの阻害の抑制によれば、表示光が良好に視認者の眼に到達し、虚像として結像される。以上により、虚像の視認性に優れたHUD装置10を提供することができる。
【0062】
また、第1実施形態によると、端基準第1壁面角度αeは、端基準第2壁面角度βeよりも大きく、かつ、端基準第1壁面角度αeは、視認領域第1臨界角度θ1よりも小さく、かつ、端基準第2壁面角度βeは、視認領域第2臨界角度θ2よりも大きい。このような条件を満たすことにより、外光が反射面32から壁面構造62に到達して反射されることによる反射光は、視認領域EBの内部に到達し難くなるため、虚像の視認と同時に、外光の二次的な反射光が眼に到達することが抑制される。したがって、視認者が虚像の視認時に外光の眩しさを感じ難くなり、当該虚像の視認性が高まる。
【0063】
また、第1実施形態によると、端基準第1壁面角度αeは、端基準第2壁面角度βeよりも大きく、かつ、端基準第1壁面角度αeは、アイリプス第1臨界角度φ1よりも小さく、かつ、端基準第2壁面角度βeは、アイリプス第2臨界角度φ2よりも大きい。このような条件を満たすことにより、外光が反射面32から壁面構造62に到達して反射することによる反射光は、アイリプスELの内部に到達し難くなるため、視認者に想定される通常のアイポイントEPにおいて、外光の二次的な反射光が眼に到達することが抑制される。したがって、視認者が外光の眩しさを感じ難くなり、虚像の視認性が高まる。
【0064】
また、第1実施形態によると、所定点基準第1壁面角度αfは、+90度よりも大きく、かつ、+180度よりも小さく設定される。このようにすると、反射面32に反射された外光が第1壁面63に反射されても、第2壁面64側へ向けて反射する可能性が高くなるため、視認者の眼に到達することを抑制することができる。
【0065】
また、第1実施形態によると、所定点基準第2壁面角度βfは、-90度よりも大きく、かつ、0度よりも小さく設定される。このようにすると、反射面32に反射された外光が直接的に第2壁面64に到達することが抑制される。
【0066】
また、第1実施形態によると、壁面構造62は、反射面32により反射されて第1壁面63に到達する外光が第1壁面63にさらに反射されると、第2壁面64へ到達するように構成されている。外光は、反射する毎に、筐体51の材料による吸収又は表面部での拡散等により、強度が低下していくので、当該外光を壁面構造62にて複数回反射させることにより、外光の強度を累積的に低下させることができる。故に、視認者が虚像の視認時に外光の眩しさを感じ難くなり、当該虚像の視認性が高まる。
【0067】
また、第1実施形態によると、壁面構造62は、表面部のうち、ウインドシールド3と対向する部位61aに設けられている。こうした部位61aで壁面構造62により反射方向が制御されることで、ウインドシールド3に二次的な反射光が入射することが抑制され、延いてはウインドシールド3から視認者の眼に二次的な反射光が到達することを抑制することができる。
【0068】
また、第1実施形態によると、筐体51の外部に露出してウインドシールド3と対向している部位61aに、壁面構造62が設けられている。こうした壁面構造62が表面部に沿っているから、二次的な反射光の眼への到達だけでなく、筐体51の外部にて当該筐体51が表示光路OPと干渉してしまう事態を抑制することができる。すなわち、開口部53から外部へと射出される表示光の表示光路OPの設計自由度が向上するので、虚像の高い視認性を容易に実現することができる。
【0069】
(第2実施形態)
図12,13に示すように、第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0070】
第2実施形態の制御ユニット241の制御回路242は、
図12に示すように、筐体251の内部に収容され、表示器11と凹面鏡31との間に形成された空間に配置されている。
【0071】
これに対応して、第2実施形態の筐体251は、その内部において、制御回路242と凹面鏡31との間を区画する区画部55を有している。区画部55は、略板状に形成された区画板56を有している。
【0072】
区画板56は、並行部56a及び折曲部56bを有している。並行部56aは、平面鏡21と凹面鏡31との間の表示光路OPよりも下方において、当該表示光路OPと略並行して延伸している。折曲部56bは、区画板56において最前方に配置され、並行部56aに対して下方に折り曲げられて形成されている。
【0073】
表面部のうち区画板56により構成される部位は、並行部56aから上方に露出し、開口部53を介してウインドシールド3と対向する部位261a、及び折曲部56bから後方に露出して凹面鏡31と対向する部位261bを含んでいる。
【0074】
部位261a,261bには、凹面鏡31の反射面32に反射された外光の到達が想定されている。例えば、筐体251の外部に配置されたウインドシールド3において、表示光が投影される部分よりも少し前方にずれた位置から、太陽光等の外光が当該ウインドシールド3を透過して下方に進行し得る。こうした外光は、開口部53を介して筐体251の内部へと入り込み、凹面鏡31の反射面32にて反射される。そうすると、外光の反射面32における反射角は、表示光の反射角よりも大きいため、平面鏡21と凹面鏡31との間の表示光路OPから若干下方にずれた部位261a,261bに、当該外光が到達し得るのである。
【0075】
したがって、第2実施形態では、
図13に示すように、部位261aに反射方向を制御する壁面構造262aが設けられ、部位261bに反射方向を制御するまた別の壁面構造262bが設けられている。各壁面構造262a,262bでは、第1,2実施形態と同様の関係を満たすように第1壁面63及び第2壁面64の角度が設定されている。ただし、壁面構造262aと壁面構造262bとの間では、凹面鏡31との相対的な位置が異なっているため、その具体的な形状が違って観察され得る。
【0076】
以上説明した第2実施形態によると、筐体251の内部において、開口部53を介してウインドシールド3と対向している部位261aに、壁面構造262aが設けられている。こうした壁面構造262aが表面部に沿っているから、二次的な反射光の眼への到達だけでなく、筐体251の内部にて当該筐体251が表示光路OPと干渉してしまう事態を抑制することができる。すなわち、筐体251の内部での表示器11及び凹面鏡31等の部材の配置の自由度が向上するので、虚像の高い視認性を容易に実現することができる。
【0077】
(第3実施形態)
図14~19に示すように、第3実施形態は第2実施形態の変形例である。第3実施形態について、第2実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0078】
第3実施形態において第1壁面63及び第2壁面64を1つずつ交互に連ねた壁面構造362は、表面部のうち、筐体351の内部にて左側を向くように露出する部位であって、筐体351の側壁部57により形成された部位361aに設けられている。
【0079】
図14,15に示すように、側壁部57は、底面部58ないし天井部52に対して略垂直に起立した板状に形成されている。また、部位361aは、平面鏡21の反射面22に対する斜め方向に延伸し、当該平面鏡21に隣接した位置に配置されている。特に本実施形態では、部位361aは、平面鏡21を左右に挟んだ両側に、それぞれ配置されている。
【0080】
こうした部位361aには、凹面鏡31の反射面32に反射された外光の到達が想定されている。例えば、早朝又は夕方において車両1に斜め入射する太陽光等の外光が、開口部53を介して筐体351の内部へと入り込み、凹面鏡31の反射面32にて反射される。そうすると、部位361aに到達することがある。当該外光が部位361aに反射され、それが平面鏡21に反射され、さらに凹面鏡31に反射され、ウインドシールド3に反射されることによって、視認領域EBないしアイリプスELへと到達する場合がある。
【0081】
こうした部位361aに設けられた壁面構造362では、
図16~19に示すように、第1壁面63及び第2壁面64は、上下方向に延伸した細長いストライプ状を呈している。第1実施形態とは延伸方向が異なるので、αe,αf,βe,βf,θ1,θ2,φ1,φ2等の角度の定義も、車両1の縦中心面に平行な断面上から、水平面上に置き換えて理解することができる。また、第1実施形態の「反射面上端32a」「上方」を「反射面左端32c」「左方」に、「反射面下端32b」「下方」を「反射面右端32d」「右方」に、それぞれ置き換えて理解することができる。外光の反射方向との関係に応じて、さらに左右を逆にして理解することができる。このように、角度が定義される断面は、鉛直面に限られず、第1壁面63及び第2壁面64の連なり方向を含む断面として理解することができる。
【0082】
以上説明した第3実施形態によると、壁面構造362は、表面部のうち、側壁部57により形成された部位361aに設けられている。こうした部位361aでの反射方向が制御されることにより、二次的な反射光が視認者の眼へ到達することの抑制効果は、比較的に高まる。
【0083】
(第4実施形態)
図20に示すように、第4実施形態は第1実施形態の変形例である。第4実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0084】
第4実施形態の部位61aに設けられた壁面構造462における第1壁面63の勾配及び第2壁面64の勾配のうち少なくとも一方は、連なり方向SDに沿って当該壁面構造462の一端部65aから他端部65bへ向かうに従って、漸次変化している。連なり方向SDとは、第1壁面63と第2壁面64とが1つずつ交互に連なっている方向である。また、ここでいう漸次変化には、以下に述べる領域毎の階段的な変化の他、壁面1つ毎に少しずつ変化するスロープ的な変化が含まれる。
【0085】
特に本実施形態では、壁面構造462は、勾配の設定が互いに異なる複数の異勾配領域A1,A2を有している。複数の異勾配領域A1,A2は、壁面構造462を連なり方向SDに分割するように、互いに連なり方向SDにずれて設定されている。本実施形態では、異勾配領域A1,A2間において、第1壁面63の勾配及び第2壁面64の勾配の両方が異なるように設定されている。
【0086】
以上説明した第4実施形態によると、複数の異勾配領域A1,A2間において、勾配をより適切に設定することができる。したがって、壁面構造462を設ける部位61aが反射面32と至近距離に存在したり、当該部位61aの連なり方向SDの寸法が大きい場合であっても、反射面32との相対関係に応じてより適切な第1壁面63の勾配又は第2壁面64の勾配を設定し、二次的な反射光が視認者の眼へ到達することの抑制効果を容易に高めることができる。
【0087】
(第5実施形態)
図21,22に示すように、第5実施形態は第1実施形態の変形例である。第5実施形態について、第5実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0088】
第5実施形態の部位61aに設けられた壁面構造562において、互いに隣接する第1壁面63及び第2壁面64については、第1実施形態とは若干異なる角度関係が成立している。
【0089】
具体的に、凹面鏡31の反射面32は、第1条件成立領域B1及び第2条件成立領域B2の2つの領域に仮想的に分割されている。この第1条件成立領域B1及び第2条件成立領域B2は、壁面構造562を構成する全ての第1壁面63及び第2壁面64に対して共通に設定されていてもよい。あるいは、互いに隣接する第1壁面63及び第2壁面64の各対に対して、第1条件成立領域B1及び第2条件成立領域B2の境界が個別に異なるように設定されていてもよい。
【0090】
例えば、第1条件成立領域B1は、反射面32のうち第2条件成立領域B2よりも反射面下端32b側に配置され、第2条件成立領域B2は、反射面32のうち第1条件成立領域B1よりも反射面上端32a側に配置されている。2つの領域B1,B2により反射面32の全体が占有されている。
【0091】
ここで、互いに隣接する第1壁面63及び第2壁面64の1つの対について、車両1の縦中心面に平行な断面上における、各第1壁面63の角度及び各第2壁面64の角度を詳細に説明する。
【0092】
まず、
図21に示すように、第1条件成立領域上端B1aから第1壁面63(より詳細には第1壁面63の幅方向中心部)へ向かう仮想の直線は、端基準第1直線L1と定義される。次に、端基準第1直線L1に対して第1壁面63がつくる角度であり、端基準第1直線L1での第1壁面63を挟んだ反射面上端32aとは反対側を基準とし端基準第1直線L1より上側を正、下側を負とした角度(正負の値の決め方は
図9,10も参照)であって、第1壁面63に現に設定されている角度は、端基準第1壁面角度αeと定義される。
【0093】
また、第1条件成立領域下端B1bから第2壁面64(より詳細には第2壁面64の幅方向中心部)へ向かう仮想の直線は、端基準第2直線L2と定義される。次に、端基準第2直線L2に対して第2壁面64がつくる角度であり、端基準第2直線L2での第2壁面64を挟んだ反射面下端32bとは反対側を基準とし端基準第2直線L2より上側を正、下側を負とした角度(正負の値の決め方は
図9,10も参照)であって、第2壁面64に現に設定されている角度は、端基準第2壁面角度βeと定義される。
【0094】
そして、今定義された直線L1,L2に基づいて、第1実施形態と同様に、視認領域第1臨界角度θ1、視認領域第2臨界角度θ2、アイリプス第1臨界角度φ1、アイリプス第2臨界角度φ2が、それぞれ定義される。
【0095】
そうすると、αe>βeが成立し、また、αe<θ1、βe>θ2が成立し、また、αe<φ1、βe>φ2が成立している。すなわち、反射面32の一部分である第1条件成立領域B1に対しては、当該領域B1に反射された外光の視認領域及びアイリプスのうち少なくとも一方への到達を抑制する角度設定となっている。
【0096】
また、
図22に示すように、端基準第1直線L1とは別に、所定点基準第1直線L1fが定義される。所定点基準第1直線L1fは、第2条件成立領域B2上の所定の第1所定点から所定の第1壁面63(より詳細には第1壁面63の幅方向の中心部)へ向かう仮想の直線である。今定義された直線L1fに対しても、第1実施形態と同様に、所定点基準第1壁面角度αfが定義される。
【0097】
そうすると、互いに隣接する第1壁面63及び第2壁面64のうち第1壁面63は、第2条件成立領域B2上の任意の点を第1所定点としてそれぞれ定義される各所定点基準第1壁面角度αfが、+90度よりも大きく、かつ、+180度よりも小さくなるように設定されている。すなわち、第2条件成立領域B2上のあらゆる点に対して、所定点基準第1壁面角度αfが、上記関係を成立させる。
【0098】
また、端基準第2直線L2とは別に、所定点基準第2直線L2fが定義される。所定点基準第2直線L2fは、第2条件成立領域B2上の所定の第2所定点から所定の第2壁面64(より詳細には第2壁面64の幅方向の中心部)へ向かう仮想の直線である。今定義された直線L2fに対しても、第1実施形態と同様に、所定点基準第2壁面角度βfが定義される。
【0099】
そうすると、互いに隣接する第1壁面63及び第2壁面64のうち第2壁面64は、第2条件成立領域B2上の任意の点を第1所定点としてそれぞれ定義される各所定点基準第2壁面角度βfが、+90度よりも大きく、かつ、+180度よりも小さくなるように設定されている。
【0100】
したがって、反射面32にて第1条件成立領域B1を除く第2条件成立領域B2に対しては、当該領域B2に反射された外光が第1壁面63に反射されても、第2壁面64へ向けて反射する可能性が高い角度設定が成立している。また、反射面32にて第1条件成立領域B1を除く第2条件成立領域B2に対しては、当該領域B2に反射された外光が直接的に第2壁面64に到達し難い角度設定が成立している。
【0101】
以上説明した第5実施形態によると、反射面32を2つの領域B1,B2に分割して、互いに異なる作用を以って、視認者が外光の眩しさを感じ難くなるような角度条件を各領域B1,B2に成立させている。したがって、反射面32の面積に関わらず、虚像の視認性を高めることを容易に実現することができる。
【0102】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0103】
具体的に第1,4,5実施形態に関する変形例1としては、筐体51の底面部58において、上方に露出し、開口部53を介してウインドシールド3と対向する部位に、壁面構造62が形成されていてもよい。
【0104】
変形例2としては、表示光が投影される投影部として、車両1とは別体に設けられたコンバイナが採用されてもよい。
【0105】
変形例3としては、壁面構造62は、筐体51における各種形状部分に適用することができる。
図23に示すように、壁面構造62は、凸状曲板の表面部に配置することができる。
図24に示すように、壁面構造62は、凹状曲板の表面部に配置することができる。
図25に示すように、壁面構造62は、凹状に折れ曲がるコーナーの表面部に配置することができる。
【0106】
変形例4としては、第1壁面63及び第2壁面64のうち少なくとも一方は、平面状ではなく曲面状に形成することができる。
図26の例では、第2壁面64が平面状に形成されている一方、第1壁面63は、凹状に湾曲した円筒面状に形成されている。
図27の例では、第1壁面63が平面状に形成されている一方、第2壁面64は、凹状に湾曲した円筒面状に形成されている。
図28の例では、第1壁面63が凹状に湾曲した円筒面状に形成され、第2壁面64が凸状に湾曲した円筒面状に形成されている。
【0107】
変形例5としては、壁面構造62は、外光が平面鏡21の反射面22により反射されて到達することが想定される表面部に、設けられてもよい。
【0108】
変形例6としては、反射鏡91は、
図29に示すように3つ以上設けられてもよい。反射鏡について、表示光路OPの開口部53側から第1ミラー91a、第2ミラー91b、第3ミラー91cと付番した場合、
図30に示す各種組み合わせを採用することができる。
【0109】
変形例7としては、第1実施形態に示した第1~5の関係のうち、第1,2,3の関係を満たし、第4,5の関係を満たさないように、角度αe,βeが設定されていてもよい。また、第1,4,5の関係を満たし、第2,3の関係を満たさないように、角度αe,βeが設定されていてもよい。
【0110】
変形例8としては、第1壁面63と第2壁面64とは、表面部の露出側谷部に、鈍角を形成するように連なっていてもよい。
【0111】
変形例9としては、虚像表示装置は、航空機、船舶、あるいは移動しない乗り物(例えばゲーム筐体)等の各種の乗り物に適用することができる。
ここまで説明した実施形態及び変形例から把握される技術的思想を、付記1として以下に記載する。
(付記1)
虚像を表示する虚像表示装置であって、
前記虚像として結像される表示光を発する表示器(11)と、
前記表示器から発せられた前記表示光を反射する反射面(32)を有する反射鏡(31
)と、
前記表示器及び前記反射鏡を収容すると共に、前記反射鏡に反射された前記表示光を外
部へと射出する開口部(53)を有する筐体(51,251,351)と、を備え、
前記筐体は、前記筐体の外部からの外光が前記開口部を介して前記筐体の内部へと入り
込み、さらに前記反射面により反射されて到達することが想定される表面部の部位(61
a,261a,261b,361a)において、共通の第1向き(D1)を向く複数の第
1壁面(63)と、前記第1向きとは異なる向きであって、共通の第2向き(D2)を向
く複数の第2壁面(64)とが設けられた壁面構造(62,262a,262b,362
,462,562)を、有し、
前記壁面構造は、前記表面部に沿って、前記第1壁面と前記第2壁面とを、1つずつ交
互に連ねて形成されている虚像表示装置。
【符号の説明】
【0112】
10 HUD装置、11 表示器、31 反射鏡(凹面鏡)、32 反射面、51 筐体、53 開口部、61a,261a,261b,361a 部位、62,262a,262b,362,462 壁面構造、63 第1壁面、64 第2壁面、D1 第1向き、D2 第2向き