(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】助手席用エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2334 20110101AFI20221206BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20221206BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2019019159
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】細江 幸治
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/141616(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0097602(US,A1)
【文献】特開2017-065395(JP,A)
【文献】特開2018-012403(JP,A)
【文献】特開2017-061230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/2334
B60R 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の助手席前方に配置されるインストルメントパネルに設けられた収納部位に折り畳まれて収納され、
膨張完了時の後面側に配置されて乗員を受け止める乗員側壁部と、該乗員側壁部の外周縁から膨張完了時の前端側にかけて収束するように形成されて前端側
が前記収納部位側に取り付けられる車体側壁部
とを有す
る助手席用エアバッグであって、
前記車体側壁部は、
前記助手席用エアバッグ内に膨張用ガスを流入させるためのガス流入口と、前記助手席用エアバッグ内の前記膨張用ガスを排気するためのベントホールとを有するバッグ用パネルによって形成されており、
前記バッグ用パネルの外周縁から離れた位置であり、且つ前記ガス流入口と前記ベントホールとの間の位置に摘み部を設けることにより形成された、前記助手席用エアバッグの膨張完了時の隣接部材との干渉を防止するための凹部を有し、
前記摘み部
は、前記バッグ用パネルを平らに展開した状態での相互の離隔した結合予定部相互を結合させ
て形成されていることを特徴とする助手席用エアバッグ。
【請求項2】
前記摘み部が、前記結合予定部相互の間の結合代を、前記エアバッグの内周面側に配置させるように、形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の助手席用エアバッグ。
【請求項3】
前記凹部が、前記インストルメントパネルの左右方向の中央側部位に配設された前記隣接部材との干渉を防止するように、膨張完了時の前記車体側壁部における車両の車幅方向中央側の部位に、配設されていることを特徴とする請求項1又
は2に記載の助手席用エアバッグ。
【請求項4】
膨張完了時の前記乗員側壁部が、前記収納部位の後方側の部位を中心として、車外側部位より、前記凹部の後方側となる車内側部位を、拡張させた形状として、配設されていることを特徴とする請求項
3に記載の助手席用エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の助手席前方に配置されるインストルメントパネルに設けられた収納部位に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時、収納部位から助手席側となる後方側へ展開膨張する助手席用のエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、助手席用エアバッグとしては、膨張完了時、ナビゲーションシステムのモニタと干渉しないように、干渉防止用の凹部を備えて構成されるものがあった(例えば、特許文献1参照)。このエアバッグは、膨張完了時の後面側に配置されて乗員を受け止める乗員側壁部と、乗員側壁部の外周縁から膨張完了時の前端側にかけて収束するように形成されて前端側を収納部位側に取り付けられる車体側壁部と、を有して、車体側壁部の部位には、膨張完了時の隣接部材としてのモニタとの干渉防止用の凹部が、形成されていた。凹部は、凹部の底部付近における車両の車幅方向の中央側となる車体側壁部の車内側の壁部と、車体側壁部の車外側の壁部と、の距離を縮めるように、相互を連結するテザーを設けて、形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の助手席用エアバッグでは、車体側壁部と別体となる凹部形成用のテザーが必要となり、さらに、車体側壁部の左右に離隔される壁部の部位相互に、それぞれ、テザーの左右の端部を結合させる必要があり、エアバッグを構成する部品点数が増え、また、エアバッグの製造工数を増大させることから、干渉防止用の凹部を簡便に構成することが望まれる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、干渉防止用の凹部を簡便に形成できる助手席用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る助手席用エアバッグは、車両の助手席前方に配置されるインストルメントパネルに設けられた収納部位に折り畳まれて収納され、
膨張完了時の後面側に配置されて乗員を受け止める乗員側壁部と、該乗員側壁部の外周縁から膨張完了時の前端側にかけて収束するように形成されて前端側を前記収納部位側に取り付けられる車体側壁部と、を有するとともに、前記車体側壁部の部位に、膨張完了時の隣接部材との干渉防止用の凹部が形成されている助手席用エアバッグであって、
該凹部が、前記車体側壁部を形成するバッグ用パネルに、摘み部を設けて、形成される構成として、
前記摘み部が、前記バッグ用パネルを平らに展開した状態での相互の離隔した結合予定部相互を結合させて、形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る助手席用エアバッグでは、干渉防止用の凹部が、車体側壁部を形成するバッグ用パネルを平らにした状態での離隔した結合予定部相互を結合させるように、摘み部を形成することにより、形成されて、バッグ用パネル自体で形成されており、部品点数を増加させずに、凹部を形成できる。また、摘み部を設けて接触するように重ねた部位相互を結合させるだけで、凹部を形成できて、左右両側に大きく離れた部位を連結するようなテザーと異なり、バッグ用パネル自体の結合作業で行えることから、簡単な結合作業により、容易に凹部を形成できる。なお、バッグ用パネル部に摘み部を形成すれば、その摘まんだ折目と略直交する方向のパネルの長さ寸法を実質的に狭めて、横断面から見れば、摘み部から離れた部位相互を、摘み部を屈曲部として、接近させる形状となって、摘み部を底部とした凹部を形成できることとなる。
【0008】
したがって、本発明に係る助手席用エアバッグでは、摘み部を配設するだけで、干渉防止用の凹部を簡便に形成することができる。
【0009】
そして、本発明に係る助手席用エアバッグでは、前記摘み部が、前記バッグ用パネルの外周縁から離れた位置に配設されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、エアバッグが複数のバッグ用パネルの外周縁相互を結合させて形成される場合、摘み部を設けたバッグ用パネルでは、外周縁の全長の長さや形状には影響を与え難いことから、隣接する他のバッグ用パネルと、円滑に、外周縁相互を結合して、エアバッグを形成することができる。
【0011】
また、本発明に係る助手席用エアバッグでは、前記摘み部が、前記結合予定部相互の間の結合代を、前記エアバッグの内周面側に配置させるように、形成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、摘み部の結合代が、エアバッグの外周面側に露出せず、膨張完了時の隣接部材との不要な摩擦等を防止できる。
【0013】
さらに、本発明に係る助手席用エアバッグでは、前記凹部が、前記インストルメントパネルの左右方向の中央側部位に配設された前記隣接部材との干渉を防止するように、膨張完了時の前記車体側壁部における車両の車幅方向中央側の部位に、配設されていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、車両の車幅方向の中央付近に配置された隣接部材を、凹部に収容して、エアバッグが膨張を完了させることができて、膨張完了時の後面側の乗員側壁部を、前後方向に傾斜させずに、左右方向に沿った平面状に配設し易くなって、好適に、乗員を受け止めることが可能となる。
【0015】
この場合、膨張完了時の前記乗員側壁部が、前記収納部位の後方側の部位を中心として、車外側部位より、前記凹部の後方側となる車内側部位を、拡張させた形状として、配設されていてもよい。
【0016】
すなわち、このような構成では、乗員側壁部が、車両の左右方向の中央側に延設されて配設されることとなり、助手席の隣にセンター席が配設されて、そのセンター席に着座する乗員(センター乗員)がいても、そのセンター乗員を、膨張を完了させたエアバッグの乗員側壁部が、円滑に受け止めて保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の助手席用エアバッグを使用する助手席用エアバッグ装置が搭載される車両の搭載部位を示す概略平面図である。
【
図2】実施形態の助手席用エアバッグ装置の搭載状態を示す概略縦断面図である。
【
図3】実施形態のエアバッグが膨張を完了させた状態の車両の車幅方向の中央から車外側を見た概略側面図である。
【
図4】実施形態のエアバッグが膨張を完了させた状態の車両の後方側から見た概略正面図である。
【
図5】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の概略正面側斜視図である。
【
図6】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の概略背面側斜視図である。
【
図7】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の概略横断面図である。
【
図8】実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の概略縦断面図である。
【
図9】実施形態のエアバッグの構成材料を示す平面図である。
【
図10】実施形態のエアバッグの摘み部を形成する状態を説明する図である。
【
図11】他の実施形態のエアバッグを単体で膨張させた状態の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の助手席用エアバッグ(以下、適宜、エアバッグと略す)13は、
図1~4に示すように、助手席用エアバッグ装置(以下、適宜、エアバッグ装置と略す)Mに使用されるものであり、エアバッグ装置Mは、運転席DSを右側に配設させるとともに、助手席PSと運転席DSとの間に、センター乗員P2の着座可能なセンター席CSを設けて構成される車両Vに搭載されるもので、この車両Vにおける助手席PSの前方となる位置に、搭載されている。また、実施形態のエアバッグ装置Mは、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面1aの内部に配置されるトップマウントタイプとされるとともに、車両Vのインパネ1は、車幅方向の中央付近に、センターパネル2を、部分的に後方に突出させている。なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両Vの前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0019】
実施形態の助手席用エアバッグ装置Mは、
図2に示すように、折り畳まれたエアバッグ13と、エアバッグ13に膨張用ガスGを供給するインフレーター8と、エアバッグ13及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ13及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ13を覆うエアバッグカバー6と、を備えて構成されている。
【0020】
エアバッグカバー6は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ13の展開膨張時に、前後二枚の扉部6a,6bを、エアバッグ13に押されて開くように構成されている。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6bの周囲には、ケース12に連結される連結壁部12cが、形成されている。
【0021】
インフレーター8は、
図2に示すように、膨張用ガスGを吐出する多数のガス吐出口8bを放射状に配設させた略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース12に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えている。実施形態では、インフレーター8は、車両Vの前面衝突の際に作動するように構成されている。
【0022】
エアバッグ13の収納部位としてのケース12は、上面側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成されるもので、
図2に示すように、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部12aと、底壁部12aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー6の連結壁部6cを係止する周壁部12bと、を備えている。実施形態の場合、エアバッグ13とインフレーター8とは、エアバッグ13内に配置させたリテーナ9のボルト9aを取付手段として、エアバッグ13におけるガス流入口23(
図7参照)の周縁部位、ケース12の底壁部12a、及び、インフレーター8のフランジ部8cを、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース12の底壁部12aに取り付けられている。また、ケース12の底壁部12aには、車両Vのボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
【0023】
エアバッグ13は、
図7,8に示すように、膨張完了時の外周壁を形成するバッグ本体14と、バッグ本体14内に流入する膨張用ガスの流れの向きを規制する整流布45と、バッグ本体14内に配置されてバッグ本体14の膨張完了形状を規制するテザー49,53,60と、を備えて構成されている。
【0024】
バッグ本体14は、可撓性を有したシート体から形成される袋状とされて、膨張完了時に、助手席PSの前方において、
図1,2の二点鎖線や
図3,4に示すように、インパネ1の上面1aとインパネ1上方のウィンドシールド4との間とを塞ぐように配置される。具体的には、バッグ本体14は、膨張完了形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状とされるもので、膨張完了時の後面側に配置されて乗員(助手席搭乗者P1及びセンター乗員P2)を受け止める乗員側壁部40と、乗員側壁部40の外周縁から膨張完了時の前端側にかけて収束するように形成されて前端17a側をケース12側に取り付けられる車体側壁部17と、を備えている。また、バッグ本体14は、膨張完了時に、乗員側壁部40を、ケース12の中央を通る前後方向に略沿った線を中心線CLとして、車幅方向の中央側(実施形態の場合、右側)に大きく張り出したセンター乗員保護部43を設けるように、膨張完了形状を左右非対称形として、構成されている。すなわち、乗員側壁部40は、乗員としての助手席搭乗者P1を受け止め可能とする助手席搭乗者保護部41と、助手席搭乗者保護部41から車幅方向の中央側に拡張されて、センター乗員P2を受止可能なセンター乗員保護部43と、を備えて構成されている。そしてさらに、バッグ本体14の膨張部位としては、助手席搭乗者保護部41を後端に配設させた本体部15と、本体部15の後端側から車幅方向の中央側に突出してセンター乗員保護部43を後端に配設させた張出部16と、を備えて構成されている。
【0025】
車体側壁部17は、
図2,3,5~8に示すように、エアバッグ13の膨張完了時に、主に、インパネ1の上面1aとインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置される部位であり、上下方向側で対向して配置される上壁部18,下壁部19と、左右方向側で対向して配置される左壁部20,右壁部21と、を備えている。膨張完了時の前端17a側となる車体側壁部17における下壁部19の前端近傍には、内部に膨張用ガスを流入可能なガス流入口23が、インフレーター8の本体部8aを挿入可能に、略円形に開口して形成されている。下壁部19におけるガス流入口23の周縁には、リテーナ9のボルト9aを挿通させて、ガス流入口23の周縁をケース12の底壁部12aに取り付けるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔24が、形成されている。このガス流入口23は、下壁部19の前端側の領域における左右の略中央となる位置に、形成されるもので、エアバッグ13は、ガス流入口23の中心C(
図1,7参照)を、ケース12の左右の中央と略一致させるようにして、ケース12に取り付けられる構成である。また、車体側壁部17における左壁部20と右壁部21とには、バッグ本体14内に流入した余剰の膨張用ガスを排気するためのベントホール26が、略円形に開口されている(
図2,3参照)。
【0026】
また、車体側壁部17における右側(車幅方向の中央側)の領域には、すなわち、膨張部位としての張出部16の前方側には、インパネ1に形成される隣接部材としてのセンターパネル2との干渉を防止する干渉防止用の凹部28が、形成されている。この干渉防止用凹部28は、右壁部21の領域を凹ませるように略上下方向に沿って配設され、実施形態の場合、バッグ本体14の膨張部位としての張出部16の後面16aと本体部15の右側面15aとの間に配設される構成としている。
【0027】
この凹部28は、バッグ本体14を形成するバッグ用パネル69の前右パネル74に、
図7,8,10に示すように、車体側壁部17の右壁部21における前後方向の実質的な長さ寸法を短くするように、摘み部30を設けて、形成されている。なお、前右パネル74は、車体側壁部17の右半部程度の領域を形成する部位である。
【0028】
摘み部30は、
図10のA,B,Cに示すように、前右パネル74を平らに展開した状態から、折目30aを付けて、相互に離隔する湾曲した形状の結合予定部33,34相互を重ね合わせて、すなわち、折目30aから対向するように延びるパネル材30b,30c相互を重ねて、重ね部31を形成した後、結合予定部33,34を縫合することにより形成されている。結合予定部33,34は、両端に相互の交差する交差部35,36を設けて、配設され、重ね部31は、結合代32となり、実施形態の場合、バッグ本体14の内周面14a側に配設される。
【0029】
また、摘み部30は、平らに展開した前右パネル74の外周縁75から離れた摘み部形成エリア77、詳しくは、ガス流入口23とベントホール26との間のエリア77、を摘まんで形成されており、結合代32は、交差部35,36の間の中央付近の幅寸法を、最も広くした幅広部32aとしている。さらに、摘み部30は、平らに展開した前右パネル74の外周縁75から離れた摘み部形成エリア77を摘まんで形成されており、折目30aと直交する方向に沿った前右パネル74の実質的な長さ寸法を縮小したものの、外周縁75自体の長さや他のパネルへの縫合形状に関し、殆ど影響を与えないように、配設されている。
【0030】
なお、摘み部30の幅寸法TWと長さ寸法TL(
図10参照)は、バッグ本体14の車体側壁部17に、隣接部材としてのセンターパネル2との干渉を防止できる凹部28を形成できる寸法形状として、設定されていればよく、実施形態の場合、幅寸法TWは約50mm、長さ寸法TLは約350mmとしている。換言すれば、結合予定部33,34の最も離れている部位(幅広部32aの部位)の幅寸法は、幅寸法TWの2倍の約100mmとなり、交差部35,36間の離隔距離は、長さ寸法TLと同等の約350mmとなる。また、実施形態の場合、結合代32が内周面14a側に配設されていることから、外周面14b側には摘み部30による線状の凹溝37が形成されることとなる。そして、実施形態の凹溝37は、
図3,6に示すように、下端37b側を、上端37aより後下方向に延ばすように配設されて、センターパネル2における下広がりとなる後方側への突出形状に対応して、凹部28が形成されるように、配設されている。
【0031】
乗員側壁部40は、外形形状を略長方形状として、車幅方向の中央となる右側に向かって大きく張り出すように、構成されている。実施形態の場合、既述したように、乗員側壁部40は、エアバッグ13の膨張完了時に、ガス流入口23の後方の領域から構成されて助手席搭乗者P1を保護する助手席搭乗者保護部41と、助手席搭乗者保護部41の右側に張り出して配置されてセンター乗員P2を保護するセンター乗員保護部43と、を備えて構成されている。
【0032】
バッグ本体14内に配設される整流布45は、
図7,8に示すように、ガス流入口23の上方を覆うように配設されるとともに、ガス流入口23から流入した膨張用ガスGを、左右両側と後側とに整流可能に構成されている。実施形態の場合、整流布45は、左右方向の両端に開口45aを設けた略筒形状とするとともに、この筒形状の部位における後側の領域(後側部位56)に、円形に開口した複数(実施形態の場合、3個)のガス流出穴47aを、配設させる構成としている。整流布45は、
図9に示すような略鼓形状の整流布用基材48から構成されるもので、この整流布用基材48における前後の中央側の領域が、ガス流入口23の周縁への連結部48aとして、この連結部48aに、ガス流入口23及び取付孔24に対応する開口(図符号省略)を、配設させている。そして、整流布用基材48は、この連結部48aを、ガス流入口23の周縁で、全周にわたって縫着され、連結部48aから前後に延びる帯部48b,48cの領域の周縁相互を、縫合することにより、左右両端側に開口45aを有した筒状の整流布45を構成している。
【0033】
また、バッグ本体14内には、実施形態の場合、
図7,8に示すように、前後テザー49と、補正テザー53と、縁側テザー60と、が、配置されている。
【0034】
前後テザー49は、バッグ本体14内において、ガス流入口23付近と乗員側壁部40とを連結するように、バッグ本体14の膨張完了時に前後方向に略沿って配置されるもので、ガス流入口23の周縁から延びる前側部位50と、乗員側壁部40側から延びる後側部位51と、を連結させるようにして、構成されている。前側部位50は、帯状材の後端50b側を左右方向で重ねるように折って構成されるもので、左右対称形として、バッグ本体14の膨張完了時における外形形状を、前端50a側を左右方向に略沿わせ、後端50b側を上下方向に略沿わせるような略三角錐形状に近似した立体形状とされている。前側部位50における前端50a側には、ガス流入口23及び取付孔24に対応する開口(図符号省略)が、形成され、前端50a側は、ガス流入口23の周縁に、全周にわたって縫着される。後側部位51は、外形形状を、前側部位50に連結される前端51a側にかけて狭幅とした略台形状として、構成されている。実施形態の場合、後側部位51は、後端51b側を、後述する後左パネル79と後右パネル82との内縁80b,83b相互の縫着時に、共縫いされて、乗員側壁部40における助手席搭乗者保護部41の上下左右の略中央となる位置に、連結されている。すなわち、後側部位51は、後端51bを、乗員側壁部40と中心線CL(
図1参照)との交点付近(助手席搭乗者保護部41の左右方向の略中央の部位41a)に、結合させるように、構成されている。この前後テザー49は、エアバッグ13の膨張完了時に、中心線CLに略沿うように、前後方向に沿って配設されるもので、エアバッグ13の展開膨張時における乗員側壁部40の後方への過度の突出を抑制し、かつ、エアバッグ13の膨張完了時において乗員側壁部40における助手席搭乗者保護部41の左右の略中央の、ガス流入口23(収納部位としてのケース12)からの離隔距離を規制するために、配設されている。
【0035】
補正テザー53は、エアバッグ13の膨張完了時、乗員側壁部40のセンター乗員保護部43が、助手席搭乗者保護部41と略平面状に配設され、かつ、助手席搭乗者保護部41が、左縁41b側と右縁41c(センター乗員保護部43との境界部位44)側とを、中央41aを基準として、左右均等に平面度を確保できるように、配設されている。そのため、補正テザー53の後端53bにおける乗員側壁部40への結合部位57は、助手席搭乗者保護部41の左縁41b側と左右対称的に近似した右縁41c側に配設されて、左縁41b側の形状の略左右対称形とした上下方向の中央を、右方側に突出させた湾曲状として、乗員側壁部40を前方側に牽引するように、配設されている。そして、補正テザー53の前端53aは、実施形態の場合、干渉防止用の凹部28の底部28a付近とした車体側壁部17の右壁部21に結合されている。そのため、補正テザー53は、乗員側壁部40の保護部41,43相互を左右方向に沿わせた略平面状に形成するとともに、張出部16の前後方向の厚さ寸法を規制して、凹部28の底部28a付近の凹み形状を安定させることに寄与している。
【0036】
補正テザー53は、実施形態の場合、前側部位54と後側部位56との前後で二分割される構成として、前側部位54の前縁54aが凹部28の底部28a付近における車体側壁部17の右壁部21に結合され、後側部位56の後縁56bが、乗員側壁部40に湾曲状に結合され、前側部位54の後縁54bと後側部位56の前縁56aとが相互に結合されている。また、前側部位54の前縁54aは、右壁部21に結合される部位に、凹部55を備え、縁側テザー60を貫通させるように構成されている。すなわち、凹部55は、補正テザー53と縁側テザー60との相互の干渉を防止できるように、実施形態の場合、縁側テザー60を貫通させる貫通穴部58を形成するように、配設されている。
【0037】
縁側テザー60は、バッグ本体14内において、乗員側壁部40における車幅方向の中央側の端縁(右縁)と、バッグ本体14の膨張完了時の前端側と、を連結するもので、実施形態の場合、乗員側壁部40におけるセンター乗員保護部43の右縁43aと、ガス流入口23の周縁と、を連結するように、配設されている。この縁側テザー60は、ガス流入口23の周縁から延びる前側部位61と、センター乗員保護部43の右縁43aから延びる後側部位62と、を結合させて、構成されている。前側部位61は、ガス流入口23の周縁に連結される連結部61aと、連結部61aから右方に延びる本体部61bと、を備えている。連結部61aは、ガス流入口23及び取付孔24に対応する開口(図符号省略)を有して、ガス流入口23の周縁に、全周にわたって縫着されている。本体部61bは、外形形状を略帯状とされて、後端側を二つ折りされて、シート状の後側部位62の前端62aと結合されている。後側部位62は、帯状のシート体から構成されて、後端62b側を、センター乗員保護部43の右縁43aにおいて、上下方向の中間で、かつ、最も右方に配置されている領域に連結され、前端62a側を、前側部位61における本体部61bの先端61cと連結されている。実施形態の場合、後側部位62の後端62bは、後右パネル82の外縁83aと前右パネル74の後縁75dとの縫着時に、共縫いされて、センター乗員保護部43の右縁43aに、連結されている。また、縁側テザー60は、既述したように、補正テザー53に形成される貫通穴部58(凹部55)を挿通されるようにして、補正テザー53を貫通して、配設されている。この縁側テザー60は、展開膨張時のバッグ本体14の車幅方向側での揺動を抑制し、かつ、膨張完了時の乗員側壁部40の右縁(センター乗員保護部43の右縁43a)の過度の突出を抑制するために、配設されるもので、バッグ本体14の膨張完了時には、貫通穴部58に挿通されて、張った状態で配置されることとなる。
【0038】
バッグ本体14は、所定形状のバッグ用パネル69の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、
図9に示すように、バッグ用パネル69として、車体側壁部17の部位を構成する前左パネル70,前右パネル74と、乗員側壁部40の部位を構成する後左パネル79,後右パネル82と、を備えて構成されている。
【0039】
車体側壁部17を構成する前左パネル70と前右パネル74とは、車体側壁部17を左右で2分割するように構成されている。前左パネル70は、バッグ本体14における車体側壁部17の左半分程度の領域を構成するもので、左壁部20と、上壁部18における左半分程度の領域と、下壁部19における左半分程度の領域と、を構成している。この前左パネル70は、前端側に、ガス流入口23とその周縁とを構成する突出部72を、配設させている。前右パネル74は、バッグ本体14における車体側壁部17の右半分程度の領域を構成するもので、右壁部21と、上壁部18における右半分程度の領域と、下壁部19における右半分程度の領域と、を構成している。前右パネル74も、前端側に、ガス流入口23とその周縁とを構成する突出部76を、配設させている。この前左パネル70と前右パネル74とは、後縁側の部位の外形形状を異ならせる以外は、左右対称形として構成されている。すなわち、前右パネル74は、前左パネル70と異なり、外周縁75の上縁75aから後縁75dにかけて、張出部16を構成する張出部構成部74aを設け、そして、後縁75d側の部位を、乗員側壁部40を構成する後右パネル82の外形形状に合わせて、後方に大きく突出させるように、構成されている。
【0040】
乗員側壁部40を構成する後左パネル79と後右パネル82とは、乗員側壁部40を左右で2分割するように構成されるもので、後左パネル79は、乗員側壁部40において、助手席搭乗者保護部41の左半分程度の領域を構成し、後右パネル82は、乗員側壁部40において、助手席搭乗者保護部41の右半分程度とセンター乗員保護部43との領域を構成している。後左パネル79は、外形形状を略台形状とし、後右パネル82は、外形形状を、左右方向側の幅寸法を後左パネル79より大きくして(左右方向側への突出量を大きくして)形成される略三角形状とされている。すなわち、後右パネル82は、外周縁83の外縁83a側に、張出部16を構成する拡張エリア84を、配設させている。後左パネル79及び後右パネル82は、平らに展開した状態での外周縁80,83の外縁80a,83aを、それぞれ、前左パネル70,前右パネル74の外周縁71,75の後縁71d,75dの湾曲形状に、略沿わせるように、構成されている。
【0041】
そして、実施形態のエアバッグ13では、バッグ本体14を構成するバッグ用パネル69としての前左パネル70,前右パネル74,後左パネル79,及び、後右パネル82と、前後テザー49を構成する前側部位50及び後側部位51、補正テザー53を構成する前側部位54及び後側部位56、縁側テザー60を構成する前側部位61及び後側部位64、整流布45を構成する整流布用基材48は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0042】
実施形態のエアバッグ13の製造について説明をする。予め、後左パネル79と後右パネル82とを、平らに展開した状態で外周縁80,83の内縁80b,83b相互を一致させるように重ね、内縁80b,83b相互を、縫合糸を用いて縫着(縫合)させておく。このとき、前後テザー49の後側部位51の後端51bも、共縫いにより、縫着させておく。
【0043】
また、
図10のA,B,Cに示すように、前右パネル74の摘み部形成エリア77において、折目30aを付けて、パネル材30b,30cを重ねるように摘んで、重ね部31を設けて、平らに展開させていた状態では離れていた結合予定部33,34を重ねて、結合予定部33,34相互を、縫合糸を用いた平面縫製により、縫着させ、前右パネル74に、摘み部30を形成しておく。
【0044】
また、前右パネル74に、補正テザー53の前側部位54の前縁54aを結合させ、後右パネル82に、補正テザー53の後側部位56の後縁56bを結合させておく。
【0045】
その後、平らに展開した状態の前左パネル70と前右パネル74との外周縁71,75における下縁71b,75b相互を一致させるように重ね、そして、下縁71b,75b相互を、縫合糸を用いて縫着させる。そして、突出部72,76相互を重ねるように、前左パネル70と前右パネル74とを開く。その後、突出部72,76上に、前後テザー49の前側部位50の前端側と、縁側テザー60の前側部位61の連結部61aと、整流布用基材48の連結部48aと、を、順に重ね、ガス流入口23の周縁となる部位で、縫合糸を用いて縫着させ、その後、孔開け加工により、ガス流入口23と取付孔24とを形成する。そして、前左パネル70と前右パネル74との外周縁71,75の上縁71a,75a相互を、縫合糸を用いて縫着させる。
【0046】
ついで、前左パネル70と前右パネル74とを、外周縁71,75の後縁71d,75d相互を離すように開いて、外縁80a,83a相互を離すように広げた後左パネル79,後右パネル82を重ねて、前左パネル70の後縁71dと後左パネル79の外縁80aとを縫合糸を用いて縫着させ、同様に、前右パネル74の後縁75dと後右パネル82の外縁83aとを縫合糸を用いて縫着させる。この前右パネル74の後縁75dと後右パネル82の外縁83aとの縫着時に、共縫いにより、縁側テザー60の後側部位62の後端62bを結合させる。その後、整流布用基材48の帯部48b,48cの外周縁相互を縫着させて、整流布45を形成する。また、前側部位54の後端側の後縁54bと後側部位56の前縁56aとを縫着させて、補正テザー53を形成する。同様に、前側部位50の後端50bと後側部位51の前端51aとを縫着させて、前後テザー49を形成し、前側部位61における本体部61bの先端61cと後側部位62の前端62aとを縫着させて、縁側テザー60を形成する。その後、前左パネル70,前右パネル74において未縫合部分である前縁71c,75c側の部位の開口を利用して、各部位の縫代を外部に露出させないように、バッグ本体14を、反転させる。次いで、前左パネル70,前右パネル74の前縁71c,75cを、それぞれ、二つ折りするようにして重ね、縫合糸を用いて縫着させれば、エアバッグ13を製造することができる。
【0047】
このように製造したエアバッグ13は、収納部位としてのケース12内に収納できるように、折り畳み、折り畳んだ後には、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピングシートにより包む。なお、エアバッグ13内には、ボルト9aを突出させた状態でガス流入口23の周縁にリテーナ9を内蔵させておく。そして、折り畳んでラッピングシートに包んだエアバッグ13を、ケース12の底壁部12aに載置させる。ついで、インフレーター8の本体部8aを、底壁部12aの下方からケース12内に挿入させるとともに、底壁部12aから下方に突出している各ボルト9aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させる。その後、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト9aにナット10を締結させれば、ケース12に対して、折り畳んだエアバッグ13とインフレーター8とを取り付けることができる。
【0048】
そして、車両Vに搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6cに、ケース12の周壁部12bを係止させ、ケース12の図示しないブラケットを、車両Vのボディ側に固定させれば、助手席用エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0049】
なお、車両Vにおけるセンター席CSの右側の運転席DSの前方に配置されるステアリングホイール90には、
図1,4に示すように、ステアリングホイール用エアバッグ装置93が、搭載されている。ステアリングホイール用エアバッグ装置93は、ステアリングホイール90の中央のボス部91に折り畳まれて収納されるステアリングホイール用エアバッグ(以下「エアバッグ」と省略する)94と、エアバッグ94に膨張用ガスを供給する図示しないインフレーターと、を備えている。エアバッグ94は、可撓性を有したシート体から形成される袋状として、図示しないインフレーターの作動時に、インフレーターからの膨張用ガスを内部に流入させて、ステアリングホイール90の上面(後面)を全面にわたって覆うように、膨張する構成である。なお、ステアリングホイール用エアバッグ装置93の図示しないインフレーターも、助手席用エアバッグ装置Mのインフレーター8と同様に、車両Vの前面衝突時に、作動するように構成されている。
【0050】
そして、助手席用エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、車両Vの前面衝突時、インフレーター8のガス吐出口8bから膨張用ガスGが吐出されれば、エアバッグ13が、内部に膨張用ガスGを流入させて膨張し、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開いて形成される開口を経て、ケース12から上方へ突出するとともに、車両後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、
図3,4に示すように、インパネ1の上面1aとインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように、膨張を完了させることとなる。また、このとき、ステアリングホイール用のエアバッグ94も、内部に膨張用ガスを流入させて、ステアリングホイール90の上面(後面)を覆うように、膨張を完了させることとなる。
【0051】
そのため、膨張を完了させたエアバッグ13が、前進移動する助手席搭乗者P1とセンター乗員P2と受け止めて保護し、膨張を完了させたエアバッグ94が、前進移動する運転者D1を受け止めて保護することができる。この時、助手席用のエアバッグ13では、車幅方向の中央側のインパネ1の部位に、後方に突出して、膨張を完了させたエアバッグ13に干渉するように隣接する隣接部位としてのセンターパネル2が配設されていても、干渉防止用の凹部28により、センターパネル2との干渉が防止されて、乗員側壁部40を、傾斜させることなく、左右方向に沿う平面状に配設させて、好適に、乗員P1,P2を受け止めて保護することができる。
【0052】
そして、実施形態の助手席用エアバッグ13では、干渉防止用の凹部28が、車体側壁部17を形成するバッグ用パネル69の前右パネル74を、
図10のA,B,Cに示すように、平らにした状態での離隔した結合予定部33,34相互を結合させるように、摘み部30を形成することにより、形成されて、バッグ用パネル69の前右パネル74自体で形成されており、部品点数を増加させずに、凹部28を形成できる。また、摘み部30を設けて接触するように重ねた部位であるパネル材30b,30c相互を結合させるだけで、凹部28を形成できて、左右両側に大きく離れた部位を連結するようなテザーと異なり、バッグ用パネル69の前右パネル74自体の結合作業で行えることから、簡単な結合作業により、容易に凹部28を形成できる。なお、バッグ用パネル69の前右パネル74に摘み部30を形成すれば、その摘まんだ折目30aと略直交する方向のパネル74の長さ寸法を実質的に狭めて、横断面から見れば、
図7に示すように、摘み部30から離れた部位相互を、摘み部30を屈曲部として、接近させる形状となって、摘み部30を底部28aとした凹部28を形成できることとなる。
【0053】
したがって、実施形態の助手席用エアバッグ13では、摘み部30を配設するだけで、干渉防止用の凹部28を簡便に形成することができる。
【0054】
なお、実施形態では、補正テザー53の前端53aが、本体部15近傍の張出部16の後面16a側に結合されて、凹部28の凹み状態を大きくしているものの、
図11に示すエアバッグ13Aのバッグ本体14のように、補正テザー53を配設させずに、摘み部30と同様な構成の摘み部30Aを設けるだけでも、凹部29Aを形成できて、隣接部材としてのセンターパネル2との干渉を防止することができる。ちなみに、摘み部30Aによる凹部28Aを形成しない場合には、
図11の二点鎖線に示すように、センターパネル2と干渉して、乗員側壁部40のセンター乗員保護部43が後方に突出して、乗員P1,P2を円滑に受け止め難くなってしまう。
【0055】
勿論、実施形態のエアバッグ13では、張出部16の後面16aに前端53aを結合させた補正テザー53を配設しており、凹部28の底部28a付近を、深い凹み形状にできることから、一層、円滑に、隣接部材としてのセンターパネル2との干渉を防止することができる。
【0056】
なお、
図11に示すエアバッグ13Aには、縁側テザー60が配設されていないが、二点鎖線に示すように、縁側テザー60を配設させてもよい。
【0057】
そして、実施形態の助手席用エアバッグ13のバッグ本体14では、摘み部30が、バッグ用パネル69の前右パネル74の外周縁75から離れた位置の摘み部形成エリア77に、配設されている(
図10参照)。
【0058】
そのため、エアバッグ13のバッグ本体14が複数のバッグ用パネル69の外周縁相互を結合させて形成される場合、摘み部30を設けたバッグ用パネル69としての前右パネル74では、外周縁75の全長の長さや形状には影響を与え難いことから、隣接する他のバッグ用パネル69としての前左パネル70や後右パネル82と、円滑に、外周縁71,83の所定部位相互を結合して、エアバッグ13のバッグ本体14を形成することができる。
【0059】
また、実施形態の助手席用エアバッグ13では、摘み部30が、結合予定部33,34相互の間の結合代32を、エアバッグ13のバッグ本体14における内周面14a側に配置させるように、形成されている。
【0060】
そのため、実施形態では、摘み部30の結合代(縫代)32が、エアバッグ13の外周面14b側に露出せず、膨張完了時の隣接部材との不要な摩擦等を防止できる。
【0061】
勿論、この点を考慮しなければ、結合代32をエアバッグ13の外周面14b側に配置させてもよい。
【0062】
さらに、実施形態の助手席用エアバッグ13では、凹部28が、インパネ1の左右方向の中央側部位に配設された隣接部材としてのセンターパネル2との干渉を防止するように、膨張完了時の車体側壁部17における車両Vの車幅方向中央側の部位の右壁部21に、配設されている。
【0063】
そのため、実施形態では、車両Vの車幅方向の中央付近に配置された隣接部材としてのセンターパネル2を、凹部28に収容して、エアバッグ13が膨張を完了させることができて、膨張完了時の後面側の乗員側壁部40を、前後方向に傾斜させずに、左右方向に沿った平面状に配設し易くなって、好適に、乗員P1,P2を受け止めることが可能となる。
【0064】
この場合、実施形態では、膨張完了時の乗員側壁部40が、収納部位としてのケース12の後方側の部位を中心とした前後方向に延びる中心線CLを基準に、車外側部位の左縁41bより、凹部28の後方側となる車内側部位の右縁43aを、拡張させた形状として、配設されている。
【0065】
このような構成では、乗員側壁部40が、車両Vの左右方向の中央側に延設されて配設されることとなり、助手席PSの隣にセンター席CSが配設されて、そのセンター席CSに着座する乗員(センター乗員)P2がいても、そのセンター乗員P2を、膨張を完了させたエアバッグ13の乗員側壁部40が、円滑に受け止めて保護できる。
【0066】
なお、実施形態では、エアバッグ13に形成する凹部28を、隣接部材としてのセンターパネル2との干渉を防止するように、配設したが、膨張完了時のエアバッグが干渉する隣接部材としては、他に、ナビゲーションシステムのモニタ等が例示でき、それらとの干渉を防止するように、凹部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…(インストルメントパネル)インパネ、2…(隣接部材)センターパネル、13,13A…(助手席用)エアバッグ、14,14A…(外周壁)バッグ本体、17…車体側壁部、17a…前端、28,28A…(干渉防止用)凹部、30,30A…摘み部、32…結合代、33,34…結合予定部、40…乗員側壁部、69…バッグ用パネル、74…前右パネル、77…摘み部形成エリア、V…車両、M…助手席用エアバッグ装置。