(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】調整装置及びレンズ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20221206BHJP
【FI】
G02B7/02 E
(21)【出願番号】P 2019019759
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】原 教之
(72)【発明者】
【氏名】矢ケ部 俊之
(72)【発明者】
【氏名】榎本 徳明
(72)【発明者】
【氏名】一柳 明美
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-036012(JP,U)
【文献】特開2011-257486(JP,A)
【文献】実開平05-064811(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作リングと、
前記操作リングを
前側と後側から回動軸線まわりに回動可能に支持する
2つの支持体と、
前記操作リングにおいて前記支持体の対向周面と微少隙間をもって対向する対向内周面と、
前記微少隙間に介在するグリスと、
前記対向周面における前記対向内周面に対向しない位置に設けられ、前記回動軸線を中心とする外径が急峻に大きくなる段部と、
を有し
、
前記対向周面及び前記対向内周面は、前記段部から外径が徐々に小さくなる傾斜面である、
調整装置。
【請求項2】
フォーカスリングと、
前記フォーカスリングを
前側と後側から回動軸線まわりに回動可能に支持する
2つのレンズ鏡筒側部材である支持体と、
前記フォーカスリングにおいて前記支持体の対向周面と微少隙間をもって対向する対向内周面と、
前記微少隙間に介在するグリスと、
前記対向周面における前記対向内周面に対向しない位置に設けられ、前記回動軸線を中心とする外径が急峻に大きくなる段部と、を有し、
前記対向周面及び前記対向内周面は、前記段部から外径が徐々に小さくなる傾斜面である、
レンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整装置及びレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本体部及び本体部の外面に回動可能に係合する操作リングを備え、操作リングの回動により特性などを調整する調整装置が知られている。特許文献1には、操作リングの円滑な回動のために操作リングと本体部との間にグリスを介在させた調整装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような従来の操作リングを備えた調整装置は、グリスを塗布する組立前の部材において塗布範囲が明確ではないことから、固体毎に塗布量にばらつきが生じる場合がある。塗布量がばらつくと操作リングの回動トルクがばらつくため、改善が望まれている。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、操作リングの回動トルクが安定する、調整装置及びレンズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の1),2)の構成を有する。
1) 操作リングと、
前記操作リングを前側と後側から回動軸線まわりに回動可能に支持する2つの支持体と、
前記操作リングにおいて前記支持体の対向周面と微少隙間をもって対向する対向内周面と、
前記微少隙間に介在するグリスと、
前記対向周面における前記対向内周面に対向しない位置に設けられ、前記回動軸線を中心とする外径が急峻に大きくなる段部と、
を有し、
前記対向周面及び前記対向内周面は、前記段部から外径が徐々に小さくなる傾斜面である、
調整装置である。
2) フォーカスリングと、
前記フォーカスリングを前側と後側から回動軸線まわりに回動可能に支持する2つのレンズ鏡筒側部材である支持体と、
前記フォーカスリングにおいて前記支持体の対向周面と微少隙間をもって対向する対向内周面と、
前記微少隙間に介在するグリスと、
前記対向周面における前記対向内周面に対向しない位置に設けられ、前記回動軸線を中心とする外径が急峻に大きくなる段部と、を有し、
前記対向周面及び前記対向内周面は、前記段部から外径が徐々に小さくなる傾斜面である、
レンズ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作リングの回動トルクが安定する、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る操作リングを備えた調整装置の実施例であるレンズ装置2を搭載した撮像装置91の斜視図である。
【
図2】
図2は、レンズ装置2の部分縦断面図である。
【
図3】
図3は、レンズ装置2が備える支持体22の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る操作リングを備えた調整装置を、実施例のレンズ装置2により説明する。
【0010】
(実施例)
図1は、レンズ装置2を備えた撮像装置91を左前斜め上方から見た斜視図である。
撮像装置91は、本体部1及び本体部1の前部に連結されたレンズ装置2を有する。
レンズ装置2は、フォーカスレンズを移動させてフォーカスを調整するための操作リングであるフォーカスリング21と、フォーカスリング21をレンズ装置2の光軸CL1を回動軸線として回動可能に支持する、レンズ鏡筒側部材である支持体22とを有する。
【0011】
図2は、レンズ装置2における、フォーカスリング21及び支持体22を含む部分縦断面図である。
フォーカスリング21は、外周面に指のすべり止めとして、ゴム或いはエラストマで形成された環状のすべり止めリング23が取り付けられている。
【0012】
図2及び
図3に示されるように、支持体22は、軸線CL22を中心とする環状に形成され、レンズ装置2の筐体の一部として組み付けられている。
支持体22は、外観として外部に露出する露出部22fと、露出部22fの内側の根元部分に連結した基部22cと、基部22cからフォーカスリング21側である前側に環状に突出した突出部22dとを有する。
基部22cの外周面22c1は、光軸CL1を中心として一定の外径を有する。
【0013】
外周面22c1の前側の端部は、急峻に縮径する段部22bを介して突出部22dの外周面に相当する対向周面22aに接続している。
対向周面22aは、段部22bから前方に向かうに従って、外径が徐々に小さくなる傾斜面とされている。
突出部22dの前側の先端面22eは、光軸CL1に直交する面である。
【0014】
フォーカスリング21は、外基部211,連結部212,及び内基部213を有する。
外基部211は、支持体22の露出部22fと概ね同じ径を有する環状に形成されている。連結部212は、外基部211の前後方向の中央部において内側に接続し、前後方向に薄い円環状に形成されている。
内基部213は、連結部212の内端に連結する環状部材である。
【0015】
フォーカスリング21は、連結部212を前後方向から挟まれて回動可能に組み付けられている。
詳しくは、連結部212は、後側の支持体22及び前側の前支持体24とに、僅かな隙間をもって挟まれている。
図4に示されるように、フォーカスリング21の外基部211の内周面である対向内周面21aと、支持体22の突出部22dの外周面である対向周面22aとが、微少隙間である隙間d1を隔てて対向している。
【0016】
また、フォーカスリング21の連結部212の後面である対向後面21eと、支持体22の突出部22dの前端面である先端面22eとが、隙間d2を隔てて対向している。
対向内周面21aは対向周面22aと同じ角度で同じ方向に傾斜した面である。
例えば、隙間d1と隙間d2の隙間の距離は同じに設定されており、それぞれ微少の隙間の0.1mmである。ここで、微少隙間とは、グリスGが自重で浸み出さない狭い隙間であり、0.15mm以下で規定される。
【0017】
隙間d1及び隙間d2は連続した空間Vaを形成している。すなわち、空間Vaは、
図4に示される縦断面形状が略L字状であり、このL字状の部分を光軸CL1を中心として360°回転して得られる環状の空間である。
空間Vaには、グリスGが充填されている。グリスGは、フォーカスリング21を回動させたときの滑性を向上させると共に、スラスト方向及びラジアル方向の力を分散させてフォーカスリング21及び支持体22に対し局所的な過大応力が付加されることを防止する。
グリスGは、光学部品用の市販のグリスであり、例えば、株式会社ニッペコ製の「パーマルブC」である(「パーマルブ」は登録商標)。
【0018】
隙間d1とされた対向内周面21aと対向周面22aとが対向した部分、及び隙間d2とされた対向後面21eと先端面22eとが対向した部分、以外の対向部分の隙間d3,d4の距離は、隙間d1,d2と比較して少なくとも3倍以上(0.3mm以上)になっている。
これにより、空間Vaに充填されたグリスGは、空間Vaから外部に浸み出すことはなく、経時的に減少せずに保持される。
また、突出部22dの外周面における対向内周面と対向しない位置に形成されている段部22bによっても、外周面におけるグリスGの漏出はより確実に阻止される。
【0019】
図3に示されるように、空間Vaに充填させるグリスGは、組み付け前の支持体22に綿棒などによって塗布される。例えば、支持体22の対向周面22aに、グリスGを規定量塗布した綿棒Mを押し当てた状態で、支持体22を矢印のように回転させる。これにより、綿棒MのグリスGが対向周面22aに転写塗布される。同様に、先端面22eに対してもグリスGを塗布する。これらは一例であって、グリスGの塗布方法は限定されるものではない。
【0020】
支持体22には、段部22bが形成されている。これにより、グリスGの塗布作業において、作業者は、グリスGの塗布すべき範囲が段部22bよりも先端側の外周面である対向周面22aであることが明確に視認把握される。
そのため、作業者が、グリスGを、対向周面22aから段部22bを超えて過剰に塗布する可能性がほとんどなく、必要な場所である対向周面22a及び先端面22eに所定の量のグリスGが確実に塗布される。
その結果、支持体22とフォーカスリング21との間に介在するグリスGの量のばらつきが小さくなり、フォーカスリング21の回動トルクが安定する。
【0021】
以上詳述した実施例は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0022】
上述の構成を搭載する調整装置は、レンズ装置に限定されず、フォーカスリング21に相当する操作リングを回動させて特性を調整する調整装置であればよい。
【符号の説明】
【0023】
1 本体部
2 レンズ装置
21 フォーカスリング
211 外基部
212 連結部
213 内基部
21a 対向内周面
21e 対向後面
22 支持体
22a 対向周面
22b 段部
22c 基部
22c1 外周面
22d 突出部
22e 先端面
22f 露出部
23 すべり止めリング
24 前支持体
91 撮像装置
CL1 光軸
CL22 軸線
d1,d2,d3,d4 隙間
G グリス
M 綿棒
Va 空間