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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/04 20060101AFI20221206BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221206BHJP
   B41J 29/377 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J11/04
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J29/377
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019025248
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020131489
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】麻和 博
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158514(JP,A)
【文献】特開2014-181083(JP,A)
【文献】特開2017-007308(JP,A)
【文献】特開2001-014942(JP,A)
【文献】特開2013-107275(JP,A)
【文献】特開2017-015848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165-2/20
B41J 2/21-2/215
B41J 11/00-11/70
F16C 13/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体と、回転軸と、前記円筒体の内面と前記回転軸とを繋ぎ前記円筒体の周方向に間隔をあけて存在する複数のアーム部と、を備える回転ドラムと、
前記回転ドラムの円筒体に巻き付いて送られる記録媒体に液体を吐出して印刷する吐出部と、
前記回転ドラムの内側であって前記アーム部同士の間の前記間隔をあけた部分を風の通路とし、該風の通路に前記回転軸に沿う方向に風を送る第1冷却ファンと、
前記アーム部同士の間の前記風の通路に、後付けで取り付けられる第1導風部材と、を有し、
前記第1導風部材は、
第1ガイドをa個備え、ここでaは2以上の整数であり、
前記a個の第1ガイドは、前記第1冷却ファンの風を前記円筒体の内面の異なる位置に誘導し、
前記異なる位置は、前記円筒体の内面を回転軸に沿う方向にa個の領域に分けたときに、前記a個に分けられた各領域である、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記第1導風部材の材料の単位体積重量は、前記回転ドラムの材料の単位体積重量より軽い、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置において、
前記円筒体の内面には前記周方向に渡って形成されたリブが複数個設けられ、
前記複数個のリブは前記回転軸に沿う方向に間隔をあけて配置され、
前記a個の第1ガイドによる風の誘導先である前記異なる位置は、前記第1冷却ファンから送られる風であって前記リブに当たって跳ね上げられる風を前記円筒体の内面側に誘導する位置である、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記第1導風部材は、ベース板と、該ベース板に配置される前記a個の第1ガイドとを備え、
前記a個の第1ガイドは前記ベース板の両面に面対称に配置されている、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記円筒体の外面に沿って前記回転軸に沿う方向に風を送る第2冷却ファンと、
前記第2冷却ファンから送られる風を受け入れ、且つ前記風を前記円筒体の外面に向けて吹き出す風出口を備える風箱と、
前記風箱内に設けられる第2導風部材と、を有し、
前記第2導風部材は、
第2ガイドをb個備え、ここでbは3以上の整数であり、
前記b個の第2ガイドは、前記第2冷却ファンの風を前記風出口の異なる位置に誘導し、
前記異なる位置は、前記円筒体の外面を回転軸に沿う方向にb-1個の領域に分けたときに、前記b-1個に分けられた各領域である、ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ドラムを有する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転ドラムを有する印刷装置の従来文献として特許文献1がある。この特許文献1には、UVインクを用いたセンタードラム方式のインクジェット記録装置において、記録媒体を支持するプラテンドラムを冷却する効率を上げるために、プラテンドラムの内周に冷却ファンを用いてプラテンドラムの軸方向に送風された冷却風がドラムの内周面に当たるようにする構造が開示されている。具体的には、冷却風がドラムの内周面に導かれるようにドラムの内部に導風部材を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-158514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された導風部材では、ドラムの冷却効果を上げるためには十分な構成とはなっていない。
また、導風部材をどのようにドラムの内部に設けるのか記載されておらず、その図面からはドラムと一体形成されているように見える。ドラムと一体形成されている場合、ドラムの鋳型を形成する際の難度が高くなると共にコストも高くなる。またドラム自体の重量も重くなるため、取り扱いが難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、円筒体と、回転軸と、前記円筒体の内面と前記回転軸とを繋ぎ周方向に間隔をあけて存在する複数のアーム部と、を備える回転ドラムと、前記回転ドラムの円筒体に巻き付いて送られる記録媒体に液体を吐出して印刷する吐出部と、前記回転ドラムの内側であって前記アーム部同士の間の前記間隔をあけた部分を風の通路とし、該風の通路に前記回転軸に沿う方向に風を送る第1冷却ファンと、前記アーム部同士の間の前記風の通路に、後付けで取り付けられる第1導風部材と、を有し、前記第1導風部材は、第1ガイドをa個備え、ここでaは2以上の整数であり、前記a個の第1ガイドは、前記第1冷却ファンの風を前記円筒体の内面の異なる位置に誘導し、前記異なる位置は、前記円筒体の内面を回転軸に沿う方向にa個の領域に分けたときに、前記a個に分けられた各領域である、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の全体構成の概略を模式的に表す正面透視図。
図2】本発明の実施形態に係る回転ドラムと第1冷却手段と第2冷却手段を表す斜視図。
図3】本発明の実施形態に係る回転ドラムと第1冷却手段と第2冷却手段を一部破断して表す斜視図。
図4】本発明の実施形態に係る第1導風部材を表す斜視図。
図5】従来の回転ドラム外面の冷却手段を表す斜視図。
図6】本発明の実施形態に係る第2冷却手段を表す斜視図。
図7】本発明の実施形態に係る回転ドラムを表す斜視図。
図8】本発明の実施形態に係る回転ドラムの変形例を表す斜視図。
図9】従来の回転ドラムの冷却手段を採用した場合の冷却風の流れを表す側断面図。
図10】本発明の実施形態に係る第1冷却手段と第2冷却手段を採用した場合の冷却風の流れを表す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の印刷装置は、円筒体と、回転軸と、前記円筒体の内面と前記回転軸とを繋ぎ周方向に間隔をあけて存在する複数のアーム部と、を備える回転ドラムと、前記回転ドラムの円筒体に巻き付いて送られる記録媒体に液体を吐出して印刷する吐出部と、前記回転ドラムの内側であって前記アーム部同士の間の前記間隔をあけた部分を風の通路とし、該風の通路に前記回転軸に沿う方向に風を送る第1冷却ファンと、前記アーム部同士の間の前記風の通路に、後付けで取り付けられる第1導風部材と、を有し、前記第1導風部材は、第1ガイドをa個備え、ここでaは2以上の整数であり、前記a個の第1ガイドは、前記第1冷却ファンの風を前記円筒体の内面の異なる位置に誘導し、前記異なる位置は、前記円筒体の内面を回転軸に沿う方向にa個の領域に分けたときに、前記a個に分けられた各領域である、ことを特徴とする。
ここで、「後付けで取り付けられる第1導風部材」における「後付け」とは、回転ドラムを構成する円筒体、回転軸、アーム部とは、別に作られて、そこに取り付けられることを意味する。
【0008】
本態様によれば、前記第1導風部材は、第1ガイドをa個備え、ここでaは2以上の整数であり、前記a個の第1ガイドは、前記第1冷却ファンの風を前記円筒体の内面の異なる位置に誘導し、前記異なる位置は、前記円筒体の内面を回転軸に沿う方向にa個の領域に分けたときに、前記a個に分けられた各領域である。これにより、前記円筒体の内面におけるa個の各領域にそれぞれ風が誘導されて当たるので、回転ドラムを効果的に冷却することができる。
また、第1導風部材は、前記アーム部同士の間の前記風の通路に後付けで取り付けられるので、回転ドラムとは別個に作って組み付けることになる。これにより、製造が容易となり、また、回転ドラムよりも軽い材料を選定することが可能となり、軽量化を進めやすくなる。
【0009】
本発明の第2の態様の印刷装置は、第1の態様において、前記第1導風部材の材料の単位体積重量は、前記回転ドラムの材料の単位体積重量より軽い、ことを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、第1導風部材の材料の単位体積重量は、前記回転ドラムの材料の単位体積重量より軽いので、回転ドラム部分の重量の軽量化を進めやすい。
【0011】
本発明の第3の態様の印刷装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記円筒体の内面には周方向にリブが複数個設けられ、前記複数個のリブは前記回転軸に沿う方向に間隔をあけて配置され、前記a個の第1ガイドによる風の誘導先である前記異なる位置は、前記第1冷却ファンから送られる風であって前記リブに当たって跳ね上げられる風を前記円筒体の内面側に誘導する位置である、ことを特徴とする。
【0012】
前記円筒体の内面には、補強のため等の理由で、周方向にリブが複数個設けられる場合がある。この場合、第1冷却ファンから送られた風は、前記リブに当たって跳ね上げられるので、前記円筒体の内面から冷却用の風が遠ざかってしまう。
本態様によれば、前記a個の第1ガイドは、前記第1冷却ファンから送られる風であって前記リブに当たって跳ね上げられる風を前記円筒体の内面側に誘導する。これにより、前記リブが跳ね上げた風を再び円筒体の内面に当てることができるので、冷却効果を高めることができる。
【0013】
本発明の第4の態様の印刷装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記第1導風部材は、ベース板と、該ベース板に配置される前記a個の第1ガイドとを備え、前記a個の第1ガイドは前記ベース板の両面に面対称に配置されている、ことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記a個の第1ガイドは前記ベース板の両面に面対称に配置されているので、前記a個の第1ガイドを有する第1導風部材を容易に製造することができる。また、面対称の第1ガイドによって冷却作用をバランス良く行うことができる。
【0015】
本発明の第5態様の印刷装置は、第1の態様から第4態様のいずれか一つの態様において、前記円筒体の外面に沿って前記回転軸に沿う方向に風を送る第2冷却ファンと、前記第2冷却ファンから送られる風を受け入れ、且つ前記風を前記円筒体の外面に向けて吹き出す風出口を備える風箱と、前記風箱内に設けられる第2導風部材と、を有し、前記第2導風部材は、第2ガイドをb個備え、ここでbは2以上の整数であり、前記b個の第2ガイドは、前記第2冷却ファンの風を前記風出口の異なる位置に誘導し、前記異なる位置は、前記円筒体の内面を回転軸に沿う方向にb個の領域に分けたときに、前記b個に分けられた各領域である、ことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、第2導風部材によって、第1導風部材とほぼ同様のメカニズムで回転ドラムを効果的に冷却することができる。
【0017】
続いて、本発明の実施形態の構成と作用、効果について図面を参照しながら詳細に説明する。
尚、以下の説明では、最初に図1に基づいて本実施形態の印刷装置の全体構成の概略について説明する。次に、図2図7に基づいて本発明の要部の具体的構成について説明し、図8に基づいて本発明の回転ドラムの変形例の構成に言及する。
更に、図9及び図10に基づいて従来の回転ドラムの冷却手段を採用した場合の冷却風の流れと、本発明の実施形態に係る第1冷却手段と第2冷却手段を採用した場合の冷却風の流れを比較した試験結果について説明し、本発明の実施形態に係る印刷装置の作用、効果に言及する。
最後に、前記実施形態とは部分的構成を異にする本発明の印刷装置の他の実施形態について簡単に説明する。
【0018】
[実施形態]
(1)印刷装置の全体構成の概略(図1参照)
本発明の印刷装置1は、円筒体3と、回転軸5と、円筒体3の内面3aと回転軸5とを繋ぎ周方向Cに間隔Sをあけて存在する複数のアーム部7と、を備える回転ドラム9と、回転ドラム9の円筒体3に巻き付いて送られる記録媒体Pに液体を吐出して印刷する吐出部11と、回転ドラム9の内側であってアーム部7同士の間を風Wの通路53とし、風Wの通路53に回転軸5に沿う方向Yに風Wを送る第1冷却ファン15と、アーム部7同士の間の風Wの通路53に、後付けで取り付けられる第1導風部材17と、を有している。
そして、第1導風部材17は、第1ガイド19をa個備え、ここでaは2以上の整数であり、a個の第1ガイド19は、第1冷却ファン15の風Wを円筒体3の内面3aの異なる位置に誘導し、異なる位置は、円筒体3の内面3aを回転軸5に沿う方向Yにa個の領域Qに分けたときに、a個に分けられた各領域Qになるように構成されている。
【0019】
また、図示の実施形態に係る印刷装置1には、円筒体3の外面3bに沿って回転軸5に沿う方向Yに風Wを送る第2冷却ファン21と、第2冷却ファン21から送られる風Wを受け入れ、且つ風Wを円筒体3の外面3bに向けて吹き出す風出口23を備える風箱25と、風箱25内に設けられる第2導風部材27と、を有している。
そして、第2導風部材27は、第2ガイド29をb個備え、ここでbは3以上の整数であり、b個の第2ガイド29は、第2冷却ファン21の風Wを風出口23の異なる位置に誘導し、異なる位置は、円筒体3の外面3bを回転軸5に沿う方向Yにb-1個の領域Rに分けたときに、b-1個に分けられた各領域Rになるように構成されている。
【0020】
具体的には、図示の印刷装置1は、搬送方向Aの上流に繰出し軸31を有し、繰出し軸31に取り付けられたロール状の記録媒体Pから繰り出される記録媒体Pを回転ドラム9に対して所定の巻付け角で巻き付けると共に、回転ドラム9の円筒体3の外面3bに巻き付けられた記録媒体Pに対して吐出部の一部である吐出ヘッド11から液体の一例である各色のUVインクを吐出後、硬化部の一例であるUV照射器13からUV光を照射し記録媒体Pの表面に吐出したUVインクを硬化する。
そして、UVインクが記録媒体Pの表面に吐出され、UVインクが硬化した記録媒体Pは、搬送方向Aの下流の巻取り軸33に巻き取られる。以下、記録媒体Pは、前記ロール・トゥ・ロールの搬送方式で連続的に搬送されながら吐出ヘッド11から吐出されるUVインクによって所望の画像が印刷されて行く。
【0021】
また、記録媒体Pの搬送経路35の途中には、一例として従動ローラーによって構成されるガイドローラー37、38及び巻付けローラー39、40と、駆動ローラーと従動ローラーによって構成される一対のニップローラーから成る搬送ローラー41及び排出ローラー43とが配設されている。
また、本実施形態では、円筒体3の内面3aと回転軸5との間に形成されるドーナツ状の空間を、回転軸5から放射方向に延在する一例として12本のアーム部7によって周方向Cに12分割することによって形成される正面視扇形状の部分が、冷却風Wの通路53を形成している。
【0022】
そして、第1冷却ファン15は、本実施形態では一例として4基設けられており、これら4基設けられる第1冷却ファン15A、15B、15C、15Dの位置は、前記扇形状の部分の開口面と対向する位置であって、その一部の第1冷却ファン15A、15Bを一例として内周寄りに配置し、残りの第1冷却ファン15C、15Dを一例として外周寄りに配置している。
また、第2冷却ファン21は、本実施形態では一例として2基並設して設けられており、これら2基設けられる第2冷却ファン21A、21Bの位置は、風箱25の一例として前面に設けられる冷却風Wを導入するための開口面と対向する位置に設定されている。尚、一例として、第1冷却ファン15A、15B、15C、15Dは、回転ドラム9の回転軸5を通る水平面よりも下方のエリアに配置されており、第2冷却ファン21A、21Bは、回転ドラム9の記録媒体Pが巻き付けられていない非巻回エリアUに配置されている。
【0023】
(2)印刷装置の要部の具体的構成(図2図8参照)
次に、このような印刷装置1の回転ドラム9に対して適用される本実施形態に係る印刷装置1の要部となる回転ドラム9の冷却手段45について具体的に説明する。
回転ドラム9の冷却手段45は、回転ドラム9の円筒体3の内面3aに冷却風Wを吹き付けて回転ドラム9を冷却する第1冷却手段46と、回転ドラム9の円筒体3の外面3bに冷却風Wを吹き付けて回転ドラム9を冷却する第2冷却手段47と、を備えている。
【0024】
(A)第1冷却手段の具体的構成(図2図4及び図7参照)
第1冷却手段46は、第1冷却ファン15と、回転ドラム9の前述した正面視扇形状の部分に収容される第1導風部材17と、を備えている。
回転ドラム9は、一例としてアルミダイキャスト製で、第1導風部材17の材料の単位体積重量は、回転ドラム9の材料であるアルミニウムの単位体積重量より軽い材料、具体的にはイアノックコーポレーション製のP・Eライト RL-150FR等のポリエチレンフォームなどを使用する。因みに、第1導風部材17の材料として、このような軽い材料を使用した場合には、回転ドラム9の回転時にかかる慣性モーメントを小さくして回転ドラム9の回転安定性を向上させ、印刷開始および印刷終了時に回転ドラム9を設定回転数に達するための、回転立ち上げ時間および回転立ち下げ時間の短縮が可能となり、印刷時間全体の短縮が可能となる。
【0025】
また、本実施形態では、図7に表すように、回転ドラム9の円筒体3の内面3aに、周方向Cの補強を目的にするリブ49が複数個設けられている。これら複数個のリブ49は、回転軸5に沿う方向Yに間隔Eをあけて、両端のものを含めて一例として計5本配置されている。
第1導風部材17は、図4に表すように、一例として前方+YがV字状に窪んだ略矩形平板状のベース板51を有しており、その左右両面に一例として湾曲した平板状のa個の第1ガイド19を面対称に配置することによって形成されている。
【0026】
図示の実施形態では第1ガイド19は4枚設けられており、回転ドラム9に取り付けられた状態で内周側に位置する、図4中、最上部に位置する1段目の第1ガイド19Aが最も長く、その先端部20Aの位置は、最も後方-Y寄りに位置するように構成されている。
以下、図4中、下方に向ってほぼ同じ間隔Tをあけて2段目、3段目、4段目の第1ガイド19B、19C、19Dが配置されており、これらの先端部20B、20C、20Dの位置は、前記間隔Tずつ、徐々に前方+Y寄りに位置するように構成されている。
【0027】
また、1段目から4段目の第1ガイド19A、19B、19C、19Dの幅寸法は、前記正面視扇の形状に対応して、最も内周側の1段目の第1ガイド19Aが最も狭く、最も外周側の4段目の第1ガイド19Dが最も広くなるように形成されている。
そして、これら4枚の第1ガイド19A、19B、19C、19Dと、円筒体3の内面3aと、の間に4つの冷却風Wの通路53A、53B、53C、53Dが形成されている。そして、最も内周側に位置する第1通路53Aを通った冷却風Wが最も後方-Y寄りの第1領域Q1に達し、以下順次、外周側に向って第2通路53B、第3通路53C、第4通路53Dの順で前方+Y寄りの第2領域Q2、第3領域Q3、第4領域Q4に冷却風Wをそれぞれ導くように構成されている。
【0028】
また、4本のリブ49との関係では、4枚の第1ガイド19A、19B、19C、19Dのそれぞれの先端部20A、20B、20C、20Dの位置がリブ49の位置と一致しないよう、一例としてリブ49の配置ピッチに対して1/2ピッチ程度ずらした位置に設定されている。これにより4基の第1冷却ファン15A、15B、15C、15Dによって送られ、リブ49に当たって跳ね上げられた風Wは、それぞれの第1ガイド19A、19B、19C、19Dの対向する壁面に当たってその進行が妨げられ、更に各通路53A、53B、53C、53Dを流れる後続の風Wによって円筒体3の内面3a側に誘導されるように構成されている。
また、図4に表すように各第1ガイド19A、19B、19C、19Dのそれぞれの先端部20A、20B、20C、20Dは、ベース板51の下端縁52には達しておらず、両者の間には間隙55A、55B、55C、55Dが形成されている。
【0029】
そして、これらの間隙55A、55B、55C、55Dは、最も後方-Y寄りの間隙55Aが最も広く、順次前方+Yに行くに従って狭くなる、55A>55B>55C>55Dの関係が成立するように一例として設定されている。
因みに、このように間隙55A、55B、55C、55Dを設定することで、各通路53A、53B、53C、53Dを通って円筒体3の内面3aに達した冷却風Wは、対応する各領域Q1、Q2、Q3,Q4の冷却を行いつつ、その一部は、間隙55A、55B、55C、55Dを通って隣接する領域Qに至り、当該隣接する領域Qの冷却にも寄与するように構成されている。
この他、最も内周寄りの第1ガイド19Aの前端部には、図4に表すように第1ガイド19Aの上方空間に冷却風Wが流れ込まないように、その開口を閉塞する閉塞カバー57が形成されている。
【0030】
(B)第2冷却手段の具体的構成(図5及び図6参照)
第2冷却手段47は、第2冷却ファン21と、回転ドラム9の非巻回エリアUに配置される風箱25と、風箱25内に設けられる第2導風部材27と、を備えている。
以下、図5に表す従来の回転ドラム外面の冷却手段147と比較しながら、図6に表す本実施形態に係る第2冷却手段47の構成を具体的に説明する。
【0031】
従来の回転ドラム外面の冷却手段147は、図5に表すように、複数基のシロッコファン121と、上面にスリット123が多数形成された角箱状の風箱125を備えている。そして、風箱125のスリット123が形成されている平滑な上面を回転ドラム109の円筒体103における外面103bに接近させて対向するように配置されている。
これにより、シロッコファン121から風箱125内に送り込まれた冷却風Wは、上面のスリット123を通って回転ドラム109の円筒体103における外面103bに吹き付けられて回転ドラム109を外面103b側から冷却する。
しかし、このような構造の回転ドラム外面の冷却手段147を採用した場合には、風箱125内に送り込まれた冷却風Wのすべてが回転ドラム109の冷却に使用されるのではなく、その一部は風箱125内で循環するだけで回転ドラム109の冷却に直接使用されないため、冷却効率の点で改善の余地があった。
【0032】
一方、本実施形態に係る第2冷却手段47の場合には、風箱25の形状が工夫され、更に風箱25内に第2導風部材27が配置されているため、風箱25内に送り込まれた冷却風Wが効率良く回転ドラム9の円筒体3における外面3bに作用して回転ドラム9を冷却できるように構成されている。
具体的には、風箱25の底面26が後方-Yに行くに従って回転ドラム9側に近付く、スロープ状の傾斜面によって形成されている。また、風箱25の前面には、2基の第2冷却ファン21A、21Bから送り込まれた冷却風Wを風箱25内に導入する図示しない開口が形成されている。また、風箱25の上面は一例として開放されていて、そのすべてが風出口23になっている。
【0033】
また、第2導風部材27は、一例として4枚のスロープ状に傾斜した第2ガイド29によって構成されている。そして、回転ドラム9に最も近い、図6中、最上部に位置する4段目の第2ガイド29Dが最も短く、3段目、2段目、1段目の第2ガイド29C、29B、29Aの長さは、4段目の第2ガイド部29Dより長く、一例としてほぼ同じ長さに形成されている。
また、これら4枚の第2ガイド29A、29B、29C、20Dの回転軸5に沿う方向Yの取付け位置は、最上部に位置する4段目の第2ガイド29Dが最も前方+Yに設けられている。そして、3段目、2段目、1段目と第2ガイド29C、29B、29Aの位置が徐々に後方-Y寄りに位置するように配置されている。これら4枚の第2ガイド29A、29B、29C、29Dの間隔Gは一例としてほぼ同じ大きさになるように設定されている。
【0034】
また、これら4枚の第2ガイド29A、29B、29C、29Dと、円筒体3の外面3bとの間に3つの冷却風Wの通路59A、59B、59Cが形成されている。そして、最も回転ドラム9側に位置する第3通路59Cを通った冷却風Wが最も前方+Y寄りの第3領域R3に達し、以下順次、第2通路59B、第1通路59Aの順で後方-Y寄りの第2領域R2、第1領域R1に冷却風Wをそれぞれ導くように構成されている。
また、図6に表すように、各第2ガイド29A、29B、29C、29Dのそれぞれの先端部30A、30B、30C、30Dは、回転ドラム9の円筒体3における外面3bの形状に沿う湾曲した凹陥形状に一例として形成されている。
【0035】
また、これらの先端部30A、30B、30C、30Dと回転ドラム9の円筒体3における外面3bとの間には、間隙61A、61B、61C、61Dが形成されている。これらの間隙61A、61B、61C、61Dは、最も後方-Y寄りの間隙61Aが最も広く、順次前方+Yに行くに従って狭くなる、61A>61B>61C>61Dの関係が成立するように一例として設定されている。
因みに、このように間隙61A、61B、61C、61Dを設定することで、各通路59A、59B、59Cを通って円筒体3の外面3bに達した冷却風Wは、対応する各領域R1、R2、R3の冷却を行いつつ、その一部は、間隙61A、61B、61Cを通って隣接する領域Rに至り、当該隣接する領域Rの冷却にも寄与するように構成されている。
【0036】
この他、最も回転ドラム9に近い4段目の第2ガイド部29Dの後端部は、回転ドラム9側に立ち上がるように形成されており、閉塞板63として機能している。この閉塞板63の回転ドラム9側の端縁に、先端部30Dが形成されている。尚、閉塞板63は、通路59Cを通って送り込まれた冷却風Wが前方+Yの隙間から前方+Y側に逃げないようにする役割を有している。
【0037】
(3)回転ドラムの変形例の構成(図8参照)
次に、回転ドラム9の円筒体3における内面3aに冷却フィン65を複数設けた変形例について説明する。
具体的には、図8に表すように、円筒体3の内面3aから放射状に回転軸5に向かう所定高さの冷却フィン65を複数設けた構成の回転ドラム9Bを採用することも可能である。
このような構成の回転ドラム9Bを採用した場合には、第1冷却手段46と第2冷却手段47を使用した冷却風Wによる冷却作用に加えて、冷却フィン65による放熱作用が加わって一層の冷却効率の向上が図られるようになる。
【0038】
(4)冷却風の流れの比較試験(図9及び図10参照)
次に、従来の回転ドラムの冷却手段145を採用した場合の冷却風Wの流れと、本発明の実施形態に係る第1冷却手段46と第2冷却手段47を有する冷却手段45を採用した場合の冷却風Wの流れを比較した試験結果について説明する。
図9に表すように、従来の回転ドラム内面の冷却手段146を採用した場合には、正面視扇形状の部分に導入された冷却風Wは、回転ドラム109の円筒体103における内面103aにほとんど当たることなく素通りして前方+Yから後方-Yに向けて、そのほとんどが吹き抜けてしまう。
また、従来の回転ドラム外面の冷却手段147を採用した場合には、角箱状の風箱125内で冷却風Wが循環することで温められ、温度が高くなった風Wがスリット123から吹き出して円筒体103の外面103bに対して局所的に作用して回転ドラム109を冷却していた。
【0039】
これに対し、本実施形態では第1冷却手段46を採用することで、フレッシュな冷却風Wが分割されて各領域Q1、Q2、Q3、Q4の円筒体3の内面3aに効率的に当たるため、回転ドラム9の内面3aからの効果的な回転ドラム9の冷却が期待できる。
また、円筒体3の内面3aに設けられているリブ49に当たって跳ね上げられた冷却風Wも、各通路53A、53B、53C、53Dを流れる後続のフレッシュな冷却風Wによって再び円筒体3の内面3a側に流れるように改善されている。
更に、本実施形態では第2冷却手段47を採用することで、前記第1冷却手段46を採用した場合と同様、フレッシュな冷却風Wが分割されて各領域R1、R2、R3の円筒体3の外面3bに効率的に当たるため、回転ドラム9の外面3b側からも効率的な回転ドラム9の冷却が期待できる。
【0040】
そして、このようにして構成される本実施形態による印刷装置1によれば、記録媒体Pを支持するプラテンドラムとして機能する回転ドラム9を効率良く冷却することができるので、回転ドラム9の温度上昇を抑制することができる。また、これにより記録媒体Pに吐出されたUVインクが硬化する時に生ずる発熱による回転ドラム9の温度上昇を抑えて、回転ドラム9の輻射熱により吐出ヘッド11内のインクが過熱されてインク粘度が変化し、吐出ヘッド11から吐出されるインク量が変動することによる印刷品質のムラを低減することが可能となり、記録媒体Pに印刷する画像品質を良好に保つことが可能になる。
更に、回転ドラム9の内面3aに作用する第1冷却手段46と、回転ドラム9の外面3bに作用する第2冷却手段47と、の併用に加えて、第1導風部材17と第2導風部材27自体の構造によって、回転ドラム9の冷却が効率的に実行できるから、第1冷却ファン15と第2冷却ファン21の数を必要、最小限の数に抑えて、少ない風量の冷却風Wにより冷却ファン15、21の騒音を低減して、印刷装置1全体のコストダウンを図ることも可能になる。
【0041】
[他の実施例]
本発明に係る印刷装置1の実施例は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0042】
例えば、第1冷却ファン15と第2冷却ファン21の数及び第1ガイド19と第2ガイド29の数は、前記実施形態で述べた数に限らず、それより少ない数であってもよいし、それより多い数であってもよい。また、第1冷却ファン15と第2冷却ファン21を単一の冷却ファンによって構成し、ダクトやエアホース等を介して目的とする複数の個所に冷却風Wを供給するようにすることも可能である。
また、第1導風部材17をアルミニウムや銅等の熱伝導性の良い材料によって形成し、第1導風部材17の一部を回転ドラム9の内面3aや回転軸5の外面或いはアーム部7等に接触させて一層の冷却効果を図るようにすることも可能である。
【0043】
また、第1導風部材17を、ベース板51を挟んでその左右に面対称に第1ガイド19を設ける構成に限らず、ベース板51の左右で第1ガイド19の形成角度、形状、数、間隔あるいは長さ等を変えることも可能である。また、冷却効果は低減するが、ベース板51の片面のみに第1ガイド19を設けるようにすることも可能である。
また、複数の第1ガイド19を、ベース板51なしで正面視扇形状の部分に組み付けることができる場合には、ベース板51を有しない第1ガイド19のみの第1導風部材17とすることも可能である。
【0044】
この他、第2冷却手段47における風箱25の上面は、前述した実施形態では開放しており、その全面を風出口23として利用したが、風箱25の上面を多数の孔やスリット等の風出口23が設けられた、円筒体3の外面3bに沿った形状の蓋体によって閉塞した構成の風箱25を使用することも可能である。
更に、本発明の第1冷却手段46と第2冷却手段47は、回転ドラム9の冷却のみに使用する他、その冷却風Wの一部を利用して他の発熱部の冷却に使用することも可能である。また、本発明の第1冷却手段46と第2冷却手段47は、UVインクを使用する印刷装置に限らず、熱硬化性インクを使用する印刷装置にも適用でき、第1冷却手段46のみを有する印刷装置1とすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…印刷装置、3…円筒体、3a…内面、3b…外面、5…回転軸、7…アーム部、
9…回転ドラム、11…吐出ヘッド、吐出部、13…UV照射器、硬化部、
15…第1冷却ファン、17…第1導風部材、19…第1ガイド、20…先端部、
21…第2冷却ファン、23…風出口、25…風箱、26…底面、
27…第2導風部材、29…第2ガイド、30…先端部、31…繰出し軸、
33…巻取り軸、35…搬送経路、37…ガイドローラー、38…ガイドローラー、
39…巻付けローラー、40…巻付けローラー、41…搬送ローラー、
43…排出ローラー、45…冷却手段、46…第1冷却手段、47…第2冷却手段、
49…リブ、51…ベース板、 52…下端縁、53…通路、55…間隙、
57…閉塞カバー、59…通路、61…間隙、63…閉塞板、65…冷却フィン、
C…周方向、S…間隔、P…記録媒体、W…冷却風、風、Y…回転軸に沿う方向、
Q…領域、R…領域、A…搬送方向、U…非巻回エリア、E…間隔、T…間隔、
+Y…前方、-Y…後方、G…間隔
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10