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  • 特許-静電荷像現像用トナー及び画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20221206BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20221206BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/087 325
G03G15/20 550
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019027040
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020134665
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聖二郎
(72)【発明者】
【氏名】須釜 宏二
(72)【発明者】
【氏名】堀口 治男
(72)【発明者】
【氏名】草野 優咲子
(72)【発明者】
【氏名】芝田 豊子
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124387(JP,A)
【文献】特開2018-072767(JP,A)
【文献】特開2018-005049(JP,A)
【文献】特開2017-156409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、光照射によって固体状態から液体状態に変化する光相転移材料及び結着樹脂を含有するトナー粒子よりなる静電荷像現像用トナーであって、
前記光相転移材料が、下記アゾベンゼン誘導体(3)又はアゾメチン誘導体であり、
前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂であり、
当該静電荷像現像用トナーの、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められる、25℃から200℃まで昇温する一回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH1(J/g)とし、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH2(J/g)とし、前記光相転移材料の融点をTm(℃)とし、かつ前記結着樹脂の軟化点をTsp(℃)としたとき、下記関係式(1)、(3)及び(4)で規定する条件を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
関係式(1):0.1≦ΔH1
関係式(3):40≦(ΔH2/ΔH1)×100≦65
関係式(4):Tm≧Tsp-20
【化1】
【請求項2】
少なくとも、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項3】
前記光の波長が、280nm以上、480nm未満であることを特徴とする請求項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー及び画像形成方法に関する。より詳しくは、光照射による定着方式において、優れた画像強度を有するトナー画像が得られる静電荷像現像用トナー及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を用紙に転写し、転写されたトナー像を加熱定着することで、用紙上に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。このような画像形成装置において、加熱定着によりトナー像を用紙に定着させるには、トナーを高温に加熱して一旦溶融させる必要がある。このため、省エネルギー化を図るには、限度がある。
【0003】
近年、画像形成時における省エネルギー化や、操作性向上、対応メディア種拡大のために熱とは異なる外部刺激で定着するシステムが提案されている。中でも、電子写真プロセスに比較的適合しやすい光定着システムが注目されており、光によって軟化する現像剤(光溶融トナー)が報告されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、結着樹脂と、着色剤と、添加剤とを含有し、前記添加剤が光吸収によりシス-トランス異性化反応し、相転移する化合物を含む現像剤が開示されている。また、特許文献1では、このような現像剤を用いた定着方法として、用紙に転写されたトナー像に光を照射し、光吸収により相転移する化合物を溶融させた後、再度、光を照射して、前記化合物を凝固させることにより、トナー像を用紙に定着させる技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、光吸収によりシス-トランス異性化反応し、相転移する化合物を含む現像剤が用いられる画像形成装置が開示されている。かような画像形成装置の一例として、透明樹脂からなる記録シートへの画像形成時において、感光体と転写ローラーとによって搬送ベルトが挟まれる位置であるニップ位置に向かって、光を照射する露光装置を備えた画像形成装置が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載されている現像剤は、いずれも、光照射による軟化速度が十分ではないため生産性が低く、また形成されるトナー画像の画像強度が低い問題があった。
【0007】
一方、光照射による軟化速度及びトナー画像の定着性を向上させる方法として、光相転移材料として、アゾベンゼン誘導体を含有する光溶融トナーが開示されている(例えば、特許文献3及び4参照。)。これら提案されている方法では、従来の方法に対しては、ある程度のトナー画像の品質向上は認められるが、光照射によるトナー画像の粘度低下が不十分であり、画像強度がやや低いという問題を抱えている。
【0008】
また、上記開示されている各特許文献においては、光相転移材料と、結着樹脂との熱特性を踏まえた関係を規定する方法に関する言及は一切なされていない。従来の提案されている方法における光相転移材料は、結着樹脂中に分子分散状態で存在しているため、光照射を行っても、分子状態の変化に伴う軟化効果が少なく、画像強度の向上には至っていないと考えられる。
【0009】
従って、光照射による定着システムにおいて、画像強度を向上することができる静電荷像現像用トナー及び画像形成方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-191078号公報
【文献】特開2014-191077号公報
【文献】特開2018-005049号公報
【文献】特開2018-124387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、光照射による定着方式において、優れた画像強度を有するトナー画像が得られる静電荷像現像用トナー及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、静電荷像現像用トナーとして、光照射によって固体状態から液体状態に変化する光相転移材料及び非晶性結着樹脂を含有するトナー粒子より構成され、当該静電荷像現像用トナーの、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められる、25℃から200℃まで昇温する一回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量と0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量とが特定の範囲にあり、前記光相転移材料の融点Tm(℃)と前記結着樹脂の軟化点Tsp(℃)とが特定の範囲にある静電荷像現像用トナーにより、光照射による定着方式において、優れた画像強度を有するトナー画像が得られる静電荷像現像用トナー等を提供することができることを見いだし、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
【0014】
1.少なくとも、光照射によって固体状態から液体状態に変化する光相転移材料及び結着樹脂を含有するトナー粒子よりなる静電荷像現像用トナーであって、
前記光相転移材料が、下記アゾベンゼン誘導体(3)又はアゾメチン誘導体であり、
前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂であり、
当該静電荷像現像用トナーの、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められる、25℃から200℃まで昇温する一回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH1(J/g)とし、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH2(J/g)とし、前記光相転移材料の融点をTm(℃)とし、かつ前記結着樹脂の軟化点をTsp(℃)としたとき、下記関係式(1)、(3)及び(4)で規定する条件を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0015】
関係式(1):0.1≦ΔH
【0017】
関係式(3):0≦(ΔH2/ΔH1)×100≦65
【0019】
関係式(4):Tm≧Tsp-2
【0020】
【化2】
【0021】
.少なくとも、第1項に記載の静電荷像現像用トナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含むことを特徴とする画像形成方法。
【0022】
.前記光の波長が、280nm以上、480nm未満であることを特徴とする第項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光照射による定着方式において、優れた画像強度を有するトナー画像が得られる静電荷像現像用トナー及び画像形成方法を提供することができる。
【0024】
本発明で規定する構成からなる転写体の効果発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0025】
従来知られている光を吸収し固体状態から軟化(光相転移)する代表的な光相転移材料として、アゾベンゼン化合物が挙げられる。当該アゾベンゼン化合物の光相転移は、シス-トランス異性化により結晶構造が崩れることで生じていると考えられている。しかしながら、アゾベンゼン化合物はスチレン・アクリル樹脂やポリエステル樹脂等の結着樹脂との相溶性が高いため、静電荷像現像用トナー(以下、単にトナーともいう。)中で結晶構造をとらないことが多いことが分かった。アゾベンゼン化合物が十分な結晶構造をとらない場合、光照射での結晶構造の崩れが生じないため、シス-トランス異性化による溶融粘度の低下幅が小さく、定着強度が十分に上がらないという問題が生じることが判明した。
【0026】
本発明のトナーにおいては、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められる、25℃から200℃まで昇温する一回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH1(J/g)が0.1以上であることを特徴とする。
【0027】
本発明の光相転移材料に由来する融解ピークを有するトナーは、トナー中に光相転移材料の結晶領域が存在すると考えられる。結晶領域では、光照射時に相転移が効果的に生じるため、光相転移材料周辺の結着樹脂が相溶することにより、トナー粒子として軟化が促進され、定着強度が確保されると考えられる。
【0028】
光相転移材料は、結晶領域の分子構造変化によって相転移が誘起されるため、結着樹脂中に単分子で分散した状態よりも結晶状態として存在させることが、トナー粒子軟化の観点で重要であることを見出した。
【0029】
結着樹脂中に光相転移材料が単分子で分散した状態では、分子構造変化に伴う軟化効果は周辺の結着樹脂の相互作用を僅かに変化させるのみであると推測している。
【0030】
よって、このような特性を備えた光相転移材料を含有するトナーを用いることにより、優れた画像強度を得ることができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】画像形成方法で適用可能な画像形成装置の構成の一例を示す概略構成図
図2】画像形成装置を構成する光照射部の構成の一例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも、光照射によって固体状態から液体状態に変化する光相転移材料及び非晶性結着樹脂を含有するトナー粒子よりなる静電荷像現像用トナーであって、前記光相転移材料が、前記アゾベンゼン誘導体(3)又はアゾメチン誘導体であり、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂であり、当該静電荷像現像用トナーの、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められる、25℃から200℃まで昇温する一回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH1(J/g)とし、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH2(J/g)とし、前記光相転移材料の融点をTm(℃)とし、かつ前記結着樹脂の軟化点をTsp(℃)としたとき、前記関係式(1)、(3)及び(4)で規定する条件を満たすことを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通する技術的特徴である。
【0033】
本発明においては、一回目の吸熱量ΔH1(J/g)の測定に引き続き、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH2(J/g)を測定し、前記ΔH1及びΔH2が、記関係式(2)で規定する条件を満たすこと、光相転移材料がより効果的に相転移、周辺の結着樹脂と相溶し、光軟化効果が促進され、良好な画像強度を得ることができる。
関係式(2):ΔH2<ΔH1
【0034】
また、吸熱量ΔH1(J/g)とΔH2(J/g)との比の値((ΔH2/ΔH1)×100)が0以上、65以下であること、トナーの光軟化効果が特に促進される。
【0035】
また、光相転移材料の数平均分子量Mnが、150~2900の範囲内であることが、結着樹脂を併用するため、光相転移材料の液体状態での流動性が大きいことが良好な画像強度を得るために必要と考えられる。数平均分子量Mnが2900を超えると、良好な画像強度を得るための流動性として不十分であり、150未満であると光相転移現象を生じることができない。
【0036】
また、光相転移材料の融点をTm(℃)、前記結着樹脂の軟化点をTsp(℃)としたとき、前記関係式(4)で規定する条件を満たすこと、光相転移材料の結晶領域に由来するΔH1が大きくなり、光軟化効果を最大化することができる。また、関係式(4)の範囲を外れると、本発明の目的効果を十分に得ることが難しくなる。
【0037】
また、光相転移材料の融点Tmが、40~120℃の範囲内であること、室温での出力画像強度及びトナー保管性が向上する。また、光相転移材料の融点Tmが120℃以下であれば、過度のエネルギーを必要とすることなく、画像形成することができる。
【0038】
また、結着樹脂として非結晶性結着樹脂を適用すること、光相転移材料に起因する吸熱ピークの温度領域に明確な吸熱ピークがなく、光相転移材料に由来の融解ピークを正確に抽出することができ
【0039】
また、本発明の画像形成方法では、本発明の静電荷像現像用トナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含むことを特徴とする。さらには、トナー像に照射する光の波長が、280nm以上、480nm未満であることが、効率よく相転移を行うことができる点で好ましい。
【0040】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0041】
《静電荷現像用トナー》
本発明の静電荷現像用トナーは、少なくとも、光照射によって固体状態から液体状態に変化する光相転移材料及び結着樹脂を含有するトナー粒子より構成され、前記光相転移材料が、前記アゾベンゼン誘導体(3)又はアゾメチン誘導体であり、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂であり、当該静電荷像現像用トナーの、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められる、25℃から200℃まで昇温する一回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH1(J/g)とし、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH2(J/g)とし、前記光相転移材料の融点をTm(℃)とし、かつ前記結着樹脂の軟化点をTsp(℃)としたとき、前記関係式(1)、(3)及び(4)で規定する条件を満たすが0.1以上であることを特徴とする。
【0042】
〔示差走査熱量測定によるDSCの測定〕
本発明の静電荷現像用トナーにおける示差走査熱量測定によるDSC曲線より求められる、25℃から200℃まで昇温する一回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH1(J/g)が0.1以上であることを特徴とし、更に、上記一回目の吸熱量ΔH1(J/g)の測定に引き続き、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH2(J/g)を測定したとき、一回目の吸熱量ΔH1に対し、二回目の吸熱量ΔH2が小さいこと、更には、(ΔH2/ΔH1)×100の値が、0以上、65以下である。
【0043】
はじめに、示差走査熱量測定方法について説明する。
【0044】
トナーの示差走査熱量測定は、例えば、高感度型示差走査熱量計「DSC7000X」((株)日立ハイテクサイエンス)を用い、昇降速度10℃/minで、25℃から200℃まで昇温し、得られたDSC曲線より、光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH1(J/g)を測定する。この条件で測定した吸熱量ΔH1(J/g)が0.1以上であることを特徴とする。
【0045】
次いで、200℃で5分間等温保持したのち、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却し、5分間0℃で等温保持する冷却過程、及び昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程で、光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH2(J/g)を測定する。
【0046】
測定手順としては、トナー3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、上記「DSC7000X」のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。
【0047】
本発明のトナーは、光相転移材料を含有するため、上記のトナーの示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線において、光相転移材料に由来する吸熱ピーク(融解ピーク)を有する。
【0048】
トナー粒子中における光相転移材料と結着樹脂の相溶状態は、上記の光相転移材料単独、及び本発明のトナーの示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線における光相転移材料に由来する融解ピークに基づく吸熱量から求められる。
【0049】
すなわち、ΔH2及びΔH1の比である、関係式(3)に係るΔH2/ΔH1は、定着工程の前後における光相転移材料の結晶化比率の変化を表し、このΔH2/ΔH1が小さいほど定着工程において光相転移材料の相溶が促進されることを意味している。
【0050】
上記の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線においてΔH1に係る融解ピークが他のトナー構成材料に由来するピークと重複して2以上のピークトップを有する重複ピークとして得られる場合は、まず、この重複ピークのベースラインに対する始点から終点までの吸熱量ΔH(J/g)を求めると共に、この重複ピークのピーク面積を100%としたときの光相転移材料に由来する融解ピークの部分面積率S1(%)を求め、ΔH(J/g)×S1(%)によってΔH1(J/g)を算出するものとする。重複ピークにおける光相転移材料に由来する融解ピークの部分面積率S1は、まず、当該重複ピークにおける複数のピークトップの間の極小点から温度軸まで下ろした垂線によってピーク面を分割し、この重複ピークにおける、光相転移材料単独の融点に最も近いピークトップ温度を有するピークを光相転移材料に由来する融解ピークとして、この部分面積率を求めることによって得られる。
【0051】
また、ΔH2に係る融解ピークが2以上のピークトップを有する場合についても同様である。
【0052】
また、トナー中に結着樹脂や他の成分が含有され、光相転移材料の微小な吸熱量ΔH1(J/g)が検出しにくい場合には、光相転移材料及びその他の成分を含むトナーと、当該光相転移材料のみを含有しないリファレンスサンプルを作成し、それぞれ測定したDSC曲線の差より、光相転移材料に該当する吸熱量ΔH1(J/g)を求めることができる。
【0053】
本発明においては、光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH1(J/g)は、0.1以上であることを特徴とするが、化合物の特性にもよるが、好ましくは、0.1~50(J/g)の範囲内であり、さらに好ましくは、1.0~40(J/g)の範囲内である。
【0054】
〔光相転移材料〕
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、光照射によって固体状態から液体状態に変化する光相転移材料を含有し、前記光相転移材料が、前記アゾベンゼン誘導体(3)又はアゾメチン誘導体であり、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂であり、当該光相転移材料が、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線から求められる、25℃から200℃まで昇温する一回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH1(J/g)とし、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程における光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH2(J/g)とし、前記光相転移材料の融点をTm(℃)とし、かつ前記結着樹脂の軟化点をTsp(℃)としたとき、前記関係式(1)、(3)及び(4)で規定する条件を満たすことを特徴とする。
【0056】
相転移材料として、光照射によって固体状態から液体状態に変化する化合物で、本発明で規定する融解ピークに基づく吸熱量ΔH1(J/g)が、0.1以上であるという条件を満たすもの、下記に示す化合物群から選択される化合物を挙げることができる。
【0057】
(1)ジアゾ基(R-N=N-R′)を有する単素環式化合物、又は複素環式化合物であり、代表例としては、アゾベンゼン誘導体等を挙げることができる。
【0058】
(2)ビニレン基(R-C=C-R′)を有する単素環式化合物、又は複素環式化合物であり、代表例としては、スチルベン誘導体等を挙げることができる。
【0059】
(3)アゾメチン基(R-C=N-R′)を有する単素環式化合物、又は複素環式化合物であり、代表例としては、アゾメチン誘導体等を挙げることができる。
【0060】
上記光相転移材料の中でも、より低いエネルギーの照射光量でもトナー画像を固体状態から液体状態に変化させやすいのは、アゾベンゼン誘導体である。
【0061】
(アゾベンゼン誘導体)
以下、代表的な光相転移材料として、アゾベンゼン誘導体について、その詳細を説明する。
【0062】
ゾベンゼン誘導体としては、下記一般式(1)で表される構造を有するアゾベンゼン誘導体を挙げることができる。
【化3】
上記一般式(1)において、R~R10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される基であり、R~R10の少なくとも3つは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される基であり、この際、R~Rの少なくとも1つは、炭素数1~18のアルキル基又はアルコキシ基であり、かつ、R~R10の少なくとも1つは、炭素数1~18のアルキル基又はアルコキシ基である。
【0063】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソアミル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、tert-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチル-4-ヘプチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、1-メチルデシル基、1-ヘキシルヘプチル基等の分枝状のアルキル基;が挙げられる。
【0064】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基等の直鎖状のアルコキシ基:イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、4-メチル-2-ペンチルオキシ基、3,3-ジメチルブチルオキシ基、2-エチルブチルオキシ基、1-メチルヘキシルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、1-メチルヘプチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、2-プロピルペンチルオキシ基、2,2-ジメチルヘプチルオキシ基、2,6-ジメチル-4-ヘプチルオキシ基、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシ基、1-メチルデシルオキシ基、1-ヘキシルヘプチルオキシ基等の分枝状のアルコキシ基;が挙げられる。
【0065】
ハロゲン基は、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)又はヨード基(-I)を指す。
【0066】
上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましい。中でも、画像の定着性のさらなる向上の観点から、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルコキシ基であることが好ましい。このように、2個のベンゼン環のパラ位に炭素数1~18のアルキル基又はアルコキシ基を有することで、分子の熱運動性が増加し、上記のように系全体で連鎖的に等方的な融解が生じやすくなる。この際、R及びRで用いられる炭素数1~18のアルキル基又はアルコキシ基は、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよいが、光相転移が生じやすい棒状分子の構造を構成する観点から、直鎖状であることが好ましい。
【0067】
中でも、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数6~12のアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましい。R及びRが上記炭素数範囲内のアルキル基又はアルコキシ基であれば、高い熱運動性を有しながらも、分子間に働くアルキル-アルキル相互作用が比較的弱い。ゆえに、シス-トランス異性化がより進行しやすくなり、光照射による軟化速度及び画像の定着性がさらに向上する。
【0068】
なお、R及びRは、同一であっても異なってもよいが、合成の容易さから、同一であることが好ましい。
【0069】
上記一般式(1)において、R~R及びR~R10のうち少なくとも1つは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される基(以下、単に置換基とも称する)である。このような構造を有することで、シス-トランス異性化に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、π-π相互作用の低減が生じる。その結果、シス-トランス異性化がより進行しやすくなり、光照射による軟化速度及び画像の定着性がさらに向上する。中でも、シス-トランス異性化に必要な自由体積の確保の観点から、R~R及びR~R10のうち少なくとも1つは分岐を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基もしくはアルコキシ基又はハロゲン基であることが好ましく、画像の定着性のさらなる向上の観点から、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0070】
上記一般式(1)において、R~R及びR~R10における置換基の数は、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6である。中でも、アゾベンゼン誘導体の融点を下げすぎず、トナーの耐熱保管性をさらに高める観点から、さらにより好ましくは1~4であり、特に好ましくは1~3である。
【0071】
~R及びR~R10において置換基が存在する位置は、特に制限されないが、上記一般式(1)のR、R、R及びR(言い換えれば、Rのオルト位及びRのオルト位)のいずれかに置換基が少なくとも存在することが好ましく、上記一般式(1)のR、R、R及びRのいずれかにメチル基が少なくとも存在することがより好ましい。かような構造を有するアゾベンゼン誘導体は、光照射による軟化速度がより向上するため画像の定着性が向上し、また融点が適度に高くなることから、トナーの耐熱保管性も向上する。
【0072】
本発明に適用可能なアゾベンゼン誘導体としては、例えば、4,4′-ジヘキシルアゾベンゼン、4,4′-ジオクチルアゾベンゼン、4,4′-ジデシルアゾベンゼン、4,4′-ジドデシルアゾベンゼン、4,4′-ジヘキサデシルアゾベンゼン等の化学式(1)のR及びRが同一の炭素数1~18のアルキル基である4,4′-ジアルキルアゾベンゼン;又は4,4′-ビス(ヘキシルオキシ)アゾベンゼン、4,4′-ビス(オクチルオキシ)アゾベンゼン、4,4′-ビス(ドデシルオキシ)アゾベンゼン、4,4′-ビス(ヘキサデシルオキシ)アゾベンゼン等の化学式(1)のR及びRが同一の炭素数1~18のアルコキシ基である4,4′-ビス(アルコキシ)アゾベンゼンにおいて、ベンゼン環に付加する水素原子がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される基で一置換、二置換又は三置換されている化合物であることが好ましい。より具体的には、下記のアゾベンゼン誘導体(1)~(13)が挙げられる。なお、下記に示すアゾベンゼン誘導体においては、シスートランス状態の表示は省略して示してある。
【化2】
【化3】
当該アゾベンゼン誘導体の合成方法は、特に制限されず、従来公知の合成方法を適用することができる。
【0073】
〈合成例1:アゾベンゼン誘導体(1)の合成〉
例えば、下記反応式Aのように、4-アミノフェノールと亜硝酸ナトリウムとを冷却下で反応させてジアゾニウム塩を生成し、これとo-クレゾールとを反応させて中間体Aを合成したのち(第1段階)、中間体Aに対してn-ブロモヘキサンを作用させることにより、上記アゾベンゼン誘導体(1)を得ることができる。
【化4】
上記反応式Aにおいて、使用する原料(4-アミノフェノール、o-クレゾール、n-ブロモヘキサン等)を他の化合物に変更することで、一般式(1)で表されるR及びRがアルコキシ基であるアゾベンゼン誘導体を得ることができる。当業者であれば、上記変更を適宜行い、所望のアゾベンゼン誘導体を合成することができる。また、上記の製造方法であれば、非対称な構造を有するアゾベンゼン誘導体を容易に得ることができる。
【0074】
〈合成例2:アゾベンゼン誘導体(4)の合成〉
下記反応式Bのように、o-クレゾール及びn-ブロモヘキサンを、それぞれ2-ブロモフェノール及びn-ブロモドデカンにそれぞれ変更することで、前記アゾベンゼン誘導体(4)を得ることができる。
【化5】
〈合成例3:アゾベンゼン誘導体(5)の合成〉
下記反応式Cのように、アゾベンゼン誘導体(4)とメタノールとをPd触媒及び塩基存在下で反応させることで、前記アゾベンゼン誘導体(5)を得ることができる。
【化6】
〈合成例4:アゾベンゼン誘導体(6)の合成〉
下記反応式Dのように、p-ヘキシルアニリンに対して酸化剤である二酸化マンガンを反応させて、4,4′-ジヘキシルアゾベンゼンを合成したのち、N-ブロモスクシンイミドを反応させ、メチルボロン酸をPd触媒及び塩基存在下で反応させることで、前記アゾベンゼン誘導体(6)を得ることができる。
【化7】
上記反応式Dにおいて、使用する原料(p-ヘキシルアニリン及びメチルボロン酸)を他の化合物に変更することで、一般式(1)で表されるR及びRがアルキル基であるアゾベンゼン誘導体を得ることができる。当業者であれば、上記変更を適宜行い、所望のアゾベンゼン誘導体を合成することができる。
【0075】
本発明のアゾベンゼン誘導体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0076】
(アゾメチン誘導体)
本発明に適用可能なアゾメチン誘導体の具体的な例としては、下記のアゾメチン誘導体(A)を挙げることができる。
【化8】
当該アゾメチン誘導体の合成方法は、特に制限されず、従来公知の合成方法を適用することができる。
【0077】
〈合成例5:アゾメチン誘導体(A)の合成〉
下記反応式Eで示すように、アゾメチン誘導体(A)は、下記スキーム1~3に従って得ることができる。
【化9】
上記反応式Eにおいて、ジメチルホルムアミド(DMF)中、原料の4-ニトロフェノールと1-ヨードヘキサン(C13I)とを炭酸カリウム(KCO)を用いて加熱還流して反応させ、反応液を水洗後、濃縮し、精製することにより、4-ヘキシルオキシニトロベンゼンを得ることができる(上記スキーム1参照)。
【0078】
次いで、エタノール(EtOH)とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中、パラジウム炭素(Pd/C触媒)下、スキーム1で得られた4-ヘキシルオキシニトロベンゼンに対し、水素ガス(H)を封入しながら撹拌して反応させ、反応液から触媒を除去し、溶液を濃縮後、エタノールで再結晶することで、4-(ヘキシルオキシ)アニリンを得ることができる(上記スキーム2参照)。
【0079】
次いで、エタノール(EtOH)中、スキーム2で得られた4-(ヘキシルオキシ)アニリンと5-メトキシチオフェン-2-カルボキシアルデヒドとを加熱撹拌して反応させ、反応液をろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶することにより、上記アゾメチン誘導体(A)を得ることができる(上記スキーム3参照)。
【0080】
〔結着樹脂〕
本発明のトナーは、上記説明した光照射によって固体状態から液体状態に変化する光相転移材料とともに、結着樹脂を含有するトナー粒子より構成することを特徴とする。
【0081】
本発明のトナーが結着樹脂を含むことで、トナーが適切な粘度となり、紙に塗布した際のにじみが抑制されるため、細線再現性やドット再現性が向上する。トナーの製造方法として、従来公知の乳化凝集法を利用することにより、略均一な粒子径及び形状を有するトナー粒子を作製できることが一般的に知られている。
【0082】
例えば、上記説明した光相転移材料の一例である一般式(1)で表される構造を有するアゾベンゼン誘導体単独では、分子の構造上、乳化凝集法における塩析を用いてトナー粒子を作製することができないが、アゾベンゼン誘導体とともに結着樹脂を併用することにより、乳化凝集法における塩析を用いて略均一な粒子径及び形状を有するトナー粒子の作製を行うことができる。よって、アゾベンゼン誘導体及び結着樹脂を含むトナーは、静電荷像現像用のトナーにより容易に適用することができる。
【0083】
本発明においては、結着樹脂としては、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられている樹脂を制限なく用いることができる。具体的には、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。これら結着樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0084】
本発明においては、これら結着樹脂の中でも、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有し、光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量をΔH1(J/g)の測定の阻害にならない観点から、結着樹脂としては非結晶性結着樹脂であることが好ましく、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0085】
以下では、好ましい結着樹脂であるスチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂について説明する。
【0086】
(スチレン・アクリル樹脂)
本発明でいうスチレン・アクリル樹脂とは、少なくともスチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを用いて、重合を行うことにより形成される樹脂である。ここで、スチレン単量体とは、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
【0087】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。具体的には、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH=C(CH)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体等のビニル系エステル化合物が含まれる。
【0088】
以下に、スチレン・アクリル樹脂を形成することが可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、以下に示すものに限定されるものではない。
【0089】
スチレン単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。
【0090】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、以下に示すアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体が代表的なもので、アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等が挙げられる。メタクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0091】
これらのスチレン単量体、アクリル酸エステル単量体、又はメタクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0092】
また、スチレン・アクリル共重合体には、上述したスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体のみで形成された共重合体の他に、これらスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に加え、一般のビニル単量体を併用して形成されるものもある。以下に、本発明でいうスチレン・アクリル共重合体を形成する際に併用可能なビニル単量体を例示するが、本発明で併用可能なビニル単量体は、以下に示すものに限定されるものではない。
【0093】
(1)オレフィン類:エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(2)ビニルエステル類:プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(3)ビニルエーテル類:ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(4)ビニルケトン類:ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(5)N-ビニル化合物類:N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等
(6)その他:ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等。
【0094】
また、多官能性ビニル単量体を使用して、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。さらに、側鎖にイオン性解離基を有するビニル単量体を使用することも可能である。イオン性解離基の具体例としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。以下に、これらイオン性解離基を有するビニル単量体の具体例を示す。
【0095】
カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。
【0096】
スチレン・アクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。必要に応じて例えば、n-オクチルメルカプタン、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート等の公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0097】
本発明に使用されるスチレン・アクリル樹脂を形成する場合、スチレン単量体及びアクリル酸エステル単量体の含有量は特に限定されるものではなく、結着樹脂の軟化点温度やガラス転移温度を制御する観点から適宜調整することが可能である。具体的には、スチレン単量体の含有量は、単量体全体に対し40~95質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。また、アクリル酸エステル単量体の含有量は、単量体全体に対し5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0098】
スチレン・アクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
【0099】
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0100】
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-tert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(tert-ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
【0101】
また、乳化重合法でスチレン・アクリル樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
【0102】
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~100℃であることが好ましく、55~90℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、例えば、2~12時間であることが好ましい。
【0103】
乳化重合法により形成されるスチレン・アクリル樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とすることもできる。この場合の製造方法としては、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する多段重合法を採用することができる。
【0104】
スチレン・アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、定着性や耐熱保管性等の観点から、35~70℃の範囲が好ましく、40~60℃の範囲がより好ましい。Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
【0105】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂である。なお、ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし結晶性であってもよい。
【0106】
多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
【0107】
ジカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の不飽和芳香族ジカルボン酸;等が挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
【0108】
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、及び上記のカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1~3のアルキルエステル等も用いることができる。
【0109】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコール等の飽和脂肪族ジオール;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオール等の不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオールが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
【0110】
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、例えば、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)方法が挙げられる。
【0111】
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等を挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu))、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等のチタンキレート等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム等を挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネート等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
重合温度は特に限定されるものではないが、70~250℃であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0113】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、定着性や耐熱保管性等の観点から、35~70℃の範囲が好ましく、40~60℃の範囲がより好ましい。Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
【0114】
本発明のトナーが結着樹脂を含むが、その含有割合は、光相転移材料:結着樹脂=5:95~80:20(質量比)の範囲内が好ましく、10:90~50:50(質量比)の範囲内がより好ましい。上記範囲であれば、光相転移材料の光相転移が生じやすく、トナーの光照射による軟化速度が十分なものとなる。また、細線再現性やドット再現性にも優れる。
【0115】
なお、光相転移材料及び結着樹脂を含む本発明のトナーは、単層構造であってもよいしコア・シェル構造であってもよい。コア・シェル構造のコア粒子及びシェル部に用いられる結着樹脂の種類は、特に制限されない。
【0116】
〔その他のトナー成分〕
本発明の静電荷像現像用トナーには、上記説明した光相転移材料及び結着樹脂の他に、各成分を含有させることができる。
【0117】
(着色剤)
本発明のトナーは着色剤を含んでもよい。着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
【0118】
黒色のトナーを得るための着色剤としては、例えば、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。また、磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
【0119】
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等の染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等の顔料が挙げられる。
【0120】
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等の染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等の顔料が挙げられる。
【0121】
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等の染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76等の顔料が挙げられる。
【0122】
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0123】
着色剤の含有割合は、トナー全質量に対し、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましく、2~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0124】
(離型剤)
本発明のトナーには、離型剤を含有してもよい。本発明に適用可能な離型剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々のワックスを用いることができる。
【0125】
ワックスとしては、例えば、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、パラフィン、合成エステルワックス等が挙げられ、特に、低融点及び低粘度であることから、合成エステルワックスを用いることが好ましく、合成エステルワックスとしては、ベヘン酸ベヘニル、グリセリントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等を用いることが特に好ましい。
【0126】
離型剤の含有割合は、トナー全質量に対し、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、3~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0127】
(荷電制御剤)
本発明のトナーでは、荷電制御剤を含有してもよい。本発明に適用可能な荷電制御剤は、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、従来公知の種々の正帯電性の荷電制御剤及び負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
【0128】
荷電制御剤の含有割合は、トナー全質量に対し、0.01~30質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0129】
(外添剤)
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、当該トナー粒子に対し、後処理剤として、流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して、本発明のトナーを構成してもよい。
【0130】
外添剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子等の無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子等の無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子等の無機チタン酸化合物粒子等の無機粒子が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0131】
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。
【0132】
これら外添剤の添加量は、トナー全質量に対し、0.05~5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~3質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0133】
(トナーの平均粒径)
本発明のトナーにおいて、平均粒径としては、体積基準のメジアン径(D50)で4~10μmの範囲内であることが好ましく、6~9μmの範囲内であることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなりハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する観点から好ましい。
【0134】
本発明において、トナーの体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
【0135】
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8.0質量%になるまでピペットにて注入する。
【0136】
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
【0137】
(トナーの製造方法)
本発明のトナーの製造に適用が可能な製造方法としては、特に制限はない。例えば、光相転移材料、着色剤及び結着樹脂を含有するトナーを製造する場合は、粒子径及び形状の制御が容易な乳化凝集法を利用した製造方法であることが好ましい。
【0138】
当該入荷凝集法を利用した製造方法は、下記の各工程より構成される。
【0139】
(工程1)各構成粒子分散液の調製工程
(1A)結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液の調製工程
(1B)着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液の調製工程
(1C)光相転移材料粒子の分散液を調製する光相転移材料粒子分散液の調製工程
(工程2)結着樹脂粒子、着色剤粒子及び光相転移材料粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集・融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(工程3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー粒子を形成する熟成工程
(工程4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(工程5)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
(工程6)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
の各工程より構成されていることが好ましい。
【0140】
以下、上記(工程1)における各構成粒子分散液の調製工程である(1A)~(1C)の詳細について説明する。
【0141】
(1A)結着樹脂粒子分散液の調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合等により樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂を構成する重合性単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、結着樹脂粒子の分散液を作製する。
【0142】
また、結着樹脂粒子分散液を得る方法として、上記の水系媒体中で重合開始剤により重合性単量体を重合させる方法の他に、例えば、溶媒を用いることなく、水性媒体中において分散処理を行う方法、あるいは結晶性樹脂を酢酸エチル等の溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水性媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法等が挙げられる。
【0143】
この際、必要に応じ、結着樹脂には離型剤を予め含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。
【0144】
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50~300nmの範囲内が好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によっても測定することができる。
【0145】
(1B)着色剤粒子分散液の調製工程
この着色剤粒子分散液の調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0146】
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、10~300nmの範囲内であることが好ましく、50~200nmの範囲内であることがより好ましい。着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
【0147】
(1C)光相転移材料粒子分散液の調製工程
この光相転移材料粒子分散液の調製工程は、光相転移材料粒子を水系媒体中に微粒子状に分散させて光相転移材料分散体粒子の分散液を調製する工程である。光相転移材料粒子分散液を調製するにあたり、まず、光相転移材料乳化液を調製する。光相転移材料乳化液の調製方法としては、例えば、有機溶媒に光相転移材料、例えば、アゾベンゼン誘導体を溶解させた光相転移材料溶液を得た後、該光相転移材料溶液を水系媒体中で乳化させる方法が挙げられる。
【0148】
光相転移材料を有機溶媒に溶解する方法は、特に制限されず、光相転移材料、例えば、アゾベンゼン誘導体を有機溶媒に添加して、アゾベンゼン誘導体が溶解するように撹拌混合する方法がある。光相転移材料の添加割合は、有機溶媒100質量部に対して、好ましくは5~100質量部の範囲内であり、より好ましくは10~50質量部の範囲内である。
【0149】
次に、光相転移材料溶液と水系媒体とを混合し、ホモジナイザー等の公知の分散機を用いて撹拌する。これにより、光相転移材料が液滴となって、水系媒体中に乳化され、光相転移材料乳化液が調製される。
【0150】
光相転移材料溶液の添加割合は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは20~200質量部の範囲内であり、より好ましくは50~100質量部の範囲内である。
【0151】
また、光相転移材料溶液と水系媒体との混合時における、光相転移材料溶液及び水系媒体のそれぞれの温度は、有機溶媒の沸点未満となる温度範囲であって、好ましくは20~80℃の範囲内であり、より好ましくは30~75℃の範囲内である。光相転移材料溶液と水系媒体との混合時における、光相転移材料溶液の温度と水系媒体の温度とは、互いに同一であっても異なっていてもよく、好ましくは互いに同一である。
【0152】
分散機の撹拌条件は、例えば、容量が1~3Lの場合、その回転数が7000~20000rpmの範囲内であることが好ましく、また、その撹拌時間が10~30分の範囲内であることが好ましい。
【0153】
光相転移材料粒子分散液は、光相転移材料乳化液から有機溶媒を除去することにより調製される。光相転移材料乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、例えば、送風、加熱、減圧、又はこれらの併用等、公知の方法が挙げられる。
【0154】
一例として、光相転移材料乳化液は、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、好ましくは25~90℃の範囲内、より好ましくは30~80℃の範囲内で、初期の有機溶媒量の80~95質量%の範囲内が除去されるまで加熱されることにより、有機溶媒が除去される。これにより、水系媒体から有機溶媒が除去されて、光相転移材料粒子が水系媒体中に分散された光相転移材料粒子分散液が調製される。
【0155】
光相転移材料粒子分散液中の光相転移材料粒子の質量平均粒径は、90~1200nmの範囲内が好ましい。光相転移材料粒子の質量平均粒径は、光相転移材料を有機溶媒に配合したときの粘度、光相転移材料溶液と水との配合割合、光相転移材料乳化液を調製するときの分散機の撹拌速度等を適宜調節することにより、上記範囲内に設定することができる。光相転移材料粒子分散液中の光相転移材料粒子の質量平均粒径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
【0156】
〈有機溶媒〉
上記トナーの製造工程で用いられる有機溶媒は、本発明に係る光相転移材料を溶解させることができれば特に制限されず使用することができる。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0157】
このような有機溶媒は、単独でも又は2種以上混合しても用いることができる。これら有機溶媒の中でも、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類が好ましく、メチルエチルケトン、ジクロロメタンがより好ましい。
【0158】
〈水系媒体〉
上記トナーの製造工程で用いられる水系媒体は、水、又は水を主成分として、アルコール類、グリコール類等の水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤等の任意成分が配合されている水系媒体等が挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
【0159】
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等が挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0160】
このような界面活性剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが使用される。
【0161】
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.04質量部以上1質量部以下である。
【0162】
上記(工程2)の会合工程から(工程6)の外添剤添加工程までについては、従来公知の種々の方法に従って行うことができる。
【0163】
なお、(工程2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の二価の金属塩;鉄、アルミニウム等の三価の金属塩等が挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0164】
〔現像剤〕
本発明のトナーは、例えば、磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合等が考えられ、いずれも好適に使用することができる。
【0165】
上記磁性体としては、例えばマグネタイト、γ-ヘマタイト、又は各種フェライト等を使用することができる。
【0166】
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
【0167】
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂又はフッ素樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂等使用することができる。
【0168】
キャリアの体積基準のメジアン径は、20~100μmであることが好ましく、25~80μmであることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0169】
トナーのキャリアに対する混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2~10質量%であることが好ましい。
【0170】
《画像形成方法》
本発明のトナーは、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及び感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法等、いずれの画像形成方法にも適用することができる。
【0171】
本発明の画像形成方法においては、本発明のトナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含むことを特徴とし、照射する光の波長としては、280nm以上、480nm未満であることが好ましい態様である。
【0172】
〔画像形成装置概要〕
図1は、本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。ただし、本発明に用いられる画像形成装置としては、下記の形態及び図示例に限定されるものではない。図1には、モノクロの画像形成装置100の例を示すが、カラーの画像形成装置にも本発明を適用することができる。
【0173】
画像形成装置100は、記録媒体としての記録用紙Sに画像を形成する装置であって、画像読取装置71及び自動原稿送り装置72を備え、用紙搬送系7により搬送される記録用紙Sに対し画像形成部10、照射部40、圧着部9により画像形成を行う。
【0174】
また、記録媒体として、画像形成装置100では記録用紙Sを用いているが、画像形成を行う対象とされる媒体は、用紙以外でもよい。
【0175】
自動原稿送り装置72の原稿台上に載置された原稿dは、画像読取装置71の走査露光装置の光学系により走査露光されてイメージセンサーCCDに読み込まれる。イメージセンサーCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部20において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像形成部10の露光器3に入力される。
【0176】
画像読取装置71は、走査露光装置、イメージセンサーCCD、及び画像処理部20を有する。そして、自動原稿送り装置72の原稿台上に載置された原稿dは、画像読取装置71に搬送され、走査露光装置の光学系により走査露光されてイメージセンサーCCDに読み込まれる。イメージセンサーCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部20において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理などが行われた後、画像形成部10の露光器3に入力される。
【0177】
用紙搬送系7は、複数のトレイ16、複数の給紙部11、搬送ローラー12、搬送ベルト13等を備えている。トレイ16は、決められたサイズの記録用紙Sをそれぞれ収容しており、制御部90からの指示に応じて定められたトレイ16の給紙部11を作動させ、記録用紙Sを供給する。搬送ローラー12は、給紙部11によってトレイ16から送り出された記録用紙S又は手差し給紙部15から搬入された記録用紙Sを画像形成部10へ搬送する。
【0178】
画像形成部10は、感光体1の周りに、感光体1の回転方向に沿って、帯電器2、露光器3、現像部4、転写部5、除電部6及びクリーニング部8がこの順番に配置されて構成されている。
【0179】
〔照射部〕
次いで、トナー像を記録用紙上に形成したのち、当該トナー像に光照射して、前記トナー像を軟化させる照射部40について説明する。
【0180】
図2は、画像形成装置100における照射部40及び圧着部9の周辺構成を示す部分拡大図である。
【0181】
画像形成部10は、感光体1の周りに、感光体1の回転方向に沿って、帯電器2、露光器3、現像部4、転写部5、除電部6及びクリーニング部8がこの順番に配置されて構成されている。
【0182】
感光体1は、表面に光導電層の形成された像担持体であり、図示しない駆動装置により図1中の矢印方向に回転可能に構成されている。感光体1の近傍には、画像形成装置100内の温度や湿度を検知する温湿度計17が設けられている。
【0183】
帯電器2は、感光体1の表面に均一に電荷を与え、感光体1の表面を一様に帯電させる。
【0184】
露光器3は、レーザーダイオードなどのビーム発光源を備え、帯電された感光体1の表面にビーム光を照射することで照射部分の電荷を消失させ、感光体1上に画像データに応じた静電潜像を形成する。
【0185】
現像部4は、内部に収容されるトナーを感光体1に供給して、感光体1表面上に静電潜像に基づくトナー像を作像する。
【0186】
転写部5は、記録用紙Sを介して感光体1と対向して配置され、トナー像を記録用紙Sに転写する。
【0187】
除電部6は、トナー像を転写した後の感光体1上の除電を行う。
【0188】
クリーニング部8は、ブレード85を備える。ブレード85により、感光体1の表面をクリーニングして感光体1の表面に残留した現像剤を除去する。
【0189】
照射部40は、記録用紙S上に形成されたトナー像に光を照射する光源である。具体的には、照射部40は、感光体1と転写ローラー50とにニップされた記録用紙S面に対して感光体1側に配置されている。また、照射部40は、用紙搬送方向において、感光体1と転写ローラー50とのニップ位置と圧着部9との間に配置されている。
【0190】
照射部40は、現像剤に含まれる光吸収により相転移する化合物(例えば、アゾベンゼン誘導体)を溶融させるものであって、好ましくは280nm以上、480nm未満の範囲内、より好ましくは330nm以上390nm未満の範囲内の波長を有する紫外光を照射する。照射部40における紫外光の照射量は、好ましくは0.1~200J/cmの範囲内、より好ましくは0.5~100J/cmの範囲内、さらに好ましくは、1.0~50J/cmの範囲内である。
【0191】
照射部40の例には、発光ダイオード(LED)、レーザー光源などが挙げられる。それにより、重合体(A)を含むトナー像を溶融又は軟化させて、記録用紙S上にトナー像を定着させる。照射する光の波長及び照射量は、それぞれ前述した通りである。
【0192】
圧着部9は、任意に設置されるものであり、トナー像が転写された記録用紙Sに対し、加圧部材91及び92によって圧力のみ又は熱及び圧力を加えて定着処理を施し、これにより記録用紙S上に画像を定着させる。画像が定着された記録用紙Sは、搬送ローラーによって排紙部14に搬送され、排紙部14から機外へ排出される。
【0193】
また、画像形成装置100は、用紙反転部24を備えている。それにより、加熱定着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、又は表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送し記録用紙Sの両面に画像形成を行うことを可能としている。
【0194】
次いで、上記図1に示される画像形成装置を用いた画像形成方法について、以下説明する。
【0195】
まず、帯電器2により感光体1に一様な電位を付与して帯電させた後、原画像データに基づいて露光器3により照射した光束で感光体1上を走査し、静電潜像を形成する。
【0196】
次に現像部4により、光吸収により相転移する化合物を含む現像剤を感光体1上に供給する。
【0197】
感光体1の表面に担持されたトナー像が、感光体1の回転によって転写ローラー50の位置に至るタイミングに合わせて、トレイ16から記録用紙Sを画像形成部10に搬送すると、転写ローラー50に印加される転写バイアスにより、感光体1上のトナー像が、転写部材50と感光体1とにニップされた記録用紙S上に転写される。
【0198】
また、転写ローラー50は、加圧部材を兼ねており、感光体1から記録用紙Sにトナー像を転写させつつ、トナー像を確実に記録用紙Sに密着させる。
【0199】
トナー像が記録用紙Sに転写された後に、クリーニング部8のブレード85は、感光体1表面に残留する現像剤を除去する。
【0200】
このようにして、トナー像が転写された記録用紙Sは、搬送ベルト13により照射部40、及び圧着部9へ搬送される。
【0201】
そして、照射部40は、記録用紙S上に転写されたトナー像に対して、光(好ましくは280~480nmの範囲内の光)を照射する。照射部40により記録用紙S上のトナー像に光を照射することにより、トナー像を溶融及び軟化させることができるため、トナー像を記録用紙Sに対して定着させることができる。
【0202】
トナー像が保持された記録用紙Sが、搬送ベルト13により圧着部9に至ると、トナー像が形成された記録用紙Sが、加圧部材91及び加圧部材92とで圧着される。圧着部9により加圧される前に、トナー像が照射部40による光照射により軟化しているため、記録用紙Sに対するトナー像をより低いエネルギーで圧着することができる。
【0203】
トナー像を加圧する際の圧力は、前述の通りである。なお、該加圧工程は、光を照射して、トナー像を軟化させる工程の前又は同時に行ってもよい、後に行ってもよい。あらかじめ軟化した状態のトナー像に加圧することができ、画像強度を高めやすい観点では、加圧工程は、光照射後に行うほうが好ましい。
【0204】
加圧部材91は、記録用紙Sが加圧部材91及び加圧部材92の間を通過する際に、記録用紙S上のトナー像を加熱することができる。光照射によって軟化したトナー像は、この加熱によりさらに軟化され、その結果、トナー像の記録用紙Sへの定着性(画像強度)がより向上する。
【0205】
トナー像の加熱温度は、前記のとおりである。トナー像の加熱温度(トナー像の表面温度)は、非接触温度センサーにて測定することができる。具体的には、例えば、加圧部材から記録媒体が排出される位置に非接触温度センサーを設置して、記録媒体上のトナー像の表面温度を測定すればよい。
【0206】
加圧部材91及び加圧部材92によって圧着されたトナー像は、固化されて、記録用紙S上に定着される。
【実施例
【0207】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行った。
【0208】
《各構成材料の調製》
[光相転移材料の調製]
(アゾベンゼン誘導体(1)の調製)
例示化合物であるアゾベンゼン誘導体(1)を下記の方法に従って調製した。
【0209】
前述の様に、下記反応式Aに従って、4-アミノフェノールと亜硝酸ナトリウムとを冷却下で反応させてジアゾニウム塩を生成し、これとo-クレゾールとを反応させて中間体Aを合成した(第1段階)。次いで、中間体Aに対してn-ブロモヘキサンを作用させることにより、数平均分子量Mnが396のアゾベンゼン誘導体(1)を調製した。
【0210】
また、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定した融点Tmは、87℃であった。
【化10】
(アゾベンゼン誘導体(3)の調製)
前記記載した例示化合物であるアゾベンゼン誘導体(3)を下記の方法に従って調製した。
【0211】
上記アゾベンゼン誘導体(1)の調製で記載した反応式Aにおいて、中間体Aに作用させるn-ブロモヘキサンを、n-ブロモドデカンに変更した以外は同様にして、数平均分子量Mnが746で、融点Tmが72℃の下記アゾベンゼン誘導体(3)を調製した。
【化11】
(アゾベンゼン誘導体(9)の調製)
前記記載した例示化合物であるアゾベンゼン誘導体(9)を下記の方法に従って調製した。
【0212】
上記アゾベンゼン誘導体(1)の調製で記載した反応式Aにおいて、4-アミノフェノールを4-アミノーオルトクレゾールに、o-クレゾールを2-tert―ブチルフェノールに、n-ブロモヘキサンをn-ブロモドデカンにそれぞれ変更した以外は同様にして、数平均分子量Mnが802で、融点Tmが97℃の下記アゾベンゼン誘導体(9)を調製した。
【化12】
(アゾベンゼン誘導体(13)の調製)
前記記載した例示化合物であるアゾベンゼン誘導体(13)を下記の方法に従って調製した。
【0213】
下記に示す反応式Fに従って、p-オクチルアニリンに対して酸化剤である二酸化マンガンを反応させて、数平均分子量Mnが406で、融点Tmが52℃の下記アゾベンゼン誘導体(13)を調製した。
【化13】
(アゾメチン誘導体(A)の調製)
前記記載した例示化合物であるアゾメチン誘導体(A)を下記の方法に従って調製した。アゾメチン誘導体(A)の数平均分子量Mnは285、融点Tmは63℃である。
【0214】
下記に示す反応式Eに従って、ジメチルホルムアミド(DMF)中、原料の4-ニトロフェノールと1-ヨードヘキサン(C13I)とを炭酸カリウム(KCO)を用いて加熱還流して反応させ、反応液を水洗後、濃縮し、精製することにより、4-ヘキシルオキシニトロベンゼンを得た(下記スキーム1参照)。
【0215】
次いで、エタノール(EtOH)とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中、パラジウム炭素(Pd/C触媒)下、スキーム1で得られた4-ヘキシルオキシニトロベンゼンに対し、水素ガス(H)を封入しながら撹拌して反応させ、反応液から触媒を除去し、溶液を濃縮後、エタノールで再結晶することで、4-(ヘキシルオキシ)アニリンを得た(下記スキーム2参照)。
【0216】
次いで、エタノール(EtOH)中、スキーム2で得られた4-(ヘキシルオキシ)アニリンと5-メトキシチオフェン-2-カルボキシアルデヒドとを加熱撹拌して反応させ、反応液をろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶することにより、上記アゾメチン誘導体(A)を得た(下記スキーム3参照)。
【化14】
[結着樹脂の調製]
〔結着樹脂1の調製〕
(スチレン・アクリル樹脂を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の調製)
〈第1段重合〉
攪拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウムの8質量部を、イオン交換水の3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウムの10質量部をイオン交換水の200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とし、これに、スチレンを480質量部、n-ブチルアクリレートを250質量部、メタクリル酸を68.0質量部、及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネートを16.0質量部含有する重合性単量体溶液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、攪拌することにより重合を行い、スチレン・アクリル樹脂粒子(1a)を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1A)を調製した。
【0217】
(第2段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムの7質量部を、イオン交換水の800質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱した後、これに、上記で得られたスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1A)を260質量部、スチレンを245質量部、n-ブチルアクリレートを120質量部、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネートを1.5質量部、それぞれ90℃にて溶解させて調製した重合性単量体溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CREARMIX(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)により1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
【0218】
次いで、この分散液に、過硫酸カリウムの6質量部をイオン交換水の200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃で1時間にわたって加熱攪拌することにより重合を行い、スチレン・アクリル樹脂粒子(1b)を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1B)を調製した。
【0219】
(第3段重合)
上記で得られたスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1B)に、過硫酸カリウムの11質量部をイオン交換水の400質量部に溶解させた溶液を添加し、次いで、82℃の温度条件下で、スチレンを435質量部、n-ブチルアクリレートを130質量部、メタクリル酸を33質量部、及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネートを8質量部含有する重合性単量体溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱攪拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却して、結着樹脂1としてスチレン・アクリル樹脂を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1を得た。また、結着樹脂1であるスチレン・アクリル樹脂1の軟化点温度(Tsp)を下記の方法で測定した結果、105℃であった。
【0220】
(結着樹脂の軟化点温度(Tsp)の測定)
温度20±1℃、相対湿度50±5%RHの環境下において、結着樹脂1の1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP-10A」(島津製作所製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作成し、次いで、この成型サンプルを、温度24±5℃、相対温度50±20%RHの環境下において、フローテスター「CFT-500D」(島津製作所製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetを、結着樹脂1の軟化点とした。
【0221】
〔結着樹脂2~7の調製〕
上記結着樹脂1の調製において、第1段重合、第2段重合、第3弾重合で用いるスチレン、n-ブチルアクリレート、メタクリル酸の添加量及び液温条件を、表Iに記載の軟化点となるように適宜変更した以外は同様にして、結着樹脂2~7を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液2~7を調製した。
【0222】
[光相転移材料粒子分散液の調製]
〔光相転移材料粒子分散液1の調製〕
ジクロロメタンの80質量部と、上記調製した光相転移材料であるアゾベンゼン誘導体(1)の20質量部とを、50℃で加熱しながら混合攪拌し、光相転移材料を含む溶液を調製した。
【0223】
次いで、得られた溶液100質量部に、50℃に温めた蒸留水を99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を0.5質量部含む混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間攪拌して乳化させ、光相転移材料の乳化液を調製した。
【0224】
得られた光相転移材料の乳化液をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱攪拌して有機溶媒を除去して、光相転移材料粒子分散液1を得た。光相転移材料粒子分散液1中の光相転移材料粒子の粒径を、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径は183nmであった。
【0225】
(光相転移材料粒子分散液2~5の作製)
光相転移材料粒子分散液1の作製において、光相転移材料を表に記載の光相転移材料に変更した以外は同様にして、光相転移材料粒子分散液2~5を作製した。
【0226】
《トナーの調製》
〔トナー1の調製〕
上記で作製したスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1(結着樹脂1)を固形分換算で432質量部、光相転移材料粒子分散液1(アゾベンゼン誘導体(1))を固形分換算で288質量部、イオン交換水900質量部を、攪拌装置、温度センサー、および冷却管を装着した反応装置に投入した。容器内の温度を30℃に保持して、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
【0227】
次に、塩化マグネシウム・6水和物の2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、攪拌しながら、10分間かけて滴下した後、昇温を開始し、この系を60分間かけて70℃まで昇温し、70℃を保持したま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(D50)が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。
【0228】
次いで、70℃で1時間攪拌した後、さらに昇温を行い、75℃の状態で加熱攪拌することにより、粒子の融着を進行させた。その後、30℃まで冷却することにより、トナー粒子の分散液を得た。
【0229】
上記で得られたトナー粒子の分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥して、トナー粒子を作製した。
【0230】
得られたトナー粒子に、疎水性シリカ(数平均一次粒径:12nm)1質量%、及び疎水性チタニア(数平均一次粒径:20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサー(登録商標)を用いて混合することにより、トナー1を調製した。
【0231】
トナー1の体積基準のメジアン径(D50)(トナーの平均粒径)を、「コールターカウンター3(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定したところ、7.6μmであった。なお、トナー1における光相転移材料であるアゾベンゼン誘導体(1)と結着樹脂1との質量比は、40:60(質量%)である
〔トナー2~10の調製〕
上記トナー1の調製において、光相転移材料粒子分散液の種類と、スチレン・アクリル樹脂粒子分散液の種類と、光相転移材料とスチレン・アクリル樹脂の構成比率を、表Iに記載の構成に変更した以外は同様にして、トナー2~10を調製した。
【0232】
〔吸熱量ΔH1及びΔH2の測定〕
上記調製した各トナーについて、下記の方法に従って、光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH1(J/g)及び吸熱量ΔH2(J/g)を測定した。
【0233】
トナーの示差走査熱量測定装置として、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用い、トナー3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットした。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。
【0234】
次いで、昇降速度10℃/minで、25℃から200℃まで昇温し、得られたDSC曲線より、光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH1(J/g)を測定した。
【0235】
次いで、200℃で5分間等温保持したのち、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却し、5分間0℃で等温保持する冷却過程、及び昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程で、光相転移材料に由来の融解ピークに基づく吸熱量ΔH2(J/g)を測定した。
【0236】
《現像剤の調製》
上記のように調製したトナー1~10を用い、シクロヘキサンメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体樹脂(モノマー質量比1:1)で被覆した体積平均粒径が30μmのフェライトキャリアを、トナー濃度が6質量%となるように混合し、現像剤1~10を製造した。混合は、V型混合機を用いて30分間行った。
【0237】
《トナーの評価》
〔定着性試験〕
定着性試験は、上記調製した現像剤を用いて、常温常湿環境下(温度20℃、湿度50%RH)で行った。一方に現像剤、他方に普通紙(坪量:64g/m)を設置した一対の平行平板(アルミ)電極間に、現像剤を磁力によって摺動させながら配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスとACバイアスとはトナー付着量4g/mとなる条件でトナーを現像させ、紙の表面にトナー層を形成し、図2に記載の定着装置を用い、表Iに記載の定着装置条件で定着を行って、印刷物1~13を作製した。
【0238】
この印刷物の1cm角の画像を、「JKワイパー(登録商標)」(日本製紙クレシア株式会社製)で15kPaの圧力をかけて10回こすり、画像の定着率で評価した。定着率70%以上を合格とする。なお、画像の定着率とは、プリント後の画像及びこすった後の画像の濃度を蛍光分光濃度計「FD-7」(コニカミノルタ(株)製)で測定し、こすった後のベタ画像の反射濃度を、プリント後のベタ画像の反射濃度で除した値を百分率で表した数値である。
【0239】
表Iに記載の定着装置条件1~3は、以下のとおりである。
【0240】
定着装置としては、以下の点を変更した以外は図2と同様の構成の3種の定着装置を用いた。
【0241】
定着装置条件1:図2において、圧着部9がなく、照射部40から照射される紫外光の波長は385nmであり(光源:発光波長が385nm±10nmのLED光源)、照射量は、照度500mW/cmで、積算光量が5J/cmである。
【0242】
定着装置条件2:図2に記載の様に、圧着部9を有し、加圧部材91の温度が20℃で、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部40の光源および照射量は定着装置条件1と同様である。
【0243】
定着装置条件2:図2に記載の様に、圧着部9を有し、加圧部材91の温度が80℃で、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部40の光源および照射量は定着装置条件1と同様である。
【0244】
以上により得られた結果は、表Iに示す。
【表1】
【符号の説明】
【0245】
1 感光体
2 帯電器
3 露光器
4 現像部
5 転写部
6 除電部
7 用紙搬送系
8 クリーニング部
9 圧着部
10 画像形成部
11 給紙部
12 搬送ローラー
13 搬送ベルト
14 排紙部
15 手差し給紙部
16 トレイ
20 画像処理部
24 用紙反転部
40 照射部
50 転写ローラー
71 画像読取装置
72 自動原稿送り装置
85 ブレード
90 制御部
91、92 加圧部材
100 画像形成装置
図1
図2