(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 43/02 20060101AFI20221206BHJP
F16D 67/02 20060101ALI20221206BHJP
F16D 65/22 20060101ALI20221206BHJP
F16D 51/12 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F16D43/02
F16D67/02 K
F16D65/22
F16D51/12
(21)【出願番号】P 2019032276
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 優香
(72)【発明者】
【氏名】豊田 俊郎
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026794(WO,A1)
【文献】特開2007-333000(JP,A)
【文献】特開2004-308766(JP,A)
【文献】特開2003-042265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 43/02
F16D 67/02
F16D 65/22
F16D 51/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材と、
該入力部材と同軸に配置された出力部材と、
被押圧面を有する被押圧部材と、
前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力部材との係合に基づき前記被押圧面から離れる方向に移動して前記出力部材と係合することにより、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力部材との係合に基づき前記被押圧面に近づく方向に移動して前記被押圧面に接触することにより、前記出力部材に逆入力された回転トルクを完全に遮断するか又は前記出力部材に逆入力された回転トルクの一部を前記入力部材に伝達し残部を遮断する係合子と、を備え、
前記係合子は、複数の係合子素板を前記入力部材の軸方向に積層した積層構造を有
しており、
隣り合う前記係合子素板同士の間に、前記係合子素板の輪郭形状よりも小さい輪郭形状を有する含油プレートが挟持されている、
逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記複数の係合子素板は、互いに結合されていない、請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記複数の係合子素板は、互いに結合されている、請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記係合子素板は、金属板のプレス成形品である、請求項1~3のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項5】
前記含油プレートは、ベース樹脂の内部に潤滑油を分散させたものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクは完全に遮断して入力部材に伝達しないか又はその一部のみを入力部材に伝達して残部を遮断する機能を有する逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
逆入力遮断クラッチは、駆動源などの入力側機構に接続される入力部材と、減速機構などの出力側機構に接続される出力部材を備えており、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクは完全に遮断して入力部材に伝達しないか又はその一部のみを入力部材に伝達して残部を遮断する機能を有している。
【0003】
逆入力遮断クラッチは、出力部材に逆入力される回転トルクを遮断する機構の相違により、ロック式とフリー式に大別される。ロック式の逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、出力部材の回転を防止又は抑制する機構を備えている。一方、フリー式の逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが入力された際に、出力部材を空転させる機構を備えている。ロック式の逆入力遮断クラッチとフリー式の逆入力遮断クラッチとのいずれを使用するかについては、逆入力遮断クラッチを組み込む装置の使用用途などによって適宜決定される。
【0004】
特開2002-174320号公報、特開2007-232095号公報、及び、特開2004-084918号公報などには、ロック式の逆入力遮断クラッチが記載されている。特開2002-174320号公報に記載された逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、コイルばねのねじれによって生じる直径の変化を利用して、コイルばねの内側に配置した部材を締め付けることにより、出力部材の回転を防止する機構を備えている。これに対し、特開2007-232095号公報、及び、特開2004-084918号公報に記載された逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、内方部材と外方部材との間のくさび形空間に配置された転動体を、くさび形空間のうち径方向に関する幅の狭い側に移動させて、内方部材と外方部材との間で突っ張らせることにより、出力部材の回転を防止する機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-174320号公報
【文献】特開2007-232095号公報
【文献】特開2004-084918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2002-174320号公報に記載された逆入力遮断クラッチは、コイルばねのねじれによって生じる直径の変化を利用するため、コイルばねの軸方向寸法を長く確保する必要がある。このため、逆入力遮断クラッチの軸方向寸法が大きくなる、といった問題がある。特開2007-232095号公報、及び、特開2004-084918号公報に記載された逆入力遮断クラッチは、転動体を多数使用するため、製造コストが嵩むといった問題がある。すなわち、転動体は、一般的に、金属製の線材を所定長さに切断した後、鍛造加工(圧造加工)、粗研削(フラッシング)、熱処理、精研削、ラッピング加工といった複数の工程を経て造られるため、工数が嵩み、製造コストが高くなる。したがって、転動体を多数備えた逆入力遮断クラッチは、製造コストが嵩みやすくなる。
【0007】
本発明の目的は、軸方向寸法を短くでき、かつ、製造コストを抑えられる、ロック式の逆入力遮断クラッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の逆入力遮断クラッチは、入力部材と、出力部材と、被押圧部材と、係合子と、を備えている。
前記出力部材は、前記入力部材と同軸に配置される。
前記被押圧部材は、被押圧面を有する。
前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると前記入力部材との係合に基づき前記被押圧面から離れる方向に移動して前記出力部材と係合することにより前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、かつ、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると前記出力部材との係合に基づき前記被押圧面に近づく方向に移動して前記被押圧面に当接することにより前記出力部材に逆入力された回転トルクを完全に遮断する、すなわち、前記入力部材に伝達しないか、又は、前記出力部材に逆入力された回転トルクの一部を前記入力部材に伝達し残部を遮断する。
特に本発明では、前記係合子を、複数の係合子素板を前記入力部材の軸方向に積層した積層構造を有するものとしている。
また、本発明では、隣り合う前記係合子素板同士の間に、前記係合子素板の輪郭形状よりも小さい輪郭形状を有する含油プレートを挟持している。
これにより、前記含油プレートの外周縁が、前記係合子の外周面からはみ出さないようにしている。
なお、本発明の技術的範囲からは外れるが、前記含油プレートとして、前記係合子素板の輪郭形状と同形のものを使用することもできる。この場合にも、前記含油プレートの外周縁が、前記係合子の外周面からはみ出さないようにすることができる。
【0009】
本発明では、前記複数の係合子素板を、単に積層しただけの、互いに結合しない構成とすることができる。
あるいは、前記複数の係合子素板を、互いに結合した構成とすることもできる。
前記複数の係合子素板を互いに結合する場合には、たとえば、接着剤、粘着テープ、リベット、ねじ、溶接などの固定手段を用いて結合することができる。
【0010】
本発明では、前記係合子素板を、金属板のプレス成形品とすることができる。
あるいは、前記係合子素板を、合成樹脂の射出成形品とすることもできる。
【0011】
前記含油プレートとしては、たとえば、ポリアセタール、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタラートなどをベース樹脂とし、該ベース樹脂の内部に潤滑油を均一に分散させたものを使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、逆入力遮断クラッチの軸方向寸法を短くでき、かつ、製造コストを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、
参考例の第1例の逆入力遮断クラッチを示す図である。
【
図2】
図2は、
参考例の第1例の逆入力遮断クラッチの斜視図である。
【
図3】
図3は、
参考例の第1例の逆入力遮断クラッチから入力部材を取り出してその一部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
参考例の第1例の逆入力遮断クラッチから出力部材を取り出してその一部を示す斜視図である。
【
図5】
図5の(A)は、
参考例の第1例の逆入力遮断クラッチから係合子を取り出して示す斜視図であり、
図5の(B)は、係合子を構成する係合子素板を取り出して示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
参考例の第1例の逆入力遮断クラッチに関して、入力部材に回転トルクが入力された状態を示す図である。
【
図7】
図7は、
参考例の第1例の逆入力遮断クラッチに関して、出力部材に回転トルクが逆入力された状態を示す図である。
【
図8】
図8は、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、出力部材から係合子に作用する力の関係を示す、
図6の部分拡大図である。
【
図9】
図9は、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、出力部材がロック又は半ロックする条件を説明するために示す図である。
【
図10】
図10は、
参考例の第1例の逆入力遮断クラッチに関して、出力部材に回転トルクが逆入力されて係合子の押圧面が被押圧面に接触し、かつ、入力部材側係合部が係合子の幅方向中央部に位置した状態を示す部分拡大図である。
【
図12】
図12の(A)は、実施の形態の第
1例の逆入力遮断クラッチに組み込む係合子の正面図であり、
図12の(B)は、
図12の(A)のA-A断面に相当する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[
参考例の第1例]
参考例の第1例について、
図1~
図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、軸方向、径方向及び周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向及び周方向をいう。本
参考例において、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向及び周方向は、入力部材2の軸方向、径方向及び周方向と一致し、出力部材3の軸方向、径方向及び周方向と一致し、かつ、被押圧部材4の軸方向、径方向及び周方向と一致する。
【0015】
[逆入力遮断クラッチの構造の説明]
本参考例の逆入力遮断クラッチ1は、ロック式の逆入力遮断クラッチであり、入力部材2と、出力部材3と、被押圧部材4と、1対の係合子5とを備えている。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に入力される回転トルクを出力部材3に伝達するのに対し、出力部材3に逆入力される回転トルクは完全に遮断して入力部材2に伝達しないか又はその一部のみを入力部材2に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有している。
【0016】
入力部材2は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材2は、
図3に示すように、入力軸部6と、1対の入力部材側係合部7とを有している。入力軸部6は、段付円柱状で、その基端部が前記入力側機構の出力部にトルク伝達可能に接続されるか、又は、前記入力側機構の出力部と一体に設けられている。1対の入力部材側係合部7は、略楕円柱状で、入力軸部6の先端面の直径方向反対側2個所位置から軸方向に伸長した凸部により構成されている。1対の入力部材側係合部7は、入力部材2の直径方向に互いに離隔している。このため、1対の入力部材側係合部7は、入力軸部6の先端面のうちで回転中心から径方向外方に外れた部分にそれぞれ配置されている。入力部材側係合部7は、その径方向外側面が、入力軸部6の先端部の外周面と同じ円筒面状の輪郭形状を有しており、その径方向内側面が、円周方向中央部が径方向内方に突出した円弧状の凸面となっている。
【0017】
出力部材3は、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材3は、入力部材2と同軸に配置されており、
図4に示すように、出力軸部8と、出力部材側係合部9とを有している。出力軸部8は、円柱状で、その先端部が前記出力側機構の入力部にトルク伝達可能に接続されるか、又は、前記出力側機構の入力部と一体に設けられている。出力部材側係合部9は、カム機能を有する。すなわち、出力部材3の回転中心軸から出力部材側係合部9の外周面までの距離は、周方向に関して一定でない。本
参考例では、出力部材側係合部9は、略長円柱状で、出力軸部8の基端面の中央部から軸方向に伸長している。出力部材側係合部9の外周側面は、互いに平行な1対の平坦面と、1対の円弧状の凸面とから構成されている。このため、出力部材側係合部9の回転中心から外周側面までの距離は、円周方向にわたり一定でない。出力部材側係合部9は、1対の入力部材側係合部7の間部分に配置される。
【0018】
被押圧部材4は、
図2に示すように、薄肉円環状に構成されており、たとえばハウジングなどの図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。被押圧部材4は、入力部材2及び出力部材3と同軸に、かつ、入力部材2及び出力部材3よりも径方向外側に配置されている。具体的には、1対の入力部材側係合部7及び出力部材側係合部9が、逆入力遮断クラッチ1の組立状態で、被押圧部材4の径方向内側に配置されている。被押圧部材4は、その内周面に円筒面状の凹面である被押圧面10を有している。
【0019】
1対の係合子5は、略半円形板状に構成されており、被押圧部材4の径方向内側に配置されている。1対の係合子5のそれぞれは、被押圧面10に対して押し付けられる径方向外側面を円筒面状の凸面である押圧面11とし、径方向内側面を、後述する係合子側出力係合部15が形成された部分以外が平坦面状となった底面12としている。また、それぞれの係合子5の幅方向両側は、底面12に対して直角な平坦面状の側面13となっている。なお、係合子5に関して径方向とは、
図1に矢印Aで示した底面12に対して直角な方向をいい、
図1に矢印Bで示した底面12に対して平行な方向を、係合子5に関して幅方向という。押圧面11の曲率半径は、被押圧面10の曲率半径以下となっている。押圧面11は、係合子5のその他の部分に比べて摩擦係数の大きい表面性状を有している。押圧面11は、係合子5の表面によって直接構成しても良いし、係合子5に貼着や接着などにより固定した摩擦材によって構成しても良い。
【0020】
本参考例では、1対の係合子5の押圧面11を被押圧部材4の径方向反対側に向け、かつ、1対の係合子5の底面12を互いに対向させている。また、1対の係合子5を被押圧部材4の径方向内側に配置した状態で、被押圧面10と押圧面11との間部分、及び、底面12同士の間部分の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧部材4の内径寸法と係合子5の径方向寸法を規制している。
【0021】
係合子5は、係合子側入力係合部14と、係合子側出力係合部15とを有している。係合子側入力係合部14は、係合子5の径方向中間部を軸方向に貫通し、かつ、幅方向に長い矩形状の長孔である、入力係合孔により構成されている。係合子側入力係合部14は、入力部材側係合部7を緩く挿入できる大きさを有している。具体的には、係合子側入力係合部14の内側に入力部材側係合部7を挿入した状態で、入力部材側係合部7と係合子側入力係合部14の内面との間には、係合子5の幅方向及び該幅方向に直交する方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力部材側係合部7は、係合子側入力係合部14(係合子5)に対し、入力部材2の回転方向に関する変位が可能であり、係合子側入力係合部14は、入力部材側係合部7に対し、係合子5の幅方向に直交する方向の変位が可能である。
【0022】
係合子側出力係合部15は、1対の係合子5のそれぞれの底面12の幅方向中央部から径方向外方に向けて凹んだ略矩形状の凹部である。係合子側出力係合部15は、その内側に出力部材側係合部9の短軸方向の先半部をがたつきなく配置できる大きさ及び形状を有している。具体的には、係合子側出力係合部15は、その開口幅が、出力部材側係合部9の長軸方向に関する寸法とほぼ同じであり(同じか、あるいは、わずかに大きく)、その径方向深さが、出力部材側係合部9の短軸方向に関する寸法の1/2よりも少しだけ小さくなっている。係合子側出力係合部15の底部は、底面12と平行な平坦面となっている。
【0023】
係合子5は、
図5の(A)に示すように、複数の薄板状の係合子素板16を、軸方向に積層した積層構造を有している。それぞれの係合子素板16は、鋼板などのある程度の剛性を有する金属板に、プレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品である。このため、係合子5を構成するすべての係合子素板16は、同じ形状及び同じ板厚を有している。係合子素板16を構成する材料としては、たとえば、SK材などの工具鋼、SPCCやSPHCなどの冷間圧延鋼板を使用することができる。係合子素板16の板厚は、材料や積層数、逆入力遮断クラッチ1の使用条件などに応じて適宜決定することができ、たとえば0.5mm~4mm程度である。ただし、係合子素板16の材質、形状及び板厚は、係合子5を構成するすべての係合子素板16同士の間で必ずしも同じである必要はない。一部の係合子素板16と残りの係合子素板16との間で、材質、形状又は板厚を、互いに異ならせることもできる。
【0024】
係合子素板16の積層数は、係合子素板16の板厚や剛性、逆入力遮断クラッチ1の使用条件などに応じて適宜決定することができ、たとえば4枚~10枚程度とすることができる。
【0025】
係合子素板16は、
図5の(B)に示すように、軸方向に積層した状態で押圧面11を構成する凸円弧状の外周縁である押圧辺17と、軸方向に積層した状態で係合子側入力係合部14を構成する貫通孔18と、軸方向に積層した状態で係合子側出力係合部15を構成する凹部19と、をそれぞれ有する。なお、複数の係合子素板16を積層してなる積層体の係合子5の外周面に、摩擦材を貼着や接着などにより固定して押圧面11を構成することもできる。
【0026】
本参考例では、複数枚の係合子素板16を、単に積層しただけの互いに結合しない態様で、係合子5を構成している。このため、隣り合う係合子素板16の側面同士は、他の部材を介さずに、直接重ね合わされている。ただし、複数の係合子素板16は、互いに結合することもできる。この場合には、複数の係合子素板16を一体的に取り扱うことが可能になるため、逆入力遮断クラッチ1の組み立て作業性を向上できるとともに、部品管理コストを抑えることができる。係合子素板16を結合する場合には、たとえば、接着剤、粘着テープ、リベット、ねじ、溶接などの固定手段を用いることができる。
【0027】
本参考例の逆入力遮断クラッチ1は、その組立状態で、軸方向一方側に配置した入力部材2の1対の入力部材側係合部7を、1対の係合子5のそれぞれの係合子側入力係合部14に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材3の出力部材側係合部9を、1対の係合子側出力係合部15同士の間に軸方向に挿入している。すなわち、1対の係合子5は、それぞれの係合子側出力係合部15により、出力部材側係合部9を径方向外側から挟むように配置されている。また、本参考例では、入力部材側係合部7の軸方向寸法、出力部材側係合部9の軸方向寸法、被押圧部材4の軸方向寸法、及び、係合子5の軸方向寸法をそれぞれほぼ同じとしている。
【0028】
[逆入力遮断クラッチの動作説明]
本
参考例の逆入力遮断クラッチ1の動作について説明する。
(入力部材2に回転トルクが入力された場合)
先ず、入力部材2に入力側機構から回転トルクが入力された場合を説明する。
入力部材2に回転トルクが入力されると、
図6に示すように、係合子側入力係合部14の内側で、入力部材側係合部7が入力部材2の回転方向(
図6の例では時計方向)に回転する。すると、入力部材側係合部7の径方向内側面が係合子側入力係合部14の内面を径方向内方に向けて押圧し、1対の係合子5を、被押圧面10から離れる方向にそれぞれ移動させる。つまり、1対の係合子5を、入力部材2との係合に基づき、互いに近づく方向である径方向内方に(
図6の上側に位置する係合子5を下方に、
図6の下側に位置する係合子5を上方に)それぞれ移動させる。これにより、1対の係合子5の底面12が互いに近づく方向に移動し、1対の係合子側出力係合部15が出力部材3の出力部材側係合部9を径方向両側から挟持する。すなわち、出力部材3を、出力部材側係合部9の長軸方向が係合子5の底面12と平行になるように回転させつつ、出力部材側係合部9と1対の係合子側出力係合部15とをがたつきなく係合させる。したがって、入力部材2に入力された回転トルクは、1対の係合子5を介して、出力部材3に伝達され、出力部材3から出力される。本
参考例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に回転トルクが入力されると、入力部材2の回転方向に関係なく、1対の係合子5を、被押圧面10から離れる方向にそれぞれ移動させる。そして、入力部材2の回転方向にかかわらず、入力部材2に入力された回転トルクを、1対の係合子5を介して、出力部材3に伝達する。
【0029】
(出力部材3に回転トルクが逆入力された場合)
次に、出力部材3に出力側機構から回転トルクが逆入力された場合を説明する。
出力部材3に回転トルクが逆入力されると、
図7に示すように、出力部材側係合部9が、1対の係合子側出力係合部15同士の内側で、出力部材3の回転方向(
図7の例では時計方向)に回転する。すると、出力部材側係合部9の角部が係合子側出力係合部15の底面を径方向外方に向けて押圧し、1対の係合子5を、被押圧面10に近づく方向にそれぞれ移動させる。つまり、1対の係合子5を、出力部材3との係合に基づき、互いに離れる方向である径方向外方に(
図7の上側に位置する係合子5を上方に、
図7の下側に位置する係合子5を下方に)それぞれ移動させる。これにより、1対の係合子5のそれぞれの押圧面11を、被押圧部材4の被押圧面10に対して押し付ける。この際、押圧面11と被押圧面10とは、押圧面11の周方向に関する全範囲又は一部(たとえば中央部)で接触する。この結果、出力部材3に逆入力された回転トルクが、図示しない他の部材に固定された被押圧部材4に伝わることで完全に遮断されて入力部材2に伝達されないか、又は、出力部材3に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断される。出力部材3に逆入力された回転トルクを完全に遮断して入力部材2に伝達されないようにするには、押圧面11が被押圧面10に対して摺動(相対回転)しないように、1対の係合子5を出力部材側係合部9と被押圧部材4との間で突っ張らせ、出力部材3をロックする。これに対し、出力部材3に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断されるようにするには、押圧面11が被押圧面10に対して摺動するように、1対の係合子5を出力部材側係合部9と被押圧部材4との間で突っ張らせ、出力部材3を半ロックする。つまり、押圧面11を被押圧面10に対して摺動させる際に生じる摺動摩擦力により、出力部材3には、逆入力された回転トルクとは反対向きのブレーキトルクが加わる。このため、出力部材3に逆入力された回転トルクの一部のみが、係合子5を介して入力部材3に伝達される。
【0030】
本参考例では、1対の係合子5のそれぞれを、複数の係合子素板16の積層構造とし、かつ、複数の係合子素板16同士を互いに結合しない態様としているが、入力部材側係合部7又は出力部材側係合部9との係合に基づき、係合子5を構成するすべての係合子素板16は、ほぼ同期して径方向に移動することが可能である。
【0031】
なお、本参考例の逆入力遮断クラッチ1では、以上の動作が可能となるように、各構成部材間の隙間の大きさが調整されている。
【0032】
たとえば、本
参考例では、
図10に示すように、出力部材3に回転トルクが逆入力されることによって係合子5の押圧面11が被押圧面10に接触した位置関係において、入力部材側係合部7を係合子側入力係合部14内の幅方向中央に位置させたとき、すなわち、入力部材側係合部7の径方向内側面のうち、入力部材2の回転中心(=出力部材3の回転中心)Oから最も近い位置に存在する部分である円周方向中央部を、被押圧面10に対する押圧面11の遠近動方向(
図10の上下方向)に関して、入力部材2の回転中心Oから径方向外側(
図10の上側)に最も遠ざけたときに、入力部材側係合部7の径方向内側面と係合子側入力係合部14の内面とが非接触になるようにしている。換言すれば、入力部材側係合部7の径方向内側面と係合子側入力係合部14の内面との間に、出力部材側係合部9の角部が係合子側出力係合部15の底面を押圧することに基づいて押圧面11が被押圧面10に向けて押圧されることを許容する隙間Gが存在するようにしている。これにより、出力部材3に回転トルクが逆入力された場合に、係合子5が径方向外側(
図10の上側)に移動するのを入力部材側係合部7によって阻止されることがないようにし、かつ、押圧面11が被押圧面10に接触した後も、押圧面11と被押圧面10との接触部に作用する面圧が、出力部材3に逆入力された回転トルクの大きさに応じて変化するようにすることで、出力部材3のロック又は半ロックが適正に行われるようにしている。
【0033】
上述のように出力部材3に回転トルクが逆入力された場合に、出力部材3がロック又は半ロックする原理及び条件について、
図8及び
図9を参照して、より具体的に説明する。
出力部材3に回転トルクが逆入力されることで、出力部材側係合部9の角部が係合子側出力係合部15の底面に当接すると、
図8に示すように、出力部材側係合部9の角部と係合子側出力係合部15の底面との当接部Xには、係合子側出力係合部15の底面に対し垂直方向に法線力Fcが作用する。また、当接部Xには、出力部材側係合部9と係合子側出力係合部15との間の摩擦係数をμとすると、係合子側出力係合部15の底面と平行な方向に摩擦力μFcが作用する。ここで、当接部Xに作用する接線力Ftの作用線の方向と係合子側出力係合部15の底面との間のくさび角をθとすると、接線力Ftは、次の式(1)により表される。
Ft=Fc・sinθ+μFc・cosθ ・・・(1)
このため、法線力Fcは、接線力Ftを用いて、次の(2)式により表される。
Fc=Ft/(sinθ+μ・cosθ) ・・・(2)
【0034】
出力部材側係合部9の角部が係合子側出力係合部15の底面に当接した際に、出力部材3から係合子5に伝達されるトルクTの大きさは、出力部材3の回転中心Oから当接部Xまでの距離をrとすると、次の(3)式で表される。
T=r・Ft ・・・(3)
【0035】
上述したように、当接部Xには法線力Fcが作用するため、
図9に示すように、係合子5の押圧面11は、被押圧部材4の被押圧面10に対して法線力Fcの力で押し付けられる。このため、押圧面11と被押圧面10との間の摩擦係数をμ´とし、出力部材3の回転中心Oから押圧面11と被押圧面10との当接部Yまでの距離をRとすると、係合子5に作用するブレーキトルクT´の大きさは、次の(4)式で表される。
T´=μ´RFc ・・・(4)
したがって、より大きなブレーキ力を得るには、摩擦係数μ´、距離R、法線力Fcを大きくすれば良いことが分かる。
【0036】
また、出力部材3がロックして、出力部材3に逆入力された回転トルクが入力部材2に伝達されないようにするためには、伝達トルクTとブレーキトルクT´とが、次の(5)式の関係を満たす必要がある。
T<T´ ・・・(5)
また、上記(5)式に上記(1)~(4)式を代入すると次の(6)式が得られる。
μ´R/(sinθ+μ・cosθ)>r ・・・(6)
上記(6)式からは、押圧面11と被押圧面10との間の摩擦係数μ´を大きくすれば、距離Rを小さくしても、出力部材3をロックさせられることが分かる。
【0037】
また、摩擦係数μ及び摩擦係数μ´がそれぞれ0.1であると仮定すると、上記(6)式から次の(7)式が得られる。
R>10r(sinθ+0.1cosθ) ・・・(7)
上記(7)式からは、出力部材3の回転中心Oから当接部Xまでの距離rと、出力部材3の回転中心Oから当接部Yまでの距離Rと、接線力Ftの作用線の方向と係合子側出力係合部15の底面との間のくさび角θとを適切に設定することで、出力部材3をロックさせられることが分かる。
【0038】
これに対し、出力部材3が半ロックして、出力部材3に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断されるようにするためには、伝達トルクTとブレーキトルクT´とが、次の(8)式の関係を満たす必要がある。
T>T´ ・・・(8)
また、上記(6)式からも明らかな通り、出力部材側係合部9と係合子側出力係合部15との間の摩擦係数μ、押圧面11と被押圧面10との間の摩擦係数μ´、回転中心Oから当接部Xまでの距離r、回転中心Oから当接部Yまでの距離R、接線力Ftの作用線の方向と係合子側出力係合部15の底面との間のくさび角θをそれぞれ適切に設定することで、出力部材3を半ロックさせることができる。
【0039】
また、出力部材3がロック又は半ロックした状態で、入力部材2に回転トルクが入力された場合、入力部材2から係合子5に作用する法線力が、出力部材3から係合子5に作用する法線力Fcよりも大きくなると、出力部材3のロック又は半ロックが解除される。つまり、係合子5は径方向内方に移動し、入力部材2から出力部材3に回転トルクが伝達される。
【0040】
以上の構成を有し、上述のように動作する本参考例の逆入力遮断クラッチ1によれば、軸方向寸法を短くでき、かつ、製造コストを抑えられる。
本参考例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2及び出力部材3のそれぞれの回転の少なくとも一部を、係合子5の径方向移動に変換する。そして、このように入力部材2及び出力部材3の回転を係合子5の径方向移動に変換することで、係合子5を、該係合子5の径方向内側に位置する出力部材3に係合させたり、あるいは、係合子5を、該係合子5の径方向外側に位置する被押圧部材4に押し付けるようにしている。このように、本参考例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2及び出力部材3のそれぞれの回転によって制御される係合子5の径方向移動に基づき、入力部材2から出力部材3に回転トルクが伝達可能になる出力部材3のロック又は半ロック解除状態と、出力部材3の回転が防止又は抑制される出力部材3のロック又は半ロック状態とを切り替えることができるため、逆入力遮断クラッチ1の装置全体の軸方向寸法を短くできる。
【0041】
しかも、係合子5に、入力部材2に入力された回転トルクを出力部材3に伝達する機能と、出力部材3をロック又は半ロックする機能との両方の機能を持たせている。このため、逆入力遮断クラッチ1の部品点数を抑えることができ、かつ、回転トルクを伝達する機能とロック又は半ロックする機能とをそれぞれ別の部材に持たせる場合に比べて、動作を安定させることができる。たとえば、回転トルクを伝達する機能とロック又は半ロックする機能とを別の部材に持たせる場合、ロック又は半ロック解除のタイミングと回転トルクの伝達開始のタイミングとがずれる可能性がある。この場合、ロック又は半ロック解除から回転トルクの伝達開始までの間に出力部材に回転トルクが逆入力されると、出力部材が再びロック又は半ロックされてしまう。本参考例では、係合子5に、回転トルクを出力部材3に伝達する機能と、出力部材3をロック又は半ロックする機能との両方の機能を持たせているため、このような不都合が生じることを防止できる。
【0042】
また、入力部材2から係合子5に作用する力の向きと、出力部材3から係合子5に作用する力の向きとを逆向きにしているため、両方の力の大小関係を規制することで、係合子5の移動方向を制御できる。このため、出力部材3のロック又は半ロック状態とロック又は半ロック解除状態の切り替え動作を安定して確実に行うことができる。したがって、特開2007-232095号公報、及び、特開2004-084918号公報に記載された従来構造の逆入力遮断クラッチのように、くさび形空間の径方向に関する幅の狭い部分に転動体が噛み込まれたままとなり、ロックが解除されなくなる、といった不都合が生じることを防止できる。
【0043】
また、係合子5を、複数の係合子素板16を軸方向に積層することにより構成しているため、それぞれの係合子素板16を、鋼板などの金属板に、プレス加工による打ち抜き加工を施すことのみによって造ることができる。このため、特開2007-232095号公報、及び、特開2004-084918号公報に記載された従来構造の逆入力遮断クラッチのように、複数の工程を経て造る必要がある転動体を用いる場合に比べて、製造コストを抑えることができる。さらに、係合子5を、本参考例のような積層構造とはせずに一体的に造る場合には、たとえば鋳造加工や粉末冶金、切削加工などにより造ることが考えられるが、このような加工方法に比べて、プレス加工による打ち抜き加工は工数がかからないため、係合子5を一体的に造る場合に比べても、十分に製造コストを抑えることができる。
【0044】
さらに、逆入力遮断クラッチ1の使用条件に合わせて、係合子素板16の積層数を変更することができる。このため、被押圧面10と押圧面11との面圧を、容易に調整することが可能になる。なお、係合子素板16を積層した状態で、外周面に研磨加工を施すことができる。ただし、研磨加工を施さない場合にも、使用に伴って係合子素板16の外周縁が摩耗するため、研磨加工を施した場合と同じように、全ての係合子素板16の外周縁の形状は同じになる。
【0045】
[
参考例の第2例]
参考例の第2例について、
図11を用いて説明する。
本
参考例では、係合子5aの径方向外側面のうち、周方向に離隔した2個所位置に、被押圧面10(
図1参照)に対して押し付けられる押圧面11aを設けている。それぞれの押圧面11aは、被押圧面10の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する、円筒面状の凸面である。係合子5aの径方向外側面の周方向中間部に位置する1対の押圧面11a同士の間には、被押圧面10に対して押し付けられない(被押圧面10との間に常に隙間が存在する)平坦面状の非接触面20を設けている。このため、係合子5aの径方向に関する幅寸法は、実施の形態の第1例の係合子5に比べて小さくなっている。また、
参考例の第1例の係合子5の径方向外側面の輪郭形状は、全体が円弧状であったのに対し、本
参考例の係合子5aの径方向外側面の輪郭形状は、1対の円弧部の端部同士を直線部により接続することで構成されている。
【0046】
係合子5aは、径方向中間部に、略円弧状の長孔である係合子側入力係合部14aを有している。このような係合子側入力係合部14aの内側には、入力部材2(
図3参照)の入力部材側係合部7を、被押圧面10に対する遠近移動を可能に、かつ、入力部材2の回転方向に関する移動を可能に緩く係合する。
【0047】
上述のような係合子5aは、複数の係合子素板16aを軸方向に積層した積層構造を有している。係合子素板16aは、径方向外側面のうち、周方向に離隔した2個所位置に、軸方向に積層した状態で押圧面11aを構成する押圧辺17aを有しており、周方向中間部に、軸方向に積層した状態で非接触面20を構成する直線部21を有している。
【0048】
以上のような係合子5aを備えた逆入力遮断クラッチでは、出力部材3(
図4参照)に回転トルクが逆入力された際に、係合子5aの径方向外側面に設けられた1対の押圧面11aを、被押圧面10に対して押し付ける。押圧面11aの曲率半径は、被押圧面10の曲率半径よりも小さいため、くさび効果を得ることができ、
参考例の第1例に比べて、大きな法線力(ブレーキトルク)を得ることができる。
その他の構成及び作用効果については、
参考例の第1例と同じである。
【0049】
[実施の形態の第
1例]
実施の形態の第
1例について、
図12を用いて説明する。
本例では、係合子5bを構成する軸方向に隣り合う係合子素板16の同士の間に、含油プレート22を挟持している。含油プレート22は、たとえば、ポリアセタール、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタラートなどをベース樹脂とし、該ベース樹脂の内部に潤滑油を均一に分散させて構成されている。
【0050】
含油プレート22は、係合子素板16の輪郭形状よりも小さい輪郭形状を有している。また、含油プレート22は、径方向中間部に、入力部材2(
図3参照)の入力部材側係合部7を緩く挿通可能な通孔23を有している。
【0051】
本例では、含油プレート22中に含まれる潤滑剤を、被押圧面10と押圧面11との当接部、出力部材側係合部9(
図1参照)と係合子側出力係合部15との係合部、及び、入力部材側係合部7と係合子側入力係合部14との係合部に、長期間にわたり効率良く供給することができる。このため、逆入力遮断クラッチ1を構成する各部の摩耗を抑制することができ、逆入力遮断クラッチ1の耐久性を向上することができる。また、含油プレート22として、係合子素板16の輪郭形状よりも小さい輪郭形状を有するものを使用しているため、含油プレート22の外周縁が、係合子5の外周面からはみ出さないようにすることができる。このため、含油プレート22を設けたことで、被押圧面10と押圧面11との接触状態や、出力部材側係合部9と係合子側出力係合部15との係合状態に悪影響を与えることを防止できる。
その他の構成及び作用効果については、
参考例の第1例と同じである。
【0052】
上述した実施の形態の第1例及び参考例の各例の構造は、矛盾を生じない限り、適宜組み合わせて実施することができる。
【0053】
本発明の逆入力遮断クラッチは、各種機械が備える係合子の数は、実施の形態の第1例及び参考例の各例で示した2個に限らず、1個でも良いし、3個以上としても良い。また、入力部材及び出力部材と係合子との係合構造に関しても、実施の形態の第1例及び参考例の各例で示した構造に限定されない。入力部材及び出力部材のそれぞれの回転を係合子の径方向移動に変換可能であれば、従来から知られた各種構造を採用できる。
【0054】
昇降装置の一種である自動車の電動パワーウィンドウなどには、セルフロック機能を備えたウォーム減速機が使用されているが、セルフロック機能に代えて、逆入力遮断クラッチを設けることができる。ウォーム減速機にセルフロック機能を持たせると、正効率が低くなり、装置が大型化する可能性があるが、逆入力遮断クラッチを適用すれば、正効率を高くできるため、装置の大型化を防止できる。
【符号の説明】
【0055】
1 逆入力遮断クラッチ
2 入力部材
3 出力部材
4 被押圧部材
5、5a、5b 係合子
6 入力軸部
7 入力部材側係合部
8 出力軸部
9 出力部材側係合部
10 被押圧面
11、11a 押圧面
12 底面
13 側面
14、14a 係合子側入力係合部
15 係合子側出力係合部
16、16a 係合子素板
17、17a 押圧辺
18 貫通孔
19 凹部
20 非接触面
21 直線部
22 含油プレート
23 通孔