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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】バイフューエル車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20221206BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20221206BHJP
   F02D 19/06 20060101ALI20221206BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
F02D29/02 321C
F02D17/00 Q
F02D19/06 B
F02M21/02 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019032451
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020133599
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】那須田 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 英由季
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234791(JP,A)
【文献】特開2014-238019(JP,A)
【文献】特開2013-213439(JP,A)
【文献】特開2020-063716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
F02D 19/06
F02M 21/02
F02D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
始動性能が相対的に高い第1燃料と、燃費性能が相対的に高い第2燃料を使用可能な内燃機関と、
所定の自動停止条件が成立した場合に前記内燃機関を自動停止させ、前記内燃機関の自動停止状態で所定の再始動条件が成立した場合に前記内燃機関を再始動させる自動停止制御装置と、
を備えたバイフューエル車両であって、
前記内燃機関が前記第2燃料を使用して運転しており、且つ前記第1燃料の残量が第1の所定値以下の場合には、前記自動停止制御装置は前記内燃機関の自動停止を禁止し、
前記内燃機関が前記第1燃料を使用して運転しており、且つ前記第2燃料の残量が第2の所定値以下の場合には、前記自動停止制御装置は前記内燃機関の自動停止を許可し、前記第2燃料の残量低下の報知を行うことを特徴とするバイフューエル車両。
【請求項2】
前記第2の所定値は、前記第1の所定値よりも、残燃料による走行可能距離が長く設定されることを特徴とする請求項1に記載のバイフューエル車両。
【請求項3】
前記内燃機関が前記第1燃料を使用して運転している場合に、前記第1燃料の残量が、前記第1の所定値よりも残燃料による走行可能距離が短い第3の所定値以下になった場合に、前記自動停止制御装置は前記内燃機関の自動停止を禁止することを特徴とする請求項1又は2に記載のバイフューエル車両。
【請求項4】
前記第1燃料はガソリンであり、前記第2燃料は圧縮天然ガスであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバイフューエル車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の燃料を切り替えて走行するバイフューエル車両に関する。
【背景技術】
【0002】
バイフューエル車両は、ガソリンと圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas:以下、CNGとする)のように、異なる燃料を切り替えて内燃機関に供給して走行する。例えば、CNGはガソリンに比べて、燃費性能が高く、排ガス中の有害物質(窒素酸化物、二酸化炭素、硫黄酸化物など)の量が少ない、という特性を有する。そのため、ガソリンとCNGを使用するバイフューエル車両では、ガソリンの消費低減による燃費向上や排ガス性能向上といった効果を見込める。
【0003】
近年では、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるアイドリングストップ機能を備えた車両が増えている。アイドリングストップによって、燃費向上や排気ガス削減の効果が得られる。但し、アイドリングストップからの再始動にも所定量の燃料が使用される。そのため、車両の停止時間が短い場合などでは、アイドリングストップを実行することで却って燃費が悪化することもあり、車両の状態に応じたより効果的なアイドリングストップ制御が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、燃料タンク内の燃料の残量を検出する手段を備え、燃料の残量が所定値以下である場合に、アイドリングストップせずにエンジンを継続運転した場合の燃料消費量の予測値と、アイドリングストップしてエンジン再始動を行った場合の燃料消費量の予測値とを比較し、エンジン継続運転時の燃料消費量の方が少ないと判定したときには、アイドリングストップを禁止するという技術が記載されている。これにより、燃料の残量が少ない状態での燃費改善を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-014281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイフューエル車両にアイドリングストップ機能を備える場合、2つの燃料の残量変化は一律ではなく、燃料ごとの特性も異なるので、特許文献1のような単一燃料を使用する前提でのアイドリングストップ制御では対応できない。例えば、一方の燃料の残量低下に基づいてアイドリングストップの禁止制御を行うと、他方の燃料は十分に残存していてエンジンの始動性に問題がない場合でも、アイドリングストップによる燃費改善の効果を得られなくなってしまう。
【0007】
また、ガソリンとCNGでは、エンジンの始動性能においてガソリンが優れ、燃費性能や排ガス性能においてCNGが優れるので、いずれの燃料の残量が低下しているかによっても、エンジンの適切な自動停止条件や再始動条件が異なる。例えば、ガソリンの残量が不足してCNGの残量がある程度確保されている状態で、アイドリングストップを許可すると、始動性能の低いCNGを使用したエンジン再始動に長時間を要して、アイドリングストップ後の車両発進性能が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、特性の異なる2つの燃料を用いるバイフューエル車両で、各燃料の残量と特性に応じて、始動性能と燃費性能に優れた内燃機関の自動停止制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、始動性能が相対的に高い第1燃料と、燃費性能が相対的に高い第2燃料を使用可能な内燃機関と、所定の自動停止条件が成立した場合に内燃機関を自動停止させ、内燃機関の停止状態で所定の再始動条件が成立した場合に前記内燃機関を再始動させる自動停止制御装置と、を備えたバイフューエル車両であって、内燃機関が第2燃料を使用して運転しており、且つ第1燃料の残量が第1の所定値以下の場合には、自動停止制御装置は内燃機関の自動停止を禁止し、内燃機関が第1燃料を使用して運転しており、且つ第2燃料の残量が第2の所定値以下の場合には、自動停止制御装置は内燃機関の自動停止を許可し、第2燃料の残量低下の報知を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、始動性能が高い第1燃料の不足時に内燃機関の自動停止を禁止するので、始動性能が低い状況で内燃機関の再始動を行うことを防ぐことができる。また、第2燃料の不足時には、内燃機関の自動停止を許可するので、自動停止による燃費改善の機会を確保できる。これにより、特性の異なる2つの燃料を用いるバイフューエル車両で、各燃料の残量と特性に応じて、始動性能と燃費性能に優れた内燃機関の自動停止制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態のバイフューエル車両の構成図である。
図2】本実施の形態のバイフューエル車両での使用燃料と燃料残量状態の対応関係によるアイドリングストップ制御を示す表である。
図3】本実施の形態のバイフューエル車両のアイドリングストップ制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態に係るバイフューエル車両の構成要素について説明する。図1は、説明の便宜上、本開示の技術を説明するために簡略化したものであり、車両が通常備える構成については図示されていなくても備えているものとする。
【0013】
本実施の形態のバイフューエル車両10は、燃料特性の異なる第1燃料F1と第2燃料F2を切り替えて内燃機関であるエンジン11に供給して、エンジン11を駆動させるものである。エンジン11及び関連機器を制御する制御部として、エンジンECU(Electrical Control Unit)12を備える。エンジンECU12は、エンジン11を統括的に制御するものであり、運転中のエンジン11の自動停止(アイドリングストップ)と、停止状態からのエンジン11の再始動を制御する自動停止制御装置としての機能も備える。
【0014】
第1燃料F1と第2燃料F2は、エンジン11を始動させる際の始動性能が異なり、第1燃料F1の方が第2燃料F2に比してエンジン始動性能が高い。本実施の形態では、第1燃料F1として液体のガソリン燃料を使用し、第2燃料F2として気体のCNG(圧縮天然ガス)燃料を使用する。始動性能以外の燃料特性として、第2燃料F2(CNG)は、第1燃料F1(ガソリン)に比して、燃費性能に優れ、燃焼後の排ガス中の有害物質の量が少ない(排ガス性能が高い)。バイフューエル車両10は、これら2種類の燃料F1、F2をエンジン11に供給する2系統の燃料供給系を備えている。
【0015】
第1燃料F1に関する燃料供給系として、第1燃料タンク20、第1燃料管路21、フューエルポンプ22、ポンプモータ23、第1インジェクタ24を有する。第1燃料タンク20内には、液体の第1燃料F1(ガソリン)が貯留される。第1燃料管路21は、第1燃料F1を第1燃料タンク20から第1インジェクタ24まで搬送する管路である。フューエルポンプ22はポンプモータ23によって駆動されるポンプであり、フューエルポンプ22によって、第1燃料F1が第1燃料管路21内を第1インジェクタ24まで圧送される。第1インジェクタ24は、エンジン11の吸気ポート(不図示)又は燃焼室(不図示)内に第1燃料F1を噴射する。第1インジェクタ24から噴射された第1燃料F1は、図示を省略する吸気系からエンジン11に取り込まれた空気と混ざって混合気を生成する。
【0016】
第2燃料F2に関する燃料供給系として、第2燃料タンク25、第2燃料管路26、電磁弁27、第2インジェクタ28を有する。第2燃料タンク25内には、気体の第2燃料F2(CNG)が高圧状態で貯留される。第2燃料管路26は、第2燃料F2を第2燃料タンク25から第2インジェクタ28まで搬送する管路である。電磁弁27は常閉型の電磁弁であり、閉じた状態では、第2インジェクタ28側への第2燃料F2の送出を遮断する。通電によって電磁弁27を開放すると、第2燃料F2が第2燃料管路26を経て第2インジェクタ28まで送られる。なお、エンジン11側の燃料要求圧力が第2燃料タンク25の充填圧力よりも低いため、第2燃料タンク25内の高圧の第2燃料F2はレギュレータ(不図示)によって減圧された後、第2インジェクタ28に供給される。第2インジェクタ28は、エンジン11の吸気ポート(不図示)又は燃焼室(不図示)内に第2燃料F2を噴射する。第2インジェクタ28から噴射された第2燃料F2は、吸気系からエンジン11に取り込まれた空気と混ざって混合気を生成する。
【0017】
各燃料供給系に付随するものとして、第1燃料タンク20内の第1燃料F1の残量を検出する第1燃料残量センサ60と、第2燃料タンク25内の第2燃料F2の残量を検出する第2燃料残量センサ61を備えている。第1燃料残量センサ60と第2燃料残量センサ61での検出信号がエンジンECU12に送信され、各燃料F1、F2の残量情報がエンジンECU12で認識される。
【0018】
バイフューエル車両10は、車両情報を表示する表示器62を備えている。表示器62は、車両内部で乗員から視認可能な位置に設置され、車速やエンジン回転数などの各種情報を表示するものである。表示器62の一部として、第1燃料残量センサ60と第2燃料残量センサ61を用いて検出された燃料残量を表示するための、燃料残量計63が設けられている。燃料残量計63には、第1燃料F1と第2燃料F2のそれぞれの残量が個別に表示される。また、第1燃料F1と第2燃料F2の燃料残量が低下した状態を個別に報知可能な報知手段であるインジケータ(表示灯)64が、燃料残量計63に設けられている。
【0019】
バイフューエル車両10を運転する乗員が使用燃料選択スイッチ14を操作して、第1燃料F1と第2燃料F2のいずれをエンジン11に供給するかを選択することができる。また、乗員の操作によらずにエンジンECU12からの制御によって、エンジン11に供給する燃料を自動的に選択することも可能である。選択された燃料を消費して、エンジン11の始動及びバイフューエル車両10の走行が行われる。手動選択と自動選択のいずれの場合も、上記2つの燃料供給系をエンジンECU12が制御して、選択された燃料をエンジン11に供給する。具体的には、第1燃料F1の使用が選択された場合の燃料供給では、エンジンECU12からポンプモータ23に駆動信号が送られてフューエルポンプ22を駆動させると共に、エンジンECU12によって第1インジェクタ24からの第1燃料F1の噴射時期と噴射量が制御される。第2燃料F2の使用が選択された場合の燃料供給では、エンジンECU12から電磁弁27に信号が送られて電磁弁27を開放させると共に、エンジンECU12によって第2インジェクタ28からの第2燃料F2の噴射時期と噴射量が制御される。
【0020】
エンジン11は、燃焼室内に点火プラグ30を備えている。エンジンECU12が点火プラグ30の点火時期を制御し、点火プラグ30の点火によって燃焼室内の混合気に着火して燃焼させる。混合気の燃焼により、エンジン11のシリンダ(不図示)内でピストン(不図示)が往復移動し、ピストンの往復運動がクランク軸31の回転運動に変換される。
【0021】
クランク軸31の回転は変速機32に伝達される。クランク軸31と変速機32の間には、接続状態と切断状態に動作可能なクラッチ33が設けられており、クラッチ33の接続状態でクランク軸31から変速機32への回転力伝達が行われる。変速機32は、クランク軸31から伝達された回転を変速してドライブシャフト34に伝達し、ドライブシャフト34に接続する駆動輪35が回転してバイフューエル車両10が走行する。
【0022】
ドライブシャフト34や駆動輪35など、変速機32以降の回転部分の回転速度が、車速センサ37によって検出される。車速センサ37による検出値はエンジンECU12に送信され、車速センサ37の検出値に基づいてバイフューエル車両10の車速が算出される。エンジン11を冷却する冷却系(不図示)を備え、冷却系の冷却水の温度が水温センサ38によって測定されて、測定値がエンジンECU12に送信される。車速センサ37や水温センサ38などによって、エンジンECU12は、バイフューエル車両10の走行状態やエンジン11の駆動状態などの車両情報を判定する。
【0023】
本実施の形態のバイフューエル車両10は、手動操作によって変速機32の変速段を切り替えるマニュアルトランスミッション(MT)車である。アクセルペダル40、クラッチペダル41、ブレーキペダル42、チェンジレバー43を介して、バイフューエル車両10の走行に関する乗員の操作が入力される。また、図示を省略するが、車輪を操舵させる手段としてハンドルを備えている。
【0024】
アクセルペダル40の操作によって、エンジン11の出力要求が発生する。乗員によるアクセルペダル40の操作量(アクセル開度)が、アクセル開度センサ44によって検出される。アクセル開度センサ44で検出されるアクセル開度に基づく出力要求の大きさに応じて、エンジンECU12が、第1インジェクタ24や第2インジェクタ28からの燃料の噴射時期及び噴射量、点火プラグ30の点火時期、吸気系で取り込む空気量などを制御して、エンジン11を駆動させる。
【0025】
クラッチペダル41の操作によって、クラッチ33の接続状態が変更される。クラッチペダル41を踏み込まない非操作状態ではクラッチ33が接続しており、乗員がクラッチペダル41を踏み込み操作するとクラッチ33の接続が解除される。クラッチペダル41の操作量(クラッチストローク)がクラッチストロークセンサ45によって検出される。クラッチストロークセンサ45による検出信号に基づいて、エンジンECU12においてクラッチ33の接続状態が識別される。
【0026】
ブレーキペダル42の操作によって、ブレーキ機構36による制動動作が行われる。乗員がブレーキペダル42を踏み込み操作すると、踏力がブレーキ倍力装置(不図示)によって増幅されてブレーキ機構36に伝達される。すると、ブレーキ機構36は、機械的な摩擦接触によって車輪の回転を減速させて、バイフューエル車両10の速度を低下させる。ブレーキペダル42の操作量(ブレーキストローク)は、ブレーキストロークセンサ46によって検出される。
【0027】
チェンジレバー43の操作によって、変速機32の変速段の選択が行われる。チェンジレバー43は、変速機32における複数の変速段のいずれも選択しないニュートラル位置を有しており、ニュートラル位置では変速機32からドライブシャフト34への動力伝達が行われない。チェンジレバー43をニュートラル位置から操作して変速段を選択すると、シフト装置(不図示)を介して変速機32が動作して、対応した変速段に切り替わる。チェンジレバー43で選択しているシフト位置やニュートラル位置は、シフトセンサ47によって検出される。
【0028】
停止状態のエンジン11は、電動のエンジン始動装置であるスタータ50によって初期回転を与えられて始動する。スタータ50は、車載のバッテリ(不図示)からの電力供給によって駆動されるモータ(不図示)を備えており、エンジンECU12から始動信号がスタータ50に入力されると、モータによって回転軸(不図示)を回転させる。スタータ50の回転軸の回転がギヤ類を介してクランク軸31に伝達され、クランク軸31の回転開始によってエンジン11が始動する。
【0029】
エンジンECU12は、エンジン11の運転中に所定の自動停止条件(アイドリングストップ条件)が満たされた場合に、エンジン11の駆動を自動停止してアイドリングストップ状態にさせる。アクセル開度センサ44、クラッチストロークセンサ45、ブレーキストロークセンサ46などによって得られる乗員の操作情報や、車速センサ37、水温センサ38などによって得られる車両情報などに基づいて、自動停止条件の成立が判定される。例えば、車速が所定車速以下であること、乗員がハンドル(不図示)の操作を行っていないこと、ブレーキペダル42が踏み込まれていること、チェンジレバー43がニュートラル位置であること、クラッチペダル41が踏み込まれていないこと、アクセル開度が所定開度以下であること、という条件を全て満たすと、自動停止条件が成立したと判定されて、エンジンECU12の制御によってエンジン11が自動的に停止される。
【0030】
また、アイドリングストップ中に所定の再始動条件が満たされた場合に、エンジンECU12はエンジン11の再始動を行わせる。例えば、チェンジレバー43がニュートラル位置である状態において、ハンドル操作を行ったこと、クラッチペダル41が踏み込まれたこと、ブレーキペダル42の踏み込みが行われていないこと、エンジン11の自動停止から所定時間が経過したこと、バッテリの放電が所定以上進んだこと、などのうちいずれかの条件を満たすと、エンジンECU12の制御によってエンジン11が自動的に再始動される。バッテリの状態を再始動条件に含むのは、エンジン11の停止時には車載の発電機(不図示)による発電が行われないので、バッテリの過放電を防ぐためである。
【0031】
なお、以上に例示したアイドリングストップに関する自動停止条件及び再始動条件は、マニュアルトランスミッション(MT)車の場合の一例であり、各条件の詳細は上記の例に限定されるものではない。
【0032】
ところで、上述したように、バイフューエル車両10で選択して使用される燃料のうち、第1燃料F1は相対的にエンジン11の始動性能に優れるという特性があり、第2燃料F2は相対的に燃費性能に優れるという特性がある。そして、本実施の形態のバイフューエル車両10では、特性の異なる第1燃料F1と第2燃料F2のそれぞれの使用状況(エンジン11への供給状況)と残量に応じて、アイドリングストップの禁止と許可を適切に制御して、エンジン11の始動性能と燃費性能の両立を図っている。以下、その制御の詳細を説明する。なお、本実施の形態のバイフューエル車両10は、アイドリングストップを行うことが基本設定になっており、以下に述べるアイドリングストップの許可は、アイドリングストップの禁止を行わないという処理内容になる。
【0033】
第1燃料F1に関して、残量の所定値A(第3の所定値)と所定値B(第1の所定値)を設定する。所定値Aは所定値Bよりも低い(燃料の残量が少ない)値である。第2燃料F2に関して、残量の所定値C(第2の所定値)を設定する。第2燃料F2は、第1燃料F1の所定値Bよりも高い(燃料の残量が多い)値である。
【0034】
なお、ここでの燃料の残量(所定値A、B、Cを含む)とは、燃料タンク内の単純な残容量を意味するのではなく、同じ走行条件下で燃料消費により走行を継続可能な距離の推定値として取り扱われる。従って、特性の異なる第1燃料F1と第2燃料F2についても、走行継続可能な距離の推定値として、残量の対比が可能である。
【0035】
所定値A、B、Cは、各燃料を補給可能な燃料補給所の分布密度に応じて設定され、各燃料が所定値に達した段階で、最寄りの燃料補給所まで確実に走行できるように多少の余裕をもって定められている。例えば、第2燃料F2であるCNGを補給可能なガス補給所は、第1燃料F1であるガソリンを補給可能な給油所に比べて数が少ない(分布密度が低い)。そのため、所定値Cによる走行可能距離を所定値Bによる走行可能距離をよりも大きい値にしている。一例として、第2燃料F2の残量が所定値Cの状態から、数十km程度の走行が可能なように設定する。一方、ガソリンを補給可能な給油所は、比較的高密度に存在するので、第1燃料F1の残量が所定値Aまたは所定値Bの状態から、数km程度の走行が可能なように設定する。第1燃料F1において残量の基準を所定値A、Bの2段階にしている理由については後述する。
【0036】
本実施の形態では、アイドリングストップの許可と禁止の判定基準について、3つの特徴を有している。なお、以下の説明において、エンジン11の運転時とは、エンジン11の動力による車両の実際の走行中と、車両は停止しているがエンジン11の駆動が継続している場合の両方を含む。
【0037】
まず、第1の特徴について説明する。エンジン11への供給燃料として第2燃料F2を選択してのエンジン運転時に、エンジン運転に使用していない第1燃料F1の残量が不足している(所定値B以下である)場合には、アイドリングストップを禁止する。図2の表中の領域P2が当該処理に相当する。また、エンジン11への供給燃料として第1燃料F1を選択してのエンジン運転時に、エンジン運転に使用していない第2燃料F2の残量が不足している(所定値C以下である)場合には、アイドリングストップを許可する。図2の表中の領域P3が当該処理に相当する。この図2中の領域P2と領域P3の対応関係が、アイドリングストップの判定基準に関する第1の特徴である。
【0038】
相対的に始動性能が高い第1燃料F1の残量が不足した状態でアイドリングストップを実行すると、エンジン停止後の再始動に第1燃料F1を用いることができず、スタータ50によるクランキングに長時間を要し、車両としての再始動性能が低下するおそれがある。特に、エンジン11の気筒内での第2燃料F2の圧縮温度が低くなる低温環境下や、スタータ50の劣化により始動用の駆動力が低下している状態では、第2燃料F2を用いたエンジン再始動において、より多くの時間を要する。そのため、このような状況では、第1燃料F1によるエンジン再始動が求められるが、第1燃料F1が不足していると選択できない。従って、第2燃料F2を用いたエンジン運転中に第1燃料F1の残量が不足している場合には、アイドリングストップを禁止する(図2の領域P2)ことで、再始動性能が低い状態でのエンジン再始動に陥ることを防止できる。
【0039】
また、相対的に燃費性能が低い第1燃料F1を用いてのエンジン運転中に、第2燃料F2の残量が低下した場合には、残量の多い第1燃料F1によって再始動性能が担保されるため、アイドリングストップを許可してエンジン自動停止の頻度を維持し(図2の領域P3)、燃費の低下を抑制している。
【0040】
第1燃料F1が所定値B以下になった場合(図2の領域P2)、エンジンECU12は、燃料残量計63のインジケータ64により、第1燃料F1の燃料残量低下を示す表示を行わせる。第2燃料F2が所定値C以下になった場合(図2の領域P3)、エンジンECU12は、燃料残量計63のインジケータ64により、第2燃料F2の燃料残量低下を示す表示を行わせる。所定値Cの方が所定値Bよりも残存燃料による走行可能距離が長いので、相対的には、第1燃料F1よりも第2燃料F2の方が早期に燃料残量低下の報知が行われることになる。
【0041】
上記の通り、第2燃料F2であるCNGを補給可能なガス補給所は、第1燃料F1であるガソリンを補給可能な給油所に比べて、分布密度が低い。そのため、燃料残量低下報知のトリガーとなる所定値Cを所定値Bよりも大きく設定して、早めの段階で第2燃料F2の不足を乗員に知らせて注意喚起を促している。なお、第2燃料F2の残量低下に基づくアイドリングストップの禁止処理は行わないので、第2燃料F2の残量の大小は、燃費には影響しない。従って、第2燃料F2の残量低下を早期に報知するために所定値Cを高めに設定しても、燃費性能の悪化は生じない。
【0042】
燃料残量が所定値B以下の場合の報知形態と、燃料残量が所定値C以下の場合の報知形態とを、互いに異ならせてもよい。具体的には、インジケータ64を構成する表示灯の発光色の違い、表示灯の点灯形態(連続点灯と点滅など)の違い、表示灯以外のディスプレイを用いた記号や文字や画像の表示、などによって、異なる報知形態を設定可能である。また、視認可能な視覚情報に加えて、警告音などの聴覚情報を用いることも可能である。燃料残量が所定値B以下の場合は、図2の領域P2におけるアイドリングストップ禁止処理と関連するものであるため、アイドリングストップ禁止になったことを知らせる独自内容の報知を行ってもよい。
【0043】
続いて、第2の特徴について説明する。第1の特徴で述べたように、エンジン11への供給燃料として第2燃料F2を選択してのエンジン運転時に、エンジン運転に使用していない第1燃料F1の残量が所定値B以下の場合には、アイドリングストップを禁止する。図2の表中の領域P2が当該処理に相当する。さらに、エンジン11への供給燃料として第1燃料F1を選択してのエンジン運転時に、第1燃料F1の残量が所定値A以下になった場合には、アイドリングストップを禁止する。図2の表中の領域P1が当該処理に相当する。この図2中の領域P1と領域P2の対応関係が、アイドリングストップの判定基準に関する第2の特徴である。
【0044】
第1燃料F1は第2燃料F2と比べて燃費性能が低いため、第1燃料F1を使用したエンジン運転時の方が、第2燃料F2を使用したエンジン運転時よりも、アイドリングストップによる燃費改善効果が高い。つまり、第1燃料F1を使用したエンジン運転時には、できるだけアイドリングストップ禁止制御に進まないことが、燃費向上の点で望ましい。第1燃料F1の残量低下によるアイドリングストップ禁止(図2の領域P1、P2)において、所定値Aによる走行可能距離を所定値Bによる走行可能距離をよりも短く設定することで、第1燃料F1を使用したエンジン運転時(図2の領域P1)の方が、第2燃料F2を使用したエンジン運転時(図2の領域P2)よりも、第1燃料F1の残量が少なくなるまでアイドリングストップの許可を継続できる。これにより、第1燃料F1を使用したエンジン運転時のアイドリングストップの頻度を維持して、アイドリングストップ禁止による燃費低下幅を抑制する効果が得られる。このような理由から、第1燃料F1の残量について2つの所定値A、Bを設定している。
【0045】
上記のように、第1燃料F1が所定値B以下になった場合(図2の領域P2)に、インジケータ64による残量低下報知を行う。所定値Bで報知済みであるので、所定値Bよりも低い残量の所定値Aになった場合(図2の領域P1)では、第1燃料F1の残量低下を重ねて報知をしなくてもよい。但し、燃料残量が所定値A以下になった場合に、燃料残量が所定値B以下になった場合とは異なる形態で報知させてもよい。この場合、所定値A以下になった場合の方が第1燃料F1の残量が少ないので、乗員に対してより強く燃料低下を訴える報知形態にすることが好ましい。それぞれの報知形態の異ならせ方については、第1の特徴の説明で先に述べた通りである。また、第1燃料F1の残量が所定値A以下の場合は、図2の領域P1におけるアイドリングストップ禁止処理と関連するものであるため、アイドリングストップ禁止になったことを知らせる独自内容の報知を行ってもよい。
【0046】
続いて、第3の特徴について説明する。第1及び第2の特徴で述べたように、エンジン11への供給燃料として第2燃料F2を選択してのエンジン運転時に、エンジン運転に使用していない第1燃料F1の残量が所定値B以下の場合には、アイドリングストップを禁止する。図2の表中の領域P2が当該処理に相当する。さらに、エンジン11への供給燃料として第2燃料F2を選択してのエンジン運転時に、第2燃料F2の残量が所定値C以下の場合には、アイドリングストップを許可する。図2の表中の領域P4が当該処理に相当する。この図2中の領域P2と領域P4の対応関係が、アイドリングストップの判定基準に関する第3の特徴である。
【0047】
始動性能の高い第1燃料F1に十分な残量があれば、エンジン11の再始動を支障なく行える。そのため、第2燃料F2を使用したエンジン運転時に、第2燃料F2の残量が所定値Cまで低下した場合、第1燃料F1の不足が検出されないうちは、アイドリングストップの許可を継続して(図2の領域P4)、アイドリングストップの頻度を維持させ、燃費性能の低下を抑制する。一方、第2燃料F2を使用したエンジン運転時であっても、第1燃料F1の不足が検出された場合には、アイドリングストップを禁止することで(図2の領域P2)、第2燃料F2を使用するエンジン再始動への進行を防止できる。
【0048】
第2燃料F2の使用時に第2燃料F2が所定値C以下になった場合(図2の領域P4)、エンジンECU12は、燃料残量計63のインジケータ64に、第2燃料F2の燃料残量低下を示す表示を行わせる。先に述べたように、所定値C以下になったときに第2燃料F2の不足を報知することで、乗員に早めの燃料補給を促して、第2燃料F2の補給機会損失を防ぐことができる。第2燃料F2の使用時に第1燃料F1が所定値B以下になった場合(図2の領域P2)のインジケータ64による報知は、第1の特徴の説明で先に述べた通りである。
【0049】
続いて、図3のフローチャートを参照して、本実施の形態のアイドリングストップ制御の流れについて説明する。以下の制御内容は、エンジン11が運転している状態において所定時間で繰り返し実行される。なお、アイドリングストップを行うことが基本の設定であるため、図3のフローチャートにおいて、アイドリングストップの許可については、明示的に表していない。つまり、アイドリングストップの禁止を指定していない部分については、アイドリングストップ許可状態にある。
【0050】
ステップS1では、第2燃料F2の残量が所定値C以下であるかを判定する。ステップS1で第2燃料F2の残量が所定値C以下である場合(YES)、ステップS2に進み、燃料残量計63のインジケータ64によって第2燃料F2の残量不足を報知させた上で、ステップS3に進む。ステップS1で所定値Cよりも多く第2燃料F2が残っている場合(NO)、ステップS2をスキップしてステップS3に進む。第2燃料F2の残量については、アイドリングストップの許可と禁止に関する判定基準として用いないため、制御フローの最初のステップS1で、第2燃料F2の残量不足を確認して、不足時の報知(ステップS2)のみを行っている。なお、エンジン11の運転に使用している燃料が第1燃料F1と第2燃料F2のいずれであっても、ステップS2での第2燃料F2の残量不足報知を行う。これにより、乗員が使用燃料選択スイッチ14によって使用燃料を切り替えた場合などでも、インジケータ64が消えたり点灯したりすることを防ぎ、使用燃料に依存することなく確実に第2燃料F2の残量不足を報知できる。
【0051】
ステップS3では、第1燃料F1に設定した2つの燃料残量のうち、高い方の所定値B以下であるかを判定する。ステップS3で第1燃料F1の残量が所定値B以下である場合(YES)、ステップS4に進み、燃料残量計63のインジケータ64によって第1燃料F1の残量不足を報知させた上で、ステップS5に進む。エンジン11の運転に使用している燃料が第1燃料F1と第2燃料F2のいずれであっても、ステップS4での第1燃料F1の残量不足報知を行う。これにより、乗員が使用燃料選択スイッチ14によって使用燃料を切り替えた場合などでも、インジケータ64が消えたり点灯したりすることを防ぎ、使用燃料に依存することなく確実に第1燃料F1の残量不足を報知できる。ステップS3で所定値Bよりも多く第1燃料F1が残っている場合(NO)、アイドリングストップの禁止を判定する必要がないため、基本設定であるアイドリングストップ許可状態のまま制御フローから抜ける。
【0052】
ステップS5では、第1燃料F1を使用してエンジン11の運転中であるかを判定する。ここでのエンジン11の運転中とは、エンジン11の動力によって車両を実際に走行させている場合と、車両は停止しているがエンジン11の駆動が継続している場合のいずれも該当する。第1燃料F1を使用してエンジン運転中である場合(YES)、ステップS6に進む。第1燃料F1ではなく第2燃料F2を使用してエンジン運転中である場合(NO)、ステップS8に進む。
【0053】
ステップS6では、第1燃料F1に設定した2つの燃料残量のうち、低い方の所定値A以下であるかを判定する。ステップS6で第1燃料F1の残量が所定値A以下である場合(YES)、ステップS7に進む。なお、図3のフローチャートには示していないが、第1燃料F1の残量が所定値A以下である場合に、ステップS4での第1燃料F1の残量低下(所定値B以下)の報知とは異なる形態の残量低下報知を、燃料残量計63のインジケータ64に行わせてもよい。ステップS6で所定値Aよりも多く第1燃料F1が残っている場合(NO)、基本設定であるアイドリングストップ許可状態のまま制御フローから抜ける。
【0054】
ステップS7とステップS8ではいずれも、アイドリングストップの禁止処理を行う。ステップS7での処理は、図2の領域P1に対応するものである。ステップS8での処理は、図2の領域P2に対応するものである。ステップS7又はステップS8を経た場合、アイドリングストップ禁止に設定変更された状態で制御フローから抜ける。
【0055】
以上のように、本実施の形態のバイフューエル車両10は、始動性能が高い第1燃料F1の不足時にエンジン11の自動停止を禁止するので、始動性能が低い状況でエンジン11の再始動を行うことを防ぐことができる。また、燃費効能が高い第2燃料F2の不足時には、エンジン11の自動停止を許可するので、自動停止の頻度を維持して燃費向上の効果を得ることができる。従って、特性の異なる2つの燃料を用いつつ、燃料の残量に応じて、エンジン11の始動性能と燃費性能に優れたアイドリングストップ制御を実現することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成や制御等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0057】
上記実施形態では、第1燃料F1と第2燃料F2の入手性に差があることから、第2燃料F2の残量の所定値Cを、第1燃料F1の残量の所定値Bよりも大きく設定し、補給機会が限られやすい第2燃料F2の方が走行可能距離の大きい状態で燃料不足の報知を行うようにしている。これとは異なり、第1燃料F1と第2燃料F2の入手性が同等の場合は、所定値Bと所定値Cでの走行可能距離を同等にしてもよい。あるいは、第1燃料F1よりも第2燃料F2の入手性が高い場合は、所定値Cでの走行可能距離を所定値Bでの走行可能距離よりも小さく設定することも可能である。
【0058】
上記実施形態では、第1燃料F1や第2燃料F2の燃料不足の報知を、表示器62上の燃料残量計63のインジケータ64への表示や、音声で行うものとしたが、これらとは異なる手段で報知することも可能である。
【0059】
上記実施形態ではバイフューエル車両10の燃料としてガソリンとCNGを併用しているが、本発明を適用するバイフューエル車両における燃料の組み合わせは、これに限定されない。例えば、軽油、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas:LNG)、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas:LPG)、その他の代替燃料など、特性の異なる複数種の燃料の組み合わせが選択可能である。すなわち、互いの始動性能と燃費性能の相違に基づいて、上記実施形態のような使い分けが可能な関係にある燃料であれば、広く適用が可能である。
【0060】
上記実施形態は、手動で有段の変速操作を行うマニュアルトランスミッション(MT)車を例示したが、本発明のバイフューエル車両は変速機構のタイプを問わずに適用が可能である。例えば、自動変速機を搭載した車両にも適用が可能であり、より詳しくは、無段変速機(CVT)、デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)、トルクコンバーター式オートマチック(AT)、自動変速マニュアルトランスミッション(AMT)、などにも対応が可能である。なお、アイドリングストップの自動停止条件や再始動条件は、変速機構のタイプによっても異なるため、上記実施形態で記載した条件には限定されない。
【0061】
上記実施形態は、走行用の動力発生源として内燃機関であるエンジン11のみを備えた車両に適用したが、内燃機関と電動機を動力発生源として併用する車両(いわゆるハイブリッド車)に本発明を適用することも可能である。この場合、電動機単独でも車両の走行を行わせることが可能なタイプ、電動機がエンジンの始動及びエンジン駆動力の補助に限定して使用されるタイプなど、様々なタイプのハイブリッド車が適用対象となる。つまり、電動機搭載の有無に関わらず、複数の燃料を内燃機関に供給するバイフューエル車両であれば、広く本発明を適用できる。そして、停止もしくは停止に近い低車速状態での狭義のアイドリングストップだけでなく、ハイブリッド車において、ある程度以上の車速で走行している状態でエンジンを自動停止させる場合にも、本発明を適用することが可能である。上記実施形態におけるアイドリングストップを、広義のエンジン自動停止と読み替えることで、ハイブリッド車の走行中におけるエンジン自動停止の制御にも応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明によるバイフューエル車両は、各燃料の残量と特性に応じて、始動性能と燃費性能に優れた内燃機関の自動停止制御を実現することができ、特に、高度な燃費管理が要求されるバイフューエル車両に有用である。
【符号の説明】
【0063】
10 :バイフューエル車両
11 :エンジン(内燃機関)
12 :エンジンECU(自動停止制御装置)
20 :第1燃料タンク
24 :第1インジェクタ
25 :第2燃料タンク
28 :第2インジェクタ
31 :クランク軸
32 :変速機
33 :クラッチ
34 :ドライブシャフト
35 :駆動輪
36 :ブレーキ機構
40 :アクセルペダル
41 :クラッチペダル
42 :ブレーキペダル
43 :チェンジレバー
50 :スタータ
60 :第1燃料残量センサ
61 :第2燃料残量センサ
62 :表示器
63 :燃料残量計
64 :インジケータ(燃料の残量低下を報知する手段)
A :第1燃料の残量の所定値(第3の所定値)
B :第1燃料の残量の所定値(第1の所定値)
C :第2燃料の残量の所定値(第2の所定値)
F1 :第1燃料
F2 :第2燃料
図1
図2
図3