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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/47 20180101AFI20221206BHJP
   F24F 11/54 20180101ALI20221206BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20221206BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20221206BHJP
【FI】
F24F11/47
F24F11/54
F24F110:10
F24F110:20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019034274
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020139660
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽太郎
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-143670(JP,A)
【文献】特開2014-009824(JP,A)
【文献】特開2013-044462(JP,A)
【文献】特開2016-217617(JP,A)
【文献】特開平11-223373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
G06Q 10/00-10/10
G06Q 30/00-30/08
G06Q 50/00-50/20
G06Q 50/26-99/00
G16Z 99/00
H02J 3/00-5/00、13/00
H03J 9/00-9/06
H04Q 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部屋にそれぞれ配置されている複数の空気調和機と、
前記複数の部屋にそれぞれ配置されている複数の温度計と、
前記複数の部屋にそれぞれ配置されている複数の湿度計と、
前記複数の温度計及び湿度計からの温度情報及び湿度情報が入力され、それらの情報に基づいて前記複数の空気調和機を個別に制御する制御装置とで構成される空調システムにおいて、
前記制御装置は、電力会社より提供される消費電力のピークシフトを要求する時間帯の情報を取得する機能を備え、前記時間帯の情報に基づいて、消費電力を低下させるように前記複数の空気調和機の運転状態を制御し、
前記複数の部屋より選択した2つの空気調和機からなる組の1つ以上を制御対象とし、2つの空気調和機を停止させた時点からの不快指数の上昇状態をシミュレートして予め定めた上限値に達するまでの予想時間を求め、
2つの予想時間の合計が前記時間帯の終了時点以上となる際には、一方の空気調和機が対応する予想時間を超えるまで停止させると共に他方の空気調和機を冷房運転し、前記予想時間を超えると一方の空気調和機を冷房運転し、他方の空気調和機を除湿運転するように切り換える空調システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記2つの予想時間の合計が前記終了時点に到達しない際には、一方の空気調和機を除湿運転すると共に他方の空気調和機を冷房運転した後、一方の空気調和機を冷房運転すると共に他方の空気調和機を除湿運転するように切り換える請求項記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記一方の空気調和機を除湿運転する際には、対応する部屋について不快指数の上昇状態を再度シミュレートして前記上限値に達するまでの予想時間を求め、前記予想時間を超えるまで除湿運転を継続する請求項記載の空調システム。
【請求項4】
前記制御装置は、一方の空気調和機を冷房運転すると共に他方の空気調和機を除湿運転するように切り換えた際には、前記他方の部屋について既に求めていた予想時間と前記再度のシミュレートにより求めた予想時間との合計が、前記時間帯の終了時点以上となる際には制御を停止し、
前記合計が前記終了時点に到達しない際には、前記他方の部屋について不快指数をリアタイムで継続的に求め、求めた不快指数が前記上限値を超えると、他方の空気調和機を冷房運転するように切り換える請求項記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部屋にそれぞれ配置される空気調和機を、1つの制御装置により個別に制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力会社は、顧客による電力の需要状況に応じて、複数の発電施設における発電量をリアルタイムで制御している。例えば夏期において気温が高い時間帯では、エアコンの冷房運転を行う家庭や会社等が多くなるため、電力需要は大きなピークを示す。そこで、電力会社は、発電量のピークを抑制するため、特に電力需要が大きくなる時間帯における電気機器の使用を需要者に控えもらうため、所謂ピークシフトに関する情報を提供している。尚、特許文献1は、セントラル空調システムの一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-139129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、需要者がピークシフトに貢献するため、夏期の気温が高い時間帯に冷房の使用を無理に控えると、体調を崩してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザの快適性を損なわない範囲で電力需要のピークシフトに貢献できる空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の空調システムによれば、制御装置は、電力会社より提供される消費電力のピークシフトを要求する時間帯の情報を取得する機能を備え、その時間帯の情報に基づいて、消費電力を低減するように複数の空気調和機の運転状態を制御する。このように構成すれば、制御装置が自動的に、ピークシフトが要求されている時間帯に複数の空気調和機の運転状態による消費電力を低減することで、ユーザが過度に冷房の使用を控えることを回避できる。
【0007】
また、請求項記載の空調システムによれば、制御装置は、複数の部屋より選択した2つの空気調和機からなる組の1つ以上を制御対象とし、2つの空気調和機を停止させた時点からの不快指数の上昇状態をシミュレートして上限値に達するまでの予想時間を求める。そして、2つの予想時間の合計がピークシフト時間帯の終了時点以上となる際には、一方の空気調和機を対応する予想時間を超えるまで停止させると共に、他方の空気調和機を冷房運転する。また、前記予想時間を超えると一方の空気調和機を冷房運転し、他方の空気調和機を除湿運転するように切り換える。
【0008】
このように構成すれば、1つ以上の組のうち、一方の空気調和機は対応する予想時間を超えるまで運転が停止され、その後冷房運転が開始される。その間に、他方の空気調和機は、冷房運転が継続された後、消費電力がより低い除湿運転に切り換えられる。これにより、ユーザが不快になることを抑制しつつ消費電力を制限できる。
【0009】
請求項記載の空調システムによれば、制御装置は、2つの予想時間の合計が前記終了時点に到達しない際には、一方の空気調和機を除湿運転すると共に他方の空気調和機を冷房運転した後、一方の空気調和機を冷房運転すると共に他方の空気調和機を除湿運転するように切り換える。この場合、ピークシフトに寄与するための電力の制限については若干余裕があるので、一方の空気調和機を停止させることなく、消費電力が冷房運転よりは低い除湿運転を行うことで、ユーザを快適な空調環境に置くことができる。
【0010】
請求項記載の空調システムによれば、制御装置は、一方の空気調和機を除湿運転する際には、対応する部屋について不快指数の上昇状態を再度シミュレートして上限値に達するまでの予想時間を求め、その予想時間を超えるまで除湿運転を継続する。すなわち、除湿運転では、部屋の温度は冷房運転の場合よりも低下しないので、不快指数が若干上昇する。そこで、不快指数が上限値を超えないと予想される範囲で除湿運転を継続し、その後冷房運転に切り換えることで、ユーザが体感する快適さを維持できる。
【0011】
請求項記載の空調システムによれば、制御装置は、一方の空気調和機を冷房運転すると共に他方の空気調和機を除湿運転するように切り換えた際には、他方の部屋について既に求めていた予想時間と再度のシミュレートにより求めた予想時間との合計が、ピークシフト時間帯の終了時点以上となる際には制御を停止する。一方、前記合計が前記終了時点に到達しない際には、他方の部屋について不快指数をリアルタイムで継続的に求め、求めた不快指数が上限値を超えると他方の空気調和機を冷房運転するように切り換える。
【0012】
すなわち、一方の空気調和機を冷房運転とし、他方を除湿運転とした段階で予想時間の合計がピークシフト時間帯の終了時点以上となるのであれば、その状態を継続したままでも他方の部屋の不快指数が上限値に達することはない。そこで、以降は不快指数の管理を行うことなく制御を停止する。また、予想時間の合計がピークシフト時間帯の終了時点に達しないとすれば、その時点の運転状態を維持したまま、除湿運転が行われている部屋の不快指数を監視する。そして、不快指数が上限値を超えた際には、ユーザの快適性を優先して他方の空気調和機を冷房運転する。これにより、ユーザの快適性を維持する範囲でピークシフトに極力貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態であり、空調システムの構成を示す機能ブロック図
図2】制御装置の構成を中心に示す機能ブロック図
図3】ピークシフト判定処理を示すフローチャート
図4】ピークシフト時エアコン制御処理を示すフローチャート(その1)
図5】ピークシフト時エアコン制御処理を示すフローチャート(その2)
図6】除湿制御処理を示すフローチャート(その1)
図7】除湿制御処理を示すフローチャート(その2)
図8】ステップS13~S24の処理に対応した部屋Aの不快指数の変化を示すタイムチャート
図9】ステップS25,S28~S39の処理に対応した部屋A,Bの不快指数の変化を示すタイムチャート
図10】ステップS41~S46の処理に対応した部屋A,Bの不快指数の変化を示すタイムチャート
図11】ステップS53~S60の処理に対応した部屋Aの不快指数の変化を示すタイムチャート
図12】ステップS64~S70の処理に対応した部屋A,Bの不快指数の変化を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、空調システム1は、複数の部屋A、部屋B、部屋Cおよび部屋Dを有する家屋2に設けられている。空調システム1は、四つの部屋A~部屋Dにそれぞれ設けられているエアコン3A~3Dと、温湿度計4A~4Dと、制御装置5とを備えている。エアコン3は空気調和機に相当する。
【0015】
温湿度計4A~4Dは、それぞれ対応する部屋の温度及び湿度を検知し、検知信号を制御装置5に入力する。各エアコン3A~3Dは、制御装置5と制御信号線6を介して接続され、それぞれの運転状態は制御装置5により個別に制御される。図2に示すように、本実施形態では、制御装置5は、例えばそれぞれのON/OFFと、冷房運転,除湿運転の切換え等を制御する。また、制御装置5は、電力会社より提供される各日のピークシフト要求に関する情報を、例えば通信回線等を介して取得可能となっている。
【0016】
制御装置5は、例えばマイクロコンピュータで構成されており、機能部として制御部7,カウンタ8,計算部9及びRTC10を備えている。計算部9は、各部屋の温度,湿度に応じて後述するように不快指数を演算し、その演算結果を制御部7に入力する。RTC10は、時刻を計時する時計である。制御部7は、入力された演算結果と上記のピークシフト要求に関する情報と、カウンタ8による時間の計測結果とに基づいて、各エアコン3A~3Dの運転状態を制御する。
【0017】
次に、本実施形態の作用について説明する。尚、季節は夏期であり、エアコン3は冷房運転していることを前提とする。図3は、制御装置5により実行されるピークシフト判定処理を示すフローチャートである。制御装置5は、電力会社よりピークシフト要求があるか否かを判定し(S1)、要求があると(YES)ピークシフトが要求されている時間帯の終了時刻を取得する(S2)。続いて、エアコン3をピークシフト要求に対応した制御モードで動作する時間Tmを、次式により算出する(S3)。
Tm=(ピークシフト終了時刻)-(現在時刻) …(1)
それから、ピークシフト要求に対応する際のエアコン制御処理に移行する(S4)。
【0018】
図4及び図5は、上記のエアコン制御処理の内容を示すフローチャートである。尚、本実施形態では4つの部屋A~Dがあるが、ここでは部屋A及びBを1つの組として制御対象とした場合を説明する。また、部屋C及びDについても同様に1つの組として、同様の制御が行われるものとする。
【0019】
先ず、制御装置5は、温湿度計4Aより部屋Aの温度及び湿度データを取得すると(S11)、その時点の不快指数UAt0を算出する(S12)。不快指数Uは、乾球温度をTd,湿度をHとすると、次式で求められる。
U=0.8Td+0.01H(0.99Td-14.3)+46.3 …(2)
【0020】
次に、エアコン3Aの運転を停止させると(S13)、カウンタ8による計時をスタートさせる(S14)。「T」はカウンタ8のカウント値である。それから、カウント値Tが、ステップS16においてΔtを超えるまでカウントアップさせる(S15)。Δtは、図8等に示すように温度及び湿度データをサンプリングする間隔であり、例えば1分程度に設定される。
【0021】
カウント値TがΔtを超えると(S16;YES)カウント値Tをリセットし(S17、再度温度及び湿度データを取得して(S18)この時点の不快指数UAt1を算出する(S19)。そして、不快指数Uの傾きαを次式により算出する(S20)。
α=(UAt1-UAt0)/Δt …(3)
続いて、不快指数UAtnを次式により算出する(S21)。但し、n=2,3,…である。
Atn=UAtn-1+Δt×α …(4)
【0022】
次のステップS22では、不快指数UAtnが、予め設定した上限値ULimitを超えたか否かを判断し、超えていなければ(NO)インデックスnをカウントアップして(S23)ステップS21に戻る。上限値ULimitは、例えば日本人の93%が蒸し暑さにより不快を感じるとされている不快指数「85」等に設定する。
【0023】
不快指数UAtnが上限値ULimitを超えると(S22;YES)、その時点のインデックスnを用いて不快上限到達予想時間TAを次式により算出する(S24)。
TA=(n-1)×Δt …(5)
予想時間TAは、エアコン3Aの冷房運転を停止し続けた際に、部屋Aの不快指数が上限値を超えると予想される時間である。それから、エアコン3Aの冷房運転を再開させる(S25)。図8は、ステップS13~S24の処理に対応した部屋Aの不快指数の変化を示す。
【0024】
次は、部屋Bについて温度及び湿度データを取得し(S26)、その時点の不快指数UBt0を算出する(S27)。以下のステップS28~S38は、部屋BについてステップS14~S23と同様の処理を行う。これらの図示は省略する。そして、ステップS39において、部屋Bについて不快上限到達予想時間TBを次式により算出する。
TB=(n-1)×Δt …(6)
図9は、ステップS25,S28~S39の処理に対応した部屋A,Bの不快指数の変化を示す。
【0025】
続くステップS40では、次式の条件が成立するか否かを判断する。
TB+TA≧Tm …(7)
(7)式の条件は、エアコン3Aの冷房運転を停止した後に続いて、エアコン3(B)の冷房運転を停止し続けた場合、時間Tmが経過する前に部屋Bの不快指数が上限に到達するか否かを判断することになる。
【0026】
ステップS40で「YES」と判断した場合は、時間Tmが経過する前に部屋Bの不快指数が上限に到達しないことを意味する。したがって、エアコン3Aの冷房運転を停止すると共に、エアコン3(B)の冷房運転を開始し(S41)、カウンタ8によるカウンタ値Tの計時を開始する(S42)。そして、カウンタ値Tが予想時間TAを超えるまでは(S44;NO)、カウンタ値Tをカウントアップする(S43)。カウンタ値Tが予想時間TAを超えると(S44;YES)、カウンタ値Tをリセットする(S45)。それから、エアコン3Aの冷房運転を開始すると共に、エアコン3(B)を除湿運転に切り替えて(S46)制御を終了する。
【0027】
ここで、ステップS40で「YES」と判断した場合は、仮にステップS46でエアコン3(B)の冷房運転を停止し、その時点から予想時間TBが経過しても時間Tmが経過するので問題はない。しかし、本実施形態では、ユーザの快適性を考慮してエアコン3(B)を除湿運転にする。一方、ステップS40で「NO」と判断した場合は、エアコン3(B)の冷房運転を開始してから(S47)「除湿制御」に移行する(S48)。図10は、ステップS41~S46の処理に対応した部屋A,Bの不快指数の変化を示す。
【0028】
図6及び図7は、「除湿制御」の内容を示すフローチャートである。ステップS51~S64では、図4に示すステップS11~S24と同様の処理が行われる。但し、ステップS52,S59でそれぞれ算出される不快指数はUAt2,UAt3であり、ステップS60で算出される傾きγは、
γ=(UAt3-UAt2)/Δt …(8)
で求められる。ステップS56及び(8)式におけるΔtは、ステップS16におけるΔtと実質的に同一である。図11は、ステップS53~S60の処理に対応した部屋Aの不快指数の変化を示す。
【0029】
ステップS61では、不快指数U’Atnを次式により算出する。
U’Atn=U’Atn-1+Δt×γ …(9)
続くステップS62では、不快指数U’Atnが上限値ULimitを超えたか否かを判断する。ここで「YES」と判断すると、その時点のインデックスnを用いて不快上限到達予想時間TA’を(5)式と同様に算出する(S64)。
【0030】
それから、エアコン3Aの除湿運転を開始すると共に、エアコン3(B)の冷房運転を開始し(S65)、続くステップS66~S70では、予想時間TA’についてステップS42~S46と同様の処理を行う。図12は、ステップS64~S70の処理に対応した部屋A,Bの不快指数の変化を示す。
【0031】
続くステップS71では、次式の条件が成立するか否かを判断する。
TB+TA’≧Tm …(10)
ここで「YES」と判断するとそのまま制御を終了し、「NO」と判断すると、ステップS72~S78を実行する。
【0032】
次に、カウンタ8によるカウンタ値Tの計時を開始し(S72)、カウンタ値TがΔtに等しくなるまで待機してから(S73、カウンタ値Tをリセットする(S74)。それから、部屋Bについて温度及び湿度データを取得し(S75)、その時点の不快指数U’Btを算出する(S76)。続いて、不快指数U’Btが上限値ULimitを超えたか否かを判断し(S77)、上限値ULimitを超えていなければ(NO)ステップS72に戻る。上限値ULimitを超えると(YES)、エアコン3A及び3Bの冷房運転を開始して(S78)処理を終了する。
【0033】
以上のように本実施形態によれば、制御装置5は、電力会社より提供される消費電力のピークシフトを要求する時間帯の情報を取得する機能を備え、その時間帯の情報に基づいて、消費電力を低減するように複数のエアコン3A~3Dの運転状態を制御する。このように構成すれば、制御装置5が自動的に、ピークシフトが要求されている時間帯にエアコン3A~3Dの運転状態による消費電力を低減することで、ユーザが過度に冷房の使用を控えることを回避できる。
【0034】
また、制御装置5は、複数の部屋より選択した2つのエアコン3A及び3B,3C及び3Dからなる組を制御対象とし、例えば2つのエアコン3A,3Bを停止させた時点からの不快指数の上昇状態を(4)式等によりシミュレートして、上限値ULimitに達するまでの予想時間TA,TBを求める。そして、2つの予想時間TA,TBの合計がピークシフト時間帯の終了時点Tm以上となる際には、一方のエアコン3Aを予想時間TAを超えるまで停止させると共に他方のエアコン3Bを冷房運転する。また、予想時間TAを超えるとエアコン3Aを冷房運転し、エアコン3Bを除湿運転するように切り換える。
【0035】
このように構成すれば、1つの組において、エアコン3Aは予想時間TAを超えるまで運転が停止され、その後冷房運転が開始される。その間に、エアコン3Bは、冷房運転が継続された後、消費電力がより低い除湿運転に切り換えられる。これにより、ユーザが不快になることを抑制しつつ消費電力を制限できる。
【0036】
また、制御装置5は、予想時間TA,TBの合計が終了時点Tmに到達しない際には、エアコン3Aを除湿運転すると共にエアコン3Bを冷房運転した後、エアコン3Aを冷房運転すると共にエアコン3Bを除湿運転するように切り換える。この場合、ピークシフトに寄与するための電力の制限については若干余裕があるので、何れか一方のエアコン3を停止させることなく、消費電力が冷房運転よりは低い除湿運転を行うことで、ユーザを快適な空調環境に置くことができる。
【0037】
また、制御装置5は、エアコン3Aを除湿運転する際には、部屋Aについて不快指数の上昇状態を(9)式により再度シミュレートして上限値ULimitに達するまでの予想時間TA’を求め、その予想時間TA’を超えるまで除湿運転を継続する。すなわち、除湿運転では、部屋Aの温度は冷房運転の場合よりも低下しないので不快指数が若干上昇する。そこで、不快指数が上限値を超えないと予想される範囲で除湿運転を継続し、その後冷房運転に切り換えることで、ユーザが体感する快適さを維持できる。
【0038】
加えて、制御装置5は、エアコン3Aを冷房運転すると共にエアコン3Bを除湿運転するように切り換えた際には、部屋Bについて既に求めていた予想時間TBと再度のシミュレートにより求めた予想時間TA’との合計が、ピークシフト時間帯の終了時点Tm以上となる際には制御を停止する。一方、前記合計が前記終了時点Tmに到達しない際には、部屋Bについて不快指数をリアルタイムで継続的に求め、求めた不快指数が上限値を超えるとエアコン3Bを冷房運転するように切り換える。
【0039】
すなわち、エアコン3Aを冷房運転とし、エアコン3Bを除湿運転とした段階で予想時TA’,TBの合計が終了時点Tm以上となるのであれば、その状態を継続したままでも部屋Bの不快指数が上限値に達することはない。そこで、以降は不快指数の管理を行うことなく制御を停止する。また、前記合計が終了時点Tmに達しないとすれば、その時点の運転状態を維持したまま部屋Bの不快指数を監視する。そして、不快指数が上限値ULimitを超えた際には、ユーザの快適性を優先してエアコン3Bを冷房運転する。これにより、ユーザの快適性を維持する範囲でピークシフトに極力貢献できる。
【0040】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
エアコン3A及び3B,又はエアコン3C及び3Dのみを制御対象としても良い。
制御装置は、2台以下又は5台以上の空気調和機を制御しても良い。
上限値ULimitは、不快指数「85」に限ることなく、適宜設定して良い。
制御装置は、電力会社より提供される各日のピークシフト要求に関する情報を、必ずしも通信回線等を介して取得する必要は無い。例えば、ユーザが上記情報を制御装置に入力設定しても良い。
【符号の説明】
【0041】
図面中、1は空調システム、3A~3Dはエアコン、4A~4Dは温湿度計、5は制御装置を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12