(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/1764 20060101AFI20221206BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20221206BHJP
B60L 7/24 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B60T8/1764
B60T8/17 C
B60L7/24 D
(21)【出願番号】P 2019036330
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(72)【発明者】
【氏名】塚田 靖史
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 佑介
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-270385(JP,A)
【文献】特開2000-108873(JP,A)
【文献】特開2000-270406(JP,A)
【文献】特開2007-261418(JP,A)
【文献】特開2008-213670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪のうちで前輪に回生ジェネレータを備える車両に適用される車両の制動制御装置であって、
前記車輪に摩擦制動力を発生させるアクチュエータと、
前記車輪の車輪速度に基づいて、前記摩擦制動力を調整して、前記車輪のロック傾向を抑制するアンチロック制御を実行するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記アンチロック制御を開始する時点で、前記回生ジェネレータによる回生制動力を減少し、
前記車輪速度に基づいて前記車両の走行する路面が、前記車両の車幅方向で摩擦係数が異なるスプリット路であるか否かを判定し、
前記スプリット路を判定した場合には、
前記スプリット路の摩擦係数が低い側に位置する前記前輪である低摩擦側前輪の前記摩擦制動力を減少し、
前記低摩擦側前輪の前記摩擦制動力の減少を開始する開始時点での前記回生制動力に基づいて遅延時間を決定し、
前記開始時点から前記遅延時間を経過した時点で、前記スプリット路の摩擦係数が高い側に位置する前記前輪である高摩擦側前輪の前記摩擦制動力の増加を制限する、車両の制動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制動制御装置において、
前記コントローラは、
前記開始時点での、前記高摩擦側前輪に作用する前記回生制動力に基づいて、前記遅延時間を決定する、車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「スプリット路において車両に加わるヨートルク(「ヨーモーメント」ともいう)を抑制しつつ、車両の制動性を向上させることのできるアンチスキッド制御装置」について記載されている。具体的には、「車輪速センサの検出結果から演算された車輪速度等に基づき、車輪毎にブレーキ油圧を調整する電磁弁を制御するための制御モードを設定し、スプリット路走行中と判定した時には、高油圧側輪(高μ輪)の制御モードを、高油圧側輪のブレーキ油圧の増大が制限されるように再設定することにより、左右輪の制動力差が過大になることを防止する。但し、前後Gセンサにより検出される車体減速度Dや車体速度Vが所定値Da,Vaより小さい時には、左右輪で制動力が異なっても操縦安定性への影響は小さいので、油圧制限を行うことなく通常通りの制御を行う。これにより、操縦安定性を損なうことなく制動性を向上させることができる」と記載されている。
【0003】
特許文献2には、「ABS制御機能を有すると共に、回生制動力を発生し得る制動力制御装置に関し、ABS制御の開始時に回生制動力を減少させた際に、制動性能を確保し、また、ABS制御の実行状態を維持する制動力制御装置」について記載されている。具体的には、「ABS制御(「アンチスキッド制御、アンチロック制御」ともいう)が実行されていない場合は、回生協調制御により、回生協調曲線(1)に沿った前輪制動力Pf及び後輪制動力Prが発生される。A点において前輪にロック傾向が生じ、前輪のABS制御が開始されると、回生制動力はゼロとされる。この場合、前輪側及び後輪側の機械制動力(「摩擦制動力」ともいう)の増加により、非回生曲線(2)上のC点に移動することで全制動力が確保され、更に、前輪側の機械制動力の増加により、前輪ロック曲線(4)上のB点に移動することで前輪のABS制御状態が維持される」ことが記載されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されるように、車両の左右方向で路面の摩擦係数μが異なるスプリット路において、車輪の過大な減速スリップ(即ち、「車輪のロック傾向」)を抑制するアンチロック制御が作動される場合、左右車輪の制動力差に起因する車両変更を抑制するよう、スプリット路走行中が判定された場合には、高μ側の制動力の増加が直ちに制限される。
【0005】
一方、特許文献2に記載されるように、回生制動力と摩擦制動力とが協調された制御(回生協調制御)が実行される装置では、前輪にアンチロック制御が開始されると回生制動力はゼロにされ、全制動力の低下を補うため、前後輪の摩擦制動力が増加される。この様な装置では、スプリット路において、アンチロック制御が実行開始されると、車両偏向が適切に抑制されない状況が生じ得る。従って、回生協調制御とスプリット路でのアンチスキッド制御とが適切に組み合わされることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-249111号
【文献】特開2000-62590号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前輪に回生ジェネレータを備えた車両に適用され、スプリット路でアンチロック制御が実行された場合に、車両減速度が確保されるとともに車両偏向が好適に抑制され得る車両の制動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両の制動制御装置は、車両の車輪(WH)のうちで前輪(WHf)に回生ジェネレータ(GN)を備える車両に適用されるものであって、前記車輪(WH)に摩擦制動力(Fm)を発生させるアクチュエータ(例えば、HU)と、前記車輪(WH)の車輪速度(Vw)に基づいて、前記摩擦制動力(Fm)を調整して、前記車輪(WH)のロック傾向を抑制するアンチロック制御を実行するコントローラ(ECU)と、を備える。
【0009】
車両の制動制御装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記アンチロック制御を開始する時点で、前記回生ジェネレータ(GN)による回生制動力(Fg)を減少し、前記車輪速度(Vw)に基づいて前記車両の走行する路面が、前記車両の車幅方向で摩擦係数が異なるスプリット路であるか否かを判定し、前記スプリット路を判定した場合には、前記スプリット路の摩擦係数(μ)が低い側に位置する前記前輪(WHf)である低摩擦側前輪(WHfx)の前記摩擦制動力(Fmfx)を減少し、前記低摩擦側前輪(WHfx)の前記摩擦制動力(Fmfx)の減少を開始する開始時点での前記回生制動力(Fg)に基づいて遅延時間(Td)を決定し、前記開始時点から前記遅延時間(Td)を経過した時点で、前記スプリット路の摩擦係数(μ)が高い側に位置する前記前輪(WHf)である高摩擦側前輪(WHfz)の前記摩擦制動力(Fmfz)の増加を制限する。例えば、前記コントローラ(ECU)は、前記開始時点での、前記高摩擦側前輪(WHfz)に作用する前記回生制動力(Fg=fg)に基づいて、前記遅延時間(Td)を決定する。
【0010】
前輪WHfにジェネレータGNを備える車両に適用される制動制御装置では、アンチスキッド制御の非実行時には、回生協調制御によって、前輪WHfには回生制動力Fgが発生している。そして、アンチロック制御が開始されると、前輪WHfの回生制動力Fgは減少される。上記構成によれば、スプリット路を判定した場合には、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの増加制限の開始が、低μ側前輪摩擦制動力Fmfxの減少開始よりも、遅延時間Tdだけ遅らされる。これにより、車両減速度の低下が補償されるとともに、車両の偏向が抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両の制動制御装置SCの実施形態を説明するための全体構成図である。
【
図2】回生協調制御の演算処理を説明するためのフロー図である。
【
図3】アンチロック制御の演算処理を説明するためのフロー図である。
【
図4】アンチロック制御におけるスプリット制御を説明するための時系列線図である。
【
図5】遅延時間Tdを決定する演算マップZtdを説明するための特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<構成部材等の記号、記号末尾の添字、及び、運動・移動方向>
以下の説明において、「CW」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号の末尾に付された添字「f」、「r」は、車両の前後輪の何れに関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「f」は前輪、「r」は後輪を示す。例えば、各車輪において、左右前輪は「WHf」、左右後輪は「WHr」と表記される。記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号は、その総称を表す。例えば、「WH」は、各車輪を表す。
【0013】
更に、記号末尾の添字「x」、「z」は、車両の左右方向(車幅方向)で路面摩擦係数μが異なるスプリット路(「μスプリット路」ともいう)において、摩擦係数μの低い側、高い側の何れに位置するかを表す記号である。例えば、摩擦係数μが低い側(低μ側)に位置する前輪WHfは「WHfx」、摩擦係数μが高い側(高μ側)に位置する前輪WHfは「WHfz」と表記される。
【0014】
<本発明に係る車両の制動制御装置SCの実施形態>
図1の全体構成図を参照して、制動制御装置SCの実施形態について説明する。車両は、駆動用の電気モータGNを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車である。駆動用の電気モータGNは、エネルギ回生用のジェネレータ(発電機)としても機能する。駆動用電気モータ(ジェネレータ)GNは、駆動シャフトDSを介して、前輪WHfに接続される。つまり、車両では、少なくとも前輪WHfが駆動車輪とされる。回生ジェネレータGNには、回転数Ngを検出するよう、回転センサNGが設けられる。そして、ジェネレータGNは、駆動コントローラECDによって制御される。
【0015】
車両には、制動操作部材BP、ホイールシリンダCW、マスタシリンダCM、及び、制動制御装置SCが備えられる。
【0016】
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速させるために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHに対する制動トルクTqが調整され、車輪WHに制動力(回生制動力+摩擦制動力)が発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定される。そして、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパCPが配置される。
【0017】
ブレーキキャリパCPには、ホイールシリンダCWが設けられている。ホイールシリンダCW内の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)MSが、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルク(摩擦制動力Fm)が発生される。
【0018】
マスタシリンダCMは、制動操作部材BPに、ブレーキロッド等を介して、機械的に接続されている。例えば、マスタシリンダCMとして、タンデム型のものが採用されている。制動操作部材BPが操作されると、マスタシリンダCM内のピストンが押され、マスタシリンダ内の液圧室から、制動液BFが圧送される。
【0019】
≪制動制御装置SC≫
制動制御装置SCによって、車輪WHに制動力が発生される。制動制御装置SCは、制動操作量センサBA、車輪速度センサVW、ストロークシミュレータSS、流体ユニットHU、及び、コントローラECUにて構成される。
【0020】
運転者による制動操作部材(ブレーキペダル)BPの操作量Baを検出するよう、制動操作量センサBAが設けられる。具体的には、制動操作量センサBAとして、マスタシリンダCM内の液圧(マスタシリンダ液圧)Pmを検出するマスタシリンダ液圧センサ、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサ、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサのうちの少なくとも1つが採用される。つまり、操作量センサBAによって、制動操作量Baとして、マスタシリンダCM内の液圧(マスタシリンダ液圧)Pm、制動操作部材BPの操作変位Sp、及び、制動操作部材BPの操作力Fpのうちの少なくとも1つが検出される。
【0021】
各車輪WHには、車輪WHの回転速度である車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車輪速度Vwは、車輪WHのロック傾向を抑制するアンチロック制御等に採用される。車輪速度センサVWによって検出された車輪速度Vwは、コントローラECUに入力される。コントローラECUでは、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vsが演算される。
【0022】
例えば、車両の減速時には、4つの車輪速度Vwのうちの最も速いもの(最速の車輪速度)に基づいて、車体速度Vsが演算される。更に、車体速度Vsの演算において、その時間変化量において制限が設けられ得る。具体的には、車体速度Vsの増加勾配の上限値αup、及び、減少勾配の下限値αdnが設定され、車体速度Vsの変化が、上下限値αup、αdnによって制約される。
【0023】
ストロークシミュレータ(単に、「シミュレータ」ともいう)SSが、制動操作部材BPに操作力Fpを発生させるために設けられる。シミュレータSSの内部には、ピストン、及び、弾性体(例えば、圧縮ばね)が備えられる。マスタシリンダCMから制動液BFがシミュレータSSに移動され、流入する制動液BFによりピストンが押される。ピストンには、弾性体によって制動液BFの流入を阻止する方向に力が加えられる。この弾性体によって、制動操作部材BPが操作される場合の操作力Fpが形成される。
【0024】
流体ユニットHU(「アクチュエータ」に相当)は、制動流体路HWを介して、ホイールシリンダCWに接続される。流体ユニットHUとして、電動ポンプ、複数の電磁弁、及び、ダンパ等を含む、公知の構成が利用される。例えば、特開2010-280383号公報(
図1)、特開2016-37160号公報(
図1、2)、特開2012-131263号公報(
図2)等を参照のこと。流体ユニットHUによって、制動液圧Pwは、制動操作部材BPの操作とは独立に、且つ、各輪で個別に調整される。
【0025】
コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサMC等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサMCにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。コントローラECU内には、流体ユニットHU(アクチュエータ)を制御する制動コントローラECB、及び、ジェネレータGNを制御する駆動コントローラECDが含まれる。これらは、信号(検出値、演算値等)を共有するよう、車載の通信バスBSを通してネットワーク接続されている。つまり、通信バスBSを介して接続されたコントローラが、総称して「コントローラECU」と称呼される。例えば、検出された、制動操作量Ba、及び、車輪速度Vwは、制動コントローラECBに入力される。制動コントローラECBによって、流体ユニットHU(特に、電動ポンプの電気モータ、及び、電磁弁)が制御され、車輪WHの過度の減速スリップ(例えば、車輪ロック)を抑制するよう、アンチロック制御(「アンチスキッド制御」ともいう)が実行される。また、後述する回生量Rgが、通信バスBSを介して、制動コントローラECBから駆動コントローラECDに送信され、回生協調制御が実行される。
【0026】
<回生協調制御の演算処理>
図2のフロー図を参照して、回生協調制御の演算処理について説明する。回生協調制御では、ジェネレータGNによる回生制動力と、制動液圧Pwによる摩擦制動力(摩擦材MSと回転部材KTとの摩擦によって発生する制動力)とが協調して発生される。回生協調制御によって、車両の運動エネルギが電気エネルギに変換され、バッテリに回収される。例えば、該制御のアルゴリズムは、コントローラECU内の制動コントローラECBにプログラムされている。
【0027】
ステップS110にて、各種信号(Ba、Vs、Ng等)が読み込まれる。操作量Baは、操作量センサBA(マスタシリンダ液圧センサ、操作変位センサ、操作力センサ等)によって検出される。車体速度Vsは、車輪速度Vwに基づいて演算される。ジェネレータ回転数Ngは、回転数センサNGによって検出され、コントローラECUに入力される。
【0028】
ステップS120にて、制動操作量Baに基づいて、「制動中であるか、否か」が判定される。例えば、操作量Baが、所定値boよりも大きい場合には、ステップS120は肯定され、処理はステップS130に進められる。一方、操作量Baが所定値bo以下である場合には、ステップS120は否定され、処理はステップS110に戻される。ここで、所定値boは、制動操作部材BPの遊びに相当する、予め設定された定数である。
【0029】
ステップS130にて、ブロックX130に示す特性にて、操作量Ba(マスタシリンダ液圧Pm、操作変位Sp、操作力Fpのうちの少なくとも1つ)に基づいて、要求制動力Fdが演算される。要求制動力Fdは、車両に作用する総制動力Fの目標値であり、「制動制御装置SCによる摩擦制動力Fm」と「ジェネレータGNによる回生制動力Fg」とを合わせた制動力である。要求制動力Fdは、演算マップZfdに従って、操作量Baが「0」から所定値boの範囲では、「0」に決定され、操作量Baが所定値bo以上では、操作量Baが増加するに伴い、「0」から単調増加するよう演算される。
【0030】
ステップS140にて、ブロックX140に示す特性にて、車体速度Vs、及び、演算マップZfsに基づいて、回生制動力の最大値(「最大回生力」という)Fsが演算される。最大回生力Fs用の演算マップZfsでは、車体速度Vsが、「0」以上、第1所定速度vo未満の範囲では、車体速度Vsの増加に従って、最大回生力Fsが増加するように設定される。また、車体速度Vsが、第1所定速度vo以上、第2所定速度vp未満の範囲では、最大回生力Fsは、上限値fsに決定される。そして、車体速度Vsが、第2所定速度vp以上では、車体速度Vsが増加するに従って、最大回生力Fsが減少するように設定されている。例えば、最大回生力Fsの減少特性(「Vs≧vp」の特性)では、車体速度Vsと最大回生力Fsとの関係は双曲線で表される(即ち、回生電力が一定)。ここで、各所定値vo、vpは予め設定された定数である。なお、演算マップZfsでは、車体速度Vsに代えて、ジェネレータGNの回転数Ngが採用され得る。
【0031】
回生ジェネレータGNの回生量は、駆動コントローラECDのパワートランジスタ(IGBT等)の定格、及び、バッテリの充電受入性によって制限される。電力(仕事率)が一定である場合、ジェネレータGNによる車輪軸まわりの回生トルクは、車輪WHの回転数(つまり、車体速度Vs)に反比例する。また、ジェネレータGNの回転数Ngが低下すると、回生量は減少する。演算マップZfsの特性では、ジェネレータGNの回生量が、所定の電力(単位時間当りの電気エネルギ)に制限されるよう、設定される。
【0032】
ステップS150にて、要求制動力Fd、及び、最大回生力Fsに基づいて、「要求制動力Fdが、最大回生力Fs以下であるか、否か」が判定される。つまり、運転者によって要求されている制動力Fdが、回生制動力Fgのみによって達成可能か、否かが判定される。「Fd≦Fs」であり、ステップS150が肯定される場合には、処理はステップS160に進められる。一方、「Fd>Fs」であり、ステップS150が否定される場合には、処理はステップS170に進められる。
【0033】
ステップS160にて、要求制動力Fdが、回生制動力Fgに決定される(即ち、「Fg=Fd」)。ステップS160では、回生制動力Fgが十分に足りているため、目標摩擦制動力Fmは「0」に演算される。目標摩擦制動力Fmは、回転部材KTと摩擦部材MSとの摩擦によって達成されるべき制動力の目標値である。この場合、車両減速には、摩擦制動力Fmが採用されず、回生制動力Fgのみによって、要求制動力Fdが達成される。
【0034】
ステップS170にて、回生制動力Fgが、最大回生力Fsに決定される。また、ステップS170では、目標摩擦制動力Fmが、要求制動力Fd、及び、最大回生力Fsに基づいて演算される。具体的には、目標摩擦制動力Fmは、要求制動力Fdから、最大回生力Fsが減算されて決定される(即ち、「Fm=Fd-Fs」)。つまり、要求制動力Fdにおいて、回生制動力Fg(=Fs)では不足する分が、目標摩擦制動力Fmによって補われる。
【0035】
ステップS180にて、回生制動力Fgに基づいて、回生量Rgが演算される。回生量Rgは、ジェネレータGNの回生量の目標値である。回生量Rgは、通信バスBSを介して、制動コントローラECBから駆動コントローラECDに送信される。
【0036】
ステップS190にて、摩擦制動力の目標値Fmに基づいて、制動液圧Pwの目標値である目標液圧Ptが演算される。つまり、目標摩擦制動力Fmが液圧に換算されて、目標液圧Ptが決定される。具体的には、制動装置の諸元(ホイールシリンダCWの受圧面積、摩擦材MSの摩擦係数、回転部材KTの制動有効半径等)に基づいて、目標摩擦制動力Fmが「0」から増加するに従って、目標液圧Ptは「0」から増加するように決定される。
【0037】
ステップS200にて、制動液圧Pwが、目標液圧Ptに一致するよう、コントローラECUによって流体ユニットHUが制御される。例えば、流体ユニットHUに含まれる、電気モータが駆動され、調圧弁がサーボ制御される。
【0038】
<アンチロック制御の演算処理>
図3のフロー図を参照して、アンチロック制御(アンチスキッド制御)の演算について説明する。アンチロック制御によって、車輪WHのロック傾向(過大な減速スリップ)が抑制される。
【0039】
ステップS210にて、各種信号(Vw、Vs等)が読み込まれる。
【0040】
ステップS220にて、車輪速度Vwに基づいて、スリップ状態量Saが演算される。スリップ状態量Saは、走行路面に対する車輪WHのグリップの程度(即ち、車輪の回転方向のスリップ度合)を表す状態量である。例えば、スリップ状態量Saとして、車体速度Vs、及び、車輪速度Vwに基づいて、車輪WHの減速スリップSwが採用される。減速スリップSwは、車体速度Vsと車輪速度Vwと偏差(スリップ速度)として演算される(即ち、「Sw=Vs-Vw」)。また、減速スリップSwは、車体速度Vsにて無次元化されてもよい(即ち、スリップ率)。加えて、スリップ状態量Saとして、車輪加速度dV(車輪速度Vwの時間変化量)が演算される。具体的には、車輪速度Vwが時間微分されて、車輪加速度dVが演算される。
【0041】
ステップS230にて、「アンチロック制御が実行中か、否か」が判定される。ステップS230が否定される場合には、処理はステップS240に進められる。ステップS230が肯定される場合には、処理はステップS250に進められる。
【0042】
ステップS240にて、スリップ状態量Saに基づいて、「アンチロック制御の実行が開始されるか、否か」が判定される(制御開始判定)。アンチロック制御の開始判定では、制御開始用のしきい値(開始条件)が設定されている。スリップ状態量Saが、このしきい値を超過すると、アンチロック制御が開始される。例えば、複数の開始しきい値が予め設定されていて、これらの開始しきい値と、「車輪加速度dV、及び、減速スリップSw」との相互関係に基づいて、アンチロック制御の開始が判定される。
【0043】
アンチロック制御が開始されると、回生制動力Fg(目標値)が減少するように、制動コントローラECBから駆動コントローラECDに指示が送信される。そして、駆動コントローラECDによって、実際の回生制動力の減少が開始される。ステップS240が肯定される場合には、処理はステップS260に進められる。ステップS240が否定される場合には、処理はステップS210に戻される。
【0044】
ステップS250にて、「アンチロック制御の実行が終了されるか、否か」が判定される(制御終了判定)。アンチロック制御の終了判定では、制御終了用のしきい値(終了条件)が設定されている。この終了条件が満足されると、アンチロック制御は終了される。ステップS250が否定される場合には、処理はステップS260に進められる。ステップS250が肯定される場合には、処理はステップS210に戻される。
【0045】
ステップS260にて、スリップ状態量Saに基づいて、「車両の走行路面が、左右車輪間で摩擦係数μが大きく異なるスプリット路であるか、否か」が判定される(スプリット路判定)。アンチロック制御が開始される前には、前輪WHfには同一の制動液圧Pwf(即ち、前輪制動トルクTqf)が付与される。例えば、スプリット路の判定は、車輪加速度dV、及び、減速スリップSwのうちの少なくとも1つにおいて、左右前輪の間で所定値以上の差が生じた場合に、「走行路面がスプリット路である」ことが判定される。このとき、左右車輪のうちで、低摩擦係数側(「低μ側」ともいう)にある車輪WHfx、WHrxと、高摩擦係数側(「高μ側」ともいう)にある車輪WHfz、WHrzとが識別される。ステップS260が否定される場合には、処理はステップS270に進められる。ステップS260が肯定される場合には、処理はステップS280に進められる。
【0046】
ステップS270では、スプリット路が判定されない場合(即ち、走行路面の摩擦係数μが略均一の場合)における、通常のアンチロック制御(単に、「通常制御」ともいう)が実行される。アンチロック制御の実行では、制動液圧Pwを減少する減圧モード、及び、制動液圧Pwを増加する増圧モードのうちの何れか1つのモードが選択される。具体的には、モード選択用の複数のしきい値が予め設定され、これらのしきい値と、「車輪加速度dV、及び、車輪スリップSw」との相互関係に基づいて、減圧、増圧モードのうちでの何れかが選択される。加えて、上記の相互関係に基づいて、減圧モードにおける減少勾配(制動液圧Pwの減少時の時間変化量)、及び、増圧モードにおける増加勾配(制動液圧Pwの増加時の時間変化量)が決定される。なお、通常制御では、少なくとも前輪WHfの制動液圧Pwfは、左右輪間にて独立で行われる。
【0047】
ステップS280では、スプリット路が判定された場合(即ち、走行路面の摩擦係数μが車幅方向で異なる場合)における、スプリット路でのアンチロック制御(単に、「スプリット制御」ともいう)が実行される。通常制御では、前輪制動液圧Pwfは、左右輪間で独立であるが、スプリット路制御では、アンチロック制御の開始時点(ステップS240が満足された演算周期)から遅延時間Tdが経過した後に、高μ側前輪WHfzの制動液圧Pwfzの増加が制限される。これにより、回生制動力Fg(実際値)の減少に起因する車両減速度の低下が補償されるとともに、前輪WHfの間で制動力差が抑制され、車両の高μ側への偏向が低減される。
【0048】
<スプリット制御の作動>
図4の時系列線図(時間Tに対する状態量の遷移図)を参照して、ステップS280のスプリット制御の詳細について説明する。スプリット制御は、走行路面の摩擦係数μが車幅方向(車両の左右方向)で異なるスプリット路が識別された場合のアンチロック制御である。
【0049】
時点t0にて、操作速度dBにて、制動操作部材BPの操作が開始される。操作量Baの増加に伴い、要求制動力Fdが増加されるが、「Fd≦Fs(ステップS150の肯定)」であるため、回生制動力Fgは増加されるが、前輪、後輪摩擦制動力Fmf、Fmrは増加されない。つまり、ステップS160の「Fg=Fd、Fm=0」の処理が実行され、車輪WHには、摩擦制動力Fmが付与されず、車両は回生制動力Fgのみによって減速される。
【0050】
時点t1にて、回生制動力Fgが最大回生力Fsに達する。時点t1にて、「Fd>Fs(ステップS150の否定)」となるため、回生制動力Fgが値fg(=Fs)に維持され、前輪、後輪摩擦制動力Fmf、Fmrが「0」から増加される。つまり、ステップS170の「Fg=Fs、Fm=Fd-Fs」の処理が実行され、前輪WHfには、回生制動力Fg、及び、摩擦制動力Fmが付与される。
【0051】
時点t2にて、スリップ状態量Saが所定のしきい値を超過し、アンチロック制御が開始される(ステップS240の肯定)。時点t2にて、回生制動力Fgが、減少勾配Kgにて、「0」に向けて減少される。時点t2にて、アンチロック制御が開始されたことを表す制御フラグFLaは、「0(非実行)」から「1(実行中)」に変更される。
【0052】
加えて、時点t2にて、スリップ状態量Saの左右差に基づいて、車両の走行路面がスプリット路であることが判定される(ステップS260が肯定)。このとき、左右前輪のうちで、低μ側に位置する前輪WHfxと、高μ側に位置する前輪WHfzとが識別される。
【0053】
スプリット制御(スプリット路が判定された場合のアンチロック制御)が開始されると、低μ側前輪WHfxの摩擦制動力Fmfxは、値fcから直ちに減少される。一方、回生制動力Fgの低下を補償するため、高μ側前輪WHfzの摩擦制動力Fmfzの増加は制限されない。即ち、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzは、その目標値に一致したままである。なお、線図の一点鎖線は、アンチロック制御が実行されない場合の要求制動力Fdに基づく前輪摩擦制動力Fmfである。
【0054】
低摩擦側前輪WHfxの摩擦制動力Fmfxの減少が開始された時点(開始時点)t2にて、遅延時間Tdが、回生制動力Fgに基づいて決定される。遅延時間Tdによって、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの増加の制限開始が、低μ側前輪摩擦制動力Fmfxの減少開始よりも遅らされる。回生制動力Fgの減少勾配Kgは既知であるため、遅延時間Tdは、「Fg=0」になる時点に基づいて決定される。また、アンチロック制御が開始された時点の回生制動力Fgが、開始時回生制動力fg(前2輪分)として記憶され、該時点から高μ側前輪摩擦制動力Fmfzが、開始時回生制動力fgの高μ側前輪WHfzの1輪に相当する分fgzだけ増加する時点に基づいて、遅延時間Tdが決定されてもよい。つまり、上記相当分fgzが推定され、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzが相当分fgzだけ増加する時点が、遅延時間Tdとして設定される。
【0055】
開始時点t2から遅延時間Tdが経過した後の、時点t3にて、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの増加が、増加勾配Kzに制限され、要求制動力Fd(即ち、制動操作量Ba)に応じた増加勾配よりも小さくされる。ここで、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの増加制限は、増加量が減少されるだけではなく、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの減少、又は、保持を含むものである。例えば、増加勾配Kzが「0」に設定され、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzが値fbに保持され得る。また、時点t3にて、一旦、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzが、減少され、その後、増加されてもよい。時点t3にて、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの制限が開始されたことを表す制御フラグFLsが、「0(非制限)」から「1(制限中)」に変更される。
【0056】
上述した様に、制動制御装置SCでは、アンチロック制御が開始される時点で、回生ジェネレータGNによる回生制動力Fgが減少される。このとき、スプリット路面が判定された場合には、先ず、低μ側前輪WHfxの摩擦制動力Fmfxが減少される。加えて、低μ側前輪WHfxの摩擦制動力Fmfxの減少が開始される時点(単に、「開始時点」ともいう)での回生制動力Fgに基づいて遅延時間Tdが決定される。そして、開始時点から遅延時間Tdを経過した時点で、高μ側前輪WHfzの摩擦制動力Fmfzの増加が制限される。
【0057】
一般的なアンチロック制御では、スプリット路が判定された時点で、車両が高μ側に偏向することを抑制するため、低μ側前輪摩擦制動力Fmfxの減少と、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの増加制限とが同時に開始される。
【0058】
一方、前輪WHfにジェネレータGNを備える車両に適用される制動制御装置SCでは、通常制動時(アンチスキッド制御の非実行時)には、回生協調制御が実行されているため、前輪WHfには回生制動力Fgが発生している。この場合、アンチロック制御が開始されると、前輪WHfに作用する回生制動力Fgが減少される。制動制御装置SCでは、スプリット路が判定された場合には、車両減速度の低下を補償するよう、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの増加制限の開始が、低μ側前輪摩擦制動力Fmfxの減少開始よりも、遅延時間Td(時点t2から時点t3までの時間)だけ遅らされる。これにより、十分な車両減速度が確保されるとともに、車両の偏向が好適に抑制され得る。
【0059】
<遅延時間Tdの演算>
図5の特性図を参照して、遅延時間Tdを決定するための演算マップZtdについて説明する。遅延時間Tdは、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの増加制限の開始を遅らせるための状態変数である。遅延時間Tdは、低μ側前輪摩擦制動力Fmfxの減少開始時点における回生制動力Fg(=fg)に基づいて演算される。
【0060】
遅延時間Tdは、開始時点の回生制動力Fgである開始時回生制動力fg、及び、演算マップZtdに基づいて演算される。具体的には、開始時回生制動力fgが大きいほど遅延時間Tdが長く(大きく)決定され、開始時回生制動力fgが小さいほど遅延時間Tdが短く(小さく)決定される。開始時回生制動力fgが大きいほど、回生制動力Fgが低下するのに時間を要することに基づく。
【0061】
また、ブロックX140を参照して説明したように、ジェネレータGNによる回生制動力Fgは、駆動コントローラECDのパワートランジスタ(IGBT等)の定格、及び、バッテリの充電受入性によって制限される。つまり、車体速度Vsが増加するに従って、回生制動力Fgは減少する(演算マップZfsにおける「Vs≧vp」での特性)。このため、車体速度Vsが低いほど遅延時間Tdが長く(大きく)決定され、車体速度Vsが高いほど遅延時間Tdが短く(小さく)決定される。
【0062】
加えて、遅延時間Tdは、制動操作速度dBに基づいて演算される。操作速度dBが小さいほど遅延時間Tdが長く(大きく)決定され、操作速度dBが大きいほど遅延時間Tdが短く(小さく)決定される。ここで、操作速度dBは、操作量Baが微分されて演算される。操作速度dBが相対的に大きい場合には、前輪摩擦制動力Fmfの左右差によって、ヨー挙動が急増する場合がある。このため、操作速度dBが大きいほど、遅延時間Tdが小さく設定され、前輪摩擦制動力Fmfの左右差の増加が抑制され得る。
【0063】
遅延時間Tdは、上限値ta、及び、下限値tbが設定される。上限、下限値ta、tbは、予め設定された所定値(定数)である。例えば、下限値tbは、「0」を含む所定値として設定され得る。この場合、制動操作部材BPが急操作され、操作速度dBが所定速度db以上である場合には、遅延時間Tdが「0」に決定される。つまり、一般的なアンチロック制御と同様に、スプリット路が判定された時点で、低μ側前輪摩擦制動力Fmfxの減少と、高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの増加制限とが同時に開始される。
【0064】
以上で説明したように、遅延時間Tdが、開始時回生制動力fg、車体速度Vs、及び、制動操作速度dBのうちの少なくとも1つに応じて演算される。これにより、回生制動力Fgの減少に応じて高μ側前輪摩擦制動力Fmfzの制限が開始されるため、車両減速度が十分に確保される。加えて、制動操作部材BPの急操作時には、車両の急偏向が適切に抑制され得る。
【0065】
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果を奏する。
【0066】
上記実施形態では、制動操作部材BPの操作特性(操作変位Spと操作力Fpとの関係)が、シミュレータSSにて形成されるブレーキ・バイ・ワイヤ型の構成が例示された。これに代えて、シミュレータSSが省略された構成が採用され得る。該構成においても、制動液圧Pwは、各車輪WHにて独立して制御され得る。
【0067】
上記実施形態では、制動液BFによる液圧式の制動制御装置SCが例示された。これに代えて、制動液BFが用いられない、電動式の制動制御装置SCが採用される。該装置では、電気モータの回転が、ねじ機構等によって直線動力に変換され、摩擦部材が回転部材KTに押圧される。この場合には、制動液圧Pwに代えて、電気モータを動力源にして発生される、回転部材KTに対する摩擦部材の押圧力よって、制動トルクTqが発生される。そして、制動トルクTqによって、摩擦制動力Fmが調整される。
【符号の説明】
【0068】
SC…制動制御装置、WHf…前輪、WHfx…低摩擦側前輪(低μ側前輪)、WHfz…高摩擦側前輪(高μ側前輪)、GN…回生ジェネレータ、BP…制動操作部材、HU…流体ユニット(アクチュエータ)、ECU…コントローラ、ECB…制動コントローラ、ECD…駆動コントローラ、BS…通信バス、VW…車輪速度センサ、Vw…車輪速度、Fg…回生制動力、Fm…摩擦制動力、Fmfx…低摩擦側前輪摩擦制動力(低μ側前輪摩擦制動力)、Fmfz…高摩擦側前輪摩擦制動力(高μ側前輪摩擦制動力)、Td…遅延時間、fg…開始時回生制動力、Ba…制動操作量、dB…制動操作速度。