(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/00 20060101AFI20221206BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20221206BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20221206BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W40/08
B60W40/06
(21)【出願番号】P 2019054992
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-97518(JP,A)
【文献】特開2018-20691(JP,A)
【文献】特開2017-146934(JP,A)
【文献】特開2019-16278(JP,A)
【文献】特開2018-20693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に適用される車両走行制御装置であって、
前記車両の運転者が前記車両を運転する能力を失っている異常状態にあるか否かの判定を行う異常判定部と、
前記車両が車両専用道路に位置しているか否かの判定を行う道路種類判定部と、
前記運転者が前記車両の運転を行っている状況にある場合に、前記異常判定部によって前記運転者が前記異常状態に陥ったと判定された時点である異常判定時点以降において、前記車両を減速させる減速制御を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記異常判定時点以降において、
前記車両が前記車両専用道路に位置していると判定された場合、前記減速制御により前記車両の車速をゼロまで低下させることによって前記車両を停止させ、
前記車両が前記車両専用道路に位置していないと判定された場合、前記減速制御により前記車両の車速をゼロよりも大きい所定の低車速範囲内の判定車速にまで低下させた後、前記低車速範囲内の車速で前記車両を低速走行させ続ける、
ように構成された、
車両走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両走行制御装置であって、
前記車両の周辺領域を撮影することにより画像データを取得する撮像装置と、
前記車両の車速を検出する車速センサと、
を備え、
前記道路種類判定部は、
前記画像データに含まれる道路に相当する道路画像データから認識される前記車両の左側及び右側の区画線の間の距離である車線幅が下限車線幅以上であるとの第1条件及び前記取得した車速が下限車速閾値以上であるとの第2条件のそれぞれが成立するか否かを判定し、
前記第1条件及び前記第2条件の両方が成立すると判定したとき、前記車両が前記車両専用道路に位置していると判定する、
ように構成された、
車両走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が「車両を運転する能力を失っている異常状態(以下、「運転不能異常状態」とも称呼する。)」に陥っている場合に、その車両を減速させる車両走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両走行制御装置(以下、「従来装置」と称呼される。)は、運転者が運転不能異常状態に陥っているか否かを判定し、そのような判定がなされた場合、車両を自動停止させる(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
従来装置は、運転者が運転不能異常状態に陥っているとの判定がなされた場合、車両が走行している道路の種類に関係なく車両を自動停止させる。しかしながら、交差点及び踏切等がある一般道路を走行している車両を自動的に停止させると、車両が他車両の円滑な交通を妨げる場所(例えば、交差点又は踏切等であり、以下「不適切場所」と称呼する。)に停止してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上述した課題に対処するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、その運転者が運転不能異常状態に陥っている車両が不適切場所に停止されてしまう可能性を低減できる車両走行制御装置(以下、「本発明制御装置」とも称呼される。)を提供することにある。
【0006】
本発明制御装置は、
車両に適用される車両走行制御装置であって、
前記車両の運転者が前記車両を運転する能力を失っている異常状態にあるか否かの判定を行う異常判定部(10、ステップ220乃至ステップ270)と、
前記車両が車両専用道路に位置しているか否かの判定を行う道路種類判定部(10、(ステップ420、ステップ520)と、
前記異常判定部によって前記運転者が前記異常状態に陥ったと判定された時点である異常判定時点以降において、前記車両を減速させる減速制御を実行する制御部(10、ステップ310及びステップ340)と、
を備える。
【0007】
更に、前記制御部は、前記異常判定時点以降において、
前記車両が前記車両専用道路に位置していると判定された場合(ステップ320での「Yes」との判定)、前記減速制御により前記車両の車速をゼロまで低下させることによって前記車両を停止させ(ステップ330及びステップ340)、
前記車両が前記車両専用道路に位置していないと判定された場合(ステップ320での「No」との判定)、前記減速制御により前記車両の車速をゼロよりも大きい所定の低車速範囲内の判定車速(SPDlow)にまで低下させた後(ステップ360での「No」との判定、及び、ステップ340)、前記低車速範囲内の車速で前記車両を低速走行させる(ステップ360での「Yes」との判定、及び、ステップ370)、
ように構成される。
【0008】
本発明制御装置は、運転者が運転不能異常状態に陥ったと判定された時点である異常判定時点以降において、車両が車両専用道路に位置していると判定される場合、車両を減速制御によって車両を停止させる。これに対し、本発明制御装置は、異常判定時点以降において、車両が車両専用道路に位置していないと判定される場合、車両の車速を減速制御によって「ゼロよりも大きい判定車速」にまで低下させ、その後、低速走行を行わせる。
【0009】
従って、本発明制御装置は、車両が不適切場所に停止されてしまう可能性を低減できる。更に、本発明制御装置は、車両を低速走行させるので、自動車以外の道路ユーザ(例えば、歩行者や自転車)に与える脅威を低減できる。
【0010】
本発明制御装置の一態様は、
前記車両の周辺領域を撮影することにより画像データを取得する撮像装置(17)と、
前記車両の車速を検出する車速センサ(16)と、
を備え、
前記道路種類判定部は、
前記画像データに含まれる道路に相当する道路画像データから認識される前記車両の左側及び右側の区画線の間の距離である車線幅(W)が下限車線幅(WLoth)以上であるとの第1条件(条件1)及び前記取得した車速(SPD)が下限車速閾値SPDLoth以上であるとの第2条件(条件2)のそれぞれが成立するか否かを判定し、
前記第1条件及び前記第2条件の両方が成立すると判定したとき、前記車両が前記車両専用道路に位置していると判定する(ステップ420及びステップ430)、
ように構成される。
【0011】
上記の一態様によれば、車両が車両専用道路に位置しているか否かを判定することができる。
【0012】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る車両走行制御装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は
図1に示したCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図3】
図3は
図1に示したCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図4】
図4は
図1に示したCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図5】
図5は
図1に示したCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図6】
図6は変形例を説明するためのタイムチャートである。
【
図7】
図7は変形例を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<構成>
本発明の実施形態に係る車両走行制御装置(以下、「本実施装置」と称呼される場合がある。)は、車両(以下において、他の車両と区別するために、「自車両」と称呼される場合がある。)に適用される。
【0015】
本実施装置は、
図1に示したように、運転支援ECU10、エンジンECU20、ブレーキECU30、電動パーキングブレーキECU40、ステアリングECU50、メータECU60、警報ECU70及びナビゲーションECU80を備えている。なお、以下の説明において、運転支援ECU10は、「DSECU」と称呼される。電動パーキングブレーキECU40は、「EPB・ECU40」と称呼される。
【0016】
これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電気制御装置(Electric Control Unit)であり、図示しないCAN(Controller Area Network)を介して相互に情報を送信可能及び受信可能に接続されている。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、読み書き可能な不揮発性メモリ及びインターフェースI/F等を含む。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。
【0017】
DSECUは、以下に列挙するセンサ(スイッチを含む。)と接続されていて、それらのセンサの検出信号又は出力信号を所定時間が経過する毎に取得するようになっている。なお、各センサは、DSECU以外のECUに接続されていてもよい。
【0018】
アクセルペダル操作量センサ11は、自車両のアクセルペダル11aの操作量(アクセル開度)を検出し、アクセルペダル操作量APを表す信号を出力する。
ブレーキペダル操作量センサ12は、自車両のブレーキペダル12aの操作量を検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す信号を出力する。
ストップランプスイッチ13は、ブレーキペダル12aが踏み込まれていないとき(操作されていないとき)にローレベル信号を出力し、ブレーキペダル12aが踏み込まれたとき(操作されているとき)にハイレベル信号を出力する。
【0019】
操舵角センサ14は、自車両の操舵角を検出し、操舵角θを表す信号を出力する。
操舵トルクセンサ15は、操舵ハンドルSWの操作により自車両のステアリングシャフトUSに加わる操舵トルクを検出し、操舵トルクTraを表す信号を出力する。
車速センサ16は、自車両の走行速度(車速)を検出し、車速SPDを表す信号を出力する。
【0020】
周囲センサ17は、少なくとも自車両の前方の道路、及び、その道路に存在する物標(歩行者、自転者及び自動車等の移動物、並びに、電柱及びガードレール等の固定物)に関する情報を取得するようになっている。
【0021】
周囲センサ17は、例えば、何れも周知のレーダセンサ及びカメラセンサを備えている。なお、カメラセンサは、便宜上、「撮像装置」と称呼される場合がある。
【0022】
レーダセンサは、ミリ波帯の電波を自車両の前方領域を含む自車両の周辺領域に放射し、放射範囲内に存在する物標によって反射された電波(即ち、反射波)を受信する。レーダセンサは、送信した電波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及び電波を送信してから反射波を受信するまでの時間等に基づいて、検出した各物標に対する、「自車両と物標との相対関係についての情報(以下、「物標情報」と称呼する。)を所定時間の経過毎に取得する。
【0023】
カメラセンサは、車両前方の左側領域及び右側領域の風景を撮影して左右一対の画像データを取得し、その画像データに基づいて「物標の有無及び物標情報」を出力する。DSECUは、レーダセンサ及びカメラセンサのそれぞれから出力された情報を合成して物標情報を確定する。
【0024】
更に、カメラセンサは、その画像データに含まれる道路に相当する道路画像データに基づいて、自車両が走行している道路(自車線)の左及び右の区画線(以下、「白線」と称呼する。)を認識する。カメラセンサは、その認識結果に基づいて、車線幅W、道路形状、及び、道路と自車両との位置関係に関する情報を出力する。加えて、カメラセンサは、画像データに含まれる標識に相当する標識画像データを抽出し、その標識画像データからその道路標識が表している情報(特に、道路の種類)を出力する。周囲センサ17によって取得された情報(物標情報を含む。)は「周囲情報」と称呼される。
【0025】
操作スイッチ18は、運転者により操作されるスイッチである。運転者は、操作スイッチ18を操作することにより、車線維持制御(LTA:レーントレーシングアシスト)を実行するか否かを選択することができ、更に、追従車間距離制御(ACC:アダプティブ・クルーズ・コントロール)を実行するか否かを選択することができる。
【0026】
ヨーレートセンサ19は自車両のヨーレートを検出し、ヨーレートYRaを出力する。
【0027】
DSECUは、車線維持制御及び追従車間距離制御を実行可能である。車線維持制御は、自車両の位置が「その自車両が走行しているレーン(走行車線)」内の目標走行ライン付近に維持されるように、操舵角(従って、転舵輪の転舵角)を自動的に変更する制御である。車線維持制御自体は周知である(例えば、特開2008-195402号公報、特開2010-6279号公報、特開2018-103863号公報、及び、特許第4349210号明細書等を参照。)。
【0028】
追従車間距離制御は、物標情報に基づいて、自車両の直前を走行している先行車(即ち、追従対象車両)と自車両との車間距離を所定の距離に維持しながら、自車両を先行車に追従させる制御である。追従車間距離制御自体は周知である(例えば、特開2014-148293号公報、特許第4172434号明細書、及び、特許第4929777号明細書等を参照。)。
【0029】
エンジンECU20は、内燃機関22の運転状態を変更するためのエンジンアクチュエータ21に接続されている。本例において、内燃機関22はガソリン燃料噴射・火花点火式・多気筒エンジンである。エンジンアクチュエータ21は、少なくとも、内燃機関22のスロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含む。
【0030】
エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を駆動することによって、内燃機関22が発生するトルクを変更することができる。内燃機関22が発生するトルクは図示しない変速機及び流体式トルクコンバータ等を介して図示しない駆動輪に伝達される。従って、エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を制御することによって、自車両の駆動力を制御し加速状態(加速度)を変更することができる。
【0031】
なお、自車両が、ハイブリッド車両である場合、エンジンECU20は、車両駆動源としての「エンジン及び電動機」の何れか一方又は両方によって発生する自車両の駆動力を制御することができる。更に、自車両が電気自動車である場合、エンジンECU20は、車両駆動源としての電動機によって発生する自車両の駆動力を制御することができる。
【0032】
ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31に接続されている。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキペダル12aの踏力に応じて作動油を加圧する図示しないマスタシリンダと、左右前後輪に設けられる摩擦ブレーキ機構32との間の油圧回路に設けられる。
【0033】
ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキECU30からの指示に応じてブレーキキャリパ32bに内蔵されたホイールシリンダに供給する作動油の油圧を調整し、その油圧によりホイールシリンダを作動させてブレーキパッドをブレーキディスク32aに押し付ける。その結果、摩擦制動力が発生する。従って、ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31を制御することによって、自車両の制動力を制御することができる。
【0034】
EPB・ECU40は、パーキングブレーキアクチュエータ(以下、「PKBアクチュエータ」と称呼される場合がある。)41に接続されている。PKBアクチュエータ41は、ブレーキパッドをブレーキディスク32aに押し付けるためのアクチュエータである。従って、EPB・ECU40は、PKBアクチュエータ41を用いてパーキングブレーキ力を車輪に加え、自車両を停止状態に維持することができる。
【0035】
ステアリングECU50は、周知の電動パワーステアリングシステムの制御装置であって、モータドライバ51に接続されている。モータドライバ51は、転舵用モータ52に接続されている。転舵用モータ52は、自車両の「操舵ハンドルSW、操舵ハンドルSWに連結されたステアリングシャフトUS及び図示しない操舵用ギア機構等を含むステアリング機構」に組み込まれている。転舵用モータ52は、モータドライバ51から供給される電力によってトルクを発生し、このトルクによって操舵アシストトルクを加えたり、左右の操舵輪を転舵したりすることができる。
【0036】
メータECU60は、図示しないデジタル表示式メータに接続されるとともに、ハザードランプ61及びストップランプ62にも接続されている。メータECU60は、DSECUからの指示に応じて、ハザードランプ61を点滅させることができ、且つ、ストップランプ62を点灯させることができる。
【0037】
警報ECU70は、ブザー71及び表示器72に接続されている。警報ECU70は、DSECUからの指示に応じてブザー71を鳴動させて運転者への注意喚起を行うことができ、且つ、表示器72に注意喚起用のマーク(例えば、ウォーニングランプ)を点灯させたり、運転支援制御の作動状況を表示したりすることができる。
【0038】
ナビゲーションECU80は、自車両の現在位置を検出するための「人工衛星からの信号(例えば、GPS信号)」を受信するGPS受信機81、道路情報を含む地図情報等を記憶した地図データベース82及びタッチパネル式のディスプレイ83等と接続されている。なお、これら(80乃至83)は、周知のように、経路案内を行うので、「ナビゲーション装置」と称呼される。
【0039】
ナビゲーションECU80は、GPS信号に基づいて現時点の自車両の位置を特定(取得)する。地図データベース82に記憶されている地図情報には、道路種別情報、道路形状及び道路の制限速度等の道路に関する情報が含まれている。道路種別情報は、自車両が走行している道路(走行路)の種類を特定する情報である。なお、地図データベース82に記憶された地図情報は、ナビゲーションECU80が外部との通信により取得する情報であってもよい。
【0040】
ナビゲーションECU80は、現時点の自車両の位置及び地図情報(道路種別情報)に基づいて、現時点において自車両が走行している道路の種類を特定し、その特定した種類をDSECUに出力する。
【0041】
道路の種類は、「特定道路」と、「特定道路以外の道路」とに大別される。特定道路は本明細書において、「車両専用道路」とも称呼される。
【0042】
特定道路は、主に自動車(即ち、四輪自動車及び自動二輪車等の特定の条件を満たす自動車両)の交通に使用され、自転車や歩行者の通行を許さない道路であり、他の道路との連結は特定の場所(例えば、インターチェンジ、ジャンクション)だけに限られる(即ち、出入制限が実施されている)道路である。特定道路以外の道路は、自動車や歩行者の通行を許す道路であり、側道がある場合等を除き、沿道から出入りが自由にできる(即ち、出入制限が実施されていない)道路である。
【0043】
例えば、日本国において、特定道路は、高速自動車国道(日本国の道路構造令に規定される第1種道路)及び自動車専用道路(日本国の道路構造令に規定される第2種道路)を含む。日本国において、特定道路以外の道路は、一般道路である。
【0044】
<作動の概要>
DSECUは、自車両が道路を走行している場合において、運転者が異常状態にあるか否かを判定する。異常状態は、運転者が車両を運転する能力を失っている状態である。DSECUは、自車両の運転操作がないと見做せる状況(「運転無操作状態」とも呼ぶ。)が所定時間以上継続したとき運転者が異常状態に陥ったと判定する。但し、後述するように、運転者が異常状態にあるか否かの判定はこれに限定されない
【0045】
運転無操作状態とは、運転者によって「アクセルペダル操作量AP、ブレーキペダル操作量BP及び操舵トルクTra」の一つ以上の組み合わせからなるパラメータ(本例においては、AP、BP及びTra)の何れもが変化しない状態である。
【0046】
DSECUは、運転者が異常状態にあると判定した場合、自車両が特定道路(即ち、車両専用道路)を走行中であるか否かに応じ、以下に述べるように、互いに異なる制御を行う。なお、自車両が特定道路を走行中である(いる)か否かの判定は、便宜上、「特定道路判定」又は「専道道路判定」と称呼される。
【0047】
(自車両が特定道路を走行している場合)
運転者が異常状態にあると判定され、且つ、自車両が走行している道路が特定道路であると判定される場合、DSECUは、減速制御の一種である減速停止制御を実行する。
【0048】
減速停止制御は、自車両の車速SPDがゼロ(「0」)になるまで(即ち、自車両が停止するまで)、自車両を所定の減速度(例えば、一定の減速度)αにて減速させる制御である。DSECUは、自車両の減速度が減速度αに一致するように、エンジンECU20を用いてエンジンアクチュエータ21を制御するとともに、ブレーキECU30を用いてブレーキアクチュエータ31を制御する。
【0049】
DSECUは、減速停止制御により、自車両の車速SPDが「0」になると、減速停止制御を終了し、停止保持制御を実行する。停止保持制御は、EPB・ECU40を用いてパーキングブレーキ力を車輪に加えることにより、自車両を停車状態に維持する制御である。
【0050】
(自車両が特定道路以外の道路(即ち、一般道路)を走行している場合)
これに対して、運転者が異常状態にあると判定され、且つ、自車両が走行している道路が特定道路ではない場合、上述の減速停止制御及び停止保持制御を行うと、自車両が不適切場所(即ち、踏切及び交差点等)に停止してしまう可能性がある。
【0051】
そこで、運転者が異常状態にあると判定され、且つ、自車両が走行している道路が特定道路ではない場合、DSECUは、車速SPDが「「0」よりも大きい低車速である所定車速SPDlow」になるまで減速制御を実行する。
【0052】
そして、減速制御により、車速SPDが「所定車速SPDlow」になると、DSECUは、減速制御を終了し、減速制御に代えて低速走行制御を実行する。
【0053】
低速走行制御は、自車両の駆動力及び/又は制動力を調整することにより、車速SPDを所定の低車速範囲内に維持する制御である。この低車速範囲は、時速0km/hより高い下限設定車速より高く且つ上限設定車速よりも低い範囲である。上記の所定車速SPDlow(例えば、10km/h)は、この低車速範囲内の所定の値(下限設定車速及び上限設定車速を含む。)に設定される。
【0054】
本例において、DSECUは、自車両をクリープ状態に設定することによって低速走行制御を実現する。クリープ状態とは、アクセルペダル11a及びブレーキペダル12aの何れもが操作されていない状態において内燃機関22をアイドリング状態に維持したときに、自車両が低速にて走行する状態を言う。なお、自車両が降坂路を走行していて車速SPDが上限設定車速を超える場合、DSECUは制動力を発生させて、車速SPDを上限設定車速に維持する。自車両が登坂路を走行していて車速SPDが下限設定車速を下回る場合、DSECUは駆動力を増大させて、車速SPDを下限設定車速に維持する。
【0055】
更に、自車両がハイブリッド車両又は電気自動車の場合には、DSECUは、自車両が低車速範囲内の所定車速にて走行するように、自車両の駆動力及び/又は制動力を制御する。このような走行状態も、便宜上、クリープ状態と称呼する。
【0056】
このように、DSECUは、一般道路においては自車両を停止させることなく低速走行させ続ける。よって、自車両が不適切場所に停止されない。更に、自車両が高速にて走行し続けないので、歩行者や自転車等に脅威を与える可能性を低下することができる。
【0057】
<具体的作動>
DSECUのCPU(以下、単に「CPU」と称呼される。)は、所定時間が経過する毎に
図2乃至
図5にフローチャートにより示したルーチンのそれぞれを実行するようになっている。
【0058】
従って、CPUは、所定のタイミングになると、
図2のステップ200から処理を開始してステップ210に進み、異常フラグXhの値が「0」であるか否かを判定する。異常フラグXhは、その値が「1」の場合に、運転者の現時点の状態が「異常状態」であることを表す。異常フラグXhの値が「0」である場合には、運転者の現時点の状態が「正常状態」であることを表す。なお、異常フラグXhの値は、自車両の図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUにより実行される初期化ルーチンにおいて「0」に設定される。
【0059】
異常フラグXhの値が「1」である場合、CPUはステップ210にて「No」と判定してステップ295に進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対して、異常フラグXhの値が「0」である場合、CPUはステップ210にて「Yes」と判定してステップ220に進み、運転者が運転操作をしていない状態(上述の運転無操作状態)であるか否かを判定する。即ち、CPUは、本ルーチンを前回実行した時点と現時点との間において、アクセルペダル操作量AP、ブレーキペダル操作量BP及び操舵トルクTraのそれぞれが何れも変化していないとき、運転無操作状態であると判定する。
【0060】
運転無操作状態ではない場合、CPUはステップ220にて「No」と判定して、以下に述べるステップ230及びステップ240の処理を順に実行した後、ステップ295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0061】
ステップ230:CPUは異常フラグXhの値を「0」に設定する。
ステップ240:CPUは異常判定タイマt1の値を「0」に設定する。
【0062】
これに対して、運転無操作状態である場合、CPUはステップ220にて「Yes」と判定してステップ250に進み、異常判定タイマt1の値を「1」だけ増加させる。
【0063】
その後、CPUはステップ260に進み、異常判定タイマt1の値が予め設定された異常確定時間t1ref以上であるか否かを判定する。異常判定タイマt1が異常確定時間t1ref未満である場合、CPUはステップ260にて「No」と判定してステップ295に進み、本ルーチンを一旦終了する。以上から理解されるように、運転無操作状態が継続すると、ステップ250の処理により異常判定タイマt1の値が次第に増大する。即ち、この異常判定タイマt1の値は、運転無操作状態が継続している時間を表している。
【0064】
このため、運転者が異常状態に陥っていると、運転無操作状態が継続するから、異常判定タイマt1が異常確定時間t1ref以上になる。この場合、CPUはステップ260に進んだとき、そのステップ260にて「Yes」と判定してステップ270に進み、異常フラグXhの値を「1」に設定する。換言すると、CPUは、運転者が異常状態にあると判定する。その後、CPUはステップ295に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0065】
CPUは所定のタイミングになると
図3のステップ300から処理を開始してステップ310に進み、異常フラグXhの値が「1」であるか否かを判定する。異常フラグXhの値が「0」である場合、CPUはステップ310にて「No」と判定してステップ395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0066】
これに対して、異常フラグXhの値が「1」である場合(即ち、運転者が異常状態に陥っていると判定されている場合)、CPUはステップ310にて「Yes」と判定してステップ320に進み、専用道路フラグXsの値が「1」であるか否かを判定する。
【0067】
ここで、専用道路フラグXsは、その値が「1」の場合に、現時点にて自車両が走行している道路が特定道路であること(換言すると、自車両が特定道路に位置していること)を表す。専用道路フラグXsは、その値が「0」の場合に、現時点にて自車両が走行している道路が特定道路以外の道路であること(換言すると、自車両が特定道路に位置していないこと)を表す。専用道路フラグXsは上述した初期化ルーチンにおいて「0」に設定される。更に、専用道路フラグXsの値は、後述の
図4及び
図5のルーチンにおいて、変更される。
【0068】
いま、専用道路フラグXsの値が「1」であると仮定する。この場合、CPUはステップ320にて「Yes」と判定してステップ330に進み、自車両が停止したか否か(即ち、車速SPDが「0」であるか否か)判定する。
【0069】
車速SPDが0ではない場合(即ち、自車両が停止していない場合)、CPUはステップ330にて「No」と判定してステップ340に進み、減速制御を実行する。即ち、CPUは、自車両を予め設定された一定の減速度αにて減速させる。その後、CPUは、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0070】
その後、ステップ340の処理が繰り返されるので、自車両の車速SPDは次第に低下して「0」に到達する。即ち、自車両が停止する。この場合、CPUはステップ330にて「Yes」と判定してステップ350に進み、停止保持制御を実行する。即ち、CPUは、EPB・ECU40を用いてパーキングブレーキ力を車輪に加える。これにより、DSECUは、自車両を停車状態に維持する。その後、CPUはステップ395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0071】
このように、異常フラグXhの値が「1」であり且つ専用道路フラグXsの値が「1」である場合、自車両が停止するまで減速制御が実行され、自車両が停止した後は停止保持制御が実行される。
【0072】
一方、異常フラグXhの値が「0」から「1」へと変化した場合に専用道路フラグXsの値が「0」であると仮定すると、CPUはステップ310にて「Yes」と判定し、ステップ320にて「No」と判定してステップ360に進む。そして、CPUは、ステップ360にて、自車両の車速SPDが所定車速SPDlow以下であるか否かを判定する。
【0073】
車速SPDが所定車速SPDlowより大きい場合、CPUはステップ360にて「No」と判定してステップ340に進み、上述した減速制御を実行し、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0074】
その後、ステップ340の処理が繰り返されるので、自車両の車速SPDは次第に低下して所定車速SPDlowに到達する。この場合、車速SPDが所定車速SPDlow以下であるので、CPUはステップ360にて「Yes」と判定してステップ370に進み、低速走行制御(この場合、クリープ走行制御)これにより、自車両の走行状態は、それまでの減速走行状態から低速走行状態に切り替わる。その後、CPUは、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。この時点以降、CPUはステップ370の処理を繰り返し実行する。
【0075】
このように、異常フラグXhの値が「1」であり且つ専用道路フラグXsの値が「0」である場合、自車両の車速SPDが所定車速SPDlowに到達するまで減速制御が実行され、自車両の車速SPDが所定車速SPDlowに到達した時点以降において低速走行制御が実行される。従って、自車両は不適切場所にて停止することなく、歩行者及び自転車等に脅威を与える可能性が低い速度にて走行を続ける。
【0076】
なお、異常フラグXhの値が「1」に設定された場合、DSECUは、操作スイッチ18によって車線維持制御の実行が選択されていない場合であっても、車線維持制御を自動的に実行する。更に、操作スイッチ18によって車線維持制御の実行が選択されている場合に異常フラグXhの値が「1」に設定されたときには、DSECUは、車線維持制御を継続的に実行する。
【0077】
CPUは所定のタイミングになると、
図4のステップ400から処理を開始してステップ410に進み、専用道路フラグXsの値が「0」に設定されているか否かを判定する。
【0078】
専用道路フラグXsの値が「1」である場合、CPUはステップ410にて「No」と判定してステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対して、専用道路フラグXsの値が「0」である場合、CPUはステップ410にて「Yes」と判定してステップ420に進み、以下に述べる処理を実行する。
【0079】
・CPUは、周囲センサ17(カメラセンサ)から自車両が位置している車線(道路)の車線幅Wを取得する。なお、CPUは、カメラセンサから画像データを取得し、その画像データに基づいて車線幅Wを算出してもよい。
・CPUは、車速センサ16から車速SPDを取得する。
・CPUは、車線幅W及び車速SPDを用いて、以下に述べる専用道路フラグON条件が成立するか否かを判定する。専用道路フラグON条件が成立しているとき、CPUは自車両が特定道路上に位置していると判定する。
【0080】
(専用道路フラグON条件)
専用道路フラグON条件は、下記の条件1及び条件2の何れもが成立したときに成立する。
条件1:車線幅Wが所定の下限車線幅(下限幅閾値)WLoth以上である。
条件2:車速SPDが下限車速(下限車速閾値)SPDLoth以上である。
【0081】
条件1における下限車線幅WLothは、自車両が位置(走行)している車線が特定車線であるか否かの判定に適した値に設定される。例えば、各国の法令は、特定道路の車線幅の下限値及び上限値を規定している。よって、法令により特定道路に対して規定された車線幅の下限値に基づいて下限車線幅WLothが設定されている。従って、条件1が成立した場合、車線が特定道路の車線である可能性が高い。なお、条件1は、車線幅Wが、下限車線幅WLoth以上であり且つ上限車線幅WHith以下であるという条件であってもよい。この場合の上限車線幅WHithは法令により特定道路に対して規定された車線幅の上限値に基づいて設定される。
【0082】
更に、条件2における下限車速SPDLothも、自車両が位置(走行)している車線が特定車線であるか否かの判定に適した値に設定される。車線幅と同様、各国の法令は、特定道路における制限速度の下限値及び上限値を規定している。よって、法令により特定道路に対して規定された制限速度の下限値に基づいて下限車速SPDLothが設定されている。従って、条件2が成立した場合にも、車線が特定道路の車線である可能性が高い。なお、条件2は、車速SPDが下限車速SPDLoth以上であり且つ上限車速SPDHith以下であるという条件であってもよい。この場合の上限車速SPDHithは法令により特定道路に対して規定された制限車速の上限値に基づいて設定される。
【0083】
専用道路フラグON条件が成立する場合(即ち、自車両が特定道路に位置していると判定された場合)、CPUはステップ420にて「Yes」と判定してステップ430に進み、専用道路フラグXsの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対して、専用道路フラグON条件が成立しない場合、CPUはステップ420にて「No」と判定してステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、専用道路フラグXsの値が「0」に維持される。
【0084】
CPUは所定のタイミングになると、
図5のステップ500から処理を開始してステップ510に進み、専用道路フラグXsの値が「1」に設定されているか否かを判定する。専用道路フラグXsの値が「0」である場合、CPUはステップ510にて「No」と判定してステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対して、専用道路フラグXsの値が「1」である場合、CPUはステップ510にて「Yes」と判定してステップ520に進み、以下に述べる処理を実行する。
【0085】
・CPUは、ステップ420での処理と同様の処理により、車線幅W及び車速SPDを取得する。
・CPUは、車線幅W及び車速SPDを用いて、以下に述べる専用道路フラグOFF条件が成立するか否かを判定する。専用道路フラグOFF条件が成立しているとき、CPUは自車両が特定道路上に位置していなくなったと判定する。
【0086】
(専用道路フラグOFF条件)
専用道路フラグOFF条件は、下記の条件3が成立したときに成立する。
条件3:車線幅Wが上述した下限車線幅WLoth未満である。
なお、専用道路フラグOFF条件は、上記の条件3及び下記の条件4の少なくとも一方が成立したときに成立する条件であってもよい。
条件4:車線幅Wが上述した上限車線幅WHithよりも大きい。
【0087】
なお、専用道路フラグOFF条件の成立の可否は、車線幅Wを用いて判定されるが車速SPDを用いて判定されない。これは、仮に、車速SPDを用いて判定されると、自車両が特定道路を走行している場合であっても、減速制御により車速SPDが低下するために自車両が特定道路に位置していないと判定されてしまう可能性があるからである。
【0088】
専用道路フラグOFF条件が成立する場合(即ち、自車両が特定道路に位置してないと、判定された場合、換言すると、自車両が一般道路に位置していると判定された場合)、CPUはステップ520にて「Yes」と判定してステップ530に進み、専用道路フラグXsの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0089】
これに対して、専用道路フラグOFF条件が成立しない場合、CPUはステップ520にて「No」と判定してステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、専用道路フラグXsの値が「1」に維持される。
【0090】
以上、説明したように、本実施装置は、運転者が異常状態に陥っている場合、自車両が特定道路に位置していないと判定したとき、車両を所定の速度まで減速させ、その上で低速走行させ続ける。従って、本実施装置は、車両が不適切場所に停止されてしまう可能性を低減できる。更に、本実施装置は、自車両を低速走行させるので、自動車以外の道路ユーザ(例えば、歩行者や自転車)に与える脅威(自車両の高速走行による脅威)を低減できる。
【0091】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形例を採用し得る。
【0092】
例えば、DSECUは、自車両が位置している道路の種類を示す情報(道路種別情報)をナビゲーション装置から取得し、その道路種別情報に基づいて自車両が特定道路に位置しているか否かを判定してもよい。
【0093】
代替えとして、DSECUは、カメラセンサから送信されてくる周囲情報に含まれる「道路標識が表している道路の種類を示す情報(道路種別情報)」に基づいて自車両が特定道路に位置しているか否かを判定してもよい。或いは、DSECUは、カメラセンサが取得した画像データに含まれる道路標識に相当する標識画像データを抽出し、その標識画像データから道路種別情報を抽出し、その道路種別情報に基づいて自車両が特定道路に位置しているか否かを判定してもよい。
【0094】
更に別の例として、DSECUは、道路脇に設置された路側通信装置と通信を行って、自車両が位置している道路の道路種別情報を取得し、その道路種別情報に基づいて自車両が特定道路に位置しているか否かを判定してもよい。
【0095】
これらの変形例の場合、CPUは、その道路種別情報が特定道路の一つを示しているとき、ステップ420の専用道路フラグON条件が成立すると判定し、その道路種別情報が特定道路以外の道路を示しているとき、ステップ520の専用道路フラグOFF条件が成立すると判定する。
【0096】
更に、DSECUは、特開2013-152700号公報等に開示されている所謂「ドライバモニタ技術」に基づいて、運転者が運転不能異常状態に陥っているか否かを判定してもよい。簡単に述べると、ドライバモニタ技術を塔載した車両走行制御装置は、車室内の部材(例えば、ステアリングホイール及びピラー等)に設けられたカメラを用いて運転者を撮影し、その撮影画像を用いて運転者の視線の方向又は顔の向きを監視し、運転者の視線の方向又は顔の向きが車両の通常の運転中には長時間向くことがない方向に所定時間以上継続して向いている場合、運転者が運転不能異常状態に陥っていると判定する。
【0097】
更に、DSECUは、一定の第1時間の経過毎に、「運転者が正常であれば操作可能な確認ボタン」の操作を表示及び/又は音声によって催促し、その確認ボタンの操作がない状態が第1時間よりも長い第2時間以上に渡って継続したとき、運転者が運転不能異常状態に陥っていると判定してもよい。
【0098】
加えて、DSECUは、以下に述べるように、運転者が異常状態に陥っているか否かの判定と、運転者が異常状態に陥っていると判定した場合の車両の制御を、
図6に示した例のように行っても良い。
【0099】
即ち、
図6は、自車両が、車線維持制御(LTA)及び追従車間距離制御(ACC)の実行下で特定道路を走行している例を示す。この例において、時刻t1にて運転者が運転不能異常状態に陥っていて、時刻t1以降において運転無操作状態が継続する。DSECUは運転無操作状態が継続しているか否かを判定し続ける。
【0100】
DSECUは、時刻t1から操舵ハンドルSWの無操作検出状態が第1閾値時間T1th継続した時刻t2にて、運転者が手放し運転状態にあると判定して「手放し警告制御」を開始する。手放し警告制御においては、「操舵ハンドルSWを握ることを促す旨」の警告がなされる。
【0101】
時刻t2から無操作検出状態が第2閾値時間T2th継続した時刻t3にて、DSECUは、手放し警告制御による警告に比べてより警告の程度が強い(例えば、音量が大きい)第1警告を行うための第1警告制御を開始する。但し、DSECUは、自車両の運転状態を変化させない(即ち、時刻t3以前のLTA及びACCを継続する。)。
【0102】
時刻t3から運転無操作状態が第3閾値時間T3th継続した時刻t4にて、DSECUは、運転者が仮異常状態にあると判定する。そして、DSECUは、時刻t4にて、第1警告に比べてより警告の程度が強い(例えば、音量が大きい)第2警告を行うための第2警告制御を開始するとともに、自車両を第1減速度α1で緩やかに減速させる第1減速制御を開始する。但し、DSECUは、LTAをそのまま継続するが、ACCについては減速制御を優先するように車速SPDを変更しながら継続する。
【0103】
時刻t4から運転無操作状態が第4閾値時間T4th継続した時刻t5にて、DSECUは、運転者が運転不能異常状態に陥っているとの判定を確定する。そして、DSECUは、時刻t5以降において、自車両が特定道路に位置しているか否かに応じて互いに異なる制御を行う。
【0104】
図6の例では、自車両は特定道路に位置している。このため、DSECUは、時刻t5にて、第2警告に比べてより警告の程度が強い(例えば、音量が更に大きい)第3警告を行うための第3警告制御を開始する。更に、DSECUは、自車両を「第1減速度α1よりも大きさが大きい第2減速度α2」で急速に減速させる第2減速制御を開始する。DSECUは、LTAをそのまま継続するが、ACCについては減速制御を優先するように車速SPDを変更しながら継続する。
【0105】
第2減速制御により車速SPDがゼロになった時刻t6にて、DSECUは、LTA、ACC、第2減速制御及び第3警告制御を終了し、上述したパーキングブレーキ力を用いた停止保持制御及び第4警告制御を開始する。第4警告制御は第3警告に比べてより警告の程度が強い(例えば、音量が更に大きい)第4警告を行うための制御である。
【0106】
図7は、
図6を用いて説明した変形例において、自車両が、特定道路以外の道路(一般道路)を走行している例を示す。この場合、運転者が運転不能異常状態に陥っているとの判定が確定する時刻t5までは、上述した例と同様な制御が実行される。
【0107】
そして、
図7の例では、DSECUは、時刻t5以降において第3警告制御を開始するとともに、第2減速制御を「車速SPDが所定車速SPDlow」に一致する時刻t6aまで実行する。更に、DSECUは、時刻t6aにて、第2減速制御及び第3警告制御を終了し、低速走行制御及び第4警告制御を開始する。
【0108】
DSECUは、クリープ走行制御に代えて、低速走行制御として、低速での定速走行制御を実行してもよい。具体的に述べると、DSECUは、目標速度を上述した低車速範囲内の所定速度に設定し、実際の車速SPDが目標速度と一致するように目標加速度Gtgtを決定する。そして、DSECUは、自車両の実際の加速度(車速SPDの時間微分値)が目標加速度Gtgtに一致するように、エンジンECU20を用いてエンジンアクチュエータ21を制御するとともに、必要に応じてブレーキECU30を用いてブレーキアクチュエータ31を制御する。
【符号の説明】
【0109】
10…運転支援ECU、14…操舵角センサ、17…周囲センサ、20…エンジンECU、21…エンジンアクチュエータ、30…ブレーキECU、31…ブレーキアクチュエータ、32…摩擦ブレーキ機構、40…電動パーキングブレーキECU、41…PKBアクチュエータ、50…ステアリングECU、51…モータドライバ、52…転舵用モータ。