(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/217 20110101AFI20221206BHJP
B60R 21/206 20110101ALI20221206BHJP
【FI】
B60R21/217
B60R21/206
(21)【出願番号】P 2019060025
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 稔
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523992(JP,A)
【文献】特開平10-203290(JP,A)
【文献】特表2012-508133(JP,A)
【文献】特開2008-094188(JP,A)
【文献】特開2000-033843(JP,A)
【文献】特開2001-301558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0301588(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、及び、前記エアバッグと前記インフレーターとを保持して、搭載部位に取り付けられる取付ベース、を備えて構成されるエアバッグ装置であって、
前記インフレーターが、先端側に、膨張用ガスを吐出させるガス吐出部を配設させた略円柱状とし、
前記エアバッグが、折り畳まれた状態から膨張用ガスを流入させて膨張する本体部と、該本体部と連通され、前記インフレーターの先端側を挿入させて、前記インフレータ
ーからの膨張用ガスを前記本体部に流入させる筒状の流入口部と、を備
え、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部の周囲を前記インフレーター側に押圧するように巻き付け可能な巻付部を前記流入口部に配設させて構成され、
前記取付ベースが、表面側に、折り畳んだ前記本体部を配置させ、裏面側に、前記流入口部と該流入口部に挿入させた前記インフレーターとを配置させて保持する保持板部、を備え、
該保持板部が
、内周側に前記流入口部を配置させて、前記流入口部内に前記インフレーターの先端側を圧入可能な、若しくは、前記インフレーターの先端側を挿入させた状態の前記流入口部を圧入可能な、内径寸法とし、かつ
、圧入後における前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部
を保持可能な内径寸法とした圧入保持
部を配設させて構成されて
おり、
前記取付ベースは、巻き付け後の前記巻付部の端末に設けられた被係止部を係止する係止部を有することを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記圧入保持部の内周側に、周囲の一般部から隆起して、前記インフレーターの先端側を挿入させた状態の前記流入口部の外周面側に押圧される複数のビードが、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記保持板部が、板金製として、
裏面側に、前記圧入保持部に隣接して、前記インフレーターの先端側を挿入させた状態の前記流入口部と前記インフレーターとの軸直交方向の略半分を収納可能の凹部を備えるとともに、
前記圧入保持部が、前記インフレーターの軸心の周囲で、前記凹部側と前記凹部を覆う側とに分割される半割り環状体とするとともに、二つの前記半割り環状体を、前記インフレーターの軸心に沿ってずれた位置に配置させて、構成されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置に関し、詳しくは、エアバッグとインフレーターとを簡便に取付ベースに組み付けることができるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、膝保護用のエアバッグ装置では、膨張用ガスを流入させて折畳状態から膨張するエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、エアバッグとインフレーターとを保持して、搭載部位に取り付けられる取付ベースとしてのケースと、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。さらに、このエアバッグ装置では、インフレーターが、膨張用ガスを吐出する略円柱状のインフレーター本体と、インフレーター本体を保持する略円筒状のリテーナと、を備えて構成されるとともに、リテーナとインフレーター本体とから突設されるボルトを利用して、エアバッグとインフレーターとをケースに取付固定していた。すなわち、このエアバッグ装置では、折り畳まれたエアバッグの内部に、インフレーター本体とリテーナとを配設させ、インフレーター本体とリテーナとから延びる各ボルトを、エアバッグ外に突出させて、突出させたボルトを、折り畳んだエアバッグを収納したケースの底壁部位から突出させ、そして、各ボルトの先端にナットを締結させて、インフレーターとエアバッグとをケースに組み付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエアバッグ装置では、複数のボルトとナットとを利用して、取付ベースとしてのケースに対し、エアバッグとインフレーターとを組み付ける構成としており、部品点数が多く、コストや重量を増加させ、さらに、複数のボルトにナットを締結する作業が必要となって、簡便に組み付け難かった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、構成部品点数を低減できて、軽量化を図ることができるとともに、簡便に組み付けることができるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置では、膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、及び、前記エアバッグと前記インフレーターとを保持して、搭載部位に取り付けられる取付ベース、を備えて構成されるエアバッグ装置であって、
前記インフレーターが、先端側に、膨張用ガスを吐出させるガス吐出部を配設させた略円柱状とし、
前記エアバッグが、折り畳まれた状態から膨張用ガスを流入させて膨張する本体部と、該本体部と連通され、前記インフレーターの先端側を挿入させて、前記インフレータからの膨張用ガスを前記本体部に流入させる筒状の流入口部と、を備えて構成され、
前記取付ベースが、表面側に、折り畳んだ前記本体部を配置させ、裏面側に、前記流入口部と該流入口部に挿入させた前記インフレーターとを配置させて保持する保持板部、を備え、
該保持板部が、
内周側に前記流入口部を配置させて、前記流入口部内に前記インフレーターの先端側を圧入可能な、若しくは、前記インフレーターの先端側を挿入させた状態の前記流入口部を圧入可能な、内径寸法とし、かつ、
圧入後における前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部を、保持可能な内径寸法とした圧入保持部、
を配設させて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置では、折り畳んだエアバッグの本体部から延びる流入口部を、取付ベースの保持板部の圧入保持部内に配置させて、流入口部内にインフレーターの先端側を圧入させるか、あるいは、インフレーターの先端側を挿入させた状態の流入口部を圧入保持部内に圧入させれば、圧入保持部が、圧入後におけるインフレーターの先端側を挿入させた流入口部を、保持可能な内径寸法としていることから、取付ベースの保持板部に対し、圧入保持部を利用して、エアバッグの流入口部と流入口部に挿入されたインフレーターの先端側とが、保持されるように組み付けられることとなる。このような組付構造では、ボルトやナットを使用せずに、単に、保持板部に設けた圧入保持部に、インフレーターとエアバッグの流入口部とを圧入させるだけで、簡便に組み付けることができる。
【0008】
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、構成部品点数を低減できて、軽量化を図ることができるとともに、単に、圧入保持部にインフレーターとエアバッグの流入口部とを圧入するだけで、取付ベースに対してエアバッグとインフレーターとを簡便に組み付けることができる。
【0009】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、前記圧入保持部の内周側に、周囲の一般部から隆起して、前記インフレーターの先端側を挿入させた状態の前記流入口部の外周面側に押圧される複数のビードが、配設されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、圧入保持部の内周面の全面に対して、圧入する流入口部の外周面、あるいは、流入口部を介在させて、インフレーターの外周面、を摺動させずに、ビードの先端の狭い面積の部位に対して、圧入する流入口部の外周面、あるいは、流入口部を介在させたインフレーターの外周面、を摺動させればよいことから、圧入後の保持力の低下を抑制した状態として、円滑に、圧入保持部にインフレーターとエアバッグの流入口部とを圧入することができる。
【0011】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、前記保持板部が、板金製として、
裏面側に、前記圧入保持部に隣接して、前記インフレーターの先端側を挿入させた状態の前記流入口部と前記インフレーターとの軸直交方向の略半分を収納可能の凹部を備えるとともに、
前記圧入保持部が、前記インフレーターの軸心の周囲で、前記凹部側と前記凹部を覆う側とに分割される半割り環状体とするとともに、二つの前記半割り環状体を、前記インフレーターの軸心に沿ってずれた位置に配置させて、構成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、圧入保持部が、インフレーターの軸心に沿ってずれているものの、略半周分づつの半割り環状体として、構成されており、インフレーターの先端側を挿入させたエアバッグの流入口部の周囲の全周を、包んで、保持することができる。勿論、二つの略半周分づつの半割り環状体は、インフレーターの軸心に沿ってずれていることから、板金製とした保持板部に、プレス加工によりインフレーターを収納する凹部を形成する際に、保持板部の表面側に凹む凹部側の半割り環状体と、保持板部の裏面側に突出する凹部を覆う側の凸形状の半割り環状体と、を、インフレーターの軸心に沿ってずらして、凹凸を付けるように塑性変形させればよく、両者を、容易に形成することができる。
【0013】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、前記エアバッグが、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部の周囲を前記インフレーター側に押圧するように巻き付け可能な巻付部、を、前記流入口部に、配設させて構成され、
前記取付ベースに、巻き付け後の前記巻付部の端末に設けられた被係止部を係止する係止部が、配設されていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、被係止部を設けた端末を周囲の係止部に係止させて、巻付部が解けを防止して巻付状態を維持すれば、この巻付部により、エアバッグの流入口部が、インフレーターの外周面に押圧されることから、インフレーターの外周面に流入口部の内周側が密着して良好なガスシール性を発揮し、圧入保持部が、インフレーターの外周面における周方向の全周を良好にシールできる構成でなくとも、的確に、膨張用ガスの漏れを防止できる。また、巻付部が取付ベースに係止されれば、巻付部が巻き付けられたインフレーター等のインフレーターの軸心に沿う移動も抑制することができ、流入口部やインフレーターの取付ベースに対する組付位置を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る一実施形態の膝保護用のエアバッグ装置の車両搭載状態を示す概略縦断面図である。
【
図2】実施形態のエアバッグ装置の裏面側(上面側)から見た概略斜視図である。
【
図3】実施形態のエアバッグ装置の概略分解斜視図である。
【
図4】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、左右方向に沿った概略縦断面図である。
【
図5】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、
図4のV-V部位に対応する。
【
図6】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、
図4のVI-VI部位に対応する。
【
図7】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、
図4のVII-VII部位に対応する。
【
図8】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、
図4のVIII-VIII部位に対応する。
【
図9】実施形態の取付ベースの圧入保持部に、エアバッグの流入口部を配置させて、インフレーターの先端側を挿入する状態を説明する図である。
【
図10】実施形態の変形例のエアバッグ装置における左右方向に沿った概略縦断面図である。
【
図11】
図10に示すエアバッグ装置の概略縦断面図であり、
図10のXI-XI部位に対応する。
【
図12】
図10に示すエアバッグ装置の概略縦断面図であり、
図10のXII-XII部位に対応する。
【
図13】実施形態のエアバッグの巻付部と係止部との変形例を示す図である。
【
図14】実施形態のエアバッグの巻付部と係止部との他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、
図1に示すように、実施形態のエアバッグ装置9は、膝保護用のものであり、助手席の前方のインストルメントパネル(適宜、インパネと略す)6の下部側、詳しくは、インパネ6の下部側に配設されたグラブボックス7の下方に、搭載されている。グラブボックス7は、ボックス本体7aと、ボックス本体7aの後方を塞ぐドア部7bと、を備え、ドア部7bは、上縁側を後方に回転させるように開き可能として配設されている。さらに、グラブボックス7の下方には、アンダーカバー8が配設されて、アンダーカバー8の開口8aに、エアバッグ装置9における後述するエアバッグカバー70の扉配設壁部71を配設させて、エアバッグ装置9が、助手席の前方の下方側に、搭載されている。
【0017】
エアバッグ装置9は、
図1~8に示すように、助手席に着座した乗員の膝を保護するように膨張用ガスを流入させて折畳状態から膨張するエアバッグ10と、エアバッグ10に膨張用ガスG(
図4参照)を供給するインフレーター20と、エアバッグ10及びインフレーター20を保持して、搭載部位としての助手席の前下方側に取り付けられる取付ベース30と、折り畳んだエアバッグ10を覆って取付ベース30に保持されるエアバッグカバー70と、を備えて構成されている。
【0018】
なお、本明細書での前後、上下、及び、左右の各方向は、車両搭載状態の方向に略対応するもので、
図1~3に示すように、取付ベース30の略長方形形状の保持板部31における長尺方向を左右の方向とし、短尺方向を前後の方向として、保持板部31の直交方向を上下の方向として、説明する。
【0019】
エアバッグ10は、
図1,3,4,9に示すように、折り畳まれた状態から膨張用ガスGを流入させて膨張する本体部11と、本体部11と連通され、インフレーター20の先端20a側を挿入させて、インフレーター20からの膨張用ガスを本体部11に流入させる筒状(実施形態では円筒状)の流入口部12と、を備えて構成されている。なお、本体部11の流入口部12側には、本体部11の周壁の構成材料が延びて、本体部11と流入口部12とを連結する連結シート部18が配設されて(
図4~6参照)、取付ベース30に保持される流入口部12側から延びる連結シート部18により、膨張時の本体部11の左右の揺動を、極力、抑制できるように、構成されている。
【0020】
本体部11は、
図1の二点鎖線に示すように、膨張時、エアバッグカバー70の後述する扉部72(F,B)を押し開いて取付ベース30から後上方向に突出し、乗員の左右の膝の前方で、アンダーカバー8やドア部7b、さらには、インパネ6におけるドア部7bの左右両側の部位に沿うような略長方形板状に膨張する。膨張完了時の本体部11は、取付ベース30から下方に突出する下部11bと、下部11bから上方へ反転する反転部11cと、乗員の膝の前方側に配設される上部11aと、を備える。
【0021】
流入口部12には、端末の開口13近傍に、巻付部15が配設されている。巻付部15は、エアバッグ10の流入口部12の素材(ポリエステルやポリアミド等の合成繊維から織成されたバッグ用基布)と一体的(一体的に織られて形成されたり、あるいは、別途、流入口部12に対して縫合により一体的としたものを含む)に形成されて、インフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12の外周面12a側に巻付可能な可撓性を有した帯状としている。巻付部15の端末(先端)16には、流入口部12に巻き付けた巻付部15の巻付状態を維持できるように、取付ベース30に設けられた係止部としての係止突起59(
図7参照)を挿入させる被係止部としての係止孔17、が形成されている。
【0022】
なお、エアバッグ10の本体部11は、折り畳まれた状態として、取付ベース30の後述する保持板部31の表面(下面)31a側に配置され、本体部11から延びる流入口部12は、保持板部31の後述する挿通孔35を経て、保持板部31の裏面(上面)側に配置される。そして、挿通孔35を挿通した流入口部12は、インフレーター20の先端20a側を挿入させた状態で、インフレーター20とともに、保持板部31に組み付けられて保持される。
【0023】
インフレーター20は、略円柱状として、先端20aに、膨張用ガスGを吐出する複数のガス吐出口22aを設けたガス吐出部22を配設させて構成されている。なお、インフレーター20の元部20b側の端面には、作動信号を入力させるための作動用信号線LWを結合させるコネクタ24が、配設されている(
図4参照)。
【0024】
取付ベース30は、鋼板等の板金製として、略長方形板状の保持板部31を備えて構成されている。保持板部31は、前縁側に、左右方向に沿って、エアバッグ10の流入口部12とインフレーター20とを組み付ける組付座32を配設させ、組付座32の周囲を、略平板状として、折り畳まれたエアバッグ10の本体部11を支持する支持座51、としている。
【0025】
組付座32は、エアバッグ10の流入口部12とインフレーター20とを収納可能に、下方へ半割り円柱状に凹む凹部33を設けて構成されている。凹部33は、インフレーター20の先端20a側を挿入させた状態の流入口部12とインフレーター20との軸直交方向の略半分を収納可能としている。
【0026】
そして、組付座32は、インフレーター20と流入口部12とを組み付けて保持する圧入保持部40を配設させている。実施形態の圧入保持部40は、挿通孔35を経て本体部11から延びる流入口部12を、内周側に配置させて、流入口部12内にインフレーター20の先端20a側を圧入可能な内径寸法dh(
図3,5参照)とし、かつ、圧入後におけるインフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12を、保持可能な内径寸法dhとした内周面41を有した略円筒状としている。
【0027】
特に、実施形態の圧入保持部40は、インフレーター20の軸心ICの周囲で、凹部33側と凹部33を覆う側とに分割される半割り環状体44,46とするとともに、二つの半割り環状体44,46を、インフレーター20の軸心(軸方向)ICに沿ってずれた位置に配置させて、構成されている。圧入保持部40の内周面41側には、周囲の一般部42から隆起して、インフレーター20の先端20a側を挿入させた状態の流入口部12の外周面12a側に押圧される複数のビード43が、配設されている。
【0028】
そして、下側の半割り環状体44は、挿通孔35に隣接して配設されて、内周面44a側に、インフレーター20の軸心ICに沿って延びるビード43を前後二箇所に配設させ、上側の半割り環状体46は、挿通孔35から離れる方向として、半割り環状体44とずれて配置され、内周面46a側に、インフレーター20の軸心ICに沿って延びるビード43を前後二箇所に配設させて構成されている。
【0029】
半割り環状体44,46からなる圧入保持部40は、内周面41の下側41bを半割り環状体44が構成し、内周面41の上側41aを半割り環状体46が構成するとともに、圧入保持部40の内径寸法dhは、半割り環状体44,46の内周面44a,46a側に配置されたビード43の頂部43aを連ならせてなる内周面41から構成されている。
【0030】
さらに、下側の半割り環状体44には、前後方向に延びるスリット45が配設されている。スリット45内には、エアバッグ10の連結シート部18が配置される。
【0031】
組付座32の凹部33における挿通孔35から離れた部位は、半円筒状の支持部48としており、インフレーター20の先端20a側のガス吐出部22から離れた元部20b側の外周面21の下側21bを支持するように、構成されている。支持部48には、圧入保持部40と同様に、インフレーター20の軸心ICに沿って隆起するビード49を、前後に離して配設させており、支持部48は、ビード49の頂部49aにより、インフレーター20の外周面21の下側21bを支持する構成としている。また、支持部48にも、インフレーター20の軸心ICに沿うスリット45が配設されている(
図8参照)
さらに、支持部48には、凹部33の上縁側に、インフレーター20の軸直交方向の外周面21の前後で対向する側面部21c,21c相互を、挟持するように圧接させる係止爪部50,50が、突設されている。
【0032】
以上のように、組付座32では、組み付けるインフレーター20の軸心(軸方向)ICに沿って、左端側から順に、挿通孔35、下側の半割り環状体44、上側の半割り環状体46、及び、支持部48が配設されて、平板状の板金素材からプレス加工により、穴や凹凸を設けて、容易に、組付座32を設けた保持板部31を形成することができる。
【0033】
取付ベース30における保持板部31の左右両側には、エアバッグ装置9を搭載部位に取り付けるための取付ブラケット部53(L,R)が形成されている。取付ブラケット部53(L,R)には、取付孔53aが貫通されており、取付孔53aを貫通するボルト3をボディ1側のブラケット2にナット4止めすることにより、エアバッグ装置9をグラブボックス7の下方における助手席の前下側に搭載することができる。取付ブラケット部53(L,R)の前後の縁には、補強用のリブ57が上方へ突設されている。
【0034】
また、取付ベース30は、支持座51の前後の縁に、エアバッグカバー70の連結凸部76を挿入させて連結保持する連結凹部55が、開口されている。
【0035】
さらに、支持座51の上面側における半割り環状体46の近傍に、巻付部15の端末16の被係止部としての係止孔17に挿入させて、端末16を係止する係止部としての係止突起59が、突設されている(
図7参照)。
【0036】
エアバッグカバー70は、
図3~8に示すように、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製として、長方形板状の扉配設壁部71と、扉配設壁部71の前後の縁から上方に延びる連結壁部75(F,B)と、を備えて構成されている。扉配設壁部71には、左右方向に沿う薄肉の破断予定部73が配設されて、エアバッグ10の本体部11の膨張時、破断予定部73を破断させて、前後両側に開く扉部72(F,B)が配設されている。前後の連結壁部75(F、B)は、上端に、取付ベース30の連結凹部55に挿入係止される複数の連結凸部76が、配設されている。
【0037】
実施形態のエアバッグ装置9の組立作業を説明すると、まず、エアバッグ10の本体部11を折り畳んで、折り崩れ防止用の図示しないラッピング材で包む。ついで、エアバッグ10の本体部11を取付ベース30の保持板部31の表面31a側に配置させて、流入口部12を挿通孔35を経て保持板部31の裏面31b側に取り出すとともに、エアバッグカバー70により、本体部11を包むようにして、連結壁部75F,75Bの各連結凸部76を、保持板部31の対応する連結凹部55に挿入係止する。
【0038】
そして、挿通孔35を挿通させた流入口部12を、圧入保持部40の半割り環状体44,46の内周側に挿入する。なお、この時、エアバッグ10の連結シート部18を、半割り環状体44のスリット45に挿通させるとともに、流入口部12の周囲に、巻付部15を緩く巻きつけておく(
図9参照)。そして、インフレーター20の先端20a側を、流入口部12の開口13から流入口部12の内周面12b側に挿入し、さらに、半割り環状体46,44からなる圧入保持部40内に、
図9の二点鎖線に示す所定位置まで、圧入するとともに、係止爪部50,50間に、インフレーター20の元部20b側を嵌めて、インフレーター20の元部20b側を支持部48の内周側に、配設する。すると、圧入保持部40が、圧入後におけるインフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12を、保持可能な内径寸法dhとしていることから、取付ベース30の保持板部31に対し、圧入保持部40を利用して、エアバッグ10の流入口部12と流入口部12に挿入されたインフレーター20の先端20a側とが、保持されるように組み付けられることとなり、エアバッグ装置9を組み立てることができる。なお、実施形態の場合には、圧入保持部40にインフレーター20と流入口部12を圧入させた後、巻付部15の端末16を引っ張って、係止孔17内に係止突起59を挿入させて、巻付部15の端末16を係止突起59に係止させておく。
【0039】
その後、インフレーター20の元部20b側のコネクタ24に、作動用信号線LWを結線するとともに、取付ベース30の取付ブラケット部53(L,R)を、ボルト3とナット4とを利用して、ボディ1側のブラケット2に取り付ければ、エアバッグ装置9を、グラブボックス7の下方の所定の搭載部位に搭載することができる。
【0040】
エアバッグ装置9の搭載後、インフレーター20が作動すれば、ガス吐出部22のガス吐出口22aから膨張用ガスGが吐出され、エアバッグ10が、流入口部12を経て流入された膨張用ガスGにより、本体部11を、展開膨張させ、エアバッグカバー70の扉部72F,72Bを押し開いて、助手席の乗員の膝の前方側に、配置させることとなる。
【0041】
そして、実施形態のエアバッグ装置9では、折り畳んだエアバッグ10の本体部11から延びる流入口部12を、取付ベース30の保持板部31の圧入保持部40内に配置させて、流入口部12内にインフレーター20の先端20a側を圧入させれば、圧入保持部40が、圧入後におけるインフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12を、保持可能な内径寸法dhとしていることから、取付ベース30の保持板部31に対し、圧入保持部40を利用して、エアバッグ10の流入口部12と流入口部12に挿入されたインフレーター20の先端20a側とが、保持されるように組み付けられることとなる。このような組付構造では、ボルトやナットを使用せずに、単に、保持板部31に設けた圧入保持部40に、インフレーター20とエアバッグ10の流入口部12とを圧入させるだけで、簡便に組み付けることができる。
【0042】
したがって、実施形態のエアバッグ装置9では、構成部品点数を低減できて、軽量化を図ることができるとともに、単に、圧入保持部40にインフレーター20とエアバッグ10の流入口部12とを圧入するだけで、取付ベース30に対してエアバッグ10とインフレーター20とを簡便に組み付けることができる。
【0043】
なお、実施形態では、圧入保持部40の内周側に流入口部12を配置させて、流入口部12内にインフレーター20の先端20a側を圧入させた場合を例示したが、圧入保持部40の周囲にスペースがあれば、圧入保持部40内に、インフレーター20の先端20a側を挿入させた状態の流入口部12を圧入させてもよい。ちなみに、この場合、実施形態では、インフレーター20の先端20a側を挿入させた状態の流入口部12を、インフレーター20の元部20b側から、圧入保持部40に挿入させて、圧入保持部40に圧入させればよい。
【0044】
また、実施形態のエアバッグ装置9では、圧入保持部40の内周面41側に、周囲の一般部42から隆起して、インフレーター20の先端20a側を挿入させた状態の流入口部12の外周面12a側に押圧される複数のビード43が、配設されている。
【0045】
そのため、実施形態では、圧入保持部40の内周面41の全面に対して、圧入する流入口部12の外周面12a、あるいは、流入口部12を介在させて、インフレーター20の外周面21、を摺動させずに、ビード43の先端の狭い面積の部位(頂部)43aに対して、圧入する流入口部12の外周面12a、あるいは、流入口部12を介在させたインフレーター20の外周面21、を摺動させればよいことから、圧入後の保持力の低下を抑制した状態として、円滑に、圧入保持部40にインフレーター20とエアバッグ10の流入口部12とを圧入することができる。
【0046】
また、実施形態のエアバッグ装置9では、保持板部31が、板金製として、裏面(上面)31b側に、圧入保持部40に隣接して、インフレーター20の先端20a側を挿入させた状態の流入口部12とインフレーター20との軸直交方向の略半分を収納可能の凹部33を備えている。そして、圧入保持部40が、インフレーター20の軸心ICの周囲で、凹部33側と凹部33を覆う側とに分割される半割り環状体44,46とするとともに、二つの半割り環状体44,46を、インフレーター20の軸心(軸方向)ICに沿ってずれた位置に配置させて、構成されている。
【0047】
そのため、実施形態では、圧入保持部40が、インフレーター20の軸心(軸方向)ICに沿ってずれているものの、略半周分づつの半割り環状体44,46として、構成されており、インフレーター20の先端20a側を挿入させたエアバッグ10の流入口部12の周囲の全周を、包んで、保持することができる。勿論、二つの略半周分づつの半割り環状体44,46は、インフレーター20の軸方向(軸心)ICに沿ってずれていることから、板金製とした保持板部31に、プレス加工によりインフレーターを収納する凹部33を形成する際に、保持板部31の表面31a側に凹む凹部33側の半割り環状体44と、保持板部31の裏面31b側に突出する凹部33を覆う側の凸形状の半割り環状体46と、を、インフレーター20の軸心ICに沿ってずらして、凹凸を付けるように塑性変形させればよく、両者を、容易に形成することができる。
【0048】
また、実施形態のエアバッグ装置9では、エアバッグ10が、インフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12の周囲をインフレーター20側に押圧するように巻き付け可能な巻付部15、を、流入口部12に、配設させて構成され、取付ベース30に、巻き付け後の巻付部15の端末16に設けられた被係止部として係止孔17を係止する係止部としての係止突起59が、配設されている。
【0049】
そのため、実施形態では、被係止部としての係止孔17を設けた端末16を周囲の係止部としての係止突起59に係止させて、巻付部15が解けを防止して巻付状態を維持すれば、この巻付部15により、エアバッグ10の流入口部12が、インフレーター20の外周面21に押圧されることから、インフレーター20の外周面21に流入口部12の内周面12b側が密着して良好なガスシール性を発揮し、圧入保持部40が、インフレーター20の外周面21における周方向の全周を良好にシールできる構成でなくとも、的確に、膨張用ガスGの漏れを防止することができる。また、巻付部15が取付ベース30に係止されれば、巻付部15が巻き付けられたインフレーター20等のインフレーター20の軸心ICに沿う移動も抑制することができ、流入口部12やインフレーター20の取付ベース30に対する組付位置を安定させることができる。
【0050】
なお、圧入保持部40が、ビードを設けずに、インフレーター20の外周面21の周方向の全周に対し、流入口部12を圧接できれば、良好なシール性を発揮できることから、巻付部15を設けないように、構成してもよい。
【0051】
また、実施形態では、半割り環状体44が、エアバッグ10の連結シート部18を挿通させるスリット45を配設させており、エアバッグ10の本体部11が、流入口部12との連通部位だけで無く、流入口部12の軸方向の略全長にわたって、インフレーター20にも支持される態様となって、本体部11の展開膨張時の左右の揺動を防止できて、エアバッグ10の本体部11が、迅速に、安定した姿勢で、助手席の乗員の前方側に配置される。
【0052】
そしてまた、半割り環状体44のスリット45が、インフレーター20の圧入初期時に、若干、広がる状態となれば、インフレーター20の圧入作業を円滑に行なうことに寄与できる。
【0053】
また、実施形態では、板金製の取付ベース30を例示したが、
図10~12に示すエアバッグ装置9Aのように、取付ベース30Aを、ポリプロピレン等の合成樹脂から型成形により形成してもよい。型成形により形成される合成樹脂製の取付ベース30Aでは、保持板部31Aに形成する圧入保持部40Aを、インフレーター20の軸心ICに沿ってずれた略円筒状でなく、軸心ICの周囲を囲む円筒状に成形して形成できることから、周方向に連なった円筒状としてもよい。なお、圧入保持部40Aの内周面41には、インフレーター20の軸心ICに沿って、複数(図例では4個)のビード43が形成されており、圧入保持部40A内へのインフレーター20等の圧入時の摺動抵抗を抑制できるように、構成されている。
【0054】
また、型成形により形成できる合成樹脂製の取付ベース30Aでは、組付座32の凹部33の支持部48側に設ける係止爪部50A,50Aとしても、挟持力を高めることができるように、インフレーター20の側面部21cの幅広の直径領域を越えた上側部位21dを、挟持できるように、形成できる。すなわち、両側の係止爪部50A,50Aの離隔距離CWとして、インフレーター20の直径寸法IDより小さく、かつ、インフレーター20の元部20bを上方から嵌め可能な寸法にできる。
【0055】
なお、実施形態では、エアバッグ10の流入口部12に設けた巻付部15を、支持座51の前縁側に設けた係止突起59に係止させた場合を示したが、
図13に示すように、インフレーター20の前方側の支持座51に設けた係止部としての係止突起59Bを、端末16の係止孔17に挿入させて、係止突起59Bに巻付部15Bを係止させてもよい。この係止突起59Bは、支持座51に設けたピンやボルト等から形成してもよいし、あるいは、
図14に示すように、支持座51から切り起こして係止突起59Cを形成してもよく、巻付部15Cの端末16の被係止部としての係止孔17に、係止部としての係止突起59Cを挿入させて、巻付部15Cを係止突起59Cに係止させてもよい。
【0056】
また、実施形態では、助手席の乗員の膝を保護するための膝保護用のエアバッグ装置9について説明したが、エアバッグの流入口部にインフレーターを挿入させて、取付ベースに組み付けるエアバッグ装置であれば、膝保護用エアバッグ装置に限定されること無く、助手席の乗員の上半身を保護する助手席用エアバッグ装置等に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
9,9A…(膝保護用)エアバッグ装置、10…エアバッグ、11…本体部、12…流入口部、15,15B,15C…巻付部、16…端末、17…(被係止部)係止孔、20…インフレーター、20a…先端、22…ガス吐出部、30,30A…取付ベース、31,31A…保持板部、31a…(表面)下面、31b…(裏面)上面、33…凹部、40,40A…圧入保持部、41…内周面、42…一般部、43…ビード、44…(下側)半割り環状体、46…(上側)半割り環状体、59,59B,59C…(係止部)係止突起、
IC…(インフレーターの)軸心、dh…(圧入保持部の)内径寸法、G…膨張用ガス。