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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/217 20110101AFI20221206BHJP
   B60R 21/206 20110101ALI20221206BHJP
【FI】
B60R21/217
B60R21/206
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019060026
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157955
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 稔
(72)【発明者】
【氏名】尾方 哲也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直紀
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523992(JP,A)
【文献】特開平10-203290(JP,A)
【文献】特表2012-508133(JP,A)
【文献】特開2001-301558(JP,A)
【文献】特開2000-033843(JP,A)
【文献】特開2009-073236(JP,A)
【文献】特開2008-094188(JP,A)
【文献】特開2018-167796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、及び、前記エアバッグと前記インフレーターとを保持して、搭載部位に取り付けられる取付ベース、を備えて構成されるエアバッグ装置であって、
前記インフレーターが、先端側に、膨張用ガスを吐出させるガス吐出部を配設させた略円柱状とし、
前記エアバッグが、折り畳まれた状態から膨張用ガスを流入させて膨張する本体部と、該本体部と連通され、前記インフレーターの先端側を挿入させて、前記インフレータからの膨張用ガスを前記本体部に流入させる筒状の流入口部と、を備え、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部の周囲を前記インフレーター側に押圧するように巻き付け可能な巻付部を前記流入口部に配設させて構成され、
前記取付ベースが、板金製として、表面側に、折り畳んだ前記本体部を配置させ、裏面側に、前記流入口部と該流入口部に挿入させた前記インフレーターとを配置させて保持する保持板部、を備え、
該保持板部が、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部の周囲を囲うように、前記インフレーターの軸心の周囲でずれた位置に配置される押圧部と支持部と、を有する構成とし、
前記押圧部が、カシメて、前記支持部側に接近するように塑性変形可能に構成されて、
前記押圧部と前記支持部との間に挿入された前記インフレーターの先端側と、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記エアバッグの流入口部と、が、カシメられた前記押圧部と前記支持部とに挟持されて、前記取付ベースに保持される構成とされ、
前記取付ベース又は前記インフレーターに、前記巻付部の巻き付け状態を維持可能に、前記巻付部の端末に設けられた被係止部を係止する係止部が配設されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記保持板部が、
前記押圧部を、前記インフレーターの先端側に配置させ、前記支持部を、前記インフレーターの軸心に沿う方向で、前記押圧部とずれて配置させるとともに、前記インフレーターの軸心に沿う方向で前記支持部を間にした前記押圧部から離れた位置に、前記インフレーターの軸心側に押圧するようにカシメて、前記インフレーターを前記支持部側に圧接させる第2の押圧部、を配設させて、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグが、前記流入口部の内周側に、前記インフレーターの前記ガス吐出部から吐出される膨張用ガスの前記流入口部外への流出を防止可能に、流出する膨張用ガスの圧力により前記インフレーターの外周面に密着する逆止弁用の可撓性を有したシート材、を配設させていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記保持板部の前記支持部が、周囲の一般部から突出して、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部に圧接されるビード、を配設させて構成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置に関し、詳しくは、エアバッグとインフレーターとを簡便に取付ベースに組み付けることができるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、膝保護用のエアバッグ装置では、膨張用ガスを流入させて折畳状態から膨張するエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、エアバッグとインフレーターとを保持して、搭載部位に取り付けられる取付ベースとしてのケースと、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。さらに、このエアバッグ装置では、インフレーターが、膨張用ガスを吐出する略円柱状のインフレーター本体と、インフレーター本体を保持する略円筒状のリテーナと、を備えて構成されるとともに、リテーナとインフレーター本体とから突設されるボルトを利用して、エアバッグとインフレーターとをケースに取付固定していた。すなわち、このエアバッグ装置では、折り畳まれたエアバッグの内部に、インフレーター本体とリテーナとを配設させ、インフレーター本体とリテーナとから延びる各ボルトを、エアバッグ外に突出させて、突出させたボルトを、折り畳んだエアバッグを収納したケースの底壁部位から突出させ、そして、各ボルトの先端にナットを締結させて、インフレーターとエアバッグとをケースに組み付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-167796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエアバッグ装置では、複数のボルトとナットとを利用して、取付ベースとしてのケースに対し、エアバッグとインフレーターとを組み付ける構成としており、部品点数が多く、コストや重量を増加させ、さらに、複数のボルトにナットを締結する作業が必要となって、簡便に組み付け難かった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、構成部品点数を低減できて、軽量化を図ることができるとともに、簡便に組み付けることができるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置では、膨張用ガスを流入させて折畳状態から膨張するエアバッグ、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、及び、前記エアバッグと前記インフレーターとを保持して、搭載部位に取り付けられる取付ベース、を備えて構成されるエアバッグ装置であって、
前記インフレーターが、先端側に、膨張用ガスを吐出させるガス吐出部を配設させた略円柱状とし、
前記エアバッグが、折り畳まれた状態から膨張用ガスを流入させて膨張する本体部と、該本体部と連通され、前記インフレーターの先端側を挿入させて、前記インフレータからの膨張用ガスを前記本体部に流入させる筒状の流入口部と、を備えて構成され、
前記取付ベースが、板金製として、表面側に、折り畳んだ前記本体部を配置させ、裏面側に、前記流入口部と該流入口部に挿入させた前記インフレーターとを配置させて保持する保持板部、を備え、
該保持板部が、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部の周囲を囲うように、前記インフレーターの軸心の周囲でずれた位置に配置される押圧部と支持部と、を有する構成とし、
前記押圧部が、カシメて、前記支持部側に接近するように塑性変形可能に構成されて、
前記押圧部と前記支持部との間に挿入された前記インフレーターの先端側と、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記エアバッグの流入口部と、が、カシメられた前記押圧部と前記支持部とに挟持されて、前記取付ベースに保持される構成としていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置では、折り畳んだエアバッグの本体部から延びる流入口部を、取付ベースの保持板部の裏面側における押圧部と支持部との間に配置させるとともに、流入口部内にインフレーターの先端側を挿入させ、そして、押圧部をカシメて塑性変形させれば、インフレーターの先端側を挿入させたエアバッグの流入口部が、カシメられた押圧部と支持部とに挟持されて、取付ベースに組み付けられて保持される。このような組付構造では、ボルトやナットを使用せずに、単に、流入口部の周囲に配置される押圧部をカシメて塑性変形させるだけで、簡便に組み付けることができる。
【0008】
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、構成部品点数を低減できて、軽量化を図ることができるとともに、単に、押圧部をカシメるだけで、取付ベースに対してエアバッグとインフレーターとを簡便に組み付けることができる。
【0009】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、前記保持板部が、
前記押圧部を、前記インフレーターの先端側に配置させ、前記支持部を、前記インフレーターの軸心に沿う方向で、前記押圧部とずれて配置させるとともに、前記インフレーターの軸心に沿う方向で前記支持部を間にした前記押圧部から離れた位置に、前記インフレーターの軸心側に押圧するようにカシメて、前記インフレーターを前記支持部側に圧接させる第2の押圧部、を配設させて、構成されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、インフレーターの軸方向に沿って、2箇所の押圧部と1箇所の支持部との複数個所で、インフレーターとエアバッグの流入口部とが支持されることから、安定して、インフレーターとエアバッグの流入口部とが、取付ベースの保持板部に保持される。
【0011】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、前記エアバッグが、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部の周囲を、前記インフレーター側に押圧するように巻き付け可能な巻付部、を、前記流入口部に、配設させて構成され、
前記取付ベース若しくは前記インフレーターに、前記巻付部の巻き付け状態を維持可能に、前記巻付部の端末に設けられた被係止部を係止する係止部が、配設されていてもよい。
【0012】
このような構成では、被係止部を設けた端末を周囲の係止部に係止させて、巻付部が解けを防止して巻付状態を維持すれば、この巻付部により、エアバッグの流入口部が、インフレーターの外周面に押圧されることから、インフレーターの外周面に流入口部の内周側が密着して良好なガスシール性を発揮し、押圧部と支持部とがインフレーターの外周面における周方向の全周を良好にシールできる構成でなくとも、的確に、膨張用ガスの漏れを防止できる。
【0013】
さらに、本発明に係るエアバッグ装置では、前記エアバッグが、前記流入口部の内周側に、前記インフレーターの前記ガス吐出部から吐出される膨張用ガスの前記流入口部外への流出を防止可能に、流出する膨張用ガスの圧力により前記インフレーターの外周面に密着する逆止弁用の可撓性を有したシート材、を配設させていてもよい。
【0014】
このような構成では、エアバッグの流入口部の内周側に、シート材からなる逆止弁が配設されており、押圧部と支持部とがインフレーターの外周面における周方向の全周を良好にシールできる構成でなくとも、流入口部から流出しようとする膨張用ガスの圧力により、逆止弁を構成するシート材が、インフレーターの外周面に密着され、良好なガスシール性を発揮することから、的確に、膨張用ガスの漏れを防止できる。
【0015】
そしてまた、本発明に係るエアバッグ装置では、前記保持板部の前記支持部が、周囲の一般部から突出して、前記インフレーターの先端側を挿入させた前記流入口部に圧接されるビード、を配設させて構成されていてもよい。
【0016】
このような構成では、圧接される挟持部位が、狭いエリアとなって、位置ずれせずに一定位置となることから、エアバッグ装置毎のインフレーターや流入口部の支持部による支持を、安定させることができる。また、ビードの配置として、インフレーターの外周面の周方向に沿って配置させれば、ビードを利用して、流入口部を、インフレーターの周方向に沿った外周面に圧接させることも可能となり、カシメる押圧部の部位と協働して、流入口部のガスシール性を良好にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る一実施形態の膝保護用のエアバッグ装置の車両搭載状態を示す概略縦断面図である。
図2】実施形態のエアバッグ装置の裏面側(上面側)から見た概略斜視図である。
図3】実施形態のエアバッグ装置の概略分解斜視図である。
図4】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、左右方向に沿った概略縦断面図である。
図5】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、図4のV-V部位に対応する。
図6】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、図4のVI-VI部位に対応する。
図7】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、図4のVII-VII部位に対応する。
図8】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、図4のVIII-VIII部位に対応する。
図9】実施形態のエアバッグの流入口部の巻付部の巻付状態を説明する図である。
図10】実施形態のエアバッグの流入口部に、逆止弁用のシール材を設けた場合の作用を説明する図である。
図11】実施形態の取付ベースの保持板部に設けたビードの変形例を説明する図である。
図12】実施形態のエアバッグにおける巻付部の変形例を示す図である。
図13】実施形態のエアバッグにおける巻付部の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1に示すように、実施形態のエアバッグ装置9は、膝保護用のものであり、助手席の前方のインストルメントパネル(適宜、インパネと略す)6の下部側、詳しくは、インパネ6の下部側に配設されたグラブボックス7の下方に、搭載されている。グラブボックス7は、ボックス本体7aと、ボックス本体7aの後方を塞ぐドア部7bと、を備え、ドア部7bは、上縁側を後方に回転させるように開き可能として配設されている。さらに、グラブボックス7の下方には、アンダーカバー8が配設されて、アンダーカバー8の開口8aに、エアバッグ装置9における後述するエアバッグカバー70の扉配設壁部71を配設させて、エアバッグ装置9が、助手席の前方の下方側に、搭載されている。
【0019】
エアバッグ装置9は、図1~8に示すように、助手席に着座した乗員の膝を保護するように膨張用ガスを流入させて折畳状態から膨張するエアバッグ10と、エアバッグ10に膨張用ガスG(図4参照)を供給するインフレーター20と、エアバッグ10及びインフレーター20を保持して、搭載部位としての助手席の前下方側に取り付けられる取付ベース30と、折り畳んだエアバッグ10を覆って取付ベース30に保持されるエアバッグカバー70と、を備えて構成されている。
【0020】
なお、本明細書での前後、上下、及び、左右の各方向は、車両搭載状態の方向に略対応するもので、図1~3に示すように、取付ベース30の略長方形形状の保持板部31における長尺方向を左右の方向とし、短尺方向を前後の方向として、保持板部31の直交方向を上下の方向として、説明する。
【0021】
エアバッグ10は、図1,3,4,9に示すように、折り畳まれた状態から膨張用ガスGを流入させて膨張する本体部11と、本体部11と連通され、インフレーター20の先端20a側を挿入させて、インフレーター20からの膨張用ガスを本体部11に流入させる筒状(実施形態では円筒状)の流入口部12と、を備えて構成されている。なお、本体部11の流入口部12側には、本体部11の周壁の構成材料が延びて、本体部11と流入口部12とを連結する連結シート部12cが配設されて(図4,6,9参照)、取付ベース30に保持される流入口部12側から延びる連結シート部12cにより、膨張時の本体部11の左右の揺動を、極力、抑制できるように、構成されている。
【0022】
本体部11は、図1の二点鎖線に示すように、膨張時、エアバッグカバー70の後述する扉部72(F,B)を押し開いて取付ベース30から後上方向に突出し、乗員の左右の膝の前方で、アンダーカバー8やドア部7b、さらには、インパネ6におけるドア部7bの左右両側の部位に沿うような略長方形板状に膨張する。膨張完了時の本体部11は、取付ベース30から下方に突出する下部11bと、下部11bから上方へ反転する反転部11cと、乗員の膝の前方側に配設される上部11aと、を備える。
【0023】
流入口部12には、端末の開口13近傍に、巻付部15が配設されている。巻付部15は、エアバッグ10の流入口部12の素材(ポリエステルやポリアミド等の合成繊維から織成されたバッグ用基布)と一体的(一体的に織られて形成されたり、あるいは、別途、流入口部12に対して縫合により一体的としたものを含む)に形成されて、インフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12の外周面12a側に巻付可能な可撓性を有した帯状としている。巻付部15の端末(先端)16には、流入口部12に巻き付けた巻付部15の巻付状態を維持できるように、取付ベース30に設けられた係止部としての係止突起59(図5参照)を挿入させる被係止部としての係止孔17、が形成されている。
【0024】
なお、エアバッグ10の本体部11は、折り畳まれた状態として、取付ベース30の後述する保持板部31の表面(下面)31a側に配置され、本体部11から延びる流入口部12は、保持板部31の後述する挿通孔35を経て、保持板部31の裏面(上面)31b側に配置される。そして、挿通孔35を挿通した流入口部12は、インフレーター20の先端20a側を挿入させた状態で、インフレーター20とともに、保持板部31に組み付けられて保持される。
【0025】
インフレーター20は、略円柱状として、先端20aに、膨張用ガスGを吐出する複数のガス吐出口22aを設けたガス吐出部22を配設させて構成されている。なお、インフレーター20の元部20b側の端面には、作動信号を入力させるための作動用信号線LWを結合させるコネクタ24が、配設されている(図4参照)。
【0026】
取付ベース30は、鋼板等の板金製として、略長方形板状の保持板部31を備えて構成されている。保持板部31は、前縁側に、左右方向に沿って、エアバッグ10の流入口部12とインフレーター20とを組み付ける組付座32を配設させ、組付座32の周囲を、略平板状として、折り畳まれたエアバッグ10の本体部11を支持する支持座51、としている。
【0027】
組付座32は、エアバッグ10の流入口部12とインフレーター20とを収納可能に、下方へ半割り円柱状に凹む凹部32aを設けて構成されている。そして、組付座32は、凹部32aを覆うように、支持座51から上方へ突出するカバー部33、押圧部37,45を配設させるとともに、凹部32aを形成するように、支持座51から下方へ凹む支持部41,49を配設させている。さらに、組付座32は、左端側に、上下を貫通する挿通孔35を配設させて構成されている。
【0028】
挿通孔35は、既述したように、エアバッグ10の本体部11から延びる流入口部12を挿通させる。
【0029】
カバー部33は、流入口部12に挿入させたインフレーター20の先端20aのガス吐出部22付近の周囲の上側を覆って、断面略逆U字状の周壁部33aと、周壁部33aの左端側(先端側)を塞ぐ天井壁部33bと、を備えて構成されている。
【0030】
支持部41,49は、インフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12やインフレーター20の周囲の下側を囲って、流入口部12やインフレーター20を支持する部位である。なお、支持部49は、第2の支持部、すなわち、第2支持部49としている。
【0031】
この第2支持部49は、カバー部33から離れた組付座32の右端側に配置されるもので、インフレーター20のガス吐出部23から離れた元部20bの外周面21における下側21bを覆うような半割り円筒状として、内周面49aにより、インフレーター20の元部20b側における外周面21の下側21bを支持できるように配設されている(図8参照)。
【0032】
支持部41は、組付座32の左右方向の中央付近に配置されるもので、インフレーター20を挿入させた流入口部12の開口13付近と、流入口部12から突出するインフレーター20の外周面21と、の下側を覆うような半割り円筒状として、流入口部12を介在させたり、あるいは、流入口部12を介在させない状態のインフレーター20の外周面21の下側21bを、支持できるように配設されている。また、支持部41は、一般部42から内周側に突出するビード43を配設させている。図例のビード43は、インフレーター20の軸心(軸方向)ICに沿って配設されるとともに、前後に離れて二つ配設されている。
【0033】
なお、第2支持部49にも、支持部41と同様に、内周面49a側にビード43が配設されている。
【0034】
押圧部37は、挿通孔35と支持部41との間に配設された略半割り円筒状として、内周側を縮径させるようにカシメて塑性変形させる断面逆U字状のカシメ部38と、カシメ部38の両端から支持座51側に連結される帯状の縮径部39と、を備えて構成されている。押圧部37は、カシメ部38をカシメて、縮径部39を、支持部41側(インフレーター20の軸心IC側)に接近させると、押圧部37と支持部41との間に挿入させたインフレーター20を、流入口部12を介在させた状態で、縮径部39の内周面39aと支持部41の内周面41a(特に、ビード43の部位)とで、挟持することとなる。
【0035】
押圧部45は、第2の押圧部、すなわち、第2押圧部45であり、この第2押圧部45は、支持部41と第2支持部49との間に配設された略半割り円筒状として、押圧部37と同様に、内周側を縮径させるようにカシメて塑性変形させる断面逆U字状のカシメ部46と、カシメ部46の両端から支持座51側に連結される帯状の縮径部47と、を備えて構成されている。押圧部45は、カシメ部46をカシメて、縮径部47を、支持部41,49側(インフレーター20の軸心IC側)に接近させると、押圧部45と支持部41,49との間に挿入させたインフレーター20を、縮径部47の内周面47aと支持部41,49の内周面41a,49a(特に、ビード43の部位)とで、挟持することとなる。
【0036】
なお、実施形態の場合、インフレーター20を挿入させたエアバッグ10の流入口部12は、第2押圧部45のエリアまでは到達しないように設定されている。
【0037】
以上のように、組付座32では、組み付けるインフレーター20の軸心(軸方向)ICに沿って、左端側から順に、カバー部33、挿通孔35、押圧部37、支持部41、第2押圧部45、及び、第2支持部49が配設されて、平板状の板金素材からプレス加工により、穴や凹凸を設けて、容易に、組付座32を設けた保持板部31を形成することができる。
【0038】
取付ベース30における保持板部31の左右両側には、エアバッグ装置9を搭載部位に取り付けるための取付ブラケット部53(L,R)が形成されている。取付ブラケット部53(L,R)には、取付孔53aが貫通されており、取付孔53aを貫通するボルト3をボディ1側のブラケット2にナット4止めすることにより、エアバッグ装置9をグラブボックス7の下方における助手席の前下側に搭載することができる。取付ブラケット部53(L,R)の前後の縁には、補強用のリブ57が上方へ突設されている。
【0039】
また、取付ベース30は、支持座51の前後の縁に、エアバッグカバー70の連結凸部76を挿入させて連結保持する連結凹部55が、開口されている。
【0040】
さらに、支持座51の上面側における支持部41の近傍に、巻付部15の端末16の被係止部としての係止孔17に挿入させて、端末16を係止する係止部としての係止突起59が、突設されている。
【0041】
エアバッグカバー70は、図3~8に示すように、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製として、長方形板状の扉配設壁部71と、扉配設壁部71の前後の縁から上方に延びる連結壁部75(F,B)と、を備えて構成されている。扉配設壁部71には、左右方向に沿う薄肉の破断予定部73が配設されて、エアバッグ10の本体部11の膨張時、破断予定部73を破断させて、前後両側に開く扉部72(F,B)が配設されている。前後の連結壁部75(F、B)は、上端に、取付ベース30の連結凹部55に挿入係止される複数の連結凸部76が、配設されている。
【0042】
実施形態のエアバッグ装置9の組立作業を説明すると、まず、エアバッグ10の本体部11を折り畳んで、折り崩れ防止用の図示しないラッピング材で包む。ついで、エアバッグ10の本体部11を取付ベース30の保持板部31の表面31a側に配置させて、流入口部12を挿通孔35を経て保持板部31の裏面31b側に取り出すとともに、エアバッグカバー70により、本体部11を包むようにして、連結壁部75F,75Bの各連結凸部76を、保持板部31の対応する連結凹部55に挿入係止する。
【0043】
そして、挿通孔35を挿通させた流入口部12を、カシメ前の押圧部37の内周側に配置させ、ついで、インフレーター20の先端20a側を流入口部12内に挿入し、巻付部15を、インフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12に巻き付け、ついで、インフレーター20の元部20b側を、第2押圧部45内に挿入させる。その後、押圧部37,45のカシメ部38,46をカシメて各縮径部39,47を支持部41,49側に接近させれば、インフレーター20と、インフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12とが、押圧部37,45と支持部41,49とに挟持されて、保持板部31に組み付けられるとともに、取付ベース30に保持されて、エアバッグ装置9を組み立てることができる。なお、巻付部15の端末16は、カシメ部38,46をカシメた後、係止突起59を係止孔17に挿入させて、係止突起59に係止させる。
【0044】
また、巻付部15の巻き付けとしては、予め、挿通孔35と押圧部37とを挿通させた流入口部12に対して、ある程度、緩く、巻付部15を巻き付けておき、そして、インフレーター20の先端20aを、押圧部45内を挿通させ、さらに、流入口部12内に挿入させた後、端末16を係止突起59に係止させるとともに、カシメ部38,46をカシメるようにしてもよい。
【0045】
エアバッグ装置9を組み立てた後には、インフレーター20の元部20b側のコネクタ24に、作動用信号線LWを結線するとともに、取付ベース30の取付ブラケット部53(L,R)を、ボルト3とナット4とを利用して、ボディ1側のブラケット2に取り付ければ、エアバッグ装置9を、グラブボックス7の下方の所定の搭載部位に搭載することができる。
【0046】
エアバッグ装置9の搭載後、インフレーター20が作動すれば、ガス吐出部22のガス吐出口22aから膨張用ガスGが吐出され、エアバッグ10が、流入口部12を経て流入された膨張用ガスGにより、本体部11を、展開膨張させ、エアバッグカバー70の扉部72F,72Bを押し開いて、助手席の乗員の膝の前方側に、配置させることとなる。
【0047】
そして、実施形態のエアバッグ装置9では、折り畳んだエアバッグ10の本体部11から延びる流入口部12を、取付ベース30の保持板部31の裏面31b側における押圧部37,45と支持部41,49との間に配置させるとともに、流入口部12内にインフレーター20の先端20a側を挿入させ、そして、押圧部37,45のカシメ部38,46をカシメて塑性変形させれば、インフレーター20の先端20a側を挿入させたエアバッグ10の流入口部12が、カシメられた押圧部37、45と支持部41,49とに挟持されて、取付ベース30に組み付けられて保持される。このような組付構造では、ボルトやナットを使用せずに、単に、流入口部12の周囲に配置される押圧部37,45をカシメて塑性変形させるだけで、簡便に組み付けることができる。
【0048】
したがって、実施形態のエアバッグ装置9では、構成部品点数を低減できて、軽量化を図ることができるとともに、単に、押圧部37,45をカシメるだけで、取付ベース30に対してエアバッグ10とインフレーター20とを簡便に組み付けることができる。
【0049】
そして、実施形態では、保持板部31が、押圧部37を、インフレーター20の先端20a側に配置させ、支持部41を、インフレーター20の軸心(軸方向)ICに沿う方向で、押圧部37からずれて配置させるとともに、インフレーター20の軸心ICに沿う方向で支持部41を間にした押圧部37から離れた位置に、インフレーター20の軸心IC側に押圧するようにカシメて、インフレーター20を支持部41側に圧接させる第2の押圧部45、を配設させて、構成されている。
【0050】
そのため、実施形態では、インフレーター20の軸方向に沿って、2箇所の押圧部37,45と1箇所の支持部41との複数個所で、インフレーター20とエアバッグ10の流入口部12とが支持されることから、安定して、インフレーター20とエアバッグ10の流入口部12とが、取付ベース30の保持板部31に保持される。
【0051】
なお、上記の点を考慮せずに、流入口部12を押圧部45を越えるエリアまで延ばすような構成として、2箇所の支持部41,49と、支持部41,49間の1箇所の押圧部45とにより、インフレーター20とエアバッグ10の流入口部12とを保持するように構成してもよい。
【0052】
勿論、一つずつの押圧部37と支持部41とにより、インフレーター20とエアバッグ10の流入口部12とを保持するように構成してもよい。この場合、インフレーター20の軸心ICに沿ってずらすこと無く、押圧部37と支持部41とを、インフレーター20の先端20a側に配置させて、1箇所ずつの押圧部37と支持部41とにより、インフレーター20とインフレーター20の先端20a側を挿入させたエアバッグ10の流入口部12と、を挟持するように構成してもよい。このような場合の構成としては、板金素材をプレス加工せずに、別途、押圧部37を、保持板部31に対して、溶接等により固着させて、配設すればよい。
【0053】
また、実施形態では、エアバッグ10が、インフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12の周囲を、インフレーター20側に押圧するように巻き付け可能な巻付部15、を、流入口部12に、配設させて構成され、取付ベース30若しくはインフレーター20に(実施形態では取付ベース30に)、巻付部15の巻き付け状態を維持可能に、巻付部15の端末16に設けられた被係止部としての係止孔17を係止する係止部としての係止突起59が、配設されている。
【0054】
そのため、実施形態では、被係止部としての係止孔17を設けた端末16を周囲の係止部としての係止突起59に係止させて、巻付部15が解けを防止して巻付状態を維持すれば(図5参照)、この巻付部15により、エアバッグ10の流入口部12が、インフレーター20の外周面21に押圧されることから、インフレーター20の外周面21に流入口部12の内周面12b側が密着して良好なガスシール性を発揮し、押圧部37と支持部41とがインフレーター20の外周面21における周方向の全周を良好にシールできる構成でなくとも、的確に、膨張用ガスGの漏れを防止できる。
【0055】
なお、実施形態では、係止部としての係止突起59を取付ベース30側に設けたが、インフレーター20の外周面21側に、係止部としての係止突起59を設けてもよい。
【0056】
また、インフレーター20の外周面21側におけるガスシール性を良好にする場合には、図10に示すエアバッグ装置9Aのように構成してもよい。このエアバッグ装置9Aでは、エアバッグ10Aが、流入口部12Aの内周面12b側に、インフレーター20のガス吐出部22から吐出される膨張用ガスGの流入口部12A外への流出を防止可能に、流出する膨張用ガスGの圧力によりインフレーター20の外周面21に密着する逆止弁用の可撓性を有したシート材18、を配設させている。シート材18は、ガス吐出部22側の先端18a側を、ガス吐出部22から離れる元部18b側より、内径寸法を狭めるように、構成されている。
【0057】
そのため、このエアバッグ装置9Aでは、エアバッグ10Aの流入口部12Aの内周面12b側に、シート材18からなる逆止弁19が配設されており、押圧部37と支持部41とがインフレーター20の外周面21における周方向の全周を良好にシールできる構成でなくとも、流入口部12Aから流出しようとする膨張用ガスGの圧力により、逆止弁19を構成するシート材18の先端18aから中間部18c付近が、図10のB,Cに示すように、インフレーター20の外周面21に密着され、良好なガスシール性を発揮することから、的確に、膨張用ガスGの漏れを防止できる。
【0058】
また、実施形態では、保持板部31の支持部41が、周囲の一般部42から突出して、インフレーター20の先端20a側を挿入させた流入口部12に圧接されるビード43、を配設させて構成されている。
【0059】
そのため、実施形態では、図5に示すように、圧接される流入口部12の挟持部位14が、狭いエリアとなって、位置ずれせずに一定位置となることから、エアバッグ装置9毎のインフレーター20や流入口部12の支持部41による支持を、安定させることができる。
【0060】
なお、実施形態では、ビード43として、インフレーター20の軸心IC周りで離れて複数配設させ、かつ、インフレーター20の軸心ICに沿って、長く延びる配置としたが、図11に示すエアバッグ装置9Bのように、取付ベース30Bの保持板部31Bに設けるビード43Bを、インフレーター20の外周面21の周方向に沿って配置させれば、ビード43Bを利用して、流入口部12を、インフレーター20の周方向に沿った外周面21の下側21bに圧接させることも可能となり、カシメる押圧部37の縮径部39における内周面39aの部位と協働して、流入口部12のガスシール性を良好にすることもできる。
【0061】
なお、実施形態では、エアバッグ10の流入口部12に設けた巻付部15を、支持座51の前縁側に設けた係止突起59に係止させて、巻付部15の巻付状態を維持する場合を示したが、図12に示すように、インフレーター20の前方側の支持座51に設けた係止部としての係止突起59Cを、端末16の係止孔17に挿入させて、巻付部15Cを係止突起59Cに係止させて、巻付部15Cの巻付状態を維持させてもよい。ちなみに、この係止突起59Cは、支持座51に設けたピンやボルト等から形成してもよいし、あるいは、図13に示すように、支持座51から切り起こして係止突起59Dを形成してもよく、巻付部15Dの端末16の被係止部としての係止孔17に、係止部としての係止突起59Dを挿入させて、巻付部15Dを係止突起59Dに係止させ、そして、巻付部15Dの巻付状態を維持するように構成してもよい。
【0062】
また、実施形態では、助手席の乗員の膝を保護するための膝保護用のエアバッグ装置9について説明したが、エアバッグの流入口部にインフレーターを挿入させて、取付ベースに組み付けるエアバッグ装置であれば、膝保護用エアバッグ装置に限定されること無く、助手席の乗員の上半身を保護する助手席用エアバッグ装置等に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
9,9A,9B…(膝保護用)エアバッグ装置、10,10A…エアバッグ、
11…本体部、12,12A…流入口部、15,15C,15D…巻付部、16…端末、17…(被係止部)係止孔、18…シート材、19…逆止弁、20…インフレーター、
20a…先端、21…外周面、22…ガス吐出部、30,30B…取付ベース、
31,31B…保持板部、37…押圧部、41…支持部、42…一般部、43,43B…ビード、45…第2押圧部、49…第2支持部、59,59C,59D…(係止部)係止突起、IC…(インフレーターの)軸心、G…膨張用ガス。
図1
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