(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】自動二輪車
(51)【国際特許分類】
B62M 7/02 20060101AFI20221206BHJP
F02M 35/024 20060101ALI20221206BHJP
F02M 35/16 20060101ALI20221206BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20221206BHJP
B62J 99/00 20200101ALI20221206BHJP
【FI】
B62M7/02 D
F02M35/024 521E
F02M35/16 M
F01M13/00 Z
B62J99/00
B62M7/02 W
(21)【出願番号】P 2019070638
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100161953
【氏名又は名称】松井 敬直
(72)【発明者】
【氏名】福井 章仁
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-247468(JP,A)
【文献】実開昭59-170667(JP,U)
【文献】実開昭62-138809(JP,U)
【文献】実開昭57-97171(JP,U)
【文献】特開2002-70521(JP,A)
【文献】特開2000-179406(JP,A)
【文献】特開2005-120916(JP,A)
【文献】特開2005-98303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 1/00 - 29/02
B62J 1/00 - 99/00
F01M 11/00 - 13/06
F02M 35/00 - 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸気ポートが設けられるシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドに上方から結合するヘッドカバーと、
前記ヘッドカバーの上方に配置されるエアクリーナと、
前記エアクリーナの上方を覆う燃料タンクと、
前記各吸気ポートの吸気量を調節するスロットル装置と、
前記エアクリーナと前記スロットル装置を接続する複数のアウトレットチューブと、
前記スロットル装置と前記各吸気ポートを接続する複数のインテークパイプと、を備え、
前記各アウトレットチューブは、後上方に向けて膨らむように湾曲する湾曲部を備え、前記湾曲部の上端部は、前記エアクリーナの後面に前方に向けて取り付けられ、前記湾曲部の下端部は、前記スロットル装置に下方に向けて取り付けられ、
前記エアクリーナの前記後面には、隣り合う一対の前記アウトレットチューブの前記湾曲部の間に、ブリーザ室が設けられていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記ブリーザ室の上端部は、前記各アウトレットチューブよりも上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記エアクリーナの前記後面には、前記各アウトレットチューブの取付部が設けられ、
前記取付部から前記エアクリーナの前記後面の車幅方向両端部までの距離は、前記取付部から前記エアクリーナの前記後面の車幅方向中央部までの距離よりも短いことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
車両後面視で、前記湾曲部の前記下端部は、前記湾曲部の前記上端部よりも車幅方向内側に位置していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記エアクリーナは、
前記湾曲部の前記上端部が取り付けられるクリーナケースと、
前記クリーナケースの内部をダーティサイドとクリーンサイドに区画するフィルタと、を備え、
前記ブリーザ室は、隔壁によって前記クリーンサイドから隔てられ、前記隔壁には、前記ブリーザ室と前記クリーンサイドを連通させる連通孔が設けられ、
前記連通孔は、前記湾曲部よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記各アウトレットチューブは、前記湾曲部の前記上端部から前方に延びる延出部を更に備え、
車両上面視で、前記延出部の前端部は、前記フィルタと重なっており、
前記連通孔は、前記延出部の前記前端部よりも後方に位置していることを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記ヘッドカバーと前記ブリーザ室を接続するブリーザホースと、
前記スロットル装置の後面に取り付けられるインジェクタと、を備え、
前記ブリーザホースは、前記スロットル装置の前方を通過するように配管されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記エアクリーナの前記後面に固定されるブリーザケースを備え、
前記ブリーザ室は、前記ブリーザケースの内部に設けられ、
前記エアクリーナは、上下割のクリーナケースを備え、
前記ブリーザケースの下面は、前記クリーナケースの合わせ面の延長線よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車は、エンジンに供給される空気を浄化するためのエアクリーナを備えている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の自動二輪車は、燃料タンクの前部下方で左右一対のメインパイプに挟まれてエアクリーナを配置し、このエアクリーナの後部とエアクリーナの下方に位置するエンジンのシリンダヘッド内の吸気ポートとを燃料噴射装置で連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自動二輪車は、シリンダヘッド内の吸気ポートに対して上方からストレートに空気を送る所謂ダウンドラフト吸気を採用している。その関係で、燃料噴射装置の上端部がエアクリーナの下面に接続されており、燃料噴射装置がエンジンとエアクリーナの間に挟まれるようなレイアウトになっている。
【0006】
しかしながら、このようなレイアウトを採用すると、エンジンとエアクリーナの間隔が燃料噴射装置の高さによる制約を受けることになり、エンジンに対してエアクリーナを十分に近づけることができなくなる。その結果、エアクリーナの位置が高くなってしまい、エアクリーナの上方に配置される燃料タンクの位置も高くなってしまう。これに伴って、ライディングポジションや車両デザインに対する制約が大きくなる恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、ライディングポジション及び車両デザインの自由度を向上させつつ、ブリーザ性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自動二輪車は、複数の吸気ポートが設けられるシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドに上方から結合するヘッドカバーと、前記ヘッドカバーの上方に配置されるエアクリーナと、前記エアクリーナの上方を覆う燃料タンクと、前記各吸気ポートの吸気量を調節するスロットル装置と、前記エアクリーナと前記スロットル装置を接続する複数のアウトレットチューブと、前記スロットル装置と前記各吸気ポートを接続する複数のインテークパイプと、を備え、前記各アウトレットチューブは、後上方に向けて膨らむように湾曲する湾曲部を備え、前記湾曲部の上端部は、前記エアクリーナの後面に前方に向けて取り付けられ、前記湾曲部の下端部は、前記スロットル装置に下方に向けて取り付けられ、前記エアクリーナの前記後面には、隣り合う一対の前記アウトレットチューブの前記湾曲部の間に、ブリーザ室が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ライディングポジション及び車両デザインの自由度を向上させつつ、ブリーザ性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例に係る自動二輪車を示す左側面図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るエンジン及び吸気装置を示す左側面図である。
【
図3】本発明の一実施例に係るエンジン及び吸気装置を示す後面図である。
【
図5】本発明の一実施例に係るヘッドカバーを示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施例に係るエンジン及び吸気装置を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る自動二輪車では、各アウトレットチューブの湾曲部が後上方に向けて膨らむように湾曲しており、湾曲部の上端部がエアクリーナの後面に前方に向けて取り付けられ、湾曲部の下端部がスロットル装置に下方に向けて取り付けられている。このような構成を採用することで、ダウンドラフト吸気を採用しつつ、ヘッドカバーに対してエアクリーナを十分に近づけることができ、エアクリーナ及び燃料タンクの位置が高くなるのを抑制することができる。これに伴って、ライディングポジションと車両デザインの自由度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る自動二輪車では、エアクリーナの後面には、隣り合う一対のアウトレットチューブの湾曲部の間に、ブリーザ室が設けられている。このような構成を採用することで、隣り合う一対のアウトレットチューブの湾曲部の間に形成される隙間を有効に利用して、ブリーザ性能を高めることができる。
【実施例】
【0013】
(自動二輪車1)
以下、図面に基づき、本発明の一実施例に係る自動二輪車1について説明する。以下、前後、左右、上下等の方向を示す語は、自動二輪車1のライダーから見た方向を基準として用いる。各図に適宜付される矢印Fr、Rr、U、Lo、L、Rは、それぞれ自動二輪車1の前方、後方、上方、下方、左方、右方を示している。
【0014】
図1を参照して、自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体フレーム2の前方に配置されるステアリング機構3及び前輪4と、車体フレーム2の後方に配置される左右一対のスイングアーム5及び後輪6と、車体フレーム2の上方に配置される燃料タンク7及びライダーシート8と、車体フレーム2に懸架されるエンジン9と、エンジン9の上方に配置される吸気装置10と、を備えている。以下、自動二輪車1の構成要素について順番に説明する。
【0015】
(車体フレーム2)
図1を参照して、車体フレーム2は、ヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から後方に延びる左右一対のメインフレーム13と、左右一対のメインフレーム13の後端部から下方に延びる左右一対のピボットフレーム14と、左右一対のピボットフレーム14の上部から後方に延びる左右一対のシートレール15と、を備えている。
【0016】
(ステアリング機構3及び前輪4)
図1を参照して、ステアリング機構3は、ヘッドパイプ12によって回転可能に支持されている。ステアリング機構3は、ハンドル装置17と、ハンドル装置17に接続される左右一対のフロントフォーク18と、を備えている。左右一対のフロントフォーク18の下端部には、前輪4が回転可能に支持されている。
【0017】
(左右一対のスイングアーム5及び後輪6)
図1を参照して、左右一対のスイングアーム5の前端部は、左右一対のピボットフレーム14の下部にピボット軸20を介して接続されている。これにより、左右一対のスイングアーム5がピボット軸20を中心に揺動可能となっている。左右一対のスイングアーム5の後端部には、後輪6が回転可能に支持されている。
【0018】
(燃料タンク7及びライダーシート8)
図1を参照して、燃料タンク7は、左右一対のメインフレーム13の上方に位置している。燃料タンク7の下面には、後上方に向けて膨らむように湾曲する湾曲面22が設けられている。ライダーシート8は、燃料タンク7の後方に設けられており、左右一対のシートレール15の上方に位置している。
【0019】
(エンジン9)
図2、
図3を参照して、エンジン9は、例えば、並列2気筒エンジンである。エンジン9は、クランクケース24と、クランクケース24に上方から結合するシリンダ25と、シリンダ25に上方から結合するシリンダヘッド26と、シリンダヘッド26に上方から結合するヘッドカバー27と、を備えている。
【0020】
クランクケース24には、クランク軸29が収容されている。クランク軸29は、車幅方向に延びている。クランク軸29は、クラッチ及び変速機(いずれも図示せず)を介して後輪6(
図1参照)に接続されている。
【0021】
図2、
図3を参照して、シリンダ25には、2個のピストン(図示せず)が収容されている。各ピストンは、コネクティングロッド(図示せず)を介してクランク軸29に接続されている。
【0022】
シリンダ25とシリンダヘッド26の間には、2個の燃焼室31が設けられている。シリンダヘッド26の後面には、各燃焼室31と連通する2個の吸気ポート32が設けられている。2個の吸気ポート32は、車幅方向に並んでいる。シリンダヘッド26の前面には、各燃焼室31と連通する2個の排気ポート33が設けられている。各排気ポート33には、排気装置(図示せず)が接続されている。
【0023】
図4、
図5を参照して、ヘッドカバー27の内部には、ブリーザ空間B1が設けられている。ブリーザ空間B1の下面は、鉄板(図示せず)によって塞がれている。ブリーザ空間B1は、複数のリブ35によって仕切られており、ラビリンス構造を成している。ブリーザ空間B1の右端部には、ブローバイガスの導入口36が設けられており、ブリーザ空間B1の左端部には、ブローバイガスの導出口37が設けられている。なお、
図4、
図5に付される一点鎖線矢印は、ブローバイガスの流れ方向を示している。
【0024】
ヘッドカバー27の上面の左後部には、第1ニップル38が取り付けられている。第1ニップル38の前部は、ヘッドカバー27のブリーザ空間B1の導出口37に挿入されている。第1ニップル38の後部は、ヘッドカバー27の上面の上方に突出している。
【0025】
(吸気装置10)
図2~
図4を参照して、吸気装置10は、シリンダヘッド26の各吸気ポート32に対して上方からストレートに空気を送る所謂ダウンドラフト吸気を採用している。以下、吸気装置10の説明において、「上流側」又は「下流側」と記載する場合には、吸気装置10内における空気の流れ方向(
図4の白抜き矢印参照)における「上流側」又は「下流側」を示す。
【0026】
吸気装置10は、ヘッドカバー27の上方に配置されるエアクリーナ41と、エアクリーナ41の前面に取り付けられるインレットチューブ42と、ヘッドカバー27の後方に配置されるスロットル装置43と、スロットル装置43に取り付けられる左右一対のインジェクタ44と、エアクリーナ41とスロットル装置43を接続する左右一対のアウトレットチューブ45と、スロットル装置43とシリンダヘッド26の各吸気ポート32を接続する左右一対のインテークパイプ46と、エアクリーナ41の後面に固定されるブリーザケース47と、ヘッドカバー27とブリーザケース47を接続するブリーザホース48と、を備えている。以下、吸気装置10の構成要素について順番に説明する。
【0027】
(エアクリーナ41)
図2を参照して、エアクリーナ41は、ヘッドカバー27と燃料タンク7の間に配置されている。エアクリーナ41の前端部は、燃料タンク7の前端部よりも前方に位置している。エアクリーナ41の上方及び後方は、燃料タンク7によって覆われている。
【0028】
図2~
図4を参照して、エアクリーナ41は、クリーナケース50と、クリーナケース50に収容されるフィルタ51と、を備えている。
【0029】
クリーナケース50の後面の上部には、左右一対の後側取付穴52(各アウトレットチューブ45の取付部の一例)が設けられている。各後側取付穴52からクリーナケース50の後面の車幅方向両端部までの距離L1は、各後側取付穴52からクリーナケース50の後面の車幅方向中央部までの距離L2よりも短い。クリーナケース50の前面の下部には、前側取付穴53が設けられている。
【0030】
クリーナケース50の下面の左後部には、凹部54が設けられている。そのため、クリーナケース50の下面の右後部は、クリーナケース50の下面の左後部よりも下方に位置している。クリーナケース50の下面の右後部には、水やオイルを排出するための排水口55が設けられている。排水口55は、ドレンプラグ56によって塞がれている。クリーナケース50の下面の右後部には、排水口55の右方に、二次エア用のニップル57が設けられている。
【0031】
クリーナケース50は、上下割で構成されており、アッパーケース部50aとロアケース部50bを備えている。クリーナケース50の後面には、アッパーケース部50aとロアケース部50bの合わせ面X(以下、「クリーナケース50の合わせ面X」と称する)を含む領域に、突出部58が後方に向かって突出している。
【0032】
フィルタ51は、例えば、蛇腹状に折り曲げられた濾紙によって構成されている。フィルタ51は、枠体59を介してクリーナケース50に取り付けられている。フィルタ51は、クリーナケース50の合わせ面Xに沿って配置されている。フィルタ51は、クリーナケース50の内部をダーティサイドS1(上流側の空間)とクリーンサイドS2(下流側の空間)に区画している。ダーティサイドS1は、フィルタ51の下方に位置しており、クリーンサイドS2は、フィルタ51の上方及び後方に位置している。
【0033】
(インレットチューブ42)
図4を参照して、インレットチューブ42は、クリーナケース50の前面に設けられた前側取付穴53を貫通している。これにより、インレットチューブ42がクリーナケース50の前面に取り付けられている。インレットチューブ42は、車両前後方向に沿って直線状に延びている。インレットチューブ42の前部(上流側の部分)は、クリーナケース50の前面の前方に突出している。インレットチューブ42の後部(下流側の部分)は、クリーナケース50のダーティサイドS1に挿入されており、フィルタ51の下方に位置している。
【0034】
(スロットル装置43)
図2~
図4を参照して、スロットル装置43は、スロットルボディ61と、スロットルボディ61の左方に配置されるスロットルモータ62と、スロットルボディ61の右方に配置されるスロットルポジションセンサ63と、スロットルボディ61に上方から結合するフランジ64と、を備えている。
【0035】
スロットルボディ61の内部には、2個のスロットル通路66が設けられている。2個のスロットル通路66は、車幅方向に並んでいる。スロットルボディ61には、各スロットル通路66内に、2個のスロットルバルブ67が配置されている。
【0036】
スロットルモータ62は、各スロットルバルブ67の開度を変化させることで、シリンダヘッド26の各吸気ポート32の吸気量を調節する。スロットルモータ62の一部は、クリーナケース50の下面に設けられた凹部54に配置されている。
【0037】
スロットルポジションセンサ63は、各スロットルバルブ67の開度を検出する。スロットルポジションセンサ63は、スロットルボディ61を挟んでスロットルモータ62の反対側に配置されている。
【0038】
フランジ64は、スロットルボディ61とは別体に形成されている。フランジ64は、平板状のベース部68と、ベース部68の上面から上方に向かって突出する2個のパイプ部69と、を備えている。ベース部68には、2個の貫通穴(図示せず)が設けられており、各貫通穴を介してスロットルボディ61の各スロットル通路66と各パイプ部69が連通している。
【0039】
(左右一対のインジェクタ44)
図2~
図4を参照して、各インジェクタ44は、スロットルボディ61の後面に取り付けられている。各インジェクタ44は、シリンダヘッド26の各吸気ポート32に向かって燃料を噴射する。各インジェクタ44は、デリバリパイプ71を介して燃料タンク7に接続されている。
【0040】
(左右一対のアウトレットチューブ45)
図2~
図4、
図6を参照して、左右一対のアウトレットチューブ45は、互いに隣り合っている。各アウトレットチューブ45は、曲げパイプによって形成されている。各アウトレットチューブ45は、一体に形成された単一の部分から形成されている。
【0041】
各アウトレットチューブ45は、湾曲部73と、湾曲部73の前端部から前方に延びる延出部74と、を備えている。
【0042】
湾曲部73は、後上方に向けて膨らむように湾曲している。湾曲部73は、燃料タンク7の下面に設けられた湾曲面22と対向している。湾曲部73は、上側(上流側)から下側(下流側)に向かって車幅方向内側に傾斜している。そのため、車両後面視で、湾曲部73の下端部(下流側の端部)は、湾曲部73の上端部(上流側の端部)よりも車幅方向内側に位置している。
【0043】
湾曲部73の上端部は、クリーナケース50の後面に設けられた各後側取付穴52を貫通している。これにより、湾曲部73の上端部がクリーナケース50の後面に前方に向けて取り付けられている。湾曲部73の下端部には、スロットル装置43のフランジ64の各パイプ部69が挿入されている。これにより、湾曲部73の下端部がスロットル装置43のフランジ64に下方に向けて取り付けられている。
【0044】
延出部74は、車両前後方向に沿って直線状に延びている。延出部74は、クリーナケース50のクリーンサイドS2に挿入されている。車両上面視で、延出部74の前端部(上流側の端部)は、フィルタ51と重なっている。
【0045】
(左右一対のインテークパイプ46)
図2~
図4を参照して、各インテークパイプ46の上端部(上流側の端部)は、スロットルボディ61に取り付けられており、スロットルボディ61の各スロットル通路66と連通している。各インテークパイプ46の下端部(下流側の端部)は、シリンダヘッド26の後面に取り付けられており、シリンダヘッド26の各吸気ポート32に接続されている。
【0046】
(ブリーザケース47)
図3、
図4、
図6を参照して、ブリーザケース47は、クリーナケース50とは別体に形成されており、クリーナケース50の後面に溶着によって固定されている。ブリーザケース47は、クリーナケース50の後面から後方に向かって突出している。ブリーザケース47は、後方及び下方に向かって車幅方向の長さが短くなるように形成されている。
【0047】
ブリーザケース47の後端部は、シリンダヘッド26の後端部よりも後方に位置している。ブリーザケース47の後端部は、各アウトレットチューブ45の湾曲部73の後端部よりも前方に位置している。ブリーザケース47の下面は、クリーナケース50の合わせ面Xの延長線Yよりも上方に位置している。ブリーザケース47の下面には、第2ニップル75が下方に向かって突出している。
【0048】
ブリーザケース47の内部には、ブリーザ室B2が設けられている。ブリーザ室B2は、左右一対のアウトレットチューブ45の湾曲部73の間に設けられている。ブリーザ室B2の上端部は、各アウトレットチューブ45よりも上方に位置している。ブリーザ室B2の下面の後端部には、第2ニップル75と連通する流入口76が設けられている。
【0049】
ブリーザケース47のブリーザ室B2は、クリーナケース50の後面によって構成される隔壁77によって、クリーナケース50のクリーンサイドS2から隔てられている。隔壁77の上端部には、ブリーザケース47のブリーザ室B2とクリーナケース50のクリーンサイドS2を連通させる連通孔78が設けられている。連通孔78は、各アウトレットチューブ45の湾曲部73よりも上方に位置している。連通孔78は、各アウトレットチューブ45の延出部74の前端部よりも後方に位置している。
【0050】
(ブリーザホース48)
図2~
図5を参照して、ブリーザホース48は、スロットル装置43の前方を通過するように配管されている。ブリーザホース48は、クリーナケース50の下面に設けられた凹部54を通過するように配管されている。
【0051】
ブリーザホース48の下端部は、ヘッドカバー27の上面に取り付けられた第1ニップル38に取り付けられている。これにより、ブリーザホース48の下端部が第1ニップル38を介してヘッドカバー27のブリーザ空間B1の導出口37に接続されている。ブリーザホース48の上端部は、ブリーザケース47の下面に設けられた第2ニップル75に取り付けられている。これにより、ブリーザホース48の上端部が第2ニップル75を介してブリーザケース47のブリーザ室B2の流入口76に接続されている。このように、ブリーザホース48は、ヘッドカバー27のブリーザ空間B1とブリーザケース47のブリーザ室B2を接続している。
【0052】
(空気の流れ)
エンジン9の駆動時には、自動二輪車1の前方の空気がインレットチューブ42を介してクリーナケース50のダーティサイドS1に吸引される。クリーナケース50のダーティサイドS1に吸引された空気は、フィルタ51によって浄化された後、クリーナケース50のクリーンサイドS2に流入する。
【0053】
クリーナケース50のクリーンサイドS2に流入した空気は、各アウトレットチューブ45の延出部74に吸引され、各アウトレットチューブ45の延出部74と湾曲部73を順次通過した後、フランジ64を介してスロットルボディ61の各スロットル通路66に流入する。スロットルボディ61の各スロットル通路66に流入した空気は、各インテークパイプ46を通過した後、各インジェクタ44から噴射される燃料と共に、シリンダヘッド26の各吸気ポート32を介してエンジン9の各燃焼室31に導入される。
【0054】
(ブローバイガスの流れ)
エンジン9の駆動時には、エンジン9の各燃焼室31からクランクケース24内にブローバイガスが漏出する。このブローバイガスは、導入口36を介してヘッドカバー27のブリーザ空間B1に導入され、ヘッドカバー27のブリーザ空間B1を通過した後、導出口37を介してヘッドカバー27のブリーザ空間B1から導出される。このようにブローバイガスがヘッドカバー27のブリーザ空間B1を通過することで、ブローバイガスからオイルが分離される。
【0055】
ヘッドカバー27のブリーザ空間B1から導出されたブローバイガスは、ブリーザホース48を通過した後、流入口76を介してブリーザケース47のブリーザ室B2に流入する。ブリーザケース47のブリーザ室B2に流入したブローバイガスは、ブリーザケース47のブリーザ室B2を通過した後、隔壁77の連通孔78を介してクリーナケース50のクリーンサイドS2に流入する。このようにブローバイガスがブリーザケース47のブリーザ室B2を通過することで、ブローバイガスからオイルが分離される。クリーナケース50のクリーンサイドS2に流入したブローバイガスは、フィルタ51を通過してクリーナケース50のクリーンサイドS2に流入した空気と共に、各アウトレットチューブ45の延出部74に吸引される。
【0056】
(効果)
本実施例では、吸気装置10は、シリンダヘッド26の各吸気ポート32に対して上方からストレートに空気を送る所謂ダウンドラフト吸気を採用している。このように吸気装置10がダウンドラフト吸気を採用することで、吸気抵抗を減少させることができるため、エンジン9の出力が向上する。
【0057】
また、各アウトレットチューブ45の湾曲部73が後上方に向けて膨らむように湾曲しており、湾曲部73の上端部がクリーナケース50の後面に前方に向けて取り付けられ、湾曲部73の下端部がスロットル装置43に下方に向けて取り付けられている。このような構成を採用することで、ダウンドラフト吸気を採用しつつ、ヘッドカバー27に対してエアクリーナ41を十分に近づけることができ、エアクリーナ41及び燃料タンク7の位置が高くなるのを抑制することができる。これに伴って、ライディングポジションと車両デザインの自由度を向上させることができる。
【0058】
また、上記のように各アウトレットチューブ45の湾曲部73が後上方に向けて膨らむように湾曲することで、各アウトレットチューブ45と燃料タンク7の隙間を詰めやすくなり、燃料タンク7を前方に寄せて配置することができる。これに伴って、車両デザインの自由度を一層向上させることができる。更に、上記のように燃料タンク7を前方に寄せて配置することができるため、燃料タンク7の後方に配置されるライダーシート8も前方に寄せて配置することができる。これに伴って、ハンドル装置17とライダーシート8を近づけることができ、ライダーの姿勢に余裕が出る。
【0059】
また、上記のように、ヘッドカバー27に対してエアクリーナ41を十分に近づけることで、燃料タンク7の位置が高くなるのを抑制することができる。そのため、燃料タンク7の位置が高くなるのを抑制するために燃料タンク7を小さくする必要が無く、燃料タンク7の容量を維持して十分な航続距離を確保することができる。
【0060】
また、クリーナケース50の後面には、隣り合う一対のアウトレットチューブ45の湾曲部73の間に、ブリーザ室B2が設けられている。このような構成を採用することで、隣り合う一対のアウトレットチューブ45の湾曲部73の間に形成される隙間を有効に利用して、ブリーザ性能を高めることができる。
【0061】
また、ブリーザ室B2の上端部は、各アウトレットチューブ45よりも上方に位置している。このような配置を採用することで、ブリーザ室B2の上下長さを十分取ることができるため、ブリーザ室B2の容積を最大限確保することができる。そのため、ブリーザ性能を更に高めることができる。
【0062】
また、各後側取付穴52からクリーナケース50の後面の車幅方向両端部までの距離L1は、各後側取付穴52からクリーナケース50の後面の車幅方向中央部までの距離L2よりも短い。このような構成を採用することで、隣り合う一対のアウトレットチューブ45の湾曲部73の間になるべく大きな隙間を形成することができ、この隙間に設けられるブリーザ室B2の容積を最大限確保することができる。そのため、ブリーザ性能を更に高めることができる。
【0063】
また、車両後面視で、湾曲部73の下端部は、湾曲部73の上端部よりも車幅方向内側に位置している。このような配置を採用することで、隣り合う一対のアウトレットチューブ45の間隔が、下側(エンジン9側)に向かうに従って狭くなる。そのため、2個の吸気ポート32の配置間隔を狭くしてエンジン9をコンパクト化することができ、エンジン9のデザイン性が向上する。
【0064】
また、連通孔78は、湾曲部73よりも上方に位置している。このような配置を採用することで、連通孔78を流入口76から極力遠ざけることができる。そのため、ブリーザ室B2の全体にブローバイガスを行き渡らせることができ、ブリーザ性能を更に高めることができる。
【0065】
また、車両上面視で、延出部74の前端部は、フィルタ51と重なっており、連通孔78は、延出部74の前端部よりも後方に位置している。このような配置を採用することで、連通孔78からクリーンサイドS2に流入するブローバイガスが、フィルタ51を通過してクリーンサイドS2に流入する空気と混ざりやすくなる。そのため、クリーンサイドS2から各アウトレットチューブ45に吸引される空気の成分を均一化することができる。また、延出部74がフィルタ51の上方まで延びることで、各アウトレットチューブ45の全長が長くなり、エンジン9の出力が向上する。
【0066】
また、各インジェクタ44は、スロットル装置43の後面に取り付けられ、ブリーザホース48は、スロットル装置43の前方を通過するように配管されている。このような構成を採用することで、各インジェクタ44とブリーザホース48の干渉を抑制しつつ、ブリーザホース48によってブリーザ空間B1とブリーザ室B2を最短距離で接続することができる。そのため、ブリーザ性能を更に高めることができる。
【0067】
また、ブリーザケース47の下面は、クリーナケース50の合わせ面Xの延長線Yよりも上方に位置している。このような配置を採用することで、ブリーザケース47の下面に設けられる第2ニップル75にブリーザホース48を取り付けやすくなり、ブリーザホース48の組み付け性が向上する。
【0068】
(変形例)
本実施例では、ブリーザケース47がクリーナケース50とは別体に形成されている。一方で、他の異なる実施例では、ブリーザケース47がクリーナケース50と一体に形成されていても良い。
【0069】
本実施例では、クリーナケース50の後面によって隔壁77が構成されている。一方で、他の異なる実施例では、ブリーザケース47の前面によって隔壁77が構成されていても良い。
【0070】
本実施例では、ブリーザ空間B1がヘッドカバー27の内部に設けられている。一方で、他の異なる実施例では、ブリーザ空間B1がクランクケース24の内部に設けられていても良い。
【0071】
本実施例では、並列2気筒エンジンをエンジン9の一例としている。一方で、他の異なる実施例では、並列4気筒エンジンや並列6気筒エンジン等の並列2気筒エンジン以外の多気筒エンジンをエンジン9の一例としても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 自動二輪車
7 燃料タンク
26 シリンダヘッド
27 ヘッドカバー
32 吸気ポート
41 エアクリーナ
43 スロットル装置
44 インジェクタ
45 アウトレットチューブ
46 インテークパイプ
47 ブリーザケース
48 ブリーザホース
50 クリーナケース
51 フィルタ
52 後側取付穴(アウトレットチューブの取付部の一例)
73 湾曲部
74 延出部
78 連通孔
B2 ブリーザ室
L1 後側取付穴からクリーナケースの後面の車幅方向両端部までの距離
L2 後側取付穴からクリーナケースの後面の車幅方向中央部までの距離
S1 ダーティサイド
S2 クリーンサイド
X クリーナケースの合わせ面
Y クリーナケースの合わせ面の延長線