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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20221206BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221206BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B7/00 310
H01B7/00 305
H02G3/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019072879
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020170680
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】黄 強翔
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 大地
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-288312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 7/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、
前記シート上に配置された複数の線状伝送部材と、
を備え、
前記複数の線状伝送部材は複数の第1箇所において前記シートに固定された少なくとも1本の第1線状伝送部材と、複数の第2箇所において前記シートに固定された少なくとも1本の第2線状伝送部材とを含み、
前記第1線状伝送部材及び前記第2線状伝送部材が並行する領域において前記第1箇所と前記第2箇所とが前記線状伝送部材の延在方向に沿って互い違いに設けられており、
前記シートのうち前記第2箇所の側方に位置する部分であって前記第1線状伝送部材と重なる部分は、前記第1線状伝送部材に固定されておらず、かつ、溶着によって前記第1線状伝送部材に固定可能な部分を有し、
前記シートのうち前記第1箇所の側方に位置する部分であって前記第2線状伝送部材と重なる部分は、前記第2線状伝送部材に固定されておらず、かつ、溶着によって前記第2線状伝送部材に固定可能な部分を有する、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記第1箇所において複数の第1線状伝送部材が固定されており、
前記第2箇所において複数の第2線状伝送部材が固定されている、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記シートは、シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含み、
前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、
前記第1箇所における前記部分第2層及び前記第2箇所における前記部分第2層の少なくとも一方の側方に他の線状伝送部材を固定可能な前記部分第2層が存在する、配線部材。
【請求項4】
シートと、
前記シート上に配置された複数の線状伝送部材と、
を備え、
前記複数の線状伝送部材は複数の第1箇所において前記シートに固定された少なくとも1本の第1線状伝送部材と、複数の第2箇所において前記シートに固定された少なくとも1本の第2線状伝送部材とを含み、
前記第1線状伝送部材及び前記第2線状伝送部材が並行する領域において前記第1箇所と前記第2箇所とが前記線状伝送部材の延在方向に沿って互い違いに設けられており、
前記シートは、シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含み、
前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、
前記第1箇所における前記部分第2層及び前記第2箇所における前記部分第2層の少なくとも一方の側方に他の線状伝送部材を固定可能な前記部分第2層が存在する、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は電線における絶縁被覆がシート状の機能性外装部材に溶着されたワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-137208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のワイヤーハーネスにおいて、電線が機能性外装部材に適切に保持された状態を保ちつつ簡易に製造できることが要請される。
【0005】
そこで、線状伝送部材がシートに適切に保持された状態を保ちつつ線状伝送部材がシートに固定された配線部材を製造することが簡易となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、シートと、前記シート上に配置された複数の線状伝送部材と、を備え、前記複数の線状伝送部材は複数の第1箇所において前記シートに固定された少なくとも1本の第1線状伝送部材と、複数の第2箇所において前記シートに固定された少なくとも1本の第2線状伝送部材とを含み、前記第1線状伝送部材及び前記第2線状伝送部材が並行する領域において前記第1箇所と前記第2箇所とが前記線状伝送部材の延在方向に沿って互い違いに設けられている、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、線状伝送部材がシートに適切に保持された状態を保ちつつ線状伝送部材がシートに固定された配線部材を製造することが簡易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態にかかる配線部材を示す平面図である。
図2図2図1のII-II線における概略断面図である。
図3図3図1のIII-III線における概略断面図である。
図4図4図1のIV-IV線における概略断面図である。
図5図5は配線部材において線状伝送部材を取り外す様子を示す説明図である。
図6図6は配線部材において線状伝送部材を付け直す様子を示す説明図である。
図7図7は配線部材の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)シートと、前記シート上に配置された複数の線状伝送部材と、を備え、前記複数の線状伝送部材は複数の第1箇所において前記シートに固定された少なくとも1本の第1線状伝送部材と、複数の第2箇所において前記シートに固定された少なくとも1本の第2線状伝送部材とを含み、前記第1線状伝送部材及び前記第2線状伝送部材が並行する領域において前記第1箇所と前記第2箇所とが前記線状伝送部材の延在方向に沿って互い違いに設けられている、配線部材である。これにより、固定箇所の間隔をあけてもその間の部分が並行する線状伝送部材と絡みにくい。この結果、線状伝送部材がシートに適切に保持された状態を保ちつつ線状伝送部材がシートに固定された配線部材の製造が簡易となる。
【0012】
(2)前記第1箇所において複数の第1線状伝送部材が固定されており、前記第2箇所において複数の第2線状伝送部材が固定されていてもよい。これにより、複数の線状伝送部材が固定される箇所を互い違いに設けることができる。一の固定箇所に複数の線状伝送部材を固定できるため、配線部材の製造が簡易となる。
【0013】
(3)前記シートは、シート状に形成された第1層と、前記第1層の主面に設けられた第2層とを含み、前記第2層は、前記第1層と前記線状伝送部材との接合を仲立ちする層であり、前記線状伝送部材の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられた複数の部分第2層を含み、前記第1箇所における前記部分第2層及び前記第2箇所における前記部分第2層の少なくとも一方の側方に他の線状伝送部材を固定可能な前記部分第2層が存在するものであってもよい。これにより、配線部材において線状伝送部材と接合されていない部分第2層が存在する。配線部材において修理が必要な線状伝送部材をシートから取り外した後、修理品を再度シートに接合する際、空いている部分第2層を用いて接合することができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。図1は実施形態にかかる配線部材10を示す平面図である。なお図1において符号A1、A2、A3が付された二点鎖線は、複数の線状伝送部材30が並行する領域を示している。また図1において符号Wが付された二点鎖線は、シート20と線状伝送部材30とが固定される箇所を示している。図2図1のII-II線における概略断面図である。図3図1のIII-III線における概略断面図である。図4図1のIV-IV線における概略断面図である。
【0016】
配線部材10は、シート20(sheet)と複数(ここでは8本)の線状伝送部材30とを備える。以下では、8本の線状伝送部材30について区別する必要がある場合、線状伝送部材30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30hと称することがある。
【0017】
シート20には線状伝送部材30が固定される。シート20の主面上に線状伝送部材30が配置される。シート20は線状伝送部材30が所定の経路に沿って延びた状態に保持する。シート20は複数の線状伝送部材30が並んだ状態に保持する。これにより配線部材10は扁平に形成されている。
【0018】
線状伝送部材30は、電気又は光等を伝送する線状の部材である。線状伝送部材30は、伝送線本体32と被覆34とを有する。例えば、線状伝送部材は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、電気ケーブル、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。また、線状伝送部材は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0019】
シート20上における複数の線状伝送部材30の経路は特に限定されるものではなく適宜設定可能である。線状伝送部材30の経路は、直線部、曲部などが適宜組み合わされて構成される。直線部はシート20上において直線状に延びる経路である。曲部は、シート20上で曲がる経路である。曲部における曲率半径及び長さ等は適宜設定される。図1に示す例では、線状伝送部材30a、30b、30c、30dは、直線部のみで構成されている。線状伝送部材30e、30f、30g、30hは直線部及び曲部を有している。線状伝送部材30e、30f、30g、30hにおいて、2つの直線部の間に曲部が位置する。線状伝送部材30e、30f、30g、30hは、2つの直線部の一方において線状伝送部材30a、30b、30c、30dと並行に延びる。
【0020】
線状伝送部材30e、30f、30g、30hは、線状伝送部材30a、30b、30c、30dと並行に延びる部分から曲部を経て線状伝送部材30a、30b、30c、30dと分岐するように異なる方向に延びている。このようにシート20上において複数の線状伝送部材30に分岐が形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。また図1に示す例では線状伝送部材30同士が交差していないが、線状伝送部材30同士が交差していてもよい。線状伝送部材30同士の交差部はシート20上に設けられてもよいし、シート20の外方に設けられてもよい。
【0021】
線状伝送部材30の端部はシート20から延出して、シート20の外方に位置する。線状伝送部材30において端部を除く中間部がシート20上に配置されている。線状伝送部材30の端部が、シート20上に位置していてもよい。
【0022】
線状伝送部材30の端部は、図示省略の機器などに接続される。機器は、線状伝送部材30を介して電気信号又は光信号を送信し又は受信する。または、機器は、線状伝送部材30を介して電力供給を受けたり、電力を分配したりする。図1に示す例では線状伝送部材30の端部はコネクタCに組み込まれている。コネクタCが機器に接続される。線状伝送部材30が機器内に直接導入され、機器内の電気要素に直接に接続されていてもよい。
【0023】
シート20は複数の線状伝送部材30の経路に沿った形状に形成されている。図1に示す例では複数の線状伝送部材30の経路がT字状とされているため、シート20もT字状に形成されている。シート20は複数の線状伝送部材30を所定の経路に沿った状態に保持できればよく、複数の線状伝送部材30の経路に沿った形状に形成されている必要はない。例えば、図1に示すT字状のシート20よりも大きな方形状に形成されたシートが採用されてもよい。
【0024】
線状伝送部材30それぞれは、延在方向に沿って間隔があいた複数箇所においてシート20に固定されている。以下ではシートと線状伝送部材とが固定される箇所を固定箇所Wと称することがある。線状伝送部材30は、延在方向に沿ってシート20に対して一定の経路に沿って配設されるように複数箇所で固定されていればよい。シート20と線状伝送部材30との固定状態を形成するための具体的構成は特に限定されない。以下ではシート20と線状伝送部材30とが溶着されている例で説明する。すなわち線状伝送部材30及びシート20の少なくとも一方の一部が溶けて相互にくっついた状態となっている。このとき線状伝送部材30及びシート20がくっついた部分(図1に示す例では固定箇所W)は溶着部となっている。線状伝送部材30とシート20との溶着は、超音波溶着によってなされてもよいし、加熱溶着によってなされてもよい。また、線状伝送部材30とシート20との少なくとも一方の表面が溶剤によって溶かされることで、線状伝送部材30とシート20とが溶着されてもよい。
【0025】
シート20は、第1層21と、第2層22とを含む。第1層21はシート状に形成されている。第2層22は第1層21の主面に設けられている。第2層22は、第1層21と線状伝送部材30との接合(ここでは溶着)を仲立ちする層である。第2層22は、複数(ここでは7つ)の部分第2層23、24、25、26、27、28、29を含む。複数の部分第2層23、24、25、26、27、28、29は、線状伝送部材30の延在方向に沿って相互に分離する態様で設けられている。
【0026】
第1層21及び第2層22を構成する材料は特に限定されるものではなく、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)等の樹脂を含むものであってもよい。また基材の構造は特に限定されるものではなく、織物、編物、不織布など繊維を有する繊維材であってもよいし、押出成形又は射出成形等による部材など繊維を有しない非繊維材であってもよい。基材が、押出成形又は射出成形等による非繊維材である場合、発泡成形された発泡体であってもよいし、発泡成形されずに一様に充実な充実材であってもよい。
【0027】
第1層21が配線部材10のベースとしての役割を有することに鑑みると、第1層21は、第2層22よりも引張り強度等に優れているとよい。第2層22は、第1層21と線状伝送部材30との接合を仲立ちする層であることに鑑みると、第2層22は、第1層21よりも強い力で線状伝送部材30に固定できるとよい。このような組合せの一例として、第1層21が不織シート、織物シート、編物シートであり、第2層22におけるベース樹脂が線状伝送部材30の表面(被覆34)を構成するベース樹脂と同じである場合を採用してもよい。この場合、第1層21は、構成繊維として引張り強度に優れたものを用いることで、比較的柔軟でかつ引張り強度に優れた構成とすることができ、ベースとなる基材として適している。また、第1層21の表面には、繊維等による細かい隙間が形成されるため、第2層22が熱等によって溶けて当該隙間に充填されて固化することで、第1層21と第2層22とを比較的強固に接合できる。つまり、第1層21と第2層22とを一種のアンカー効果によって比較的強固に接合できる。この場合、第1層21の融点は、第2層22の融点よりも高いと、第2層22を溶かして第1層21の隙間に充填し易い。
【0028】
第1層21を構成する材料は、線状伝送部材30の表面を構成する樹脂とは関係無い材料を用いることができる。例えば、線状伝送部材30の表面がPVCで形成されている場合に、第1層21を構成する樹脂として、PP、PET、PE等を用いてもよい。第2層22の樹脂のベース樹脂が線状伝送部材30の表面を構成する樹脂のベース樹脂と同じであれば、線状伝送部材30を第2層22に溶着等することで、当該線状伝送部材30を第2層22に比較的強固に接合できる。例えば、線状伝送部材30の外周の被覆34のベース樹脂がPVCである場合、第2層22のベース樹脂をPVCにするとよい。線状伝送部材30を第2層22に対して接着剤で固定する場合を想定しても、一般的に、接着剤は、相溶性(親和性)が良好な部材に対して良好な接着性を示し、特に、同系の樹脂に対して良好な接着性を示す。このため、第2層22の樹脂のベース樹脂が線状伝送部材30の表面を構成する樹脂のベース樹脂と同じであれば、当該ベース樹脂に対して良好な接着剤を用いることで、線状伝送部材30と第2層22とを比較的強固に接合できる。
【0029】
複数の線状伝送部材30が並行している領域において固定箇所Wが互い違いになっている部分が存在している。複数の線状伝送部材30は、第1線状伝送部材と第2線状伝送部材とを含む。第1線状伝送部材は、複数の第1箇所においてシート20に固定されている。第1線状伝送部材は、少なくとも1本含まれる。第2線状伝送部材は複数の第2箇所においてシート20に固定されている。第2線状伝送部材は、少なくとも1本含まれる。第1線状伝送部材及び第2線状伝送部材が並行する領域において第1箇所と第2箇所とが延在方向に沿って互い違いに設けられている。本例では第1箇所において複数の第1線状伝送部材が固定されており、第2箇所において複数の第2線状伝送部材が固定されている。
【0030】
図1に示す例では、領域A1において線状伝送部材30a、30b、30c、30d、30e、30fが並行している。領域A1において線状伝送部材30a、30b、30cと線状伝送部材30d、30e、30fとが、第1線状伝送部材と第2線状伝送部材との関係にある。すなわち領域A1において線状伝送部材30a、30b、30cは部分第2層23、25に固定されている。領域A1において線状伝送部材30d、30e、30fは部分第2層24に固定されている。部分第2層24は部分第2層23、25の間にある。このため、領域A1において線状伝送部材30a、30b、30cがシート20に固定される固定箇所Wと、線状伝送部材30d、30e、30fがシート20に固定される固定箇所Wとが線状伝送部材30の延在方向に沿って互い違いとされている。
【0031】
また図1に示す例では、領域A2において線状伝送部材30a、30b、30c、30d、30g、30hが並行している。領域A2において線状伝送部材30a、30b、30cと線状伝送部材30d、30g、30hとが、第1線状伝送部材と第2線状伝送部材との関係にある。すなわち領域A2において線状伝送部材30a、30b、30cは部分第2層26、28に固定されている。領域A2において線状伝送部材30d、30g、30hは部分第2層27に固定されている。部分第2層27は部分第2層26、28の間にある。このため、領域A2において線状伝送部材30a、30b、30cがシート20に固定される固定箇所Wと、線状伝送部材30d、30g、30hがシート20に固定される固定箇所Wとが線状伝送部材30の延在方向に沿って互い違いとされている。
【0032】
また図1に示す例では、領域A3において線状伝送部材30a、30b、30c、30dが並行している。線状伝送部材30a、30b、30cと線状伝送部材30dとはシート20上においてシート20の一端部から他端部までの全領域で並行している。領域A3において線状伝送部材30a、30b、30cと線状伝送部材30dとが、第1線状伝送部材と第2線状伝送部材との関係にある。すなわち領域A3において線状伝送部材30a、30b、30cは部分第2層23、25、26、28に固定されている。領域A3において線状伝送部材30dは部分第2層24、27に固定されている。部分第2層24は部分第2層23、25の間にあり、部分第2層27は部分第2層26、28の間にある。このため、領域A3において線状伝送部材30a、30b、30cがシート20に固定される固定箇所Wと、線状伝送部材30dがシート20に固定される固定箇所Wとが線状伝送部材30の延在方向に沿って互い違いとされている部分が存在している。
【0033】
なお、領域A3において部分第2層25、26の間で線状伝送部材30dは、シート20に固定されていない。このように、第1線状伝送部材における第1固定箇所と第2線状伝送部材における第2固定箇所とは、並行する領域全体にわたって完全に互い違いになっている必要はない。
【0034】
領域A1において線状伝送部材30aにおける固定箇所Wと線状伝送部材30fにおける固定箇所Wが互い違いとなっている。線状伝送部材30aと線状伝送部材30fとは領域A1において並行する複数の線状伝送部材30のうち最も遠い位置関係にある。このように並行する複数の線状伝送部材30のうち最も遠い位置関係にある2本の線状伝送部材30における固定箇所Wが互い違いとなっていることが好ましい。最も遠い位置関係にある2本の線状伝送部材30が絡んだ場合、絡みに伴って固定箇所Wにかかる引張力が大きくなり、固定箇所Wにおける固定状態が解消する恐れが高いためである。本例では領域A2、A3においても並行する複数の線状伝送部材30のうち最も遠い位置関係にある2本の線状伝送部材30における固定箇所Wが互い違いとなっている。
【0035】
同様の観点から、並行する複数の線状伝送部材30のうち2番目に遠い位置関係にある2本の線状伝送部材30における固定箇所Wも互い違いとなっていることが好ましい。例えば領域A1において線状伝送部材30aと線状伝送部材30eとは線状伝送部材30aと線状伝送部材30fとの位置関係の次に遠い位置関係にある。領域A1において線状伝送部材30aにおける固定箇所Wと線状伝送部材30eにおける固定箇所Wが互い違いとなっている。また領域A1において線状伝送部材30bと線状伝送部材30fとも線状伝送部材30aと線状伝送部材30fとの位置関係の次に遠い位置関係にある。線状伝送部材30bにおける固定箇所Wと線状伝送部材30fにおける固定箇所Wが互い違いとなっている。本例では領域A2においても並行する複数の線状伝送部材30のうち2番目に遠い位置関係にある2本の線状伝送部材30における固定箇所Wが互い違いとなっている。
【0036】
第1箇所における部分第2層及び第2箇所における部分第2層の少なくとも一方の側方に他の線状伝送部材30を固定可能な部分第2層が存在する。具体的には、部分第2層23、25、26、28には線状伝送部材30a、30b、30cが固定される。部分第2層23、25、26、28はシート20の幅寸法と同程度の大きさ(ここではわずかに小さい大きさ)に形成されている。別観点から見ると、部分第2層23、25は、自身に対して固定されない線状伝送部材30d、30e、30fと重なる部分が生じる大きさに形成されている。部分第2層26、28は自身に対して固定されない線状伝送部材30d、30g、30hと重なる部分が生じる大きさに形成されている。そして部分第2層23、25、26、28には線状伝送部材30d、30e、30f、30g、30hが固定されていない。このため、部分第2層23、25、26、28には他の線状伝送部材30を固定可能な部分が存在している。
【0037】
同様に、部分第2層24には線状伝送部材30d、30e、30fが固定される。部分第2層27には線状伝送部材30d、30g、30hが固定される。部分第2層24、27はシート20の幅寸法と同程度の大きさ(ここではわずかに小さい大きさ)に形成されている。別観点から見ると、部分第2層24、27は、自身に対して固定されない線状伝送部材30a、30b、30cと重なる部分が生じる大きさに形成されている。そして部分第2層24、27には線状伝送部材30a、30b、30cが固定されていない。このため、部分第2層24、27には他の線状伝送部材30を固定可能な部分が存在している。
【0038】
<配線部材10の修理方法>
図5図6を参照しつつ配線部材10の修理方法について説明する。図5は配線部材10において線状伝送部材30を取り外す様子を示す説明図である。図6は配線部材10において線状伝送部材30を付け直す様子を示す説明図である。
【0039】
配線部材10において一部に不具合が生じた場合などに、一部の線状伝送部材30がシート20から取り外される場合について想定する。この場合、修理後に線状伝送部材30の修理品がシート20に付け直されることが望まれる。修理品は、シート20から取り外された線状伝送部材30が再利用されたものである場合もあり得るし、交換されたものである場合もあり得る。ここでシート20と線状伝送部材30とが溶着により固定されていた場合、線状伝送部材30がシート20から剥がされる際、溶着部が破壊されることがあり得る。これにより、シート20のうち溶着部であった箇所に再び線状伝送部材30を溶着できなくなることがあり得る。このような場合に、第2層(部分第2層)に空きがあれば、線状伝送部材30を再度シート20に溶着することができる。
【0040】
具体的には、図5に示す例では配線部材10における線状伝送部材30cがシート20から外されている。線状伝送部材30cがシート20から外される際、シート20において部分第2層23、25、26、28と線状伝送部材30cとが溶着されていた溶着部は破壊され、部分第2層23、25、26、28の一部が線状伝送部材30に付着しうる。この場合、線状伝送部材30cがシート20から外された状態で、シート20において部分第2層23、25、26、28と線状伝送部材30cとが溶着されていた溶着部は痕跡Vとして残る(図6参照)。
【0041】
シート20から取り外された線状伝送部材30cに代わって、図6に示すように修理された線状伝送部材(修理品)30rがシート20に付け直される。シート20において痕跡Vの位置では部分第2層23、25、26、28が破壊されている。このため、修理品30rはシート20に対して、配線部材10における線状伝送部材30cとは異なる固定箇所Wに固定される。
【0042】
図6に示す例では修理品30rは、修理前の対応する線状伝送部材30cが固定されていた部分第2層23、25、26、28とは異なる部分第2層24、27に固定されている。より詳細には、修理品30rは、部分第2層24において線状伝送部材30d、30e、30fの側方に設けられた空き部分に溶着されている。修理品30rは、部分第2層27において線状伝送部材30d、30g、30hの側方に設けられた空き部分に溶着されている。これにより、修理品30rにおける経路が、修理前の対応する線状伝送部材30cにおける経路とほぼ同一となることができる。
【0043】
図6に示す例では、修理された配線部材10において、修理品30rは線状伝送部材30dと全長にわたって並行し、同じ部分第2層24、27と固定される。このため、配線部材10において、線状伝送部材30a、30bと、線状伝送部材30d、30e、30f、30g、30rとが第1線状伝送部材と第2線状伝送部材との関係になっている。このように修理品30rが、修理前の対応する線状伝送部材30cが固定されていた部分第2層23、25、26、28とは異なる部分第2層24、27に固定される場合、修理後の配線部材10において修理前の配線部材10における第1線状伝送部材と第2線状伝送部材との関係が変わりうる。
【0044】
部分第2層23、25、26、28にも線状伝送部材30d、30e、30f、30g、30hと重なる部分に線状伝送部材30が溶着されておらず空いている部分が存在する。修理品30rは部分第2層23、25、26、28において、この空いている部分に溶着されてもよい。つまり修理品30rは修理前の対応する線状伝送部材30cが固定されていた部分第2層23、25、26、28において空いている箇所に固定されてもよい。この場合、修理品30rを修理前の対応する線状伝送部材30cとほぼ同じ位置でシート20に固定することができる。これにより、修理後の配線部材10においても修理前の配線部材10における第1線状伝送部材と第2線状伝送部材との関係が保たれる。
【0045】
<実施形態の効果等>
このように構成された配線部材10によると、線状伝送部材30においてシート20に固定する箇所の間隔を大きくすることができることによって、固定箇所Wを減らすことができ、配線部材10の製造が容易となる。固定箇所Wが互い違いに設けられている部分があるため、固定箇所Wの間隔が大きくなっても、固定箇所W間の部分が、並行する他の線状伝送部材30と絡みにくい。この結果、線状伝送部材30がシート20に適切に保持された状態を保ちつつ線状伝送部材30がシート20に固定された配線部材10の製造が簡易となる。
【0046】
第1箇所において複数の第1線状伝送部材が固定されており、第2箇所において複数の第2線状伝送部材が固定されているため、複数の線状伝送部材30が固定される箇所を互い違いに設けることができる。これにより一度に複数の線状伝送部材を固定できるため、配線部材10の製造が簡易となる。なお同じ箇所に固定される複数の線状伝送部材30同士においては固定箇所Wの間の部分は絡む恐れがある。しかしながら、複数の線状伝送部材30が固定される箇所が互い違いとなっていることによって、絡む恐れがある線状伝送部材30の数が少なくなる。このため、絡んだとしても絡んだ部分がほどけやすい。例えば線状伝送部材30aと線状伝送部材30bと線状伝送部材30cとは、部分第2層23、25の間で絡む恐れがある。しかしながら、部分第2層24に線状伝送部材30d、30e、30fが固定されているため、線状伝送部材30a、30b、30cは部分第2層23、25の間で線状伝送部材30d、30e、30fと絡みにくい。つまり、線状伝送部材30a、30b、30cが部分第2層23、25の間で絡んだとしても、その絡みは線状伝送部材30a、30b、30cのみで構成されるため、絡んだ状態からほどけやすい。
【0047】
配線部材10において部分第2層に線状伝送部材30と接合されていない部分が存在する。配線部材10において修理が必要な線状伝送部材30をシート20から取り外した後、修理品を再度シート20に接合する際、空いている部分第2層を用いて接合することができる。
【0048】
<変形例について>
図7は配線部材10の変形例を示す平面図である。図7に示す配線部材110では、シート120において部分第2層が設けられる箇所、及び部分第2層に対して線状伝送部材30が固定される固定箇所Wに関して、上記配線部材10とは異なっている。
【0049】
配線部材110のように、並行するすべての線状伝送部材30が延在方向に沿った同じ位置(同じ部分第2層)に固定されていてもよい。図7に示す例では領域A1における一端部(シート120における一端部)において線状伝送部材30a、30b、30c、30d、30e、30fが同じ部分第2層123に固定されている。また領域A2における一端部(シート120における他端部)において線状伝送部材30a、30b、30c、30d、30g、30hが同じ部分第2層124に固定されている。もちろん複数の線状伝送部材30が並行する領域において、中間部に位置する部分第2層に並行するすべての線状伝送部材30が固定されていてもよい。
【0050】
また曲部を有する線状伝送部材30において、曲部の両端部がシート20と固定されていてもよい。図7に示す例では線状伝送部材30e、30fにおいて、2つの直線部のうち曲部に近い部分が部分第2層125、126と固定されている。また線状伝送部材30g、30hにおいて、2つの直線部のうち曲部に近い部分が部分第2層125、127と固定されている。
【0051】
またシート120上において全長にわたって並行する線状伝送部材30が延在方向に沿った同じ位置(同じ部分第2層)に固定されていてもよい。図7に示す例では、線状伝送部材30a、30b、30c、30dが同じ部分第2層123、124、126、127、128に固定されている。配線部材110においては、線状伝送部材30a、30b、30c、30dと、線状伝送部材30e、30fとのように、一部において並行し一部において経路を異にする線状伝送部材30の間で、固定箇所Wが互い違いとされている。
【0052】
このほかこれまで延在方向に沿った一の固定箇所Wにおいて複数の線状伝送部材30がシート20、120に固定されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。複数の線状伝送部材30が1本ずつ異なる位置でシート20、120に固定されていてもよい。
【0053】
またこれまでシート20、120が第1層21と第2層22とを含むものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。シートは1層構造であってもよい。この場合、1層のシートにおいて任意の箇所に線状伝送部材30を溶着可能である。またシート20、120が第1層21と第2層22とを含む場合でも、第2層22が複数の部分第2層を含むことは必須の構成ではない。第2層22は第1層21に対して全面的に設けられていてもよい。この場合、シートにおいて第2層22の任意の箇所に線状伝送部材30を溶着可能である。
【0054】
またこれまでシートと線状伝送部材30とが固定される例として、シートと線状伝送部材30とが溶着されている例で説明したが、このことは必須の構成ではない。例えば、シートと線状伝送部材30とは、接着剤、両面粘着テープ等の溶着以外の接合態様によって固定されていてもよい。また例えば、シートと線状伝送部材30とは、縫糸等によって線状伝送部材30がシートに縫付けられることによって固定されていてもよい。また、例えば、線状伝送部材30がシートの一主面上に配設された状態で、シートの一主面側から線状伝送部材30を跨ぐように粘着テープが貼付けられることで、線状伝送部材30がシートの一主面に固定されていてもよい。また例えば、線状伝送部材30がシートと他のシートとの間に挟み込まれることによって、シートに固定されていてもよい。この場合において、線状伝送部材30を挟込む2つのシート同士を固定するための構成は特に限定されない。線状伝送部材30を挟込む2つのシート同士は、例えば溶着によって固定されてもよいし、接着剤又は両面テープによって固定されてもよい。
【0055】
シートと線状伝送部材30とのこれらの固定構造は、シートと修理品との固定構造に適用することもできる。すなわちこれまで配線部材が修理されるに当たって、修理品が溶着によってシートに付け直されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。修理品とシートとの固定構造は、片面粘着テープによる押さえつけ、又は縫糸による縫付など溶着以外の上記各種固定構造が採用されてもよい。この場合、修理前の配線部材10において空いている部分第2層が設けられる必要はない。
【0056】
線状伝送部材30は、シートの一主面のみに固定される必要はない。線状伝送部材30は、シートの一方主面に固定される部分と、シートの他方主面に固定される部分とを併有していてもよい。この場合、線状伝送部材30は、シートの中間部又は端縁部において一方主面から他方主面に向けて通るように付設されてもよい。
【0057】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0058】
10、110 配線部材
20、120 シート
21 第1層
22 第2層
23、24、25、26、27、28、29、123、124、125、126、127、128 部分第2層
30、30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30h 線状伝送部材
32 伝送線本体
34 被覆
C コネクタ
A1、A2、A3 領域
W 固定箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7