(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ボビン、及び巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 54/10 20060101AFI20221206BHJP
B65H 54/42 20060101ALI20221206BHJP
B21C 47/30 20060101ALI20221206BHJP
B21C 47/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65H54/10
B65H54/42
B21C47/30
B21C47/04
(21)【出願番号】P 2019076540
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】左田野 豊
(72)【発明者】
【氏名】桂川 雅人
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 雅文
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-322846(JP,A)
【文献】実開昭49-007224(JP,U)
【文献】特公昭48-040184(JP,B1)
【文献】特開平01-138019(JP,A)
【文献】特公昭36-012722(JP,B1)
【文献】特開平05-104142(JP,A)
【文献】特開昭61-219423(JP,A)
【文献】特開2007-217106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/10
B65H 54/42
B21C 47/30
B21C 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部ロール及び外部ロールを備える回転装置に装着され、巻取対象物を巻き取るボビンであって、
周方向に分割された複数の分割体を有し、内側に配置された前記内部ロールと外側に配置された前記外部ロールとによって回転され、外周面に巻取対象物が巻き付けられる筒状体と、
前記筒状体の内側に配置されるコア体と、
前記コア体と前記分割体とを連結する可動部材と、前記筒状体の軸方向に沿って配置され、回転に伴って前記可動部材を前記筒状体の軸方向に移動させ、前記コア体に対して前記分割体を前記筒状体の径方向に移動させるネジ部材と、を有する送りネジ機構と、
を備えるボビン。
【請求項2】
前記送りネジ機構は、前記筒状体の軸方向に並ぶ一対の前記可動部材を有し、
一対の前記可動部材は、前記筒状体の軸方向に沿った断面において、前記筒状体の軸方向に対して互いに逆向きに傾斜する一対のスライド斜面を有し、
前記分割体又は前記コア体は、一対の前記スライド斜面がそれぞれ接触される一対のガイド斜面を有し、
前記ネジ部材は、前記筒状体の軸方向において、一対の前記可動部材を互いに反対方向へ移動させ、一対の前記ガイド斜面に沿って一対の前記スライド斜面をスライドさせる、
請求項1に記載のボビン。
【請求項3】
前記可動部材は、前記筒状体の径方向において互いに反対側を向く2つの前記スライド斜面を有し、
前記分割体又は前記コア体は、前記筒状体の径方向において互いに反対側を向くとともに、2つの前記スライド斜面がそれぞれ接触される2つの前記ガイド斜面を有する、
請求項2に記載のボビン。
【請求項4】
前記ネジ部材は、
一対の前記可動部材のうち一方の前記可動部材と接続される第一ネジ部と、
前記第一ネジ部と逆ネジとされ、一対の前記可動部材のうち他方の前記可動部材と接続される第二ネジ部と、
を有する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のボビン。
【請求項5】
複数の前記分割体は、前記筒状体の円周上に配置され、内側から前記内部ロールが圧接される円弧状部をそれぞれ有し、
隣り合う前記円弧状部の端部には、互いに対向するとともに、前記筒状体の軸方向に対して一方側に傾斜する一対の傾斜部が設けられる、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のボビン。
【請求項6】
内部ロール及び外部ロールを備える回転装置と、
前記回転装置に装着され、巻取対象物を巻き取る請求項1~請求項5の何れか1項に記載のボビンと、
を備える巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン、及び巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸を有し、鋼板(ストリップ)を巻き取るリールがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内部ロール及び外部ロールを備える回転装置に装着され、鋼板等の巻取対象物を巻き取るボビンがある。このボビンは、内側に配置された内部ロールと、外側に配置された外部ロールとによって回転される。これにより、ボビンの外周面に、巻取対象物が円筒状(コイル状)に巻き付けられる。
【0005】
上記のボビンによって、高温状態の巻取対象物を巻き取ることが考えられる。ここで、ボビンに巻き付けられた高温状態の巻取対象物の温度が低下すると、円筒状の巻取対象物が中心側に収縮しようとする。
【0006】
しかしながら、巻取対象物は、ボビンに巻き付けられた状態では中心側に収縮することができず、巻取対象物が破損する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、ボビンに巻き付けられた巻取対象物の温度低下に伴う破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係るボビンは、内部ロール及び外部ロールを備える回転装置に装着され、巻取対象物を巻き取るボビンであって、周方向に分割された複数の分割体を有し、内側に配置された前記内部ロールと外側に配置された前記外部ロールとによって回転され、外周面に巻取対象物が巻き付けられる筒状体と、前記筒状体の内側に配置されるコア体と、前記コア体と前記分割体とを連結する可動部材と、前記筒状体の軸方向に沿って配置され、回転に伴って前記可動部材を前記筒状体の軸方向に移動させ、前記コア体に対して前記分割体を前記筒状体の径方向に移動させるネジ部材と、を有する送りネジ機構と、を備える。
【0009】
上記の構成によれば、回転装置は、内部ロール及び外部ロールを備える。この回転装置には、巻取対象物を巻き取るボビンが装着される。ボビンは、筒状体と、コア体と、送りネジ機構とを備える。
【0010】
筒状体は、内側に配置された内部ロールと外側に配置された外部ロールとによって回転される。これにより、筒状体の外周面に巻取対象物が巻き付けられる。また、筒状体は、周方向に分割された複数の分割体を有する。この筒状体の内側には、コア体が配置される。
【0011】
送りネジ機構は、可動部材と、ネジ部材とを有する。可動部材は、コア体と分割体とを連結する。ネジ部材は、筒状体の軸方向に沿って配置される。また、ネジ部材は、回転に伴って可動部材を筒状体の軸方向に移動させ、コア体に対して分割体を筒状体の径方向に移動させる。つまり、可動部材は、ネジ部材の回転運動を、筒状体の径方向に沿った分割体の直線運動に変換する。
【0012】
ここで、筒状体の外周面に高温状態の巻取対象物が円筒状に巻き付けられた状態で、送りネジ機構によって分割体を筒状体の中心側へ移動させると、筒状体が中心側(径方向内側)に収縮する。この結果、筒状体の外周面と、円筒状の巻取対象物の内周面との間に隙間が生じる。これにより、高温状態の巻取対象物の温度が低下した場合に、円筒状の巻取対象物が中心側に収縮可能になる。したがって、ボビンに巻き付けられた巻取対象物の温度低下に伴う破損が抑制される。
【0013】
また、ネジ部材は、筒状体の軸方向に沿って配置される。これにより、例えば、工具等によって、筒状体の軸方向からネジ部材の端部を操作することができる。したがって、筒状体の外周面に巻取対象物が巻き付けられた状態であっても、工具によってネジ部材の端部を回転し、分割体を筒状体の中心側へ移動させることができる。さらに、分割体の移動量は、ネジ部材の回転量によって容易に調整することができる。
【0014】
また、ネジ部材の回転は、固定ナット等の回り止め部材によって容易に拘束することができる。そして、ネジ部材の回転を拘束した状態で、筒状体の外周面に巻取対象物を巻き付けることにより、分割体が筒状体の中心側へ移動することが抑制される。したがって、巻取対象物の巻ずれや破損等が抑制される。
【0015】
第2態様に係るボビンは、第1態様に係るボビンにおいて、前記送りネジ機構は、前記筒状体の軸方向に並ぶ一対の前記可動部材を有し、一対の前記可動部材は、前記筒状体の軸方向に沿った断面において、前記筒状体の軸方向に対して互いに逆向きに傾斜する一対のスライド斜面を有し、前記分割体又は前記コア体は、一対の前記スライド斜面がそれぞれ接触される一対のガイド斜面を有し、前記ネジ部材は、前記筒状体の軸方向において、一対の前記可動部材を互いに反対方向へ移動させ、一対の前記ガイド斜面に沿って一対の前記スライド斜面をスライドさせる。
【0016】
上記の構成によれば、送りネジ機構は、筒状体の軸方向に並ぶ一対の可動部材を有する。この一対の可動部材は、筒状体の軸方向に沿った断面において、互いに逆向きに傾斜する一対のスライド斜面を有する。また、分割体又はコア体は、一対のガイド斜面を有する。この一対のガイド斜面には、一対のスライド斜面がそれぞれ接触される。
【0017】
ここで、ネジ部材は、筒状体の軸方向において、一対の可動部材を互いに反対方向へ移動し、一対のガイド斜面に沿って一対のスライド斜面をそれぞれスライドさせる。これにより、一対のガイド斜面及び一対のスライド斜面の傾斜角度に応じて、分割体が筒状体の径方向に移動する。
【0018】
また、一対のスライド斜面は、前述したように、筒状体の軸方向に沿った断面において、互いに逆向きに傾斜する。そのため、一対のスライド斜面に一対のガイド斜面がそれぞれ接触された状態では、分割体とコア体とが筒状体の軸方向にずれることが抑制される。これにより、分割体が筒状体の径方向に移動した場合に、ボビンの重心位置が移動することが抑制される。したがって、ボビンが安定する。
【0019】
第3態様に係るボビンは、第2態様に係るボビンにおいて、前記可動部材は、前記筒状体の径方向において互いに反対側を向く2つの前記スライド斜面を有し、前記分割体又は前記コア体は、前記筒状体の径方向において互いに反対側を向くとともに、2つの前記スライド斜面がそれぞれ接触される2つの前記ガイド斜面を有する。
【0020】
上記の構成によれば、可動部材は、筒状体の径方向において互いに反対側を向く2つのスライド斜面を有する。また、分割体又はコア体は、筒状体の径方向において互いに反対側を向く2つのガイド斜面を有する。2つのガイド斜面には、2つのスライド斜面がそれぞれ接触される。
【0021】
これにより、ネジ部材によって一対の可動部材を互いに接近する方向へ移動させた場合に、分割体が筒状体の径方向の一方側へ移動される。これと逆に、ネジ部材によって一対の可動部材を互いに離れる方向へ移動させた場合に、分割体が筒状体の径方向の他方側へ移動される。つまり、本態様では、ネジ部材によって、分割体を筒状体の径方向の両側へ移動させることができる。
【0022】
第4態様に係るボビンは、第1態様~第3態様の何れか1つに係るボビンにおいて、前記ネジ部材は、一対の前記可動部材のうち一方の前記可動部材と接続される第一ネジ部と、前記第一ネジ部と逆ネジとされ、一対の前記可動部材のうち他方の前記可動部材と接続される第二ネジ部と、を有する、
【0023】
上記の構成によれば、ネジ部材は、第一ネジ部と、第二ネジ部とを有する。第一ネジ部は、一対の可動部材のうち、一方の可動部材と接続される。これに対して第二ネジ部は、第一ネジ部と逆ネジとされ、一対の可動部材のうち、他方の可動部材と接続される。これにより、ネジ部材の回転に伴って、一対の可動部材を同時に反対方向へ移動させることができる。
【0024】
第5態様に係るボビンは、第1態様~第4態様の何れか1つに係るボビンにおいて、複数の前記分割体は、前記筒状体の円周上に配置され、内側から前記内部ロールが圧接される円弧状部をそれぞれ有し、隣り合う前記円弧状部の端部には、互いに対向するとともに、前記筒状体の軸方向に対して一方側に傾斜する一対の傾斜部が設けられる。
【0025】
上記の構成によれば、複数の分割体は、円弧状部をそれぞれ有する。円弧状部は、筒状体の円周上に配置される。この円弧状部には、内側から内部ロールが圧接される。また、隣り合う円弧状部の端部には、筒状体の軸方向に対して一方側に傾斜する一対の傾斜部が設けられる。
【0026】
ここで、隣り合う円弧状部の端部が筒状体の軸方向に対して平行する場合、例えば、隣り合う円弧状部の端部間に段差があると、内部ロールがその段差を一度に乗り越えることになる。したがって、筒状体の振動等が大きくなり易い。
【0027】
これに対して本態様では、前述したように、隣り合う円弧状部の端部に一対の傾斜部が設けられる。一対の傾斜部は、筒状体の軸方向に対して一方側に傾斜する。これにより、一対の傾斜部間に段差があっても、内部ロールは、その段差を一端側から徐々に乗り越えることになる。したがって、筒状体の振動が低減されるため、筒状体の破損等が抑制される。
【0028】
第6態様に係る巻取装置は、内部ロール及び外部ロールを備える回転装置と、前記回転装置に装着され、巻取対象物を巻き取る第1態様~第5態様の何れか1つに係るボビンと、を備える。
【0029】
上記の構成によれば、上記第1態様と同様に、ボビンに巻き取られた巻取対象物の温度低下に伴う破損を抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、ボビンに巻き付けられた巻取対象物の温度低下に伴う破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る巻取装置をボビンの軸方向から見た側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される巻取装置のボビンによって巻取対象物を巻き取る過程を示す側面図である。
【
図4】
図1に示されるボビンを軸方向から見た側面図である。
【
図5A】
図5Aは、
図4に示される隣り合う分割体を外筒の内側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示される送りネジ機構を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、一実施形態に係る巻取装置について説明する。
【0033】
(巻取装置)
図1及び
図2には、本実施形態に係る巻取装置10が示されている。巻取装置10は、ボビン20と、回転装置30とを備えている。この巻取装置10は、回転装置30によってボビン20を回転させながら、ボビン20で巻取対象物Pを巻き取る装置とされる。
【0034】
なお、巻取対象物Pとしては、例えば、鋼板等の金属板、及び鋼線の金属線材等が挙げられる。
【0035】
(ボビン)
ボビン20は、回転装置30に着脱可能に装着されている。このボビン20は、外筒22と、内筒24と、送りネジ機構70(
図4参照)とを備えている。外筒22は、例えば鋼製とされており、全体として円筒状に形成されている。
図3に示されるように、外筒22の軸方向(矢印K方向)の両端は、開口されている。この外筒22の外周面22Aに、巻取対象物P(
図2参照)が巻き付けられる。なお、外筒22は、筒状体の一例である。
【0036】
内筒24は、例えば鋼製とされており、その直径が外筒22の直径よりも小さい円筒状に形成されている。この内筒24は、外筒22の内側に配置されている。また、内筒24の軸方向の両端は、開口されている。この内筒24と外筒22とは、同軸(中心軸C)上に配置された状態で、後述する送りネジ機構70(
図4参照)を介して連結されている。なお、
図1及び
図3では、送りネジ機構70の図示が省略されている。
【0037】
内筒24の幅W1は、外筒22の幅W2よりも狭くされている。これにより、外筒22内における内筒24の軸方向の両側に、後述する一対の内部ロール38の設置スペースが確保されている。また、外筒22の軸方向の両側は、接触領域22Zとされている。接触領域22Zは、外筒22の円周に沿った環状に形成されている。この接触領域22Zの内周面22Bには、一対の内部ロール38が接触される。また、接触領域22Zの外周面22Aには、後述する一対の外部ロール36が接触される。なお、内筒24は、コア体の一例である。
【0038】
(搬送装置)
図1及び
図2に示されるように、回転装置30は、一対の外部ロール36と、一対の内部ロール38とを備えている。一対の外部ロール36、及び一対の内部ロール38は、円柱状に形成されるとともに、図示しない軸受け部に回転可能に支持されている。また、複数一対の外部ロール36、及び一対の内部ロール38は、互いに平行で、かつ、水平に配置されている。
【0039】
一対の外部ロール36は、各々の径方向に間隔を空けて配置されている。また、一対の外部ロール36は、モータ等の図示しない駆動源によって同一方向(矢印a方向)に回転される。つまり、複数の外部ロール36は、駆動ロールとされる。この一対の外部ロール36の上には、ボビン20が載置される。
【0040】
一対の外部ロール36の間には、搬送路34が形成されている。搬送路34は、複数の搬送ロール32によって形成されており、矢印Mで示されるように、巻取対象物Pを一対の外部ロール36の間へ搬送する。複数の搬送ロール32は、搬送路34に沿って配置されている。各搬送ロール32は、円柱状に形成されるとともに、図示しない軸受け部に回転可能に支持されている。
【0041】
図3に示されるように、回転装置30の一対の内部ロール38は、同軸上に配置されるとともに、各々の軸方向に間隔を空けて配置されている。また、一対の内部ロール38は、外筒22の軸方向の両側から、外筒22の内側に抜き差し可能に挿入されている。この一対の内部ロール38は、内筒24の軸方向の両側において、前述した外筒22の内周面22Bの接触領域22Zに接触されている。
【0042】
なお、ボビン20は、外筒22の内側から一対の内部ロール38が抜き出された状態で、回転装置30から取り外される。
【0043】
一対の内部ロール38は、平面視にて、一対の外部ロール36(
図1参照)の間に配置されている。この一対の内部ロール38は、図示しない昇降機構によって、上下方向に移動可能に支持されている。この一対の内部ロール38及び一対の外部ロール36によって、外筒22が回転可能に保持されている。
【0044】
ここで、巻取対象物Pをボビン20で巻き取る際には、先ず、
図1に示されるように、回転装置30にボビン20を装着する。具体的には、一対の外部ロール36の上にボビン20の外筒22を載置する。次に、搬送路34に沿って配置された巻取対象物Pの一端部を、図示しない固定具によって外筒22の外周面22Aに固定する。
【0045】
次に、外筒22の内側に、一対の内部ロール38を挿入する。この状態で、図示しない昇降機構によって、一対の内部ロール38を下方へ移動させ、一対の内部ロール38を外筒22の内周面22Bの接触領域22Z(
図3参照)に圧接させる。これにより、一対の内部ロール38によって、外筒22が一対の外部ロール36に押し付けられる。
【0046】
次に、図示しない駆動源によって、一対の外部ロール36を所定方向(矢印a方向)に回転させる。これにより、一対の外部ロール36上に載置されたボビン20が所定方向(矢印b方向)に回転し、外筒22の外周面22Aに巻取対象物Pが円筒状に巻き付けられる。この際、一対の内部ロール38は、所定方向(矢印b方向)に回転される。つまり、一対の内部ロール38は、ボビン20の回転に伴って所定方向(矢印b方向)に回転する従動ロールとされる。
【0047】
なお、外筒22の外周面22Aに巻取対象物Pが巻き付けられた状態では、一対の外部ロール36が円筒状の巻取対象物Pの外周面に接触する。
【0048】
ここで、
図2に示されるように、外筒22の外周面22Aに巻取対象物Pが巻き付けられるに従って円筒状の巻取対象物Pの厚みtの増加すると、実線で示されるように、一対の内部ロール38が上昇するとともに、ボビン20の中心C(回転中心)が徐々に上昇する。このように巻取装置10は、ボビン20の中心Cを移動させながら、巻取対象物Pをボビン20で巻き取る。
【0049】
なお、本実施形態では、一対の外部ロール36が駆動ロールとされるが、一対の外部ロール36、及び内部ロール38の少なくとも1つを駆動ロールにすることができる。
【0050】
(ボビンの拡縮機構)
次に、ボビン20の拡縮機構について説明する。
【0051】
図4に示されるように、ボビン20の外筒22は、周方向(矢印F方向)に分割された複数(本実施形態では4つ)の分割体40を有している。複数の分割体40は、送りネジ機構70を介して内筒24にそれぞれ連結されている。
【0052】
図3に示されるように、各送りネジ機構70は、内筒24に対して分割体40を外筒22の径方向に移動可能に支持している。これらの送りネジ機構70によって、複数の分割体40を外筒22の径方向に移動させることにより、外筒22が径方向(矢印R方向)に収縮又は拡大し、外筒22の外径Dが変動する。以下、ボビン20の拡縮機構について具体的に説明する。
【0053】
なお、各図に適宜示される矢印R1は、外筒22及び内筒24の径方向内側(中心C側)を示し、矢印R2は、外筒22及び内筒24の径方向外側(外側)を示している。
【0054】
(分割体)
分割体40は、円弧状部42と、複数の補強リブ44とを有している。円弧状部42は、外筒22の円周に沿って円弧状に湾曲している。この円弧状部42の外面42Aは、外筒22の外周面22Aを形成している。つまり、円弧状部42の外面42Aに、巻取対象物P(
図1参照)が巻き付けられる。
【0055】
また、円弧状部42の内面42Bは、外筒22の内周面22Bを形成している。つまり、円弧状部42の内面42Bにおける外筒22の軸方向の両側は、一対の内部ロール38の接触領域22Z(
図5A参照)とされている。この円弧状部42の内面42Bには、複数の補強リブ44が設けられている。なお、複数の補強リブ44は、省略可能である。
【0056】
図5A及び
図5Bには、外筒22の周方向(矢印F方向)に隣り合う一対の円弧状部42が示されている。なお、
図5A及び
図5Bでは、説明の便宜上、一対の円弧状部42のうち、一方の円弧状部42を円弧状部42Xとし、他方の円弧状部42を円弧状部42Yとする。
【0057】
一方の円弧状部42Xの端部には、凹部50及び一対の凸部52が形成されている。凹部50は、円弧状部42Xの端部の中央部に形成されている。この凹部50は、接触領域22Zから外れた位置に配置されている。また、凹部50は、矩形状に形成されている。この凹部50は、一対の側部50Sと、一対の側部50Sを接続する底部50Lとを有している。
【0058】
一対の凸部52は、凹部50の両側に形成されている。この一対の凸部52は、円弧状部42Xの接触領域22Zに配置されている。各凸部52は、三角形状に形成されている。また、各凸部52の頂部は、傾斜部52Kとされている。傾斜部52Kは、外筒22の軸方向(中心軸C)に対して、外筒22の周方向(矢印F方向)の一方側に傾斜している。
【0059】
他方の円弧状部42Yの端部には、凸部60及び一対の凹部62が形成されている。凸部60は、円弧状部42Yの端部の中央部に形成されている。この凸部60は、円弧状部42Xの接触領域22Zから外れた位置に配置されている。また、凸部60は、矩形状に形成されている。この凸部60は、一対の側部60Sと、一対の側部60Sを接続する頂部60Tとを有している。
【0060】
凸部60は、一方の円弧状部42Xの凹部50に抜き差し可能に挿入されている。この凸部60の一対の側部60Sと、凹部50の一対の側部50Sとの間には、隙間H1がそれぞれ形成されている。また、凸部60の頂部60Tと凹部50の底部50Lとの間には、隙間H2が形成されている。
【0061】
一対の凹部62は、凸部60の両側に形成されている。この一対の凹部62は、円弧状部42Yの接触領域22Zに配置されている。また、一対の凹部62は、三角形状に形成されている。各凹部62の底部は、傾斜部62Kとされている。傾斜部62Kは、外筒22の軸方向(中心軸C)に対して、外筒22の周方向(矢印F方向)の一方側に傾斜している。
【0062】
一対の凹部62には、一方の円弧状部42Xの一対の凸部52が抜き差し可能にそれぞれ挿入されている。この凹部62の傾斜部62Kと凸部52の傾斜部52Kとは、対向している。より具体的には、傾斜部62Kと傾斜部52Kとは、平行している。この傾斜部62Kと傾斜部52Kとの間には、隙間H3が形成されている。ここで、一方の円弧状部42Xと他方の一方の円弧状部42Yとは、隙間H2,H3によって、外筒22の周方向に接近可能とされている。
【0063】
(送りネジ機構)
図6A及び
図6Bに示されるように、送りネジ機構70は、ネジ部材72と、一対のスライド部材90と、一対の内側レール100と、一対の外側レール110とを有している。また、スライド部材90は、可動部材の一例である。
【0064】
(ネジ部材)
ネジ部材72は、外筒22と内筒24との間に配置されている。また、ネジ部材72は、外筒22の軸方向に沿って配置されている。このネジ部材72は、例えば、一対のボルト74と、コネクタ76とを有している。一対のボルト74は、各々の軸方向に配列された状態で、コネクタ76を介して連結されている。
【0065】
なお、ネジ部材72は、例えば、両端部にネジ部がそれぞれ形成されたスタッドボルトとされても良い。
【0066】
ネジ部材72は、内筒24の外周面24Aに設けられた支持部材80に回転可能に支持されている。支持部材80は、一対の対向部80Tを有している。一対の対向部80Tは、外筒22の軸方向に互いに対向している。この一対の対向部80Tには、円形状の貫通孔82がそれぞれ形成されている。これらの貫通孔82に、ネジ部材72が回転可能に貫通されている。
【0067】
また、一対の対向部80Tの間には、コネクタ76が挟み込まれている。コネクタ76は、貫通孔82よりも大きくされている。このコネクタ76が貫通孔82の周縁部に係合することにより、ネジ部材72の軸方向の移動が制限(拘束)されている。
【0068】
ネジ部材72の一端部72E1側には、第一ネジ部N1が設けられている。この第一ネジ部N1には、可動ナット84が取り付けられている。また、ネジ部材72の他端部72E2側には、第二ネジ部N2が設けられている。この第二ネジ部N2には、可動ナット84が取り付けられている。さらに、第二ネジ部N2には、可動ナット84を固定する固定ナット86が取り付けられている。
【0069】
ここで、第二ネジ部N2は、第一ネジ部N1と逆ネジとされている。つまり、第一ネジ部N1及び第二ネジ部N2の一方は右ネジとされ、第一ネジ部N1及び第二ネジ部N2の他方は、左ネジとされている。そのため、ネジ部材72が回転されると、2つの可動ナット84がネジ部材72の軸方向において互いに反対方向へ移動する。
【0070】
ネジ部材72には、一対のスライド部材90が取り付けられている。一対のスライド部材90は、ネジ部材72の両端側に配置されている。この一対のスライド部材90は、一対の内側レール100を介して内筒24にそれぞれ連結されている。また、一対のスライド部材90は、一対の外側レール110を介して外筒22にそれぞれ連結されている。
【0071】
なお、一対のスライド部材90、一対の内側レール100、及び一対の外側レール110は、外筒22の軸方向に沿った断面(外筒22を軸方向に沿って切断した断面)において、ネジ部材72の中央部を通るとともに外筒22の径方向に沿った仮想線Vに対して、対称(線対称)に配置されている。そのため、以下では、ネジ部材72の一端部72E1側に配置されたスライド部材90、内側レール100、及び外側レール110の構成について説明し、ネジ部材72の他端部72E2側に配置されたスライド部材90、内側レール100、及び外側レール110の構成の説明は適宜省略する。
【0072】
(可動部材)
スライド部材90は、外筒22の軸方向に沿った断面において、台形状に形成されている。このスライド部材90中央部には、円形状の貫通孔91が形成されている。貫通孔91には、ネジ部材72の一端部72E1側が貫通されている。また、スライド部材90の端面90Eには、ネジ部材72の一端部72E1側に取り付けられた可動ナット84が溶接等によって固定されている。
【0073】
ここで、ネジ部材72が回転されると、可動ナット84がネジ部材72の軸方向に移動する。この結果、可動ナット84に固定されたスライド部材90が、ネジ部材72の軸方向に移動する。このスライド部材90は、ネジ部材72の軸方向に沿って、
図6A及び
図8Aに示される初期位置(拡大位置)と、
図6B及び
図8Bに示される収縮位置との間を移動する。
【0074】
スライド部材90の内筒24側の面は、内向きスライド面S1とされている。この内向きスライド面S1は、内筒24側を向くとともに、外筒22の軸方向に沿った断面において、外筒22の軸方向に沿った平面とされている。
【0075】
図7に示されるように、スライド部材90の内筒24側の端部は、後述する内側レール100を介して、内筒24に連結される連結部(内側連結部)とされている。このスライド部材90の内筒24側の端部には、一対の内側突起部92が設けられている。一対の内側突起部92は、スライド部材90の両側の側面92Sから突出している。
【0076】
内側突起部92の内筒24側の面は、前述した内向きスライド面S1とされている。また、内側突起部92の外筒22側の面は、外向きスライド面S2とされている。この外向きスライド面S2は、外筒22側を向くとともに、内向きスライド面S1と平行する平面とされている。つまり、外向きスライド面S2は、外筒22の径方向において内向きスライド面S1と反対側を向くとともに、外筒22の軸方向に沿った断面において外筒22の軸方向に沿った平面とされている。
【0077】
図6Aに示されるように、スライド部材90の外筒22側の面は、外向きスライド斜面S3とされている。外向きスライド斜面S3は、外筒22側を向くとともに、外筒22の軸方向に沿った断面において、外筒22の軸方向に対し、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って内筒24側へ傾斜する斜面とされている。
【0078】
なお、ネジ部材72の両側に配置された一対のスライド部材90の外向きスライド斜面S3は、外筒22の軸方向に沿った断面(外筒22を軸方向に沿って切断した断面)において、ネジ部材72(外筒22)の軸方向に対して互いに逆向きに傾斜している。
【0079】
図7に示されるように、スライド部材90の外筒22側の端部は、後述する外側レール110を介して外筒22に連結される連結部(外側連結部)とされている。このスライド部材90の外筒22側の端部には、一対の外側突起部94が設けられている。一対の外側突起部94は、スライド部材90の両側の側面92Sから突出している。この一対の外側突起部94の外筒22側の面は、前述した外向きスライド斜面S3とされている。
【0080】
また、一対の外側突起部94の内筒24側の面は、内向きスライド斜面S4とされている。内向きスライド斜面S4は、内筒24側を向くとともに、外向きスライド斜面S3と平行する斜面とされている。つまり、内向きスライド斜面S4は、外筒22の径方向において外向きスライド斜面S3と反対側を向くとともに、外筒22の軸方向に沿った断面において、外筒22の軸方向に対し、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って内筒24側へ傾斜する斜面とされている。
【0081】
なお、ネジ部材72の両側に配置された一対のスライド部材90の内向きスライド斜面S4は、外筒22の軸方向に沿った断面において、ネジ部材72(外筒22)の軸方向に対して互いに逆向きに傾斜している。また、外向きスライド斜面S3及び内向きスライド斜面S4は、スライド斜面の一例である。
【0082】
(内側レール)
内側レール100は、例えば鋼製とされており、内筒24の外周面24Aに溶接等によって固定されている。また、内側レール100は、外筒22の軸方向から見て、外筒22側が開口したC字形状に形成されている。この内側レール100の内部に、スライド部材90の内筒24側の端部(内側連結部)が挿入されている。
【0083】
図7及び
図8Aに示されるように、内側レール100の底面は、外向きガイド面G1とされている。外向きガイド面G1は、外筒22側を向くとともに、スライド部材90の内向きスライド面S1と平行する平面とされている。この外向きガイド面G1には、スライド部材90の内向きスライド面S1がスライド可能に接触される。
【0084】
内側レール100は、外筒22の周方向(矢印F方向)に互いに対向する一対の側壁部100Sを有している。一対の側壁部100Sの内壁面には、外筒22の軸方向に延びる一対の溝部102が形成されている。この一対の溝部102には、スライド部材90の一対の内側突起部92がスライド可能に挿入されている。
【0085】
溝部102の外筒22側の内面は、内側突起部92の外筒22側に配置される内向きガイド面G2とされている。内向きガイド面G2は、内筒24側を向くとともに、内向きスライド面S1と平行する平面とされている。この内向きガイド面G2には、内側突起部92の外向きスライド面S2がスライド可能に接触されている。
【0086】
(外側レール)
図7に示されるように、外側レール110は、例えば鋼製とされている。この外側レール110は、台座112と、一対のレール部材114と、くさび状部材120とを有している。台座112は、外筒22の内周面22Bに溶接等によって固定されている。この台座112には、一対のレール部材114がボルト116によって固定されている。
【0087】
一対のレール部材114は、外筒22の周方向(矢印F方向)に互いに対向している。この一対のレール部材114の間には、くさび状部材120、及びスライド部材90の外筒22側の端部が配置されている。くさび状部材120は、例えば鋼製とされており、台座112に溶接等によって固定されている。
【0088】
図7及び
図8Aに示されるように、くさび状部材120は、台座112とスライド部材90との間に配置されている。このくさび状部材120の内筒24側の面は、内向きガイド斜面G3とされている。
【0089】
内向きガイド斜面G3は、内筒24を向くとともに、スライド部材90の外向きスライド斜面S3と平行する斜面とされている。つまり、内向きガイド斜面G3は、外筒22の径方向において、外向きスライド斜面S3と反対側を向くとともに、外筒22の軸方向に沿った断面において、外筒22の軸方向に対し、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って内筒24側へ傾斜する斜面とされている。この内向きガイド斜面G3には、外向きスライド斜面S3がスライド可能に接触されている。
【0090】
なお、ネジ部材72の両側に配置された一対の外側レール110の内向きガイド斜面G3は、外筒22の軸方向に沿った断面において、ネジ部材72(外筒22)の軸方向に対して互いに逆向きに傾斜している。
【0091】
一対のレール部材114は、一対の外側突起部94の内筒24側に配置される外向きガイド斜面G4を有している。外向きガイド斜面G4は、外筒22側を向くとともに、外側突起部94の内向きスライド斜面S4と平行する斜面とされている。つまり、外向きガイド斜面G4は、外筒22の径方向において、内向きスライド斜面S4と反対側を向くとともに、外筒22の軸方向に沿った断面において、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って内筒24側へ傾斜する斜面とされている。この外向きガイド斜面G4には、内向きスライド斜面S4がスライド可能に接触されている。
【0092】
なお、ネジ部材72の両側に配置された一対の外側レール110の外向きガイド斜面G4は、外筒22の軸方向に沿った断面において、ネジ部材72(外筒22)の軸方向に対して互いに逆向きに傾斜している。また、内向きガイド斜面G3及び外向きガイド斜面G4は、ガイド斜面の一例である。
【0093】
くさび状部材120の端部には、スライド部材90の移動を制限するストッパ部材130がボルト132によって取り付けられている。ストッパ部材130は、外筒22の軸方向において、一対のスライド部材90の外側にそれぞれ配置されている。各ストッパ部材130には、初期位置に配置されたスライド部材90の端面90Eが係合される。これらのストッパ部材130によって、一対のスライド部材90が互いに離れる方向の移動が制限される。
【0094】
(ボビンの拡縮方法)
次に、ボビン20の拡縮方法について説明する。
【0095】
図6A及び
図8Aには、初期位置に配置された一対のスライド部材90が示されている。この状態では、外筒22の外径D(
図3参照)が所定値(初期値)に設定されるとともに、外筒22を軸方向から見て、外筒22の外周面22Aが円形状(真円状)になる。この状態から、外筒22を収縮させる場合には、作業者は、先ず、ネジ部材72の固定ナット86を緩め、ネジ部材72の一端部72E1又は他端部72E2に工具等を取り付ける。
【0096】
次に、作業者は、ネジ部材72を所定方向に回転させ、一対の可動ナット84を互いに接近する方向、すなわちネジ部材72の中央側へそれぞれ移動させる。これにより、
図6B及び
図8Bに示されるように、一対の可動ナット84が固定された一対のスライド部材90が、内側レール100及び外側レール110に沿って互いに接近し、収縮位置へ移動する。
【0097】
この際、
図8Bに示されるように、スライド部材90の内側突起部92の外向きスライド面S2が、内側レール100の内向きガイド面G2上をスライドする。また、スライド部材90の外側突起部94の内向きスライド斜面S4が、外側レール110の外向きガイド斜面G4上をスライドする。
【0098】
ここで、内向きスライド斜面S4、及び外向きガイド斜面G4は、外筒22の軸方向に沿った断面において、外筒22の軸方向に対し、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って内筒24側へ傾斜している。これにより、スライド部材90の外側突起部94が外筒22の軸方向に沿ってネジ部材72の中央側へ移動すると、内向きスライド斜面S4によって外向きガイド斜面G4が内筒24側(矢印R1側)へ押圧される。この結果、外側レール110、及び外側レール110が設けられた分割体40が、外筒22の中心C側(矢印R1側)へ移動する。
【0099】
なお、分割体40が外筒22の中心C側へ移動すると、
図5Bに示されるように、隣り合う分割体40の円弧状部42の隙間H2,H3(
図5A参照)がなくなり、又は隙間H2,H3が狭くなる。
【0100】
以上の手順により、作業者は、複数の送りネジ機構70を操作し、複数の分割体40を外筒22の中心C側へそれぞれ移動させる。これにより、外筒22が径方向に収縮し、外筒22の外径D(
図3参照)が小さくなる。
【0101】
一方、外筒22を拡大させる場合には、作業者は、先ず、外筒22を収縮させる場合と逆方向にネジ部材72を回転させ、一対の可動ナット84を互いに離れる方向、すなわちネジ部材72の一端部72E1側及び他端部72E2側へそれぞれ移動させる。これにより、
図6A及び
図8Aに示されるように、一対の可動ナット84が固定された一対のスライド部材90が、内側レール100及び外側レール110に沿って互いに離れ、初期位置へ移動する。
【0102】
この際、
図8Aに示されるように、スライド部材90の内側突起部92の内向きスライド面S1が、内側レール100の外向きガイド面G1上をスライドする。また、スライド部材90の外側突起部94の外向きスライド斜面S3が、外側レール110の内向きガイド斜面G3上をスライドする。
【0103】
ここで、外向きスライド斜面S3及び内向きガイド斜面G3は、外筒22の軸方向に沿った断面において、外筒22の軸方向に対し、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って内筒24側へ傾斜している。これにより、一対のスライド部材90の外側突起部94が外筒22の軸方向に沿ってネジ部材72の一端部72E1側へそれぞれ移動すると、外向きスライド斜面S3によって内向きガイド斜面G3が外筒22側(矢印R2側)へ押圧される。この結果、外側レール110、及び外側レール110が設けられた分割体40が、外筒22の外側へ移動する。
【0104】
なお、分割体40が外筒22の外側へ移動すると、
図5Aに示されるように、隣り合う分割体40の円弧状部42の隙間H2,H3が広がる。
【0105】
以上の手順により、作業者は、複数の送りネジ機構70を操作し、複数の分割体40を外筒22の外側へそれぞれ移動させる。これにより、外筒22が径方向に拡大し、外筒22の外径D(
図3参照)が大きくなる。そして、外筒22の外径Dが、初期値に復元する。
【0106】
なお、ネジ部材72は、作業者ではなく、回転装置によって回転させても良い。
【0107】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0108】
図2に示されるように、本実施形態によれば、ボビン20の外筒22の外周面22Aには、例えば、高温状態の巻取対象物Pが円筒状(コイル状)に巻き付けられる。この状態で、巻取対象物Pが冷却される。
【0109】
ここで、巻取対象物Pが冷却されると、円筒状の巻取対象物Pが中心C側へ収縮する。この巻取対象物Pの中心C側への収縮が、外筒22によって拘束されると、巻取対象物Pに応力が発生し、割れ等によって巻取対象物Pが破損する可能性がある。
【0110】
これに対して本実施形態に係るボビン20は、
図3に示されるように、外筒22と、外筒22の内側に配置された内筒24とを有している。外筒22は、周方向に分割された複数の分割体40を有している。各分割体40は、送りネジ機構70を介して内筒24に連結されている。この送りネジ機構70によって、複数の分割体40が内筒24に対して外筒22の径方向(矢印R方向)に移動可能とされている。
【0111】
ここで、外筒22の外周面22Aに高温状態の巻取対象物が円筒状に巻き付けられた状態で、複数の送りネジ機構70によって複数の分割体40を外筒22の中心C側へそれぞれ移動させると、外筒22が中心C側へ収縮する。この結果、外筒22の外周面22Aと円筒状の巻取対象物Pの内周面との間に隙間が生じる。
【0112】
これにより、巻取対象物Pの温度が低下した場合に、円筒状の巻取対象物Pが中心C側に収縮可能になる。したがって、ボビン20の外筒22に巻き付けられた巻取対象物Pの温度低下に伴う破損が抑制される。
【0113】
なお、複数の分割体40を外筒22の中心C側へ移動させる前に、温度低下に伴って巻取対象物Pが中心C側に収縮すると、巻取対象物Pから各分割体40に作用する圧力によって送りネジ機構70がロックされ、送りネジ機構70が作動しなくなる可能性がある。そのため、送りネジ機構70のロックを防止する観点から、巻取対象物Pの収縮が始まる前に、より具体的には、ボビン20による巻取対象物Pの巻き取りが完了した後、速やかに送りネジ機構70を作動させ、複数の分割体40を外筒22の中心C側へ移動させることが望ましい。
【0114】
また、送りネジ機構70のネジ部材72は、回転に伴って分割体40を外筒22の径方向に移動させる。これにより、ネジ部材72の回転量によって、分割体40の移動量を容易に調整することができる。したがって、例えば、複数のネジ部材72によって、複数の分割体40を外筒22の径方向にそれぞれ移動させた場合に、隣り合う分割体40の外面42A間の段差をなくし、又は段差を小さくすることができる。
【0115】
また、ネジ部材72の回転は、固定ナット86等の回り止め部材によって容易に拘束することができる。そして、ネジ部材72の回転を拘束した状態で、外筒22の外周面22Aに巻取対象物Pを巻き付けることにより、複数の分割体40が外筒22の中心C側へ移動することが抑制される。したがって、巻取対象物Pの巻ずれや破損等を抑制することができる。
【0116】
さらに、ネジ部材72は、外筒22の軸方向に沿って配置されている。これにより、工具等によって、外筒22の軸方向からネジ部材72の一端部72E1又は他端部72E2を操作することができる。したがって、外筒22の外周面22Aに巻取対象物Pが巻き付けられた状態であっても、工具等によってネジ部材72を回転し、複数の分割体40を外筒22の中心C側へ移動させることができる。
【0117】
また、送りネジ機構70は、内筒24と分割体40とを連結するスライド部材90を有している。スライド部材90は、ネジ部材72の回転に伴って外筒22の軸方向に移動し、内筒24に対して分割体40を外筒22の径方向に移動させる。つまり、スライド部材90は、ネジ部材72の回転運動を、外筒22の径方向に沿った分割体40の直線運動に変換する。これにより、外筒22の軸方向に沿って配置されたネジ部材72によって、分割体を外筒22の径方向に移動させることができる。
【0118】
さらに、送りネジ機構70は、外筒22の軸方向に並ぶ一対のスライド部材90を有している。一対のスライド部材90は、一対の内向きスライド斜面S4を有している。この一対の内向きスライド斜面S4は、外側レール110の一対の外向きガイド斜面G4にそれぞれ接触されている。
【0119】
ここで、一対の内向きスライド斜面S4は、外筒22の軸方向に沿った断面において、互いに逆向きに傾斜している。これと同様に、一対の外向きガイド斜面G4は、外筒22の軸方向に沿った断面において、互いに逆向きに傾斜している。これにより、ネジ部材72の回転に伴って、一対のスライド部材90が互いに接近する方向へ移動した場合に、外側レール110が内筒24側(矢印R1側)へ移動する。したがって、外筒22を収縮させることができる。
【0120】
また、一対の外向きスライド斜面S3は、外筒22の軸方向に沿った断面において、互いに逆向きに傾斜している。これと同様に、一対の内向きガイド斜面G3は、外筒22の軸方向に沿った断面において、互いに逆向きに傾斜している。これにより、ネジ部材72の回転に伴って、一対のスライド部材90が互いに離れる方向へ移動した場合に、外側レール110が外筒22側へ移動する。したがって、外筒22を拡大させることができる。
【0121】
さらに、一対の内向きスライド斜面S4が一対の外向きガイド斜面G4にそれぞれ接触された状態では、内筒24と外筒22とが軸方向にずれることが抑制される。これと同様に、一対の外向きスライド斜面S3が一対の内向きガイド斜面G3にそれぞれ接触された状態では、内筒24と外筒22とが軸方向にずれることが抑制される。これにより、外筒22の収縮又は拡大に伴って、ボビン20の重心位置が移動することが抑制される。したがって、ボビン20が安定する。
【0122】
なお、ボビン20の外筒22は、前述したように、巻取対象物Pが巻き付けられた状態で収縮される。その後、ボビン20は、図示しない引出し装置に装着される。そして、引出し装置によってボビン20を回転させることにより、ボビン20から巻取対象物Pが引き出される。この際、ボビン20は、例えば、内筒24内に挿入された引出し装置の回転軸を中心として回転される。
【0123】
また、ネジ部材72は、第一ネジ部N1と、第二ネジ部N2とを有している。第一ネジ部N1は、可動ナット84を介して一方のスライド部材90と接続されている。これに対して第二ネジ部N2は、第一ネジ部N1と逆ネジとされ、可動ナット84を介して他方のスライド部材90と接続されている。これにより、ネジ部材72の回転に伴って、一対のスライド部材90を、同時に反対方向へ移動させることができる。
【0124】
また、
図5Aに示されるように、隣り合う円弧状部42X,42Yの端部における両側には、外筒22の軸方向に対して一方側に傾斜する一対の傾斜部52K,62Kが設けられている。この一対の傾斜部52K,62Kは、回転装置30の外部ロール36及び内部ロール38が圧接される接触領域22Zに配置されている。
【0125】
ここで、接触領域22Zにおいて、隣り合う円弧状部42X,42Yの端部が外筒22の軸方向に対して平行する場合、外部ロール36及び内部ロール38が隣り合う円弧状部42X,42Yの端部を通過する際に、外部ロール36及び内部ロール38から円弧状部42X,42Yに作用する圧接力(回転力)が一時的に低下する可能性がある。また、接触領域22Zにおいて、隣り合う円弧状部42X,42Yの端部が外筒22の軸方向に対して平行する場合、例えば、隣り合う円弧状部42の端部間に段差があると、外部ロール36及び内部ロール38がその段差を一度に乗り越えることになる。したがって、外筒22の振動等が大きくなる可能性がある。
【0126】
これに対して本実施形態では、前述したように、接触領域22Zには、一対の傾斜部52K,62Kが配置されている。一対の傾斜部52K,62Kは、接触領域22Zにおいて、外筒22の軸方向に対して一方側に傾斜している。これにより、外部ロール36及び内部ロール38が隣り合う円弧状部42X,42Yの端部を通過する際に、外部ロール36及び内部ロール38から円弧状部42X,42Yに作用する圧接力の低下が抑制される。
【0127】
また、一対の傾斜部52K,62K間に段差があった場合、外部ロール36及び内部ロール38がその段差を一端側から徐々に乗り越えることになる。したがって、外筒22の振動が低減されるため、外筒22の破損等が抑制される。
【0128】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0129】
上記実施形態では、外筒22の軸方向に沿った断面において、外向きスライド斜面S3及び内向きスライド斜面S4が、外筒22の軸方向に対し、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って内筒24側(矢印R1側)へ傾斜している。また、外筒22の軸方向に沿った断面において、内向きガイド斜面G3及び外向きガイド斜面G4が、外筒22の軸方向に対し、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って内筒24側(矢印R1側)へ傾斜している。
【0130】
しかし、外向きスライド斜面及び内向きスライド斜面は、外筒22の軸方向に沿った断面において、外筒22の軸方向に対し、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って外筒22側(矢印R2側)へ傾斜されても良い。これと同様に、内向きガイド斜面G3及び外向きガイド斜面G4は、外筒22の軸方向に沿った断面において、外筒22の軸方向に対し、ネジ部材72の中央側から一端部72E1側へ向かうに従って外筒22側(矢印R2側)へ傾斜されても良い。この場合、一対のスライド部材が互いに接近する方向へ移動した場合、分割体40が外筒22の外側へ移動する。また、一対のスライド部材が互いに離れる方向へ移動した場合、分割体40が外筒22の中心C側へ移動する。
【0131】
また、上記実施形態では、スライド部材90と外側レール110との連結部に、スライド斜面(外向きスライド斜面S3、内向きスライド斜面S4)、及びガイド斜面(内向きガイド斜面G3、外向きガイド斜面G4)が設けられる。しかし、スライド斜面及びガイド斜面は、スライド部材90と内側レール100との連結部に設けられても良い。
【0132】
また、上記実施形態では、一対のスライド部材90が可動ナット84を介してネジ部材72に接続される。しかし、例えば、可動ナット84を省略し、一方のスライド部材90の貫通孔91に形成された雌ネジに、ネジ部材72の第一ネジ部N1を接続しても良い。これにより、上記実施形態と同様に、スライド部材90がネジ部材72に沿って移動可能となる。
【0133】
また、上記実施形態では、送りネジ機構70に、一対のスライド部材90が設けられている。しかし、一対のスライド部材90のうち一方のスライド部材90は、省略されても良い。この場合、ボビンには、例えば、分割体40と内筒24との軸方向のずれを制限する制限部材が設けられる。
【0134】
また、上記実施形態では、外筒22が4つの分割体40に分割される。しかし、外筒22は、2つ以上の分割体、より好ましくは3つ以上の分割体に分割することができる。
【0135】
また、上記実施形態では、複数の分割体40に送りネジ機構70がそれぞれ設けられる。しかし、送りネジ機構70は、複数の分割体40の少なくとも1つに設けることができる。
【0136】
また、上記実施形態では、コア体が、円筒状の内筒24とされる。しかし、コア体の形状は、円筒状に限らず、例えば、角柱状であっても良い。
【0137】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0138】
10 巻取装置
20 ボビン
22 外筒(筒状体)
22A 外周面(筒状体の外周面)
24 内筒(コア体)
30 回転装置
36 外部ロール
38 内部ロール
40 分割体
42 円弧状部
42X 円弧状部
42Y 円弧状部
52K 傾斜部
62K 傾斜部
70 送りネジ機構
72 ネジ部材
90 スライド部材(可動部材)
S3 外向きスライド斜面(スライド斜面)
S4 内向きスライド斜面(スライド斜面)
G3 内向きガイド斜面(ガイド斜面)
G4 外向きガイド斜面(ガイド斜面)
N1 第一ネジ部
N2 第二ネジ部
P 巻取対象物
R 外筒の径方向(筒状体の径方向)
R1 外筒の中心側(筒状体の中心側)