(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】画像形成装置及びその故障箇所を特定する方法
(51)【国際特許分類】
H02P 8/38 20060101AFI20221206BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221206BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20221206BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02P8/38
G03G15/00 107
G03G21/00 510
H04N1/00 002A
(21)【出願番号】P 2019080768
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政行
(72)【発明者】
【氏名】石田 岳士
(72)【発明者】
【氏名】江口 達也
(72)【発明者】
【氏名】木俣 明則
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-4098(JP,A)
【文献】特開2005-65380(JP,A)
【文献】国際公開第2016/207952(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/38
G03G 15/00
G03G 21/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読み取り部と、
前記画像読み取り部を清掃する清掃部と、
前記清掃部を回転させるモーターと、
前記モーターのトルクを調整するトルク調整部と、
前記モーターの脱調を検出する脱調検出部と、
故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンを記憶する記憶部と、
前記モーターを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記トルク調整部により、前記モーターのトルクを段階的に下げていき、
前記脱調検出部により、前記モーターの脱調を検出し、
前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した前記故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、
前記比較の結果に基づいて、故障箇所を特定する、画像形成装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記画像形成装置の正常時における前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンをさらに記憶し、
前記制御部は、前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した前記画像形成装置の正常時における前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、前記画像形成装置が正常状態であるか否かを判定する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像形成装置が正常状態ではないと判定したことに基づいて、前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した前記故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した負荷トルクパターンとを比較することは、各負荷トルクパターンの前記モーターの脱調時のトルク及びトルクの変化のタイミングを比較することを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記清掃部は、前記画像読み取り部を清掃するブラシを含み、
前記制御部は、前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した前記故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとの比較の結果に基づいて、前記ブラシの変形を検出し、
前記ブラシの変形を検出したことに基づいて、前記トルク調整部により、前記ブラシの変形を修正する方向に前記モーターを回転させる、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記トルク調整部は、前記モーターへの供給電流を段階的に変化させることにより、前記モーターのトルクを調整する、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記トルク調整部は、前記モーターの立上げカーブを段階的に変化させることにより、前記モーターを脱調させる、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記脱調検出部は、前記モーターの回転を検出するエンコーダーを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記脱調検出部は、前記モーターが基準位置に位置するか否かを検出する基準位置検出センサーを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成装置に対する命令の入力を受け付ける操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記操作部を介して、故障箇所特定モードの実行命令を取得したことに基づいて、前記モーターの故障箇所を特定する、請求項1から9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
外部の端末と通信するための通信処理部をさらに備え、
前記制御部は、前記通信処理部を介して、前記外部の端末から故障箇所特定モードの実行命令を取得したことに基づいて、前記モーターの故障箇所を特定する、請求項1から10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
画像読み取り部と、
画像読み取り部を清掃するための第1の清掃部及び第2の清掃部と、
負荷イナーシャの異なる前記第1の清掃部及び前記第2の清掃部を回転させるモーターと、
前記モーターのトルクを調整するトルク調整部と、
前記モーターの脱調を検出する脱調検出部と、
故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンを記憶する記憶部と、
前記モーターを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記トルク調整部により、前記モーターを第1の回転速度で回転させ、
前記脱調検出部により前記モーターの脱調を検出したときの第1の負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した前記故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、
前記トルク調整部により、前記モーターを前記第1の回転速度と異なる第2の回転速度で回転させ、
前記脱調検出部により前記モーターの脱調を検出したときの第2の負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した前記故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、
前記第1の回転速度及び前記第2の回転速度における比較に基づいて、前記第1の清掃部及び前記第2の清掃部のいずれが故障したのかを特定する、画像形成装置。
【請求項13】
画像形成装置の故障箇所を特定するための方法であって、
画像読み取り部を清掃する清掃部を回転させるモーターのトルクを段階的に下げるステップと、
前記モーターの脱調を検出するステップと、
前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、予め記憶部に記憶してある故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較するステップと、
前記比較の結果に基づいて、故障箇所を特定するステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記記憶部に前記画像形成装置の正常時における前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンをさらに記憶するステップと、
前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した前記画像形成装置の正常時における前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、前記画像形成装置が正常状態であるか否かを判定するステップとをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記画像形成装置が正常状態ではないと判定したことに基づいて、前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した前記故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した負荷トルクパターンとを比較することは、各負荷トルクパターンの前記モーターの脱調時のトルク及びトルクの変化のタイミングを比較することを含む、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記清掃部は、前記画像読み取り部を清掃するブラシを含み、
前記モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、前記記憶部から読み出した前記故障箇所毎の前記モーターの脱調時の負荷トルクパターンとの比較の結果に基づいて、前記ブラシの変形を検出するステップと、
前記ブラシの変形を検出したことに基づいて、前記ブラシの変形を修正する方向に前記モーターを回転させるステップをさらに含む、請求項13から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記画像読み取り部を清掃する清掃部を回転させるモーターのトルクを段階的に下げるステップは、前記モーターへの供給電流を段階的に変化させることにより、前記モーターのトルクを調整するステップを含む、請求項13から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記画像読み取り部を清掃する清掃部を回転させるモーターのトルクを段階的に下げるステップは、前記モーターの立上げカーブを段階的に変化させることにより、前記モーターを脱調させるステップを含む、請求項13から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記モーターの脱調を検出するステップは、前記モーターの回転を検出するエンコーダーにより前記モーターの脱調を検出するステップを含む、請求項13から19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関し、より特定的には、自動原稿送り装置の故障箇所の特定に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動原稿送り装置(ADF:Auto Document Feeder)を搭載する複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)等の画像形成装置が普及している。これらの画像形成装置は、ステッピングモーターや駆動ベルト等の複数の機械部品で構成されることが一般的である。
【0003】
従来、機械部品の長期使用による劣化や偶発的な故障が発生した場合、装置本体に備え付けられた液晶画面等にトラブルコードが表示され、保守担当者はトラブルコードを参照して故障箇所の修理を行っていた。しかし、トラブルコードではおおまかな故障範囲しか把握できず、保守担当者は、故障箇所の特定に多くの時間を必要とする場合があった。よって、故障箇所の特定は、保守運用のコスト増大の原因となっていた。そのため、装置の保守をサポートする方法が求められている。
【0004】
装置の保守をサポートする方法に関して、例えば、特開2005-065380号公報(特許文献1)には、「経時変化等に起因する負荷変動をステッピングモータが脱調する電流の変化に置き換えて、その変化からメカ駆動系の寿命を事前に予測することができる」画像形成装置管理システムが開示されている([要約]参照)。
【0005】
また、特開2012-135166号公報(特許文献2)には、「ステッピングモータに印加された駆動電流の値、及びステッピングモータが、脱調状態に移行することが予測される脱調前状態にある可能性の大小に基づいて、ステッピングモータへ印加する駆動電流を設定し、その駆動電流の設定値に基づいて求められる駆動対象の負荷状態に基づいて、駆動対象の寿命を予測する」寿命予測システムが開示されている([要約]参照)。
【0006】
また、特開2013-258686号公報(特許文献3)には、「駆動電流に応じた駆動力で被駆動部品を回転駆動する駆動モータに流れる該駆動電流の電流値を電流検出器で検出し、CPUが、電流検出器の検出した駆動電流値に基づいて被駆動部品等の駆動系統の状態を判定して、判定結果を操作表示部のディスプレイに報知出力する」画像形成装置が開示されている([要約]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-065380号公報
【文献】特開2012-135166号公報
【文献】特開2013-258686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3に開示された技術によると、装置の故障を検知できても故障箇所を特定できない。したがって、装置の故障箇所を特定する技術が必要とされている。
【0009】
本開示は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、装置の故障箇所を特定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある実施の形態に従う画像形成装置は、画像読み取り部と、画像読み取り部を清掃する清掃部と、清掃部を回転させるモーターと、モーターのトルクを調整するトルク調整部と、モーターの脱調を検出する脱調検出部と、故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンを記憶する記憶部と、モーターを制御する制御部とを備える。制御部は、トルク調整部により、モーターのトルクを段階的に下げていき、脱調検出部により、モーターの脱調を検出し、モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、比較の結果に基づいて、故障箇所を特定する。
【0011】
ある局面において、記憶部は、画像形成装置の正常時におけるモーターの脱調時の負荷トルクパターンをさらに記憶する。制御部は、モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した画像形成装置の正常時におけるモーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、画像形成装置が正常状態であるか否かを判定する。
【0012】
ある局面において、制御部は、画像形成装置が正常状態ではないと判定したことに基づいて、モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較する。
【0013】
ある局面において、画像形成装置のモーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した負荷トルクパターンとを比較することは、各負荷トルクパターンのモーターの脱調時のトルク及びトルクの変化のタイミングを比較することを含む。
【0014】
ある局面において、清掃部は、画像読み取り部を清掃するブラシを含む。制御部は、モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンとの比較の結果に基づいて、ブラシの変形を検出し、ブラシの変形を検出したことに基づいて、トルク調整部により、ブラシの変形を修正する方向にモーターを回転させる。
【0015】
ある局面において、トルク調整部は、モーターへの供給電流を段階的に変化させることにより、モーターのトルクを調整する。
【0016】
ある局面において、トルク調整部は、モーターの立上げカーブを段階的に変化させることにより、モーターを脱調させる。
【0017】
ある局面において、脱調検出部は、モーターの回転を検出するエンコーダーを含む。
ある局面において、脱調検出部は、モーターが基準位置に位置するか否かを検出する基準位置検出センサーを含む。
【0018】
ある局面において、画像形成装置は、画像形成装置に対する命令の入力を受け付ける操作部をさらに備える。制御部は、操作部を介して、故障箇所特定モードの実行命令を取得したことに基づいて、モーターの故障箇所を特定する。
【0019】
ある局面において、画像形成装置は、外部の端末と通信するための通信処理部をさらに備える。制御部は、通信処理部を介して、外部の端末から故障箇所特定モードの実行命令を取得したことに基づいて、モーターの故障箇所を特定する。
【0020】
他の実施の形態に従う画像形成装置は、画像読み取り部と、画像読み取り部を清掃するための第1の清掃部及び第2の清掃部と、負荷イナーシャの異なる第1の清掃部及び第2の清掃部を回転させるモーターと、モーターのトルクを調整するトルク調整部と、モーターの脱調を検出する脱調検出部と、故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンを記憶する記憶部と、モーターを制御する制御部とを備える。制御部は、トルク調整部により、モーターを第1の回転速度で回転させ、脱調検出部によりモーターの脱調を検出したときの第1の負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、トルク調整部により、モーターを第1の回転速度と異なる第2の回転速度で回転させ、脱調検出部によりモーターの脱調を検出したときの第2の負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、第1の回転速度及び第2の回転速度における比較に基づいて、第1の清掃部及び第2の清掃部のいずれが故障したのかを特定する。
【0021】
他の実施の形態に従うと、画像形成装置の故障箇所を特定するための方法が提供される。この方法は、画像読み取り部を清掃する清掃部を回転させるモーターのトルクを段階的に下げるステップと、モーターの脱調を検出するステップと、モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、予め記憶部に記憶してある故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較するステップと、比較の結果に基づいて、故障箇所を特定するステップとを含む。
【0022】
ある局面において、方法は、記憶部に画像形成装置の正常時におけるモーターの脱調時の負荷トルクパターンをさらに記憶するステップと、モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した画像形成装置の正常時におけるモーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較し、画像形成装置が正常状態であるか否かを判定するステップとをさらに含む。
【0023】
ある局面において、方法は、画像形成装置が正常状態ではないと判定したことに基づいて、モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンとを比較するステップをさらに含む。
【0024】
ある局面において、モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した負荷トルクパターンとを比較することは、各負荷トルクパターンのモーターの脱調時のトルク及びトルクの変化のタイミングを比較することを含む。
【0025】
ある局面において、清掃部は、画像読み取り部を清掃するブラシを含む。方法は、モーターの脱調を検出したときの負荷トルクパターンと、記憶部から読み出した故障箇所毎のモーターの脱調時の負荷トルクパターンとの比較の結果に基づいて、ブラシの変形を検出するステップと、ブラシの変形を検出したことに基づいて、ブラシの変形を修正する方向にモーターを回転させるステップをさらに含む。
【0026】
ある局面において、画像読み取り部を清掃する清掃部を回転させるモーターのトルクを段階的に下げるステップは、モーターへの供給電流を段階的に変化させることにより、モーターのトルクを調整するステップを含む。
【0027】
ある局面において、画像読み取り部を清掃する清掃部を回転させるモーターのトルクを段階的に下げるステップは、モーターの立上げカーブを段階的に変化させることにより、モーターを脱調させるステップを含む。
【0028】
ある局面において、モーターの脱調を検出するステップは、モーターの回転を検出するエンコーダーによりモーターの脱調を検出するステップを含む。
【発明の効果】
【0029】
本技術によれば、装置の故障箇所を特定することが可能である。
この発明の上記及び他の目的、特徴、局面及び利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】ある実施の形態に従う画像形成装置100の一構成例を示す図である。
【
図2】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の第1の例を示す図である。
【
図3】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合の第1の例を示す図である。
【
図4】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合とモーター201の負荷トルクとの関係の第1の例を示す図である。
【
図5】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合の第2の例を示す図である。
【
図6】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合とモーター201の負荷トルクとの関係の第2の例を示す図である。
【
図7】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合の第3の例を示す図である。
【
図8】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合とモーター201の負荷トルクとの関係の第3の例を示す図である。
【
図9】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合箇所を特定する処理の一例である。
【
図10】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合の修正方法の一例を示す図である。
【
図11】ある実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の第2の例を示す図である。
【
図12】ある実施の形態に従うモーター201の回転数と負荷イナーシャとの関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0032】
[第1の実施の形態]
<A.装置構成>
まず、本実施の形態に従う画像形成装置100の装置構成について説明する。以下では、典型例として、複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)として実装される画像形成装置100について説明する。画像形成装置100は、例えばカラー画像形成装置であるが、本実施の形態に係る技術思想の適用対象は、カラー画像形成装置に限定されるわけではなく、当該技術思想は、モノクロ画像形成装置にも適用可能である。
【0033】
図1は、本実施の形態に従う画像形成装置100の一構成例を示す図である。
図1を参照して、画像形成装置100は、プリントエンジン110と、原稿読取部120と、排出トレイ130とを備える。
【0034】
プリントエンジン110は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、キー・プレート(K)のそれぞれのトナー像を生成するイメージングユニット10C,10M,10Y,10K(以下、「イメージングユニット10」と総称することもある)と、中間転写ベルト12と、中間転写体駆動ローラー14,16と、ベルトクリーニング部18と、転写ローラー20,21と、定着部22と、給紙部30と、送出ローラー32と、搬送ローラー34,36と、制御部50と、記憶部51とを含む。イメージングユニット10は、感光体1と、帯電部2と、露光部3と、現像部4(対応するイメージングユニット10が生成するトナー像の色に対応させて、4C、4M、4Y、4Kとそれぞれ記載する)と、クリーニング部5と、中間転写体接触ローラー6とを含む。原稿読取部120は、イメージスキャナー122と、原稿給紙台124と、自動原稿送り装置126と、原稿排紙台128とを含む。
【0035】
プリントエンジン110は、給紙部30内の媒体40に対して印刷処理を行う。媒体40は、送出ローラー32により、給紙部30から搬送される。さらに、媒体40は、搬送ローラー34,36により、転写ローラー20,21に搬送される。媒体40は、転写ローラー20,21により、トナー像を転写された後、定着部22により、定着処理が行われ、排出トレイ130に排出される。
【0036】
各イメージングユニット10及び中間転写ベルト12は、媒体40に転写するトナー像を生成する。帯電部2は、感光体1の表面を一様に帯電する。露光部3は、レーザー書き込み等により、指定された画像パターンに従って感光体1の表面を露光することで、その表面上に静電潜像を形成する。現像部4は、像担持体である感光体1上に形成された静電潜像をトナー像として現像する。
【0037】
感光体1の表面に形成されたトナー像は、中間転写体接触ローラー6によって中間転写ベルト12に転写される。中間転写ベルト12上には、それぞれの感光体1からトナー像が順次転写されて、4色のトナー像が重ね合わされることになる。重ね合わされたトナー像は、転写ローラー20及び21によって、中間転写ベルト12から媒体40へ転写される。
【0038】
原稿読取部120は、原稿を読み取って、その読み取り結果をプリントエンジン110に対する入力画像として出力する。イメージスキャナー122は、プラテンガラス上に配置された原稿をスキャンする。自動原稿送り装置126は、原稿給紙台124に配置された原稿を連続的にスキャンする。原稿給紙台124上に配置された原稿は、送出ローラー(図示しない)により1枚ずつ送られ、イメージスキャナー122または自動原稿送り装置126内に配置されたイメージセンサーによって順次スキャンされる。スキャン後の原稿は、原稿排紙台128へ排出される。
【0039】
制御部50は、画像形成装置100全体を制御する。記憶部51は、画像形成装置100のファームウェアや各種設定を記憶する。制御部50は、記憶部51から必要なデータやプログラムを参照する。
【0040】
図2は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の第1の例を示す図である。
図2を参照して、自動原稿送り装置126の清掃機構は、モーター201と、駆動ベルト202と、プーリー203と、回転検出板204と、センサー205と、清掃部206とを含む。清掃部206は、回転軸207と、軸受208と、ホルダー209と、駆動シャフト210と、清掃ブラシ211と、テープ212と、モーター制御部215と、電流計測部216とを含む。なお、
図2(A)は清掃機構の正面図であり、
図2(B)はモーター201側の側面図であり、
図2(C)は清掃部206の断面図である。
【0041】
モーター201は、駆動ベルト202を介して、清掃部206の一部を回転駆動させる。モーター201は、モーター制御部215を介して、制御部50により制御される。ある局面において、ステッピングモーターが、モーター201として使用されても良い。
【0042】
駆動ベルト202は、モーター201の回転をプーリー203に伝える。回転検出板204は、プーリー203の側面に備え付けられており、プーリー203と共に回転する。センサー205は、スリットを有し、スリットを通過する回転検出板204を検知する。制御部50は、回転検出板204がセンサー205のスリットを通過することに基づいて、プーリー203が基準位置にいると判定する。ある局面において、赤外線透過センサーが、センサー205として使用されても良い。また、ある局面において、エンコーダーが、回転検出板204及びセンサー205の代わりに使用されても良い。
【0043】
制御部50は、回転検出板204及びセンサー205、または、エンコーダーを用いて、モーター201が脱調したか否かを検出する。制御部50は、モーター201に供給するパルスと、モーター201の回転移動量とを比較することで、モーター201の脱調が発生したか否かを判定することができる。
【0044】
回転軸207は、プーリー203に接続されている。また、回転軸207は、軸受208を介してホルダー209に固定される。また、回転軸207は、駆動シャフト210の内部を通る。ある局面において、回転軸207と駆動シャフト210とは一体型であり、駆動シャフト210の両端から回転軸207が突き出ていても良い。
【0045】
駆動シャフト210の一部は平面となっており、その平面上に清掃ブラシ211を有する。また、駆動シャフト210の外周上には、テープ212が巻かれている。清掃ブラシ211は、駆動シャフト210の回転に合わせて、自動原稿送り装置126の原稿読み取りガラス213の表面を清掃する。自動原稿送り装置126に取り込まれた原稿は、方向214に向かって送られる。
【0046】
モーター制御部215は、モーター201に供給する電力を調整することにより、モーター201のトルクを制御する。電流計測部216は、モーター201に供給される電流を計測する。制御部50は、電流計測部216の計測結果を取得し、モーター201の消費電力の波形パターンまたはモーター201の負荷トルクパターンを算出する。
【0047】
以下、
図2の自動原稿送り装置126の清掃機構を例に、機械部品の不具合の発生箇所をどのように特定するかについて説明する。
【0048】
<B.故障箇所の特定方法>
図3は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合の第1の例を示す図である。
図3に示す例では、駆動シャフト210の外周上のテープ212の一部が剥がれている。この場合、清掃ブラシ211の先端301及びテープ212の剥がれ302の2カ所が、ホルダー209の開口端303,305及び原稿読み取りガラス213のガラス面304に接触する。
【0049】
モーター201によって回転する物体と、他の回転しない物体との間で接触が発生した場合、接触面において、モーター201の回転を妨げる向きに抵抗力が発生する。そのため、モーター201が回転するために必要なトルクは増大する。制御部50は、このモーター201のトルク変化量及び変化のタイミングを計測することにより、故障箇所を推定することができる。
【0050】
図4は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合とモーター201の負荷トルクとの関係の第1の例を示す図である。制御部50は、モーター201に供給する電力(以下、設定電流と表す)を徐々に下げていくことにより、モーター201を脱調させることができる。そして、制御部50は、モーター201が脱調するときに、モーター201に発生する負荷トルクのパターン(以下、負荷トルクパターンと表す)を計測する。
図4を用いて、自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合が負荷トルクパターンに及ぼす影響について説明する。
【0051】
最初に、
図4(A)を用いて、自動原稿送り装置126の清掃機構に異常が無い場合の負荷トルクパターンの例について説明する。制御部50が設定電流401を徐々に下げていき、設定電流402になったときにモーター201が脱調したと仮定する。負荷トルクパターン403Aは、モーター201が脱調したときのモーター201にかかる負荷トルクパターンである。
【0052】
ポイント404,405,406は、清掃ブラシ211の先端301が、ホルダー209の開口端303,305及び原稿読み取りガラス213のガラス面304に接触したときの負荷トルクである。負荷トルクパターン403Aは、ポイント404,405,406以外は平坦であることがわかる。
【0053】
次に、
図4(B)を用いて、
図3に示す自動原稿送り装置126の清掃機構に故障「テープ212の剥がれ」が発生した場合の負荷トルクパターンの例について説明する。制御部50は、設定電流401を徐々に下げていき、設定電流402になったときにモーター201が脱調したと仮定する。負荷トルクパターン403Bは、モーター201が脱調したときのモーター201にかかる負荷トルクパターンである。
【0054】
負荷トルクパターン403Bは、負荷トルクパターン403Aと比較して、負荷トルクが大きく上昇するポイント407,408,409が増えていることがわかる。ポイント407,408,409は、テープ212の剥がれ302が、ホルダー209の開口端303,305及び原稿読み取りガラス213のガラス面304に接触したときの負荷トルクである。
【0055】
図4の例に示すように、故障箇所「テープ212の剥がれ」が発生した場合、ポイント404,405,406に続いて高い負荷トルクが発生する「負荷トルクパターン403B」が観測されることがわかる。ある局面において、制御部50は、負荷トルクパターンの代わりに、モーター201に供給した電力パターンを観測しても良い。
【0056】
記憶部51は、故障箇所「テープ212の剥がれ」及び「負荷トルクパターン403B」を予め関連付けて記憶しておく。制御部50は、検査モード等により、設定電流401を少しずつ下げていき、負荷トルクパターンを算出する。そして、制御部50は、記憶部51から「負荷トルクパターン403B」を読み出して、算出した「負荷トルクパターン」と比較する。制御部50は、比較結果に基づいて、故障箇所が「テープ212の剥がれ」であるか否かを判定することができる。
【0057】
上記のように、記憶部51が、故障箇所毎にモーター201の脱調発生時の負荷トルクパターンを予め記憶しておくことにより、制御部50は、算出した「負荷トルクパターン」と、記憶部51に予め記憶されている「負荷トルクパターン」とを比較することで適切に故障箇所(または、故障箇所)を特定することができる。
【0058】
以下、
図5~8を参照して、他の故障内容及び負荷トルクパターンについて例示する。
図5は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合の第2の例を示す図である。
図5に示す例では、駆動シャフト210上の清掃ブラシ211が変形している。この場合、変形した清掃ブラシ211の先端501が、ホルダー209の開口端303,305及び原稿読み取りガラス213のガラス面304に接触する。
【0059】
図6は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合とモーター201の負荷トルクとの関係の第2の例を示す図である。
図6(A)は、
図4(A)と同様に自動原稿送り装置126の清掃機構に異常が無い場合の負荷トルクパターンの例を示している。
【0060】
次に、
図6(B)を用いて、
図5に示す自動原稿送り装置126の清掃機構に異常「清掃ブラシ211の変形」がある場合の負荷トルクパターンの例について説明する。制御部50は、設定電流401を徐々に下げていき、設定電流402になったときにモーター201が脱調したと仮定する。負荷トルクパターン603Bは、モーター201が脱調したときのモーター201にかかる負荷トルクパターンである。
【0061】
負荷トルクパターン603Bは、負荷トルクパターン403Aと比較して、ポイント404,405,406が無くなり、代わりにポイント607,608,609が増えていることがわかる。
【0062】
ポイント607,608,609の負荷トルクは、ポイント404,405,406の負荷トルクよりも小さい。これは、清掃ブラシ211が変形し、根元からの長さが短くなり、その結果、清掃ブラシ211と、ホルダー209の開口端303,305及び原稿読み取りガラス213のガラス面304との接触による抵抗が減少したためである。
【0063】
また、ポイント607,608,609の発生タイミングは、ポイント404,405,406の発生タイミングよりもわずかに遅れていることがわかる。これは駆動シャフト210の回転方向が反時計回りであるのに対し、清掃ブラシ211が右側に傾いているためである。よって、清掃ブラシ211と開口端303,305及びガラス面304とが接触するタイミングは、正常時のタイミングよりも遅くなる。
【0064】
図6の例に示すように、故障「清掃ブラシ211の変形」が発生した場合、清掃ブラシ211の先端501が、ホルダー209の開口端303,305及び原稿読み取りガラス213のガラス面304に接触したときの負荷トルクが減少すると共に、接触タイミングが変化した「負荷トルクパターン603B」が観測されることがわかる。ある局面において、制御部50は、負荷トルクパターンの代わりに、モーター201に供給した電力パターンを観測しても良い。
【0065】
記憶部51は、故障箇所「清掃ブラシ211の変形」及び「負荷トルクパターン603B」を予め関連付けて記憶しておく。制御部50は、検査モード等により、設定電流401を少しずつ下げていき、負荷トルクパターンを算出する。そして、制御部50は、記憶部51から「負荷トルクパターン603B」を読み出して、算出した「負荷トルクパターン」と比較する。制御部50は、比較結果に基づいて、故障箇所が「清掃ブラシ211の変形」であるか否かを判定することができる。
【0066】
図7は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合の第3の例を示す図である。
図7に示す例では、回転軸207及び軸受208の間にゴミが詰まり、回転軸207と軸受208との間の抵抗が大きくなっている。
【0067】
図8は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合とモーター201の負荷トルクとの関係の第3の例を示す図である。
図8(A)は、
図4(A)と同様に自動原稿送り装置126の清掃機構に異常が無い場合の負荷トルクパターンの例を示している。
【0068】
次に、
図8(B)を用いて、
図7に示す自動原稿送り装置126の清掃機構に故障「回転軸207及び軸受208の間のゴミ詰まり」がある場合の負荷トルクパターンの例について説明する。制御部50は、設定電流401を徐々に下げていき、設定電流402になったときにモーター201が脱調したと仮定する。負荷トルクパターン803Bは、モーター201が脱調したときのモーター201にかかる負荷トルクパターンである。
【0069】
負荷トルクパターン803Bは、負荷トルクパターン403Aと比較して、全体的に負荷トルクが大きくなっていることがわかる。これは、回転軸207及び軸受208の間にゴミが詰まったことで、回転軸207及び軸受208の間の抵抗が大きくなったためである。
【0070】
図8の例に示すように、故障「回転軸207及び軸受208の間のゴミ詰まり」が発生した場合、全体的に負荷トルクが大きい「負荷トルクパターン803B」が観測されることがわかる。ある局面において、制御部50は、負荷トルクパターンの代わりに、モーター201に供給した電力パターンを観測しても良い。
【0071】
記憶部51は、故障箇所「回転軸207及び軸受208の間のゴミ詰まり」及び「負荷トルクパターン803B」を予め関連付けて記憶しておく。制御部50は、検査モード等により、設定電流401を少しずつ下げていき、負荷トルクパターンを算出する。そして、制御部50は、記憶部51から「負荷トルクパターン803B」を読み出して、算出した「負荷トルクパターン」と比較する。制御部50は、比較結果に基づいて、故障箇所が「回転軸207及び軸受208の間のゴミ詰まり」であるか否かを判定することができる。
【0072】
図3~
図8を用いて説明したように、モーター201の脱調発生時の負荷トルクパターンは、故障箇所毎に、特徴的な負荷トルクパターンを示す。そのため、記憶部51に、想定される故障箇所と、故障箇所に対応する負荷トルクパターンとを関連付けて記憶させておくことにより、制御部50は、異常発生時に算出した「負荷トルクパターン」と、記憶部51に予め記憶されている「負荷トルクパターン」とを比較することで適切に故障箇所を特定することができる。
【0073】
<C.故障箇所を特定する処理の流れ>
図9は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合箇所を特定する処理の一例である。ある局面において、制御部50は、
図9の処理を行うためのプログラムを記憶部51から読み出して実行しても良い。
【0074】
ステップS910において、制御部50は、画像形成装置100に備え付けられた操作パネルから、自動原稿送り装置126の清掃機構の不具合箇所を特定する動作モード(以下、サービスモードと表す)への移行命令の入力があるか否かを判定する。ある局面において、制御部50は、ネットワークを介して外部端末からサービスモードへの移行命令の入力を取得しても良い。また、ある局面において、制御部50は、
図9の処理を定期的に実行しても良い。その場合、ステップS910の処理は実行されなくても良い。
【0075】
制御部50は、画像形成装置100に備え付けられた操作パネルから、サービスモードへの移行命令の入力があると判定した場合(ステップS910にてYES)、制御をステップS920に移す。そうでない場合(ステップS910にてNO)、制御部50は、処理を終了する。
【0076】
ステップS920において、制御部50は、モーター制御部215によりモーター201に供給する電力量を調整することで、モーター201のトルクを段階的に下げていく。または、制御部50は、モーター制御部215によりモーター201の立上げカーブを段階的に変化させることで、前記モーターを脱調させる。
【0077】
ステップS930において、制御部50は、回転検出板204及びセンサー205、または、エンコーダーを用いて、モーター201が脱調したか否かを検出する。制御部50は、モーター201の脱調を検出した場合(ステップS930にてYES)、制御をステップS940に移す。そうでない場合(ステップS930にてNO)、制御部50は、制御をステップS920に移して、モーター201のトルクをさらに下げる。
【0078】
ステップS940において、制御部50は、電流計測部216により、モーター201が脱調したときの、モーター201への供給電流の波形を取得する。制御部50は、取得したモーター201への供給電流の波形に基づいて、モーター201の負荷トルクパターンを算出する。ステップS920~ステップS940までの処理は、
図4(B),
図6(B),
図8(B)の異常発生時の負荷トルクパターンを求める処理に対応する。
【0079】
ステップS950において、制御部50は、記憶部51から、自動原稿送り装置126の清掃機構の「正常時の負荷トルクパターン」を読み出す。制御部50は、「算出した負荷トルクパターン」と、「正常時の負荷トルクパターン」とを比較し、自動原稿送り装置126の清掃機構に異常が発生したか否かを判定する。制御部50は、自動原稿送り装置126の清掃機構に異常が発生したと判定した場合(ステップS950にてYES)、制御をステップS960に移す。そうでない場合(ステップS950にてNO)、制御部50は、処理を終了する。
【0080】
制御部50は、「算出した負荷トルクパターン」が「正常時の負荷トルクパターン」と異なるときのみ、ステップS960以降の処理を実行することで、自動原稿送り装置126の清掃機構の故障診断の実行時間を減らすことができる。また、制御部50は、
図9の処理を自動原稿送り装置126の清掃機構の定期診断として使用可能である。
【0081】
ステップS960において、制御部50は、記憶部51から、自動原稿送り装置126の清掃機構の「故障箇所毎の負荷トルクパターン」を読み出す。制御部50は、「算出した負荷トルクパターン」と、「故障箇所毎の負荷トルクパターン」とを比較し、故障箇所を特定する。
【0082】
ステップS970において、制御部50は、ステップS960において求めた故障箇所に応じたトラブルコードを発行する。制御部50は、故障箇所を検索キーとしてトラブルコードを記憶部51から読み出しても良い。
【0083】
ステップS980において、制御部50は、画像形成装置100に備え付けられた液晶画面等(図示せず)に、ステップS960及びステップS970で求めた故障箇所とトラブルコードとを表示する。保守担当者は、画像形成装置100の液晶画面に表示された故障箇所とトラブルコードとを参照することで故障箇所を把握する。
【0084】
なお、ステップS950及びステップS960における各負荷トルクパターンの比較処理は、各負荷トルクパターンが完全一致である必要はなく、各負荷トルクパターンが所定の一致度以上であるか否かを判定する処理であっても良い。また、ステップS950及びステップS960における各負荷トルクパターンの比較処理は、各負荷トルクパターンの「モーターの脱調時のトルク」及び「トルクの変化のタイミング」を比較することを含む。
【0085】
図9を用いて説明したように、制御部50は、予め記憶部51に記憶されている「正常時の負荷トルクパターン」及び「故障箇所毎の負荷トルクパターン」を用いた検査を行うことで、画像形成装置100の診断及び故障時の修理作業を容易にする。
【0086】
[第2の実施の形態]
次に第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態で説明した自動原稿送り装置126の清掃機構の故障箇所の特定方法に基づいて、故障箇所を自動で修理する方法に関するものである。
【0087】
図10は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の故障箇所の修理方法の一例を示す図である。
図10(A)に示す例では、清掃ブラシ211は右側に曲がっている。この場合、制御部50は、
図9の処理により、自動原稿送り装置126の清掃機構の故障箇所「清掃ブラシ211の変形(右側)」を特定する。
【0088】
次に、
図10(B)に示すように、制御部50は、駆動シャフト210を時計回りに回転させる。こうすることにより、清掃ブラシ211は、ホルダー209の開口端に接触し、「清掃ブラシ211の変形(右側)」が修正される。制御部50は、駆動シャフト210を時計回りに回転させた後に、再度
図9の処理を行うことでステップS950において、「清掃ブラシ211の変形(右側)」が修正されたか否かを確認することができる。
【0089】
図10(C)に示す例では、清掃ブラシ211は左側に曲がっている。この場合、制御部50は、
図9の処理により、自動原稿送り装置126の清掃機構の故障箇所「清掃ブラシ211の変形(左側)」を特定する。
【0090】
次に、
図10(D)に示すように、制御部50は、駆動シャフト210を反時計回りに回転させる。こうすることにより、清掃ブラシ211は、ホルダー209の開口端に接触し、「清掃ブラシ211の変形(左側)」が修正される。制御部50は、駆動シャフト210を反時計回りに回転させた後に、再度
図9の処理を行うことでステップS950において、「清掃ブラシ211の変形(左側)」が修正されたか否かを確認することができる。
【0091】
図10を用いて説明したように、清掃ブラシ211の変形等の部品の交換の不要な故障に関しては、制御部50は、
図9の処理で特定した故障箇所に応じて、モーター201を制御することにより、故障箇所をある程度修正することができる。
【0092】
[第3の実施の形態]
次に第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、モーター201が複数の清掃部を駆動させる場合における、自動原稿送り装置126の清掃機構の故障箇所の特定方法に関するものである。
【0093】
図11は、本実施の形態に従う自動原稿送り装置126の清掃機構の第2の例を示す図である。
図11に示す例では、モーター201は、第1の清掃部1101と、第2の清掃部1102とを駆動させる。
【0094】
本実施の例では、第1の清掃部1101のプーリー203の歯数と、第2の清掃部1102のプーリー203の歯数は同じである。よって、第1の清掃部1101及び第2の清掃部1102の各回転数は同じになる。そのため、制御部50は、第2の清掃部1102側の回転検出板204及びセンサー205により、第1の清掃部1101及び第2の清掃部1102の両方の回転速度及び脱調を検出できる。
【0095】
ある局面において、第1の清掃部1101のプーリー203の歯数が、第2の清掃部1102のプーリー203の歯数と異なる場合は、第1の清掃部1101及び第2の清掃部1102の両方に、回転検出板204及びセンサー205が設けられても良い。
【0096】
ある局面において、第1の清掃部1101の回転軸207の素材と、第2の清掃部1102の回転軸207の素材とは、異なるものであると仮定する。また、第1の清掃部1101の負荷イナーシャは、第2の清掃部1102の負荷イナーシャより小さいものと仮定する。
【0097】
負荷イナーシャとは、ある物体を回転させようとしたときの回転のしにくさを意味し、慣性モーメントともいう。例えば、第1の清掃部1101の回転軸207の素材が樹脂製であり、第2の清掃部1102の回転軸207の素材が金属製であるとする。この場合、一般に樹脂は金属と比較して軽量であるため、第1の清掃部1101のほうが、負荷イナーシャは小さいことになる。
【0098】
図11に示す例では、モーター201が第1の清掃部1101及び第2の清掃部1102の両方を回転駆動させるため、故障箇所の特定が困難になる。そのため、制御部50は、第1の清掃部1101及び第2の清掃部1102の負荷イナーシャの特性の違いを利用して故障箇所を特定する。
【0099】
図12は、本実施の形態に従うモーター201の回転数と負荷イナーシャとの関係の一例を示す図である。グラフ1201は、第1の清掃部1101の回転速度におけるモーター201の出力トルクを示す。グラフ1202は、第2の清掃部1102の回転速度におけるモーター201の出力トルクを示す。
【0100】
モーター201の回転速度が低いポイント1203では、グラフ1201と、グラフ1202との間に差異はない。しかし、モーター201の回転速度が高いポイント1204では、グラフ1201と、グラフ1202との間で、必要なモーター出力トルクに大きな差がでる。
【0101】
制御部50は、少なくともポイント1203よりも高い回転数における複数のポイントで、
図9の処理を行い,モーター201の脱調時の負荷トルクパターンを測定する。その場合、負荷イナーシャの低い第1の清掃部1101が故障した場合と、負荷イナーシャの高い第2の清掃部1102が故障した場合とでは、測定できる負荷トルクパターンが異なる。
【0102】
記憶部51は、第1の清掃部1101及び第2の清掃部1102のそれぞれが故障した場合における、それぞれの負荷トルクパターンを予め記憶しておき、制御部50は、「複数箇所で算出した負荷トルクパターン」と、記憶部51から読み出した「故障箇所毎の負荷トルクパターン」とを比較することで、適切に故障箇所を特定することができる。
【0103】
第1~3の実施の形態では、自動原稿送り装置126を例に説明したが、本実施の内容を画像形成装置100の他のモーターを使用する機構に適用しても良い。
【0104】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1 感光体、2 帯電部、3 露光部、4 現像部、5 クリーニング部、6 中間転写体接触ローラー、10,10C,10K,10M,10Y イメージングユニット、12 中間転写ベルト、14,16 中間転写体駆動ローラー、18 ベルトクリーニング部、20,21 転写ローラー、22 定着部、30 給紙部、32 送出ローラー、34,36 搬送ローラー、40 媒体、50 制御部、51 記憶部、100 画像形成装置、110 プリントエンジン、120 原稿読取部、122 イメージスキャナー、124 原稿給紙台、126 自動原稿送り装置、128 原稿排紙台、130 排出トレイ、201 モーター、202 駆動ベルト、203 プーリー、204 回転検出板、205 センサー、206 清掃部、207 回転軸、208 軸受、209 ホルダー、210 駆動シャフト、211 清掃ブラシ、212 テープ、213 原稿読み取りガラス、214 方向、215 モーター制御部、216 電流計測部、301,501 先端、302 剥がれ、303,305 開口端、304 ガラス面、401,402 設定電流、403A,403B,603B,803B 負荷トルクパターン、404,405,406,407,408,409,607,608,609,1203,1204 ポイント、1101 第1の清掃部、1102 第2の清掃部、1201,1202 グラフ。