(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/768 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
H01L21/90 P
(21)【出願番号】P 2019083232
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】目黒 和音
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武寛
(72)【発明者】
【氏名】山下 侑佑
(72)【発明者】
【氏名】浦上 泰
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-171632(JP,A)
【文献】特開2002-043314(JP,A)
【文献】特開2008-085244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/768
H01L 21/3205-21/3213
H01L 23/522
H01L 23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の表面に、リンとボロンの少なくとも一方を含む層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程と、
前記コンタクトホールの形成前または形成後に、前記層間絶縁膜を水素雰囲気下で820℃以上かつ850℃
未満の温度でアニールする工程
と、
前記コンタクトホールを形成する前記工程および前記アニールする前記工程の後に、前記コンタクトホール内にニッケル膜を形成し、熱処理により前記ニッケル膜と前記半導体基板を反応させてニッケルシリサイド層を形成する工程と、
前記ニッケルシリサイド層を形成した後に、前記層間絶縁膜の表面をフッ酸により洗浄する工程、
を有する製造方法。
【請求項2】
前記アニールする前記工程では、100%の濃度の水素ガス中で前記層間絶縁膜をアニールする、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、半導体装置の製造方法が開示されている。この製造方法は、半導体基板の表面にリンとボロンの少なくとも一方を含む層間絶縁膜を形成する工程と、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程を有する。また、この製造方法は、コンタクトホールの形成前または形成後に、水素雰囲気下で層間絶縁膜をアニールする工程(以下、水素アニールという場合がある)を有する。水素雰囲気下で層間絶縁膜をアニールすることで、層間絶縁膜に水素を充填し、層間絶縁膜の流動性を低下させることができる。このため、その後に層間絶縁膜が加熱されても、コンタクトホールの側壁の角部が丸まることが抑制される。これによって、半導体装置の耐久性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素アニールを行うと、後の工程で層間絶縁膜の表面に凹凸が生じる場合がある。これは、水素アニール中に、Si(シリコン)やO(酸素)と結合しているB(ボロン)やP(リン)がH(水素)によって置換されることでBやPが層間絶縁膜中で遊離して凝集するためだと考えられる。本明細書では、層間絶縁膜に対して水素アニールを行うときに、層間絶縁膜の表面での凹凸の発生を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面にリンとボロンの少なくとも一方を含む層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程と、前記コンタクトホールの形成前または形成後に前記層間絶縁膜を水素雰囲気下で820℃以上かつ850℃以下の温度でアニールする工程、を有する。
【0006】
この製造方法では、820℃以上かつ850℃以下の温度で水素アニールを行う。水素アニールを行うので、コンタクトホールの側壁の角部が丸まることを抑制できる。また、820℃以上かつ850℃以下の温度での水素アニールを行うと、層間絶縁膜の表面での凹凸の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】半導体装置の製造方法を示すフローチャート。
【
図3】コンタクトホール形成後のSiC基板の断面図。
【
図7】ニッケル膜除去後のSiC基板の断面図(比較例)。
【
図8】コンタクトホールの形状と水素アニール温度の関係を示す表。
【
図9】グラフェンの発生と水素アニール温度の関係を示す表。
【
図10】層間絶縁膜表面の凹凸の発生と水素アニール温度の関係を示す表。
【
図11】バリアメタル形成後のSiC基板の断面図。
【
図14】電極配線形成後のSiC基板の断面図(比較例)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施形態の半導体装置の製造方法を示している。ステップS2では、
図2に示すように、SiC基板12の表面に、層間絶縁膜14を形成する。ここでは、BとPの少なくとも一方を含む層間絶縁膜14を形成する。典型的には、Pを8~12wt%の濃度で含み、Bを7~10wt%の濃度で含むBPSG膜を層間絶縁膜14として形成する。BとPの少なくとも一方を有する層間絶縁膜14は成膜時に流動性を有するので、層間絶縁膜14の表面が平坦となる。
【0009】
次に、ステップS4において、層間絶縁膜14に対して水素アニールを実施する。すなわち、層間絶縁膜14を備えるSiC基板12を炉内に設置し、炉内に水素ガス(H2)を導入して、SiC基板12とともに層間絶縁膜14を加熱する。ここでは、100%の濃度の水素ガス中で、層間絶縁膜14を820℃以上かつ850℃以下の温度に所定時間維持する。水素アニールを行うことで、層間絶縁膜14中に水素が充填される。水素アニールの温度が高すぎると、層間絶縁膜14中でBやPが凝集するとともに層間絶縁膜14中に多数の空孔が形成される。これに対し、水素アニールの温度を850℃以下とすることで、層間絶縁膜14中でのBやPの凝集を抑制するとともに層間絶縁膜14中での空孔の発生を抑制することができる。
【0010】
次に、ステップS6において、
図3に示すように、層間絶縁膜14を部分的にエッチングすることによってコンタクトホール16を形成する。コンタクトホール16は、
図3の紙面に対して垂直な方向(Y方向)に直線状に伸びている。図示していないが、
図3の左右方向(X方向)に、複数のコンタクトホール16を間隔を空けて形成する。例えば、各コンタクトホール16のX方向の幅を、500~1000nm程度とすることができる。また、各コンタクトホール16の間のX方向の間隔を、500~1000nm程度とすることができる。
【0011】
次に、ステップS8において、コンタクトホール16内にニッケルシリサイド層を形成する。詳細には、ステップS8は以下のように実施される。まず、
図4に示すように、層間絶縁膜14の表面とコンタクトホール16の内面を覆うように、ニッケル膜18を形成する。次に、SiC基板12を熱処理することによって、ニッケル膜18とSiC基板12を反応させる。これによって、
図5に示すように、ニッケル膜18とSiC基板12との界面(コンタクトホール16の底面)にニッケルシリサイド膜20を形成する。次に、
図6に示すように、シリサイド化していないニッケル膜18をエッチングにより除去する。
【0012】
ステップS8でニッケルシリサイド膜20を形成するための熱処理(以下、シリサイド化処理という)を行うときに、層間絶縁膜14が高温となる。シリサイド処理よりも前に水素アニールを行っていないと、シリサイド化処理のときに層間絶縁膜14が流動し、
図7に示すようにコンタクトホール16の側壁の角部が丸まってしまう。これに対し、本実施形態の製造方法では、シリサイド化処理よりも前に層間絶縁膜14に対して水素アニールを行っているので、シリサイド化処理のときに層間絶縁膜14がほとんど流動しない。このため、コンタクトホール16の側壁の角部が丸まる現象が生じ難い。
図8は、水素アニール温度と、コンタクトホール16の形状の関係を調査した実験結果を示している。
図8に示すように、水素アニールの温度が800℃の場合にはコンタクトホール16の側壁の角部が丸まるが、水素アニールの温度を820℃以上とすることでコンタクトホール16の側壁の角部がほとんど丸まらない。
【0013】
また、ステップS8のシリサイド化処理のときに、層間絶縁膜14の表面にグラフェンが発生する場合がある。グラフェン発生のメカニズムは明確になってはいないが、シリサイド化処理時にSiC基板12からニッケル膜18へ炭素が溶け出し、シリサイド化処理後にニッケル膜18の温度が低下するときにニッケル膜18中の炭素が析出するためと推測される。層間絶縁膜14の表面にグラフェンが存在すると、封止樹脂に対する密着性の低下、コンタクトホール16におけるコンタクト抵抗の増加等の問題が生じる場合がある。
図9は、水素アニール温度と、グラフェンの発生の有無との関係を調査した実験結果を示している。
図9に示すように、水素アニールの温度が800℃の場合にはグラフェンが発生する。水素アニールの温度を820℃以上の場合には、グラフェンがほとんど発生しない。これは、層間絶縁膜14中に充填された水素がグラフェンの発生を阻害するためと推測される。
【0014】
次に、ステップS10で、フッ酸(HF)により層間絶縁膜14の表面を洗浄する。水素アニールの温度が高すぎると、フッ酸洗浄時に、層間絶縁膜14の表面に凹凸が形成される場合がある。これは、水素アニールの温度が高すぎると、層間絶縁膜14の内部に多数の空孔が形成されるとともに、層間絶縁膜14の表面にBまたはPが凝集した凝集部が形成されるためと推測される。層間絶縁膜14に空孔が存在すると、フッ酸洗浄時に空孔の部分が凹部となると考えられる。また、層間絶縁膜14に凝集部が存在すると、凝集部がフッ酸に溶け難いので、フッ酸洗浄時に凝集部が凸状に残存すると考えられる。このため、層間絶縁膜14の表面に凹凸が形成されると考えられる。
図10は、水素アニールの温度と、フッ酸洗浄後の層間絶縁膜14の表面状態との関係を調査した実験結果を示している。
図10に示すように、水素アニールの温度が870℃の場合には層間絶縁膜14の表面に凹凸が形成される。水素アニールの温度が850℃以下の場合には、層間絶縁膜14の表面に凹凸がほとんど発生しない。
【0015】
次に、ステップS12で、
図11に示すように、層間絶縁膜14の表面とニッケルシリサイド膜20の表面にバリアメタル22を形成する。その後、バリアメタル22を熱処理する。
【0016】
次に、ステップS14で、
図12に示すように、コンタクトホール16内に導電体24(例えば、タングステン)を充填する。より詳細には、まず、バリアメタル22の表面全体に導電体24を成長させて、コンタクトホール16を導電体24で埋め込む。次に、導電体24をエッチバックして、コンタクトホール16内にのみ導電体24を残存させる。
【0017】
次に、ステップS16で、
図13に示すように、導電体24上に電極配線26(例えば、AlSi)を形成する。電極配線26は、コンタクトホール16(すなわち、導電体24、バリアメタル22、及び、ニッケルシリサイド膜20)を介してSiC基板12に接続される。
【0018】
ステップS2~S16を実施した後に、SiC基板12を複数に分割することで、半導体装置が製造される。
【0019】
なお、
図7のようにコンタクトホール16の側壁の角部が丸まっていると、
図14のようにコンタクトホール16内に残存する導電体24の表面に凹部24aが形成され易い。凹部24aが存在すると、凹部24a内に電極配線26が形成される。凹部24a内の電極配線26が熱によって膨張・収縮すると、層間絶縁膜14とSiC基板12に対して高い応力が加わる。これに対し、コンタクトホール16の側壁の角部が丸まっていないと、
図13のように導電体24の表面に凹部が形成されず、層間絶縁膜14及びSiC基板12に加わる応力を抑制することができる。したがって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0020】
以上に説明したように、この製造方法では、水素アニールの温度を820℃以上かつ850℃以下に制御する。
図8~10から明らかなように、水素アニールの温度を820℃以上かつ850℃以下とすることで、層間絶縁膜14の表面の凹凸、コンタクトホール16の側壁の角部の丸まり、及び、グラフェンの発生のいずれも抑制できる。
【0021】
なお、上述した実施例では、ステップS4の水素アニールを、ステップS6のコンタクトホール16の形成よりも先に行った。しかしながら、ステップS4とステップS6の順序を入れ替えてもよい。すなわち、水素アニールを、コンタクトホール16の形成よりも後に行ってもよい。層間絶縁膜14に対する水素アニールは、ステップS8のシリサイド化処理よりも前であればいつ行ってもよい。
【0022】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0023】
12 :SiC基板
14 :層間絶縁膜
16 :コンタクトホール
18 :ニッケル膜
20 :ニッケルシリサイド膜
22 :バリアメタル
24 :導電体
24a :凹部
26 :電極配線