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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両用サスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 11/16 20060101AFI20221206BHJP
   B60G 3/20 20060101ALI20221206BHJP
   B60G 15/07 20060101ALI20221206BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20221206BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B60G11/16
B60G3/20
B60G15/07
F16F9/32 B
F16F1/12 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019090909
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020185857
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗林 卓也
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-142109(JP,U)
【文献】特開2008-024176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 11/16
B60G 3/20
B60G 15/07
F16F 9/32
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)筒状のハウジングと、そのハウジング内に配設されたピストンと、基端部がピストンに連結されてそのハウジングから延び出すピストンロッドとを含んで構成されるショックアブソーバと、(B)そのショックアブソーバが貫通するコイルスプリングであるサスペンションスプリングとが一体化されたスプリング/アブソーバユニットを備えた車両用サスペンション装置であって、
前記ショックアブソーバおよび前記サスペンションスプリングが、バウンド状態で伸び、リバウンド状態で縮むように構成され、かつ、車体の分担荷重を、前記サスペンションスプリングの弾性引張反力によって支持するように構成され、
前記サスペンションスプリングの一端部が、前記ショックアブソーバのハウジングに、他端部が、前記ショックアブソーバのピストンロッドの先端部に、当該サスペンションスプリングが引張荷重を受けた状態において支持可能とされた車両用サスペンション装置。
【請求項2】
フルバウンド状態とフルリバウンド状態との少なくとも一方において前記サスペンションスプリングが引張荷重を受けた状態とされている請求項1に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項3】
フルバウンド状態,フルリバウンド状態,それらの中間のいずれの状態においても、前記サスペンションスプリングが引張荷重を受けた状態とされている請求項2に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項4】
前記サスペンションスプリングの前記一端部と前記他端部との各々を端部とした場合において、
前記サスペンションスプリングの前記一端部と前記他端部との少なくとも一方に対して、前記ショックアブソーバの前記ハウジングまたは前記ピストンロッドの先端部に前記サスペンションスプリングの端部の端が当接するスプリング座が設けられ、そのスプリング座との間で前記サスペンションスプリングの端部を挟持する挟持部材を備えた請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用サスペンション装置。
【請求項5】
前記挟持部材が、前記スプリング座に支持されている請求項4に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項6】
前記挟持部材が、前記ショックアブソーバの前記ハウジングまたは前記ピストンロッドの先端部に支持されている請求項4に記載の車両用サスペンション装置。
【請求項7】
当該車両用サスペンション装置が、
車輪を回転可能に保持するキャリアと、
それぞれが、一端部において車体に回動可能に支持されて他端部が前記キャリアに連結されたロアアームおよびアッパアームと、
一端部において車体に揺動可能に支持された揺動レバーと、
一端部が前記揺動レバーに連結され、他端部が、前記ロアアームと前記アッパアームとの一方に、その一方の前記一端部と前記他端部との間の箇所において連結されたリンクと
を備え、
前記ショックアブソーバが、一端部において車体に回動可能に支持され、他端部において前記揺動レバーに連結された請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の車両用サスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用サスペンション装置の多くは、例えば、下記特許文献に記載されているように、サスペンションスプリングとして、コイルスプリングを採用し、そのコイルスプリングの弾性圧縮反力によって、車体重量を支持する構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-83484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両用サスペンション装置の開発が盛んに行われる中、種々の形式の車両用サスペンション装置が存在する。コイルスプリングをサスペンションスプリングとして採用する車両用サスペンション装置において、フルバウンド状態若しくはフルリバウンド状態においてそのコイルスプリングを圧縮する方向に車体重量が作用しなかったり、そのコイルスプリングの弾性引張反力によって車体重量を支持するものも存在し得る。そのような車両用サスペンション装置は、コイルスプリング引張支持型サスペンション装置と呼ぶことができる。一方で、サスペンションスプリングであるコイルスプリングにショックアブソーバを貫通させるようにしてサスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング/アブソーバユニットも存在し、そのスプリング/アブソーバユニットでは、コイルスプリングの両端が、ショックアブソーバの筒状のハウジングと、ピストンロッドの先端部とに、それぞれが支持される。スプリング/アブソーバユニットを採用して上記コイルスプリング引張支持型サスペンション装置を構築できれば、その車両用サスペンション装置は、実用性の高いものとなる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い車両用サスペンション装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用サスペンション装置は、
(A)筒状のハウジングと、そのハウジング内に配設されたピストンと、基端部がピストンに連結されてそのハウジングから延び出すピストンロッドとを含んで構成されるショックアブソーバと、(B)そのショックアブソーバが貫通するコイルスプリングであるサスペンションスプリングとが一体化されたスプリング/アブソーバユニットを備えた車両用サスペンション装置であって、
前記ショックアブソーバおよび前記サスペンションスプリングが、バウンド状態で伸び、リバウンド状態で縮むように構成され、かつ、車体の分担荷重を、前記サスペンションスプリングの弾性引張反力によって支持するように構成され、
前記サスペンションスプリングの一端部が、前記ショックアブソーバのハウジングに、他端部が、前記ショックアブソーバのピストンロッドの先端部に、当該サスペンションスプリングが引張荷重を受けた状態において支持可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記スプリング/アブソーバユニットによれば、サスペンションスプリングであるコイルスプリングに引張荷重が作用している状態で、そのコイルスプリングの両端がショックアブソーバに支持可能とされている。本発明によれば、そのようなスプリング/アブソーバユニットを採用することで、実用性の高いコイルスプリング引張支持型サスペンション装置を構築することが可能となる。
【発明の態様】
【0007】
本発明の車両用サスペンション装置(以下、単に、「サスペンション装置」という場合がある)は、フルバウンド状態とフルリバウンド状態との少なくとも一方においてサスペンションスプリング(以下、単に、「スプリング」という場合がある)が引張荷重を受けた状態とされているものであってもよく、フルバウンド状態,フルリバウンド状態,それらの中間のいずれの状態においても、サスペンションスプリングが引張荷重を受けた状態とされたものであってもよい。言い換えれば、ストローク動作(車体と車輪との上下方向の相対動作)の範囲をストローク範囲と定義すれば、前者は、例えば、ストローク範囲の殆どにおいてスプリングが圧縮荷重を受けており、フルバウンド状態およびそれに近い状態と、フルリバウンド状態およびそれに近い状態との一方においてのみ、スプリングが引張荷重を受ける態様であり、後者は、ストローク範囲の全域においてスプリングが引張荷重を受ける態様である。ちなみに、フルバウンド状態とは、ストローク範囲において車体に対して車輪が最も上昇した状態を意味し、フルリバウンド状態とは、ストローク範囲において車体に対して車輪が最も下降した状態を意味する。
【0008】
ショックアブソーバ(以下、単に、「アブソーバ」という場合がある)のハウジングに支持されるスプリングの一端部と、アブソーバのピストンロッドの先端部に支持されるスプリングの他端部との各々を端部と呼んで、本発明のサスペンション装置におけるスプリングの両端部の各々のアブソーバによる支持の具体的構造に関して説明すれば、本発明のサスペンション装置は、例えば、スプリングの一端部と他端部との少なくとも一方に対して、アブソーバのハウジングまたはピストンロッドの先端部にスプリングの端部の端が当接するスプリング座を設け、挟持部材によって、スプリング座との間でスプリングの端部を挟持するような構造を、採用することが可能である。このような構造によれば、引張荷重がスプリングに作用している状態で、アブソーバによってスプリングの端部をしっかりと支持することが可能である。そのような構造の場合、挟持部材は、スプリング座に支持されてもよく、また、アブソーバのハウジングまたはピストンロッドの先端部に支持されてもよい。つまり、挟持部材がスプリング座を介して間接的にアブソーバに支持されてもよく、挟持部材がアブソーバに直接的に支持されてもよいのである。
【0009】
スプリングが引張荷重を受けた状態においてスプリングの両端部がアブソーバに支持されるサスペンション装置の構成について説明すれば、本発明のサスペンション装置は、例えば、(a)車輪を回転可能に保持するキャリアと、(b)それぞれが、一端部において車体に回動可能に支持されて他端部が前記キャリアに連結されたロアアームおよびアッパアームと、(c)一端部において車体に揺動可能に支持された揺動レバーと、(d)一端部が揺動レバーに連結され、他端部が、ロアアームとアッパアームとの一方に、その一方の一端部と他端部との間の箇所において連結されたリンクとを備え、アブソーバが、一端部において車体に回動可能に支持され、他端部において揺動レバーに連結されるように構成してもよい。揺動レバーとリンクを利用した上記構成を採用することにより、本発明のサスペンション装置は、ホイールストローク量(車輪と車体との相対上下動作の量)に対するショックアブソーバストローク量(ショックアブソーバの伸縮量)の比であるストローク比を、比較的大きくできることになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の車両用サスペンション装置を車両前方から見た図である。
図2】実施例の車両用サスペンション装置のフルバウンド状態およびフルリバウンド状態を示す斜視図である。
図3】実施例の車両用サスペンション装置が備えるスプリング/アブソーバユニットを示す斜視図および断面図である。
図4】実施例の車両用サスペンション装置における揺動レバー、ショックアブソーバ、リンクの互いの連結を示す斜視図である。
図5】実施例の車両用サスペンション装置の構成を模式的に示す図である。
図6】揺動レバー,リンクを用いない車両用サスペンション装置を車両前方から見た図である。
図7】実施例の車両用サスペンション装置におけるサスペンションスプリングのショックアブソーバによる支持を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例である車両用サスペンション装置を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【実施例
【0012】
[A]車両用サスペンション装置の全体構成
実施例のサスペンション装置は、車両前方からの視点において示される図1から解るように、ダブルウィッシュボーン型のサスペンション装置であり、車両の左前輪に対するサスペンション装置である。左前輪である車輪10は、ホイール12とタイヤ14とを含んで構成されている。大まかに言えば、本サスペンション装置は、車体16に着脱可能に取り付けられる支持体としてのベース板20と、車輪10を回転可能に保持するキャリアとしてのインホイールモータユニット22(以下、単に「ユニット22」と略す場合がある)と、一端部(基端部)においてベース板20に回動可能に支持されて他端部(先端部)がユニット22の下部に連結されたロアアーム24と、一端部(基端部)においてベース板20に回動可能に支持されて他端部(先端部)がユニット22の上部に連結されたアッパアーム26とを含んで構成されている。
【0013】
ユニット22は、ハウジング22a,ハウジング22a内に配設された電動モータおよび減速機、ハウジング22aによって回転可能に支持されたアクスルハブ22b等を含んで構成されており、ハウジング22a自体がキャリアとして機能すると考えることができる。ホイール12は、アクスルハブ22bに取り付けられ、電動モータは、アクスルハブ22bの回転駆動源、すなわち、車輪10の回転駆動源として機能する。
【0014】
ユニット22を省いて本サスペンション装置を示す図2図2(a)はフルバウンド状態を、図2(b)はフルリバウンド状態を、それぞれ示している)をも参照して説明すれば、ロアアーム24は、一端部が2つに分かれた、言い換えれば、他端部において2つのアームが合わさったような形状を有しており、一端部が、前後2箇所において、ベース板20の下端部に設けられた2つのブラケット20aに連結されている。同様に、アッパアーム26も、一端部が2つに分かれた、言い換えれば、他端部において2つのアームが合わさったような形状を有しており、一端部が、前後2箇所において、ベース板20の上端部に設けられた2つのブラケット20bに連結されている。
【0015】
ロアアーム24の他端部はトリポード型等速ジョイント28を介して、アッパアーム26の他端部はボールジョイント30を介して、それぞれユニット22と連結されており、ユニット22は、それらトリポード型等速ジョイント28,ボールジョイント30によって規定されるキングピン軸線KLまわりに回動可能とされている。つまり、車輪10は、転舵輪であり、キャリアとして機能するユニット22は、ステアリングナックルとしても機能する。
【0016】
また、本サスペンション装置は、液圧式のショックアブソーバ32(以下、「アブソーバ32」と略す場合がある)と、そのショックアブソーバ32が自身を貫通する状態で配設されたコイルスプリングであるサスペンションスプリング34(以下、「スプリング34」と略す場合がある)とが一体化されてスプリング/アブソーバユニットとして機能するスプリングアブソーバAssy36(以下、「SA/Assy36」と略す場合がある)を有している。図3(a)には、SA/Assy36の一部が拡大して示されている。
【0017】
図3(b)をも参照しつつ説明すれば、アブソーバ32は、筒状のハウジング32aと、ハウジング32a内に配設されたピストン32bと、基端部(下端部)がピストン32bに連結されて上方に向かってハウジング32aから延び出すピストンロッド32cとを含んで構成されている。ハウジング32a内は、ピストン32bによって2つの液室である上室32d,下室32eに区画されており、アブソーバ32の伸縮に応じて、ピストン32bに形成された連通路32fを介して、作動液が上室32dと下室32eとの間を行き交う。ピストン32bに設けられた弁32gは、この作動液の流れに抵抗を与え、その抵抗によってアブソーバ32は伸縮に対する減衰力を発生させる。なお、詳しい説明は省略するが、ハウジング32aは、2重筒とされて、2つの筒の間の筒間室に作動液が介在させられており、フリーピストン32hの下に設けられるとともに筒間室と連通するバッファ室32iの容積変動を許容することで、アブソーバ32の伸縮に伴う、上室32dと下室32eとの合計容積の変動を許容するようにされている。
【0018】
スプリング34の一端部(下端部)は、アブソーバ32のハウジング32aに、スプリング34の他端部(上端部)は、ピストンロッド32cの先端部(上端部)に、それぞれ支持され、スプリング34は、アブソーバ32の伸縮に伴って伸縮する。スプリング34の一端部を支持するための一端部支持構造40,他端部を支持するための他端部支持構造42については、後に詳しく説明する。アブソーバ32の一端部は、ベース板20の下端部に付設されたブラケット20cに、クレビス44を介して連結されている。つまり、アブソーバ32は、一端部(下端部)において、ベース板20に回動可能に支持されている。
【0019】
また、本サスペンション装置は、揺動レバー46、および、リンク48を含んで構成されている。図4をも参照しつつ説明すれば、ベース板20の上端部には、ブラケット20dが設けられており、揺動レバー46の一端部(基端部)は、そのブラケット20dに回動可能に連結されている。言い換えれば、揺動レバー46は、一端部においてベース板20に揺動可能に支持されている。揺動レバー46の他端部(先端部)には、アブソーバ32の他端部(上端部)、すなわち、アブソーバ32のピストンロッド32cの先端部が、回動可能に連結されている。
【0020】
リンク48は、一端部(上端部)が2つに分かれた、言い換えれば、他端部(下端部)において2つのアームが合わさったような形状を有しており、アッパアーム26の2つのアームの間を通るようにして配設されている。リンク48の一端部は、揺動レバー46の一端部と他端部との間において、揺動レバー46に回動可能に連結されている。言い換えれば、アブソーバ32は、リンク48の一端部が揺動レバー46に連結されている箇所よりも、揺動レバー46の一端部から遠い箇所において、揺動レバー46に連結されている。一方、リンク48の他端部は、ロアアーム24の一端部との他端部との間、すなわち、ロアアーム24に設けられたブラケット24aに、リンク48とロアアーム24とが相対回動可能となるように連結されている。
【0021】
なお、本サスペンション装置では、ロアアーム24に転舵装置50が保持されている。転舵装置50は、ロアアーム24の先端部に回転可能に保持されたトリポード型等速ジョイント28(以下、「ジョイント28」と略す場合がある)と、駆動源となる電動モータ52と、電動モータ52の回転をジョイント28に伝達する伝達機構(内部構造の図示を省略するが、ギヤトレインである)54とを含んで構成されている。さらに、本サスペンション装置には、図示を省略するが、ホイール12とともにアクスルハブ22bに保持されたディスクロータと、ユニット22のハウジング22aに支持されてディスクロータにブレーキパッドを押し付ける電動ブレーキアクチュエータとを含んで構成される電動ブレーキ装置も、配備されている。
【0022】
以上の説明から解るように、本サスペンション装置では、ロアアーム24,アッパアーム26,揺動レバー46,アブソーバ32のそれぞれの一端部が、車体16に取付られるべース板20に回動可能に支持されている。つまり、ロアアーム24,アッパアーム26,揺動レバー46,アブソーバ32のそれぞれの一端部は車体16に支持されていると考えることができるのである。また、本サスペンション装置は、支持体としてのベース板20を有し、そのベース板20が車体16に着脱可能とされることで、モジュール化されている。つまり、本サスペンション装置は、車体16に取り付けられる車輪保持モジュールと考えることができ、その車輪保持モジュールは、転舵装置50,ブレーキ装置をも含んでモジュール化されたものと考えることができるのである。そのようなモジュールを採用することで、車両の組み立て作業を簡便に行うことができる。
【0023】
[B]揺動レバー,リンクを用いた特徴的構成
以上説明した本サスペンション装置には、揺動レバー46,リンク48が採用されており、本サスペンション装置は、車両前方から見た図(以下、「車両前方視における図」という場合がある)である図5に模式的に示すような構成を有している。以下に、図5をも参照しつつ、本サスペンション装置の特徴的構成について説明する。
【0024】
本発明のサスペンション装置では、例えば、本実施例のサスペンション装置の上下を反転させて、揺動レバー46をベース板20の下端部において支持し、リンク48の他端部がアッパアーム26に連結するような構成を採用することも可能である。そのことに鑑みて、リンク48の他端部が連結されるロアアーム24とアッパアーム26との一方を連結アームと呼べば、本実施例のサスペンション装置は、ロアアーム24が連結アームとされている。そして、車両前方視において、連結アームであるロアアーム24とリンク48とが連結される箇所を第1連結箇所C1と、ロアアーム24がベース板20に支持される箇所を支持箇所C0と、第1連結箇所C1と支持箇所C0との距離を第1距離L1とし、ロアアーム24とユニット22とが連結される第2連結箇所C2と、その第2連結箇所C2と支持箇所C0との距離を第2距離L2とした場合において、第1距離L1が、第2距離L2の60%以上とされている。具体的には、約70%とされている。
【0025】
図6に、一般的なサスペンション装置を、同じ若しくは類似する構成要素を実施例のサスペンション装置と同じ符号で示せば、そのサスペンション装置、すなわち、揺動レバー46,リンク48を採用しないサスペンション装置では、アブソーバ32とロアアーム24とが連結される箇所をアブソーバ連結箇所CAとし、アブソーバ連結箇所CAと支持箇所C0との距離をアブソーバ距離LAとした場合において、アブソーバ距離LAは、第2距離L2の約20%程度である。アブソーバ32,SA/Assy36は、ある程度の太さがあるため、一般的なサスペンション装置では、図1に示す本実施例のサスペンション装置における第1連結箇所C1程は、アブソーバ連結箇所CAを第2連結箇所C2に近づけることができず、アブソーバ距離LAは、大きくても、第2距離L2の50%程度にしかならない。そのことは、車輪10が転舵輪であり、ユニット22がステアリングナックルとして機能する場合に、特に顕著である。そのため、図6に示す一般的なサスペンション装置では、ホイールストローク量(車輪と車体との相対上下動作の量)ΔSWに対するショックアブソーバストローク量(ショックアブソーバの伸縮量)ΔSAの比であるストローク比RSは、50%程度にしかならない。したがって、ショックアブソーバの効率は低いと言わざるを得ない。言い換えれば、あるストローク動作(車輪10と車体16との相対上下動作)に対して減衰力を発生させる場合に、ショックアブソーバは、比較的大きな力を発生させる必要があり、ショックアブソーバが大型化(大径化)してしまう可能性がある。
【0026】
それに対して、本サスペンション装置では、第1距離L1を第2距離L2に対して比較的大きくすることができるため、ストローク比RSを比較的大きくすることができ、ショックアブソーバの効率を比較的高くすることが可能である。その結果、ショックアブソーバの小型化(小径化)が可能となる。
【0027】
さらに言えば、本サスペンション装置では、先に説明したように、車両前方視において、アブソーバ32の他端部は、リンク48の一端部が揺動レバー46に連結されている箇所よりも、揺動レバー46の一端部から遠い箇所において、揺動レバー46に連結されている。言い換えれば、図5図1に示すように、揺動レバー46がベース板20に支持される箇所をレバー支持箇所CL0と、リンク48が揺動レバー46に連結される箇所を第3連結箇所C3と、第3連結箇所C3とレバー支持箇所CL0との距離を第3距離L3とし、アブソーバ32の先端部が揺動レバー46に連結される箇所を第4連結箇所C4と、第4連結箇所C4とレバー支持箇所CL0との距離を第4距離L4とした場合において、第3距離L3が第4距離L4より小さくされている。具体的には、第3距離L3が、第4距離L4の75%程度とされている。そのため、ストローク比RSは、100%に近い値となっている。
【0028】
[C]ショックアブソーバによるサスペンションスプリングの支持の構造
図6に示す一般的なサスペンション装置では、ストローク動作の範囲をストローク範囲と定義すれば、そのストローク範囲の全域において、スプリング34は、圧縮荷重を受けている。言い換えれば、車体16の当該サスペンション装置が受け持つ分の重量である分担重量を、スプリング34の弾性圧縮反力によって支持している。
【0029】
それに対して、本サスペンション装置は、車体16の分担重量を、スプリング34の弾性引張反力によって支持している。解り易く言えば、図2(a)に示すフルバウンド状態(ストローク範囲において、車輪10が車体16に対して最も上昇した状態)におけるスプリング34の長さよりも、図2(b)に示すフルリバウンド状態(ストローク範囲において、車輪10が車体16に対して最も下降した状態)におけるスプリング34の長さが、短くなっている。そのため、本サスペンション装置では、先に説明したスプリング34の一端部を支持するための一端部支持構造40および他端部を支持するための他端部支持構造42に対して、一般的なサスペンション装置では行う必要のない特別な工夫が凝らされている。なお、本サスペンション装置では、フルバウンド状態,フルリバウンド状態,それらの中間のいずれの状態においても、スプリング34が引張荷重を受けた状態とされている。
【0030】
図7をも参照しつつ詳しく説明すれば、一端部支持構造40は、図7(b),図3(b)に示すように、スプリング34の下端が当接する下端スプリング座60と、その下端スプリング座60との間でスプリング34の下端部を挟持する挟持部材である挟持リング62とを含んで構成されている。下端スプリング座60は、スプリング34の下端に沿って傾斜する座面60aを有するフランジ付の円環状部材であり、挟持リング62は、スプリング34の下端部の線材の傾斜に沿った挟持面62aを有するフランジ付きの円環状部材である。図3に示すように、アブソーバ32のハウジング22aの外周には、雄ねじ64が形成されており、その雄ねじ64に螺合する雌ねじ60b,62bが、下端スプリング座60、挟持リング62の各々に設けられている。下端スプリング座60、挟持リング62は、ねじを利用して、上下方向の位置調整を容易に行いつつスプリング34の下端部を挟み込むことが可能とされている。ちなみに、スプリング34の下端と下端スプリング座60との間には、緩衝用のゴムリング66が介在させられている。
【0031】
一方で、他端部支持構造42は、図7(a),図3(a)に示すように、スプリング34の上端が緩衝用のゴムリング68を介して当接する上端スプリング座70と、それぞれが、その上端スプリング座70との間でスプリング34の上端部を挟持する挟持部材である2つのフック72とを含んで構成されている。上端スプリング座70は、概して円板状をなす第1板材70aと概してハット形状をなす第2板材70bとが接合されて形成されたものであり、アブソーバ32のピストンロッド32cの先端部に固定された概して円板状の支持板74が、第1板材70aと第2板材70bとの間に、緩衝ゴム70cを介して支持されている。2つのフック72は、上端スプリング座70に120°ピッチで設けられた雌ねじ穴70dのうちの2つに、それぞれ、ボルト76によって締結されている。具体的には、スプリング34の上端部の形状を考慮し、2つのフック72のうちの1つは、スプリング34の上端部の巻き線の終端付近の箇所を掛止し、もう1つは、その箇所から線材に沿って240°離れた箇所において、掛止するようにされている。2つのフック72の各々は、自身の弾性反力によって、スプリング34の他端部を、上端スプリング座70に、ゴムリング68を介して挟み付ける。なお、解り易さを考慮して、図3(b)では、ボルト76および雌ねじ穴70dの位置と、フック72の位置とが、周方向においてズレて示されている。
【0032】
以上説明した一端部支持構造40および他端部支持構造42によって、本サスペンション装置では、スプリング34の一端部が、アブソーバ32のハウジング32aに、他端部が、アブソーバ32のピストンロッド32cの先端部に、当該スプリング34が引張荷重を受けた状態において支持可能とされているのである。そのような一端部支持構造40および他端部支持構造42を有するSA/Assy36を採用することで、本サスペンション装置は、実用性の高いコイルスプリング引張支持型サスペンション装置が構築されているのである。
【0033】
上記下端スプリング座60,上記上端スプリング座70を、スプリング34の端が当接する「スプリング座」と、上記挟持リング62,上記フック72を、スプリング座との間でスプリング34の端部を挟持する「挟持部材」と、スプリング34の端部が支持されるアブソーバ32のハウジング32a,ピストンロッド32cの先端部を、「アブソーバの支持部」と、それぞれ総称すれば、上記一端部支持構造40は、挟持部材が直接的にアブソーバの支持部に支持される構造(以下、「直接支持構造」という場合がある)とされ、上記他端部支持構造42は、挟持部材がスプリング座に支持されることで挟持部材が間接的にアブソーバの支持部に支持される構造(以下、「間接支持構造」という場合がある)とされている。間接支持構造では、サスペンションスプリングの弾性引張反力がスプリング座に作用するが、直接支持構造では、サスペンションスプリングの弾性引張反力がスプリング座に作用しない。
【0034】
[D]変形例
サスペンションスプリングの一端部を支持する構造は、実施例のサスペンション装置では、直接支持構造とされていたが、間接支持構造であってもよい。また、サスペンションスプリングの他端部を支持する構造は、実施例のサスペンション装置では、間接支持構造とされていたが、直接支持構造であってもよい。
【0035】
実施例のサスペンション装置では、ハウジング32aからピストンロッド32cが上方に延び出すようにアブソーバ32が設けられていたが、本発明は、ハウジングからピストンロッドが下方に延び出すようにアブソーバが設けられたサスペンション装置、すなわち、アブソーバを上下倒置させたようなサスペンション装置にも適用可能である。
【0036】
実施例のサスペンション装置では、フルバウンド状態,フルリバウンド状態,それらの中間のいずれの状態においても、すなわち、ストローク範囲の全域にわたって、スプリング34が引張荷重を受けた状態となるが、本発明は、フルバウンド状態とフルリバウンド状態との少なくとも一方においてサスペンションスプリングが引張荷重を受けた状態、言い換えれば、フルバウンド状態とフルリバウンド状態とのいずれかにおいて、サスペンションスプリングが圧縮荷重を受けた状態となるようなサスペンション装置にも適用可能である。
【0037】
さらに、実施例のサスペンション装置では、ロアアーム24にリンク48が連結されるように構成されていたが、本発明のサスペンション装置は、アッパアームにリンクが連結されるように構成されていてもよい。端的に言えば、本発明のサスペンション装置は、構成要素の配置が上下方向において逆になったような構成(上下倒置した構成)のものであってよい。
【符号の説明】
【0038】
10:車輪 12:ホイール 16:車体 20:ベース板〔支持体〕 22:インホイールモータユニット〔キャリア〕〔ステアリングナックル〕 24:ロアアーム 26:アッパアーム 32:ショックアブソーバ 32a:ハウジング 32b:ピストン 32c:ピストンロッド 34:サスペンションスプリング〔コイルスプリング〕 36:スプリングアブソーバAssy〔スプリング/アブソーバユニット〕 40:一端部支持構造 42:他端部支持構造 46:揺動レバー 48:リンク 50:転舵装置 60:下端スプリング座 62:挟持リング〔挟持部材〕 70:上端スプリング座 72:フック〔挟持部材〕 KL:キングピン軸線 C0:支持箇所 CL0:レバー支持箇所 C1:第1連結箇所 C2:第2連結箇所 C3:第3連結箇所 C4:第4連結箇所 CA:アブソーバ連結箇所 L1:第1距離 L2:第2距離 L3:第3距離 L4:第4距離 LA:アブソーバ距離 ΔSW:ホイールストローク量 ΔSA:アブソーバストローク量 RS:ストローク比
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7