IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図1
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図2
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図3
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図4
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図5
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図6
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図7
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図8
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図9
  • 特許-作業車両用コンソールユニット 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】作業車両用コンソールユニット
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B60R7/04 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019117872
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021003960
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐 勝広
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀明
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-083921(JP,U)
【文献】特開2012-200473(JP,A)
【文献】特開2019-056397(JP,A)
【文献】特開2006-034502(JP,A)
【文献】特開2016-132423(JP,A)
【文献】特開2013-95230(JP,A)
【文献】特開2017-21636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両のキャビンに搭載されるコンソールユニットであって、
前記キャビンに取付けられるコンソール基部と、
前記コンソール基部に対して昇降可能であるアームレストと、
前記コンソール基部に対して回動可能である回動基部と、前記回動基部に取付けられ前記回動基部と一体に回動する作業車両用操作部と、を有し、その回動中心に対して前記作業車両用操作部を昇降させるコンソール回動部と、
前記コンソール回動部と前記コンソール基部との一方に配置されているラック部と、
前記コンソール回動部と前記コンソール基部との他方に配置され前記ラック部に噛合するピニオン部と、
オペレータによる力が入力されるコンソール操作部と、
前記コンソール操作部に入力された力を前記ピニオン部および前記ラック部に伝達して前記コンソール回動部を回動させ、かつ、前記コンソール操作部への前記入力が停止しているときに前記コンソール回動部の位置変化を規制する伝達機構と
前記コンソール回動部の内部に配置されている付勢部材と、を具備し、
前記付勢部材は、前記回動中心に挿し込まれた回動軸に装着されているトーションスプリングからなり、前記ピニオン部を前記ラック部側に付勢する、作業車両用コンソールユニット。
【請求項2】
前記伝達機構は、
前記コンソール操作部から前記ピニオン部及び前記ラック部に向けた力の伝達を許可し、前記ラック部および前記ピニオン部から前記コンソール回動部に向けた力の伝達を規制する、ラチェット機構および/またはクラッチ機構を有する、請求項1に記載の作業車両用コンソールユニット。
【請求項3】
前記ピニオン部は前記コンソール回動部に配置される、請求項1または請求項2に記載の作業車両用コンソールユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両用操作部を具備し、作業車両のキャビンに搭載されるコンソールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械等の作業車両に搭載される作業車両用操作部は、一般に、作業車両用コンソールユニットに配設され、作業車両のキャビンにおいて座席の側方に配置される。この種の作業車両のオペレータは、座席に着座しつつ、当該座席の側方に配置された作業車両用操作部を操作することで、作業車両を操作し得る。
作業車両用コンソールユニットのなかには、上記の作業車両用操作部に加えて、アームレストを具備するものがある。作業車両用操作部の操作中にアームレストで腕を支えることで、オペレータの疲労が軽減される。
【0003】
ここで、身長等のオペレータの体格の差に対応するために、作業車両用コンソールユニットを位置変化可能にする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、コンソールを上下方向および/または前後方向に移動調整可能としたコンソール調整装置が紹介されている。当該コンソール調整装置は、コンソールを上下方向に移動調整可能な上下昇降手段および/またはコンソールを前後方向に移動調整可能な前後スライド手段を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-187487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作業車両による各種の作業は、平坦な場所でのみ行われるとは限らない。例えば、ブルドーザやショベルカー等の土木作業用の作業車両であれば、傾斜面上で停車して作業を行う場合もある。このような場合、作業車両は傾斜面の傾斜角度に応じて傾き、当該作業車両に搭載される座席およびコンソールユニットもまた傾く。座席の傾きが大きければ、当該座席に着座するオペレータに不自然な姿勢での作業を強いることとなり、作業効率の悪化が懸念される。
【0006】
オペレータによる作業効率の向上を図るためには、座席の背もたれ(所謂シートバック)の角度を適宜調整することで、座席に着座したオペレータの姿勢を鉛直に近づけるのが有効と考えられる。しかし乍ら、座席の背もたれの角度を調整すると、コンソールユニットとオペレータとの位置関係が変化し、場合によっては、オペレータの作業環境が却って悪化する虞もある。
【0007】
特許文献1に紹介されているコンソール調整装置によると、コンソールを上下方向および/または前後方向に位置変化させることができるため、コンソールに配設されている作業車両用操作部およびアームレストもまたコンソールと一体に上下方向および/または前後方向に位置変化し得る。しかし、このようなコンソール調整装置によってもコンソールを傾けることはできないため、作業車両用操作部およびアームレストとオペレータとの位置関係を好適に修正することは困難である。
また、この種のコンソール調整装置によると、作業車両用操作部とアームレストとが一体に位置変化するために、これらの相対位置を独立して調整することができない。このため、オペレータの体格や作業車両の傾きによっては、作業車両用操作部およびアームレストを、座席に着座したオペレータに対して好適な位置にまで位置変化させ難い場合があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、オペレータの作業環境を改善し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する作業車両用コンソールユニットは、作業車両のキャビンに搭載されるコンソールユニットであって、
前記キャビンに取付けられるコンソール基部と、
前記コンソール基部に対して昇降可能であるアームレストと、
前記コンソール基部に対して回動可能である回動基部と、前記回動基部に取付けられ前記回動基部と一体に回動する作業車両用操作部と、を有し、その回動中心に対して前記作業車両用操作部を昇降させるコンソール回動部と、
前記コンソール回動部と前記コンソール基部との一方に配置されているラック部と、
前記コンソール回動部と前記コンソール基部との他方に配置され前記ラック部に噛合するピニオン部と、
オペレータによる力が入力されるコンソール操作部と、
前記コンソール操作部に入力された力を前記ピニオン部および前記ラック部に伝達して前記コンソール回動部を回動させ、かつ、前記コンソール操作部への前記入力が停止しているときに前記コンソール回動部の位置変化を規制する伝達機構と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作業車両用コンソールユニットによると、オペレータの作業環境を改善し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のコンソールユニットを分解した様子を模式的に表す説明図である。
図2】作業車両のキャビンに搭載した実施例1のコンソールユニットを模式的に表す説明図である。
図3】実施例1のコンソールユニットにおけるコンソール回動部が動作している様子を模式的に表す説明図である。
図4】実施例1のコンソールユニットにおける回動基部の要部を模式的に表す説明図である。
図5】実施例1のコンソールユニットにおける回動基部の要部を模式的に表す説明図である。
図6】実施例1のコンソールユニットにおける回動基部の要部を模式的に表す説明図である。
図7】実施例1のコンソールユニットにおけるラック部およびピニオン部を模式的に説明する説明図である。
図8】実施例1のコンソールユニットにおけるラック部およびピニオン部を模式的に説明する説明図である。
図9】実施例1のコンソールユニットにおけるラック部およびピニオン部を模式的に説明する説明図である。
図10】実施例2のコンソールユニットを模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の作業車両用コンソールユニットは、作業車両のキャビンに搭載されるコンソールユニットであって、コンソール基部、アームレストおよびコンソール回動部を具備する。
このうちコンソール基部は作業車両のキャビンに取付けられる。
アームレストは当該コンソール基部に対して昇降可能である。
一方、コンソール回動部は、コンソール基部に対して回動可能である回動基部と、当該回動基部に取付けられ回動基部と一体に回動する作業車両用操作部とを有し、その回動中心に対して作業車両用操作部を昇降させる。
【0013】
本発明の作業車両用コンソールユニットによると、作業車両のキャビンに取付けられたコンソール基部に対してコンソール回動部を回動させることで、座席および当該座席に着座したオペレータに対して作業車両用操作部を傾けることができる。このため、傾斜した場所において座席の背もたれの角度を調整する場合にも、座席に着座したオペレータに対して好適な位置にまで作業車両用操作部を位置変化させ得る。
【0014】
さらに、本発明の作業車両用コンソールユニットにおいては、コンソール回動部がコンソール基部に対して回動するのに対して、アームレストは、コンソール基部に対して昇降可能である。つまり、本発明の作業車両用コンソールユニットにおいては、コンソール回動部に含まれる作業車両用操作部と、アームレストとは、それぞれ独立して位置変化可能である。
【0015】
このため、本発明の作業車両用コンソールユニットでは、オペレータの体格や作業車両の傾きの多様性に対応して、作業車両用操作部およびアームレストを、各々、座席に着座したオペレータに対して好適な位置にまで位置変化させ得る。
これらの協働によって、本発明の作業車両用コンソールユニットによると、オペレータの作業環境を改善し得る。
【0016】
以下、本発明の作業車両用コンソールユニットを構成要素毎に説明する。なお、以下、必要に応じて、本発明の作業車両用コンソールユニットを、単に、本発明のコンソールユニットと称する場合がある。
【0017】
本発明のコンソールユニットが搭載される作業車両はキャビンを有するものであれば良い。具体的な当該作業車両としては、既述したブルドーザやショベルカー、クレーン車等の建設機械に加え、コンバインやトラクター、フォークリフト、消防車両等、各種の作業車両が例示される。
【0018】
本発明の作業車両用コンソールユニットは、上記したコンソール基部とアームレストとコンソール回動部とを有し、さらに、ラック部、ピニオン部、コンソール操作部および伝達機構を有する。
コンソール基部については、キャビンに取付けられれば良く、例えば、キャビンに固定されても良いし、或いは、キャビン内で位置変化可能であっても良い。例えば、コンソール基部は、上下方向や前後方向にスライドしても良いし、任意の回動軸を中心として回動しても良いし、または、二軸以上の回動リンク機構により、三次元的に位置変化しても良い。コンソール基部が位置変化可能である場合、当該コンソール基部は、ガイド溝等に代表される既知のガイド構造と、位置固定のための既知のロック機構とを有するのが好ましい。
【0019】
アームレストは、コンソール基部に対して昇降可能である。本明細書でいう「昇降」とは、対象物の鉛直方向における位置が変化することを意味する。アームレストの位置変化方法は特に限定されず、例えば、コンソール基部に対してスライド可能であっても良いし、或いは、コンソール基部に対して回動可能であっても良い。更には、スライドと回動との組み合わせや、二軸以上の回動リンク機構によって、コンソール基部に対して三次元的に位置変化しても良い。
アームレストもまた、上記した既知のガイド構造と、既知のロック機構とを有するのが好ましい。
【0020】
アームレストは、コンソール基部に対して昇降可能であれば良く、例えば、コンソール基部に取付けられても良いし、他部材を介してコンソール基部に取付けられて良いし、コンソール基部が取付けられるキャビンに取付けられても良い。
【0021】
アームレストは、オペレータの腕を支持するための部分を有する。以下、必要に応じて、当該部分を腕支持部と称する。
腕支持部は、如何なる材料で構成しても良い。堅牢製を考慮すると腕支持部の材料としては比較的剛性の高い材料を選択するのが好ましい。一方、オペレータの作業環境の更なる向上を図る為には、腕支持部はクッション性を有するのが好ましい。
【0022】
コンソール回動部は、既述したように、回動基部および作業車両用操作部を有する。回動基部は、コンソール基部に対して回動可能であれば良く、コンソール基部に直接軸支されても良いし、他部材を介してコンソール基部に間接的に軸支されても良い。さらには、回動基部は、コンソール基部が取付けられているキャビンに対して直接または間接的に軸支されても良い。
何れの場合にも、回動基部はコンソール基部に対して回動し得る。なお、本発明のコンソールユニットにおいては、回動基部はアームレストとは独立して位置変化することを必須とする。
【0023】
なお、コンソール基部が移動可能な場合には、アームレストもまたコンソール基部と一体に移動可能であるのが好ましく、さらに、回動基部もまたコンソール基部と一体に移動可能であるのが好ましい。作業車両用操作部とアームレストとの位置関係を適切に保つためである。
【0024】
作業車両用操作部は、回動基部に取付けられ、当該回動基部と一体に回動すれば良い。作業車両用操作部は、オペレータの動作に基づいて作業車両を操作するための操作端末である。当該作業車両用操作部は、例えば、操作レバーに代表される、回動基部に対して位置変化または状態変化可能なものであっても良い。または、作業車両用操作部は、タッチパネルに代表される、回動基部に対して実質的に位置変化も状態変化もしないものであっても良い。
【0025】
本発明のコンソールユニットは、互いに噛合するラック部およびピニオン部を有する。ラック部は、コンソール回動部とコンソール基部との一方に配置され、ピニオン部は、コンソール回動部とコンソール基部との他方に配置される。
なお、コンソール回動部がコンソール基部に対して回動する都合上、ラック部の歯列は回動基部の回動中心に対して円弧状に配列する。
ピニオン部は、コンソール回動部とコンソール基部との一方に直接軸支されても良いし、他部材を介して間接的に軸支されても良い。
【0026】
ラック部とピニオン部とのどちらがコンソール回動部に配置されても良いが、実施例の欄で詳説するように、コンソール回動部の回転駆動に要する力を低減するため、コンソール操作部の操作性を高めるため、および本発明のコンソールユニットの外観を良好にするためには、ピニオン部がコンソール回動部に配置され、ラック部がコンソール基部に配置されるのが好ましい。
【0027】
コンソール操作部は、作業車両用操作部を昇降させるべく、オペレータが操作するための要素である。より具体的には、オペレータがコンソール操作部に力を入力し、その力がピニオン部に伝達されると、ピニオン部が回転し、ピニオン部と噛合するラック部に当該力が伝達される。
【0028】
このようなコンソール操作部は、オペレータから力が入力される部分と、当該力をピニオン部に出力する部分と、を有する。以下、必要に応じて、コンソール操作部のうち、オペレータから力が入力される部分を操作入力部と称し、オペレータから入力された力をピニオン部に出力する部分を操作出力部と称する。操作入力部と操作出力部とは一体であっても良いし別体であっても良い。例えば、互いに別体の操作入力部と操作出力部とが、ギヤやクラッチ等の別部材を介して接続されても良い。
【0029】
オペレータから力が入力される操作入力部は、換言すれば、オペレータに触れられる部分である。このため、当該操作入力部は本発明のコンソールユニットの表面に露出する。例えば、操作入力部は、座席の側方に配置されるコンソールユニットにおいて、座席側の面に配置されても良いし、座席とは逆側の面に配置されても良い。オペレータが快適に着座するための広い空間を座席に確保することを考慮すると、操作入力部は、座席とは逆側の面に配置されるのが好ましい。一方、キャビンの限られた空間を有効に利用することを考慮すると、操作入力部は、座席側の面に配置されるのが好ましい。
【0030】
コンソール操作部の形状は、ピニオン部に回転方向の力を付与し得る形状であれば良い。コンソール操作部の形状としては、レバー状、ダイヤル状等の形状を例示し得る。コンソール操作部は、自身が位置変化または状態変化することでピニオン部に回転方向の力を付与し、ピニオン部を回転させれば良い。
コンソール操作部がレバー状等の長尺形状である場合、オペレータの操作性を考慮すると、コンソール操作部はその長手方向の先端を上方に向けるのが好ましい。
【0031】
ここでいうコンソール操作部の位置変化または状態変化として、回転運動や直線運動を例示できる。例えば、コンソール操作部をピニオン部に一体化し、当該コンソール操作部を回転運動させれば、コンソール操作部はピニオン部に対して回転方向の力を付与し得る。または、コンソール操作部およびピニオン部に互いに噛合するギヤ機構を設け、コンソール操作部を回転運動させれば、コンソール操作部はギヤ機構を介してピニオン部に回転方向の力を付与し得る。さらには、ピニオン部と噛合するラック部をコンソール操作部に配置し、コンソール操作部を直線運動させれば、コンソール操作部はラックアンドピニオン機構を介してピニオン部に回転方向の力を付与し得る。コンソール操作部がピニオン部に回転方向の力を付与する方法としては、これに限らず、種々の方法を採用し得る。
【0032】
なお、コンソール操作部は、ピニオン部を直接回転させるものであっても良いし、ピニオン部を間接的に回転させるものであっても良い。例えば、コンソール操作部の操作出力部とピニオン部とは直接接触しても良いし、当該操作出力部とピニオン部との間に他部材が介在しても良い。更には、コンソール操作部の操作出力部は操作入力部と一体であっても良いし、当該操作入力部と操作出力部との間に他部材が介在しても良い。
【0033】
本発明のコンソールユニットは、上記の要素以外に、さらに、伝達機構を具備する。当該伝達機構は、以下の(a)、(b)の2つの機能を発現する。
(a)コンソール操作部に入力された力をピニオン部およびラック部に伝達して、コンソール回動部を回動させる。
(b)コンソール操作部への力の入力が停止しているときに、コンソール回動部の位置変化を規制する。
【0034】
(a)により、オペレータはコンソール回動部を回動させ、ひいては、作業車両用操作部を昇降させ得る。
また、(b)により、例えばコンソール回動部の自重やコンソール回動部に荷重が加えられることで、コンソール回動部に回動方向の力が逆入力されても、コンソール回動部の位置は維持される。
これらの協働により、本発明のコンソールユニットによると、作業車両用操作部を任意の位置に昇降させ、かつ作業車両用操作部の位置を安定して維持できる。
【0035】
上記の(a)及び(b)を発現し得る機構として、例えば、特開2019-56397号公報に開示されているクラッチユニット、特開2016-132423号公報に開示されている車両用シートリフター装置における回転制御装置、特開2015-58849号公報に開示されている車両用シートリフター装置における回転制御装置等を例示することができる。これらのクラッチユニットや回転制御装置は、何れも車両用シートリフター装置に用いられる伝達機構であり、本発明におけるピニオン部と同様のピニオン部を一体に有する。
【0036】
この種の伝達機構においては、操作レバー等のコンソール操作部を引き上げたり押し下げたりして、当該コンソール操作部にオペレータが力を入力することにより、ピニオン部が回転する。このため、当該ピニオン部に噛合するラック部に、ピニオン部の回転トルクが伝達され、その結果、コンソール回動部が回動する。また、ラック部からピニオン部に向けて逆方向に入力された力は、何れかの段階で遮断されるため、コンソール回動部の位置変化が規制される。
【0037】
例えば特開2019-56397号公報に開示されているクラッチユニットは、入力側クラッチ部と出力側クラッチ部とからなる基本構造を有する。当該クラッチユニットにおける入力側クラッチ部は、操作レバーから入力される回転トルクの伝達および遮断を制御する。また、出力側クラッチ部は、入力側クラッチ部からの回転トルクを出力側(つまりピニオン部側)へ伝達するとともに、出力側から逆入力される回転トルクを遮断する。つまり、当該クラッチユニットによると、(a)操作レバーすなわちコンソール操作部に入力された力を入力側クラッチ部によりピニオン部およびラック部に伝達しコンソール回動部を回動させ得る。また、(b)ラック部からピニオン部に向けて逆入力された力を、出力側クラッチ部で遮断することにより、コンソール回動部の回動を規制し得る。
【0038】
上記した各種の機構は、何れも、同様に上記の(a)および(b)を発現し得る。したがって、これら各種の機構は、何れも、本発明のコンソールユニットにおける伝達機構として好適に使用される。
【0039】
本発明のコンソールユニットにおいて、上記の伝達機構は、如何なる機構により上記の(a)および(b)を発現させても良いが、ラチェット機構および/またはクラッチ機構を有するのが好ましい。
参考までに、上記した特開2019-56397号公報に開示されているクラッチユニットでは、クラッチ機構により上記の(a)および(b)を発現させるものであり、特開2016-132423号公報に開示されている回転制御装置は主としてラチェット機構により上記の(a)および(b)を発現させるものである。
より詳しくは、ラチェット機構および/またはクラッチ機構を有する伝達機構は、コンソール操作部からピニオン部及びラック部に向けた力の伝達を許可し、ラック部およびピニオン部からコンソール回動部に向けた力の伝達を規制する。
【0040】
以下、具体例を挙げて本発明のコンソールユニットを説明する。
【0041】
(実施例1)
実施例1のコンソールユニットを分解した様子を模式的に表す説明図を図1に示す。作業車両のキャビンに搭載した実施例1のコンソールユニットを模式的に表す説明図を図2に示す。実施例1のコンソールユニットにおけるコンソール回動部が動作している様子を模式的に表す説明図を図3に示す。実施例1のコンソールユニットにおける回動基部の要部を模式的に表す説明図を図4図6に示す。実施例1のコンソールユニットにおけるラック部およびピニオン部を模式的に説明する説明図を図7図9に示す。以下、上、下とは作業車両が水平面上にあると仮定したときの鉛直方向における上、下を意味し、前、後とは車両進行方向における前、後を意味し、内、外とは座席に着座したオペレータからみた車幅方向の内、外を意味するものとする。前後方向は車両進行方向と一致する。
【0042】
図1に示すように、実施例1のコンソールユニット1は、コンソール基部2、アームレスト3、コンソール回動部4、ラック部60、ピニオン部61、コンソール操作部65、付勢部材70、および伝達機構75を具備する。
【0043】
このうちコンソール基部2は、図2に示すように、作業車両のキャビン90に取付けられる。具体的には、コンソール基部2は、当該キャビン90の床面91に固定され、座席92の側方に配置される。
図1に示すように、コンソール基部2は、キャビン90の床面91に固定されるブラケット21と、ブラケット21上に立設され内-外方向に間隔をおいて配置されている2つの側板22と、当該二つの側板22の間に配置されているアームレスト支持部23と、を有する。
【0044】
2つの側板22は略同形状である。各側板22は、枢支部25を有する。
枢支部25は、側板22における後側かつ下側部分に設けられ、当該側板22を厚さ方向すなわち内-外方向に貫通する孔状をなす。
【0045】
アームレスト支持部23は、角筒状をなし、2つの側板22の後端部に一体化されている。アームレスト支持部23は前側かつ下側から後側かつ上側にやや傾斜しつつ、略上下方向に延びる。図示しないが、アームレスト支持部23の後壁には、アームレスト支持部23の長手方向に沿って延びるスリットが設けられている。当該スリットは、アームレスト支持部23の内部と外部とを連絡する。
【0046】
アームレスト3は、脚部30、腕支持部31、および、位置固定部32を有する。
脚部30は、アームレスト支持部23よりもやや小径の角筒状をなす。脚部30はアームレスト支持部23に対して平行に配置され、アームレスト支持部23に挿入される。したがって、脚部30は、アームレスト支持部23の長手方向に沿ってスライド可能であり、ひいては、コンソール基部2に対して昇降可能である。
図示しないが、脚部30の後壁には、脚部30の長手方向に沿って延びるスリットが設けられている。当該スリットは、脚部30の内部と外部とを連絡する。
【0047】
腕支持部31は、略柱状をなし、その長手方向を前後に向ける。腕支持部31は脚部30の上端に一体化されている。
位置固定部32はボルト32Bと図略のナットとで構成されている。ボルト32Bの軸部は脚部30のスリットに挿し込まれ、ボルト32Bの頭部は当該スリットの後側に露出する。ナットは脚部30の内部に配置され、ボルト32Bの軸部と螺合する。
【0048】
アームレスト3の脚部30をアームレスト支持部23に挿入すると、アームレスト支持部23のスリットは、脚部30の後側において、脚部30のスリットと対面する。脚部30のスリットに挿し込まれている位置固定部32のボルト32Bは、アームレスト支持部23のスリットにも挿し込まれ、ボルト32Bの頭部はアームレスト支持部23のスリットの後側に露出する。このように、ナットが脚部30の内部でボルト32Bと螺合し、ボルト32Bの頭部がアームレスト支持部23の外部に露出しているために、ボルト32Bの頭部をボルト32Bとナットとの締め方向に回転させれば、ボルト32Bの頭部とナットとの間に脚部30およびアームレスト支持部23を挟み込み、両者を固定することができる。
【0049】
ボルト32Bが挿し込まれているスリットは、脚部30およびアームレスト支持部23の長手方向に延びるため、ボルト32Bおよびナットは、脚部30およびアームレスト支持部23の長手方向にスライド可能である。このため、位置固定部32は、脚部30およびアームレスト支持部23の長手方向における任意の位置において、脚部30とアームレスト支持部23とを位置固定でき、ひいては、任意の位置に昇降したアームレスト3をその位置に固定することができる。
【0050】
コンソール回動部4は、回動基部40と作業車両用操作部48とを有する。
回動基部40は、アッパ部材41およびロア部材42の二つの分体が一体化されてなる。ロア部材42およびアッパ部材41は、長尺状の部材であり、その長手方向を略前後方向に向ける。アッパ部材41は下方に開口する箱状をなし、ロア部材42の上側かつやや後側に配置され、ロア部材42の上側部分を内部に収容する。ロア部材42とアッパ部材41とは嵌合一体化される。
【0051】
ロア部材42における長手方向の一端部には、貫通孔状の回動中心43が設けられている。回動中心43はコンソール基部2の枢支部25に対面する。回動中心43は、ロア部材42における後側部分に位置するともいえる。図6に示すように、回動中心43は、上下方向の長さaに比べて前後方向の長さがやや長い(a+α)長孔状をなす。
【0052】
図1に示すように、回動中心43および枢支部25には軸状をなす回動軸79が挿し込まれる。このため回動基部40はコンソール基部2に枢支され、当該コンソール基部2に対して回動可能となる。
【0053】
ロア部材42とアッパ部材41との間には内外方向の隙間がある。既述したコンソール基部2の側板22は、当該ロア部材42とアッパ部材41との内外方向の隙間に収容され、図2および図3に示すように、アッパ部材41によって隠される。
【0054】
また、ロア部材42の後端部とアッパ部材41の後端部との間には前後方向の隙間がある。既述したコンソール基部2のアームレスト支持部23は、当該ロア部材42とアッパ部材41との前後方向の隙間に収容される。
図1に示すように、アッパ部材41の後壁には、略上下方向に延びるスリット41Sが設けられている。このスリット41Sはアッパ部材41の後壁を厚さ方向に貫通する。当該スリット41Sは、アームレスト支持部23の前側部分を収容する。
このためアームレスト支持部23は、アッパ部材41によって部分的に隠されるといえる。
【0055】
また、アッパ部材41の外側壁には、下方に開口する切り欠き窓41Wが設けられている。当該切り欠き窓41Wは、アッパ部材41の外側壁を厚さ方向に貫通する。当該切り欠き窓41Wは、後述する伝達機構75を収容する。
【0056】
実施例1のコンソールユニット1において、作業車両用操作部48は、レバー状をなす。当該作業車両用操作部48は、作業車両における図略の作業駆動部に接続される。実施例1のコンソールユニット1を搭載する作業車両はブルドーザであり、作業車両用操作部48はブルドーザのブレードを操作するために用いられる。
作業車両用操作部48はアッパ部材41の前端部に固定され、アッパ部材41の上側に向けて突起する。作業車両用操作部48はアッパ部材41に対して揺動可能である。
【0057】
既述したように、回動基部40はコンソール基部2に枢支されコンソール基部2に対して回動可能である。このため、回動基部40を有するコンソール回動部4全体もまた、回動基部40によってコンソール基部2に枢支され、コンソール基部2に対して回動可能である。さらに、回動基部40とともにコンソール回動部4を構成する作業車両用操作部48もまた、コンソール基部2に対して回動可能である。
作業車両用操作部48は、アッパ部材41の前端部に固定されアッパ部材41の上側に向けて突起する。このため作業車両用操作部48は、コンソール回動部4の回動に伴って、回動中心43に対して昇降するといえる。
【0058】
実施例1のコンソールユニット1において、ラック部60は、コンソール基部2の側板22に一体に設けられている。ラック部60は、各側板22における枢支部25よりも前側の部分に設けられ、当該枢支部25を中心とする円弧状をなす。ラック部60の歯列は、枢支部25を中心とする円の径方向外側を向く。
【0059】
実施例1のコンソールユニット1においては、ピニオン部61および伝達機構75として、特開2019-56397の実施形態に紹介されているものと同様のクラッチユニット76を用いた。当該クラッチユニット76は、ピニオン部61と伝達機構75とが一体化されたものであり、ピニオン部61を外側に向けて、コンソール回動部4のロア部材42に取付けられている。ピニオン部61は、伝達機構75に対して回転可能であり、当該ピニオン部61は伝達機構75を介してロア部材42に軸支されているといえる。
【0060】
クラッチユニット76の伝達機構75およびピニオン部61は、アッパ部材41の切り欠き窓41Wに収容される。このうちピニオン部61は、コンソール基部2に設けられているラック部60に噛合する。
【0061】
コンソール操作部65は、ピニオン部61のさらに外側に配置される。コンソール操作部65は、操作出力部66と、当該操作出力部66から延びる棹状の操作入力部67とを有する。操作出力部66はクラッチユニット76に対面し、クラッチユニット76に接続される。オペレータが操作入力部67に上方向または下方向の力を入力することとで、コンソール操作部65が回動する。
【0062】
クラッチユニット76は、入力側クラッチ部(図略)と出力側クラッチ部(図略)とを具備する。コンソール操作部65の操作出力部66は、このうち入力側クラッチ部の外輪(図略)に取付けられる。入力側クラッチ部と出力側クラッチ部とは略筒状をなす内輪(図略)を共有する。
コンソール操作部65の操作出力部66から出力側クラッチ部に作用する回転トルクは、当該内輪を介して、入力側クラッチ部から出力側クラッチ部に伝達され得る。
【0063】
出力側クラッチ部にはピニオン部61が一体化されている。したがって、出力側クラッチ部に伝達された回転トルクがピニオン部61に伝達されると、当該トルクはピニオン部61からラック部60に伝達され、コンソール回動部4が回動する。
【0064】
出力側クラッチ部は、上記した内輪に加え、図略の外輪および出力軸を有する。ピニオン部61は、当該出力軸に同軸的に一体化されたピニオンギヤ部である。内輪に伝達された回転トルクは、出力軸および当該出力軸に一体化されているピニオン部61に伝達され得る。外輪はロア部材42に対して固定され、上記の回転トルクによっても回転しない、静止部材である。
【0065】
入力側クラッチ部は、外輪と内輪とを接続および遮断可能な回転規制機構(図略)を有する。入力側クラッチ部の当該回転規制機構は、図略の円筒ころ、楔すきま、外側センタリングバネおよび内側センタリングばね等で構成される。
出力側クラッチ部は、内輪と出力軸とを接続および遮断可能な回転規制機構(図略)を有する。出力側クラッチ部の当該回転規制機構は、図略の円筒ころ、楔すきま、板ばねおよび摩擦リング等で構成される。
以下、必要に応じて、入力側クラッチ部の回転規制機構を入力側規制機構と称するとともに、出力側クラッチ部の回転規制機構を出力側規制機構と称して、両者を区別する。
【0066】
図4に示すように、付勢部材70は、二つの基端71と当該二つの基端71の間に配置された操作端72とを有するダブルトーションバネである。付勢部材70は、コンソール回動部4におけるロア部材42の内部に配置され、回動軸79に装着される。ロア部材42には、その側壁を厚さ方向に貫通し回動中心43を中心とする円弧状に延びる長孔44が設けられている。付勢部材70の基端71はロア部材42に設けられた長孔44を通じてコンソール基部2側に引き出され、当該コンソール基部2の側板22に固定される。
【0067】
ロア部材42には、回動中心43よりも更に後側の位置に、ロア部材42の二つの側壁に架け渡される板状のストッパ部45が設けられている。付勢部材70の操作端72は、圧縮状態で当該ストッパ部45の前側に配置され、ストッパ部45を後側に押圧する。このため、ストッパ部45を有するロア部材42は、付勢部材70によって、後側に押圧される。
【0068】
既述したように、ロア部材42に設けられた回動中心43は、上下方向の長さに比べて前後方向の長さがやや長い長孔状をなす。このため、図7に示すように、ロア部材42は、付勢部材70の付勢力によって僅かに後側に引き込まれる。ロア部材42に取付けられているクラッチユニット76もまた、僅かに後側に引き込まれ、クラッチユニット76のピニオン部61は、コンソール基部2に設けられているラック部60に圧接する。
【0069】
実施例1のコンソールユニット1の動作を説明する。
先ず、図2に示すように、コンソール操作部65を操作していない基本状態において、コンソール操作部65は、図3中の65Bに示すように、操作入力部67の長手方向を前後に向けた中立位置にある。より詳しくは、このとき操作入力部67の端部は前側かつやや上側を向く。このとき作業車両用操作部48は、図3中の48Bに示すように、前側かつ上側に向けて突起する。
【0070】
図3に示すように、オペレータが中立位置にあるコンソール操作部65の操作入力部67を上方に引き、操作入力部67に上方に向けた力を入力すると、コンソール操作部65が図3中時計回りに回動する。これに従動して、コンソール回動部4が回動中心43を中心として図3中の時計回りに回動する。
【0071】
詳しくは、コンソール操作部65が時計回りに回動すると、コンソール操作部65の操作出力部66からクラッチユニット76の入力側クラッチ部の外輪に回転トルクが入力され、当該外輪が時計回りに回動する。このとき、入力側規制機構により外輪と内輪とが接続され、内輪が時計回りに回転する。内輪は入力側クラッチ部と出力側クラッチ部とで共有されているため、内輪が回転すると、出力側クラッチ部に回転トルクが伝達される。このとき、出力側クラッチ部の内輪と出力軸とが出力側規制機構によって接続され、出力軸および当該出力軸に一体化されているピニオン部61が時計回りに回転する。
【0072】
ピニオン部61が時計回りに回転すると、当該ピニオン部61に噛合しているラック部60(図1に示す)に回転トルクが伝達される。その結果、ピニオン部61とラック部60との噛合位置が上方に向けて円弧状に位置変化し、ピニオン部61もまた上方に向けて円弧状に位置変化する。ピニオン部61が軸支されているコンソール回動部4は、当該ピニオン部61の位置変化に伴って、時計回りに回動する。よって、コンソール回動部4の作業車両用操作部48は、図3中の48Uに示すように、上昇する。
【0073】
このとき、クラッチユニット76における出力側クラッチ部の出力側規制機構は、図1に示すラック部60およびピニオン部61からコンソール操作部65に向けた力を遮断し、出力軸をロックする。このため、出力軸に一体化されているピニオン部61もまたロックされ、当該ピニオン部61からコンソール回動部4に向けた力の伝達は規制される。このため、コンソール回動部4は、作業車両用操作部48が上昇した位置で安定にロックされる。
【0074】
これとは逆に、オペレータがコンソール操作部65の操作入力部67を中立位置から下方に引き、操作入力部67に下方に向けた力を入力すると、コンソール操作部65が図3中反時計回りに回動する。このときにも、クラッチユニット76の入力側規制機構により外輪と内輪とが接続されて、回動トルクが出力側クラッチ部のピニオン部61を通じてラック部60にまで伝達される。このため、コンソール回動部4が回動中心43を中心として図2中の反時計回りに回動し、図3中の48Lに示すように、コンソール回動部4の作業車両用操作部48は下降する。
このときにも、クラッチユニット76における出力側クラッチ部の出力側規制機構は、図1に示すラック部60およびピニオン部61からコンソール操作部65に向けた力を遮断し、出力軸およびピニオン部61をロックするため、コンソール回動部4は、作業車両用操作部48が下降した位置で安定にロックされる。
【0075】
ここで、アームレスト3は、コンソール回動部4とは独立して、略上下方向にスライド可能である。このため、オペレータは、作業車両用操作部48の位置に応じた適切な位置となるように、アームレスト3を昇降させることができる。このため、実施例1のコンソールユニット1によると、作業車両用操作部48およびアームレスト3の位置を、作業車両の姿勢や各オペレータの体格等に応じた適切な位置に調整でき、オペレータの作業環境を改善し得る。
【0076】
ところで、実施例1のコンソールユニット1において、クラッチユニット76の入力側クラッチ部は、内輪を外輪に対して回転させる。具体的には、入力側クラッチ部の入力側規制機構は、コンソール操作部65に入力があった際に、外輪の回転およびこれに伴う内輪の回転を許容し、その後、外輪のみを逆方向に回転させ元の位置に戻す。内輪および外輪は同軸的に配置されているため、内輪は外輪に対して相対的に回転するともいえる。コンソール操作部65への入力を繰り返すと、外輪に対する内輪の回転角度は徐々に大きくなる。
【0077】
入力側クラッチ部における外輪が元の位置に戻れば、当該外輪に取付けられているコンソール操作部65もまた元の中立位置に戻る。このため、オペレータはコンソール操作部65への入力を容易にかつ操作性高く繰り返すことができる。
一方、出力側クラッチ部の出力軸およびピニオン部61は、内輪の回転に伴って回転するため、コンソール操作部65への入力が繰り返されれば、ピニオン部61が徐々に回転し、それに伴ってコンソール回動部4が徐々に回動し、更には作業車両用操作部48が徐々に上昇または下降する。このように、コンソール操作部65への入力を繰り返して作業車両用操作部48を徐々に上昇または下降させることで、一度の入力に要する力を低減でき、コンソール操作部65の操作感を軽くできる。実施例1のコンソールユニット1では、このことによっても、オペレータの作業環境を改善し得る。
【0078】
さらに、実施例1のコンソールユニット1においては、付勢部材70によって、ロア部材42を後側に押圧し、クラッチユニット76のピニオン部61をラック部60に圧接させている。
付勢部材70による押圧がなければ、図8に示されるように、ピニオン部61とラック部60との間にはバックラッシュBLと呼ばれる僅かな隙間が形成される。当該バックラッシュBLにより、ピニオン部61とラック部60とがガタついたり、ピニオン部61からラック部60への力の伝達にタイムラグが生じたりする場合がある。
【0079】
実施例1のコンソールユニット1では、付勢部材70の押圧力によりピニオン部61をラック部60に圧接させることで、図9に示すように、当該バックラッシュBLを低減またはなくすことができる。これにより、実施例1のコンソールユニット1において、ピニオン部61とラック部60とは安定して噛合し、コンソール回動部4の回動および作業車両用操作部48の昇降も安定して行われる。
【0080】
実施例1のコンソールユニット1では、図1に示すように、ピニオン部61がコンソール回動部4に配置され、ラック部60がコンソール基部2に配置されている。このため、実施例1のコンソールユニット1では、ピニオン部61はコンソール回動部4の回動中心43から離れた位置に配置される。当該ピニオン部61を回転させるためのコンソール操作部65もまた、ピニオン部61に対応して、コンソール回動部4の回動中心43から離れた位置に配置される。コンソール回動部4の回動中心43に近い程、作業車両用操作部48からは離れ、オペレータの手元からも離れるといい得る。
【0081】
実施例1のコンソールユニット1によると、ピニオン部61をコンソール回動部4に配置することで、コンソール操作部65をオペレータの手元近くに配置できるといい得る。このことにより、実施例1のコンソールユニット1はコンソール操作部65の操作性に優れる。
また、コンソール操作部65がコンソールの回動中心43から離れる程、梃子の原理により、コンソール回動部4の回転駆動に要する力が低減し、コンソール操作部65の操作感が軽くなる利点もある。これらにより、オペレータの作業環境はさらに改善する。
【0082】
さらに、図1に示すように、コンソール回動部4のアッパ部材41には、伝達機構75を収容するための切り欠き窓41Wが設けられている。ピニオン部61はラック部60に対して外形寸法が小さいため、ピニオン部61をコンソール回動部4に配置した実施例1のコンソールユニット1では、切り欠き窓41Wの外形寸法もまた比較的小さい。
これに対して、ラック部60をコンソール回動部4に配置する場合には、当該切り欠き窓41Wの外形寸法をラック部60に対応可能なまでに大きくする必要がある。この場合、切り欠き窓41Wが過大になり、コンソールユニット1全体の外観が悪化する場合がある。
実施例1のコンソールユニット1によると、ピニオン部61をコンソール回動部4に配置することで、コンソールユニット1に優れた外観を付与するといい得る。
【0083】
(実施例2)
実施例2のコンソールユニットは、コンソールユニットにおけるコンソール操作部の位置、および、コンソール操作部における操作入力部の向きにおいて実施例1のコンソールユニットとは異なり、その余については実施例1のコンソールユニットと概略同じである。以下、実施例1のコンソールユニットとの相違点を中心に、実施例2のコンソールユニットについて説明する。
実施例2のコンソールユニットを模式的に表す説明図を図10に示す。
【0084】
図10に示すように、実施例2のコンソールユニット1におけるコンソール操作部65は、コンソールユニット1における内側の面、すなわち、図略の座席92側の面に配置されている。実施例2のコンソールユニット1におけるコンソール操作部65は、中立位置において、操作入力部67の長手方向を上下に向けている。当該中立位置において、操作入力部67の端部は上を向く。
【0085】
コンソール操作部65の操作出力部(図略)は、実施例1のコンソールユニット1における操作出力部66と同様に、図略のクラッチユニット76に接続される。したがって、実施例2のコンソールユニット1においても、実施例1のコンソールユニット1と同様に、コンソール操作部65を操作することでコンソール回動部4を回動させて作業車両用操作部48を昇降させることができ、かつ、コンソール回動部4および作業車両用操作部48の位置をロックできる。
【0086】
また、実施例2のコンソールユニット1におけるコンソール操作部65は、操作入力部67を上に向けているため、オペレータは操作入力部67を把持し易く、操作入力部67を容易に操作できる。このため、実施例2のコンソールユニット1によるとオペレータの作業環境がより改善される。
なお、実施例2のコンソールユニット1においては、コンソール操作部65における操作入力部67は、上下方向に対して±90°の範囲内で操作される。このため、実施例2のコンソールユニット1における操作入力部67の端部は、常に上方向を向く。オペレータの操作性を考慮すると、操作入力部67の操作範囲は、上下方向に対して±60°の範囲内であるのがより好ましく、±30°の範囲内であるのが特に好ましい。
【0087】
ところで、実施例2のコンソールユニット1におけるコンソール操作部65は、コンソールユニット1における座席側92の面に配置されている。このため、実施例2のコンソールユニット1では、コンソール操作部65が座席92の近傍に納められ、キャビン90の限られた空間を有効利用できる利点がある。その一方で、座席92の近傍にコンソール操作部65があることで、操作入力部67にオペレータがアクセスし難くなり、オペレータの操作性が損なわれる虞がある。しかし、実施例2のコンソールユニット1では上記したように操作入力部67が上を向くことで、オペレータは操作入力部67に容易にアクセスできる。これにより、オペレータの作業環境は好適に維持される。
【0088】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0089】
1:コンソールユニット 2:コンソール基部
3:アームレスト 4:コンソール回動部
40:回動基部 43:コンソール回動部の回動中心
48:作業車両用操作部 60:ラック部
61:ピニオン部 65:コンソール操作部
75:伝達機構 90:作業車両のキャビン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10