(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ウェザストリップの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60J 10/32 20160101AFI20221206BHJP
B60J 10/84 20160101ALI20221206BHJP
B26F 1/02 20060101ALI20221206BHJP
B26F 1/14 20060101ALI20221206BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20221206BHJP
B21D 28/00 20060101ALI20221206BHJP
B21D 28/34 20060101ALI20221206BHJP
B21D 53/86 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
B60J10/32
B60J10/84
B26F1/02 F
B26F1/14 Z
B26D3/00 603A
B26D3/00 601A
B26D3/00 601E
B21D28/00 B
B21D28/34 D
B21D53/86 Z
(21)【出願番号】P 2019128939
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛章
(72)【発明者】
【氏名】水野 昌平
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-006243(JP,A)
【文献】特開2010-247655(JP,A)
【文献】特開2003-040045(JP,A)
【文献】特開平02-147129(JP,A)
【文献】特開平08-332529(JP,A)
【文献】特開昭62-292398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00-10/90
B26F 1/02
B26F 1/14
B26D 3/00
B21D 28/00
B21D 28/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短冊が接続部により連結してなる帯状のインサートを埋設した断面が略U字形状のトリム部を備えたウェザストリップの製造方法であって、
前記インサートの前記接続部は、前記短冊を略一定間隔で
接続した短接続部と、該短接続部より長い間隔の長接続部からなり、
前記インサートに高分子材料を被覆する押出成形工程と、
前記長接続部が埋設された長間隔部において、前記長接続部を含む前記長間隔部の一部を切除して切除部を形成する切除部形成工程と、
前記切除部を長手方向と
直交する方向に横断して切断することによりウェザストリップを長手方向に分割する切断工程を備え
、
前記押出成形工程の前に、前記インサートの前記短接続部の前記短冊を切断することにより前記長接続部を形成する長接続部形成工程を備え、
前記切除部形成工程は、可動刃である上刃(パンチ)と、固定刃である下刃(ダイ)を使用し、前記トリム部の開口部側から前記上刃(パンチ)を挿入して行われるウェザストリップの製造方法。
【請求項2】
前記下刃(ダイ)には、前記上刃(パンチ)方向に傾斜面が形成された凸突起部が形成されている請求項
1に記載のウェザストリップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ボディの開口部等に装着されるインサートを有するウェザストリップの製造方法、特にその切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車ボディの開口部等に装着されるゴム製或いは樹脂製のウェザストリップでは、その断面略U字形状のトリム部の形状を保持するために、ゴム或いは樹脂内部に保形用の金属製のインサート(「芯金」とも呼ばれる)が埋設されている。そして、金属製のインサートは多数の短冊が接続部で連結された構造になっている。
【0003】
上記のウェザストリップは所定の長さに切断して使用されるので、インサートも同時に切断されることになる。しかし、短冊部分で切断されると、切断面に変形を生じたり、インサートが露出するなど、きれいな切断面が得られない。そのため、その後に、手作業により変形の修正や露出したインサートの抜き取りが必要であり、多くの手間がかかり作業性を損ねていた。又、露出した短冊の切断面や短冊の形状には鋭利な部分があり、手作業時に短冊が手に刺さるなど安全上の問題も生じていた。
【0004】
上記問題を解決する技術として、例えば、下記の特許文献1及び特許文献2に記載のものが知られている。特許文献1のウェザストリップ等の切断方法について、
図8に基づいて説明する。
図8(a)は芯金200の斜視図であり、芯金200は、骨片210をその中央部において接続部220により一定間隔で連結した形態をなしている。又、
図8(b)は、トリム部切断装置の全体構成を示す側面図である。
【0005】
特許文献1のウェザストリップ等の切断方法では、
図8(b)に示す装置を使用し、まず、近接スイッチ(図示せず)によりトリム部100にインサートされる芯金200の接続部220を検出し、接続部220が可動刃300の直下に位置するようにトリム部100をラバークリップ(図示せず)でクランプしたダイセット700を位置決め制御する。次に、トリム部100の開口部側から受刃400を挿入してトリム部100を下方より支持した状態で可動刃300を押下げ、受刃400と協働して接続部220を切断する。最後に、切り口両側のラバークリップを互いに離れる方向に引張り、切り口を拡げた状態で可動刃300と同一平面上のカッター500を切り口に差込み、トリム部100を骨片210間で切断する方法が開示されている。又、その効果として、汎用性のある芯金200を用いたウェザストリップ等においてきれいな切断面が得られることが開示されている。
【0006】
次に、特許文献2について、
図9に基づいて説明する。特許文献2のトリム部100は、芯金200として、短接続部230を介して骨片210を配設した一般部240と、短接続部230の2倍以上の長さを有する長接続部250を介して骨片210を配設した長間隔部260を設けてなり、トリム部100は芯金200を覆う合成樹脂部600とよりなる。そして、長間隔部260において、トリム部100が切断される方法が開示されている。又、その効果として、切断面(
図9の左端の断面)においては、芯金200の長接続部250の断面のみが露出した状態となり、骨片210は露出しないので、きれいな切断面が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-6243号公報
【文献】特開平11-321480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の特許文献1で使用される芯金200(汎用性のあるウェザストリップ等のトリム部に一般的に使用される)の接続部220の長手方向の長さは、概ね0.5mmから1mm程度と狭く、作製時のバラツキも考慮しなければならない。又、芯金200の製造時やゴム製或いは樹脂等高分子材料の押出工程前の移送時における骨片210の位置ずれ、すなわち、接続部220に対して斜めに変形することを完全に防止することは難しい。更に、例えば、シール機能を有する中空部を有するウェザストリップ等では、断面略U字形状のトリム部100において、芯金200の接続部220付近の高分子材料部の肉厚も一定ではない場合が多い。一方、近接スイッチ等でトリム部100にインサートされる芯金200の接続部220を検出し、位置決めする制御においてもバラツキによる位置ずれは発生する。
【0009】
したがって、上記状況下において、特許文献1の切断方法の場合、近接スイッチでトリム部100にインサートされる芯金200の接続部220を検出し、切断し、引き続きトリム部100をカッター500で切断すると、カッター500が骨片210に接触することがある。この場合、カッター500は大きな剪断力を有していないので、骨片210上をすべる形でゴム材料610を切断し、骨片210が露出してきれいな切断面が得られない、又は、カッター500が骨片210に食い込んだ場合には、切断できず装置が停止してしまう不具合が発生する。又、カッター500の寿命は大幅に短くなる。
【0010】
一方、上記の特許文献2に開示される方法の場合、芯金200の長接続部250を切断するためには、大きな剪断力を必要とするが、カッター等により大きな剪断力でトリム部100を切断すると、合成樹脂部600と芯金200の長接続部250との硬さの違いにより、きれいな切断面が得られにくい。又、芯金200の切断部分の変形も発生する。更に、芯金200の長接続部250の断面が露出するので、露出面には鋭利な突辺が残ってしまう。
【0011】
したがって、芯金200の露出部分の変形の修正、露出部分の取り除きなど多くの手間がかかる作業上の問題及び露出した鋭利な部分が手に刺さるなど安全上の問題は依然として残ったままである。
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、短冊が接続部により連結してなる帯状のインサートを埋設した断面が略U字形状のトリム部を備えたウェザストリップの製造方法であって、インサートの接続部は、短冊部を略一定間隔で接続した短接続部と、短接続部より長い間隔の長接続部からなり、インサートに高分子材料を被覆する押出成形工程と、長接続部が埋設された長間隔部において、長接続部を含む長間隔部の一部を切除して切除部を形成する切除部形成工程と、切除部を長手方向と直交する方向に横断して切断することにより、ウェザストリップを長手方向に分割する切断工程を備え、押出成形工程の前に、インサートの短接続部の短冊を切断することにより長接続部を形成する長接続部形成工程を備え、切除部形成工程は、可動刃である上刃(パンチ)と、固定刃である下刃(ダイ)を使用し、トリム部の開口部側から上刃(パンチ)を挿入して行われるウェザストリップの製造方法である。
【0013】
請求項1の本発明では、インサートの接続部は長接続部を有しているので、高分子材料を被覆する押出成形工程の後の搬送中にウェザストリップが長手方向に変形することを防止することができる。
【0014】
又、長接続部を含む長間隔部の一部を切除して切除部を形成する切除部形成工程と、切除部を長手方向と直交する方向に横断して切断することにより、ウェザストリップを長手方向に分割する切断工程を備えているので、切除部を長手方向と直交する方向に横断して切断する時に、切断刃がインサートの接続部は勿論、短冊にも接触することなく、高分子材料部のみを切断することができるのできれいな切断面を得ることができる。
【0015】
又、インサートが露出しないので、従来のインサートの露出部分の取り除き、変形の修正等、人手による後加工が不要となり、製造工程が簡略化されると共に、自動化が可能となる。更に、切除部を長手方向と直交する方向に横断して切断するときに使用する切断刃がインサートに接触しないので、切断刃の長寿命化を図ることができる。したがって、品質面及びコスト面において大きな効果を得ることができる。
又、押出成形工程の前に、インサートの短接続部の短冊を切断することにより長接続部を形成する長接続部形成工程を備えるので、汎用のインサートを使用することができ、専用のインサートをウェザストリップ毎に新たに作製する必要がなく、コスト高を防止することができる。
シール機能を有する中空部を有するウェザストリップでは、断面略U字形のトリム部の非開口部において、高分子材料部の肉厚は一定ではない場合が多いが、開口部側の肉厚はほぼ一定である。切除部形成工程は、可動刃である上刃(パンチ)と、固定刃である下刃(ダイ)を使用し、トリム部の開口部側から上刃(パンチ)を挿入して行うので、予め決められている箇所の長接続部を含む長間隔部の一部を正確に切除して切除部を形成することができる。
【0019】
請求項2の本発明は、下刃(ダイ)には、上刃(パンチ)方向に傾斜面が形成された凸突起部が形成されているウェザストリップの製造方法である。インサートが埋設されたウェザストリップでは、上刃(パンチ)と、固定刃である下刃(ダイ)を使用して、切除部の形成を行う場合、インサートは高分子材料に埋設されているので、インサートを直接下刃(ダイ)によって保持することができない。そのため、下刃(ダイ)には硬度の小さい高分子材料が接触するので、上刃(パンチ)と下刃(ダイ)でインサートが埋設されたウェザストリップのトリム部に切除部の形成を行うと、上刃(パンチ)の外側(外周)にインサートの曲げ点が発生し、切除部においてインサートが下刃(ダイ)側に変形する。そして、この変形が大きい場合は、ウェザストリップを長手方向に分割した後に修正する必要がある。
【0020】
請求項2の本発明では、下刃(ダイ)には、上刃(パンチ)方向に傾斜面が形成された凸突起部が形成されているので、切除部形成時には、凸突起部が高分子材料部に食い込む形となり、上刃(パンチ)の外側(外周)にインサートの曲げ点が発生することを防止することができる。したがって、切除部においてインサートが下刃(ダイ)側に変形することを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
インサートの接続部は長接続部を有しているので、高分子材料を被覆する押出成形工程の後の搬送中にウェザストリップが長手方向に変形することを防止することができる。又、長接続部を含む長間隔部の一部を切除して切除部を形成する切除部形成工程と、切除部を長手方向と直交する方向に横断して切断することにより、ウェザストリップを長手方向に分割する切断工程を備えているので、切除部を長手方向と直交する方向に横断して切断する時に、切断刃がインサートの接続部は勿論、短冊にも接触することなく、高分子材料部のみを切断することができるのできれいな切断面を得ることができる。
【0022】
又、インサートが露出しないので、従来のインサートの露出部分の取り除き、変形の修正等、人手による後加工が不要となり、製造工程が簡略化されると共に、自動化が可能となる。更に、切除部を長手方向と直交する方向に横断して切断するときに使用する切断刃がインサートに接触しないので、切断刃の長寿命化を図ることができる。したがって、品質面及びコスト面において大きな効果を得ることができる。
又、押出成形工程の前に、インサートの短接続部の短冊を切断することにより長接続部を形成する長接続部形成工程を備えるので、汎用のインサートを使用することができ、専用のインサートをウェザストリップ毎に新たに作製する必要がなく、コスト高を防止することができる。
シール機能を有する中空部を有するウェザストリップでは、断面略U字形のトリム部の非開口部において、高分子材料部の肉厚は一定ではない場合が多いが、開口部側の肉厚はほぼ一定である。切除部形成工程は、可動刃である上刃(パンチ)と、固定刃である下刃(ダイ)を使用し、トリム部の開口部側から上刃(パンチ)を挿入して行うので、予め決められている箇所の長接続部を含む長間隔部の一部を正確に切除して切除部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態のウェザストリップのインサートが埋設されている部分の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態のウェザストリップに使用される長接続部形成工程後の平板上のインサートの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態のウェザストリップを製造するための装置を示す概略正面図である。
【
図4】本発明の実施形態のウェザストリップを製造する切除部形成工程における可動刃である上刃(パンチ)と、固定刃である下刃(ダイ)の関係を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態のウェザストリップを製造する装置における(a)は切除部形成工程、(b)は切断工程の概略説明図である。
【
図6】本発明の実施形態のウェザストリップのインサート切断時のメカニズムの概略説明図である。
【
図7】本発明の実施形態のウェザストリップの切断後の断面図である。
【
図8】背景技術の特許文献1に開示された、(a)は芯金の斜視図、(b)はトリム部切断装置の全体構成を示す側面図である。
【
図9】背景技術の特許文献2に開示された、芯金インサートトリムの構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、
図1から
図7に基づいて説明する。
図1のウェザストリップ10は、自動車ドアと車体開口部周縁との間をシールする自動車用のオープニングトリムウェザストリップである。
【0025】
図1に示すように、ウェザストリップ10は、中空シール部30と断面略U字形状のトリム部20を有し、トリム部20により図示しないフランジに取付けられる。このトリム部20は、車外側側壁21、車内側側壁22及び底壁23から形成された断面略U字形状に形成されており、トリム部20には、断面略U字形状を保持するために材質が鉄からなるインサート40が埋設されている。インサート40については後述する。車外側側壁21及び車内側側壁22の断面略U字形状のそれぞれの内面には、フランジを把持するための車外側保持リップ24と車内側保持リップ25が形成されている。フランジがトリム部20の開口部27側から挿入されると、車外側保持リップ24と車内側保持リップ25の先端が撓んで、フランジのそれぞれの側面に圧接されてフランジを保持し、ウェザストリップ10を取付けることができる。又、底壁23から車内側に延出してリップ26が設けられている。一方、中空シール部30は、その一方の先端が車外側側壁21の先端と連結し、他方の先端が、車外側側壁21の底壁23と連続する部分の近傍に連結している。
【0026】
ウェザストリップ10は、ゴム材料としてEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を使用し、トリム部20にはソリッド材を、中空シール部30にはスポンジ材を使用した。
【0027】
図2は、長接続部形成工程後の平板状のインサート40の平面図である。
図2に示すように、インサート40は、略長方形の短冊41をその中央部において短接続部42により一定間隔に連結してなる帯状であり、長間隔部44を形成すべき位置において打抜き前インサートの短冊41が打抜きされ、長接続部43が形成されたものである。インサート40は鉄製で、厚さは0.45mm、短冊41の幅は2mm、短接続部42の長手方向の長さは0.9mmである。そして、長間隔部44を形成するために打抜きされた短冊41は2対である。なお、長接続部43を形成するために打抜かれる短冊41は2対には限られず、短冊41の幅、短接続部42の長手方向の長さ、
図3に示す製造装置50における搬送速度等に関係する切断を行う際の位置決めの精度を考慮して決定される。
【0028】
又、インサート40の短接続部42の幅は、2.9mmである(長接続部43も同様である)。なお、インサート5の短接続部42及び長接続部43の幅は、2mmから5mmが望ましい。2mm未満では、短接続部42及び長接続部43が共に細く、特に長接続部43において、搬送中に、インサート40自身、又はトリム部20において長手方向の変形やトリム部20にねじれが発生する。又、5mmを超えると後の曲げ加工が難しくなると共にトリム部20を含むウェザストリップ10が重くなるからである。
【0029】
又、短冊41の幅は、1mmから2.5mmが望ましい。短冊41の幅が1mm未満では、短冊41自体の強度が小さく変形が生じやすい。又、短冊41の幅が2.5mmを超えると、トリム部20を含むウェザストリップ10が重くなるからである。
【0030】
一方、短接続部42は、0.3mmから1.5mmが望ましい。短接続部42が0.3mm未満の場合は、加工がし難く、且つトリム部20内に存在する短冊41が多くなるのでウェザストリップ10が重くなる。又、短冊41の幅が1mmを超えると押出機54により高分子材料部80が被覆された時に、トリム部20に短冊41の形状がアバラ模様にくっきりと浮き出るので望ましくない。
【0031】
次に、上記のように構成されたウェザストリップ10を製造するための製造装置50及び製造工程について、
図3に基づいて説明する。
図3に示すように、前端(図の左端)にはドラム51が配置され、ドラム51には上記の短冊41をその中央部において短接続部42により一定間隔で連結した形態をなす打抜き前インサートが巻回されている。ドラム51の後方(図の右方)には、インサート打抜機52が配設され、長間隔部44を形成すべき位置において打抜き前インサートの短冊41が2対打抜きされ、短接続部42より長い間隔の長接続部43を有するインサート40が形成される(長接続部形成工程)。なお、予め長接続部43を有するインサート40を使用する場合は、インサート打抜機52を使用した長接続部形成工程は不要である。
【0032】
インサート打抜機52の後方には、トリム部20及び中空シール部30用の2種類のEPDM等のゴム材料を押出機54に供給するための高分子材料供給部53を有する押出機54が配設されており、トリム部20及び中空シール部30用の2種類のEPDM等のゴム材料が押出機54に供給される。
【0033】
上記押出機54の後方には、トリム部20にインサート40が埋設された状態で加硫槽55に送られ、加硫槽55において加硫された後、曲げ加工機56により断面略U字形状に折り曲げられ、その後、切断装置57に送られる。
【0034】
上記の製造装置50は、トリム部20及び中空シール部30をEPDMのゴム材料を使用して製造する装置について示したが、TPV(動的架橋型熱可塑性エラストマー)等の熱可塑性エラストマーを使用して製造することもできる。又、この場合は、加硫槽55は不要となる。
【0035】
切断装置57は、インサート40の長間隔部44を渦電流方式の近接センサ(図示せず)によって検知する検知工程57aと、インサート40の長間隔部44において、長接続部43を含む長間隔部44の一部を切除して切除部60を形成する切除部形成工程57bと、切除部60を長手方向と直交する方向に横断して切断するについて切断工程57cとを有している。又、搬送中のウェザストリップ10のインサート40の長間隔部44を検知し、切除部形成工程57bにおける可動刃である上刃(パンチ)70と、固定刃である下刃(ダイ)71の位置との間の位置合わせ、切断工程57cにおける切断刃であるカッター74との位置合わせ、切断後の再搬送等を制御する制御部57dを有している。
【0036】
ウェザストリップ10は、トリム部20の断面略U字形状の開口部27を上方にして搬送される。切断装置57の検知工程57aでは、まず、渦電流方式の近接センサ(図示せず)によりトリム部20に埋設されているインサート40の長接続部43を検知し、所定の位置に停止させると共に、長接続部43を含む長間隔部44の一部を切除して切除部60を形成するための上刃(パンチ)70と、固定刃である下刃(ダイ)71の位置合わせを行う。
【0037】
次に、切除部形成工程57bは、
図4及び
図5(a)に示すように、トリム部20の開口部27側から上刃(パンチ)70を挿入し、可動刃である上刃(パンチ)70と、固定刃である下刃(ダイ)71との協動、所謂剪断加工によって長接続部43を含む長間隔部44の一部を切除する。本実施形態では、切除部60として長手方向に5.8mm、インサート40の長接続部43の長手方向の中心軸に対し両側3.4mmの5.8mm×6.8mmの領域を切除した。なお、切除部60の領域は、使用するインサート40における長接続部43の長さ及びインサート40の幅に応じて適宜設定することができる。
【0038】
固定刃である下刃(ダイ)71においては、
図4及び
図6に示すように、上刃(パンチ)70方向に傾斜面72が形成された凸突起部73を有している。一般的に、金属板(被加工材)をパンチとダイを用いて剪断加工する場合、被加工材の上面にパンチが押し付けられ、パンチとダイの角部によって、被加工材には引っ張り力が働き、この引っ張り力に耐えられなくなると、被加工材には切り裂かれたようなクラック(破断面)が生じることにより、剪断が行われる。したがって、被加工材の角部には僅かではあるが、だれが発生する。
【0039】
インサート40が埋設されたウェザストリップ10のトリム部20では、金属製のインサート40は高分子材料部80に埋設された状態にあるので、平坦な面を有する下刃(ダイ)71を使用した場合、下刃(ダイ)71と金属製のインサート40との間には高分子材料部80が存在しており、インサート40を下刃(ダイ)71で直接保持することができない。
【0040】
このような状態で、剪断を行うと、剪断の際のインサート40の曲げ点が上刃(パンチ)70の外側周囲に大きく移動し、インサート40の上面に上刃(パンチ)70が押し付けられる前にインサート40に撓みが発生する。したがって、切除部形成工程57bが終了した時には、インサート40の剪断面が下刃(ダイ)71側に変形してしまう。この場合、切断後に人手による変形の修正が必要となる。
【0041】
本発明の実施形態では、固定刃である下刃(ダイ)71においては、上刃(パンチ)70方向に傾斜面72が形成された凸突起部73を有しているので、凸突起部73が高分子材料部80に食い込む形となり、上刃(パンチ)70の外側(外周)にインサート40の曲げ点が発生することを防止することができ、切除部60においてインサート40が下刃(ダイ)71側に変形することを防止することができる。
【0042】
なお、凸突起部73の高さは、インサート40との間に存在する高分子材料部80の厚さ相当が望ましい。高分子材料部80の厚さより低いと、凸突起部73が高分子材料部80に十分食い込むことができず、インサート40の剪断面が下刃(ダイ)71側に変形する。一方、高分子材料部80の厚さより高いと、インサート40剪断後に凸突起部73がインサート40を下から押し上げることになるので、インサート40の剪断面が下刃(ダイ)71側とは逆に変形してしまうからである。
【0043】
ここで、本実施形態では、トリム部20の下方にはリップ26が形成されており、切除部60形成時には、上刃(パンチ)70の下降によりリップ26が変形し、底壁23に接する。したがって、本実施形態における高分子材料部80の厚さ相当とは、リップ26が底壁23に接し、上刃(パンチ)70の下降により下刃(ダイ)71の凸突起部73がリップ26に食い込み始める時のインサート40の下方の高分子材料部80の厚さをいう。
【0044】
又、本発明の実施形態では、下刃(ダイ)71における上刃(パンチ)70方向への傾斜面72の傾斜角度αは、40°である。この角度は、30°から60°の範囲が望ましい。30°未満の場合、傾斜が緩やかすぎるので、インサート40の上面に上刃(パンチ)70が押し付けられる前にインサート40に撓みが発生し、切除部60形成時にインサート40が下側に変形する。一方、60°を超えると、インサート40の下面に当たる凸突起部73の角度が小さくなり、インサート40の剪断時に凸突起部73の先端に大きな力がかかり、凸突起部73の先端が破損し易くなるので望ましくない。
【0045】
次に、切断工程57cでは、
図5(b)に示すように、切除部60の長手方向の中心に、長手方向と
直交方向に薄刃のカッター74を垂直にセットし、カッター74を上下動させて、インサート40の存在しない高分子材料部80のみを切断する。
【0046】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0047】
本実施形態では、切断刃としては、上下して切断する薄刃のカッター74を使用したが、カッター74の代わりに回転刃を使用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 ウェザストリップ
20 トリム部
20 取付基部
21 車外側側壁
22 車内側側壁
23 底壁
24 車外側保持リップ
25 車内側保持リップ
26 リップ
26 開口部
30 中空シール部
40 インサート
41 短冊
42 短接続部
43 長接続部
44 長間隔部
50 製造装置
51 ドラム
52 押出機
52 インサート打抜機
52 切断装置
53 高分子材料供給部
54 押出機
55 加硫槽
56 加工機
57 切断装置
57a 検知工程
57b 切除部形成工程
57c 切断工程
57d 制御部
60 切除部
70 上刃(パンチ)
71 下刃(ダイ)
72 傾斜面
73 凸突起部
74 カッター
80 高分子材料部