(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】揺動鍛造装置の荷重測定方法、荷重測定装置、揺動鍛造装置の校正方法、ハブユニット軸受の製造方法、車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21J 9/02 20060101AFI20221206BHJP
B21K 1/05 20060101ALI20221206BHJP
B21D 39/00 20060101ALI20221206BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20221206BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20221206BHJP
F16C 35/063 20060101ALI20221206BHJP
F16C 43/04 20060101ALI20221206BHJP
B60B 35/14 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B21J9/02 A
B21K1/05
B21D39/00 D
G01L5/00 Z
F16C19/18
F16C35/063
F16C43/04
B60B35/14 V
(21)【出願番号】P 2019133018
(22)【出願日】2019-07-18
(62)【分割の表示】P 2019527488の分割
【原出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018023141
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】萩原 信行
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5716917(JP,B2)
【文献】特開2016-11440(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172942(WO,A1)
【文献】特許第2519610(JP,B2)
【文献】特許第6566167(JP,B2)
【文献】特許第6332572(JP,B1)
【文献】特開2013-91067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 9/02
B21K 1/05
B21D 39/00
G01L 5/00
F16C 19/18
F16C 35/063
F16C 43/04
B60B 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押型と、
前記押型を、基準軸周りに回転可能にかつ前記基準軸に対して傾斜した自転軸周りに自転自在に、支持する押型支持部と、
加圧対象を支持するための支持テーブルと、
前記押型を前記加圧対象に押し付けて前記加圧対象に荷重を付加するための荷重付加手段と、
を備えた揺動鍛造装置の荷重測定装置であって、
前記加圧対象としての部材と、
前記支持テーブルに対して、前記部材を、前記基準軸と同軸にかつ前記基準軸に沿った方向に直動案内するリニアガイドと、
前記部材に付加されている実荷重を測定する荷重測定手段であり、前記押型が押し付けられた前記部材からの荷重を受ける入力部を有する、前記荷重測定手段と、
を備える、
揺動鍛造装置の荷重測定装置。
【請求項2】
前記押型の先端部は、凸形状を有する、請求項1に記載の揺動鍛造装置の荷重測定装置。
【請求項3】
前記荷重測定手段の前記入力部は、凸形状を有する、請求項1又は2に記載の揺動鍛造装置の荷重測定装置。
【請求項4】
前記部材は、本体部と、前記押型に接するように配置される緩衝部と、を有し、
前記緩衝部は、前記押型の先端部よりも軟質の金属により構成されている、
請求項1から3のいずれかに記載の揺動鍛造装置の荷重測定装置。
【請求項5】
前記荷重測定手段は、前記支持テーブルと前記部材との間に配置されるロードセルを有する、請求項1から4のいずれかに記載の揺動鍛造装置の荷重測定装置。
【請求項6】
押型を、基準軸周りに回転可能にかつ前記基準軸に対して傾斜した自転軸周りに自転自在に、支持する押型支持部と、
加圧対象を支持するための支持テーブルと、
油圧シリンダと油圧センサと制御装置とを有し、前記押型を前記加圧対象に押し付けて前記加圧対象に荷重を付加するための荷重付加手段と、
を備えた揺動鍛造装置の荷重測定方法であって、
前記押型支持部に前記押型を支持することと、
前記加圧対象としての部材を、前記基準軸と同軸にかつ前記基準軸の方向に直動案内されるように、前記支持テーブルに支持することと、
前記押型を回転させながら、前記荷重付加手段を介して前記押型を前記部材に押し付けた状態で、前記油圧センサを用いることなく、前記押型が押し付けられた前記部材から受けた荷重である、前記部材に付加されている実荷重を測定すること、
を含む、
揺動鍛造装置の荷重測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の揺動鍛造装置の荷重測定方法により前記実荷重を測定し、前記測定した前記実荷重を利用して前記荷重付加手段の荷重の設定値の校正を行う、
揺動鍛造装置の校正方法。
【請求項8】
かしめ部を有する部品を備えたハブユニット軸受の製造方法であって、
前記かしめ部を、請求項7に記載の揺動鍛造装置の校正方法により校正された揺動鍛造装置を用いて形成する、
ハブユニット軸受の製造方法。
【請求項9】
ハブユニット軸受を備えた車両の製造方法であって、
前記ハブユニット軸受を、請求項8に記載のハブユニット軸受の製造方法により製造する、
車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動鍛造装置の荷重校正を行うための技術に関する。
本願は、2018年2月13日に出願された特願2018-023141号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪は、たとえば
図8に示すようなハブユニット軸受1により、懸架装置に対して回転自在に支持されている。ハブユニット軸受1は、自動車などの車両の懸架装置に結合固定された状態で回転しない外輪2と、車輪を支持固定した状態でこの車輪と共に回転するハブ3と、外輪2の内周面に設けられた複列の外輪軌道4a、4bとハブ3の外周面に設けられた複列の内輪軌道5a、5bとの間に配置された複数個の転動体6とを備えている。
【0003】
ハブ3は、外周面に軸方向外側(
図8の左側)の内輪軌道5aを形成されたハブ輪7と、外周面に軸方向内側(
図8の右側)の内輪軌道5bを形成された内輪8とを、互いに結合固定することにより構成されている。このようなハブ3を構成するために、具体的には、ハブ輪7の軸方向内側部に内輪8を外嵌した状態で、ハブ輪7の軸方向内側部に設けられた円筒部9のうち、内輪8よりも軸方向内側に突出した部分を径方向外方に塑性変形させて(かしめ拡げて)形成したかしめ部10により、内輪8の軸方向内端面を抑え付けている。ハブユニット軸受1の予圧は、かしめ部10から内輪8に加わる軸力によって増大する。そして、このように増大した予圧が適正範囲に収まるように管理されている。
【0004】
ハブユニット軸受1の製造時に、円筒部9からかしめ部10を形成する作業は、特許第4127266号公報(特許文献1)、特開2015-77616号公報(特許文献2)などに記載されて従来から知られている、揺動鍛造装置を用いて行うことができる。
【0005】
揺動鍛造装置は、押型と、ハブ輪7を支持するための支持テーブルとを備えている。押型は、基準軸を中心とする回転(揺動回転)可能であり、かつ、基準軸に対して所定角度傾斜した自転軸を中心とする自転自在である。ハブユニット軸受1の製造時には、ハブ輪7の中心軸を基準軸に一致させた状態で、揺動回転する押型を円筒部9に押し付けることにより、かしめ部10を形成する。
【0006】
また、揺動鍛造装置は、揺動回転する押型を円筒部9(かしめ部10)に押し付けて、円筒部9(かしめ部10)に基準軸の方向の荷重を付与するための荷重付加手段を備えている。ハブユニット軸受1の製造時には、荷重付加手段が付与する荷重を制御することによって、かしめ部10を所望形状に仕上げ、ハブユニット軸受1に適正範囲の予圧を付与するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4127266号公報
【文献】特開2015-77616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
揺動鍛造装置では、荷重付加手段の荷重の設定値(荷重付加手段が加圧対象に付加していると認識している基準軸の方向の荷重の値)が、加圧対象に実際に付加されている基準軸の方向の荷重(実荷重)の値に対してずれていると、高精度な加工を行えなくなる。上述したハブユニット軸受1の例で言えば、かしめ部10を所望形状に仕上げて、ハブユニット軸受1に適正範囲の予圧を付与することが難しくなる。
【0009】
したがって、揺動鍛造装置では、出荷時やメンテナンス時などに、荷重付加手段の荷重の設定値を校正し、該設定値と、加圧対象に付加される基準軸の方向の実荷重とを一致させる必要がある。
【0010】
ここで、揺動鍛造装置の運転時に、加圧対象に付加されている基準軸の方向の実荷重は、押型を揺動回転させている状態での実荷重である。このため、荷重付加手段の荷重の設定値を校正する場合には、押型を揺動回転させながら実荷重を測定する動的荷重測定を行い、測定した実荷重を利用して、当該校正を行うのが望ましい。
【0011】
しかしながら、従来から知られている動的荷重測定方法、すなわち、押型を揺動回転させながらロードセルに直接押し付ける動的荷重測定方法では、ロードセルに偏荷重が加わり、基準軸の方向の実荷重を精度良く測定することが難しいという問題がある。特に、押型の揺動角(基準軸に対する自転軸の角度)が比較的大きい角度になると、偏荷重の影響が大きくなり、基準軸の方向の実荷重を精度良く測定することがより難しくなる。そこで、従来は、押型を静止させたままロードセルに直接押し付ける静的荷重測定によって、基準軸の方向の実荷重を測定し、測定した実荷重を利用して、荷重付加手段の荷重の設定値を校正していた。しかしながら、このような校正方法では、動的荷重測定で測定した実荷重を利用する校正方法と異なり、実態に合った校正を行うことができないため、校正の信頼性を十分に確保することが難しいという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、押型を揺動回転させながら加圧対象に押し付けている状態で、加圧対象に付与されている基準軸の方向の実荷重を測定する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様において、揺動鍛造装置は、押型支持部と、支持テーブルと、荷重付加手段とを備えている。前記押型支持部は、成形用押型と測定用押型とから選択される何れか一方の押型を、基準軸を中心とする回転可能に、かつ、前記基準軸に対して所定角度傾斜した自転軸を中心とする自転自在に支持可能である。前記支持テーブルは、前記基準軸の方向に関して前記押型支持部に支持された押型と対向する位置に配置された、加圧対象を支持する。前記荷重付加手段は、前記押型支持部と前記支持テーブルとを前記基準軸の方向に相対移動させることに基づいて、前記押型支持部に支持された押型を前記支持テーブルに支持された加圧対象に押し付けて該加圧対象に前記基準軸の方向の荷重を付加する。
【0014】
本発明の別の一態様において、揺動鍛造装置の動的荷重測定方法では、前記押型支持部に前記測定用押型を支持する。また、前記支持テーブルに加圧対象となる測定用軸部材を支持すると共に、該測定用軸部材を、前記基準軸と同軸に配置し、かつ、前記基準軸の方向に直動案内する。その後、前記基準軸を中心として前記測定用押型を回転させながら、前記荷重付加手段により、前記測定用押型を前記測定用軸部材に押し付けた状態で、前記測定用軸部材に付加されている前記基準軸の方向の実荷重を測定する。
【0015】
本発明の別の一態様において、揺動鍛造装置の動的荷重測定装置は、前記測定用押型と、測定用軸部材と、荷重測定手段とを備えている。前記測定用押型は、前記押型支持部に支持される。前記測定用軸部材は、前記支持テーブルに支持されると共に、前記基準軸と同軸に配置され、かつ、前記基準軸の方向に直動案内される。前記荷重測定手段は、前記測定用軸部材に付加されている前記基準軸の方向の実荷重を測定する。
【0016】
本発明の別の一態様において、揺動鍛造装置の校正方法は、前記揺動鍛造装置の動的荷重測定方法により前記実荷重を測定し、前記測定した実荷重を利用して前記荷重付加手段の荷重の設定値の校正を行う。
【0017】
本発明の別の一態様において、製造方法の対象となるハブユニット軸受は、かしめ部を有する部品を備えている。ハブユニット軸受の製造方法では、前記かしめ部を、本発明の揺動鍛造装置の校正方法により校正された揺動鍛造装置を用いて形成する。
【0018】
本発明の別の一態様において、製造方法の対象となる車両は、ハブユニット軸受を備えている。車両の製造方法では、前記ハブユニット軸受を、本発明のハブユニット軸受の製造方法により製造する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、押型を揺動回転させながら加圧対象に押し付けている状態で、加圧対象に付与されている基準軸の方向の実荷重を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の1例に関する、揺動鍛造装置を示す略断面図である。
【
図3】
図3における(a)、(b)は、本発明の実施の形態の1例に関する、揺動鍛造装置によりかしめ部を形成する作業を工程順に示す部分拡大断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態の1例に関して、揺動鍛造装置に動的荷重測定装置を組み付け、かつ、測定用押型を測定用軸部材の上端面に押し付ける前の状態で示す断面図である。
【
図6】
図6は、測定用押型を測定用軸部材の上端面に押し付けた状態を示す、
図5と同様の図である。
【
図7】
図7は、ハブユニット軸受(軸受ユニット)を備える車両の部分的な模式図である。
【
図8】
図8は、ハブユニット軸受の1例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、
図1~
図8を用いて説明する。
【0022】
図7は、ハブユニット軸受(軸受ユニット)1を備える車両200の部分的な模式図である。本発明は、駆動輪用のハブユニット軸受、及び従動輪用のハブユニット軸受のいずれにも適用することができる。
図7において、ハブユニット軸受1は、駆動輪用であり、外輪2と、ハブ3と、複数の転動体6とを備えている。外輪2は、ボルト等を用いて、懸架装置のナックル201に固定されている。車輪(および制動用回転体)202は、ボルト等を用いて、ハブ3に設けられたフランジ(回転フランジ)3Aに固定されている。また、車両200は、従動輪用のハブユニット軸受1に関して、上記と同様の支持構造を有することができる。
【0023】
本例の対象となる揺動鍛造装置100は、たとえば、
図8に示したハブユニット軸受1のかしめ部10を形成するのに用いられる。
【0024】
図1に示すように、揺動鍛造装置100は、フレーム11と、凹球面座12と、シャフト付球面座13と、成形用押型14と、回転体15と、支持テーブル16と、荷重付加手段17と、外輪駆動手段18とを備えている。
【0025】
なお、本例に関する以下の説明中、上下方向は、
図1~
図6の上下方向を意味する。ただし、
図1~
図6の上下方向は、必ずしも加工時の上下方向と一致するとは限らない。
【0026】
フレーム11は、揺動鍛造装置100の外装を構成するもので、上下方向(垂直方向)に配置された基準軸αを有している。フレーム11の上面には、フレーム11と共に外装を構成する、ヘッドケース26が固定されている。
【0027】
凹球面座(球状凹座、凹座体)12は、シャフト付球面座13の揺動シャフト20が配される穴部12aを有し、全体的に環状に構成されている。凹球面座12は、フレーム11の上部内側に固定されている。凹球面座12は、基準軸αと同軸の中心軸を有する凹球面部(凹面、球面、球状凹面)19を有している。凹球面部19は、軸方向下側面であり、下方を向いて配される。凹球面部19は、穴部12aに対応する開口を有し、全体的に環状(円環状)に構成されている。凹球面部19は、中心軸を中心に、全周にわたり周方向に滑らかに延在する面を有する。
【0028】
シャフト付球面座(揺動部材、揺動体)13は、揺動シャフト(シャフト)20と、揺動シャフト20の下端部に同軸に固定された凸球面座(球状凸座、凸座体)21とを有している。揺動シャフト20の中心軸は、凸球面座21の中心軸と同軸である。凸球面座21は、部分球状に構成された凸球面部(凸面、球面、球状凸面)22を有している。凸球面部22は、揺動シャフト20よりも大きい外径寸法を有する。凸球面部22は、軸方向上側面であり、上方を向いて配される。凸球面部22は、全体的に環状(円環状)に構成されている。凸球面部22は、中心軸を中心に、全周にわたり周方向に滑らかに延在する面を有する。
【0029】
このようなシャフト付球面座13は、フレーム11およびヘッドケース26の内側に配置されている。シャフト付球面座13は、中心軸である自転軸βを基準軸αに対して所定角度θだけ傾斜させた状態で配される。凸球面座21が凹球面座12に球面嵌合される。凹球面部19に対する凸球面部22の球面合わせによって、シャフト付球面座13が、基準軸αを中心として回転(揺動回転)すること、および、自転軸βを中心として自転することが許容されている。一例では、かしめ加工用の所定角度θは、10度以上30度以下、又は15度以上(たとえば、15度以上30度以下)に設定可能である。一例において、基準軸(α)に対する自転軸(β)の角度である揺動角として、所定角度θは15度にできる。他の例において、所定角度θは、5、10、12、14、16、18、20、25、30、又は35度にできる。
【0030】
成形用押型14は、凸球面座21の軸方向下側部に対して、シャフト付球面座13と同軸に、かつ、着脱可能に取り付けられている。成形用押型14は、軸方向下側面に加工面部23を有している。一例において、加工面部23は、円環状を有する。シャフト付球面座13に対する成形用押型14の同軸性は、成形用押型14の上面の中央部に設けられた凸部(ボス部)24を、凸球面座21の下面の中央部に設けられた凹部25にがたつきなく内嵌することによって確保されている。
【0031】
回転体15は、ヘッドケース26の内側に、軸受装置27によって、基準軸αを中心とする回転を可能に支持されている。回転体15は、図示しない回転体用電動モータを駆動源とする回転体駆動手段により、回転駆動可能とされている。一例において、回転体15は、径方向外側部の円周方向1箇所に、基準軸αに対して揺動シャフト20の自転軸βと同じ角度θだけ傾斜した、保持孔28を有している。揺動シャフト20の軸方向上側部は、保持孔28の内側に、転がり軸受29を介して回転可能に支持されている。この状態で、揺動シャフト20は、保持孔28に対して軸方向下側へ変位すること、すなわち保持孔28から脱落することが阻止されている。
【0032】
本例では、転がり軸受29として、ラジアル荷重の支承能力に加えて、アキシアル荷重の支承能力を有するもの、具体的には、自動調心ころ軸受を使用している。自動調心ころ軸受において、外輪30の内周面と内輪31の外周面との間に、それぞれが転動体である複数個の球面ころ32が配置されている。自動調心ころ軸受は、外輪30と内輪31との間に作用するラジアル荷重およびアキシアル荷重を支承可能である。また、外輪30と内輪31との中心軸同士が傾斜した場合でも、外輪30の内周面と内輪31の外周面との間で球面ころ32の転動を円滑に行わせることができる特性、すなわち自動調心性を有している。このような自動調心ころ軸受のより具体的な構成については、従来から各種知られているため、説明は省略する。なお、転がり軸受29としては、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受などを使用することもできる。
【0033】
一例において、保持孔28は、軸方向上側の大径孔部と、軸方向下側の小径孔部とを、軸方向上側を向いた段差面33を介して接続することにより構成された、段付孔である。保持孔28の大径孔部に外輪30が内嵌され、かつ、保持孔28の段差面33に外輪30の軸方向下端面が当接されている。これにより、保持孔28に対して外輪30が、軸方向下側へ変位することを阻止している。また、内輪31に対して揺動シャフト20の軸方向上側部が、軸方向の相対変位を可能に内嵌(挿通)されている。揺動シャフト20の軸方向上側部に設けられた雄ねじ部34に螺合したナット35が、内輪31の軸方向上端面に当接されている。これにより、内輪31に対して揺動シャフト20が、軸方向下側へ変位することを阻止している。このような構成を採用することにより、揺動シャフト20が、保持孔28に対して軸方向下側へ変位することを阻止している。
【0034】
雄ねじ部34に対するナット35の螺合位置(螺合量)を調節することにより、凸球面部22と凹球面部19との、揺動シャフト20の軸方向位置に関する位置関係を変えることで、凸球面部22と凹球面部19との球面係合部に存在する隙間(係合代)を調節し、この隙間の適正化を図れるようになっている。なお、本例では、シャフト付球面座13と、回転体15と、軸受装置27と、転がり軸受29とが、押型支持部に相当する。
【0035】
支持テーブル16は、フレーム11の内側で成形用押型14の下方に配置されている。また、支持テーブル16は、フレーム11に対して基準軸αに沿った上下方向の移動を可能に設けられている。支持テーブル16の上面には、受型(ホルダ)36が固定されている。一例において、受型36は、上端が開口した有底円筒状で、基準軸αと同軸に配置されている。受型36は、ワーク用アダプタ37を介して、ワークピースを同軸に保持可能である。ワーク用アダプタ37は、受型36に対して同軸に、かつ、着脱可能に取り付けられている。ワーク用アダプタ37は、ワークピースの種類に応じた形状を有する治具であり、ワークピースを同軸に保持可能である。受型36に対するワーク用アダプタ37の同軸性は、受型36の底板部の上面の中央部に設けられた凸部(ボス部)38を、ワーク用アダプタ37の下面の中央部に設けられた凹部39にがたつきなく内嵌することによって確保されている。
【0036】
荷重付加手段17(
図2、
図5、
図6にのみブロック図で図示)は、支持テーブル16を上下方向に移動させるように構成される。支持テーブル16の移動に伴い、成形用押型14(および後述する測定用押型43)が、支持テーブル16に支持された加圧対象に押し付けられ、加圧対象に基準軸αの方向の荷重が付加される。荷重付加手段17は、油圧シリンダ40と、油圧センサ41と、制御装置42とを備えている。
【0037】
油圧シリンダ40は、1対の油圧室と、1対の油圧室同士の間に設けられたピストンとを備える。油圧シリンダ40において、1対の油圧室の差圧に基づき、ピストンが移動する。ピストンの移動に伴い、支持テーブル16が基準軸αに沿って上下方向に移動する。油圧センサ41は、1対の油圧室の差圧を測定するものである。制御装置42は、1対の油圧室の差圧を制御することにより、支持テーブル16の上下方向位置、および、加圧対象に負荷する基準軸αの方向の荷重を制御するものである。制御装置42による1対の油圧室の差圧(荷重)の制御は、油圧センサ41により測定した差圧を確認(フィードバック)しながら行われる。また、制御装置42が制御する荷重の設定値は、1対の油圧室の差圧×ピストンの面積×係数で定義されている。荷重の設定値は、制御装置42の表示部に表示され、作業者などが確認できるようになっている。なお、前記係数は、基本的には1であるが、後述する校正の作業によって適宜調整(変更)される。
【0038】
外輪駆動手段18(
図2にのみブロック図で図示)は、支持テーブル16に支持されている。外輪駆動手段18は、ハブユニット軸受1のかしめ部10の形成を行う際に、外輪用電動モータを駆動源として、外輪2をハブ3に対して回転駆動するために使用される。
【0039】
本例では、制御装置42は、荷重付加手段17だけでなく、回転体15を回転駆動するための図示しない回転体駆動手段、および、外輪駆動手段18の一部を構成し、これらの手段の駆動制御も行うようになっている。
【0040】
本例の揺動鍛造装置100において、ハブ輪7の軸方向内端部にかしめ部10を形成する際には、かしめ部10を形成する前のハブ輪7と、ハブユニット軸受1を構成するその他の部品とを組み立てた状態で、
図1および
図2に示すように、ワークピースであり加圧対象であるハブ輪7が受型36に対して(ワーク用アダプタ37を介して)同軸に保持される。なお、この状態で、ハブ輪7は、ワーク用アダプタ37と受型36とを介して、支持テーブル16に支持されている。また、この状態で、外輪駆動手段18により、外輪2をハブ3に対して回転させる。回転体15の回転に基づいて、シャフト付球面座13および成形用押型14が、基準軸αを中心として揺動回転する。この状態で、支持テーブル16が上方に移動し、
図3(a)に示すように、成形用押型14の加工面部23が、ハブ輪7の円筒部9に押し付けられる。これにより、成形用押型14から円筒部9に対し、上下方向に関して下方に、径方向に関して外方に、それぞれ向いた加工力が加えられる。また、加工力の付加部分(加工位置)が円周方向に関して連続的に変化する。これにより、
図3(a)→
図3(b)に示すように、円筒部9が径方向外方に徐々に塑性変形してかしめ部10が形成され、かしめ部10により内輪8の軸方向内端面が抑え付けられる。
【0041】
このようにしてかしめ部10を形成する際に、成形用押型14は、円筒部9との接触部に作用する摩擦力に基づいて、自転軸βを中心として回転(自転)しながら、上述した揺動回転をする。すなわち、円筒部9に対する成形用押型14の接触は、転がり接触となる。このため、接触部の摩耗や発熱を十分に抑えられる。また、円筒部9から成形用押型14に加わる加工反力は、凹球面座12によって効率良く支承することができる。
【0042】
ところで、上述のような本例の揺動鍛造装置100については、荷重ずれが生じる場合がある。これは、油圧センサ41の精度、油圧シリンダ40のピストンの摺動抵抗、支持テーブル16の重量などのばらつきに起因する、あるいは、これらの径時変化に起因する。すなわち、荷重付加手段17の荷重の設定値(制御装置42が制御する荷重の設定値、制御装置42の表示部に表示される荷重の表示値)が、加圧対象に付加される基準軸αの方向の実荷重に対してずれる。このため、本例の揺動鍛造装置100については、ワークピースの加工精度を確保する観点から、出荷時やメンテナンス時などに、荷重付加手段17の荷重の設定値(表示値)を校正することが望ましい。
【0043】
そこで、次に、動的荷重測定装置150について、
図4~
図6を用いて説明する。動的荷重測定装置150は、荷重付加手段17の荷重の設定値(表示値)を校正する、すなわち、本例の揺動鍛造装置100の校正方法を実施するために用いられる。なお、
図4~
図6は、揺動鍛造装置100に動的荷重測定装置150が組み付けられた状態を示している。
【0044】
動的荷重測定装置150は、測定用押型43と、案内台44と、加圧対象である測定用軸部材45と、直動玉軸受(リニアガイド)46と、ロードセル用アダプタ47と、ロードセル48とを備えている。
【0045】
測定用押型(押型、検査型)43は、成形用押型(加工型)に代えて、凸球面座21に取り付けられる。測定用押型43は、成形用押型14が取り外された凸球面座21の軸方向下側部に対して、シャフト付球面座13と同軸に、かつ、着脱可能に取り付けられている。シャフト付球面座13に対する測定用押型43の同軸性は、測定用押型43の上面の中央部に設けられた凸部(ボス部)24aを、凸球面座21の下面の中央部に設けられた凹部25にがたつきなく内嵌することによって確保されている。一例において、測定用押型43は、軸方向下端部である先端部49が、基準軸α上に曲率中心を有する凸球面状(凸状球面)を有する。本例では、測定用押型43は鋼製であり、先端部49に硬化熱処理が施されている。
【0046】
案内台44は、支持テーブル16の上面に固定されている。案内台44は、受型36の上方に水平に配置された天板部50と、天板部50の外周部の円周方向複数箇所を支持テーブル16の上面に対して支持する複数の脚部51とを備えている。天板部50は、外周部を構成する円輪状の外周板部52と、外周板部52に内嵌支持された円輪状のブッシュサポート板部53と、ブッシュサポート板部53に内嵌支持された円筒状のブッシュ54とを備えている。ブッシュ54は、基準軸αと同軸に配置されている。また、ブッシュ54は、鋼製であり、耐摩耗性を向上させるために硬化熱処理が施されている。
【0047】
測定用軸部材45は、全体が円柱状に構成されている。測定用軸部材45は、ブッシュ54の径方向内側に、直動玉軸受46を介して、基準軸αと同軸に配置され、かつ、基準軸αの方向に直動案内されている。測定用軸部材45は、その上端部を除いた大部分を構成する本体部55と、その上端部を構成する緩衝部56とを、互いに結合固定することにより構成されている。本体部55は、鋼製で円柱状に構成されており、耐摩耗性を向上させるために硬化熱処理が施されている。緩衝部56は、鋼製で短円筒状に構成されており、硬化熱処理が施されていない、生の状態になっている。すなわち、緩衝部56は、測定用押型43の先端部49よりも軟質の金属により構成されている。測定用軸部材45は、加工対象物のかしめ部に対応する径(加工径)と同程度の外径を有する外周面を有する。例えば、加工径に対する外周面の外径の比は、約0.5、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、又はそれ以上にできる。
【0048】
直動玉軸受46は、ブッシュ54の円筒状の内周面と、測定用軸部材45を構成する本体部55の円筒状の外周面との間に転動自在に配置された複数個の玉と、これらの玉を保持する円筒状の保持器(ボールリテーナ)とを有する。直動玉軸受46は、ブッシュ54の下端面に固定された円輪状の抑え板57により、ブッシュ54の径方向内側から落下することを防止されている。測定用軸部材45は、直動玉軸受46により基準軸αの方向に直動案内されることで、基準軸αに対して直交する方向への変位、および、基準軸αに対する傾斜を阻止されている。直動玉軸受46は、測定用軸部材45の外周面を全周にわたり連続的に囲うように構成されている。直動玉軸受46は、測定用軸部材45の外周面からの力を全周にわたり支持することができる。測定用軸部材45の外周面に対する直動玉軸受(リニアガイド)46の軸方向支持長さ(軸方向における支持区間の距離)Z1(
図5)が適切に設定される。加工径に対する軸方向支持長さZ1の比は、約0.5、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、又はそれ以上にできる。
【0049】
ロードセル用アダプタ47は、ワーク用アダプタ37が取り外された受型36の底板部の上に、受型36と同軸に、かつ、着脱可能に取り付けられている。ロードセル用アダプタ47は、ロードセル48を同軸に保持可能である。受型36に対するロードセル用アダプタ47の同軸性は、受型36の底板部の上面の中央部に設けられた凸部(ボス部)38を、ロードセル用アダプタ47の下面の中央部に設けられた凹部39aにがたつきなく内嵌することによって確保されている。
【0050】
ロードセル48は、ロードセル用アダプタ47の上に、同軸に保持されている。したがって、ロードセル48は、基準軸αと同軸に配置されている。ロードセル48は、径方向中央部の上面が、周囲の部分よりも上方に突出した凸球面状の入力部58を有する。ロードセル48は、入力部58から入力される基準軸αの方向の荷重を測定可能である。入力部58の中心部には、測定用軸部材45を構成する本体部55の下面(基準軸αに直交する平坦面)が当接している。したがって、ロードセル48は、測定用軸部材45から入力される基準軸αの方向の荷重を測定可能になっている。このようなロードセル48は、通常、入力部58から入力される基準軸αの方向の荷重によって弾性変形する図示しない起歪体と、起歪体に貼り付けられた図示しないひずみゲージとを備える。ロードセル48は、起歪体の弾性変形量をひずみゲージにより電圧に変換して前記荷重を測定する構成を有している。なお、測定用軸部材45は、ロードセル48とロードセル用アダプタ47と受型36とを介して、支持テーブル16に支持されている。一例において、ロードセル48は、短円柱状を有する。他の例において、ロードセル48は、他の形状を有することができる。
【0051】
次に、本例の揺動鍛造装置100の校正方法について説明する。まず、
図4および
図5に示すように、揺動鍛造装置100に動的荷重測定装置150を組み付ける。回転体15を回転させることに基づいて、シャフト付球面座13および測定用押型43を、基準軸αを中心として揺動回転させながら、荷重付加手段17により、支持テーブル16を上方に移動させる。すると、
図6に示すように、測定用押型43の先端部49が測定用軸部材45の上端面に接触し、測定用押型43を押し始める。それと同時に、測定用押型43が自転軸βを中心として自転し始める。荷重付加手段17によって測定用押型43が測定用軸部材45を押す力(実荷重)が、測定用軸部材45からロードセル48の入力部58に入力される。
【0052】
ここで、荷重付加手段17によって測定用押型43が測定用軸部材45を押す力を、基準軸αの方向の荷重として、ロードセル48により精度良く測定するためには、測定用軸部材45からロードセル48の入力部58の中心部に、基準軸αの方向の荷重が入力されるようにする必要がある。この点に関して、本例では、測定用軸部材45の下端面は、ロードセル48の入力部58の中心部に当接している。さらに、測定用軸部材45は、直動玉軸受46により基準軸αの方向に直動案内されている。このため、測定用押型43の先端部49から測定用軸部材45の上端面に偏荷重が入力されたとしても、直動案内された測定用軸部材45の下端面によって、ロードセル48の入力部58の中心部を、実質的に基準軸αの方向に押すことができる。したがって、荷重付加手段17によって測定用押型43が測定用軸部材45を押す力を、基準軸αの方向の荷重として、ロードセル48により、精度良く測定することができる。
【0053】
また、本例では、測定用押型43の先端部49を、基準軸α上に曲率中心を有する凸球面状としている。このため、この先端部49により、測定用軸部材45の上端面の中心部を押すことができる。したがって、測定用押型43から測定用軸部材45に偏荷重が入力されにくくなる。延いては、測定用軸部材45からロードセル48の入力部58に偏荷重が入力されにくくなる。したがって、その分、ロードセル48による基準軸αの方向の荷重の測定精度を向上させることができる。
【0054】
さらに、本例では、測定用軸部材45の上端部を、測定用押型43の先端部49よりも軟質の金属により構成された緩衝部56としている。このため、測定用押型43の先端部49が緩衝部56の上端面を押し始めると、緩衝部56の上端面が変形し始める。その後、緩衝部56の上端面が、測定用押型43の先端部49と合致(球面係合)する形状になる。この結果、測定用押型43から測定用軸部材45に偏荷重がより入力されにくくなる。延いては、測定用軸部材45からロードセル48の入力部58に偏荷重がより入力されにくくなる。したがって、その分、ロードセル48による基準軸αの方向の荷重の測定精度を向上させることができる。
【0055】
本例では、たとえば、荷重付加手段17の荷重の設定値(表示値)が所定の値になるように荷重の設定を行う。設定された荷重に基づき、上述のように測定用押型43が揺動回転しながら、測定用押型43の先端部49が測定用軸部材45の上端面に押し付けられる。ロードセル48の入力部58に入力される基準軸αの方向の荷重が安定したところで、ロードセル48による荷重の測定値が確認される。
【0056】
なお、ロードセル48による荷重の測定値が安定しない場合がある。例えば、揺動鍛造装置100や動的荷重測定装置150を構成する各部品の製造誤差や組み付け誤差によって、測定用押型43の先端部49により測定用軸部材45の上端面の中央部を押すことができず、その結果、若干の偏荷重がロードセル48の入力部58に入力される。ロードセル48による荷重の測定値が安定しない場合には、ロードセル48による荷重の測定値として、測定用押型43が1回揺動回転する間の平均値を確認する。確認した荷重の測定値が、荷重付加手段17の荷重の設定値(表示値)と異なる場合には、荷重付加手段17の係数(油圧センサ41により測定した差圧を荷重に変換する際に掛け合わされる前記係数)を調整して、荷重付加手段17の荷重の設定値(表示値)を、確認した荷重の測定値に合わせる(校正する)。このような校正の作業を、複数の荷重の設定値(表示値)について、繰り返し行う。
【0057】
たとえば、下記の表1に示すように、荷重付加手段17の複数の荷重の設定値(表示値)が、ロードセル48による荷重の測定値に対してずれている場合には、下記の表2に示すように、ずれが生じている荷重の設定値(表示値)が、ロードセル48による荷重の測定値に合うように、荷重付加手段17の係数を調整する。
【表1】
【表2】
【0058】
本例では、荷重付加手段17によって測定用押型43が測定用軸部材45を押す力を、基準軸αの方向の荷重として、ロードセル48により精度良く測定することができる。このため、ロードセル48による荷重の測定値を利用して、荷重付加手段17の荷重の設定値(表示値)を精度良く校正することができる。したがって、本例の校正方法によって校正した揺動鍛造装置100を用いて、かしめ部10を所望形状に仕上げることができ、その結果、ハブユニット軸受1に適正範囲の予圧を付与することができる。
【0059】
なお、本発明を実施する場合には、揺動鍛造装置を構成する外輪駆動手段18として、たとえば特許第4127266号公報に記載されたものを使用することができる。この場合には、動的荷重測定装置150の案内台44を構成する一部の部材(脚部51、外周板部52、ブッシュサポート板部53)として、外輪駆動手段18を構成する一部の部材を利用することができる。
【0060】
また、本発明を実施する場合、揺動鍛造装置は、支持テーブルが基準軸の方向に移動する形式のものに限らず、押型が基準軸の方向に移動する形式のものであっても良い。また、揺動鍛造装置を構成する押型支持部についても、具体的な構造は限定されず、たとえば球面座を備えていなくても良い。
【0061】
一実施形態において、揺動鍛造装置(100)は、押型支持部(13、15、27、29)と、支持テーブル(16)と、荷重付加手段(17)とを備えている。前記押型支持部(13、15、27、29)は、成形用押型(14)と測定用押型(43)とから選択される何れか一方の押型を、基準軸(α)を中心とする回転可能に、かつ、前記基準軸(α)に対して所定角度傾斜した自転軸(β)を中心とする自転自在に支持可能である。前記支持テーブル(16)は、前記基準軸(α)の方向に関して前記押型支持部(13、15、27、29)に支持された押型と対向する位置に配置された、加圧対象を支持する。前記荷重付加手段(17)は、前記押型支持部(13、15、27、29)と前記支持テーブル(16)とを前記基準軸(α)の方向に相対移動させることに基づいて、前記押型支持部(13、15、27、29)に支持された押型を前記支持テーブルに支持された加圧対象に押し付けて該加圧対象に前記基準軸(α)の方向の荷重を付加する。
【0062】
上記の揺動鍛造装置(100)の動的荷重測定方法では、前記押型支持部(13、15、27、29)に前記測定用押型(43)を支持する。また、前記支持テーブル(16)に加圧対象となる測定用軸部材(45)を支持すると共に、該測定用軸部材(45)を、前記基準軸(α)と同軸に配置し、かつ、前記基準軸(α)の方向に直動案内する。その後、前記基準軸(α)を中心として前記測定用押型(43)を回転させながら、前記荷重付加手段(17)により、前記測定用押型(43)を前記測定用軸部材(45)に押し付けた状態で、前記測定用軸部材(45)に付加されている前記基準軸(α)の方向の実荷重を測定する。
【0063】
上記の揺動鍛造装置(100)の動的荷重測定装置(150)は、前記測定用押型(43)と、測定用軸部材(45)と、荷重測定手段(48)とを備えている。前記測定用押型(43)は、前記押型支持部(13、15、27、29)に支持される。前記測定用軸部材(45)は、前記支持テーブル(16)に支持されると共に、前記基準軸(α)と同軸に配置され、かつ、前記基準軸(α)の方向に直動案内される。前記荷重測定手段(48)は、前記測定用軸部材(45)に付加されている前記基準軸(α)の方向の実荷重を測定する。
【0064】
前記測定用軸部材(45)を前記支持テーブル(16)に対して前記基準軸(α)の方向に直動案内するために、直動玉軸受を用いることができる。
【0065】
前記荷重測定手段(48)を、前記支持テーブル(16)と前記測定用軸部材(45)との間に配置されたロードセルとすることができる。
【0066】
前記実荷重を測定する際に前記測定用軸部材(45)の軸方向端部に押し付けられる前記測定用押型(43)の先端部を、前記基準軸(α)上に曲率中心を有する凸球面状にすることができる。
【0067】
前記実荷重を測定する際に前記測定用押型(43)の先端部を押し付けられる、前記測定用軸部材(45)の軸方向端部を、前記測定用押型(43)の先端部よりも軟質の金属により構成することができる。
【0068】
一実施形態において、揺動鍛造装置の校正方法は、上記の揺動鍛造装置(100)の動的荷重測定方法により前記実荷重を測定し、前記測定した実荷重を利用して前記荷重付加手段(17)の荷重の設定値の校正を行う。
【0069】
一実施形態において、ハブユニット軸受(1)は、かしめ部(10)を有する部品を備えている。ハブユニット軸受(1)の製造方法では、前記かしめ部(10)を、上記の揺動鍛造装置の校正方法により校正された揺動鍛造装置(100)を用いて形成する。
【0070】
一実施形態において、製造方法の対象となる車両は、ハブユニット軸受(1)を備えている。車両の製造方法では、前記ハブユニット軸受(1)を、上記のハブユニット軸受の製造方法により製造する。
【符号の説明】
【0071】
1 ハブユニット軸受
2 外輪
3 ハブ
4a、4b 外輪軌道
5a、5b 内輪軌道
6 転動体
7 ハブ輪
8 内輪
9 円筒部
10 かしめ部
11 フレーム
12 凹球面座
13 シャフト付球面座
14 成形用押型
15 回転体
16 支持テーブル
17 荷重付加手段
18 外輪駆動手段
19 凹球面部
20 揺動シャフト
21 凸球面座
22 凸球面部
23 加工面部
24、24a 凸部
25 凹部
26 ヘッドケース
27 軸受装置
28 保持孔
29 転がり軸受
30 外輪
31 内輪
32 球面ころ
33 段差面
34 雄ねじ部
35 ナット
36 受型
37 ワーク用アダプタ
38 凸部
39、39a 凹部
40 油圧シリンダ
41 油圧センサ
42 制御装置
43 測定用押型
44 案内台
45 測定用軸部材
46 直動玉軸受
47 ロードセル用アダプタ
48 ロードセル
49 先端部
50 天板部
51 脚部
52 外周板部
53 ブッシュサポート板部
54 ブッシュ
55 本体部
56 緩衝部
57 抑え板
58 入力部
100 揺動鍛造装置
150 動的荷重測定装置