(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】燃料遮断弁
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20221206BHJP
F02M 25/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F02M37/00 311K
F02M25/08 H
F02M25/08 J
(21)【出願番号】P 2019134990
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯野 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】坂田 好弘
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 宏明
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-329925(JP,A)
【文献】特開2004-052686(JP,A)
【文献】特開2010-064736(JP,A)
【文献】特開2010-070067(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0180760(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0230288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内の燃料蒸気を流通させる筐体と、前記筐体の一端に取りつけられ、前記筐体内を流通した燃料蒸気の流通の向きを変更させて外部に送出する蓋体と、を備える燃料遮断弁であって、
前記筐体は、
前記筐体の内部を上部空間と下部空間に区分する仕切り部であって、前記上部空間と前記下部空間を連通させる連通孔を有する仕切り部を備えるハウジングと、
前記燃料タンク内の圧力をあらかじめ定められた範囲に維持するチェック弁構造体を、前記上部空間内において支持するチェック弁ケースと、
前記筐体を介して液体の燃料が流出することを防止するカットオフ弁として機能するフロートを、前記下部空間において収容するカットオフ弁ケースと、を備え、
前記筐体は、前記カットオフ弁ケース内において前記フロートが収容されている空間と、前記チェック弁ケース内において外部と連通する空間と、を接続する連通路であって、前記カットオフ弁ケースに設けられた送出開口と、前記仕切り部に設けられた前記連通孔と、前記チェック弁ケースに設けられた受取開口と、を含む連通路を備え、
前記受取開口は、前記送出開口に対して、前記燃料遮断弁の内側にずれた位置に配されており、
前記チェック弁ケースは、前記連通路の一部である付加流路部であって、前記連通孔とともに、前記送出開口を出た燃料蒸気を前記受取開口に流通させる付加流路部を備
え、
前記チェック弁ケースは、前記付加流路部内において前記カットオフ弁ケースに向かって突出する突出部を備える、燃料遮断弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部から揮発性の燃料の供給を受け、その燃料を保持し、外部にその燃料を供給する燃料タンクにおいては、燃料の供給を受けるための機構や、内部の圧力を調整するための機構が設けられている。具体的には、満タン検知弁、チェック弁、およびカットオフ弁が、燃料タンクに設けられる。
【0003】
満タン検知弁は、燃料タンクが外部から燃料の供給を受けているときに、燃料タンク内の燃料があらかじめ定められた量に達した場合に、燃料タンク内からの気化した燃料(以下、「燃料蒸気」とも表記する)の排出を止めて燃料タンクの内圧を高め、その結果として、燃料タンクに接続されている燃料供給管内の燃料の液位を高めて、給油ガンからの燃料の供給を停止させる。その結果、ユーザは、燃料タンクが満タンであることを知ることができる。チェック弁は、燃料タンクが満タンとなったな場合には、流路を遮断し、過給油とならないように燃料タンク内の圧力を一定時間保持する。その結果、ユーザーは、燃料タンクが満タンであることを継続して伝えられる。また、チェック弁は、ユーザの追加給油などによって燃料タンク内の圧力が異常に上昇した際に、燃料タンク内の燃料蒸気を外部に放出して、燃料タンク内の圧力を低減する。カットオフ弁は、燃料タンクの内圧を調整するために、燃料タンク内と外部とを結んでいる流路を気体に通過させつつ、液体の燃料が流出することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら互いに異なる機能を奏する複数の機構と、それらを接続する配管とが設けられていることにより、燃料タンクが収容できる燃料の量が制限される。このため、上記のような複数の機能を達成するための機構をより小さく設けることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、燃料タンク内の燃料蒸気を流通させる筐体と、前記筐体の一端に取りつけられ、前記筐体内を流通した燃料蒸気の流通の向きを変更させて外部に送出する蓋体と、を備える燃料遮断弁が提供される。この燃料遮断弁において、前記筐体は、前記筐体の内部を上部空間と下部空間に区分する仕切り部であって、前記上部空間と前記下部空間を連通させる連通孔を有する仕切り部を備えるハウジングと、前記燃料タンク内の圧力をあらかじめ定められた範囲に維持するチェック弁構造体を、前記上部空間内において支持するチェック弁ケースと、前記筐体を介して液体の燃料が流出することを防止するカットオフ弁として機能するフロートを、前記下部空間において収容するカットオフ弁ケースと、を備える。前記筐体は、前記カットオフ弁ケース内において前記フロートが収容されている空間と、前記チェック弁ケース内において外部と連通する空間と、を接続する連通路であって、前記カットオフ弁ケースに設けられた送出開口と、前記仕切り部に設けられた前記連通孔と、前記チェック弁ケースに設けられた受取開口と、を含む連通路を備える。前記受取開口は、前記送出開口に対して、前記燃料遮断弁の内側にずれた位置に配されている。前記チェック弁ケースは、前記連通路の一部である付加流路部であって、前記連通孔とともに、前記送出開口を出た燃料蒸気を前記受取開口に流通させる付加流路部を備える。
このような態様とすれば、カットオフ弁とチェック弁の機能を奏する燃料遮断弁において、カットオフ弁ケースの送出開口と、チェック弁ケースの受取開口とが、それぞれの中心軸が一致する位置に配されている態様に比べて、燃料遮断弁全体を、小さく構成することができる。
また、互いにずれて配されているカットオフ弁ケースの送出開口と、チェック弁ケースの受取開口とを結ぶ連通路が、仕切り部に設けられた連通孔だけでなく、チェック弁ケースに設けられた付加流路部を備えるため、そのような構成を備えない態様に比べて、カットオフ弁ケースの送出開口から、チェック弁ケースの受取開口に向けて、燃料蒸気をスムーズに流通させることができる。
(2)上記形態の燃料遮断弁において、前記チェック弁ケースが、前記付加流路部内において前記カットオフ弁ケースに向かって突出する突出部を備える、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、(i)カットオフ弁ケース内からチェック弁ケース内への燃料蒸気の流通を確保でき、かつ、(ii)カットオフ弁ケース内を通過した液体の燃料が連通路内に進入した場合に、その液体の燃料がチェック弁ケース内に進入する可能性を低減することができる。
本開示は、燃料遮断弁以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料タンク、燃料遮断弁または燃料タンクの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の燃料バルブ10が取り付けられた燃料タンクFT、供給装置FD、およびキャニスタCTを示す説明図である。
【
図3】
図2とは異なる方向から見た燃料バルブ10の斜視図である。
【
図7】
図4におけるVII-VII断面の端面図である。
【
図10】
図7におけるチェック弁ケース140近傍の拡大図である。
【
図11】第2実施形態におけるチェック弁ケース140b近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
(1)全体構成:
図1は第1実施形態の燃料バルブ10が取り付けられた燃料タンクFT、供給装置FD、およびキャニスタCTを示す説明図である。
図1において鉛直下方を矢印GDで示す。
【0010】
燃料タンクFTは、車両に搭載され、車両の内燃機関に供給される揮発性の液体燃料を保持する。燃料タンクFTは、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)から形成されたバリア層と、ポリエチレン(PE)から形成された外層とを備える。燃料タンクFTは、上壁FTaを有する。上壁FTaには、燃料バルブ10を取りつけるための取付孔FTcが形成されている。燃料タンクFTには、燃料バルブ10と、供給装置FDとが接続されている。
【0011】
供給装置FDは、給油ノズルFNから供給される液体燃料を、燃料タンクFTに送る。供給装置FDは、燃料注入管IPを有する。燃料注入管IPの一方の端には、注入口IPaが形成されている。燃料注入管IPの他方の端は、燃料タンクFT内に配置されている。給油ノズルFNから燃料タンクFTに液体燃料が供給される際には、注入口IPaに給油ノズルFNが挿入される。給油ノズルFNから供給された燃料は、燃料注入管IP内を通って燃料タンクFTに送られる。給油ノズルFNの先端部の内側には、図示しない燃料センサが配置されている。燃料センサが液体燃料に接した場合には、給油ノズルFNは燃料の供給を自動的に停止する。
【0012】
キャニスタCTは、燃料タンクFTから供給される燃料蒸気を捕捉する。キャニスタCTは、燃料バルブ10およびキャニスタ接続管CPを介して燃料タンクFTに接続されている。キャニスタCTは、活性炭を備える。キャニスタCTは、気化した燃料を活性炭へ吸着させ、その後、活性炭に吸着した燃料を活性炭から除去する。
【0013】
燃料バルブ10は、燃料タンクFTの上壁FTaに設けられた取付孔FTcに装着されている。燃料バルブ10の上部は、燃料タンクFT外に位置する。燃料バルブ10の下部は、燃料タンクFT内に位置する。燃料バルブ10の上部は、キャニスタ接続管CPを介して、キャニスタCTに接続されている。燃料バルブ10は、燃料タンクFTの内部とキャニスタ接続管CPとの間で流体の流通を制御する。たとえば、給油ノズルFNから燃料タンクFTに液体燃料が供給される際、燃料タンクFT内の燃料の液位があらかじめ定められた位置に達したときに、燃料バルブ10は、キャニスタCTへの燃料蒸気の流出を規制し、給油ノズルFNによる燃料の供給を自動停止させる。
【0014】
(2)燃料バルブの構成:
図2は、燃料バルブ10の斜視図である。
図3は、
図2とは異なる方向から見た燃料バルブ10の斜視図である。燃料バルブ10は、筐体100と、蓋体200と、を備える。
【0015】
筐体100は、燃料タンクFT内にあった燃料蒸気を筐体100の内部に流通させて、蓋体200に送出する。筐体100は、円板部101と、円板部101の中心に中心軸CA10が位置するように円板部101の一方の面に配された一つの円筒部102と、円板部101の中心とは一致しない位置にそれぞれの中心軸CA16,CA18が位置するように円板部101の他方の面に配された二つの円筒部103,104と、を備える形状を有する。なお、
図2において、円板部101は外部に現れていない。筐体100の形状のうちの円板部101が、後述する仕切り部122に対応する。筐体100の形状のうちの一つの円筒部102が、後述するハウジング120の一部に対応する。筐体100の形状のうちの二つの円筒部103,104が、後述するカットオフ弁ケース160と満タン検知弁ケース180に対応する。円筒部102は、蓋体200に覆われているため、
図2および
図3において、表示されていない。筐体100は、主としてポリアセタール(POM)で構成される。
【0016】
蓋体200は、筐体100の一端に取りつけられ、筐体100内を流通した燃料蒸気の流通の向きを変更させて外部に送出する。燃料バルブ10が車両に取りつけられた際の姿勢において、蓋体200は、筐体100の上端に相当する位置に取りつけられている。以下、上、下および水平方向に言及する際は、燃料バルブ10が車両に取りつけられた際の姿勢を基準として記述を行う。
【0017】
図4は、燃料バルブ10の上面図である。
図5は、燃料バルブ10の側面図である。 蓋体200は、上端が塞がれている円錐台形状を有する円錐台部201と、円錐台部201の下端に接続されている第1の円筒部202と、第1の円筒部202の下端に設けられているフランジ部203と、フランジ部203の外縁近傍に設けられている第2の円筒部204と、を備える。円錐台部201の中心軸と、第1の円筒部202の中心軸と、フランジ部203の中心軸と、第2の円筒部204の中心軸とは、一致する。これらの中心軸は、筐体100の円筒部102の中心軸CA10と一致する。以下では、中心軸CA10を「蓋体200の中心軸CA10」とも呼ぶ。
【0018】
蓋体200は、円錐台部201および第1の円筒部202の側面から、それらの中心軸CA10とは垂直な方向D20に伸びる送出管220を備える。送出管220の内部空間は、円錐台部201の内部空間および第1の円筒部202の内部空間と連通している。送出管220には、キャニスタ接続管CPが接続される(
図1参照)。蓋体200は、外部を構成するポリエチレンと、内部を構成するポリアミドとの2層構造で構成される。
【0019】
蓋体200は、蓋体200の下方に位置する筐体100から燃料蒸気を受け取って、送出管220から水平方向に燃料蒸気を送出する。蓋体200が送出する燃料蒸気の流通方向は矢印D20で示される方向である(
図5参照)。
【0020】
図6は、燃料バルブ10の分解図である。
図7は、
図4におけるVII-VII断面の端面図である。筐体100は、ハウジング120と、チェック弁ケース140と、カットオフ弁ケース160と、スカート181と、を備える。
【0021】
ハウジング120は、仕切り部122と、筒状部123とを備える(
図6の中央部および
図7の中央部参照)。仕切り部122は、略円盤状の形状を有する。仕切り部122は、筐体100の内部を上部空間CUと下部空間CLに区分する。仕切り部122は、鉛直方向GDについて、燃料タンクFTの上壁FTaとほぼ同じ位置に配される(
図1参照)。
【0022】
図8は、ハウジング120の斜視図である。
図9は、ハウジング120の底面図である。仕切り部122は、上部空間CUと下部空間CLとを接続する連通孔124を備える。
【0023】
筒状部123は、仕切り部122の下面に設けられる略円筒状の構造である(
図6および
図8参照)。
図6および
図7において、筒状部123の中心軸をCA18で示す。下端部を除く筒状部123の大部分は、ハウジング120に取りつけられるスカート181の内部に位置する(
図7参照)。
【0024】
ハウジング120には、チェック弁ケース140と、カットオフ弁ケース160と、スカート181と、が取りつけられる(
図6および
図7参照)。スカート181と、ハウジング120の筒状部123とが、満タン検知弁ケース180を構成する。なお、チェック弁ケース140は、ハウジング120と一体で設けられることもできる。
【0025】
チェック弁ケース140は、仕切り部122の上面に設けられる略円筒状の構造である(
図6および
図7参照)。
図7において、チェック弁ケース140の中心軸をCA14で示す。チェック弁ケース140は、ハウジング120の円筒部102および蓋体200の内部に配されている。チェック弁ケース140は、燃料タンクFT外に位置する(
図1参照)。
【0026】
図10は、
図7におけるチェック弁ケース140近傍の拡大図である。チェック弁ケース140の底面には、中心軸CA14を含む領域に受取開口146が設けられている。受取開口146は、チェック弁ケース140内において外部と連通する空間C14と、仕切り部122の連通孔124とを、接続している。チェック弁ケース140は、上部空間CU内においてチェック弁構造体142を支持する。チェック弁構造体142は、弁体としてのボール143と、弁座144とを有する。
【0027】
車両の走行時や給油中などの定常状態において、ボール143は弁座144の送出口145に対して下方に離れた位置にあり、支持部147上に配置されている。このとき、チェック弁構造体142は開弁している。給油時の燃料蒸気は、カットオフ弁ケース160内の空間C16からチェック弁ケース140内の空間C14および筐体100内の上部空間CUへと流通できる。
【0028】
後述する満タン検知弁が満タンを検知した状態において、ボール143は支持部147から上昇し、弁座144の送出口145と接触する。このとき、チェック弁構造体142は閉弁している。すなわち、カットオフ弁ケース160内の空間C16とチェック弁ケース140内の空間C14および筐体100内の上部空間CUとの連通は、遮断されている。より詳しくは、チェック弁構造体142は、満タン検知弁が満タンを検知した燃料タンクFT内の圧力値を、所定の範囲に一定期間維持するように調整されている。その結果、チェック弁構造体142は追加給油防止弁として機能する。ただし、送出口145を構成する送出口形成部149にスリットが設けられているため、燃料蒸気の一部は外部に送出される。また、満タン検知後の追加給油により燃料タンクFT内の圧力があらかじめ定められた圧力閾値を超えた場合には、弁座144が上昇し、ハウジング120から離間することで、燃料タンクFT内の燃料蒸気が外部へ放出される。すなわちチェック弁構造体142が開弁し、カットオフ弁ケース内の空間C16と、チェック弁ケース140内の空間C14および筐体100内の上部空間CUとが、連通する。その結果、チェック弁構造体142によって、燃料タンクFT内が高圧となることを回避できる。
【0029】
カットオフ弁ケース160は、仕切り部122の下面に接続される略円筒状の構造である(
図6および
図7参照)。
図7において、カットオフ弁ケース160の中心軸をCA16で示す。カットオフ弁ケース160のほとんどの部分は、燃料タンクFT内に位置する(
図1参照)。カットオフ弁ケース160の上面の中央に位置する中心軸CA16を含む領域には、送出開口168が設けられている(
図10参照)。送出開口168は、仕切り部122の連通孔124に接続されている。カットオフ弁ケース160の下端には、底部169が取りつけられている(
図6参照)。カットオフ弁ケース160は、下部空間CLにおいてフロート162を収容する(
図7参照)。フロート162が収容されているカットオフ弁ケース160内の空間を、
図7および
図10において、空間C16として示す。
【0030】
給油ノズルFNから液体燃料が供給されているとき、および燃料タンクFT内の圧力が圧力閾値を超えた場合、燃料タンクFT内の燃料蒸気は、カットオフ弁ケース160内および送出開口168を介して、カットオフ弁ケース160外に送出される。フロート162は、筐体100を介して液体の燃料が流出することを防止するカットオフ弁として機能する。すなわち、フロート162は、燃料タンクFT内の液体燃料の液面が揺れて上昇したとき、空間C16内において上方に移動して、送出開口168を塞ぐ。その結果、送出開口168を介した液体の燃料の流出が防止される。
【0031】
満タン検知弁ケース180は、仕切り部122の下面に、カットオフ弁ケース160と並んで接続される略円筒状の構造である(
図6および
図7参照)。満タン検知弁ケース180は、スカート181と、ハウジング120の筒状部123と、から構成される。満タン検知弁ケース180の中心軸は、筒状部123の中心軸CA18と一致する。満タン検知弁ケース180のほとんどの部分は、燃料タンクFT内に位置する(
図1参照)。満タン検知弁ケース180の上面の中央に位置する、中心軸CA18を含む領域には、開口が設けられている。満タン検知弁ケース180の下端には、底部188が取りつけられている。満タン検知弁ケース180は、下部空間CLにおいてフロート182を収容する(
図7参照)。フロート182が収容されている満タン検知弁ケース180内の空間を、
図7において、空間C18として示す。
【0032】
フロート182は、満タン検知弁として機能する。すなわち、燃料タンクFTが給油ノズルFNから液体燃料の供給を受けているときに、燃料タンクFT内の液体燃料の液面があらかじめ定められた位置に達した場合に、空間C18内においてフロート182が上方に移動して、満タン検知弁ケース180の上面の中央の開口を塞ぐ。その結果、開口を介した燃料蒸気の排出が停止される。フロート182によって、燃料タンクFT内からの燃料蒸気の排出が止められると、燃料タンクFTの内圧が高まる。すると、燃料注入管IP内から燃料タンクFT内に液体燃料が移動しなくなる(
図1参照)。その結果、給油ノズルFNの先端部に設けられた燃料センサが液体燃料を検知して、給油ガンからの燃料の供給が停止される。
【0033】
(3)連通路の構成:
筐体100は、カットオフ弁ケース160内においてフロート162が収容されている空間C16と、チェック弁ケース140内において外部と連通する空間C14と、を接続する連通路C10を備える(
図10の中央部参照)。
【0034】
連通路C10は、カットオフ弁ケース160に設けられた送出開口168と、仕切り部122に設けられた連通孔124と、チェック弁ケース140に設けられた受取開口146と、を含む。チェック弁ケース140の受取開口146は、カットオフ弁ケース160の送出開口168に対して、燃料バルブ10の内側にずれた位置に配されている(
図10、ならびに
図7のCA14,CA16参照)。なお、「Aが、Bに対して燃料バルブ10の内側にずれた位置にある」とは、カットオフ弁ケース160の中心軸CA16に沿って見たときに、燃料バルブ10が占める領域の重心GとBの間の距離よりも、燃料バルブ10が占める領域の重心GとAの間の距離が、小さいことを意味する(
図9参照)。本実施形態においては、チェック弁ケース140の受取開口146は、カットオフ弁ケース160の送出開口168に対して、満タン検知弁ケース180がある方向にずれた位置に配されている。また、本実施形態においては、チェック弁ケース140の受取開口146は、カットオフ弁ケース160の送出開口168に対して、蓋体200が送出する燃料蒸気の流通方向D20にずれた位置に配されている。互いにずれた位置に配されているチェック弁ケース140の受取開口146と、カットオフ弁ケース160の送出開口168とは、連通孔124によって接続されている。
【0035】
このような構成とすることにより、カットオフ弁とチェック弁の機能を奏する燃料バルブにおいて、カットオフ弁ケース160の送出開口168と、チェック弁ケース140の受取開口146とが、蓋体200が送出する燃料蒸気の流通方向D20に垂直な方向(
図10のGD参照)に、並んで配されている態様に比べて、燃料バルブ10全体を、小さく構成することができる。
【0036】
送出開口168と受取開口146とが、鉛直方向GDに並んで配されている態様においては、チェック弁ケース140の外壁のうち、蓋体200の中心軸CA10から最も遠い部分は、カットオフ弁ケース160の外壁とほぼ同じ位置に配されることになる(
図7の上段右部および
図10の中段右部参照)。一方、蓋体200の中心軸CA10に対して、チェック弁ケース140と逆の側においては、送出管220が方向D20に向かって突出している(
図7の上段左部参照)。このため、送出開口168と受取開口146とが鉛直方向GDに並んで配されている態様においては、方向D20についての蓋体200の寸法が大きくなる。
【0037】
しかし、本実施形態においては、チェック弁ケース140の受取開口146は、カットオフ弁ケース160の送出開口168に対して、蓋体200が送出する燃料蒸気の流通方向D20にずれた位置に配されている(
図7の上段右部参照)。このため、チェック弁ケース140を蓋体200の中心軸CA10により近づけることができる。よって、本実施形態においては、送出開口168と受取開口146とが鉛直方向GDに並んで配されている態様に比べて、方向D20についての蓋体200の寸法を小さくすることができる。その結果、燃料バルブ10全体を、小さく構成することができる。
【0038】
チェック弁ケース140は、上方に向かってへこんでいる付加流路部C142を、底面に備える(
図8~
図10参照)。
図10において、付加流路部C142以外のチェック弁ケース140の底面の位置を破線で示す。付加流路部C142は、中心軸CA10に沿って投影したときに連通孔124が占める領域内に設けられる(
図9参照)。付加流路部C142は、連通路C10の一部を構成する。付加流路部C142は、連通孔124とともに、カットオフ弁ケース160の送出開口168を出た燃料蒸気を、チェック弁ケース140の受取開口146に流通させる(
図10参照)。
【0039】
このような構成とすることにより、付加流路部C142を備えない態様に比べて、カットオフ弁ケース160の送出開口168から、チェック弁ケース140の受取開口146に向けて、燃料蒸気をスムーズに流通させることができる。
【0040】
本実施形態における燃料バルブ10を、「燃料遮断弁」とも呼ぶ。
【0041】
B.第2実施形態:
第2実施形態の燃料バルブ10bにおいては、チェック弁ケース140bの構成が第1実施形態の燃料バルブ10のチェック弁ケース140の構成とは異なっている。第2実施形態の燃料バルブ10bの他の点は、第1実施形態の燃料バルブ10と同じである。
【0042】
図11は、第2実施形態におけるチェック弁ケース140b近傍の拡大図である。
図11は、第1実施形態の
図10に対応する。チェック弁ケース140は、付加流路部C142内においてカットオフ弁ケース160に向かって突出する突出部148を備える。より具体的には、付加流路部C142のうち、受取開口146に接続されている端の部分に、突出部148が設けられている。突出部148は、鉛直方向GDについて、連通路C10の高さよりも低い高さを有する。突出部148は、鉛直方向GDおよび方向D20に垂直な方向について、連通路C10の幅全体におよぶ寸法を有する。
【0043】
このような構成とすることにより、(i)カットオフ弁ケース160内からチェック弁ケース140内への燃料蒸気の流通を確保でき、かつ、(ii)カットオフ弁ケース160内を通過した液体の燃料が連通路C10内に進入した場合に、その液体の燃料がチェック弁ケース140内に進入する可能性を低減することができる。
【0044】
C.他の形態:
C1.他の形態1:
上記の実施形態においては、燃料バルブ10において、満タン検知弁ケース180とカットオフ弁ケース160とが並べて配される(
図2、
図3および
図5参照)。しかし、燃料遮断弁は、満タン検知弁ケース180を備えず、チェック弁ケース140およびカットオフ弁ケース160を有する形態であってもよい。
【0045】
C2.他の形態2:
上記の実施形態においては、燃料バルブ10の上部は、燃料タンクFT外に位置する。たとえば、チェック弁ケース140は、燃料タンクFT外に位置する(
図1参照)。しかし、燃料バルブ10の全体が、燃料タンクFT内に位置するように、燃料バルブ10が燃料タンクFTに取りつけられてもよい。
【0046】
C3.他の形態3:
上記の第2実施形態においては、突出部148は、鉛直方向GDについて、連通路C10の高さよりも低い高さを有し、鉛直方向GDおよび方向D20に垂直な方向について、連通路C10の幅全体におよぶ寸法を有する。しかし、突出部148は、たとえば、鉛直方向GDについて、連通路C10の高さと同じ高さを有し、鉛直方向GDおよび方向D20に垂直な方向について、連通路C10の幅の一部に相当する幅を有する形状など、他の形状を有することもできる。すなわち、突出部148は、連通路C10における燃料蒸気の流通方向に投影したときに、連通路C10の一部を占める形状を有していればよい。
【0047】
C4.他の形態4:
上記の第2実施形態においては、突出部148は、付加流路部C142のうち、受取開口146に接続されている端の部分に、設けられている。しかし、突出部148は、付加流路部C142のうち、カットオフ弁ケース160の送出開口168に接続されている端の部分や、受取開口146に接続されている端の部分と送出開口168に接続されている端の部分の間の部分など、他の部位に設けられることもできる。
【0048】
C5.他の形態5:
上記の実施形態においては、チェック弁ケース140には、一つの突出部148が設けられている。しかし、複数の突出部148が設けられてもよい。
【0049】
C6.他の形態6:
上記の実施形態においては、付加流路部C142は、連通路C10の全体にわたって設けられている。しかし、付加流路部C142は、連通路C10ののうち、流体の流れの方向に沿った一部分に設けられることもできる。
【0050】
C7.他の形態7:
上記の実施形態においては、チェック弁ケース140には、一つの付加流路部C142が設けられている。しかし、複数の付加流路部C142が設けられてもよい。
【0051】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10,10b…燃料バルブ、100…筐体、101…円板部、102…円筒部、103…円筒部、104…円筒部、120…ハウジング、122…仕切り部、123…筒状部、124…連通孔、140,140b…チェック弁ケース、142…チェック弁構造体、143…ボール、144…弁座、146…受取開口、147…支持部、148…突出部、160…カットオフ弁ケース、162…フロート、168…送出開口、169…底部、180…満タン検知弁ケース、181…スカート、182…フロート、188…底部、200…蓋体、201…円錐台部、202…第1の円筒部、203…フランジ部、204…第2の円筒部、220…送出管、C10…連通路、C14…チェック弁ケース140内の空間、C142…付加流路部、C16…カットオフ弁ケース160内の空間、C18…満タン検知弁ケース180内の空間、CA10…蓋体200の中心軸、CA14…チェック弁ケース140の中心軸、CA16…カットオフ弁ケース160の中心軸、CA18…満タン検知弁ケース180の中心軸、CL…筐体100内の下部空間、CP…キャニスタ接続管、CT…キャニスタ、CU…筐体100内の上部空間、D20…蓋体200から送出される燃料蒸気の流通方向、FD…供給装置、FN…給油ノズル、FT…燃料タンク、FTa…燃料タンクの上壁、FTc…取付孔、G…重心、GD…鉛直方向、IP…燃料注入管、IPa…注入口