IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図1
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図2
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図3
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図4
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図5
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図6
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図7
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図8
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図9
  • 特許-カメラモジュールの製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】カメラモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20221206BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221206BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/02 Z
G03B17/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019143845
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021026112
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 寛
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 徳
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0052779(US,A1)
【文献】特開2008-153720(JP,A)
【文献】特開2006-085004(JP,A)
【文献】特開2010-114731(JP,A)
【文献】特開2016-092761(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109391754(CN,A)
【文献】特開2003-172856(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109773474(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ(122)を有し該レンズを介して光軸方向(Db)に光を通すレンズ部品(12)と、前記レンズ部品を通過した光を電気信号に変換する撮像素子(15)と該撮像素子が固定された撮像素子基板(16)とを有する撮像部品(14)とを備えたカメラモジュールの製造方法であって、
前記レンズ部品と前記撮像部品とをそれぞれ測定する部品測定を行うこと(P02)と、
前記レンズ部品と前記撮像部品とのうちの少なくとも一方を移動させ、前記光軸方向での前記レンズ部品に対する前記撮像素子基板の相対位置(Pr)と前記撮像素子からの前記電気信号に基づいたMTF値(Vm)との関係であるMTF測定結果(Rm)を得ること(P04)と、
前記相対位置が硬化前目標位置(P2r)になるように、前記レンズ部品と前記撮像部品とのうちの少なくとも一方を移動させる硬化前位置調整を行うこと(P08)と、
前記硬化前位置調整の後に、前記レンズ部品と前記撮像素子基板との間で前記光軸方向に形成される軸方向隙間(12a)に充填された接着剤(13)を硬化させる接着剤硬化を行うこと(P09、P10)とを含み、
前記硬化前位置調整では、前記接着剤硬化の後に得る前記軸方向隙間の隙間量(Cz)の目標値であって前記MTF測定結果と前記部品測定で得られた部品測定結果とに基づいて決まる硬化後目標隙間量(C1z)に、前記接着剤の収縮率に基づいて決まる補正量(AMz)を加算して得られる硬化前目標隙間量(C2z)に、前記軸方向隙間の隙間量がなる前記相対位置を、前記硬化前目標位置として用い
さらに、
前記MTF測定結果を得た後に、前記相対位置を、前記軸方向隙間の隙間量が前記硬化後目標隙間量になる位置にした上で、前記MTF値を測定するMTF値再測定を行うこと(P06)と、
前記MTF値再測定で測定した前記MTF値と前記MTF測定結果とを照合するMTF値照合を行うこと(P07)とを含み、
前記MTF値再測定の後に前記硬化前位置調整を行う、カメラモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のカメラモジュールとして、例えば特許文献1に記載されたカメラモジュールが従来から知られている。この特許文献1に記載されたカメラモジュールは、レンズと撮像素子とを有している。このカメラモジュールは、光軸方向のレンズと撮像素子との距離が変化しない固定焦点型である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-17370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のカメラモジュールのような固定焦点型のカメラモジュールは、レンズを介して光軸方向に光を通すレンズ部品と、そのレンズ部品を通過した光を電気信号に変換する撮像素子が固定された撮像素子基板とを備えている。そして、そのレンズ部品は撮像素子基板に対し接着剤によって接着固定されている。
【0005】
固定焦点型のカメラモジュールでは、レンズ部品を撮像素子基板に対し接着固定する組付接着工程について、年々、高精度化の要求レベルが高くなっている。しかし、その組付接着工程では、接着剤の硬化に伴って接着剤収縮が生じる。この接着剤収縮はカメラモジュールの製品精度に影響し、カメラモジュールの製品精度を低下させる原因となっている。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、レンズ部品を撮像素子基板に対し接着するための接着剤の収縮に起因したカメラモジュールの製品精度の低下を抑えることが可能なカメラモジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のカメラモジュールの製造方法は、
レンズ(122)を有しそのレンズを介して光軸方向(Db)に光を通すレンズ部品(12)と、レンズ部品を通過した光を電気信号に変換する撮像素子(15)とその撮像素子が固定された撮像素子基板(16)とを有する撮像部品(14)とを備えたカメラモジュールの製造方法であって、
レンズ部品と撮像部品とをそれぞれ測定する部品測定を行うこと(P02)と、
レンズ部品と撮像部品とのうちの少なくとも一方を移動させ、光軸方向でのレンズ部品に対する撮像素子基板の相対位置(Pr)と撮像素子からの電気信号に基づいたMTF値(Vm)との関係であるMTF測定結果(Rm)を得ること(P04)と、
上記相対位置が硬化前目標位置(P2r)になるように、レンズ部品と撮像部品とのうちの少なくとも一方を移動させる硬化前位置調整を行うこと(P08)と、
硬化前位置調整の後に、レンズ部品と撮像素子基板との間で光軸方向に形成される軸方向隙間(12a)に充填された接着剤(13)を硬化させる接着剤硬化を行うこと(P09、P10)とを含み、
硬化前位置調整では、接着剤硬化の後に得る軸方向隙間の隙間量(Cz)の目標値であってMTF測定結果と部品測定で得られた部品測定結果とに基づいて決まる硬化後目標隙間量(C1z)に、接着剤の収縮率に基づいて決まる補正量(AMz)を加算して得られる硬化前目標隙間量(C2z)に、軸方向隙間の隙間量がなる上記相対位置を、硬化前目標位置として用い
さらに、
MTF測定結果を得た後に、上記相対位置を、軸方向隙間の隙間量が硬化後目標隙間量になる位置にした上で、MTF値を測定するMTF値再測定を行うこと(P06)と、
MTF値再測定で測定したMTF値とMTF測定結果とを照合するMTF値照合を行うこと(P07)とを含み、
MTF値再測定の後に硬化前位置調整を行う。
【0008】
このようにすれば、レンズ部品に対する撮像素子基板の相対位置が、接着剤の収縮分を加味した位置にされた状態で接着剤硬化が行われるので、その接着剤硬化の後に得られる上記相対位置が、接着剤収縮の影響を抑えたものになる。従って、接着剤の収縮に起因したカメラモジュールの製品精度の低下を抑えることが可能である。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態においてカメラモジュールの概略構成を示した模式的な断面図である。
図2】第1実施形態のカメラモジュールの製造工程のうち、そのカメラモジュールに含まれるレンズ部品と撮像素子基板とを接合する際に実施される工程を示したフローチャートである。
図3図2の製造工程において、レンズ部品の測定が行われる様子を模式的に示した図である。
図4図2の製造工程において、撮像部品の測定が行われる様子を模式的に示した図である。
図5図1に相当する断面図であって、レンズ部品と撮像素子基板とが接合される前のカメラモジュールを示した模式図である。
図6図2の製造工程において、レンズ部品がカメラモジュール製造装置のクランプ治具に取り付けられると共に撮像部品がカメラモジュール製造装置の六軸駆動ステージに取り付けられた状態を模式的に示した斜視図である。
図7図2の製造工程において、レンズ部品と撮像素子基板とを接合するための接着剤をエネルギー照射装置で加熱する様子を模式的に示した斜視図であって、図6に相当する図である。
図8】第1実施形態において、カメラモジュール製造装置の制御装置とその制御装置に電気的に接続される機器類とを示したブロック図である。
図9図2の製造工程において測定される、光軸方向でのレンズ部品に対する撮像素子基板の相対位置と撮像素子からの画像信号に基づいたMTF値との関係であるMTF測定結果を模式的な曲線で示した図である。
図10図1に相当する断面図を用いて、光軸方向でのレンズ部品に対する撮像素子基板の相対位置に対し補正が行われる前と後との差を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。なお、後述の他の実施形態を含む以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のカメラモジュール10は、固定焦点型のカメラモジュールである。カメラモジュール10は、レンズ部品12と、撮像素子15と撮像素子基板16とを有する撮像部品14とを備えている。
【0013】
そのレンズ部品12は、レンズケース121と複数のレンズ122とを有している。レンズケース121の内部には、レンズ部品12の光軸方向Dbに貫通し光が通る光通過孔121aが形成されている。複数のレンズ122は、その光通過孔121a内に配置され、レンズケース121に対して固定されている。従って、レンズ部品12は、その複数のレンズ122を介して光軸方向Dbに光を通す。
【0014】
撮像素子15は、レンズ部品12を通過した光を電気信号に変換する。撮像素子15は、撮像素子基板16の一面である撮像素子実装面161に実装されており、例えば半田付け等によって、その撮像素子実装面161に固定されている。
【0015】
撮像素子基板16は、撮像素子基板16の一面としての撮像素子実装面161と、他面としての撮像素子反対面162とを有している。撮像素子基板16は、配線パターンが形成された電気基板である。撮像素子基板16はイメージャ基板とも呼ばれる。
【0016】
具体的に、カメラモジュール10に入射する光は、レンズ部品12内の複数のレンズ122を光軸方向Dbの一方側から他方側へ通過してから撮像素子基板16上の撮像素子15に達する。
【0017】
また、レンズケース121は、光軸方向Dbに直交する方向に拡がったケース鍔部121bと、光軸方向Dbの他方側に設けられたケース他端121eとを有している。そのケース鍔部121bは光軸方向Dbを厚み方向とし、光軸方向Dbの一方側を向いた一方面121cを有している。
【0018】
レンズケース121のケース他端121eは、撮像素子基板16の撮像素子実装面161に対して対向している。そして、レンズ部品12は、そのケース他端121eにおいて撮像素子基板16の撮像素子実装面161に接着剤13で固定されている。なお、図1の接着剤13は硬化後の接着剤であり、後述する図10の(a)(b)の接着剤13は硬化前の接着剤である。
【0019】
本実施形態のカメラモジュール10は、図2のフローチャートに従って製造される。この図2は、レンズ部品12を撮像素子基板16に対し接着固定する製造工程を示している。
【0020】
先ず、部品準備工程としての第1工程P01では、レンズ部品12と撮像部品14とが準備される。第1工程P01の次は第2工程P02へ進む。
【0021】
部品測定工程としての第2工程P02では、図3および図4に示すように、例えば三次元測定機などの測定装置44を使用して、レンズ部品12と撮像部品14とをそれぞれ測定する部品測定が行われる。その部品測定では、レンズ部品12と撮像部品14とのそれぞれの外形が測定され、具体的には、それぞれの外形のうち予め定められた複数の測定箇所の寸法がそれぞれ測定される。その複数の測定箇所は、図5に示すレンズ部品12と撮像素子基板16との間で光軸方向Dbに形成される軸方向隙間12aの隙間量Czを算出できるように定められている。
【0022】
例えば、その複数の測定箇所の寸法には、撮像素子基板16の厚み寸法Tbと、ケース鍔部121bの一方面121cからケース他端121eまでの光軸方向Dbの寸法であるケース基準寸法Lcsとが含まれている。なお、上記軸方向隙間12aとは、より正確に表現すれば、レンズ部品12のうちのケース他端121eと撮像素子基板16の撮像素子実装面161との間で光軸方向Dbに形成される軸方向隙間である。図2の第2工程P02の次は第3工程P03へ進む。
【0023】
部品取付工程としての第3工程P03では、図6に示すように、レンズ部品12と撮像部品14とがそれぞれ、カメラモジュール製造装置30に取り付けられる。そのカメラモジュール製造装置30は、図6図8に示すように、クランプ治具32と六軸駆動ステージ34と投光器36とエネルギー照射装置38と制御装置40とを備えている。
【0024】
クランプ治具32は、移動しない固定器具である。レンズ部品12は、カメラモジュール製造装置30のうち、このクランプ治具32に取り付けられ、撮像部品14は、六軸駆動ステージ34に取り付けられる。
【0025】
六軸駆動ステージ34は、図6に示す直交座標系のX軸の軸方向であるX方向、Y軸の軸方向であるY方向、Z軸の軸方向であるZ方向、X軸まわりの回転方向θx、Y軸まわりの回転方向θy、およびZ軸まわりの回転方向θzのそれぞれの方向に、撮像部品14を変位させることができる。従って、六軸駆動ステージ34が撮像部品14を変位させることとは、言い換えれば、六軸駆動ステージ34が撮像部品14の位置または姿勢を変化させることである。本実施形態では、レンズ部品12の光軸方向DbがZ方向とされる。すなわち、光軸方向DbはZ方向と同じ方向である。
【0026】
この六軸駆動ステージ34は、クランプ治具32とは独立に作動する。すなわち、六軸駆動ステージ34が作動し撮像部品14を変位させても、クランプ治具32に固定されたレンズ部品12は変位しない。
【0027】
投光器36はコリメータを有しており、レンズ部品12に対する光軸方向Dbの一方側からレンズ部品12の光通過孔121aを介して撮像素子15に平行光を光軸方向Dbに沿って出射する。そして、投光器36は、その平行光によって、MTF値算出用の所定画像をレンズ部品12の光通過孔121aを介して撮像素子15に投影する。なお、「MTF」とは、「modulation transfer function」の略である。
【0028】
図7に示すエネルギー照射装置38は、レンズ部品12と撮像素子基板16とを接着するための接着剤13を加熱する加熱装置である。エネルギー照射装置38は、レンズ部品12と撮像素子基板16との間の軸方向隙間12a(図5参照)に充填された接着剤13に対し、エネルギー照射装置38から照射光を照射することにより、その接着剤13を加熱する。その接着剤13は熱硬化性の接着剤であり、エネルギー照射装置38により加熱されることで硬化し、レンズ部品12と撮像素子基板16とを接着する。なお、エネルギー照射装置38の照射光は本実施形態ではレーザ光であるが、そのエネルギー照射装置38の照射光として、レーザ光以外の光(例えば、紫外線など)が採用されることもある。
【0029】
図8に示す制御装置40は、中央演算装置およびその周辺回路などで構成されたパーソナルコンピュータであり、中央演算装置に読み込まれたプログラムにしたがって動作する。制御装置40には、種々の情報を表示するディスプレイモニタが接続されている。
【0030】
制御装置40は、撮像素子15が出力する電気信号である画像信号が制御装置40に入力されるように、撮像素子15に対し電気接続される。
【0031】
また、制御装置40は、六軸駆動ステージ34と投光器36とエネルギー照射装置38とのそれぞれに対し制御信号を出力する。それにより、制御装置40は、六軸駆動ステージ34の作動と投光器36の作動とエネルギー照射装置38の作動とをそれぞれ制御する。図2の第3工程P03の次は第4工程P04へ進む。
【0032】
MTF値測定工程としての第4工程P04では、先ず、図6のレンズ部品12に対する撮像部品14の傾きが六軸駆動ステージ34の作動によって調整される。この撮像部品14の傾き調整では、制御装置40は、投光器36に所定画像を投影させると共に、撮像部品14の傾きに応じて変化するMTF値Vmを撮像素子15からの画像信号に基づいて算出する。そして、制御装置40は、例えば、その算出したMTF値Vmが最大になるように、撮像部品14の傾きを調整する。
【0033】
次に、制御装置40は、六軸駆動ステージ34の作動によって撮像部品14をレンズ部品12に対し相対的に光軸方向Dbに移動させ、それと共に、その撮像部品14の移動に応じて変化するMTF値Vmを撮像素子15からの画像信号に基づいて算出する。これにより、図9の曲線Lmで示されるMTF測定結果Rmが得られる。
【0034】
図9に示すように、このMTF測定結果Rmは、光軸方向Dbでのレンズ部品12に対する撮像素子基板16の相対位置Pr(すなわち、光軸方向相対位置Pr)と、撮像素子15からの画像信号に基づいたMTF値Vmとの関係である。別言すると、図5の軸方向隙間12aの隙間量Czはその光軸方向相対位置Prと一対一で対応するので、図9のMTF測定結果Rmは、軸方向隙間12aの隙間量CzとMTF値Vmとの関係であるとも言える。
【0035】
なお、本実施形態のカメラモジュール製造装置30では、光軸方向相対位置Prは、図5の相対位置代表寸法Lapで表される。この相対位置代表寸法Lapは、ケース鍔部121bの一方面121cから撮像素子基板16の撮像素子反対面162までの光軸方向Dbの距離である。また、相対位置代表寸法Lapは、カメラモジュール製造装置30が有する寸法であるので、六軸駆動ステージ34の作動状況が決まれば決まる寸法である。図2の第4工程P04の次は第5工程P05へ進む。
【0036】
目標位置決定工程としての第5工程P05では、制御装置40は、接着剤13の硬化後に得る光軸方向相対位置Prの目標位置である硬化後目標位置P1rを、図9のMTF測定結果Rmに基づいて決定する。具体的に、制御装置40は、そのMTF測定結果RmにおいてMTF値Vmが最大値V1mになる光軸方向相対位置Prを、硬化後目標位置P1rとして決定する。すなわち、制御装置40は、その硬化後目標位置P1rを実現する相対位置代表寸法Lapである硬化後目標位置寸法L1apを決定する。ここで言う接着剤13の硬化後とは、後述する接着剤13の仮硬化後でも本硬化後でもよいが、本実施形態では本硬化後を意味するものとする。
【0037】
そして、制御装置40は、接着剤13の硬化後に得る軸方向隙間12aの隙間量Cz(図5参照)の目標値である硬化後目標隙間量C1zを算出する。その硬化後目標隙間量C1zは、図9のMTF測定結果Rmと第2工程P02の部品測定で得られた部品測定結果とに基づいて決まるものである。詳細には、図5および図9から判るように、硬化後目標隙間量C1zは、硬化後目標位置寸法L1apと、部品測定結果に含まれるケース基準寸法Lcsと、撮像素子基板16の厚み寸法Tbとに基づき、下記式F1に従って算出される。
C1z=L1ap-Lcs-Tb ・・・(F1)
【0038】
また、第5工程P05では、制御装置40は、硬化後目標位置寸法L1apを補正する際に用いられる補正量AMzも決定する。具体的に、制御装置40は、接着剤13が硬化に伴って光軸方向Dbに収縮する際の収縮量を、その補正量AMzとして決定する。すなわち、制御装置40は、補正量AMzを用いた光軸方向相対位置Prの補正を接着剤13の硬化前に行った結果、その光軸方向相対位置Prが接着剤13の硬化後に硬化後目標位置P1rになるように、その補正量AMzを決定する。
【0039】
このように補正量AMzが決定されるので、接着剤13の硬化前における軸方向隙間12aの隙間量Cz(図5参照)の目標値である硬化前目標隙間量C2zは、下記式F2に示すように、硬化後目標隙間量C1zに補正量AMzを加算して得られる。
C2z=C1z+AMz ・・・(F2)
【0040】
また、補正量AMzは「補正量AMz=接着剤13の収縮量」であるので、その補正量AMzは、接着剤13の収縮率Rsと硬化前目標隙間量C2z(図9参照)とを用いて下記式F3によっても与えられる。なお、接着剤13の収縮率Rsとは、硬化に伴って収縮する接着剤13の収縮前の長さに対する収縮量の比率である。接着剤13の収縮率Rsは接着剤13の物性の1つであるので、接着剤13の種類が決まれば決まる値である。
AMz=C2z×Rs ・・・(F3)
【0041】
また、上記式F2と式F3とから、下記式F4が導き出される。下記式F4から判るように、補正量AMzは、接着剤13の収縮率Rsと、第2工程P02の部品測定結果から得られた硬化後目標隙間量C1zとに基づいた算出値であるので、その収縮率Rsと部品測定結果とに基づいて決まる値である。
AMz=C1z×Rs/(1-Rs) ・・・(F4)
【0042】
この第5工程P05では、補正量AMzは、上記式F4を用いて決定される。図2の第5工程P05の次は第6工程P06へ進む。
【0043】
MTF値再測定工程としての第6工程P06では、図5図6図9に示すように、先ず、制御装置40は、六軸駆動ステージ34の作動によって撮像部品14を光軸方向Dbに移動させる。これにより、制御装置40は、光軸方向相対位置Prを、軸方向隙間12aの隙間量Czが硬化後目標隙間量C1zになる位置(すなわち、硬化後目標位置P1r)にする。
【0044】
要するに、光軸方向相対位置Prが硬化後目標位置P1rに一致するように、撮像部品14が六軸駆動ステージ34の作動によって移動させられる。具体的には、図10の(a)に示すように、相対位置代表寸法Lapが硬化後目標位置寸法L1apに一致するように、撮像部品14が六軸駆動ステージ34の作動によって移動させられる。
【0045】
次に、制御装置40は、そのように光軸方向相対位置Prを硬化後目標位置P1rに一致させた上で、再び、撮像素子15からの画像信号に基づいたMTF値Vmを測定する。要するに、そのMTF値Vmを測定するMTF値再測定を行う。図2の第6工程P06の次は第7工程P07へ進む。
【0046】
MTF値照合工程としての第7工程P07では、制御装置40は、第6工程P06のMTF値再測定で測定したMTF値Vmと図9のMTF測定結果Rmとを照合するMTF値照合を行う。
【0047】
具体的には、制御装置40は、第6工程P06で測定したMTF値Vmと、図9のMTF測定結果RmにおけるMTF値Vmの最大値V1mとの差を確認する。その確認の結果、そのMTF値Vmの差が予め定められた許容範囲内であれば、制御装置40は異常なしと判断し、次の工程に進む。一方、そのMTF値Vmの差が許容範囲から外れていれば、制御装置40は異常ありと判断し、例えば図2の製造工程を中止する。図2の第7工程P07の次は第8工程P08へ進む。
【0048】
位置調整工程としての第8工程P08では、図5図6図9に示すように、制御装置40は、光軸方向相対位置Prが硬化前目標位置P2rになるように、六軸駆動ステージ34の作動によって撮像部品14を移動させる硬化前位置調整を行う。その硬化前目標位置P2rは、接着剤13の硬化前における光軸方向相対位置Prの目標位置である。そして、この硬化前位置調整では、制御装置40は、軸方向隙間12aの隙間量Czが硬化前目標隙間量C2zになる光軸方向相対位置Prを、硬化前目標位置P2rとして用いる。
【0049】
具体的に、第8工程P08の硬化前位置調整では、制御装置40は、その硬化前目標位置P2rを実現する相対位置代表寸法Lapである硬化前目標位置寸法L2apを、下記式F5に示すように、硬化後目標隙間量C1zに補正量AMzを加算して決定する。
L2ap=L1ap+AMz ・・・(F5)
【0050】
そして、制御装置40は、図10の(b)に示すように、相対位置代表寸法Lapがその硬化前目標位置寸法L2apになるように、六軸駆動ステージ34の作動によって撮像部品14を移動させる。すなわち、制御装置40は、相対位置代表寸法Lapが硬化後目標位置寸法L1apに一致した状態から、図10の(b)の矢印Adnのように、撮像部品14をレンズ部品12から離れる側へ光軸方向Dbに補正量AMz分だけ移動させる。図2の第8工程P08の次は第9工程P09へ進む。
【0051】
第1硬化工程としての第9工程P09では、制御装置40は、図7に示すように、レンズ部品12と撮像素子基板16との間の軸方向隙間12aに充填された接着剤13をエネルギー照射装置38によって加熱し、それによりその接着剤13を硬化させる仮硬化を行う。図2の第9工程P09の次は第10工程P10へ進む。
【0052】
第2硬化工程としての第10工程P10では、仮硬化の完了したカメラモジュール10が炉などの加熱器で加熱され、それにより接着剤13の硬化が更に進められる本硬化が行われる。この本硬化が行われることで接着剤13の強度が高まり、その接着剤13の強度は十分な大きさになる。本実施形態では、上記した接着剤13の仮硬化と本硬化とを合わせて接着剤硬化と称する。以上のようにして、本実施形態のカメラモジュール10は製造される。
【0053】
上述したように、本実施形態によれば、図2図9図10に示すように、第8工程P08では、光軸方向相対位置Prが硬化前目標位置P2rになるように、撮像部品14が六軸駆動ステージ34の作動によって移動させられる。その後の第9工程P09で、接着剤13の仮硬化が行われる。そして、第8工程P08では、軸方向隙間12aの隙間量Czが硬化前目標隙間量C2zになる光軸方向相対位置Prが、硬化前目標位置P2rとして用いられる。その硬化前目標隙間量C2zは、硬化後目標隙間量C1zに、接着剤13の収縮率Rsとその硬化後目標隙間量C1zとに基づいて決まる補正量AMzを加算して得られる。
【0054】
これにより、光軸方向Dbでのレンズ部品12に対する撮像素子基板16の相対位置Pr(すなわち、光軸方向相対位置Pr)が、硬化に伴う接着剤13の収縮分を加味した位置にされた状態で接着剤13の硬化が行われることになる。
【0055】
そのため、その接着剤13の硬化の後に得られる光軸方向相対位置Prが、接着剤13の収縮の影響を抑えたものになる。従って、接着剤13の収縮に起因したカメラモジュール10の製品精度の低下を抑えることが可能である。また、硬化に伴う接着剤13の収縮に起因した光軸方向相対位置Prのバラツキを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、図2の第6工程P06では、光軸方向相対位置Prが硬化後目標位置P1rに一致するように撮像部品14が六軸駆動ステージ34によって移動させられた状態で、再び、MTF値Vmが測定される。続く第7工程P07では、その第6工程P06で再測定されたMTF値Vmと第4工程P04で得られたMTF測定結果Rmとが照合される。
【0057】
従って、その第7工程P07でのMTF値Vmの照合により、上記のMTF測定結果Rmが正しいということが確認されるので、カメラモジュール10の不良率を低減することが可能である。
【0058】
(他の実施形態)
(1)上述の第1実施形態では図6に示すように、カメラモジュール製造装置30は、レンズ部品12に対する撮像素子基板16の相対位置を調整する際に、レンズ部品12を移動させず撮像部品14を移動させるが、これは一例である。その相対位置が調整されればよいので、カメラモジュール製造装置30は、撮像部品14を移動させずにレンズ部品12を移動させてもよく、或いは、撮像部品14とレンズ部品12との両方を移動させてもよい。
【0059】
(2)上述の第1実施形態では図7に示すように、接着剤13は加熱により硬化させられるが、これは一例である。接着剤13は熱硬化性である必要はなく、加熱以外の方法によって硬化させられても差し支えない。
【0060】
(3)上述の第1実施形態では図2に示すように、カメラモジュール10の製造工程では第1工程P01から第10工程P10まで順に実施されると説明されているが、これは一例である。その図2の工程P01~P10は、図2に示された順序で実施されることに限定されるものではない。その工程P01~P10には、例えば同時に並行して実施されてよい工程や、実施の順序が先後して構わない工程も含まれる。
【0061】
(4)上述の第1実施形態では図2に示すように、第6工程P06と第7工程P07とが実施された後に、第8工程P08で、光軸方向相対位置Prが硬化前目標位置P2rになるように撮像部品14が移動させられるが、これは一例である。例えば、第6工程P06と第7工程P07とが無く、第5工程P05の次に第8工程P08が実施されることも考え得る。
【0062】
(5)上述の第1実施形態では、図2の第2工程P02で測定される測定箇所の寸法には、図5の撮像素子基板16の厚み寸法Tbとケース基準寸法Lcsとが含まれているが、これは一例である。その第2工程P02で測定される測定箇所の寸法は、その撮像素子基板16の厚み寸法Tbおよびケース基準寸法Lcs以外の寸法であることも考え得る。
【0063】
(6)上述の第1実施形態では、図10に示す補正量AMzは、接着剤13の収縮率Rsと硬化後目標隙間量C1zとに基づいて算出されるが、これは一例である。補正量AMzが「補正量AMz=接着剤13の収縮量」になればよいので、補正量AMzは、例えば硬化後目標隙間量C1z以外のパラメータを用いて算出されても差し支えない。
【0064】
(7)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0065】
また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0066】
10 カメラモジュール
12 レンズ部品
12a 軸方向隙間
13 接着剤
14 撮像部品
15 撮像素子
16 撮像素子基板
Cz 軸方向隙間12aの隙間量
AMz 補正量
Db 光軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10