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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/32 20060101AFI20221206BHJP
   G01S 7/534 20060101ALI20221206BHJP
   G01S 15/931 20200101ALN20221206BHJP
【FI】
G01S15/32
G01S7/534
G01S15/931
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019145565
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021025942
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大
(72)【発明者】
【氏名】野呂 覚
(72)【発明者】
【氏名】大塚 秀樹
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-361177(JP,A)
【文献】特開2017-026604(JP,A)
【文献】特開平04-110687(JP,A)
【文献】特開2013-175966(JP,A)
【文献】特開2015-203566(JP,A)
【文献】米国特許第04319349(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
3/80 - 3/86
5/18 - 5/30
7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信周波数が超音波である超音波送信器(2)を駆動する駆動装置(3)であって、
複数の符号により形成された符号列における前記符号の各々に対応した周波数信号である単位周波数信号を時系列に配列した基本信号に基づいて、前記超音波送信器を駆動する駆動信号を生成するように構成された、駆動信号生成部(34)と、
前記駆動信号生成部から前記超音波送信器への前記駆動信号の出力を制御するように構成された、送信制御部(31)と、
を備え、
前記基本信号にて時系列的に隣接する2つの前記単位周波数信号のうちの先行するものを第一単位周波数信号とし且つ後行するものを第二単位周波数信号とし、さらに、前記送信周波数の目標値を目標周波数とした場合に、前記駆動信号生成部は、前記第一単位周波数信号と前記第二単位周波数信号とが、前記第一単位周波数信号に対応する前記目標周波数から前記第二単位周波数信号に対応する前記目標周波数に略同一の変化率で連続的に変化する連続切替状態とは異なる非連続切替状態で切替わる場合、前記第二単位周波数信号における、少なくとも、開始直後を含む切替部分の周波数を、前記第一単位周波数信号から前記第二単位周波数信号への周波数変化方向と同一方向に偏移させる、
駆動装置。
【請求項2】
前記駆動信号生成部は、時間経過に伴い一定方向に周波数変化する前記第一単位周波数信号における周波数変化とは逆方向に、前記第二単位周波数信号の周波数を偏移させる、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動信号生成部は、前記第二単位周波数信号における前記切替部分以外の部分の周波数を偏移させない一方で、前記切替部分の周波数を偏移させる、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動信号生成部は、偏移後の周波数と前記基本信号の周波数帯域における中心周波数との差が大きくなる程前記切替部分の継続時間が長くなるように、前記継続時間を設定する、
請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動信号生成部は、偏移後の周波数を、時間的な周波数変化の無い固定周波数に設定する、
請求項1~4のいずれか1つに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動信号生成部は、前記超音波送信器の動作温度に応じて、周波数偏移態様を設定する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の駆動装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信周波数が超音波である超音波送信器を駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサを用いて物体を検知する装置が知られている。この種の装置を車両に搭載して障害物検知に用いた場合、混信等により物体の検知精度が低下する場合があり得る。混信は、例えば、自車両の周辺に存在する他車両に搭載された超音波センサから送信された超音波を、自車両に搭載された超音波センサが受信することで生じ得る。あるいは、混信は、例えば、自車両に搭載された複数の超音波センサのうちの一つが、他の一つから送信された超音波を受信することで生じ得る。
【0003】
ところで、特許文献1は、超音波マルチセンサアレイを開示する。特許文献1に記載の超音波マルチセンサアレイは、少なくとも2つの送信ユニットと少なくとも1つの受信ユニットとを有し、いくつかの送信ユニットは並列動作することが可能である。
【0004】
特許文献1に記載の超音波マルチセンサアレイにおいては、並列動作を可能とするために、超音波パルスが符号化される。具体的には、同時に動作する複数の送信ユニットにおける個々のパルス符号化のため、搬送波信号の周波数が線形変調される。すなわち、第一の送信ユニットの搬送波信号の周波数は、パルス持続時間中に線形的に増加される。一方、第二の送信ユニットの搬送波信号の周波数は、パルス持続時間中に線形的に低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第10106142号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術を利用することで、自車両に搭載された超音波センサは、受信波が自身の送信波の反射波であるか否かを識別することが可能となる。具体的には、かかる識別は、自身の送信波の周波数変化と同様の周波数変化が受信波に含まれるか否かに基づいて行われる。所望の識別精度が得られれば、上記のような混信の問題は解決され得る。
【0007】
しかしながら、上記のような、超音波の送受信を利用した物体検知において、さらなる識別精度の向上が求められている。本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、識別精度を従来よりも向上し得る装置構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の、送信周波数が超音波である超音波送信器(2)を駆動する駆動装置(3)は、
複数の符号により形成された符号列における前記符号の各々に対応した周波数信号である単位周波数信号を時系列に配列した基本信号に基づいて、前記超音波送信器を駆動する駆動信号を生成するように構成された、駆動信号生成部(34)を備え、
前記基本信号にて時系列的に隣接する2つの前記単位周波数信号のうちの先行するものを第一単位周波数信号とし且つ後行するものを第二単位周波数信号とし、さらに、前記送信周波数の目標値を目標周波数とした場合に、前記駆動信号生成部は、前記第一単位周波数信号と前記第二単位周波数信号とが、前記第一単位周波数信号に対応する前記目標周波数から前記第二単位周波数信号に対応する前記目標周波数に略同一の変化率で連続的に変化する連続切替状態とは異なる非連続切替状態で切替わる場合、前記第二単位周波数信号における、少なくとも、開始直後を含む切替部分の周波数を、前記第一単位周波数信号から前記第二単位周波数信号への周波数変化方向と同一方向に偏移させる。
【0009】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の、単なる一具体例を示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る駆動装置を備えた物体検知装置の概略構成を示すブロック図である。
図2A図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号の一例における送受信の周波数特性を示すタイムチャートである。
図2B図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号の他の一例における送受信の周波数特性を示すタイムチャートである。
図3図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図4図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図5図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図6図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図7図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図8図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図9図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図10図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図11図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図12】4個の符号を含む符号列の一例を示すタイムチャートである。
図13】4個の符号を含む符号列の他の一例を示すタイムチャートである。
図14】4個の符号を含む符号列のさらに他の一例を示すタイムチャートである。
図15】4個の符号を含む符号列のさらに他の一例を示すタイムチャートである。
図16】4個の符号を含む符号列のさらに他の一例を示すタイムチャートである。
図17】4個の符号を含む符号列のさらに他の一例を示すタイムチャートである。
図18】理想的なFSK信号の一例を示すタイムチャートである。
図19図18に対応する実際のFSK信号の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0012】
図1を参照すると、物体検知装置1は、移動体としての車両Vに搭載されることで、当該車両Vの周囲の物体Bを検知するように構成されている。物体検知装置1が車両Vに搭載された状態を、以下「車載状態」と称する。また、本実施形態に係る物体検知装置1を搭載する車両Vを、以下「自車両」と称する。
【0013】
物体検知装置1は、いわゆるソナーすなわち超音波センサとしての構成を有している。具体的には、物体検知装置1は、超音波である送信波を外部に向けて送信するように構成されている。また、物体検知装置1は、外部に送信した送信波の物体Bによる反射波を受信することで、周囲の物体Bを検知するとともに当該物体Bに対応する測距情報を取得するように構成されている。
【0014】
物体検知装置1は、送受信器2と、駆動装置3と、判定装置4とを備えている。本実施形態においては、物体検知装置1は、送受信器2、駆動装置3、および判定装置4を、一個の不図示のセンサ筐体により支持することにより構成されている。
【0015】
すなわち、物体検知装置1は、送信周波数および受信周波数が超音波である一個の送受信器2を備えた、送受信一体型の構成を有している。送受信器2は、送信波を外部に向けて送信する超音波送信器としての機能と、物体Bによる送信波の反射波を含む受信波を受信する超音波受信器としての機能とを奏するように構成されている。
【0016】
具体的には、送受信器2は、送信部20Aと受信部20Bとを有している。また、送受信器2は、一個のトランスデューサ21を有している。送信部20Aおよび受信部20Bは、共通のトランスデューサ21を用いて、送信機能および受信機能をそれぞれ実現するように構成されている。トランスデューサ21は、略円筒形状のマイクロフォン筐体に圧電素子等の電気-機械エネルギー変換素子を内蔵した、共振型の超音波マイクロフォンとしての構成を有している。
【0017】
車載状態にて、トランスデューサ21は、自車両の外表面に面する位置に配置されることで、送信波を自車両の外部に送信可能および反射波を自車両の外部から受信可能に設けられている。具体的には、トランスデューサ21は、車載状態にて、自車両における外板部材V1に形成された貫通孔である装着孔V2から送受信面21aが自車両の外部空間に露出するように、外板部材V1に装着されている。外板部材V1は、例えば、バンパーまたはボディパネルであって、合成樹脂または金属製の板材によって形成されている。送受信面21aは、トランスデューサ21におけるマイクロフォン筐体の外表面であって、送信波の送信面および受信波の受信面として機能するように設けられている。
【0018】
送受信器2は、トランスデューサ21と、送信回路22と、受信回路23とを備えている。トランスデューサ21は、送信回路22および受信回路23と電気接続されている。送信部20Aは、トランスデューサ21と送信回路22とによって構成されている。また、受信部20Bは、トランスデューサ21と受信回路23とによって構成されている。
【0019】
送信回路22は、入力された駆動信号に基づいてトランスデューサ21を駆動することで、トランスデューサ21にて駆動信号の周波数に対応する周波数の送信波を発信させるように設けられている。駆動信号の周波数を、以下「駆動周波数」と称する。また、送信波の周波数を、以下「送信周波数」と称する。これに対し、受信波の周波数を、以下「受信周波数」と称する。
【0020】
具体的には、送信回路22は、デジタル/アナログ変換回路等を有している。すなわち、送信回路22は、駆動信号生成部34から出力された駆動信号に対してデジタル/アナログ変換等の信号処理を施すことで、素子入力信号を生成するように構成されている。素子入力信号は、トランスデューサ21を駆動するための交流電圧信号である。そして、送信回路22は、生成した素子入力信号をトランスデューサ21に印加してトランスデューサ21における電気-機械エネルギー変換素子を駆動することで、送受信面21aを励振して送信波を外部に送信するように構成されている。
【0021】
受信回路23は、トランスデューサ21による受信波の受信結果に対応する受信信号を生成して受信信号処理部41に出力するように設けられている。具体的には、受信回路23は、増幅回路およびアナログ/デジタル変換回路等を有している。すなわち、受信回路23は、トランスデューサ21が出力した素子出力信号に対して、増幅およびアナログ/デジタル変換等の信号処理を施すことで、受信信号を生成するように構成されている。素子出力信号は、受信波の受信により送受信面21aが励振された際に、トランスデューサ21に設けられた電気-機械エネルギー変換素子にて発生する、交流電圧信号である。また、受信回路23は、受信波の振幅および周波数に関する情報が含まれる、生成した受信信号を、受信信号処理部41に出力するように構成されている。
【0022】
このように、送受信器2は、トランスデューサ21により、送信波を送信するとともに物体Bからの反射波を受信波として受信することで、トランスデューサ21と物体Bとの距離および受信周波数に応じた受信信号を生成するように構成されている。送受信器2が、自身の送信した送信波の反射波を受信した場合の受信波を、以下「正規波」と称する。これに対し、他装置からの送信波に起因する受信波を、以下「非正規波」と称する。「他装置」には、自車両に搭載された他の送受信器2も含まれる。
【0023】
送受信器2を駆動する駆動装置3は、送受信器2からの送信波の送信状態を制御するように構成されている。本実施形態においては、駆動装置3は、物体検知装置1における物体検知動作の全体を制御する不図示の制御回路に設けられている。駆動装置3は、送信制御部31と、符号生成部32と、基本信号生成部33と、駆動信号生成部34と、温度取得部35とを備えている。
【0024】
送信制御部31は、駆動装置3の全体の動作を制御することで、送信波における波形および送信タイミングを決定するように設けられている。すなわち、送信制御部31は、送信波に付与する符号列である送信符号列を決定するようになっている。「符号列」は、複数の符号により形成されている。具体的には、符号列は、例えば、「1」と「0」と「-1」という3種類の符号を、「1,-1」のように複数配列した構造を有している。本実施形態においては、送信制御部31は、あらかじめ定められた複数の符号列の中から1つを送信符号列として選択するようになっている。
【0025】
符号生成部32は、送信制御部31が決定した送信符号列を、基本信号生成部33に出力するように設けられている。具体的には、符号生成部32は、例えば、送信制御部31が送信符号列を「符号列F1」に決定した場合には符号列「1,0」を出力する一方、送信制御部31が送信符号列を「符号列F2」に決定した場合には符号列「1,1」を出力するようになっている。
【0026】
基本信号生成部33は、送信符号列に対応する基本信号を生成して駆動信号生成部34に出力するように設けられている。基本信号は、単位周波数信号を時系列に配列した信号である。単位周波数信号は、送信符号列における複数の符号の各々に対応した周波数信号である。「周波数信号」は、周波数の変調態様、すなわち、時間経過に伴う周波数の変化態様を示す信号である。具体的には、例えば、符号「1」に対応する単位周波数信号として、所定時間内にて周波数が上昇する周波数上昇信号が設定されている。また、符号「-1」に対応する単位周波数信号として、所定時間内にて周波数が低下する周波数低下信号が設定されている。さらに、符号「0」に対応する単位周波数信号として、所定時間内にて周波数が一定のCW信号が設定されている。CWはcontinuous waveformの略である。CW信号はCF信号とも称される。CFはcontinuous frequencyの略である。
【0027】
駆動信号生成部34は、送信制御部31から受信した制御信号と、基本信号生成部33により生成された基本信号とに基づいて、駆動信号を生成するように設けられている。駆動信号は、送受信器2すなわち送信部20Aを駆動して、トランスデューサ21から送信波を送信させるための信号であって、例えば超音波帯域内の周波数を有するパルス状信号である。駆動信号の具体例については、後述の動作概要の欄にて説明する。
【0028】
送信制御部31が生成および出力する制御信号は、駆動信号の最終的な波形を決定するための波形補正情報と、送信波の送信タイミングを制御するためのタイミング信号とを含む。すなわち、駆動信号生成部34は、送信制御部31が決定した送信符号列における符号偏移態様に応じた波形補正情報により基本信号を補正することで生成した周波数信号に基づいて、駆動信号を生成するようになっている。波形補正情報の詳細については、後述の動作概要の欄にて説明する。また、駆動信号生成部34は、タイミング信号に基づいて、駆動信号を所定のタイミングで送信部20Aに向けて出力するように設けられている。
【0029】
温度取得部35は、物体検知装置1すなわち送受信器2の動作温度を取得するように設けられている。具体的には、温度取得部35は、車両Vに搭載された不図示の外気温センサによる外気温の検出値を、不図示の車載ネットワーク経由で受信するようになっている。
【0030】
温度取得部35は、取得した動作温度を、送信制御部31に出力するように設けられている。送信制御部31は、取得した動作温度に応じて、波形補正情報を設定するようになっている。動作温度に応じた波形補正情報の設定の詳細については、後述の動作概要の欄にて説明する。
【0031】
判定装置4は、受信信号に基づいて、物体Bの検知判定処理を実行するように構成されている。具体的には、判定装置4は、受信信号処理部41と物体検知部42とを有している。
【0032】
受信信号処理部41は、受信信号に対してFFT等の処理を施すことで、振幅信号と受信周波数信号とを生成するように構成されている。FFTはFast Fourier Transformの略である。振幅信号は、受信波の振幅に対応する信号である。受信周波数信号は、受信波における周波数信号、すなわち、受信周波数に対応する信号である。換言すれば、受信周波数信号は、受信信号における、符号化に関連する波形パターンに対応する信号である。また、受信信号処理部41は、生成した振幅信号および受信周波数信号を、物体検知部42に出力するように設けられている。
【0033】
物体検知部42は、受信信号処理部41から取得した振幅信号および受信周波数信号に基づいて、物体Bを検知するように設けられている。具体的には、物体検知部42は、所定の参照信号と取得した受信周波数信号とに基づいて、受信波が正規波であるか否かを判定するようになっている。また、物体検知部42は、受信波が正規波である場合に、取得した振幅信号に基づいて、物体Bの存在およびトランスデューサ21と物体Bとの距離を検知するようになっている。
【0034】
(動作概要)
以下、本実施形態の構成による動作の概要について、典型的な動作例、および、同構成により奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。
【0035】
所定の物体検知条件が成立すると、物体検知装置1は、物体検知動作を開始する。物体検知条件は、例えば、自車両の走行速度が所定範囲内であること、自車両のシフトポジションが後退を含む走行ポジションであること、等を含む。物体検知条件が不成立となると、物体検知装置1は、物体検知動作を終了する。
【0036】
物体検知動作が開始されると、まず、送信制御部31は、送信波に付与する符号列である送信符号列を決定する。また、送信制御部31は、送信符号列の決定結果を、符号生成部32に出力する。符号生成部32は、送信制御部31が決定した送信符号列を、基本信号生成部33に出力する。基本信号生成部33は、符号生成部32から出力された送信符号列に対応する基本信号を生成して、駆動信号生成部34に出力する。
【0037】
具体的には、例えば、送信制御部31が送信符号列を「符号列F1」に決定した場合に、符号生成部32は符号列「1,0」を送信符号列として出力する。すると、基本信号生成部33は、符号列「1,0」に対応する基本信号を生成する。かかる基本信号は、先頭ビットの符号「1」に対応した単位周波数信号である周波数上昇信号と、その次の第二ビットの符号「0」に対応した単位周波数信号であるCW信号とを、時系列に配列することにより形成される。
【0038】
送信制御部31は、物体検知条件が成立すると、所定周期で送信タイミングの到来を判定する。所定周期は、例えば、数百ミリ秒周期である。送信タイミングの到来判定は、不図示のタイマ等の計時手段を用いて実行される。送信タイミングが到来すると、送信制御部31は、制御信号を駆動信号生成部34に向けて出力する。すなわち、送信制御部31は、駆動信号生成部34から送受信器2への駆動信号の出力を制御する。
【0039】
基本信号および制御信号が入力されると、駆動信号生成部34は、駆動信号を生成して送信部20Aすなわち送信回路22に向けて出力する。送信回路22は、入力された駆動信号に基づいて、トランスデューサ21を駆動する。すると、トランスデューサ21は、駆動信号の周波数に対応する周波数の超音波である送信波を、自車両の外部に向けて送信する。これにより、所定の送信タイミングにて送信波が送信される。
【0040】
物体検知動作中における所定の受信可能期間にて、物体検知装置1は、受信動作を実行する。受信可能期間は、送受信一体型である本実施形態の構成においては、送信波の送信終了とその直後に到来する次の送信タイミングとの間の期間のうち、残響等の影響による不感帯を除いた期間である。トランスデューサ21は、受信可能期間にて、受信波の振幅および周波数に応じた交流電圧信号である素子出力信号を出力する。
【0041】
受信回路23は、素子出力信号に対して増幅およびアナログ/デジタル変換等の信号処理を施すことで、受信信号を生成する。受信信号処理部41は、受信信号に対してFFT等の処理を施すことで、振幅信号および受信周波数信号を生成する。受信信号処理部41は、生成した振幅信号および受信周波数信号を、物体検知部42に出力する。
【0042】
駆動信号は、送信制御部31が決定した送信符号列における符号の各々に対応して周波数変調されている。送信波の周波数である送信周波数は、駆動信号の周波数である駆動周波数に応じたものとなる。このため、送信周波数は、駆動周波数の時間的変化に対応する周波数変化を、識別性に対応する特徴として有することとなる。したがって、受信波が正規波である場合、受信周波数は、周波数変調態様について、送信周波数と同様の特徴を有しているはずである。なお、「周波数変調態様」には、無変調すなわちCWも含まれる。
【0043】
そこで、物体検知部42は、受信信号処理部41から出力された受信周波数信号に基づいて、受信波が正規波であるか否かを判定する。具体的には、物体検知部42は、受信信号における波形パターンに対応する受信周波数信号と、送信制御部31により決定された送信符号列に対応する参照信号とを照合する。これにより、受信波が、正規波すなわち自身の送信波の反射波であるか否かを、識別することが可能となる。物体検知部42は、受信波が正規波である場合に、受信信号処理部41から出力された振幅信号に基づいて、物体Bの存在およびトランスデューサ21と物体Bとの距離を検知する。
【0044】
上記の通り、送信波は、識別性を付与するために符号化されている。また、符号化方式として、各ビットに対して周波数変調態様に応じた符号を対応付けた複数ビットによる符号化が用いられている。したがって、本実施形態に係る物体検知装置1、および、これにより実行される物体検知方法によれば、識別精度を従来よりも向上することが可能となる。
【0045】
図2Aは、符号列「1,0」に対応する、駆動周波数および受信周波数の時間変化を示す。図2A中、横軸tは時間を示す。図2A中の、上側のタイムチャートにおいて、縦軸fDは駆動周波数を示す。また、破線は、目標周波数、すなわち、送信周波数の目標値を示す。さらに、図2A中の、下側のタイムチャートにおいて、縦軸fRは受信周波数を示す。同様に、図2Bは、符号列「1,1」に対応する、駆動周波数および受信周波数の時間変化を示す。図2Bにおける縦軸および横軸の意義は図2Aと同様である。
【0046】
ところで、共振型の超音波マイクロフォンであるトランスデューサ21を備えた、送受信器2は、帯域通過フィルタと同様の特性を有する。すなわち、送受信器2により良好に送受信可能な周波数帯域は、実質的に、共振周波数fCを中心とした±数%の幅に限定される。このため、送受信器2に対しては、所定の送受信周波数帯域が設定される。
【0047】
かかる送受信周波数帯域は、出力あるいは感度をSとし、共振周波数fCにてS=0[dB]とした場合の、S=0~Sb[dB]となる範囲である。すなわち、送受信器2により良好に送受信可能な周波数範囲である送受信周波数帯域は、上限周波数fHと下限周波数fLとの間のS=0~Sb[dB]となる帯域である。Sbは、典型的には、例えば、-3[dB]である。感度は、送受信器2を受信器として用いた場合の感度である。なお、このような送受信周波数帯域は、「共振帯」、「-3dB帯域」、あるいは「3dB帯域」とも称され得る。fL<fC<fHである。fL-fC≒fC-fHである。
【0048】
そこで、本実施形態においては、符号「1」に対応する目標周波数は、図2Aおよび図2Bにて右上がりの破線で示された如く下限周波数fLから時間経過とともに上限周波数fHに向かって線形的に上昇する「アップチャープ」状となるように設定されている。一方、符号「-1」に対応する目標周波数は、上限周波数fHから時間経過とともに下限周波数fLに向かって線形的に低下する「ダウンチャープ」状となるように設定されている。また、符号「0」に対応する目標周波数は、共振周波数fCにて一定となるように設定されている。
【0049】
したがって、符号「1」に対応する単位周波数信号である周波数上昇信号は、駆動周波数が下限周波数fLから上限周波数fHに向かって上昇する周波数特性を有している。一方、符号「-1」に対応する単位周波数信号である周波数低下信号は、駆動周波数が上限周波数fHから下限周波数fLに向かって低下する周波数特性を有している。また、符号「0」に対応する単位周波数信号であるCW信号は、駆動周波数が共振周波数fCにて一定となる周波数特性を有している。
【0050】
また、共振型の送受信器2においては、共振周波数fCから離れた駆動周波数では、周波数の追従性が悪い。このため、図2Aおよび図2Bに示されたように、先頭ビットが符号「0」とは異なる場合、第一開始時刻ts1より前のプレバースト開始時刻tsから第一開始時刻ts1までの間、駆動周波数が共振周波数fCにて一定に設定される。第一開始時刻ts1は、先頭ビットに対応する第一単位周波数信号U1の開始時刻である。すなわち、共振周波数fCから離れた駆動周波数にて開始する第一単位周波数信号U1による駆動に先立って、送受信器2が共振周波数fCにて短時間駆動される。これにより、周波数の追従性が改善され得る。
【0051】
さらに、本実施形態においては、符号「1」に対応する周波数上昇信号は、下限周波数fLから上限周波数fHにステップ状に変化するような矩形波状の周波数特性を有している。一方、符号「-1」に対応する周波数低下信号は、上限周波数fHから下限周波数fLにステップ状に変化するような矩形波状の周波数特性を有している。これにより、周波数の追従性が改善され得る。
【0052】
具体的には、図2Aに示された例においては、周波数上昇信号である第一単位周波数信号U1にて、第一開始時刻ts1から、第一終了時刻te1より前の第一中間時刻tm1までの間、駆動周波数が一定周波数すなわち下限周波数fLに設定される。第一終了時刻te1は、第一単位周波数信号U1の終了時刻を示す。一方、第一中間時刻tm1から第一終了時刻te1までの間、駆動周波数が一定周波数すなわち上限周波数fHに設定される。そして、第一開始時刻ts1と第一終了時刻te1との間の第一中間時刻tm1にて、駆動周波数が下限周波数fLから上限周波数fHにステップ状に変化する。これにより、実際の送信周波数特性は、図2Aにて破線で示された如く時間経過とともに周波数が線形的に上昇する目標の周波数特性に近いものとなる。
【0053】
なお、図2Aに示された例においては、第一単位周波数信号U1における、第一開始時刻ts1から第一中間時刻tm1までの間の時間間隔は、第一中間時刻tm1から第一終了時刻te1までの間の時間間隔とほぼ等しくなるように設定される。また、第二開始時刻ts2および第二終了時刻te2は、それぞれ、第二ビットに対応する第二単位周波数信号U2の開始時刻および終了時刻を示す。本実施形態においては、第一終了時刻te1と第二開始時刻ts2とは、ほぼ一致しているものとする。
【0054】
(周波数偏移処理)
図2Aに示された例においては、符号の切り替えが行われる第一終了時刻te1すなわち第二開始時刻ts2にて、目標周波数は、上限周波数fHから共振周波数fCに不連続的に変化する。その後の目標周波数は、共振周波数fCにて一定である。これに対応して、基本信号にて、第二単位周波数信号U2は、第二開始時刻ts2から第二終了時刻te2まで周波数が共振周波数fCにて一定となるように設定される。第二開始時刻ts2から第二終了時刻te2までの時間間隔は、第一開始時刻ts1から第一終了時刻te1までの時間間隔と同一に設定される。
【0055】
このため、図2Aに示された符号列「1,0」の例においては、基本信号は、下記のような周波数特性を有している。具体的には、基本信号は、第一中間時刻tm1にて下限周波数fLから上限周波数fHにステップ状に変化するような矩形波状の第一単位周波数信号U1と、共振周波数fCにて一定のCW波状の第二単位周波数信号U2とを時系列に配列したものである。したがって、符号「0」に対応するCW信号である第二単位周波数信号U2において、駆動周波数は、第二開始時刻ts2から第二終了時刻te2までの間、本来、共振周波数fCにて一定となるはずである。
【0056】
しかしながら、共振型の送受信器2においては、駆動周波数の切替えに対する追従性が悪い。すなわち、送信周波数を変えようよしても、実際は、送信周波数は、瞬時には切り替わらず徐々に変化する。このときの周波数の変化率は、トランスデューサ21および送信回路22の特性に依存する。よって、第二開始時刻ts2から第二終了時刻te2までの間の駆動周波数を共振周波数fCにて一定とすると、実際の送信周波数および受信周波数は、図2Aにおける下側のタイムチャートにて点線で示されたように時間変化する。具体的には、先頭ビットにて周波数が立ち上がる立ち上がり領域T1における周波数変化の影響で、ビット切替え領域T2にて周波数がオーバーシュートし、その後の収斂領域T3にて周波数が共振周波数fCに漸近する。
【0057】
このような、オーバーシュート周波数から共振周波数fCへの漸近により、図2Aにおける下側のタイムチャートにて点線で示されたように、収斂領域T3にて、周波数が低下する波形パターンが出現する。かかる周波数低下の波形パターンが「ダウンチャープ」すなわち符号「-1」として誤って判定されると、識別精度が低下する。あるいは、周波数変化の傾きがCW信号のように平坦化するまでの所要時間により、1ビットあたりの信号長が長くなってしまう。信号長が長くなると、単位時間あたりのビット数を大きくすることが困難となり、設定可能な符号パターンのバリエーションにも限界が生じる。
【0058】
そこで、本実施形態に係る駆動装置3およびこれにより実行される駆動方法は、第二単位周波数信号U2における、第二開始時刻ts2の直後を含む切替部分の駆動周波数を、本来の駆動周波数である共振周波数fCよりも低周波数側に偏移させる。周波数偏移の方向は、第一終了時刻te1すなわち第二開始時刻ts2における第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への周波数変化方向と同一方向である。基本信号のうちの偏移される時刻ts2-tm2間の部分における偏移後の周波数信号と、基本信号のうちの偏移されない時刻ts1-te1間および時刻tm2-te2間の部分の周波数信号とにより、駆動周波数における周波数信号が構成される。
【0059】
具体的には、図2Aにおける上側のタイムチャートに示されたように、本実施形態に係る装置および方法は、第二単位周波数信号U2における、第二開始時刻ts2から第二中間時刻tm2までの間の時間帯にて、駆動周波数を低周波数側に補正する。図2Aに示された例においては、第二開始時刻ts2から第二中間時刻tm2までの間の時間帯は、第二単位周波数信号U2における、第二開始時刻ts2の直後の部分である。
【0060】
本実施形態によれば、図2Aにおける下側のタイムチャートにて実線で示されたように、ビット切替え領域T2における周波数のオーバーシュートが可及的に抑制される。これにより、第二ビットにおける周波数変化が早期に平坦化する。よって、パターンマッチングの精度が向上する。また、1ビットあたりの信号長を可及的に短くすることで単位時間あたりのビット数を大きくすることができ、設定可能な符号パターンのバリエーションが増加する。すると、車両Vに複数のソナーを搭載した場合において、各ソナーにユニークなすなわち互いに重複しない符号を割り当てることが可能となり、受信判定にて如何なるソナーから送信された信号であるかを識別しやすくなる。したがって、本実施形態によれば、識別性を従来よりも向上することが可能となる。
【0061】
図2Bは、符号列「1,1」の例を示す。この例においては、先頭ビットの符号「1」に対応する目標周波数は、下限周波数fLから時間経過とともに上限周波数fHに向かって線形的に上昇する。その次の第二ビットの符号「1」に対応する目標周波数も、下限周波数fLから時間経過とともに上限周波数fHに向かって線形的に上昇する。符号の切り替えが行われる第一終了時刻te1すなわち第二開始時刻ts2にて、目標周波数は、上限周波数fHから下限周波数fLに不連続的に変化する。
【0062】
上記の通り、先頭ビットの符号「1」に対応する目標周波数の周波数特性と、その次の第二ビットの符号「1」に対応する目標周波数の周波数特性とは、完全に同一である。このため、本来、先頭ビットの符号「1」に対応する第一単位周波数信号U1と、その次の第二ビットの符号「1」に対応する第二単位周波数信号U2とは、完全に同一波形となるはずである。具体的には、第二単位周波数信号U2における第二開始時刻ts2から第二中間時刻tm2までの間の駆動周波数は、本来、第一単位周波数信号U1における第一開始時刻ts1から第一中間時刻tm1までの間の駆動周波数と同様に、下限周波数fLにて一定となるはずである。
【0063】
しかしながら、第二単位周波数信号U2を第一単位周波数信号U1と完全に同一波形とした場合、実際の送信周波数および受信周波数は、図2Bにおける下側のタイムチャートにて点線で示されたように時間変化する。具体的には、共振型の送受信器2における、駆動周波数の切替えに対する追従性の悪さのため、周波数切替後の周波数立ち下がり領域T4における周波数の立ち下がり量が小さくなる。すると、第二ビットにて周波数が立ち上がる再立ち上がり領域T5における、周波数の立ち上がり量あるいは立ち上がり勾配が小さくなる。このため、第二ビットにて、「アップチャープ」状に周波数が変化する符号「1」に対応する所定量の周波数変化が得られ難くなる。すなわち、受信信号の特徴が小さくなる。
【0064】
そこで、本実施形態に係る装置および方法は、第二単位周波数信号U2における、少なくとも、第二開始時刻ts2の直後を含む切替部分の駆動周波数を、本来の駆動周波数である下限周波数fLよりも低周波数側に偏移させる。周波数偏移の方向は、第一終了時刻te1すなわち第二開始時刻ts2における第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への周波数変化方向と同一方向である。具体的には、当該装置および方法は、第二単位周波数信号U2における、第二開始時刻ts2から第二中間時刻tm2までの間の時間帯にて、駆動周波数を低周波数側に補正する。
【0065】
本実施形態によれば、図2Bにおける下側のタイムチャートにて実線で示されたように、周波数立ち下がり領域T4における周波数の立ち下がり量が大きくなる。すると、第二ビットにて周波数が立ち上がる再立ち上がり領域T5における、周波数の立ち上がり量あるいは立ち上がり勾配が大きくなる。このため、第二ビットにて、「アップチャープ」状に周波数が変化する符号「1」に対応する所定量の周波数変化が良好に得られる。すなわち、受信信号の特徴を大きくすることができる。よって、パターンマッチングの精度が向上する。
【0066】
このように、基本信号にて時系列的に隣接する2つの単位周波数信号のうちの先行する第一単位周波数信号U1と後行する第二単位周波数信号U2とが、連続切替状態とは異なる非連続切替状態で切替わる場合がある。連続切替状態は、第一単位周波数信号U1に対応する目標周波数から第二単位周波数信号U2に対応する目標周波数に略同一の変化率で連続的に目標周波数が変化するように、第一単位周波数信号U1と第二単位周波数信号U2とが、切替わる状態である。例えば、非連続切替状態の場合、目標周波数が不連続的に変化する。あるいは、非連続切替状態の場合、目標周波数の変化率すなわち勾配が変化することで、目標周波数が「折れ線」状に変化する。非連続切替状態の場合、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2における、少なくとも、開始直後を含む切替部分の周波数を、第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への周波数変化方向と同一方向に偏移させる。
【0067】
具体的には、図2Aに示された例においては、第一単位周波数信号U1に対応する目標周波数は、下限周波数fLから上限周波数fHに向かって線形的に上昇する。一方、第二単位周波数信号U2に対応する目標周波数は、共振周波数fCにて一定である。第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への切替えは、対応する目標周波数が上限周波数fHから共振周波数fCへ不連続的に変化する態様で行われる。また、目標周波数が上限周波数fHから共振周波数fCへ不連続的に変化する前後における、目標周波数の勾配も異なる。よって、第一単位周波数信号U1と後行する第二単位周波数信号U2とは、非連続切替状態で切替わる。
【0068】
そこで、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2における、第二開始時刻ts2から第二中間時刻tm2までの間の時間帯にて、駆動周波数を本来の共振周波数fCよりも低周波数側に偏移させる。このときの周波数の偏移方向は、第一終了時刻te1および第二開始時刻ts2における、第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への周波数変化方向と同一方向、すなわち、上限周波数fHから共振周波数fCに向かう周波数低下方向である。
【0069】
同様に、図2Bに示された例においては、第一単位周波数信号U1に対応する目標周波数は、下限周波数fLから上限周波数fHに向かって線形的に上昇する。同様に、第二単位周波数信号U2に対応する目標周波数は、下限周波数fLから上限周波数fHに向かって線形的に上昇する。第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への切替えは、対応する目標周波数が上限周波数fHから下限周波数fLへ不連続的に変化する態様で行われる。よって、第一単位周波数信号U1と後行する第二単位周波数信号U2とは、非連続切替状態で切替わる。
【0070】
そこで、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2における、第二開始時刻ts2から第二中間時刻tm2までの間の時間帯にて、駆動周波数を本来の下限周波数fLよりも低周波数側に偏移させる。このときの周波数の偏移方向は、第一終了時刻te1および第二開始時刻ts2における、第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への周波数変化方向と同一方向、すなわち、上限周波数fHから下限周波数fLに向かう周波数低下である。
【0071】
特許文献1の開示に代表される従来の構成において、周波数変化率はセンサ特性に依存し、周波数は瞬時には切り替わらず徐々に変化する。このため、短い信号長では、受信信号の特徴が小さくなり、高い識別性が得られない、すなわち、信号長を短くすることには限界がある。一方、特徴を大きくして識別性能を向上するために信号長を長くしても、上記の通り、単位時間あたりのビット数を大きくすることが困難となる。具体的には、例えば、1ビットしか符号を送信できなくなる。1台の車両Vに8~12個のソナーが搭載されるため、1ビットの符号では良好な識別が困難となる。これに対し、本実施形態に係る装置および方法によれば、時系列的に隣接する2つの符号の切替えが、迅速且つ良好に行われ得る。このため、CW波におけるオーバーシュートを抑制したり、チャープ波における受信信号の特徴を大きくしたりすることができる。また、1ビットあたりの信号長を短くすることができる。よって、同一または異なる複数の周波数パターンを時系列的に配列することにより符号化した送信波が、良好な識別性で形成され得る。したがって、本実施形態によれば、識別精度を従来よりも向上し得る装置構成および方法が提供される。
【0072】
共振型の送受信器2において、共振周波数fCおよび送受信周波数帯域を含む、送受信の周波数特性は、温度により変動する。よって、本実施形態においては、駆動信号生成部34は、送受信器2の動作温度に応じて、図2Aおよび図2Bに示された第二単位周波数信号U2の周波数偏移態様を設定する。すなわち、温度取得部35は、物体検知装置1すなわち送受信器2の動作温度を取得して送信制御部31に出力する。送信制御部31は、取得した動作温度に応じて、波形補正情報を設定する。
【0073】
具体的には、図2Aに示された例においては、送信制御部31は、動作温度に応じて、第二単位周波数信号U2における、第二開始時刻ts2から第二中間時刻tm2までの時間間隔を設定する。また、送信制御部31は、動作温度に応じて、第二開始時刻ts2から第二中間時刻tm2までの間の時間帯における、駆動周波数の共振周波数fCからの偏移量すなわち補正量を設定する。また、図2Bに示された例においては、送信制御部31は、動作温度に応じて、第二開始時刻ts2から第二中間時刻tm2までの間の時間帯における、駆動周波数の下限周波数fLからの偏移量すなわち補正量を設定する。
【0074】
本実施形態に係る装置および方法によれば、送信波における周波数波形への動作温度の影響を可及的に減殺させることができる。したがって、識別精度が従来よりもよりいっそう向上し得る。
【0075】
(多ビット処理)
以上の、図2Aおよび図2Bを用いた動作概要説明においては、主として、符号列における先頭ビットと第二ビットとの切替について説明した。以下、3ビット以上の符号を有する符号列に対する具体的処理について説明する。
【0076】
送信波には、3ビット以上の符号を付与することが可能である。送信波を3ビット以上の多ビットで符号化することで、設定可能な符号パターンのバリエーションよりいっそう増加させることができ、以て識別精度を従来よりも向上することが可能となる。
【0077】
(具体例1)
図3図5は、送信波を4ビットの符号列で符号化する例を示す。図3図5において、fTは目標周波数を示し、fDは駆動周波数を示す。図3図5にて下側に示された駆動周波数fDのタイムチャート上にて、偏移前すなわち補正前の単位基本信号が太い点線で示されている。また、横軸の時間tにおいて、t0は、先頭ビットの開始時刻を示し、図2Aにおける第一開始時刻ts1に対応する。t1は、先頭ビットの終了時刻且つ第二ビットの開始時刻を示す。同様に、t2は第二ビットの終了時刻且つ第三ビットの開始時刻を示し、t3は第三ビットの終了時刻且つ第四ビットの開始時刻を示し、t4は第四ビットの終了時刻を示す。
【0078】
図3図5に示された例において、符号「1」に対応する目標周波数は、線形的に単調上昇する「アップチャープ」状の周波数特性を有している。一方、符号「-1」に対応する目標周波数は、線形的に単調低下する「ダウンチャープ」状の周波数特性を有している。また、符号「0」に対応する目標周波数は、CW波状の周波数特性を有している。
【0079】
これに対応して、符号「1」に対応する単位周波数信号である周波数上昇信号は、駆動周波数が線形的に単調上昇する「アップチャープ」状の周波数特性を有している。一方、符号「-1」に対応する単位周波数信号である周波数低下信号は、駆動周波数が線形的に単調低下する「ダウンチャープ」状の周波数特性を有している。また、符号「0」に対応する単位周波数信号であるCW信号は、駆動周波数が一定となるCW波状の周波数特性を有している。
【0080】
図3に示された例においては、送信波は、符号列「-1,1,-1,1」により符号化される。この場合、先頭ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。第二ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから上限周波数fHまで線形的に単調上昇する。第三ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。第四ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから上限周波数fHまで線形的に単調上昇する。
【0081】
これに対応して、基本信号にて、第一単位周波数信号U1は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。また、第二単位周波数信号U2は、下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に単調上昇する。また、第三単位周波数信号U3は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。また、第四単位周波数信号U4は、下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に単調上昇する。基本信号は、第一単位周波数信号U1と第二単位周波数信号U2と第三単位周波数信号U3と第四単位周波数信号U4とを、この順に時系列に配列することで形成される。周波数偏移処理が実行されない場合、基本信号は、駆動信号における周波数特性を示す周波数信号とほぼ一致する。
【0082】
時刻t1にて、先頭ビットに対応する目標周波数は、下限周波数fLである。また、時刻t1にて、第二ビットに対応する目標周波数は、下限周波数fLである。よって、目標周波数は、時刻t1にて、連続的に変化する。しかしながら、先頭ビットに対応する目標周波数の変化方向と、第二ビットに対応する目標周波数の変化方向とは、逆方向である。よって、時刻t1にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。すなわち、第一単位周波数信号U1と後行する第二単位周波数信号U2とは、非連続切替状態で切替わる。
【0083】
そこで、駆動信号生成部34は、第一単位周波数信号U1における一定方向すなわち低下方向の周波数変化とは逆方向の周波数上昇方向に、第二単位周波数信号U2における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、「アップチャープ」状の周波数特性を有する第二単位周波数信号U2の全体を高周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0084】
時刻t2にて、第二ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCである。また、時刻t2にて、第三ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCである。よって、目標周波数は、時刻t2にて、連続的に変化する。しかしながら、第二ビットに対応する目標周波数の変化方向と、第三ビットに対応する目標周波数の変化方向とは、逆方向である。よって、時刻t2にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。したがって、第二単位周波数信号U2と後行する第三単位周波数信号U3とは、非連続切替状態で切替わる。
【0085】
そこで、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2における一定方向すなわち上昇方向の周波数変化とは逆方向の周波数低下方向に、第三単位周波数信号U3における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、「ダウンチャープ」状の周波数特性を有する第三単位周波数信号U3の全体を低周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0086】
時刻t3にて、第三ビットに対応する目標周波数は、下限周波数fLである。また、時刻t3にて、第四ビットに対応する目標周波数は、下限周波数fLである。よって、目標周波数は、時刻t3にて、連続的に変化する。しかしながら、第三ビットに対応する目標周波数の変化方向と、第四ビットに対応する目標周波数の変化方向とは、逆方向である。よって、時刻t3にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。したがって、第三単位周波数信号U3と後行する第四単位周波数信号U4とは、非連続切替状態で切替わる。
【0087】
そこで、駆動信号生成部34は、第三単位周波数信号U3における一定方向すなわち低下方向の周波数変化とは逆方向の周波数上昇方向に、第四単位周波数信号U4における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、「アップチャープ」状の周波数特性を有する第四単位周波数信号U4の全体を高周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0088】
図4に示された例においては、送信波は、符号列「-1,1,0,0」により符号化される。この場合、先頭ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。第二ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから上限周波数fHまで線形的に単調上昇する。第三ビットおよび第四ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCにて一定である。
【0089】
これに対応して、基本信号にて、第一単位周波数信号U1は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。また、第二単位周波数信号U2は、下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に単調上昇する。また、第三単位周波数信号U3および第四単位周波数信号U4は、共振周波数fCにて一定である。基本信号は、第一単位周波数信号U1と第二単位周波数信号U2と第三単位周波数信号U3と第四単位周波数信号U4とを、この順に時系列に配列することで形成される。
【0090】
先頭ビットおよび第二ビットにおける、目標周波数の設定状態は、図3に示された例と同様である。よって、駆動信号生成部34は、第一単位周波数信号U1における低下方向の周波数変化とは逆方向の周波数上昇方向に、第二単位周波数信号U2における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、「アップチャープ」状の周波数特性を有する第二単位周波数信号U2の全体を高周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0091】
時刻t2にて、第二ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCである。また、時刻t2にて、第三ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCである。よって、目標周波数は、時刻t2にて、連続的に変化する。しかしながら、第二ビットに対応する目標周波数の変化勾配は0ではない正値であるのに対し、第三ビットに対応する目標周波数の変化勾配は0である。よって、時刻t2にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。したがって、第二単位周波数信号U2と後行する第三単位周波数信号U3とは、非連続切替状態で切替わる。
【0092】
そこで、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2における上昇方向の周波数変化とは逆方向の周波数低下方向に、第三単位周波数信号U3における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、第三単位周波数信号U3における時刻t2-tm間の切替部分の周波数を周波数低下方向に偏移させるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。偏移後の周波数は、時刻t2にて下限周波数fLであり、時刻t2-tm間にて下限周波数fLから「アップチャープ」状に上昇する。時刻t2-tm間の時間間隔は、動作温度等に応じて設定される。
【0093】
時刻t3にて、第三ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCである。また、時刻t3にて、第四ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCである。さらに、時刻t3近傍における、第三単位周波数信号U3の周波数勾配と、第四単位周波数信号U4の周波数勾配とは、ともに0で等しい。したがって、第三単位周波数信号U3と後行する第四単位周波数信号U4とは、連続切替状態で切替わる。
【0094】
このため、駆動信号生成部34は、第四単位周波数信号U4に対しては、周波数を偏移させない。すなわち、送信制御部31は、第四単位周波数信号U4に対する周波数パターンの補正は行わない。
【0095】
図5に示された例においては、送信波は、符号列「-1,1,1,-1」により符号化される。この場合、先頭ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。第二ビットに対応する目標周波数は、下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に単調上昇する。第三ビットに対応する、目標周波数は、共振周波数fCから上限周波数fHまで線形的に単調上昇する。第四ビットに対応する、目標周波数は、上限周波数fHから共振周波数fCまで線形的に単調低下する。
【0096】
これに対応して、基本信号にて、第一単位周波数信号U1は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。また、第二単位周波数信号U2は、下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に単調上昇する。また、第三単位周波数信号U3は、共振周波数fCから上限周波数fHまで線形的に単調上昇する。また、第四単位周波数信号U4は、上限周波数fHから共振周波数fCまで線形的に単調低下する。基本信号は、第一単位周波数信号U1と第二単位周波数信号U2と第三単位周波数信号U3と第四単位周波数信号U4とを、この順に時系列に配列することで形成される。
【0097】
先頭ビットおよび第二ビットにおける、目標周波数の設定状態は、図3および図4に示された例と同様である。よって、駆動信号生成部34は、第一単位周波数信号U1における低下方向の周波数変化とは逆方向の周波数上昇方向に、第二単位周波数信号U2における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、「アップチャープ」状の周波数特性を有する第二単位周波数信号U2の全体を高周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0098】
時刻t2にて、第二ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCである。また、時刻t2にて、第三ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCである。よって、目標周波数は、時刻t2にて、連続的に変化する。さらに、時刻t2近傍における、第二単位周波数信号U2の周波数勾配と、第三単位周波数信号U3の周波数勾配とは、ともに0で等しい。したがって、第二単位周波数信号U2と後行する第三単位周波数信号U3とは、連続切替状態で切替わる。
【0099】
このため、駆動信号生成部34は、第三単位周波数信号U3に対しては、周波数を偏移させない。すなわち、送信制御部31は、第三単位周波数信号U3に対する周波数パターンの補正は行わない。
【0100】
時刻t3にて、第三ビットに対応する目標周波数は、上限周波数fHである。また、時刻t3にて、第四ビットに対応する目標周波数は、上限周波数fHである。よって、目標周波数は、時刻t3にて、連続的に変化する。しかしながら、第三ビットに対応する目標周波数の変化方向と、第四ビットに対応する目標周波数の変化方向とは、逆方向である。よって、時刻t3にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。したがって、第三単位周波数信号U3と後行する第四単位周波数信号U4とは、非連続切替状態で切替わる。
【0101】
そこで、駆動信号生成部34は、第三単位周波数信号U3における上昇方向の周波数変化とは逆方向の周波数低下方向に、第四単位周波数信号U4における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、「ダウンチャープ」状の周波数特性を有する第四単位周波数信号U4の全体を低周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0102】
(具体例2)
図6図8は、図3図5に示された例における駆動周波数波形を、図2Aおよび図2Bに示された例と同様の波形に変更したものである。なお、図6図3に対応し、図7図4に対応し、図8図5に対応する。また、図6図8にて下側に示された駆動周波数fDのタイムチャート上にて、送信周波数fTの目標値に対応する波形が破線で示されている。
【0103】
図6に示された例においては、送信波は、符号列「-1,1,-1,1」により符号化される。この場合の、目標周波数は、図3に示された例と同様である。図6図8に示された例においては、駆動信号生成部34は、CW波状の駆動周波数をステップ状に変化させることで、送信周波数が「アップチャープ」状に変化するような送信波を生成させる。同様に、駆動信号生成部34は、CW波状の駆動周波数をステップ状に変化させることで、送信周波数が「ダウンチャープ」状に変化するような送信波を生成させる。
【0104】
具体的には、図6に示されたように、基本信号にて、第一単位周波数信号U1および第三単位周波数信号U3は、下限周波数fLにて一定である。一方、第二単位周波数信号U2および第四単位周波数信号U4は、共振周波数fCにて一定である。基本信号は、第一単位周波数信号U1と第二単位周波数信号U2と第三単位周波数信号U3と第四単位周波数信号U4とを、この順に時系列に配列することで形成される。
【0105】
すなわち、先頭ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。第二ビットに対応する目標周波数は、下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に単調上昇する。これに対応して、基本信号にて、第一単位周波数信号U1は、下限周波数fLにて一定に設定される。また、第二単位周波数信号U2は、共振周波数fCにて一定に設定される。
【0106】
図3に示された例と同様に、時刻t1にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。すなわち、第一単位周波数信号U1と後行する第二単位周波数信号U2とは、非連続切替状態で切替わる。
【0107】
そこで、駆動信号生成部34は、第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への周波数変化と同一方向の周波数上昇方向に、第二単位周波数信号U2における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、第二単位周波数信号U2の全体を高周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0108】
第二ビットに対応する目標周波数は、下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に単調上昇する。第三ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。これに対応して、基本信号にて、第二単位周波数信号U2は、共振周波数fCにて一定に設定される。また、第三単位周波数信号U3は、下限周波数fLにて一定に設定される。
【0109】
図3に示された例と同様に、時刻t2にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。したがって、第二単位周波数信号U2と後行する第三単位周波数信号U3とは、非連続切替状態で切替わる。
【0110】
そこで、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2から第三単位周波数信号U3への周波数変化と同一方向の周波数低下方向に、第二単位周波数信号U2における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、第三単位周波数信号U3の全体を低周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0111】
第三ビットに対応する目標周波数は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。第四ビットに対応する目標周波数は、下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に単調上昇する。これに対応して、基本信号にて、第三単位周波数信号U3は、下限周波数fLにて一定に設定される。また、第四単位周波数信号U4は、共振周波数fCにて一定に設定される。
【0112】
図3に示された例と同様に、時刻t3にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。したがって、第三単位周波数信号U3と後行する第四単位周波数信号U4とは、非連続切替状態で切替わる。
【0113】
そこで、駆動信号生成部34は、第三単位周波数信号U3から第四単位周波数信号U4への周波数変化と同一方向の周波数上昇方向に、第四単位周波数信号U4における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、第四単位周波数信号U4の全体を高周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0114】
図7に示された例においては、送信波は、符号列「-1,1,0,0」により符号化される。この場合の、目標周波数は、図4に示された例と同様である。
【0115】
図7に示されたように、基本信号にて、第一単位周波数信号U1は、下限周波数fLにて一定である。一方、第二単位周波数信号U2は、共振周波数fCにて一定である。また、第三単位周波数信号U3および第四単位周波数信号U4は、共振周波数fCにて一定である。基本信号は、第一単位周波数信号U1と第二単位周波数信号U2と第三単位周波数信号U3と第四単位周波数信号U4とを、この順に時系列に配列することで形成される。
【0116】
図4に示された例と同様に、時刻t1にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。すなわち、第一単位周波数信号U1と後行する第二単位周波数信号U2とは、非連続切替状態で切替わる。
【0117】
そこで、駆動信号生成部34は、第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への周波数変化と同一方向の周波数上昇方向に、第二単位周波数信号U2における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、第二単位周波数信号U2の全体を高周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0118】
図4に示された例と同様に、時刻t2にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。したがって、第二単位周波数信号U2と後行する第三単位周波数信号U3とは、非連続切替状態で切替わる。
【0119】
そこで、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2から第三単位周波数信号U3への周波数変化と同一方向の周波数低下方向に、第三単位周波数信号U3における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、第三単位周波数信号U3の全体を低周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0120】
図4に示された例と同様に、時刻t3にて、目標周波数は、同一勾配にて連続的に変化する。したがって、第三単位周波数信号U3と後行する第四単位周波数信号U4とは、連続切替状態で切替わる。このため、駆動信号生成部34は、第四単位周波数信号U4に対しては、周波数を偏移させない。すなわち、送信制御部31は、第四単位周波数信号U4に対する周波数パターンの補正は行わない。
【0121】
図8に示された例においては、送信波は、符号列「-1,1,1,-1」により符号化される。この場合の、目標周波数は、図5に示された例と同様である。
【0122】
図8に示されたように、基本信号にて、第一単位周波数信号U1は、下限周波数fLにて一定である。また、第二単位周波数信号U2は、共振周波数fCにて一定である。また、第三単位周波数信号U3は、上限周波数fHにて一定である。また、第四単位周波数信号U4は、共振周波数fCにて一定である。基本信号は、第一単位周波数信号U1と第二単位周波数信号U2と第三単位周波数信号U3と第四単位周波数信号U4とを、この順に時系列に配列することで形成される。
【0123】
図5に示された例と同様に、時刻t1にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。したがって、第一単位周波数信号U1と後行する第二単位周波数信号U2とは、非連続切替状態で切替わる。
【0124】
そこで、駆動信号生成部34は、第一単位周波数信号U1から第二単位周波数信号U2への周波数変化と同一方向の周波数上昇方向に、第二単位周波数信号U2における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、第二単位周波数信号U2の全体を高周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0125】
図5に示された例と同様に、時刻t2にて、目標周波数は、同一勾配にて連続的に変化する。したがって、第二単位周波数信号U2と後行する第三単位周波数信号U3とは、連続切替状態で切替わる。このため、駆動信号生成部34は、第三単位周波数信号U3に対しては、周波数を偏移させない。すなわち、送信制御部31は、第三単位周波数信号U3に対する周波数パターンの補正は行わない。
【0126】
図5に示された例と同様に、時刻t3にて、目標周波数は、「折れ線」状に変化する。したがって、第三単位周波数信号U3と後行する第四単位周波数信号U4とは、非連続切替状態で切替わる。
【0127】
そこで、駆動信号生成部34は、第三単位周波数信号U3から第四単位周波数信号U4への周波数変化と同一方向の周波数低下方向に、第四単位周波数信号U4における少なくとも切替部分の周波数を偏移させる。具体的には、送信制御部31は、第四単位周波数信号U4の全体を低周波数側にオフセットさせるような波形補正情報を、駆動信号生成部34に出力する。
【0128】
上記のように、図6図8に示された例においては、駆動周波数波形が、ステップ状に変化する矩形波状に設定される。これにより、共振型の送受信器2における所望の送信周波数変化を可及的に短時間で実現することができ、以て1ビットあたりの信号長を可及的に短くすることが可能となる。
【0129】
(具体例3)
図9は、図3に示された例における周波数偏移態様を変更したものである。図9に示された例は、単位周波数信号のうち、切替部分以外の部分の周波数を偏移させない一方で、切替部分の周波数を偏移させる。
【0130】
すなわち、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2における切替部分以外の部分の周波数を偏移させない一方で、切替部分の周波数を偏移させる。切替部分は、時刻t1-tm1間の部分である。一方、切替部分以外の部分は、時刻tm1-t2間の部分である。
【0131】
同様に、駆動信号生成部34は、第三単位周波数信号U3における時刻t2-tm2間の切替部分の周波数を偏移させる一方で、切替部分以外の部分の周波数を偏移させない。また、駆動信号生成部34は、第四単位周波数信号U4における時刻t3-tm3間の切替部分の周波数を偏移させる一方で、切替部分以外の部分の周波数を偏移させない。
【0132】
かかる構成および方法においても、時系列的に隣接する2つの符号の切替えが、迅速且つ良好に行われ得る。このため、受信信号の特徴を大きくすることができる。また、1ビットあたりの信号長を可及的に短くすることで、単位時間あたりのビット数を大きくすることができ、以て、設定可能な符号パターンのバリエーションを増やすことが可能となる。したがって、識別精度を従来よりも向上することが可能となる。
【0133】
(具体例4)
図10は、図4に示された例における周波数偏移態様を変更したものである。図4に示された例では、偏移後の周波数パターンが、時間経過とともに線形的に単調上昇する「アップチャープ」状となるように設定されている。これに対し、図10に示された例では、偏移後の周波数パターンが、時間的な周波数変化の無い固定周波数信号に設定される。
【0134】
すなわち、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2における時刻t1-tm1間の部分の、偏移後の周波数を、時間的な周波数変化の無い固定周波数に設定する。同様に、駆動信号生成部34は、第三単位周波数信号U3における時刻t2-tm2間の部分の、偏移後の周波数を、時間的な周波数変化の無い固定周波数に設定する。これにより、共振型の送受信器2における所望の送信周波数変化を可及的に短時間で実現することができ、以て1ビットあたりの信号長を可及的に短くすることが可能となる。
【0135】
(具体例5)
図11は、図9に示された例における周波数偏移態様を変更したものである。図11に示された例においては、周波数が偏移される切替部分の継続時間が、偏移後の周波数と共振周波数fCとの差が大きくなる程長く設定される。すなわち、駆動信号生成部34は、第二単位周波数信号U2における時刻t1-tm1間の部分にて、偏移後の周波数と共振周波数fCとの差が大きくなる程継続時間「tm1-t1」が長くなるように、切替部分の継続時間「tm1-t1」を設定する。共振周波数fCは、基本信号の周波数帯域fC~fHにおける中心周波数に相当する。
【0136】
具体的には、図11を参照すると、第二単位周波数信号U2における時刻t1-tm1間の部分の、偏移後の周波数よりも、第三単位周波数信号U3における時刻t2-tm2間の部分の、偏移後の周波数の方が、共振周波数fCとの差が大きくなる。よって、第三単位周波数信号U3における切替部分の継続時間「tm2-t2」の方が、第二単位周波数信号U2における切替部分の継続時間「tm1-t1」よりも長く設定される。これにより、共振型の送受信器2における所望の送信周波数変化を可及的に短時間で実現することができ、以て1ビットあたりの信号長を可及的に短くすることが可能となる。
【0137】
(具体例6)
図6図11に示されているように、駆動信号生成部34は、偏移後の周波数を、共振周波数fCとは異なる周波数に設定することが好適である。これにより、共振型の送受信器2における所望の送信周波数変化を可及的に短時間で実現することができ、以て1ビットあたりの信号長を可及的に短くすることが可能となる。
【0138】
具体的には、例えば、図11に示された例において、目標周波数は、時刻t0-t1間にて共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に低下し、時刻t1-t2間にて下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に上昇する。時刻t1の前後において、目標周波数は、共振周波数fCから離れた下限周波数fLにて、低下から上昇に転じる。
【0139】
上記の通り、共振型の送受信器2においては、駆動周波数の切替えに対する追従性が悪い。よって、共振周波数fCから離れた周波数から共振周波数fCに向かって送信周波数を変化させようとする場合、目標値を単に共振周波数fCに向かわせるだけでは、充分な追従性が得られ難い。そこで、この場合、実際の駆動周波数を、基本信号における既定値よりも、周波数を変化させたい方向に過剰に偏移させる必要がある。
【0140】
そこで、駆動信号生成部34は、時刻t1-tm1間にて、駆動周波数を、偏移前の基本信号における共振周波数fCよりも低周波数側の既定値から、共振周波数fCよりも高周波数側に偏移させる。すなわち、送信制御部31は、偏移後の周波数が偏移前の周波数に対して共振周波数fCを挟んだ「反対側」となるような、波形補正情報を出力する。
【0141】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0142】
物体検知装置1が搭載される車両Vは、自動車に限定されない。また、物体検知装置1は、車両Vに搭載される車載構成に限定されない。よって、具体的には、例えば、物体検知装置1は、船舶あるいは飛行体にも搭載され得る。
【0143】
物体検知装置1は、図1に示されたような、送受信器2および駆動装置3をそれぞれ一個ずつ備えた構成に限定されない。すなわち、物体検知装置1は、送受信器2を複数個備えていてもよい。この場合、駆動装置3は、複数の送受信器2の駆動制御を行うように構成されていてもよい。あるいは、送受信器2と駆動装置3とは、一対一の関係で設けられてもよい。
【0144】
物体検知装置1は、送受信一体型の構成に限定されない。すなわち、物体検知装置1は、単一のトランスデューサ21によって超音波を送受信可能な構成に限定されない。よって、例えば、送信回路22に電気接続された送信用のトランスデューサ21と、受信回路23に電気接続された受信用のトランスデューサ21とが、並列に設けられていてもよい。換言すれば、送信部20Aと受信部20Bとは、それぞれ、トランスデューサ21を1個ずつ備えていてもよい。この場合、送信部20Aと受信部20Bとは、それぞれ、別々のセンサ筐体により支持されていてもよい。
【0145】
複数個のトランスデューサ21を用いた三角測量により、物体Bの自車両に対する二次元位置を検知する場合があり得る。この場合、例えば、自車両に搭載された複数個のトランスデューサ21の各々から、同一の周波数特性すなわち符号配列を有する送信波が発信され得る。このとき、「正規波」は、自車両から送信した送信波の反射波を自車両にて受信した場合の受信波となる。これに対し、「非正規波」は、他車両から送信した送信波の反射波を自車両にて受信した場合の受信波となる。これにより、複数車両間の混信による影響が、良好に抑制され得る。
【0146】
本発明によれば、1ビットあたりの時間を短くすることができ、従来よりも多くの符号パターンを送信することが可能となる。このため、例えば、自車両に搭載された複数個のトランスデューサ21に対して、各々に異なる符号パターンを割り当てることができる。すると、自車両に搭載された複数個のトランスデューサ21の各々から、異なる周波数特性すなわち符号配列を有する送信波が発信され得る。これにより、直接波と間接波との峻別が容易化され、以て多重反射等の影響による誤認識が良好に抑制され得る。
【0147】
送信回路22、受信回路23、等の各部の構成も、上記実施形態にて示された具体例に限定されない。すなわち、例えば、デジタル/アナログ変換回路は、送信回路22に代えて、駆動信号生成部34に設けられていてもよい。すなわち、駆動信号は、トランスデューサ21に対する素子入力信号そのものであってもよい。
【0148】
駆動装置3のうちの全部または一部は、超音波センサにおける送受信器2を支持する不図示のセンサ筐体の外部に設けられ得る。すなわち、例えば、駆動装置3のうちの全部または一部は、超音波センサと電気接続された、いわゆるソナーECUに設けられ得る。ECUはElectronic Control Unitの略である。
【0149】
符号列は、変更可能であってもよいし、変更不能であってもよい。すなわち、例えば、送信制御部31は、物体検知部42が混信を検知した場合に、送信波に付与する符号列を変更するように構成されていてもよい。具体的には、例えば、送信制御部31は、物体検知部42が混信を検知した場合に、現在送信符号列として選択中の符号列とは異なる符号列を新たな送信符号列として選択するようになっていてもよい。あるいは、送信制御部31は、乱数等を用いて、物体検知装置1の起動毎に符号生成部32に符号列を生成させてもよい。
【0150】
あるいは、駆動信号生成部34は、一個の送受信器2に対して一種類の駆動信号SDのみを出力するように構成されていてもよい。この場合、具体的には、例えば、自車両に搭載された物体検知装置1における駆動信号生成部34は、「110」という3ビット符号に対応する駆動信号SDのみを出力する。また、ある一台の他車両に搭載された物体検知装置1における駆動信号生成部34は、「100」という3ビット符号に対応する駆動信号SDのみを出力する。さらに、他の一台の他車両に搭載された物体検知装置1における駆動信号生成部34は、「111」という3ビット符号に対応する駆動信号SDのみを出力する。この場合、符号生成部32は省略され得る。
【0151】
送受信器2が複数個設けられる場合、複数個の送受信器2の各々に対して、異なる符号配列の駆動信号SDを入力するように、駆動信号生成部34が構成され得る。具体的には、例えば、送受信器2が二個設けられている場合、一方には「110」という3ビット符号に対応する駆動信号SDが入力され、他方には「100」という3ビット符号に対応する駆動信号SDが入力され得る。
【0152】
fCは、上限周波数fHと下限周波数fLとの間の送受信周波数帯域における中心周波数であってもよい。この場合の中心周波数は、送受信器2の共振周波数とは異なる周波数であってもよい。
【0153】
符号列およびこれに対応する周波数特性は、上記の各具体例に限定されない。図12図17は、4ビットの符号を有する符号列の別例を示す。
【0154】
図12は、図3に示された符号列「-1,1,-1,1」を反転した、符号列「1,-1,1,-1」を示す。図13は、図5に示された符号列「-1,1,1,-1」を反転した、符号列「1,-1,-1,1」を示す。図14は、符号列「1,-1,0,1」を示す。
【0155】
CW信号に対応する符号「0」の場合の所定周波数は、共振周波数fCに限定されない。すなわち、例えば、図15に示された符号列「1,0,-1,0」における先頭ビット「1」に対応する第一単位周波数信号U1は、共振周波数fCから上限周波数fHまで線形的に単調上昇する。そこで、第二ビットの符号「0」に対応する第二単位周波数信号U2は、その前の第一単位周波数信号U1における終了時点の周波数と連続するように、上限周波数fHにて一定に設定される。
【0156】
一方、第三ビット「-1」に対応する第三単位周波数信号U3は、上限周波数fHから共振周波数fCまで線形的に単調低下する。そこで、第四ビットの符号「0」に対応する第四単位周波数信号U4は、その前の第三単位周波数信号U3における終了時点の周波数と連続するように、共振周波数fCにて一定に設定される。
【0157】
同様に、図16に示された符号列「-1,0,1,0」における先頭ビット「1」に対応する第一単位周波数信号U1は、共振周波数fCから下限周波数fLまで線形的に単調低下する。そこで、第二ビットの符号「0」に対応する第二単位周波数信号U2は、その前の第一単位周波数信号U1における終了時点の周波数と連続するように、下限周波数fLにて一定に設定される。
【0158】
一方、第三ビット「1」に対応する第三単位周波数信号U3は、下限周波数fLから共振周波数fCまで線形的に単調上昇する。そこで、第四ビットの符号「0」に対応する第四単位周波数信号U4は、その前の第三単位周波数信号U3における終了時点の周波数と連続するように、共振周波数fCにて一定に設定される。
【0159】
先頭ビットの開始周波数は、共振周波数fCに限定されない。すなわち、例えば、図17に示されているように、先頭ビットの開始周波数は、下限周波数fLであってもよい。あるいは、先頭ビットの開始周波数は、上限周波数fHであってもよい。あるいは、先頭ビットの開始周波数は、上限周波数fHとも共振周波数fCとも下限周波数fLとも異なる周波数であってもよい。
【0160】
図3図17に示されたように、好適な例においては、先頭ビットは、「0」すなわちCW波ではない、何らかの周波数変調を有している。これにより、識別性が向上する。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、先頭ビットは、「0」すなわちCW波であってもよい。
【0161】
上記実施形態においては、「-1」,「0」,および「1」という3種類の符号による符号化の例を示した。しかしながら、本発明は、かかる符号化態様に限定されない。すなわち、例えば、「-1」,「0」,および「1」に代えて、「10」,「11」,および「01」が用いられ得る。符号「-1」は符号「10」に対応する。符号「0」は符号「11」に対応する。符号「1」は符号「01」に対応する。
【0162】
上記の各具体例において、駆動装置3は、目標周波数を、直線的に変化させていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、駆動装置3は、目標周波数を、曲線的に変化させてもよい。あるいは、駆動装置3は、目標周波数を、ステップ状に変化させてもよい。
【0163】
図18は、ソナーにおける理想的なFSK信号の一例を示す。FSKはFrequency Shift Keyingの略である。図19は、図18に対応する実際のFSK信号の一例を示す。図18および図19において、tdはビット判定時刻を示し、Tbはビット判定周期を示す。C1、C2、C3、およびC4は、それぞれ、先頭ビット、第二ビット、第三ビット、および第四ビットを示す。
【0164】
上記の通り、ソナーは共振型であるため、周波数は急には切り替わらない。このため、図18および図19に示されたように、ソナーにおけるFSK信号は、周波数の切替え時に、周波数の傾きすなわちスルーレートが発生する。このスルーレートの絶対値の最大値は、トランスデューサ21および送受信回路の特性に因る。また、ビット判定周波数である上限周波数fHおよび下限周波数fLにおける先頭部分にてオーバーシュートが発生する。このため、ソナー特性のスルーレートとオーバーシュートを加味したビット長を設定する必要がある。
【0165】
FSKにおいて、スルーレートを上げることと、ビット判定点にて、fHおよびfL周波数範囲内周波数を変化させないことを両立させることが重要である。すなわち、スルーレートを大きくしつつ、ビット判定周波数である上限周波数fHおよび下限周波数fLにおける一定周波数状態を迅速に形成することで、信号長を短くすることが可能となる。したがって、本発明は、FSKに対しても良好に適用され得る。この場合の「目標周波数」は、図18に示された、理想的なFSK信号における波形を示す周波数信号である。なお、ビット判定周波数は、上限周波数fHおよび下限周波数fLに限定されない。すなわち、ビット判定周波数は、上記の送受信周波数帯域内にあればよい。
【0166】
周波数への変換はFFTに限定されるものではなく、もちろんDFTでもよいし、その実装方法として周波数毎のBPFを複数用意して周波数を検出してもよい。DFTはDiscrete Fourier Transformの略である。BPFはBand-pass Filterの略である。また、交流の受信信号と閾値とのゼロクロス時間の間隔から周波数を測定してもよい。
【0167】
1つの符号列に対応する送信処理中にて、周波数偏移処理を実行すべき周波数切替箇所が複数存在する場合、そのすべてで周波数偏移処理が実行されなくてよい。すなわち、1つの符号列に対応する送信処理中にて、周波数偏移処理が少なくとも1回実行されれば、その態様が本発明に含まれることは、いうまでもない。
【0168】
上記の各機能構成および方法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0169】
具体的には、駆動装置3は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを備えた構成に限定されない。すなわち、駆動装置3の全部または一部は、上記のような機能を実現可能に構成されたデジタル回路、例えばゲートアレイ等のASICあるいはFPGAを備えた構成であってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。
【0170】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶されていてもよい。すなわち、本発明に係る装置あるいは方法は、上記の各機能あるいは方法を実現するための手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
【0171】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0172】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。更に、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0173】
1 物体検知装置
2 送受信器
20A 送信部
20B 受信部
21 トランスデューサ
3 駆動装置
31 送信制御部
33 基本信号生成部
34 駆動信号生成部
4 判定装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19