(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】光吸収構造体及び光吸収構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20221206BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2019146466
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2021-02-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名 IOP Publishing Ltd 刊行物名 Nanotechnology vol.30(2019)p.p.335705-335712 発行年月日 令和1年5月24日 集会名 META19,the 10th International Conference on Metamaterials,Photonic Crystals and Plasmonics 開催日 令和1年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢次 健一
(72)【発明者】
【氏名】西川 和孝
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-048367(JP,A)
【文献】特開2007-057427(JP,A)
【文献】特開2011-184522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0272537(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0176650(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107582(US,A1)
【文献】NISHIKAWA, Kazutaka and YATSUGI, Kenichi,Black vanadium moth-eye structure fabricated by oblique deposition for solar light absorption,Applied Physics Express,日本,The Japan Society of Applied Physics,2019年03月27日,vol. 12,045006-1~045006-4,https://doi.org/10.7567/1882-0786/ab0da0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に形成された窒化チタン膜と、
前記窒化チタン膜上に形成された複数の窒化チタンの柱状部と
、を備え
、
前記柱状部は、高さが200nm以上1000nm以下の範囲であり、面積比による密度が40%以上95%以下の範囲であり、直径が5nm以上200nm以下の範囲である、光吸収構造体。
【請求項2】
波長200nm以上1500nmの波長範囲において平均吸収率が80%以上を示す、請求項
1に記載の光吸収構造体。
【請求項3】
波長4μm以上10μm以下の波長範囲において平均熱放射率が35%以下を示す、請求項1
又は2に記載の光吸収構造体。
【請求項4】
前記基材は、ガラス、高分子及び金属のうち1以上からなる、請求項1~
3のいずれか1項に記載の光吸収構造体。
【請求項5】
窒化チタン膜が形成された基材を固定したホルダを傾斜した状態で回転させ、前記窒化
チタン膜の表面にチタンを付着させて柱状部を形成する形成工程と、
前記チタンの柱状部をアンモニア中で600℃以上900℃以下の範囲で熱処理し窒化チタンの柱状部とする窒化処理工程と、
を含む光吸収構造体の製造方法。
【請求項6】
前記形成工程では、チタンを含む原料に対して60°以上90°未満の角度で前記基材を傾けて前記ホルダを回転する、請求項
5に記載の光吸収構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、光吸収構造体及び光吸収構造体の製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光を吸収する構造体としては、例えば、0.5~2μmの範囲の格子周期を有するワッフル状アレイで配置されたほぼ立方体形状のマイクロキャビティを含むスペクトル選択性メタマテリアル改善表面特徴部を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構造体では、600℃を上回る動作温度において太陽エネルギーの高い吸収率を有するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の構造体では、周期0.5~2μmの非常に小さな周期で作製する必要があるため、リソグラフィー技術が必要となり、構造の大面積化が難しいという問題があった。また、上記の構造体では、可視光の太陽光スペクトルの強い波長範囲において、吸収スペクトルは80%程度であり、更なる吸収率の向上が求められていた。更に、例えば、4μm以上の長波長領域の熱反射率は考慮されていなかった。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、可視光領域でより高い吸収特性を示し、長波長領域でより低い熱放射特性を示す光吸収構造体及び光吸収構造体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、窒化チタンの柱状部を形成すると、光吸収構造体が可視光領域でより高い吸収特性を示し、長波長領域でより低い熱放射特性を示すことを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する光吸収構造体は、
基材と、
前記基材に形成された窒化チタン膜と、
前記窒化チタン膜上に形成された複数の窒化チタンの柱状部と、
を備えたものである。
【0008】
本明細書で開示する光吸収構造体の製造方法は、
窒化チタン膜が形成された基材を固定したホルダを傾斜した状態で回転させ、前記窒化チタン膜の表面にチタンを付着させ柱状部を形成する形成工程と、
前記チタンの柱状部をアンモニア中で600℃以上900℃以下の範囲で熱処理し窒化チタンの柱状部とする窒化処理工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、可視光領域において、より広い波長範囲でより高い吸収特性を示し、長波長領域において、より低い熱放射特性を示す光吸収構造体及び光吸収構造体の製造方法を提供することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。例えば、窒化チタンは紫外光から近赤外光において反射率が比較的小さく、赤外光領域において反射率が大きな材料であり、このような光学特性を持つ窒化チタンを薄膜上に形成したナノピラー構造にすることによって、赤外光領域では低い熱放射率を持ちながら,紫外光から近赤外光においてより光吸収率を向上させた吸収材となるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】光吸収構造体製造装置30の一例を示す説明図。
【
図4】実験例1の光吸収構造体の光吸収率及び熱放射率の測定結果。
【
図5】実験例1~6の柱状部高さLと光吸収及び熱放射との関係図。
【
図6】実験例1、7~10の柱状部密度と光吸収及び熱放射との関係図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(光吸収構造体)
本開示の光吸収構造体は、基材と、基材に形成された窒化チタン膜と、窒化チタン膜上に形成された複数の窒化チタンの柱状部と、を備えたものである。基材は、窒化チタン膜を支持する部材であり、化学的安定性と機械的強度とを有するものであれば特に限定されず、例えば、ガラス、高分子及び金属のうち1以上からなるものとしてもよい。ガラスとしては、例えば石英ガラスやホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。高分子としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどが挙げられる。金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウムなどが挙げられる。また、基材は、窒化チタンで形成されるものとしてもよい。基材の厚さは、例えば、表面積の大きさや柱状部の数に合わせて選択されればよいが、10μm以上としてもよいし1cm以下の範囲としてもよい。
【0012】
窒化チタン膜は、基材に密接して柱状部を支持するものである。窒化チタン膜は、柱状体と同じ材質である。この窒化チタン膜は、完全な簿膜である必要はなく、一部にTiや酸化チタンを含むものとしてもよい。この窒化チタン膜の厚さTは、例えば、50nm以上であるものとしてもよいし、100nm以上であるものとしてもよいし、200nm以上であるものとしてもよい。また、厚さTは、500μm以下であるものとしてもよい。厚さTは、厚いほどより強固になる。この窒化チタン膜は、用いる用途により適宜選択されればよいが、その表面積が4cm2以上であるものとしてもよいし、400cm2以下の範囲としてもよい。
【0013】
柱状部は、光吸収特性をより高める部材であり、窒化チタンにより構成されている。柱状部は、高さLが200nm以上1000nm以下の範囲であることが好ましい。高さLが200nm以上では、柱状部の効果を十分発揮することができ、1000nm以下では、作製がより容易であり、構造体の強度を確保することができる。また、柱状部は、直径Dが5nm以上200nm以下の範囲であることが好ましい。この直径Dは、10nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることが更に好ましい。また、直径Dは、100nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることが更に好ましい。また、柱状部は、密度高く形成されているものとしてもよい。例えば、柱状部は、隣との間隔が50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。この柱状部は、隣と一体とならない程度の間隔があることが好ましく、その間隔は、1nm以上としてもよいし、2nm以上としてもよい。
【0014】
柱状部は、面積比による密度が40%以上95%以下の範囲であることが好ましい。密度はより高い方が好ましく、40%以上では、波長200nm以上1500nmの波長範囲の光吸収率をより高めることができる。また、この密度が95%以下では、柱状になるための空間を十分確保することができる。この密度は、50%以上としてもよい。また、この密度は、80%以下がより好ましく、60%以下としてもよい。柱状部の面積比による密度(%)は、真上から観察したSEM画像を用いて、窒化チタン膜の領域と柱状部の領域とを二値化して分離し、その面積比から求めるものとする。この柱状部は、水平方向の断面が矩形であるものとしてもよいし、円形状であるものとしてもよい。また、この柱状部は、側面が、断面視あるいは投影視したときに直線で構成されているものとしてもよいし、所定高さごとに傾きが変化する直線又は曲線で構成されているものとしてもよい。
【0015】
この光吸収構造体は、波長200nm以上1500nmの波長範囲において吸収率80%以上を示すものとしてもよい。即ち、波長200nm以上1500nmの波長の全範囲において吸収率80%以上を示すものとしてもよい。吸収率は、より高いことが好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。また、波長200nm以上1500nmの波長範囲における平均吸収率が80%以上を示すものとしてもよく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。また、この光吸収構造体は、波長4μm以上10μmの波長範囲において熱放射率が35%以下を示すことが好ましい。即ち、波長4μm以上10μmの波長の全範囲において熱放射率35%以下を示すものとしてもよい。熱放射率は、より低いことが好ましく、30%以下がより好ましく、25%以下が更に好ましい。また、波長4μm以上10μmの波長範囲における平均熱放射率が35%以下を示すものとしてもよく、30%以下がより好ましく、25%以下が更に好ましい。窒化チタンにより形成された上記柱状部の構造を有した光吸収構造体では、このような光吸収率や熱放射率を実現することができる。
【0016】
図1は、光吸収構造体20の一例を示す説明図である。
図1に示すように、光吸収構造体20は、基材21と、窒化チタン膜22と、柱状部23とを備えている。柱状部23は、先端が平面であり、円柱状の形状を有する。なお、柱状部23の先端は、曲面により構成されているものとしてもよい。光吸収構造体20では、より高い光吸収特性を有するものとすることができる。
【0017】
(光吸収構造体の製造方法)
本開示の製造方法は、形成工程と、窒化処理工程とを含む。形成工程では、窒化チタン膜が形成された基材を固定したホルダを傾斜した状態で回転させ、窒化チタン膜の表面にチタンを付着させて柱状部を形成する処理を行う。この形成工程では、上記光吸収構造体で説明した構造となるように、材質や大きさなどを適宜選択して行うことができる。窒化チタン膜が形成されていない基材を用いる場合、柱状部の形成の前に、基材の表面へ窒化チタン膜を形成する処理を行うものとしてもよい。基材上への窒化チタン膜の形成は、例えば、スパッタ製膜や、電子ビーム(EB)蒸着、CVD法などの手法により行うことができる。また、窒化チタン膜が形成された基材を用いる場合、そのまま柱状部を窒化チタン膜上に形成すればよい。柱状部の形成は、例えば、EB蒸着や、スパッタ成膜、CVD法などの手法により行うことができる。このうち、EB蒸着がより好ましい。ホルダの傾斜は、例えば、ホルダの中心軸に対する、基材の中心と原料の基材に近い端部とを接続した線がなす角度θとして表すことができる(
図2参照)。この角度θは、60°以上90°未満の範囲のいずれかとすることができ、68°以上88°以下の範囲としてもよい。
図3は、ピラー形状の柱状部23を有する光吸収構造体20を製造する光吸収構造体製造装置30の一例を示す説明図である。この構造体製造装置30は、基材21を固定するホルダ31と、チタンを含む原料32を収容する収容部33と、これらを収容するチャンバ34と、原料32を飛翔させる図示しない形成部とを備えている。EB蒸着を行う場合、形成部は電子銃とすればよい。
【0018】
窒化処理工程では、チタンの柱状部をアンモニア中で600℃以上900℃以下の範囲で熱処理し、窒化チタンの柱状部とする処理を行う。アンモニア雰囲気での熱処理は、700℃以上で行うものとしてもよいし、800℃以上で行うものとしてもよい。またこの熱処理は、850℃以下の温度範囲で熱処理することが好ましい。この熱処理温度をより高くすると、柱状部の窒化処理をより確実に実行することができる。また、この熱処理温度をより低くすると、エネルギー消費量をより低減することができる。
【0019】
以上詳述した光吸収構造体及び光吸収構造体の製造方法では、可視光領域においてより広い波長範囲でより高い吸収特性を示し、長波長領域でより低い熱放射特性を示すことができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。例えば、窒化チタンは紫外光から近赤外光において反射率が比較的小さく、赤外光領域において反射率が大きな材料であり、このような光学特性を持つ窒化チタンを薄膜上に形成したナノピラー構造にすることによって、赤外光領域では低い熱放射率を持ちながら,紫外光から近赤外光においてより光吸収率を向上させた吸収材となるものと推察される。また、窒化チタンは融点が2900℃と非常に高いため,この光吸収構造体は、太陽光の吸収による高温にも耐えることができる。更に、この製造方法では、チタンの柱状部を形成したのちに窒化処理して窒化チタンの柱状部を形成するため、最初から窒化チタンの柱状部を形成するものに比して、より簡単且つより確実に窒化チタンの柱状部を形成することができる。
【0020】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0021】
以下には、本明細書で開示する光吸収構造体を具体的に作製した例を実験例として説明する。実験例1~10が実施例に相当する。
【0022】
(実験例1の光吸収構造体の作製)
シリコン基板を基材として用い、この基材上にスパッタによって窒化チタン膜を100nm成膜した。スパッタ条件は、ターゲットをTi、スパッタガスを5.9体積%の窒素を含むArガス、ガス圧を0.3Pa、電力500W、スパッタ時間を13分50秒とした。次に、
図2に示す構造体製造装置を用い、窒化チタン膜を形成した基材を固定したホルダをθ=85.4°に傾けた状態で配置し、このホルダを4.6rpmの速度で自転させながら電子ビーム(EB)蒸着によってTiを窒化チタン膜上に形成した。蒸着装置は、キヤノンアネルバ社製L-45E型を用いた。成膜速度は、0.2nm/secであった。300nmの柱状部が形成された時点で蒸着を終了し、Tiのピラー状の柱状部が密集して形成された構造体を得た。続いて、このTiの柱状体が形成された構造体をアンモニア雰囲気中、800℃、1時間熱処理し、Tiを窒化チタン化し、得られた光吸収構造体を実験例1とした。
【0023】
(SEM観察)
作製した光吸収構造体に対して、走査型電子顕微鏡(SEM,HITACHI社製FE5500)を用いて微細構造の観察を行った。SEM観察は、観察条件として加速電圧10kVで5万倍~10万倍の範囲とした。また、真上から観察したSEM画像を用いて、面積比による柱状部の密度(%)を求めた。柱状部の密度は、SEM画像をImageJで画像処理し、窒化チタン膜の領域と柱状部の領域とを二値化して分離し、その面積比から求めた。
【0024】
(光吸収特性評価)
作製した光吸収構造体に対して、光吸収特性を評価した。測定は、島津製作所製、紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600・ISR-3100により、200nm~10000nmの波長域にて試料を測定することにより、反射率および透過率を測定することで光吸収率及び熱放射率を求めた。
【0025】
(実験例2~10の光吸収構造体)
下記の数式(1)、(2)を用いて太陽光吸収率αと熱放射率εの柱状部高さおよび柱状部の密度依存性を検討した。表1に示す柱状部の高さ(nm)と面積比での柱状部の密度としたものを実験例2~10とした。なお、式中のIsolar(λ)は、太陽光スペクトルであり、IBB(λ)は、黒体輻射スペクトルである。
【0026】
【0027】
(結果と考察)
表1に実験例1~10の柱状部の高さL(nm)柱状部の密度(%)、波長200nm~1500nmでの平均吸収率(%)、波長4μm~10μmでの平均熱放射率(%)をまとめて示した。
図3は、実験例1の光吸収構造体のSEM写真であり、
図3Aが真上からの画像、
図3Bが斜め30°の画像である。
図4は、実験例1の光吸収構造体の光吸収率及び熱放射率の測定結果である。
図5は、実験例1~6の柱状部高さLと光吸収及び熱放射との関係図である。
図6は、実験例1、7~10の柱状部密度と光吸収及び熱放射との関係図である。
図3に示すように、ホルダを傾斜した状態で回転させ、基材に形成された窒化チタン膜の上にTiをEB蒸着させると直径Dが10nmである円柱体が密度高く形成された構造体が得られることがわかった。また、X線回折測定を行ったところ、窒化チタンの回折ピークが確認されたため、アンモニア中の熱処理により、チタンの柱状部が窒化され、窒化チタンの柱状部が得られていることが確認された。また、
図4に示すように、窒化チタンの柱状体を多数形成した構造体は、200nm~1500nmの波長の光吸収率が平均90%を超えており、4μm~10μmの波長の熱放射率が平均35%を下回っており、1500nm以下ではより広い範囲の波長をより高く吸収でき、4μm以上の波長では熱放射をより抑制することができ、光吸収特性が好適であることがわかった。
【0028】
また、
図5に示すように、窒化チタンの柱状部の高さLは、200nm以上1000nm以下の範囲が好適であり、800nm以下がより好適であり、600nm以下が更に好適であった。また、
図6に示すように、窒化チタンの柱状部の面積比での密度は、40%以上95nm以下の範囲が好適であり、80%がより好適であり、60%以下が更に好適であった。なお、実験例1~10では、柱状部の直径Dは、10nm以上100nm以下の範囲であった。
【0029】
【0030】
このように、窒化チタンの柱状部を形成すると、基材を傾けて回転して移動させるという簡単な工程によって、反射率の低減や吸収率の増加、熱放射率の低減など、特性をより高めた光吸収構造体を得ることができることがわかった。
【0031】
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本明細書で開示する光吸収構造体及び光吸収構造体の製造方法は、太陽光など光を吸収する技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
20 光吸収構造体、21 基材、22 窒化チタン膜、23 柱状部、30 構造体製造装置、31 ホルダ、32 原料、33 収容部。