(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】歯車ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 15/00 20060101AFI20221206BHJP
F04C 2/10 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F04C15/00 D
F04C15/00 E
F04C2/10 341Z
(21)【出願番号】P 2019177954
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 光浩
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信弥
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-063386(JP,U)
【文献】特開2018-184956(JP,A)
【文献】特開2013-204646(JP,A)
【文献】特開2017-066975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/08- 2/28
F04C 11/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外歯を有するインナロータと、
前記インナロータを偏心状態で回転可能に収容する筒状のインナ収容部と、前記外歯に噛合する内歯と、を有するアウタロータと、
前記インナロータ及び前記アウタロータを収容する筒状のロータ収容部と、前記ロータ収容部の筒壁から径方向外方へ突出するフランジ部と、を有する第1コアと、
前記フランジ部に軸方向で当接する当接部を有し、前記ロータ収容部の開口を閉塞する盤状の第2コアと、
前記第2コアに対向配置される樹脂製のハウジングと、
前記フランジ部、前記当接部、及び前記ハウジングそれぞれに設けられた各締結孔に挿入され、前記第1コアと前記第2コアと前記ハウジングとを締結する締結部材と、
前記ハウジングの前記締結孔の内面と前記締結部材の外面との間に介在する第1ブッシュと、
を備える歯車ポンプであって、
前記フランジ部と前記当接部とが互いに当接しかつ前記ハウジングが前記第2コアに対向配置された状態で、前記第2コアと前記ハウジングとの対向面間に隙間が形成され
、
前記締結部材が前記第1コアと前記第2コアと前記ハウジングとを締結した状態で、前記ハウジングの前記締結孔の軸方向寸法が、前記第1ブッシュの軸方向寸法に比して小さい、歯車ポンプ。
【請求項2】
外歯を有するインナロータと、
前記インナロータを偏心状態で回転可能に収容する筒状のインナ収容部と、前記外歯に噛合する内歯と、を有するアウタロータと、
前記インナロータ及び前記アウタロータを収容する筒状のロータ収容部と、前記ロータ収容部の筒壁から径方向外方へ突出するフランジ部と、を有する第1コアと、
前記フランジ部に軸方向で当接する当接部を有し、前記ロータ収容部の開口を閉塞する盤状の第2コアと、
前記第2コアに対向配置される樹脂製のハウジングと、
前記第2コアと前記ハウジングとの対向面間に配置されるシール部材と、
を備える歯車ポンプであって、
前記フランジ部と前記当接部とが互いに当接しかつ前記ハウジングが前記第2コアに対向配置された状態で、前記第2コアと前記ハウジングとの対向面間に隙間が形成され
、
前記シール部材は、前記第2コア及び前記ハウジングに設けられる液体流入通路と、前記第2コア及び前記ハウジングに設けられる液体排出通路と、の双方をシールするように一体形成されている、歯車ポンプ。
【請求項3】
前記フランジ部、前記当接部、及び前記ハウジングそれぞれに設けられた各締結孔に挿入され、前記第1コアと前記第2コアと前記ハウジングとを締結する締結部材と、
前記ハウジングの前記締結孔の内面と前記締結部材の外面との間に介在する第1ブッシュと、
を備え、
前記締結部材が前記第1コアと前記第2コアと前記ハウジングとを締結した状態で、前記ハウジングの前記締結孔の軸方向寸法が、前記第1ブッシュの軸方向寸法に比して小さい、請求項2に記載された歯車ポンプ。
【請求項4】
前記インナロータは、駆動シャフトに固定され、
前記第1コアは、前記ロータ収容部の底壁から軸方向外方へ突出して、前記駆動シャフトが挿通される挿通孔が形成された筒状のシャフト支持部を有し、
前記第1コアの前記シャフト支持部の内面と前記駆動シャフトの外面との間に介在する第2ブッシュを備える、請求項
1乃至3の何れか一項に記載された歯車ポンプ。
【請求項5】
前記第2ブッシュは、前記第1コアの前記シャフト支持部の内面と前記駆動シャフトの外面との間に配置されるブッシュ筒部と、前記ブッシュ筒部の軸方向内端部から径方向外方へ突出するブッシュフランジ部と、を有し、
前記ブッシュフランジ部は、前記ロータ収容部の底壁と前記インナロータの軸方向面との間及び前記ロータ収容部の底壁と前記アウタロータの軸方向面との間に配置される、請求項
4に記載された歯車ポンプ。
【請求項6】
前記第1コア及び前記第2コアはそれぞれ、金属又は熱硬化性樹脂により形成された切削加工品である、請求項1乃至
5の何れか一項に記載された歯車ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トロコイド式の歯車ポンプが知られている(例えば、特許文献1及び2)。この歯車ポンプは、インナロータと、アウタロータと、ハウジングと、カバーと、を備えている。インナロータは、駆動シャフトに固定されていると共に、外歯を有している。アウタロータは、インナロータの外歯に噛合する内歯を有している。インナロータは、アウタロータに対して偏心した状態で回転可能である。ハウジングは、インナロータ及びアウタロータを収容する凹部を有している。カバーは、ハウジングに対して軸方向に配置されており、ハウジングの凹部の開口を閉塞している。
【0003】
特許文献1記載の歯車ポンプにおいて、インナロータ、アウタロータ、及びカバーは、金属により形成されている。また、ハウジングの少なくとも一部は、射出成形された樹脂により形成されている。この歯車ポンプの構造によれば、ハウジング全体が金属により形成されている構造に比べて、軽量化を図ることができる。
【0004】
また、特許文献2記載の歯車ポンプは、インナロータ及びアウタロータを収容するロータ収容部を有する金属製のコアを備えている。このコアは、樹脂製のハウジングにインサート成形され、そのハウジングの凹部に配置されている。コアのロータ収容部及びハウジングの凹部は、金属製のカバーにより閉塞されている。この金属製のカバーは、樹脂製のハウジングと対向した状態でボルトにより締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-51964号公報
【文献】特開2017-66976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、歯車ポンプにおいて、各部材の寸法管理が適切になされていないと、下記の不都合が生ずる。すなわち、各部材の寸法管理が良好であれば、ハウジングの凹部がカバーにより閉塞された際にインナロータ及びアウタロータとカバーとの間に不必要な隙間は形成されないので、組付け精度が確保される。この場合は、オイルなどの液体が溜まる作動室の有効容量が一定であり、安定した吐出量が確保される。一方、各部材の寸法管理が悪いと、ハウジングの凹部がカバーにより閉塞された際にインナロータ及びアウタロータとカバーとの間に不必要な隙間が形成されることがあり、組付け精度が低下するおそれがある。組付け精度が悪いと、オイルなどの液体が溜まる作動室の有効容量が変動し、安定した吐出量が確保されなくなってしまう。
【0007】
一方、各部材の寸法を適切に管理し更には各部材の組付けによって生じる締結力に対しても良好な状態とするためには、すべての部材を金属により形成したうえで切削加工することが考えられる。しかしながら、すべての部材が金属により形成されるものとすると、歯車ポンプ全体の重量が増加すると共に、すべての部材を切削加工することが必要であると、製造上の手間がかかる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、軽量化を図りつつ、各部材の組付け精度を確保することが可能な歯車ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、外歯を有するインナロータと、前記インナロータを偏心状態で回転可能に収容する筒状のインナ収容部と、前記外歯に噛合する内歯と、を有するアウタロータと、前記インナロータ及び前記アウタロータを収容する筒状のロータ収容部と、前記ロータ収容部の筒壁から径方向外方へ突出するフランジ部と、を有する第1コアと、前記フランジ部に軸方向で当接する当接部を有し、前記ロータ収容部の開口を閉塞する盤状の第2コアと、前記第2コアに対向配置される樹脂製のハウジングと、を備える歯車ポンプであって、前記フランジ部と前記当接部とが互いに当接しかつ前記ハウジングが前記第2コアに対向配置された状態で、前記第2コアと前記ハウジングとの対向面間に隙間が形成される、歯車ポンプである。
【0010】
この構成によれば、第1コアのフランジ部と第2コアの当接部とが互いに当接しかつハウジングが第2コアに対向配置された状態で、第2コアとハウジングとの対向面間に隙間が形成される。このため、第1コアと第2コアとが互いに当接しても第2コアとハウジングとが互いに当接するのを回避することができ、これにより、第1コアと第2コアとの位置決め精度を高めることができる。更に、ハウジングは、樹脂により形成されている。このため、歯車ポンプの軽量化を図ることができる。従って、歯車ポンプの軽量化を図りつつ、各部材の組付け精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る歯車ポンプを正面側から見た斜視図である。
【
図5】実施形態の歯車ポンプを
図3に示す直線V-Vで切断した際の断面図である。
【
図6】実施形態の歯車ポンプを
図3に示す直線VI-VIで切断した際の断面図である。
【
図7】実施形態の歯車ポンプを
図3に示す直線VII-VIIで切断した際の断面図である。
【
図8】実施形態の歯車ポンプの要部の拡大断面図である。
【
図9】第1変形形態に係る歯車ポンプの要部の拡大断面図である。
【
図10】第2変形形態に係る歯車ポンプが備える金属製のブッシュの斜視図である。
【
図11】
図10に示す金属製のブッシュを備える歯車ポンプを
図3に示す直線V-Vと同じ直線で切断した際の断面図である。
【
図12】
図10に示す金属製のブッシュを備える歯車ポンプを
図3に示す直線VII-VIIと同じ直線で切断した際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1-
図12を用いて、本発明に係る歯車ポンプの具体的な実施形態及び変形形態について説明する。
【0013】
実施形態の歯車ポンプ1は、オイルなどの液体を吸入して圧送するトロコイド式の内接歯車ポンプである。歯車ポンプ1は、例えば車両などに搭載される。歯車ポンプ1は、
図1に示す如く、全体としてブロック状に形成されている。
【0014】
歯車ポンプ1は、
図2に示す如く、インナロータ10と、アウタロータ20と、を備えている。インナロータ10とアウタロータ20とは、トロコイドを構成している。インナロータ10及びアウタロータ20はそれぞれ、焼結金属(例えば、鉄系や銅鉄系,銅系,ステンレス系など)により形成されている。
【0015】
インナロータ10は、駆動シャフト2が固定された円板状(円盤状)又は円柱状の部材である。インナロータ10は、駆動シャフト2に駆動シャフト2の回転中心に同軸上に取り付けられている。駆動シャフト2は、後述の第1コア30に回転可能に支持されている。駆動シャフト2は、その第1コア30から軸方向一方側に延在している。駆動シャフト2の軸方向一方側の端部には、ギヤ(図示せず)が取り付けられ、そのギヤを介して駆動源(図示せず)が取り付けられている。
【0016】
インナロータ10は、駆動シャフト2と一体的に回転する。インナロータ10は、外歯11を有している。外歯11は、インナロータ10の外周面に等角度間隔で設けられている。インナロータ10における外歯11の数は、所定数(例えば4個)である。
【0017】
アウタロータ20は、インナロータ10が噛み合う環状又は筒状の部材である。アウタロータ20は、インナ収容部21と、内歯22と、を有している。インナ収容部21は、環状の筒壁23からなり、軸方向に開放する空間を形成している。インナ収容部21は、インナロータ10を偏心状態で回転可能に収容している。内歯22は、筒壁23の内周面から径方向内側に突出するように設けられている。内歯22は、筒壁23の内周面に等角度間隔で設けられている。アウタロータ20における内歯22の数は、インナロータ10における外歯11の数よりも予め定められた数(例えば一つ)多い所定数(例えば5個)である。
【0018】
アウタロータ20の内歯22は、インナロータ10の外歯11に噛合する。インナロータ10は、アウタロータ20のインナ収容部21内でそのアウタロータ20に対して偏心した状態でインナロータ10の外歯11がアウタロータ20の内歯22に噛合しながら駆動シャフト2の軸回りにその駆動シャフト2の回転に伴って回転する。
【0019】
歯車ポンプ1は、
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、及び
図8に示す如く、第1コア30と、第2コア40と、を備えている。第1コア30及び第2コア40は、インナロータ10の回転により流入口から排出口へ液体を圧送する作動室を形成する部材である。
【0020】
第1コア30及び第2コア40はそれぞれ、後述のハウジングとの締結時に軸方向に所望の締結力が加わっても変形が生じ難い素材、例えば鉄やアルミニウムなどの金属により形成されている。第1コア30及び第2コア40は、プレス加工、圧造、又はダイカストにより成形された成形体或いは更に切削加工が施された加工品である。尚、第1コア30及び第2コア40の低コスト化を図るうえではプレス加工が好ましい。また、第1コア30及び第2コア40は、金属に代えて、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂により形成されていてもよく、更に切削加工が施された加工品であってもよい。
【0021】
第1コア30は、ハット状に形成されている。第1コア30は、ロータ収容部31を有している。ロータ収容部31は、筒壁32と底壁33とからなり、インナロータ10及びアウタロータ20を収容する空間を形成する。ロータ収容部31は、アウタロータ20の外形に合わせた形状に形成されている。筒壁32は、筒状(例えば円筒状)に形成されている。底壁33は、板状(例えば円板状)に形成されている。底壁33は、筒壁32の軸方向一端を閉じるように設けられている。
【0022】
ロータ収容部31における底壁33とは軸方向反対側である軸方向他端は、開口している。インナロータ10及びアウタロータ20は、ロータ収容部31への組み付け時においてそのロータ収容部31の軸方向他端側の開口34からそのロータ収容部31に挿入される。インナロータ10及びアウタロータ20は、ロータ収容部31内に収容される。
【0023】
底壁33には、シャフト支持部35が設けられている。シャフト支持部35は、駆動シャフト2を支持する部位である。シャフト支持部35は、底壁33から軸方向一方である軸方向外方へ突出しており、筒状に形成されている。シャフト支持部35は、
図2に示す如く、挿通孔35aを有している。シャフト支持部35は、挿通孔35aの内径が駆動シャフト2の外径に比して大きくなるように形成されている。駆動シャフト2は、第1コア30の挿通孔35aに挿通されてシャフト支持部35に回転可能に支持された状態でロータ収容部31内のインナロータ10に固定されている。
【0024】
歯車ポンプ1は、
図2及び
図7に示す如く、ブッシュ50を備えている。ブッシュ50は、第1コア30のシャフト支持部35の内面と駆動シャフト2の外面との間に介在しており、その間の径方向隙間を埋めるカラー部材である。ブッシュ50は、駆動シャフト2が第1コア30のシャフト支持部35の径方向内側で回転するときの回転摺動ロスを抑えるすべり軸受である。ブッシュ50は、駆動シャフト2の回転時における焼き付きが生じ難い素材、例えば鉄-クロム鋼などの金属により形成されている。ブッシュ50は、円筒状に形成されている。尚、ブッシュ50の内面には、摺動性及び耐摩耗性に優れた表面処理が施されることが、駆動シャフト2の回転時における回転摺動ロスをより低減して歯車ポンプ1の長寿命化を図るうえで好ましい。
【0025】
第1コア30は、また、フランジ部36を有している。フランジ部36は、ロータ収容部31の筒壁32の軸方向他端部から径方向外方へ突出する部位である。フランジ部36は、ロータ収容部31の開口34の回りに環状に形成されている。尚、フランジ部36には、歯車ポンプ1を他部品に取り付けるための締結孔が形成された耳部が設けられていてもよい。
【0026】
第2コア40は、盤状に形成された平板部材である。第2コア40は、第1コア30のロータ収容部31の開口34を閉塞する部材である。第2コア40は、第1コア30に対して軸方向他端側に隣接して配置される。第2コア40は、第1コア30に対して軸方向に当接することにより位置決めされる。第2コア40は、第1コア30の開口34の大きさよりも大きな外径を有している。第2コア40は、当接部41を有している。当接部41は、第1コア30のフランジ部36に軸方向で当接する。
【0027】
第2コア40は、それぞれ第1コア30と第2コア40とで囲まれた作動室に連通する流入孔42及び排出孔43を有している。流入孔42及び排出孔43はそれぞれ、第2コア40を軸方向に貫通する貫通孔である。流入孔42は、外部に蓄えられている液体を上記の作動室へ流入させるための孔である。排出孔43は、上記の作動室内の液体を外部へ排出させるための孔である。流入孔42と排出孔43とは、直接には接続されていない。尚、流入孔42及び排出孔43はそれぞれ、
図2に示す如く、アウタロータ20の中心を中心にして周方向に延びる三日月状に形成されていてよい。また、流入孔42及び排出孔43はそれぞれ、周方向位置に応じて径方向幅が変化するように形成されていてよい。
【0028】
歯車ポンプ1は、ハウジング60を備えている。ハウジング60は、第1コア30及び第2コア40が取り付け固定されると共に、作動室に液体を導く流路が形成される部材である。ハウジング60は、第2コア40に対して軸方向他端側に隣接して配置され、その第2コア40に対向配置されている。
【0029】
ハウジング60は、後述のボルトによる第1コア30及び第2コア40との締結に伴って所望の締結力が加わった際に変形が生じ得る素材、例えば樹脂(特に、熱可塑性樹脂)により形成されている。ハウジング60を形成する樹脂は、耐クリープ性や耐荷重性,耐摩耗性などに優れていることが好ましく、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂や熱可塑性ポリイミド樹脂などである。ハウジング60は、射出成形などにより成形される。
【0030】
ハウジング60は、流入通路61及び排出通路62を有している。流入通路61は、外部に蓄えられている液体を流入口61aから上記の作動室へ流入させるための通路である。流入通路61は、第2コア40の流入孔42に連通し、その流入孔42と共に、液体が流通する液体流入通路を構成する。流入口61aは、ハウジング60の底壁に設けられている。排出通路62は、上記の作動室内の液体を排出口62aから外部へ排出させるための通路である。排出通路62は、第2コア40の排出孔43に連通し、その排出孔43と共に、液体が流通する液体排出通路を構成する。排出口62aは、ハウジング60の背面壁に設けられている。
【0031】
流入通路61と排出通路62とは、直接には接続されていない。ハウジング60の流入口61aから流入通路61に流入した液体は、第2コア40の流入孔42を経由して作動室に入り、その後、第2コア40の排出孔43を経由して排出通路62に入り、排出口62aから外部へ排出される。
【0032】
尚、流入通路61は、流入孔42の形状と同様に、アウタロータ20の中心を中心にして周方向に延びる三日月状に形成されていてよく、周方向位置に応じて径方向幅が変化するように形成されていてよい。また、排出通路62は、排出孔43の形状と同様に、アウタロータ20の中心を中心にして周方向に延びる三日月状に形成されていてよく、周方向位置に応じて径方向幅が変化するように形成されていてよい。
【0033】
歯車ポンプ1は、ボルト70を備えている。ボルト70は、第1コア30と第2コア40とハウジング60とを締結する締結部材である。ボルト70は、第1コア30と第2コア40とハウジング60とを締結する際に軸方向に所望の締結力が加わっても変形が生じ難い素材(例えば、鉄やアルミニウムなどの金属)により形成されている。ボルト70の軸方向先端部には、雄ネジが形成されている。第1コア30、第2コア40、及びハウジング60は、ボルト70が挿入される締結孔37,44,63を有している。
【0034】
締結孔37は、第1コア30のフランジ部36に軸方向に貫通して設けられている。締結孔44は、第2コア40に軸方向に貫通して設けられている。締結孔63は、ハウジング60に軸方向に貫通して設けられている。締結孔37,44,63はそれぞれ、駆動シャフト2の軸回りの周方向において複数箇所(例えば四箇所)に設けられており、互いに対応した位置に同じ数だけ設けられている。尚、ボルト70が螺合される雌ネジは、第1コア30の締結孔37回りの内面に形成されていてもよいし、別体のナットに形成されていてもよい。
【0035】
締結孔37,44,63はそれぞれ、円形に形成されている。第1コア30の締結孔37及び第2コア40の締結孔44は、互いに略同じ大きさに形成されている。一方、ハウジング60の締結孔63は、第1コアの締結孔37よりも大きくかつ第2コア40の締結孔44よりも大きな大きさに形成されている。第1コア30と第2コア40とハウジング60とは、締結孔37,44,63が互いに軸方向に連通した状態でボルト70がそれらの締結孔37,44,63に挿入されて螺合されることにより締結される。
【0036】
歯車ポンプ1は、ブッシュ71を備えている。ブッシュ71は、ハウジング60の締結孔63回りの内面とボルト70の外面との間に介在しており、その間の径方向隙間を埋めるカラー部材である。ブッシュ71は、ボルト70がハウジング60の締結孔63内で回転するときの回転摺動ロスを抑えるすべり軸受である。ブッシュ71は、ボルト70による締結時に軸方向に所望の締結力が加わっても変形が生じ難い素材、例えば鉄-クロム鋼などの金属により形成されている。
【0037】
ブッシュ71は、円筒状に形成されている。ブッシュ71は、ボルト70による締結状態においてハウジング60の締結孔63の開口から僅かに軸方向に突出するように形成されている。ブッシュ71がハウジング60の締結孔63の開口から軸方向に突出する長さは、後述の隙間80に相当する長さである。以下、ブッシュ71を第1ブッシュ71と、上記したブッシュ50を第2ブッシュ50と、それぞれ称す。
【0038】
第1コア30、第2コア40、及びハウジング60はそれぞれ、係合孔38,45,64を有している。係合孔38,45,64は、共通の係合ピン72が嵌合して係合する孔部又は溝部である。係合孔38は、第1コア30のフランジ部36に軸方向に貫通して設けられており、締結孔37とは異なる位置に設けられている。係合孔45は、第2コア40に軸方向に貫通して設けられており、締結孔44とは異なる位置に設けられている。係合孔64は、ハウジング60における第2コア40に対向する軸方向端面に設けられた溝であり、締結孔63とは異なる位置に設けられている。係合孔38,45,64は、周方向において互いに同じ複数個(例えば2個)ずつ設けられている。
【0039】
係合孔38,45,64はそれぞれ、円形に形成されており、互いに略同じ大きさに形成されている。第1コア30と第2コア40とハウジング60とは、例えばハウジング60の係合孔64に圧入して挿入された係合ピン72が第1コア30の係合孔38及び第2コア40の係合孔45に圧入して挿入されることにより径方向及び周方向に位置決めされる。
【0040】
第1コア30と第2コア40とハウジング60とは、上記の如く係合ピン72を用いて位置決めがなされた状態で、ボルト70が、ハウジング60の締結孔63内に配置された第1ブッシュ71を通りかつ締結孔37,44に挿入して雌ネジ(図示せず)に螺合されることにより、互いに締結される。
【0041】
ハウジング60の締結孔63と第1ブッシュ71とは、ボルト70が第1コア30と第2コア40とハウジング60とを締結した状態で、ハウジング60の締結孔63の軸方向寸法が第1ブッシュ71の軸方向寸法に比して小さくなるように形成されている。すなわち、ボルト70が第1コア30と第2コア40とハウジング60とを締結した状態で、ハウジング60の締結孔63の軸方向寸法は、第1ブッシュ71の軸方向寸法に比して小さい。
【0042】
ハウジング60の締結孔63と第1ブッシュ71との軸方向寸法が上記の関係にあると、第1コア30と第2コア40とハウジング60とがボルト70により締結された場合、第1コア30のフランジ部36と第2コア40の当接部41とが互いに当接しかつハウジング60が第2コア40に対向配置された状態で、第2コア40とハウジング60との対向面間に隙間80が形成される。この隙間80は、第2コア40の軸方向端面40aとハウジング60の軸方向端面60aとが互いに当接せずに軸方向に離間する長さtを有する。
【0043】
歯車ポンプ1は、シール部材90を備えている。シール部材90は、第2コア40の流入孔42及びハウジング60の流入通路61からなる液体流入通路、及び、第2コア40の排出孔43及びハウジング60の排出通路62からなる液体排出通路をシールする部材である。シール部材90は、第2コア40とハウジング60との対向面間、すなわち、第2コア40の軸方向端面40aとハウジング60の軸方向端面60aとの間に配置される。シール部材90は、弾性を有する例えばゴム状の部材である。
【0044】
シール部材90は、上記の液体流入通路及び液体排出通路の双方をシールするように一体形成されている。シール部材90は、環状部91と、仕切部92と、を有している。環状部91は、上記の液体流入通路の外周側及び上記の液体排出通路の外周側を囲むように環状に形成されており、それらの液体流入通路及び液体排出通路から径方向外方へのシール性を確保する部位である。仕切部92は、環状部91に周方向二箇所で連結し、上記の液体流入通路と上記の液体排出通路とを仕切るように線状に形成されており、それらの液体流入通路と液体排出通路との間のシール性を確保する部位である。
【0045】
ハウジング60は、凹溝65を有している。凹溝65は、シール部材90が嵌る溝である。凹溝65は、第2コア40に対向する軸方向端面60aに設けられている。凹溝65は、シール部材90に合致する形状を有している。すなわち、凹溝65は、環状凹部65aと、仕切凹部65bと、を有している。シール部材90は、環状部91が環状凹部65aに嵌りかつ仕切部92が仕切凹部65bに嵌るように組み付けられる。
【0046】
凹溝65は、シール部材90がその凹溝65に嵌った状態でその凹溝65の開口から軸方向外方へ突出するように、シール部材90がその凹溝65内に完全に嵌る大きさよりも小さい溝幅若しくは溝深さを有している。シール部材90は、ボルト70による締結前に凹溝65の開口から軸方向外方への突出量が第2コア40とハウジング60との隙間80の大きさよりも大きくなるように形成されている。
【0047】
上記の如く第1コア30と第2コア40とハウジング60とがボルト70により締結されると、第2コア40とハウジング60との対向面間に隙間80が形成されつつ、シール部材90が第2コア40の軸方向端面40aとハウジング60の軸方向端面60aとの間に挟まれて弾性変形してそれらの軸方向端面40a,60aに密着する。このシール部材90の軸方向端面40a,60aへの密着は、上記の液体流入通路の外周側及び上記の液体排出通路の外周側を周方向全周に亘って隙間無く囲みかつ上記の液体流入通路と上記の液体排出通路とを仕切るように行われる。
【0048】
上記構造を有する歯車ポンプ1においては、駆動シャフト2が回転すると、第1コア30のロータ収容部31内でトロコイドをなすインナロータ10がアウタロータ20に対して回転する。このインナロータ10の回転中、ロータ収容部31内の作動室の容積が増大することによりその内圧が負圧になると、ハウジング60の流入口61aから流入通路61及び第2コア40の流入孔42を経由してその作動室にオイルが吸入される。その後、トロコイドの回転により作動室の容積が減少することによりその内圧が上昇すると、その作動室に吸入されたオイルが第2コア40の排出孔43及びハウジング60の排出通路62を経由して排出口62aへ導かれて外部へ排出される。このポンプ作用がトロコイドの回転によって連続的に行われると、歯車ポンプ1からオイルが圧送される。
【0049】
また、上記構造を有する歯車ポンプ1においては、その歯車ポンプ1の組み立ては、以下の手順で行われる。すなわち、その組み立ては、第1コア30のロータ収容部31にインナロータ10及びアウタロータ20が収容され、その第1コア30のフランジ部36に第2コア40の当接部41が当接して第2コア40が第1コア30の開口34を閉塞し、その第2コア40にハウジング60が軸方向で対向配置された状態で、第1コア30と第2コア40とハウジング60とがボルト70により締結されることにより実現される。
【0050】
上記の如く歯車ポンプ1が組み立てられて第1コア30と第2コア40とハウジング60とがボルト70により締結された状態では、第1コア30のフランジ部36と第2コア40の当接部41と第1ブッシュ71とボルト70のフランジ部とが軸方向に当接した状態で並ぶ。第1コア30、第2コア40、第1ブッシュ71、及びボルト70はそれぞれ、ボルト70による第1コア30と第2コア40とハウジング60との締結時に所望の締結力が加わっても変形が生じ難い素材(例えば金属)により形成されている。このため、上記の当接がなされた締結状態では、第1コア30と第2コア40とが軸方向で互いに当接するので、両コア30,40が相対的に軸方向に移動することはできず、両コア30,40は互いに軸方向において位置決めされる。
【0051】
また、上記のボルト70による締結は第1ブッシュ71を用いて行われるので、ボルト70の締付を精度良く管理することが可能である。また、上記のボルト70による締結は、第1コア30と第2コア40と第1ブッシュ71との金属三部品を共締めするものであるので、各部材を強固に締結することができ、その締結の緩みを防止することが可能である。
【0052】
上記した第1コア30と第2コア40とハウジング60との締結は、周方向の複数箇所(例えば四箇所)でボルト70が挿入されることにより実現される。このため、上記の当接がなされた締結状態では、第1コア30と第2コア40とが相対的に径方向及び周方向に位置移動することはできず、両コア30,40は互いに径方向及び周方向に位置決めされる。
【0053】
また、上記の締結状態では、第1コア30の係合孔38と第2コア40の係合孔45とハウジング60の係合孔64とに係合ピン72が挿入されて両コア30,40が共通の係合ピン72を介して係合するので、両コア30,40が相対的に径方向及び周方向に位置移動することはできず、両コア30,40は互いに径方向及び周方向に位置決めされる。更に、第1コア30及び第2コア40はそれぞれ、切削加工された切削加工品である。このため、第1コア30と第2コア40との軸方向位置決め、径方向位置決め、及び周方向位置決めの各精度を高めたものとすることができる。
【0054】
また、第1コア30と第2コア40とハウジング60とがボルト70により締結されて、第1コア30のフランジ部36と第2コア40の当接部41と第1ブッシュ71とボルト70のフランジ部とが軸方向に当接した状態では、第2コア40の軸方向端面40aとハウジング60の軸方向端面60aとの間に長さtの隙間80が形成される。この構造では、第1コア30と第2コア40とハウジング60とのボルト締結により、第1コア30のフランジ部36と第2コア40の当接部41とが互いに当接しても、第2コア40とハウジング60とが軸方向で互いに当接することは回避される。
【0055】
ハウジング60は、樹脂製の部材であるので、それぞれ金属製の第1コア30、第2コア40、第1ブッシュ71、及びボルト70に比べて柔軟性を有し、外部からの力で変形可能である。しかし、このハウジング60は、上記の如く第2コア40に当接せず、第2コア40の軸方向端面40aとボルト70のフランジ部との間で挟持されないので、ボルト70による締結に起因して変形することはない。このため、ハウジング60の軸方向寸法に誤差などがあっても、その誤差分がボルト70による第1コア30と第2コア40とハウジング60との締結に影響を与えることは回避されると共に、そのボルト70による締結に伴って樹脂製のハウジング60が変形することはなく、そのハウジング変形が第1コア30と第2コア40との当接に影響を与えることは回避される。従って、第1コア30と第2コア40との位置決め精度を高めることが可能である。
【0056】
また逆に、第1コア30と第2コア40とハウジング60とがボルト70により締結された状態では、ハウジング60が第2コア40に当接することはないので、ハウジング60を精度良く加工することは不要である。このため、製造上の手間を省くことができ、製造時間を短縮することができる。
【0057】
また、駆動シャフト2は、第1コア30のシャフト支持部35に回転可能に支持されているが、その第1コア30から第2コア40が当接する軸方向他方側には延在せず、その第1コア30から軸方向一方側に延在している。このため、第2コア40に駆動シャフト2が貫通する貫通孔を設けることは不要である。
【0058】
また、第1コア30は、インナロータ10及びアウタロータ20を収容するロータ収容部31を有し、第2コア40よりも、駆動シャフト2の軸方向一方側の端部に取り付けられたギヤに近接している。このため、第2コア40を複雑な形状(例えばハット状)に形成することは不要であり、第2コア40を盤状或いは平板状に形成すれば、ロータ収容部31の開口34を閉塞する第2コア40の機能を果たすことは十分に可能である。そして、第2コア40は、盤状に形成された平板部材である。従って、第2コア40を平板化することができ、歯車ポンプ1の製造コストを抑制して安価なものとすることができる。
【0059】
また、上記の如く第1コア30と第2コア40とが軸方向、径方向、及び周方向それぞれにおいて位置決めされれば、歯車ポンプ1を組み立てるうえでの各部材の組付け精度を大きく向上させることができる。このため、インナロータ10及びアウタロータ20を収容するロータ収容部31内の作動室の容量バラツキを抑えることができ、これにより、安定した吐出量を確保することができる。
【0060】
また、ハウジング60は、上記の如く、樹脂製の部材である。このため、ハウジング60が金属製の部材である構造に比べて、歯車ポンプ1の軽量化を図ることができる。従って、歯車ポンプ1によれば、ハウジング60の樹脂形成により全体での軽量化を図りつつ、第1コア30と第2コア40との軸方向、径方向、及び周方向それぞれの位置決めにより各部材の組付け精度を確保することができる。
【0061】
更に、歯車ポンプ1においては、第1コア30と第2コア40とハウジング60とがボルト70により締結された状態では、第2コア40とハウジング60との間に隙間80が形成される。第2コア40の流入孔42とハウジング60の流入通路61とは液体流入通路として互いに連通すると共に、第2コア40の排出孔43とハウジング60の排出通路62とは液体排出通路として互いに連通するので、上記隙間80が存在した場合は、その隙間80から液漏れが生ずるおそれがある。
【0062】
これに対して、歯車ポンプ1では、第2コア40とハウジング60との対向面間にシール部材90が配置される。このシール部材90は、第1コア30と第2コア40とハウジング60とがボルト70により締結された後、第2コア40の軸方向端面40aとハウジング60の軸方向端面60aとの間に挟まれて弾性変形してそれらの軸方向端面40a,60aに密着する。
【0063】
このため、歯車ポンプ1によれば、第2コア40の軸方向端面40aとハウジング60の軸方向端面60aとの間に隙間80が形成されていても、シール部材90により上記の液体流入通路及び液体排出通路のシール性を確保することができる。これにより、上記の液体流入通路及び液体排出通路から隙間80を介して液体が漏れるのを抑えることができる。
【0064】
また、上記の液体流入通路から外周側への液体漏れ防止と、上記の液体排出通路から外周側への液体漏れ防止と、それらの液体流入通路と液体排出通路との相互間の液体漏れ防止と、は第2コア40とハウジング60との対向面(すなわち、軸方向端面40a,60a間)に配置されるシール部材90を用いて実現される。この場合、上記の各液体漏れ防止が第2コア40とハウジング60との同じ部材間で実現されるので、各液体漏れ防止を別の部材間で実現する構造に比べて、歯車ポンプ1の組み立ての簡易化及び構造の簡素化を図ることができる。また、上記の各液体漏れ防止が単体のシール部材90で実現されるので、各液体漏れ防止を別々のシール部材で実現する構造に比べて、歯車ポンプ1の組み立ての簡易化及び構造の簡素化を図ることができる。
【0065】
第1コア30のシャフト支持部35の内面と駆動シャフト2の外面との間には、第2ブッシュ50が介在している。この第2ブッシュ50は、駆動シャフト2の回転時における回転摺動ロスを抑えるすべり軸受である。このため、第2ブッシュ50を用いて駆動シャフト2の回転時における回転摺動ロスを抑えることが可能である。
【0066】
尚、上記の実施形態においては、ボルト70が特許請求の範囲に記載した「締結部材」に、ブッシュ71が特許請求の範囲に記載した「第1ブッシュ」に、ブッシュ50が特許請求の範囲に記載した「第2ブッシュ」に、それぞれ相当している。
【0067】
ところで、上記の実施形態においては、第1コア30と第2コア40とハウジング60とを締結するのに、ボルト70及び第1ブッシュ71を用いることとしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、第1ブッシュ71を用いないものとしてもよい。この変形形態によれば、歯車ポンプ1を構成する部品点数を削減することができ、歯車ポンプ1の組み付けを簡素化することができる。
【0068】
例えば、
図9に示す如く、軸部に段差が無いボルト70に代えて、軸部に段差が形成されたボルト100を用いることとしてもよい。このボルト100は、フランジ部101と、第1軸部102と、第2軸部103と、を有している。
【0069】
フランジ部101は、ハウジング60の軸方向端面60aとは反対側の軸方向端面60bに接する部位である。第1軸部102は、フランジ部101に連結して軸方向に延び、ハウジング60の締結孔63に挿入される部位である。第1軸部102は、その締結孔63の内径に対応した外径を有している。第1軸部102の軸方向寸法は、ハウジング60の締結孔63の軸方向寸法に比して大きい。この寸法差は、第2コア40とハウジング60との対向面間の隙間80の長さtに相当する。第2軸部103は、第1軸部102に連結して軸方向に延び、第2コア40の締結孔44及び第1コア30の締結孔37に挿入される部位である。第2軸部103は、それらの締結孔44,37に対応した外径を有しており、上記の第1軸部102の外径よりも小さな外径を有している。この変形形態の構成においても、上記の実施形態の構成と同様の効果を得ることができる。
【0070】
また、上記の実施形態においては、第1コア30のシャフト支持部35の内面と駆動シャフト2の外面との間に第2ブッシュ50が介在している。この第2ブッシュ50は、第1コア30のシャフト支持部35の内面と駆動シャフト2の外面との間に配置される円筒状の部材である。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、
図10、
図11、及び
図12に示す如く、第1コア30のシャフト支持部35の内面と駆動シャフト2の外面との間に第2ブッシュ200が、第1コア30のシャフト支持部35の内面と駆動シャフト2の外面との間に配置されるブッシュ筒部201と、そのブッシュ筒部201の軸方向内端部から径方向外方へ突出するブッシュフランジ部202と、を有するものとしてもよい。このブッシュフランジ部202は、ロータ収容部31の底壁33とインナロータ10の軸方向面との間、及び、ロータ収容部31の底壁33とアウタロータ20の軸方向面との間に配置される。
【0071】
この変形形態の構成では、第1コア30のシャフト支持部35の内面と駆動シャフト2の外面との間、第1コア30のロータ収容部31の底壁33とインナロータ10の軸方向面との間、及び第1コア30のロータ収容部31の底壁33とアウタロータ20の軸方向面との間には、第2ブッシュ200が介在する。このため、第2ブッシュ200を用いて、第1コア30とその駆動シャフト2との間だけでなく、第1コア30とインナロータ10との間及び第1コア30とアウタロータ20との間でも、駆動シャフト2の回転時における回転摺動ロスを抑えることができるので、摺動性の向上を図ることができる。
【0072】
また、上記の実施形態においては、歯車ポンプ1の組み立て時に第1コア30と第2コア40とハウジング60とを位置決めするのに、第1コア30の係合孔38と第2コア40の係合孔45とハウジング60の係合孔64に嵌る係合ピン72を用いることとし、組み立て後の歯車ポンプ1にその係合ピン72が内蔵されるものとしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、組み立て後の歯車ポンプ1から係合ピン72を引き抜けるようにハウジング60若しくは第1コア30を形成することとしてもよい。この変形形態によれば、歯車ポンプ1の組み立て時に必要な部品(具体的には、係合ピン72)をその組み立て後に引き抜いて除去することができるので、歯車ポンプ1の軽量化を図ることができる。
【0073】
更に、上記の実施形態においては、第1コア30と第2コア40とハウジング60とを位置決めするのに、第1コア30のフランジ部36に設けられた貫通孔である係合孔38と、第2コア40の当接部41に設けられた貫通孔である係合孔45と、ハウジング60に設けられた貫通孔である係合孔64と、それらの係合孔38,45,64に嵌る係合ピン72と、を用いることとしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、第1コア30及び第2コア40のうち一方に軸方向に凹む凹部を設け、他方に軸方向に突出してその凹部に嵌る凸部を設けることとしてもよく、また、第2コア40及びハウジング60のうち一方に軸方向に凹む凹部を設け、他方に軸方向に突出してその凹部に嵌る凸部を設けることとしてもよい。
【0074】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1:歯車ポンプ、2:駆動シャフト、10:インナロータ、11:外歯、20:アウタロータ、21:インナ収容部、22:内歯、30:第1コア、31:ロータ収容部、32:筒壁、33:底壁、34:開口、35:シャフト支持部、35a:挿通孔、36:フランジ部、37:締結孔、38:係合孔、40:第2コア、40a:軸方向端面(対向面)、41:当接部、42:流入孔、43:排出孔、44:締結孔、45:係合孔、50:ブッシュ(第2ブッシュ)、60:ハウジング、60a:軸方向端面(対向面)、61:流入通路、62:排出通路、63:締結孔、64:係合孔、70:ボルト、71:ブッシュ(第1ブッシュ)、72:係合ピン、80:隙間、90:シール部材。