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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
H01G4/30 311A
H01G4/30 201C
H01G4/30 517
H01G4/30 513
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019179630
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057462
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真史
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀彦
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-035715(JP,A)
【文献】特開2006-278566(JP,A)
【文献】特開2003-217968(JP,A)
【文献】特開平11-054365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートを用意する工程と、
前記セラミックグリーンシートの主面上に、主要部と、前記主要部の外側に位置し、前記主要部よりも厚みの薄い端部とを含む内部電極パターンを複数形成する工程と、
前記内部電極パターンが形成された後に、前記内部電極パターンの前記端部の上にのみセラミックペーストを付与する工程と、
前記内部電極パターンが形成され、かつ、前記セラミックペーストが付与された前記セラミックグリーンシートを複数積層する工程と、
積層された複数の前記セラミックグリーンシートをプレスする工程と、
プレスされた複数の前記セラミックグリーンシートを切断する工程と、
を備え、
記セラミックグリーンシートの主面上に、前記内部電極パターンが形成されておらず、かつ、前記セラミックペーストが付与されていない段差領域が存在するように、前記内部電極パターンの形成および前記セラミックペーストの付与を行い、
前記セラミックグリーンシートを切断する工程では、前記セラミックグリーンシートを第1の方向に切断する際、前記第1の方向と直交する第2の方向に隣り合う2つの前記内部電極パターンの間であって、かつ、前記段差領域の位置で切断し、
前記セラミックペーストは、前記内部電極パターンの前記第1の方向に延びる端部と重なるか、または、前記内部電極パターンの前記第1の方向に延びる端部および前記第2の方向に延びる端部と重なるように付与することを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記第2の方向に隣り合う2つの前記内部電極パターンの間に位置する前記段差領域の前記第2の方向における寸法は40μm以上であり、かつ、前記第1の方向における寸法が前記内部電極パターンの前記第1の方向における寸法以上となるように、前記内部電極パターンの形成および前記セラミックペーストの付与を行うことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セラミック材料の特性を利用した、積層セラミックコンデンサに代表される種々の積層セラミック電子部品が広く用いられている。
【0003】
そのような積層セラミック電子部品の製造方法として、焼成後に内部電極となる内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層してプレスする工程を経て、積層セラミック電子部品を製造する方法が広く知られている。
【0004】
しかしながら、この製造方法では、セラミックグリーンシートに、内部電極パターンが形成されていない段差領域が存在するため、積層されたセラミックグリーンシートをプレスした際に、内部電極パターンの端部が変形する場合がある。
【0005】
そのような内部電極パターンの端部の変形を抑制するため、特許文献1には、セラミックグリーンシートに内部電極パターンを形成するとともに、段差領域に段差解消用セラミックペーストを付与してから、セラミックグリーンシートを積層する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-209025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、段差領域に段差解消用セラミックペーストを付与する方法では、段差解消用セラミックペーストを付与する際、印刷ズレにより、内部電極パターンの上にまで付与してしまう場合があり、段差を助長してしまうことになる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、内部電極パターンの端部の変形を抑制するとともに、印刷ズレに起因する段差の助長を抑制することが可能な積層セラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の積層セラミック電子部品の製造方法は、
セラミックグリーンシートを用意する工程と、
前記セラミックグリーンシートの主面上に、主要部と、前記主要部の外側に位置し、前記主要部よりも厚みの薄い端部とを含む内部電極パターンを複数形成する工程と、
前記内部電極パターンが形成された後に、前記内部電極パターンの前記端部の上にのみセラミックペーストを付与する工程と、
前記内部電極パターンが形成され、かつ、前記セラミックペーストが付与された前記セラミックグリーンシートを複数積層する工程と、
積層された複数の前記セラミックグリーンシートをプレスする工程と、
プレスされた複数の前記セラミックグリーンシートを切断する工程と、
を備え、
記セラミックグリーンシートの主面上に、前記内部電極パターンが形成されておらず、かつ、前記セラミックペーストが付与されていない段差領域が存在するように、前記内部電極パターンの形成および前記セラミックペーストの付与を行い、
前記セラミックグリーンシートを切断する工程では、前記セラミックグリーンシートを第1の方向に切断する際、前記第1の方向と直交する第2の方向に隣り合う2つの前記内部電極パターンの間であって、かつ、前記段差領域の位置で切断し、
前記セラミックペーストは、前記内部電極パターンの前記第1の方向に延びる端部と重なるか、または、前記内部電極パターンの前記第1の方向に延びる端部および前記第2の方向に延びる端部と重なるように付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層セラミック電子部品の製造方法によれば、セラミックペーストが内部電極パターンの端部と重なるように、内部電極パターンの形成およびセラミックペーストの付与を行うので、セラミックグリーンシートのプレス時に、内部電極パターンの端部が変形することを抑制することができる。また、セラミックグリーンシートには、内部電極パターンが形成されておらず、かつ、セラミックペーストが付与されていない段差領域が存在するようにするので、印刷ズレにより、内部電極パターンの主要部の上にまでセラミックペーストを付与してしまった場合でも、プレスによって、内部電極パターンの主要部の上に付与されたセラミックペーストは、段差領域の方に移動するので、段差の助長を抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】積層セラミック電子部品の一例である積層セラミックコンデンサの模式的斜視図である。
図2図1に示す積層セラミックコンデンサのII-II線に沿った模式的断面図である。
図3図1に示す積層セラミックコンデンサのIII-III線に沿った模式的断面図である。
図4図3に示す断面図のうち、積層方向の最も外側に位置する第1の内部電極の幅方向の端部周辺の拡大図である。
図5】第1の実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図6】第1の実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法の各製造工程を説明するための図である。
図7】セラミックペーストが付与された内部電極パターンの端部周辺を拡大した断面図である。
図8】内部電極パターンが形成され、かつ、セラミックペーストが付与されたセラミックグリーンシートの平面図である。
図9】内部電極パターンが形成され、かつ、セラミックペーストが付与されたセラミックグリーンシートの別の例を示す平面図である。
図10図7に示す例とは、セラミックペーストが付与される位置や量が異なる場合の内部電極パターンの端部周辺を拡大した断面図である。
図11参考実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図12参考実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法の各製造工程を説明するための図である。
図13】内部電極パターンがセラミックペーストの主要部の上にまで形成された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0017】
初めに、積層セラミック電子部品の構成について説明した後、本発明による積層セラミック電子部品の製造方法について説明する。ここでは、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例に挙げて説明する。ただし、積層セラミック電子部品が積層セラミックコンデンサに限定されることはなく、バリスタ、インダクタ、サーミスタ、積層コイルなどであってもよい。
【0018】
図1は、積層セラミック電子部品の一例である積層セラミックコンデンサ10の模式的斜視図である。図2は、図1に示す積層セラミックコンデンサ10のII-II線に沿った模式的断面図である。図3は、図1に示す積層セラミックコンデンサ10のIII-III線に沿った模式的断面図である。
【0019】
積層セラミックコンデンサ10は、積層体11と、一対の外部電極14a、14bとを有している。一対の外部電極14a、14bは、図1に示すように、対向するように配置されている。
【0020】
ここでは、一対の外部電極14a、14bが対向する方向を積層セラミックコンデンサ10の長さ方向Lと定義し、後述するセラミック層12と内部電極13a、13bとが積層されている方向を積層方向Tと定義し、長さ方向Lおよび積層方向Tのいずれの方向にも直交する方向を幅方向Wと定義する。
【0021】
積層体11は、長さ方向Lに相対する第1の端面15aおよび第2の端面15bと、積層方向Tに相対する第1の主面16aおよび第2の主面16bと、幅方向Wに相対する第1の側面17aおよび第2の側面17bとを有する。
【0022】
積層体11は、角部および稜線部が丸みを帯びているか、または、鈍角であることが好ましい。ここで、角部は、積層体11の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体11の2面が交わる部分である。
【0023】
図2および図3に示すように、積層体11は、セラミック層12と内部電極13a、13bとが複数積層された構造を有する。
【0024】
内部電極13a、13bには、第1の内部電極13aと第2の内部電極13bとが含まれている。また、セラミック層12には、積層方向Tに隣り合う2つの内部電極13a、13b、すなわち、第1の内部電極13aと第2の内部電極13bとに挟まれた内層セラミック層121と、積層方向Tの最も外側に位置する内部電極13a、13bよりも積層方向Tの外側に位置する外層セラミック層122とが含まれている。積層体11は、より詳細には、第1の内部電極13aと第2の内部電極13bとが積層方向Tにおいて、内層セラミック層121を介して交互に複数積層されており、かつ、積層方向Tの両外側に外層セラミック層122が配置された構造を有する。
【0025】
セラミック層12は、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3などを主成分とするセラミック材料からなる。内層セラミック層121と外層セラミック層122の構成材料は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bは、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、およびAuなどの金属、またはAgとPdの合金などを含有している。第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bは、さらにセラミック層12に含まれるセラミックと同一組成系の誘電体粒子を含んでいてもよい。
【0027】
第1の内部電極13aは、積層体11の第1の端面15aに引き出されている。また、第2の内部電極13bは、積層体11の第2の端面15bに引き出されている。
【0028】
第1の外部電極14aは、積層体11の第1の端面15aに形成されている。本実施形態では、第1の外部電極14aは、積層体11の第1の端面15aの全体に形成されているとともに、第1の端面15aから、第1の主面16a、第2の主面16b、第1の側面17a、および第2の側面17bに回り込むように形成されている。第1の外部電極14aは、第1の内部電極13aと電気的に接続されている。
【0029】
第2の外部電極14bは、積層体11の第2の端面15bに形成されている。本実施形態では、第2の外部電極14bは、積層体11の第2の端面15bの全体に形成されているとともに、第2の端面15bから、第1の主面16a、第2の主面16b、第1の側面17a、および第2の側面17bに回り込むように形成されている。第2の外部電極14bは、第2の内部電極13bと電気的に接続されている。
【0030】
第1の外部電極14aおよび第2の外部電極14bは、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag-Pd合金、またはAuなどの金属を含有している。第1の外部電極14aおよび第2の外部電極14bのそれぞれの表面に、めっき層が形成されていてもよい。
【0031】
図4は、図3に示す断面図のうち、積層方向Tの最も外側に位置する第1の内部電極13aの幅方向Wの端部130周辺の拡大図である。図4に示すように、第1の内部電極13aの端部130は、幅方向Wの外側にいくほど厚みが薄くなる構造を有する。
【0032】
積層方向Tの最も外側に位置する第1の内部電極13aの中央の位置における表面を基準面40としたとき、基準面40と積層方向Tの最も外側に位置する第1の内部電極13aの端部130との成す角をθ1とする。基準面40と積層方向Tの最も外側に位置する第1の内部電極13aの端部130との成す角θ1は、より詳細には、図4に示すように、基準面40と、積層方向Tの最も外側に位置する第1の内部電極13aの端部130の厚みを二分する中央面41との間の角度である。角度θ1は、例えば、0°以上15°以下である。
【0033】
なお、図4とは積層方向Tの反対側で、積層方向Tの最も外側に位置する内部電極13aの端部130でも、上記角度θ1および後述する角度θ2の定義は同じである。また、上述した説明では、積層方向Tの最も外側に第1の内部電極13aが存在する場合について説明したが、積層方向Tの最も外側に第2の内部電極13bが存在する場合も同様である。
【0034】
上述した基準面40と、外層セラミック層122と内層セラミック層121との境界面43との成す角をθ2とする。また、外層セラミック層122と内層セラミック層121との成す角が段階的に変わる場合には、第1の側面17aまたは第2の側面17b近傍での成す角をθ2と定義する。角度θ2は、例えば、2°以上60°以下である。
【0035】
なお、図4では、視認しやすいように、外層セラミック層122と内層セラミック層121との境界面43を示している。例えば、外層セラミック層122と内層セラミック層121の構成材料が異なる場合には、外層セラミック層122と内層セラミック層121との境界面43を特定することができる。
【0036】
上述した角度θ2と角度θ1との差(θ2-θ1)は、2°より大きく、60°より小さい。
【0037】
ここで、本実施形態における積層セラミックコンデンサ10は、セラミック材料からなり、少なくとも一部が内部電極13a、13bの端部130と重なるように配置されている電極端部保護部123を有する。この電極端部保護部123は、後述する積層セラミック電子部品の製造方法において、その少なくとも一部が内部電極パターンの端部と重なるように付与されるセラミックペーストが焼成されたものである。ただし、積層方向Tの最も外側に位置する内部電極13a、13bの端部130には、電極端部保護部123が設けられない構成としてもよい。
【0038】
電極端部保護部123は、内部電極13a、13bの端部を保護するために配置されており、積層セラミック電子部品である積層セラミックコンデンサ10の表面には露出していない。電極端部保護部123を構成するセラミック材料は、内層セラミック層121を構成するセラミック材料、および、外層セラミック層122を構成するセラミック材料に対して、同じ材料でもよいし、異なる材料でもよい。
【0039】
本実施形態における積層セラミックコンデンサ10は、後述する製造方法によって製造することができる。後述する図5に示すフローチャートの製造工程のうち、ステップS3における工程、すなわち、少なくとも一部が内部電極パターンの端部と重なるようにセラミックペーストを付与する工程を含まない従来の製造方法によって製造された積層セラミックコンデンサには、上述した電極端部保護部が含まれない。また、ステップS3における工程を含まない従来の製造方法によって製造された積層セラミックコンデンサでは、積層数が増えるにつれて上述した角度θ1および角度θ2がそれぞれ最大60°までになるが、その差(θ2-θ1)は2°以下である。
【0040】
また、特開2003-209025号公報に記載されているように、セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成するとともに、内部電極パターンが形成されていない段差領域に段差解消用セラミックペーストを付与する工程を経て製造された積層セラミックコンデンサにも、上述した電極端部保護部が含まれない。また、積層数に関係なく、端部は略平坦になり、上述した角度θ1および角度θ2はそれぞれ最大15°程度であり、その差(θ2-θ1)は2°以下である。この積層セラミックコンデンサの製造時に、内部電極パターンの端部の上に段差解消用セラミックペーストが付与される場合があるが、その場合、段差解消用セラミックペーストが焼成されることによって得られるセラミック層は、積層セラミックコンデンサの表面に露出する。
【0041】
すなわち、上述した角度θ2と角度θ1との差(θ2-θ1)が2°より大きいという特徴、および、上記電極端部保護部123を有するという特徴は、後述する本発明の製造方法によって製造される積層セラミック電子部品に固有の特徴である。
【0042】
<第1の実施形態>
続いて、第1の実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法について説明する。積層セラミック電子部品は、例えば、積層セラミックコンデンサであるが、積層セラミックコンデンサに限定されることはなく、バリスタ、インダクタ、サーミスタ、積層コイルなどであってもよい。
【0043】
図5は、第1の実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0044】
ステップS1では、セラミックグリーンシート31を用意する(図6(a)参照)。セラミックグリーンシート31は、公知のものを用いることができる。図6(a)では、支持フィルム32上に形成されたセラミックグリーンシート31を示している。
【0045】
例えば、セラミックグリーンシート31は、支持フィルム32上に、セラミックスラリーをシート状に塗工することによって形成することができる。セラミックスラリーは、例えば、セラミック材料に、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂、可塑剤、分散剤、および、有機溶剤などを加えて、湿式混合することによって作製することができる。支持フィルム32は、例えば、PETフィルムである。
【0046】
ステップS2では、セラミックグリーンシート31の主面31a上に、内部電極パターン33を複数形成する(図6(b)参照)。内部電極パターン33は、内部電極を構成する導電性材料を含む内部電極用導電性ペーストを用いて、セラミックグリーンシート31上に印刷することによって形成することができる。内部電極用導電性ペーストの印刷は、例えば、グラビア印刷によって行うことができる。ただし、内部電極用導電性ペーストの印刷方法がグラビア印刷に限定されることはなく、スクリーン印刷や、インクジェット印刷など、他の印刷方法を用いてもよい。
【0047】
図6(b)に示すように、内部電極パターン33は、厚みが略一定の主要部33aと、主要部33aの外側に位置し、主要部33aよりも厚みの薄い端部33bとを有する。内部電極パターン33の端部33bは、外側ほど、すなわち、主要部33aから遠ざかるほど、厚みが薄くなる傾斜状の形状を有する。内部電極パターン33の端部33bは、図4を例にとって説明すると、第1の内部電極13aの端部130に対応する。
【0048】
ステップS3では、セラミックグリーンシート31の主面31aより上に、セラミックペースト34を付与する(図6(c)参照)。セラミックペースト34は、セラミックグリーンシート31の構成材料と同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。例えば、セラミックグリーンシート31を作製する際に用いられるセラミックスラリーがPVB樹脂を含む場合に、PVB樹脂の代わりにエチルセルロース樹脂などの他の樹脂を含むセラミックペースト34を用いてもよい。セラミックペースト34の塑性変形量は、内部電極パターン33を形成するために用いられる内部電極用導電性ペーストの塑性変形量よりも大きい。
【0049】
セラミックペースト34は、その少なくとも一部が内部電極パターン33の端部33bと重なるように付与する。本実施形態では、内部電極パターン33の形成後にセラミックペースト34を付与するので、内部電極パターン33の端部33bの上にセラミックペースト34を付与する。また、セラミックグリーンシート31の主面31a上に、後述する段差領域35が存在するように、セラミックペースト34を付与する。
【0050】
セラミックペースト34の付与は、例えば、グラビア印刷によって行うことができる。ただし、セラミックペースト34を付与する方法がグラビア印刷に限定されることはなく、スクリーン印刷、インクジェット印刷、シート転写印刷など、他の印刷方法を用いてもよい。
【0051】
図7は、セラミックペースト34が付与された内部電極パターン33の端部33b周辺を拡大した断面図である。図7では、内部電極パターン33の端部33bの上にのみ、セラミックペースト34が付与された例を示している。セラミックペースト34は、完成後の積層セラミック電子部品において、その少なくとも一部が内部電極の端部と重なるように配置されている電極端部保護部となる。
【0052】
セラミックペースト34が付与された位置の高さは、内部電極パターン33の主要部33aの高さH1と同じであることが好ましい。内部電極パターン33の主要部33aの高さH1は、例えば、0.5μm以上3.0μm以下である。
【0053】
図7に示すように、セラミックグリーンシート31の主面31aには、内部電極パターン33が形成されておらず、かつ、セラミックペースト34が付与されていない段差領域35が存在する。後述するセラミックグリーンシート31を切断する工程において、セラミックグリーンシート31を第1の方向に切断する際、第1の方向と直交する第2の方向Y2に隣り合う2つの内部電極パターン33の間であって、かつ、段差領域35で切断する。なお、本実施形態において、第1の方向は、2つの外部電極が対向する方向(図1の長さ方向L)であり、第2の方向Y2は、第1の方向および積層方向Tとそれぞれ直交する方向(図1の幅方向W)である。ただし、2つの外部電極が幅方向Wに対向している場合には、第1の方向は幅方向Wとなり、第2の方向Y2は長さ方向Lとなる。
【0054】
第2の方向Y2に隣り合う2つの内部電極パターン33の間の距離L1は、例えば120μm以上500μm以下である。また、第2の方向Y2における内部電極パターン33の端部33bの寸法L2は、例えば、50μm以上100μm以下である。なお、第1の方向についても同様であってもよい。
【0055】
図8は、内部電極パターン33が形成され、かつ、セラミックペースト34が付与されたセラミックグリーンシート31の平面図である。図8における一点鎖線の位置は、後述するセラミックグリーンシート31を切断する工程における切断位置の一例である。
【0056】
第2の方向Y2に隣り合う2つの内部電極パターン33の間に位置する段差領域35の第2の方向Y2における寸法L3は40μm以上であり、かつ、第1の方向Y1における寸法は、内部電極パターン33の第1の方向Y1における寸法以上である。すなわち、第2の方向Y2に隣り合う2つの内部電極パターン33の間に位置する段差領域35の第2の方向Y2における寸法L3が40μm以上であり、かつ、第1の方向Y1における寸法が内部電極パターン33の第1の方向Y1における寸法以上となるように、ステップS2における内部電極パターン33の形成、および、ステップS3におけるセラミックペースト34の付与を行う。
【0057】
図9(a)および図9(b)は、内部電極パターン33が形成され、かつ、セラミックペースト34が付与されたセラミックグリーンシート31の別の例を示す平面図である。ただし、図9(a)に示す例は、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法によるものではない。
【0058】
図8に示す例では、内部電極パターン33毎にセラミックペースト34が付与されており、隣り合う内部電極パターン33にそれぞれ付与されたセラミックペースト34は離間している。これに対して、図9(a)に示す例では、隣り合う内部電極パターン33にそれぞれ付与されたセラミックペースト34はつながっている。すなわち、セラミックペースト34は、第1の方向Y1および第2の方向Y2のそれぞれの方向において、連続的に付与されている。
【0059】
図8および図9(a)に示す例はいずれも、セラミックペースト34の少なくとも一部が内部電極パターン33の第1の方向に延びる端部、および、第2の方向に延びる端部と重なるように、セラミックペースト34が付与されている。
【0060】
これに対して、図9(b)に示す例では、セラミックペースト34の少なくとも一部が内部電極パターン33の第1の方向Y1に延びる端部と重なるように付与されている。すなわち、内部電極パターン33の第2の方向Y2に延びる端部の上には、セラミックペースト34が付与されていない。
【0061】
すなわち、セラミックペースト34は、その少なくとも一部が、内部電極パターン33の第1の方向Y1に延びる端部と重なるか、または、内部電極パターン33の第1の方向Y1に延びる端部および第2の方向Y2に延びる端部と重なるように付与する。また、図9(a)、(b)に示す例でも、第2の方向Y2に隣り合う2つの内部電極パターン33の間に位置する段差領域35の第2の方向Y2における寸法が40μm以上であり、かつ、第1の方向Y1における寸法が内部電極パターン33の第1の方向Y1における寸法以上となるように、セラミックペースト34を付与する。
【0062】
図10(a)~図10(f)は、図7に示す例とは、セラミックペースト34が付与される位置や量が異なる場合の内部電極パターン33の端部33b周辺を拡大した断面図である。ただし、図10(a)、(c)~(e)に示す例は、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法によるものではない参考例である。なお、図10(a)~(f)では、支持フィルム32を省略している。
【0063】
図10(a)に示す例では、内部電極パターン33の端部33bの上だけでなく、セラミックグリーンシート31の主面31a上にもセラミックペースト34が付与されている。また、内部電極パターン33の端部33bの位置における高さが、内部電極パターン33の主要部33aの高さよりも高くなっている。
【0064】
図10(b)に示す例では、内部電極パターン33の端部33bの上にのみ、セラミックペースト34が付与されているが、図7に示す例とは異なり、セラミックペースト34が付与された位置の高さが内部電極パターン33の主要部33aの高さと同一ではない部分が存在する。
【0065】
図10(c)に示す例では、内部電極パターン33の端部33bの一部の上とセラミックグリーンシート31の主面31aの上とにセラミックペースト34が付与されている。図10(c)に示すように、内部電極パターン33の端部33bには、セラミックペースト34が付与されていない部分が存在する。また、セラミックペースト34が付与された位置の高さは、内部電極パターン33の主要部33aの高さよりも低い。
【0066】
図10(d)に示す例では、内部電極パターン33の端部33bの上だけでなく、セラミックグリーンシート31の主面31a上および内部電極パターン33の主要部33aの一部の上にまでセラミックペースト34が付与されている。
【0067】
ここで、セラミックペースト34と内部電極パターン33とが重なった位置において、セラミックペースト34および内部電極パターン33のうち、積層方向の下側に位置するものを下層、上側に位置するものを上層とすると、上層のうち、下層の主要部の上に位置する部分の第2の方向における寸法が40μm以下となるようにすることが好ましい。
【0068】
層がセラミックペースト34で、下層が内部電極パターン33である場合、セラミックペースト34のうち、内部電極パターン33の主要部33aの上に位置する部分の第2の方向Y2における寸法L4が40μm以下であることが好ましい。セラミックペースト34の上記寸法L4を40μm以下とすることにより、段差の助長を抑制するとともに、後述するプレス工程においてプレスした際に、セラミックペースト34が内部電極パターン33の主要部33aの上へと流れる量が多くなることを抑制することができ、積層セラミックコンデンサ10の品質の低下を抑制することができる。
【0069】
図10(e)に示す例では、内部電極パターン33の端部33bの一部の上と、内部電極パターン33の主要部33aの一部の上にセラミックペースト34が付与されている。図10(e)に示すように、内部電極パターン33の端部33bには、セラミックペースト34が付与されていない部分が存在する。この場合も、セラミックペースト34のうち、内部電極パターン33の主要部33aの上に位置する部分の第2の方向Y2における寸法が40μm以下となるように、セラミックペースト34を付与することが好ましい。
【0070】
図10(f)に示す例では、内部電極パターン33の端部33bの一部の上にだけセラミックペースト34が付与されている。図10(f)に示すように、内部電極パターン33の端部33bの上には、セラミックペースト34が付与されていない部分が存在する。
【0071】
図5のステップS4では、内部電極パターン33が形成され、かつ、セラミックペースト34が付与されたセラミックグリーンシート31を複数積層する(図6(d)参照)。積層は、支持フィルム32からセラミックグリーンシート31を剥がした状態で行う。必要に応じて、積層方向の両外側に、内部電極パターン33が形成されていないセラミックグリーンシート31を積層してもよい。
【0072】
ステップS5では、積層された複数のセラミックグリーンシート31をプレスする。プレス方法としては、例えば、静水圧プレスや剛体プレス等が挙げられる。
【0073】
上述したように、その少なくとも一部が内部電極パターン33の端部33bと重なるように、セラミックペースト34が付与されている。したがって、プレス時に、内部電極パターン33の端部33bの変形を抑制することができる。
【0074】
また、図10(d)や図10(e)に示すように、印刷ズレにより、内部電極パターン33の主要部33aの上にまでセラミックペースト34を付与してしまった場合でも、プレスによって、主要部33aの上に付与されたセラミックペースト34は、段差領域35の方に移動するので、段差の助長を抑制することができる。特に、第2の方向Y2に隣り合う2つの内部電極パターン33の間に位置する段差領域35の第2の方向Y2における寸法が40μm以上であり、かつ、第1の方向Y1における寸法が内部電極パターン33の第1の方向Y1における寸法以上とすることにより、主要部33aの上に付与されたセラミックペースト34が移動できる領域を確保して、段差の助長を効果的に抑制することができる。
【0075】
また、セラミックグリーンシート31の主面31a上に段差領域35が存在するので、プレスによって、内部電極パターン33が形成されている部分と比べて、段差領域35が存在する部分が圧縮される。したがって、完成後の積層セラミック電子部品において、図3に示すように、内部電極13a、13bが存在しない部分が屈曲して角部が鈍角となるので、角部を起点としたクラックの発生を抑制することができるとともに、内部電極13a、13bが存在しない領域における層間の剥がれを抑制することができる。
【0076】
ステップS6では、プレスされた複数のセラミックグリーンシート31を切断する。プレスされた複数のセラミックグリーンシート31は、第1の方向Y1および第2の方向Y2のそれぞれの方向に切断する。図8の一点鎖線で示す位置は、切断位置の一例であるが、セラミックグリーンシート31を第1の方向Y1に切断する際、第2の方向に隣り合う2つの内部電極パターン33の間であって、かつ、段差領域35の位置で切断する。
【0077】
ステップS7では、切断により得られたチップを焼成する。この後、必要に応じて、外部電極を形成する。
【0078】
以上の工程により、積層セラミック電子部品が得られる。
【0079】
参考実施形態>
図11は、参考実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。図11に示すフローチャートにおいて、図5に示すフローチャートと同じ処理を行うステップには、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0080】
第1の実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法では、セラミックグリーンシート31の主面31a上に内部電極パターン33を形成してから、セラミックペースト34を付与した。これに対して、参考実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法では、セラミックグリーンシート31の主面31a上にセラミックペースト34を付与してから、内部電極パターン33を形成する。
【0081】
図11に示すフローチャートのステップS1に続くステップS11では、セラミックグリーンシート31の主面31a上に、セラミックペースト34を付与する(図12(a)参照)。セラミックペースト34は、主要部34aと、主要部34aの外側に位置し、主要部34aよりも厚みの薄い端部34bとを有する。
【0082】
ステップS11に続くステップS12では、セラミックグリーンシート31の主面31a上に、内部電極パターン33を複数形成する(図12(b)参照)。本実施形態でも、セラミックペースト34の少なくとも一部が内部電極パターン33の端部33bと重なるようにする。本実施形態では、セラミックペースト34の付与後に内部電極パターン33を形成するので、セラミックペースト34の一部の上、より詳細には、セラミックペースト34の端部34bの上に、内部電極パターン33の端部33bが重なるように、内部電極パターン33を形成する。
【0083】
本実施形態でも、第2の方向Y2に隣り合う2つの内部電極パターン33の間に位置する段差領域35の第2の方向Y2における寸法は40μm以上であり、かつ、第1の方向Y1における寸法が内部電極パターン33の第1の方向Y1における寸法以上となるように、内部電極パターン33の形成およびセラミックペースト34の付与を行う。
【0084】
ここで、図13に示すように、印刷ズレによって、内部電極パターン33がセラミックペースト34の主要部34aの上にまで形成されてしまう場合がある。この場合、セラミックペースト34と内部電極パターン33とが重なった位置において、セラミックペースト34および内部電極パターン33のうち、積層方向の下側に位置するものを下層、上側に位置するものを上層とすると、上層のうち、下層の主要部の上に位置する部分の第2の方向における寸法が40μm以下となるようにすることが好ましい。
【0085】
本実施形態では、上層が内部電極パターン33で、下層がセラミックペースト34であるため、内部電極パターン33のうち、セラミックペースト34の主要部34aの上に位置する部分の第2の方向Y2における寸法L5が40μm以下であることが好ましい。内部電極パターン33の上記寸法L5を40μm以下とすることにより、段差の助長を抑制することができる。
【0086】
ステップS12に続くステップS4以後の処理は、図5に示すフローチャートのステップS4以後の処理と同じである。
【0087】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 積層セラミックコンデンサ
11 積層体
12 セラミック層
13a 第1の内部電極
13b 第2の内部電極
14a 第1の外部電極
14b 第2の外部電極
31 セラミックグリーンシート
32 支持フィルム
33 内部電極パターン
33a 内部電極パターンの主要部
33b 内部電極パターンの端部
34 セラミックペースト
34a セラミックペーストの主要部
34b セラミックペーストの端部
35 段差領域
40 基準面
121 内層セラミック層
122 外層セラミック層
123 電極端部保護部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13