(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】中子造型装置
(51)【国際特許分類】
B22C 15/02 20060101AFI20221206BHJP
B22C 5/16 20060101ALI20221206BHJP
B22C 5/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B22C15/02 A
B22C5/16
B22C5/04 D
(21)【出願番号】P 2019228939
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】梶田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】淺野 潤司
(72)【発明者】
【氏名】梅田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 将太
(72)【発明者】
【氏名】光武 正臣
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-131913(JP,A)
【文献】特開2019-202323(JP,A)
【文献】特公昭52-006784(JP,B1)
【文献】特公昭49-034284(JP,B1)
【文献】実公昭49-015771(JP,Y1)
【文献】特開平03-042142(JP,A)
【文献】特開2008-062284(JP,A)
【文献】実公昭48-007289(JP,Y1)
【文献】実開昭50-101511(JP,U)
【文献】中国実用新案第209439402(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中子砂を貯蔵する貯蔵部と、
前記貯蔵部が連結された投入口から前記中子砂が投入される筒状の混練釜と、
前記混練釜の内部において前記混練釜の長手方向に延設されると共に、前記長手方向に平行な軸周りに回転し、前記中子砂を混練する混練棒と、
混練された前記中子砂を前記混練釜の前記長手方向の一端から射出するピストンと、を備え、
前記混練釜は、第1軸周りに回動して横倒しの状態と縦起こしの状態とに移行でき、
前記横倒しの状態において、前記混練釜の上側に位置する前記投入口から前記中子砂を前記混練釜に投入し、前記混練棒によって混練し、
前記縦起こしの状態において、前記ピストンによって下方向に前記中子砂を射出して型に充填する、中子造型装置であって、
前記貯蔵部は、
前記横倒しの状態において、前記投入口に当接しつつ、前記第1軸と平行な第2軸周りに回動して前記投入口を開閉する球体状のバルブを備えると共に、
前記第2軸周りに回動可能に前記混練釜に連結されており、前記混練釜が回動する際、前記バルブを前記投入口に当接させたまま、姿勢を維持する、
中子造型装置。
【請求項2】
前記第1軸及び前記第2軸をジョイントとする原動節を有する平行リンク機構を備えている、
請求項1に記載の中子造型装置。
【請求項3】
前記バルブが、樹脂製である、
請求項1又は2に記載の中子造型装置。
【請求項4】
周縁が環状の樹脂製シール部材に覆われた前記投入口に前記バルブが当接している、
請求項1~3のいずれか一項に記載の中子造型装置。
【請求項5】
前記バルブと樹脂製シール部材とが異なる耐摩耗性樹脂から構成されている、
請求項4に記載の中子造型装置。
【請求項6】
前記樹脂製シール部材における前記混練釜の外周面側に、前記投入口の周縁に沿った環状の溝が設けられている、
請求項4又は5に記載の中子造型装置。
【請求項7】
前記樹脂製シール部材と前記混練釜の外周面との間に、ゴム製パッキンが設けられている、
請求項4~6のいずれか一項に記載の中子造型装置。
【請求項8】
前記バルブは、前記投入口と当接しない部位において、球体の一部が欠けた形状を有している、
請求項1~7のいずれか一項に記載の中子造型装置。
【請求項9】
前記貯蔵部は、
前記混練釜に投入する所定量の前記中子砂を貯蔵するホッパーと、
前記ホッパーの重さを計量する秤量計と、を備え、
前記ホッパーに前記中子砂を供給しつつ、前記ホッパーに貯蔵する前記中子砂を秤量する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の中子造型装置。
【請求項10】
前記貯蔵部は、
前記ホッパーに供給する前記中子砂を貯蔵する予備タンクと、
前記予備タンクと前記ホッパーとを接続する配管上に設けられたバルブと、をさらに備え、
前記予備タンクから前記ホッパーに前記中子砂を供給する際、前記秤量計によって測定された前記ホッパーの重さに基づいて、前記バルブの開度を調節する、
請求項9に記載の中子造型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中子造型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
混練釜において中子砂をバインダー等と共に混練し、混練された中子砂(混練砂)を金型内に射出して充填することによって中子を造型する中子造型装置が知られている。特許文献1に開示されているように、発明者らが開発した中子造型装置では、混練釜が横倒しの状態で中子砂を混練している。この中子造型装置では、混練釜が横倒しの状態のまま水平方向に混練砂を射出するため、混練砂が金型の奥隅まで充填し難い。
【0003】
そこで、発明者らは、特許文献2に開示されているように、混練釜が横倒しの状態で中子砂を混練した後、混練釜を縦起こしの状態とし、混練砂を下方向に射出して金型に充填する中子造型装置を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-131913号公報
【文献】特開2019-202323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、特許文献2に開示された中子造型装置に関し、以下の課題を見出した。
特許文献1、2に開示された中子造型装置では、横倒しの状態での混練釜の上側に中子砂を投入するための投入口が設けられている。特許文献1、2には明示されていないが、混練釜の上部には、混練釜に投入する所定量の中子砂を貯蔵する貯蔵部(例えばホッパーなど)が設けられており、投入口に連結されている。そして、投入口から貯蔵部の配管に混練釜内の湿気が入り込まないように、投入口を開閉させるバルブが設けられている。
【0006】
特許文献2に開示された中子造型装置では、混練釜が横倒しの状態から縦起こしの状態に回動する際、貯蔵部の姿勢は混練釜の姿勢によらず維持させる必要がある。そのため、混練釜が横倒しの状態だけでなく、混練釜が縦起こしの状態においても、同一のバルブで混練釜の投入口をシールするのは難しかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、混練釜が横倒しの状態だけでなく、縦起こしの状態においても、同一のバルブで混練釜の投入口をシール可能な中子造型装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る中子造型装置は、
中子砂を貯蔵する貯蔵部と、
前記貯蔵部が連結された投入口から前記中子砂が投入される筒状の混練釜と、
前記混練釜の内部において前記混練釜の長手方向に延設されると共に、前記長手方向に平行な軸周りに回転し、前記中子砂を混練する混練棒と、
混練された前記中子砂を前記混練釜の前記長手方向の一端から射出するピストンと、を備え、
前記混練釜は、第1軸周りに回動して横倒しの状態と縦起こしの状態とに移行でき、
前記横倒しの状態において、前記混練釜の上側に位置する前記投入口から前記中子砂を前記混練釜に投入し、前記混練棒によって混練し、
前記縦起こしの状態において、前記ピストンによって下方向に前記中子砂を射出して型に充填する、中子造型装置であって、
前記貯蔵部は、
前記横倒しの状態において、前記投入口に当接しつつ、前記第1軸と平行な第2軸周りに回動して前記投入口を開閉する球体状のバルブを備えると共に、
前記第2軸周りに回動可能に前記混練釜に連結されており、前記混練釜が回動する際、前記バルブを前記投入口に当接させたまま、姿勢を維持する。
【0009】
本発明の一態様に係る中子造型装置では、貯蔵部は、横倒しの状態において、混練釜の投入口に当接しつつ、混練釜の回動軸である第1軸と平行な第2軸周りに回動して投入口を開閉する球体状のバルブを備えると共に、第2軸周りに回動可能に混練釜に連結されており、混練釜が回動する際、バルブを前記投入口に当接させたまま、姿勢を維持する。すなわち、本発明の一態様に係る中子造型装置では、混練釜が横倒しの状態だけでなく、縦起こしの状態においても、同一のバルブで投入口をシールできる。
【0010】
前記第1軸及び前記第2軸をジョイントとする原動節を有する平行リンク機構を備えていてもよい。このような構成は、メンテナンス性に優れている。
【0011】
バルブが、樹脂製であってもよい。また、周縁が環状の樹脂製シール部材に覆われた前記投入口に前記バルブが当接していてもよい。このような構成によって、バルブと投入口との間のシール性が向上する。
【0012】
前記バルブと樹脂製シール部材とが異なる耐摩耗性樹脂から構成されていてもよい。このような構成によって、バルブと投入口との間の接着を抑制できる。
【0013】
前記樹脂製シール部材における前記混練釜の外周面側に、前記投入口の周縁に沿った環状の溝が設けられていてもよい。また、前記樹脂製シール部材と前記混練釜の外周面との間に、ゴム製パッキンが設けられていてもよい。このような構成によって、バルブと投入口との間のシール性がさらに向上する。
【0014】
前記バルブは、前記投入口と当接しない部位において、球体の一部が欠けた形状を有していてもよい。このような構成によって、バルブを小型化、軽量化できる。
【0015】
前記貯蔵部は、前記混練釜に投入する所定量の前記中子砂を貯蔵するホッパーと、
前記ホッパーの重さを計量する秤量計と、を備え、前記ホッパーに前記中子砂を供給しつつ、前記ホッパーに貯蔵する前記中子砂を秤量してもよい。このような構成では、秤量と貯蔵とを同時に行えるため、生産性に優れている。
【0016】
前記貯蔵部は、前記ホッパーに供給する前記中子砂を貯蔵する予備タンクと、前記予備タンクと前記ホッパーとを接続する配管上に設けられたバルブと、をさらに備え、前記予備タンクから前記ホッパーに前記中子砂を供給する際、前記秤量計によって測定された前記ホッパーの重さに基づいて、前記バルブの開度を調節してもよい。このような構成によって、秤量ホッパーに投入する中子砂の重さを精度良く制御できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、混練釜が横倒しの状態だけでなく、縦起こしの状態においても、同一のバルブで混練釜の投入口をシール可能な中子造型装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態に係る中子造型装置の動作を示す側面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る中子造型装置の断面図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る中子造型装置の断面図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る中子造型装置の断面図である。
【
図6】バルブV3及び投入口11aの詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0020】
(第1の実施形態)
<中子造型装置の全体構成及び動作>
まず、
図1を参照して、本実施の形態に係る中子造型装置の全体構成及び動作について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る中子造型装置の動作を示す側面図である。
なお、当然のことながら、
図1及びその他の図面に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正方向が鉛直上向き、xy平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る中子造型装置は、混練部10、貯蔵部20、及びリンクL1、L2を備えている。ここでは、
図1を参照して、各構成要素の概要について説明し、詳細については後述する。
混練部10は、中子砂が投入されて混練する混練釜11と、混練釜11を支持する回動支持部材13と、混練された中子砂を射出するピストン部14とを備えている。
貯蔵部20は、中子砂を一時的に貯蔵する予備タンク21と、混練釜11に投入する所定量の中子砂を秤量しつつ貯蔵する秤量ホッパー22と、予備タンク21及び秤量ホッパー22を支持する支持部材23とを備えている。
【0022】
ここで、混練釜11は、混練釜11に固定されたリンクL1を介して回動支持部材13に軸(第1軸)A1周りに回動可能に支持されている。すなわち、
図1に示すように、混練釜11は、軸A1周りに90°回動することによって、横倒しの状態と縦起こしの状態とに移行可能である。
図1左側に示した横倒しの状態において、中子砂を秤量ホッパー22から混練釜11に投入し、投入された中子砂を混練する。そして、
図1右側に示した縦起こしの状態の状態において、ピストン部14によって下方向(z軸負方向)に中子砂を射出して型に充填する。
図1中央には、横倒しの状態から縦起こしの状態へ移行中、又は縦起こしの状態から横倒しの状態へ移行中の状態が示されている。
【0023】
また、詳細については後述するが、貯蔵部20の姿勢は、支持部材23によって定まる。
図1に示すように、支持部材23は軸(第2軸)A2周りに回動可能にリンクL1に連結されている。リンクL1は、混練釜11に固定されているため、支持部材23(すなわち貯蔵部20)は軸A2周りに回動可能に混練釜11に連結されている。そして、リンクL2は、回動支持部材13に軸A3周りに回動可能に連結されていると共に、支持部材23に軸A4周りに回動可能に連結されている。
【0024】
ここで、回動支持部材13、支持部材23、リンクL1、L2は、4つの軸A1~A4をジョイントとする平行リンク機構を構成している。
図1の例では、回動支持部材13は、地面に対して固定されており、平行リンク機構における静止節に該当する。混練釜11に固定されたリンクL1は原動節に該当する。そして、リンクL2は従動節、支持部材23は中間節に該当する。
【0025】
このような構成によって、本実施形態に係る中子造型装置は、混練釜11が回動する際、貯蔵部20が混練釜11に連結したまま、姿勢を維持する。そのため、混練釜11が回動する際、混練釜11から貯蔵部20を切り離す必要がなく、切り離し動作や連結動作が不要であるため、中子の生産性に優れている。
【0026】
なお、混練釜11に固定されたリンクL1が原動節であればよく、支持部材23を静止節とし、回動支持部材13を中間節としてもよい。
また、貯蔵部20が、混練釜11の回動軸A1と平行な軸A2周りに回動可能に混練釜11に連結されており、混練釜11が回動する際、貯蔵部20は混練釜11に連結したまま、姿勢を維持すればよい。そのため、平行リンク機構に代えて、軸A1、A2をベルトで繋いだり、ギヤ(歯車)で繋いだりすることによって、貯蔵部20の姿勢を維持してもよい。但し、平行リンク機構は、ベルトやギヤを用いる方式に比べ、中子砂が付着しても不具合が発生し難く、メンテナンス性に優れている。
【0027】
<中子造型装置の詳細構成>
次に、
図1~
図4を参照して、本実施の形態に係る中子造型装置の各構成要素の詳細について説明する。
図2~
図4は、第1の実施の形態に係る中子造型装置の断面図である。
図2、
図3は、
図1左側に示した混練釜11が横倒しの状態における断面図である。
図4は、
図1右側に示した混練釜11が縦起こしの状態における断面図である。
図2~
図4に示すように、本実施の形態に係る中子造型装置は、混練部10、貯蔵部20、リンクL1、L2、及び制御部30を備えている。
【0028】
<混練部10の構成>
混練部10の構成について説明する。
図2~
図4に示すように、混練部10は、混練釜11、混練棒12、回動支持部材13、及びピストン部14を備えている。
混練釜11は、貯蔵部20が連結された投入口11aから中子砂S1が投入される筒状の部材である。例えば、混練釜11は円筒形状を有する。
図2、
図3に示すように、投入口11aは、混練釜11が横倒しの状態において、混練釜11の上側に設けられている。そのため、重力によって中子砂S1を混練釜11の内部に投入できる。
【0029】
また、混練釜11の長手方向の一端面には、混練された中子砂S1を射出するための射出口11bが設けられており、他端面にはピストン部14が設けられている。図の例では、射出口11bは、混練釜11の端面から突出するように設けられている。中子砂S1を射出する際、射出口11bに中子成形型(不図示)が連結される。
【0030】
混練釜11の内部に投入された中子砂S1は、バインダーと共に混練される。中子砂S1は、天然砂でも人工砂でもよい。バインダーは、例えば水ガラス及び水を含有する無機バインダーであるが、有機バインダーでもよい。バインダーは、混練釜11の内周面に設けられた噴射機(不図示)から噴射される。噴射機は、例えば投入口11aの近傍に設けられている。
【0031】
混練棒12が、混練釜11の内部において、混練釜11の長手方向の略全長に亘って、延設されている。混練棒12は複数本設けられており、例えば円板状の回転ベース12aに固定されている。回転ベース12aは、混練釜11の内部においてピストン部14側の端部に設けられており、混練釜11の長手方向に平行な軸周りに回転する。そのため、混練釜11に投入された中子砂S1が、混練棒12によって混練される。
【0032】
混練棒12は、例えば、回転軸を中心として放射状に配置される。また、混練棒12は、回転軸を中心として点対称になるようにS字状に配置されてもよい。混練棒12の形状は、回転軸に平行に延設される柱状であれば、特に限定されない。混練棒12の断面形状は、例えば円形状であるが、楕円状、多角形状等であってもよい。
【0033】
図示しないが、回転ベース12aは外歯歯車であって、回転ベース12aの周縁部に配置された歯車を介してモータ等の駆動源によって回転駆動される。当該駆動源の動作は、例えば制御部30によって制御される。
なお、特に限定されないが、本実施形態では、回転ベース12aの回転軸は、円筒状の混練釜11の中心軸に一致している。
【0034】
上述の通り、
図1に示したように、混練釜11は、混練釜11に固定されたリンクL1を介して回動支持部材13に軸(第1軸)A1周りに回動可能に支持されている。すなわち、
図1に示すように、混練釜11は、軸A1周りに90°回動することによって、横倒しの状態と縦起こしの状態とに移行可能である。
なお、混練釜11は、軸A1に連結されたモータ等の駆動源(不図示)によって回転駆動される。当該駆動源の動作は、例えば制御部30によって制御される。
【0035】
図2、
図3に示すように、混練釜11が横倒しの状態において、混練釜11の上側に位置する投入口11aから中子砂S1を混練釜11に投入し、投入された中子砂S1を混練棒12によって混練する。
なお、後述するバルブV2及びバルブV3を開くと、秤量ホッパー22に貯蔵された中子砂S1が重力によって混練釜11に投入される。
図2はバルブV3が閉じた状態、
図3はバルブV3が開いた状態を示している。混練釜11内の湿気を遮断するため、中子砂S1を投入する時以外、バルブV2、V3は閉じている。
【0036】
そして、
図4に示すように、混練釜11が縦起こしの状態において、ピストン部14によって下方向(z軸負方向)に中子砂S1を射出して型40に充填する。図の例では、型40は、上型41と下型42とから構成され、両者の間にキャビティ43が形成されている。ピストン部14によって混練釜11から射出された中子砂S1がキャビティ43内に充填され、中子が造形される。当該中子は、例えば、車載用エンジン部品の鋳造に使用される。
【0037】
図示したピストン部14は、ボールねじ式の電動ピストンであって、ピストンヘッド141、ピストンロッド142、及びモータ143を備えている。ピストンヘッド141は、混練釜11の内部に収容されており、回転ベース12aよりも射出口11b側に配置されている。ピストンヘッド141は、混練釜11の端面を貫通するピストンロッド142を介して連結されたモータ143によって駆動される。モータ143の動作は、例えば制御部30によって制御される。
【0038】
ピストンヘッド141は、射出時以外は、混練釜11におけるピストン部14側の端部において待機している。射出時には、ピストンヘッド141が混練釜11の長手方向に前進し、混練された中子砂S1を射出口11bから射出する。上述の通り、
図4に示したように、混練釜11が縦起こしの状態において、中子砂S1を射出する。
図4には、ピストンヘッド141が降下し、中子砂S1が射出された様子が示されている。
【0039】
射出口11bの根元すなわち混練釜11の内端面には、例えばゴム製の栓11cが取り付けられている。栓11cにより、混練釜11に投入された中子砂S1が混練釜11から漏れることを抑制できる。他方、栓11cの中央部は、例えば平面視十字状で厚さ方向に貫通した切り込みが設けられている。そのため、混練釜11内の中子砂S1を加圧して射出する際には、切り込みによって栓11cが開口する。
【0040】
混練釜11の内周面とピストンヘッド141の外周面との間は、シール部材等によってシール性が保持されている。また、ピストンヘッド141には混練棒12を嵌挿させる貫通孔が設けられている。この貫通孔の内周面と混練棒12の外周面との間も、シール部材等によってシール性が保持されている。このような構成によって、混練釜11内の中子砂S1を漏らさず射出口11bから射出できる。ピストンヘッド141は、混練棒12と共に回転できる。
なお、ピストン部14は、電動ピストンであるが、何ら限定されず、空気圧や油圧等によって駆動するピストンでもよい。
【0041】
<貯蔵部20の構成>
次に、貯蔵部20の構成について説明する。
図2~
図4に示すように、貯蔵部20は、予備タンク21、秤量ホッパー22、支持部材23、パイプP1~P3、バルブV1~V3を備えている。
【0042】
予備タンク21は、秤量ホッパー22に供給する中子砂S1を一時的に貯蔵するタンクである。図の例では、予備タンク21は、上部が円筒形状を有し、下部は逆円錐形状を有している。図示しないが、予備タンク21には、より大型の貯蔵タンクから配管等を介して中子砂S1が供給される。予備タンク21と秤量ホッパー22とはパイプP1によって接続されている。
【0043】
秤量ホッパー22は、予備タンク21の下側に設けられており、予備タンク21の下部と秤量ホッパー22の上部とが、パイプP1によって接続されている。パイプP1にはバルブV1が設けられている。バルブV1を開くと、予備タンク21に貯蔵された中子砂S1が重力によって秤量ホッパー22に投入される。バルブV1の開度を調節することによって、中子砂S1の投入量を微調節できる。詳細には後述するように、バルブV1の開度は、例えば制御部30によって制御される。
【0044】
秤量ホッパー22は、混練釜11に投入するために秤量された所定量の中子砂S1を貯蔵する。ここで、
図5は、秤量ホッパー22の詳細な断面図である。
図5に示すように、貯蔵部20は、秤量ホッパー22の重さを計量する秤量計24及び秤量計24を支持する秤量支持部材25を備えている。秤量ホッパー22に中子砂S1を供給しつつ、秤量ホッパー22に貯蔵する中子砂S1を秤量する。秤量と貯蔵とを同時に行うため、生産性に優れている。
【0045】
秤量ホッパー22は、本体部221及び蓋部222を備えている。
本体部221は、逆円錐形状を有し、上部の外周面に外側に突出したフランジ221aを備えている。
蓋部222は、円板状の被せ蓋であり、本体部221の上端部と嵌合している。蓋部222の中央部には、貫通孔が設けられており、パイプP1がスライド自在に嵌入されている。
【0046】
本体部221の下端からはパイプP2が延設されている。パイプP2の下端部は、パイプP3にスライド自在に嵌入されている。
また、パイプP2にはバルブV2が設けられている。バルブV2及び後述するバルブV3を開くと、秤量ホッパー22に貯蔵された中子砂S1が重力によって混練釜11に投入される。上述の通り、
図3は、バルブV3が開いた状態を示している。バルブV2及びバルブV3の開閉は、例えば制御部30によって制御される。
【0047】
秤量計24は、例えばロードセルであって、秤量ホッパー22の重さを計量する。秤量計24には、秤量ホッパー22のフランジ221aが載置されている。詳細には、秤量計24には、秤量ホッパー22(本体部221及び蓋部222)、秤量ホッパー22内の中子砂S1、パイプP2、及びバルブV2の重さが加わる。
【0048】
上述の通り、蓋部222の貫通孔にパイプP1がスライド自在に嵌入されているため、パイプP1よりも上側に位置する部材の重さは、秤量計24には加わらない。また、パイプP2がパイプP3にスライド自在に嵌入されているため、パイプP3よりも下側に位置する部材の重さは、秤量計24には加わらない。
【0049】
秤量計24によって測定された重さから、予備タンク21から秤量ホッパー22に投入された中子砂S1の重さを知ることができる。例えば、秤量計24によって測定された重さに基づいて、秤量ホッパー22内の中子砂S1の重さが目標値となるように、制御部30がバルブV1の開度を制御する。例えば、中子砂S1の重さが目標値に近付くにつれて、バルブV1の開度を小さくする。このような制御によって、秤量ホッパー22に投入する中子砂S1の重さを精度良く制御できる。
【0050】
図5に示すように、秤量支持部材25は、平板状の台座25aと、台座25aを支持する支柱25bとを備えている。秤量計24は、台座25aに載置され、固定されている。支柱25bは、支持部材23に固定されている。すなわち、秤量計24は、秤量支持部材25を介して、支持部材23に支持されている。
【0051】
台座25aの中央部には、秤量ホッパー22の本体部221を挿通させるための貫通孔25cが設けられている。そのため、秤量支持部材25は、秤量計24のみを支持し、秤量ホッパー22を直接支持していない。このような構成によって、秤量計24が、秤量ホッパー22の重さを秤量できる。
【0052】
他方、秤量計24は、秤量ホッパー22の重さを秤量しつつ、秤量ホッパー22を支持している。そのため、秤量支持部材25は、秤量計24を介して、秤量ホッパー22を支持している。そして、支持部材23は、秤量支持部材25及び秤量計24を介して、秤量ホッパー22を支持している。
【0053】
このように、支持部材23は、秤量ホッパー22を間接的に支持している。同様に、支持部材23は、図示しない支持部材を介して、予備タンク21も間接的に支持している。そのため、貯蔵部20の姿勢は、支持部材23によって定まる。
【0054】
ここで、
図1に示すように、支持部材23は軸(第2軸)A2周りに回動可能にリンクL1に連結されている。リンクL1は、混練釜11に固定されているため、支持部材23は軸A2周りに回動可能に混練釜11に連結されている。
また、支持部材23は、軸A4周りに回動可能にリンクL2に連結されている。このリンクL2は、回動支持部材13に軸A3周りに回動可能に連結されている。
【0055】
上述の通り、
図1に示すように、回動支持部材13、支持部材23、リンクL1、L2は、4つの軸A1~A4をジョイントとする平行リンク機構を構成している。
図1の例では、回動支持部材13は、地面に対して固定されており、平行リンク機構における静止節に該当する。混練釜11に固定されたリンクL1は原動節に該当する。そして、リンクL2は従動節、支持部材23は中間節に該当する。
【0056】
このような構成によって、本実施形態に係る中子造型装置は、混練釜11が回動する際、貯蔵部20が混練釜11に連結したまま、姿勢を維持する。そのため、混練釜11が回動する際、混練釜11から貯蔵部20を切り離す必要がなく、切り離し動作や連結動作が不要であるため、中子の生産性に優れている。
【0057】
図2~
図4に戻って説明を続ける。
パイプP3は、支持部材23に固定されている。パイプP3の一端には、上述の通り、パイプP2が嵌入されており、パイプP3の他端には、バルブV3が配置されている。このパイプP3の他端の形状は、中子砂S1が漏れないように、バルブV3の表面形状に合わせて加工されている。
【0058】
バルブV3は、
図1に示した支持部材23の回動軸A2周りに、回動可能に支持部材23に支持されている。すなわち、バルブV3は、支持部材23に対しても軸A2周りに回動できると共に、混練釜11に対して支持部材23と一緒に軸A2周りに回動できる。そのため、
図2、
図3に示すように、混練釜11が横倒しの状態において、バルブV3は、投入口11aに当接しつつ、支持部材23に対して軸A2周りに回動して投入口11aを開閉する。
【0059】
そして、
図2、
図4に示すように、混練釜11が回動する際、バルブV3を投入口11aに当接させたまま、支持部材23(すなわち貯蔵部20)が姿勢を維持できる。このように、混練釜11が横倒しの状態だけでなく、縦起こしの状態においても、同一のバルブV3で投入口11aをシールできる。支持部材23に対するバルブV3の回動動作(すなわちバルブV3の開閉)は、例えば制御部30によって制御される。
【0060】
図2~
図4に示したバルブV3は、投入口11aと接触しない不要な部位において、球体の一部を平面で切断した形状を有しているが、完全な球体形状を有していてもよい。球体の一部が欠けた形状とすることによって、バルブV3を小型化、軽量化できる。バルブV3が球体状であるため、投入口11aは略円形状である。バルブV3は、例えば樹脂製であるが、金属製等であってもよい。バルブV3は、例えば、フッ素樹脂、超高分子ポリエチレン、ポリアセタール、ポリアミド等の耐摩耗性樹脂から構成されている。
【0061】
ここで、
図6は、バルブV3及び投入口11aの詳細な断面図である。
図6は、
図2の拡大図に該当する。
図6に示すように、周縁が環状の樹脂製シール部材SL1に覆われた投入口11aに、球状のバルブV3が当接している。このような構成によって、バルブV3と投入口11aとの間のシール性が保持されている。樹脂製シール部材SL1も、バルブV3と同様に、フッ素樹脂、超高分子ポリエチレン、ポリアセタール、ポリアミド等の耐摩耗性樹脂から構成されている。ここで、バルブV3と樹脂製シール部材SL1との接着を抑制するため、例えばバルブV3と樹脂製シール部材SL1とは異なる樹脂から構成してもよい。例えば、バルブV3をフッ素樹脂から構成し、樹脂製シール部材SL1を超高分子ポリエチレンから構成する。
【0062】
図6の例では、樹脂製シール部材SL1が、投入口11aの周縁から中心側に向かって突出して設けられている。そして、樹脂製シール部材SL1において投入口11aの中心側に突出した部位は、三角形状の断面形状を有しており、その厚さが投入口11aの中心に向かって、徐々に薄くなっている。そのため、樹脂製シール部材SL1がバルブV3に密着し易い。
【0063】
また、
図6の例では、樹脂製シール部材SL1における混練釜11の外周面側に、投入口11aの周縁に沿った環状の溝SL1aが設けられている。上述の通り、樹脂製シール部材SL1の厚さが投入口11aの中心に向かって、徐々に薄くなっているため、溝SL1aも三角形状の断面形状を有している。樹脂製シール部材SL1における溝SL1aが形成された部位では、略一定の薄い肉厚となり、変形し易い。そのため、樹脂製シール部材SL1がバルブV3に密着し易く、バルブV3の熱膨張も吸収し易い。すなわち、溝SL1aを設けることによって、バルブV3と投入口11aとの間のシール性が向上する。
【0064】
さらに、
図6の例では、樹脂製シール部材SL1と混練釜11の外周面との間に、平板状かつ環状のゴム製パッキンSL2が設けられている。ゴム製パッキンSL2を設けることによって、樹脂製シール部材SL1がバルブV3にさらに密着し易くなり、バルブV3の熱膨張も吸収できる。すなわち、バルブV3と投入口11aとの間のシール性がさらに向上する。ゴム製パッキンSL2は、例えばシリコンゴムから構成されている。
【0065】
図6に示すように、バルブV3の内部には、バルブV3の回動軸A2に垂直な貫通孔V3aが形成されている。
図2(
図6)に示した状態は、バルブV3が閉じた状態であって、混練釜11の投入口11aがバルブV3によって栓がされている。他方、
図3に示した状態は、
図2に示した状態からバルブV3が軸A2周りに回動し、バルブV3が開いた状態である。バルブV3内の貫通孔V3aによって、パイプP3と混練釜11の投入口11aとが接続され、混練釜11に中子砂S1を投入できる。中子砂S1を投入する時以外、バルブV3を閉じることによって、混練釜11内の湿気がパイプP3側に入り込むことを抑制できる。
【0066】
図2~
図4に示した制御部30は、混練釜11の回動動作、混練棒12の回転動作、ピストン部14の動作、バルブV1~V3の開閉動作、開度調整等、中子造型装置におけるあらゆる動作を制御する。制御部30は、複数に分割して設けられていてもよい。
図示していないが、制御部30は、コンピュータとしての機能を有し、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算部と、各種制御プログラムやデータ等が格納されたRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶部と、を備えている。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態に係る中子造型装置では、貯蔵部20が軸A2周りに回動可能に混練釜11に連結されており、混練釜11が回動する際、貯蔵部20が混練釜11に連結したまま、姿勢を維持する。そのため、混練釜11が回動する際、混練釜11から貯蔵部20を切り離す必要がなく、切り離し動作や連結動作が不要であるため、中子の生産性に優れている。
【0068】
また、本実施形態に係る中子造型装置では、貯蔵部20が、混練釜11が横倒しの状態において、投入口11aに当接しつつ、軸A2周りに回動して投入口11aを開閉する球体状のバルブV3を備えている。そのため、
図2、
図4に示すように、混練釜11が回動する際、バルブV3を投入口11aに当接させたまま、貯蔵部20が姿勢を維持できる。すなわち、混練釜11が横倒しの状態だけでなく、縦起こしの状態においても、同一のバルブV3で投入口11aをシールできる。
【0069】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 混練部
11 混練釜
11a 投入口
11b 射出口
11c 栓
12 混練棒
12a 回転ベース
13 回動支持部材
14 ピストン部
141 ピストンヘッド
142 ピストンロッド
143 モータ
20 貯蔵部
21 予備タンク
22 秤量ホッパー
221 本体部
221a フランジ
222 蓋部
23 支持部材
24 秤量計
25 秤量支持部材
25a 台座
25b 支柱
25c 貫通孔
30 制御部
40 型
41 上型
42 下型
43 キャビティ
L1、L2 リンク
P1~P3 パイプ
S1 中子砂
SL1 樹脂製シール部材
SL1a 溝
SL2 ゴム製パッキン
V1~V3 バルブ
V3a 貫通孔