(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20221206BHJP
【FI】
H02K11/33
(21)【出願番号】P 2019532664
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2018027814
(87)【国際公開番号】W WO2019022110
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2017147114
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥畑 佳久
(72)【発明者】
【氏名】梶田 国博
(72)【発明者】
【氏名】小長谷 美香
(72)【発明者】
【氏名】伊東 陽介
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-139137(JP,A)
【文献】実開昭54-028008(JP,U)
【文献】特開2012-222983(JP,A)
【文献】特開2008-029127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる中心軸に沿って配置されるモータシャフトを有するロータと、
前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、
前記ステータと電気的に接続されるインバータ部と、
前記ステータおよび前記インバータ部を収容するハウジングと
、
を備え、
前記ハウジングは、前記ステータを収容するステータ収容部と、前記ステータ収容部の径方向外側に位置し前記インバータ部を収容するインバータ収容部と、前記ステータ収容部と前記インバータ収容部との間に位置する仕切り壁部とを有する単一の部材であり、
前記ハウジングの軸方向一方側の端部に、前記ステータの少なくとも一部、前記仕切り壁部の軸方向一方側の端部、および前記インバータ収容部の少なくとも一部が露出されるハウジング開口部を有し、
前記ハウジングは、周壁部、底壁部および角筒部を有し、
前記底壁部は、前記周壁部の軸方向他方側の端部に設けられ、
前期ステータ収容部は、前記周壁部および前記底壁部を有し、
前期角筒部は、前記周壁部から上側に延びる角筒状であり、
前記インバータ収容部は、前記周壁部および前記角筒部にて構成され、
前記角筒部は、前記角筒部を構成する壁部のうち軸方向一方側の壁部を軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔の下端部は、前記周壁部の軸方向一方側の開口と繋がり、
前記ハウジング開口部は、前記貫通孔と前記周壁部の軸方向一方側の開口とで構成され、
前記ハウジング開口部の内側において、前記ステータから延びる三相用コイル線が、前記仕切り壁部の端部を通って前記インバータ部まで延び、前記インバータ部の軸方向の一方の端部に設けられるコネクタ端子に接続されており、
前記ハウジング開口部を覆うカバー部材を有する、
モータ。
【請求項2】
前記ステータからU相、V相、W相ごとに複数のコイル線が束ねられた3本の三相用配線束が延び、前記三相用配線束が前記インバータ部に接続される、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ステータから複数の中性点用コイル線が束ねられた中性点用配線束が延び、前記中性点用配線束が前記ハウジング開口部の内部領域に固定される、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記中性点用配線束が、前記三相用配線束に固定される、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記ステータから2本の前記中性点用配線束が延び、各々の前記中性点用配線束が互いに異なる前記三相用配線束に固定される、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記中性点用配線束は絶縁テープにより固定される、請求項3から5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記コネクタ端子は圧着端子である、請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のモータ駆動装置として、モータのハウジングにインバータを取り付けたモータ駆動装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータとインバータを一体化する場合、モータとインバータはハウジングの内部で電気的に接続される。従来は、バスバーおよびコネクタを用いてモータとインバータとが電気接続されていた。そのため、部品点数が多くなり、また機種毎に専用のバスバーが必要であった。
【0005】
本発明の一態様は、ハウジングの内部において簡便にモータとインバータを電気接続可能なモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、一方向に延びる中心軸に沿って配置されるモータシャフトを有するロータと、前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、前記ステータと電気的に接続されるインバータ部と、前記ステータおよび前記インバータ部を収容するハウジングとを備え、前記ハウジングは、前記ステータを収容するステータ収容部と、前記ステータ収容部の径方向外側に位置し前記インバータ部を収容するインバータ収容部と、前記ステータ収容部と前記インバータ収容部との間に位置する仕切り壁部とを有する単一の部材であり、前記ハウジングの軸方向一方側の端部に、前記ステータの少なくとも一部、前記仕切り壁部の軸方向一方側の端部、および前記インバータ収容部の少なくとも一部が露出されるハウジング開口部を有し、前記ハウジングは、周壁部、底壁部および角筒部を有し、前記底壁部は、前記周壁部の軸方向他方側の端部に設けられ、前期ステータ収容部は、前記周壁部および前記底壁部を有し、前期角筒部は、前記周壁部から上側に延びる角筒状であり、前記インバータ収容部は、前記周壁部および前記角筒部にて構成され、前記角筒部は、前記角筒部を構成する壁部のうち軸方向一方側の壁部を軸方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔の下端部は、前記周壁部の軸方向一方側の開口と繋がり、前記ハウジング開口部は、前記貫通孔と前記周壁部の軸方向一方側の開口とで構成され、前記ハウジング開口部の内側において、前記ステータから延びる三相用コイル線が、前記仕切り壁部の端部を通って前記インバータ部まで延び、前記インバータ部の軸方向の一方の端部に設けられるコネクタ端子に接続されており、前記ハウジング開口部を覆うカバー部材を有する、モータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、ハウジングの内部において簡便にモータとインバータを電気接続可能なモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態のモータを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のモータを示す図であって、
図1におけるII-II断面図である。
【
図3】
図3は、カバー部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、インバータ部とコイル線との接続部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図に示すZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする鉛直方向Zである。Y軸方向は、各図に示す一方向に延びる中心軸Jと平行な方向であり、鉛直方向Zと直交する方向である。以下の説明においては、中心軸Jと平行な方向、すなわちY軸方向を「軸方向Y」と呼ぶ。また、軸方向Yの正の側を、「軸方向一方側」と呼び、軸方向Yの負の側を、「軸方向他方側」と呼ぶ。各図に示すX軸方向は、軸方向Yおよび鉛直方向Zの両方と直交する方向である。以下の説明においては、X軸方向を「幅方向X」と呼ぶ。また、幅方向Xの正の側を「幅方向一方側」と呼び、幅方向Xの負の側を「幅方向他方側」と呼ぶ。本実施形態において、鉛直方向Zは、所定方向に相当する。
【0010】
また、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向θ」と呼ぶ。また、周方向θにおいて、軸方向他方側から軸方向一方側に向かって視て、時計回りに進む側、すなわち図において周方向θを示す矢印の進む側を「周方向一方側」と呼び、反時計回りに進む側、すなわち図において周方向θを示す矢印の進む側と逆側を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0011】
なお、鉛直方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0012】
図1および
図2に示すように、本実施形態のモータ1は、ハウジング10と、蓋部11と、カバー部材12と、センサカバー13と、中心軸Jに沿って配置されるモータシャフト21を有するロータ20と、ステータ30と、インバータユニット50と、コネクタ部18と、回転検出部70と、を備える。
【0013】
図2に示すように、ハウジング10は、ロータ20とステータ30と回転検出部70とインバータユニット50とを収容する。ハウジング10は、単一の部材である。ハウジング10は、例えば、砂型鋳造で作製される。ハウジング10は、周壁部10bと、底壁部10aと、ベアリング保持部10cと、角筒部10eと、を有する。
【0014】
周壁部10bは、ロータ20およびステータ30の径方向外側においてロータ20およびステータ30を囲む筒状である。本実施形態において周壁部10bは、中心軸Jを中心とする略円筒状である。周壁部10bは、軸方向一方側に開口する。周壁部10bは、ステータ30およびインバータユニット50を冷却する冷却部60を有する。
【0015】
底壁部10aは、周壁部10bの軸方向他方側の端部に設けられる。底壁部10aは、周壁部10bの軸方向他方側を塞ぐ。底壁部10aは、底壁部10aを軸方向Yに貫通するセンサ収容部10gを有する。センサ収容部10gは、軸方向Yに沿って視て、例えば、中心軸Jを中心とする円形状である。底壁部10aと周壁部10bとによって、ステータ収容部14が構成される。すなわち、ハウジング10は、周壁部10bと底壁部10aとを有する有底筒状のステータ収容部14を有する。
【0016】
ベアリング保持部10cは、底壁部10aの軸方向一方側の面におけるセンサ収容部10gの周縁部から軸方向一方側に突出する円筒状である。ベアリング保持部10cは、後述するロータコア22よりも軸方向他方側においてモータシャフト21を支持するベアリングを保持する。
【0017】
図1および
図2に示すように、角筒部10eは、周壁部10bから上側に延びる角筒状である。角筒部10eは、上側に開口する。本実施形態において角筒部10eは、例えば、正方形筒状である。
図2に示すように、角筒部10eを構成する壁部のうち軸方向他方側の壁部は、底壁部10aの上端部に繋がる。角筒部10eは、角筒部10eを構成する壁部のうち軸方向一方側の壁部を軸方向Yに貫通する貫通孔10fを有する。貫通孔10fの下端部は、周壁部10bの軸方向一方側の開口と繋がる。貫通孔10fと、周壁部10bの軸方向一方側の開口とが、ハウジング開口部10Aを構成する。角筒部10eと周壁部10bとによって、インバータ収容部15が構成される。すなわち、ハウジング10は、インバータ収容部15を有する。
【0018】
インバータ収容部15は、ステータ収容部14の径方向外側に位置する。本実施形態においてインバータ収容部15は、軸方向Yと直交する鉛直方向Zにおいて、ステータ収容部14の上側に位置する。ステータ収容部14とインバータ収容部15とは、仕切り壁部10dによって鉛直方向Zに仕切られる。仕切り壁部10dは、周壁部10bの上側の部分である。すなわち、周壁部10bは、ステータ収容部14とインバータ収容部15とを仕切る仕切り壁部10dを有する。
【0019】
図2に示す蓋部11は、板面が鉛直方向Zと直交する板状である。蓋部11は、角筒部10eの上端部に固定される。蓋部11は、角筒部10eの上側の開口を閉塞する。
図1から
図3に示すように、カバー部材12は、板面が軸方向Yと直交する板状である。カバー部材12は、周壁部10bおよび角筒部10eの軸方向一方側の面に固定される。カバー部材12は、ハウジング開口部10Aを閉塞する。
【0020】
図2および
図3に示すように、カバー部材12は、円板状のステータカバー部12Aと、ステータカバー部12Aの上側へ延びる矩形状のインバータカバー部12Bとを有する。ステータカバー部12Aは、周壁部10bの軸方向一方側の開口を閉塞する。インバータカバー部12Bは、貫通孔10fを閉塞する。
【0021】
カバー部材12は、ステータカバー部12Aを軸方向Yに貫通する出力軸孔12aを有する。出力軸孔12aは、例えば、中心軸Jを通る円形状である。カバー部材12は、ステータカバー部12Aの軸方向他方側の面における出力軸孔12aの周縁部から軸方向他方側に突出するベアリング保持部12bを有する。ベアリング保持部12bは、後述するロータコア22よりも軸方向一方側においてモータシャフト21を支持するベアリングを保持する。カバー部材12は、ステータカバー部12Aの外周縁から径方向外側へ突出する4箇所の固定部12Cを有する。カバー部材12は、それぞれの固定部12Cを軸方向Yに貫通する貫通孔を有する。カバー部材12は、4箇所の固定部12Cの貫通孔に通される4本のボルト110によりハウジング10に締結される。
【0022】
センサカバー13は、底壁部10aの軸方向他方側の面に固定される。センサカバー13は、センサ収容部10gの軸方向他方側の開口を覆い、閉塞する。センサカバー13は、回転検出部70を軸方向他方側から覆う。
【0023】
ロータ20は、モータシャフト21と、ロータコア22と、マグネット23と、第1エンドプレート24と、第2エンドプレート25と、を有する。モータシャフト21は、軸方向両側の部分をそれぞれベアリングによって回転自在に支持される。モータシャフト21の軸方向一方側の端部は、周壁部10bの軸方向一方側の開口から軸方向一方側へ向けて突出する。モータシャフト21の軸方向一方側の端部は、出力軸孔12aを通り、カバー部材12よりも軸方向一方側に突出する。モータシャフト21の軸方向他方側の端部は、センサ収容部10gに挿入される。
【0024】
ロータコア22は、モータシャフト21の外周面に固定される。マグネット23は、ロータコア22に設けられたロータコア22を軸方向Yに貫通する孔部に挿入される。第1エンドプレート24および第2エンドプレート25は、径方向に拡がる円環板状である。第1エンドプレート24と第2エンドプレート25とは、ロータコア22と接触した状態で、ロータコア22を軸方向Yに挟む。第1エンドプレート24と第2エンドプレート25とは、ロータコア22の孔部に挿入されたマグネット23を軸方向両側から押さえる。
【0025】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。ステータ30は、ステータコア31と、ステータコア31に装着される複数のコイル32と、を有する。ステータコア31は、中心軸Jを中心とした円環状である。ステータコア31の外周面は、周壁部10bの内周面に固定される。ステータコア31は、ロータコア22の径方向外側に隙間を介して対向する。
【0026】
インバータユニット50は、ステータ30に供給される電力を制御する。インバータユニット50は、インバータ部51と、コンデンサ部52と、を有する。すなわち、モータ1は、インバータ部51と、コンデンサ部52と、を備える。インバータ部51は、インバータ収容部15に収容される。インバータ部51は、第1回路基板51aと、第2回路基板51bと、を有する。第1回路基板51aおよび第2回路基板51bは、板面が鉛直方向Zと直交する板状である。第2回路基板51bは、第1回路基板51aの上側に離れて配置される。第1回路基板51aと第2回路基板51bとは電気的に接続される。第1回路基板51aには、コネクタ端子53を介してコイル線32aが接続される。これにより、インバータ部51は、ステータ30と電気的に接続される。なお、本明細書において、「コイル線32a」は、コイル32から引き出されてインバータ部51へ延びる複数のコイル線の総称である。また、「コネクタ端子53」は、インバータ部51においてコイル線に接続される複数のコネクタ端子の総称である。
【0027】
図3に示すように、ハウジング10のハウジング開口部10Aには、ステータ30の少なくとも一部、仕切り壁部10dの軸方向一方側の端部、およびインバータ収容部15の少なくとも一部が露出される。ハウジング開口部10Aの内側において、ステータ30から延びる三相用配線束131,132,133が、仕切り壁部10dの端部を通ってインバータ部51まで延び、インバータ部51の軸方向一方側の端部に位置するコネクタ端子53a、53b、53cに接続される。
【0028】
本実施形態のコイル32には、
図5に示すスター結線が用いられる。
三相用配線束131は、
図5に示す複数のU相コイルU1~U4から引き出される三相用コイル線が束ねられた配線束であり、例えば4本のコイル線からなる。三相用配線束132は、複数のV相コイルV1~V4から引き出される三相用コイル線が束ねられた配線束であり、例えば4本のコイル線からなる。三相用配線束133は、複数のW相コイルW1~W4から引き出される三相用コイル線が束ねられた配線束であり、例えば4本のコイル線からなる。したがって本実施形態において、ステータ30から延びる三相用コイル線が、仕切り壁部10dの端部を通ってインバータ部51まで延び、コネクタ端子53a~53cに接続される。
【0029】
上記構成によれば、ステータ30から引き出された三相用配線束131~133とインバータ部51とが直接接続される。これにより、接続のためのバスバーが不要であり、部品点数の削減が可能である。また、単一のハウジング開口部10Aにおいてステータ30とインバータ部51との電気的接続を行えるため、組み立ての作業性にも優れる。ハウジング開口部10Aは1つのカバー部材12で塞がれるため、ハウジング10およびカバー部材12の構造を簡素化できる。
【0030】
本実施形態では、ステータ30からU相、V相、W相ごとに複数のコイル線が束ねられた3本の三相用配線束131~133が引き出され、インバータ部51と接続される。このように配線束を接続する構成により、インバータ部51のコネクタ端子を少なくでき、接続作業が容易になる。また、この構成により、コイル線32aの絶縁確保が容易になる。
【0031】
図4は、ステータ30とインバータ部51との接続態様を示す斜視図である。
図4では、ハウジング10、蓋部11、およびカバー部材12の図示が省略される。
三相用配線束131~133が接続されるコネクタ端子53a~53cは、
図4に示すように、把持部53Aにカシメ固定される。すなわち、コネクタ端子53a~53cは、圧着端子である。この構成により、三相用配線束131~133の固定作業を、作業者が効率よく容易に行える。三相用配線束131~133は、コネクタ端子53a~53cに溶接してもよい。
【0032】
図3および
図4に示すように、ステータ30は、コイル32から上側へ延びる2本の中性点用配線束134、135を有する。中性点用配線束134は、
図5に示すように、U相コイルU1、U2、V相コイルV1、V2、およびW相コイルW1、W2から引き出される中性点用コイル線が束ねられた配線束であり、例えば6本のコイル線からなる。中性点用配線束135は、U相コイルU3、U4、V相コイルV3、V4、およびW相コイルW3、W4から引き出される中性点用コイル線が束ねられた配線束であり、例えば6本のコイル線からなる。
【0033】
中性点用配線束134は、絶縁テープ136により、三相用配線束131におけるコネクタ端子53aとコイル32との間の部分に固定される。中性点用配線束135は、絶縁テープ137により、三相用配線束133におけるコネクタ端子53cとコイル32との間の部分に固定される。三相用配線束131、133と中性点用配線束134、135との短絡を防止するために、絶縁テープ136、137で固定される配線束同士の間に絶縁部材を配置してもよい。
中性点用配線束134、135を三相用配線束131、133に固定する構成により、作業者が、コイル32の近くで中性点用配線束134、135を容易に固定できる。
【0034】
本実施形態では、コイル32の中性点用コイル線を、2本の中性点用配線束134,135に均等に振り分けて引き出す。また、2本の中性点用配線束134,135を、幅方向Xの両側に位置する三相用配線束131、133にそれぞれ固定する。この構成により、大型のステータ30から延びる中性点用コイル線の長さを概ね均等にできる。中性点用コイル線の長さが均一化されることで、コイル32を構成するU相コイル、V相コイル、W相コイルの電気特性を均一化できる。また、中性点用配線束134,135を、互いに離れた位置の三相用配線束131、133に固定するので、固定作業が行いやすい。
【0035】
本実施形態では、中性点用配線束134、135の固定に絶縁テープ136、137を用いるので、中性点用配線束134、135の固定作業を作業者が容易に行える。絶縁テープ136、137として、粘着性の絶縁テープを用いる場合、中性点用配線束134、135の固定がさらに容易になる。
【0036】
中性点用配線束134、135の固定位置は、三相用配線束131、133に限られず、ハウジング開口部10A内で適宜変更可能である。例えば、中性点用配線束134、135を、仕切り壁部10dの軸方向一方側の端部に絶縁テープ等を用いて貼り付けてもよい。あるいは、インバータ部51にクリップ等の保持部材を配置し、保持部材により中性点用配線束134、135を保持する構成としてもよい。上記いずれの構成においても、中性点用配線束134、135の配置作業を作業者が効率よく容易に行える。
【0037】
図2に示すように、コンデンサ部52は、幅方向Xに長い直方体状である。コンデンサ部52は、インバータ収容部15に収容される。コンデンサ部52は、インバータ部51の軸方向他方側に配置される。すなわち、インバータ収容部15において、インバータ部51とコンデンサ部52とは、軸方向Yに並んで配置される。コンデンサ部52は、インバータ部51と電気的に接続される。
図2に示すように、コンデンサ部52は、仕切り壁部10dの上面に固定される。コンデンサ部52は、仕切り壁部10dに接触する。
【0038】
図1に示すように、コネクタ部18は、角筒部10eの幅方向他方側の面に設けられる。コネクタ部18には、図示しない外部電源が接続される。コネクタ部18に接続された外部電源からインバータユニット50に電源が供給される。
【0039】
回転検出部70は、ロータ20の回転を検出する。本実施形態において回転検出部70は、例えば、VR(Variable Reluctance)型レゾルバである。
図2に示すように、回転検出部70は、センサ収容部10gに収容される。すなわち、回転検出部70は、底壁部10aに配置される。回転検出部70は、被検出部71と、センサ部72と、を有する。
【0040】
被検出部71は、周方向に延びる環状である。被検出部71は、モータシャフト21に嵌め合わされて固定される。被検出部71は、磁性体製である。センサ部72は、被検出部71の径方向外側を囲む環状である。センサ部72は、センサ収容部10gに嵌め合わされる。センサ部72は、センサカバー13によって軸方向他方側から支持される。すなわち、センサカバー13は、回転検出部70を軸方向他方側から支持する。センサ部72は、周方向に沿って複数のコイルを有する。
【0041】
図示は省略するが、モータ1は、回転検出部70とインバータ部51とを電気的に接続するセンサ配線をさらに備える。センサ配線の一端は、被検出部71に接続される。センサ配線は、被検出部71から、底壁部10aの内部および仕切り壁部10dを径方向に貫通する貫通孔を通って、インバータ収容部15内まで引き回される。センサ配線の他端は、例えば、第1回路基板51aに接続される。
【0042】
モータシャフト21とともに被検出部71が回転することによって、センサ部72のコイルには、被検出部71の周方向位置に応じた誘起電圧が生じる。センサ部72は、誘起電圧を検出することで、被検出部71の回転を検出する。これにより、回転検出部70は、モータシャフト21の回転を検出して、ロータ20の回転を検出する。回転検出部70が検出したロータ20の回転情報は、センサ配線を介してインバータ部51に送られる。
【0043】
本実施形態では、センサ部72の配線がハウジング10の軸方向他方側の内部を通るのに対して、ステータ30から延びる三相用配線束131~133とインバータ部51との接続は、ハウジング10の軸方向一方側の端部に位置するハウジング開口部10Aの内部において行われる。
【0044】
また、バスバーを使用しないステータ30をステータ収容部14に取り付ける際には、周壁部10bの開口から底壁部10aへ向けて、ステータ30を挿入する必要がある。つまりステータ30は、軸方向一方側から軸方向他方側へ向けて周壁部10b内に挿入される。また、バスバーを使用しないステータ30においては、三相用配線束131~133は剛性の高い配線であり、センサ部72の配線のように容易に曲げることができない。したがって、三相用配線束131~133を、底壁部10aの近傍に通すことは困難な作業となる。
【0045】
そこで本実施形態のように、センサ部72の配線とは軸方向Yの反対側に、三相用配線束131~133を配置することが好ましい。これにより、三相用配線束131~133については、開口が広く作業性のよいハウジング開口部10Aの内側で効率よく作業できる。そして、比較的引き回しが容易であるが、細くて破損しやすいセンサ部72の配線については、底壁部10aの内側を引き回すことで、配線を保護できる。
【0046】
冷却部60は、複数の冷却流路としての上流側冷却流路61および下流側冷却流路62を有する。上流側冷却流路61および下流側冷却流路62には、冷媒が流れる。冷媒は、ステータ30およびインバータ部51を冷却できる流体ならば、特に限定されない。冷媒は、水であってもよいし、水以外の液体であってもよいし、気体であってもよい。
【0047】
上流側冷却流路61は、
図1に示す流入ノズル16に連結される。流入ノズル16は、ハウジング10に設けられた孔部に挿し込まれる。流入ノズル16は、ハウジング10から幅方向他方側に突出する。
下流側冷却流路62は、
図1に示す流出ノズル17に連結される。流出ノズル17は、ハウジング10に設けられた孔部に挿し込まれる。流出ノズル17は、ハウジング10から幅方向他方側に突出する。流入ノズル16と流出ノズル17とは、鉛直方向Zにおいて同じ位置に配置される。流入ノズル16と流出ノズル17とは、軸方向Yに間隔を空けて配置される。
【0048】
上流側冷却流路61および下流側冷却流路62は、それぞれの少なくとも一部が、仕切り壁部10dに設けられる。したがって、上流側冷却流路61および下流側冷却流路62を流れる冷媒によって、仕切り壁部10dで仕切られるステータ収容部14とインバータ収容部15とを冷却することができ、ステータ収容部14に収容されるステータ30およびインバータ収容部15に収容されるインバータ部51を冷却することができる。
【0049】
本実施形態において冷却部60は、ハウジング10が砂型鋳造によって作製される際に、冷却部60の形状を有する砂型の部分によって成形される。
図1および
図2に示すように、ハウジング10は、冷却部60を成形する砂型を排出するための複数の排出孔部19を有する。砂型鋳造によってハウジング10を製造した後、排出孔部19から冷却部60を成形する砂型を排出する。排出孔部19は、冷却部60と繋がる。排出孔部19には栓体80が圧入される。栓体80によって排出孔部19が閉塞され、冷却部60内の冷媒がハウジング10の外部に漏れることを抑制できる。
【0050】
上述した実施形態のモータの用途は、特に限定されない。上述した実施形態のモータは、例えば、車両に搭載される。また、上述した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【0051】
本出願は、2017年7月28日に出願された日本出願である特願2017-147114号に基づく優先権を主張し、当該日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【符号の説明】
【0052】
1…モータ、10…ハウジング、10A…ハウジング開口部、10d…仕切り壁部、12…カバー部材、14…ステータ収容部、15…インバータ収容部、20…ロータ、21 …モータシャフト、30…ステータ、32…コイル、32a…コイル線、51…インバータ部、53,53a,53c…コネクタ端子、131,132,133…三相用配線束、134,135…中性点用配線束、136,137…絶縁テープ、J…中心軸、Y…軸方向