(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20221206BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
(21)【出願番号】P 2020571198
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004042
(87)【国際公開番号】W WO2020162425
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2019019068
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大西 康晴
(72)【発明者】
【氏名】福田 靖行
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-107093(JP,A)
【文献】特開2018-092453(JP,A)
【文献】特開2018-178810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-99/00
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備に設けられた振動センサの検出結果に基づいて当該生産設備の異常判定処理を第1の判別器を用いて行う判定手段と、
前記第1の判別器により正常か異常かの判別ができなかった前記検出結果を画像化する画像処理手段と、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象として第2の判別器を生成する生成手段と、
前記第2の判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う解析手段と、
を備える、
解析装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の解析装置において、
前記状態解析処理で前記生産設備が正常状態でないと判定されたデータを抽出する抽出手段をさらに備え、
前記生成手段は、抽出された前記データに基づく補正情報を受け付け前記第1の判別器を更新し、
前記補正情報は、不具合事象と振動特性とを紐付けた情報を含む、解析装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の解析装置において、
前記生成手段は、前記状態解析処理により正常と判定された前記データを前記機械学習処理の教師データとする、解析装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の解析装置において、
前記検出結果に対してノイズ除去処理を行う処理手段をさらに備え、
前記画像処理手段は、前記処理手段による前記ノイズ除去処理が行われた後の前記検出結果を画像化する、解析装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の解析装置において、
前記生産設備は、ベルトコンベアであり、
前記振動センサは、前記ベルトコンベアに設けられた複数の振動センサである、解析装置。
【請求項6】
解析装置が、
生産設備に設けられた振動センサの検出結果に基づいて当該生産設備の異常判定処理を第1の判別器を用いて行い、
前記第1の判別器により正常か異常かの判別ができなかった前記検出結果を画像化し、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象として第2の判別器を生成し、
前記第2の判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う、
解析方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の解析方法を少なくとも1つのコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法、およびプログラムに関し、特に、設備の状態を監視するセンサのデータを解析する解析装置、解析方法、およびプログラム関する。
【背景技術】
【0002】
機械系設備を用いた生産材の製造品質管理に振動や音響センサを用いて状態監視する方法がある。例えば、生産材の加工時に加工機で生じた振動データを取得し、異常振動を捉えたときに生産材の加工をストップすることにより製造ロスを回避することや、生産設備の稼働状況を振動にて監視し、メンテナンスの効率化や、設備を長寿命化するための最適な稼働条件を見出すことなどにより、製造業の生産効率を向上させる技術として注目されている。
【0003】
特許文献1には、監視対象の設備にセンサを取り付け、当該センサが測定した時系列データに基づきその設備の監視を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載されたシステムのように、センサで収集したデータに基づき設備の異常等を検出しようとすると、解析すべきデータの量が多くなり得る。また、ディープラーニングなどの機械学習により正常/異常状態モデルを構築することも考えられるが、この方法では、あくまで異常と推察される状態を抽出させるだけに留まり、稼働を停止するなどのアクションにしか適用できない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産設備の状態監視を効率よく高精度に行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の各側面では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0008】
第一の側面は、解析装置に関する。
第一の側面に係る第1の解析装置は、
生産設備に設けられた振動センサの検出結果を画像化する画像処理手段と、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象にして判別器を生成する生成手段と、
前記判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う解析手段と、を有する。
第一の側面に係る第2の解析装置は、
生産設備に設けられた振動センサの検出結果に基づいて当該生産設備の異常判定処理を第1の判別器を用いて行う判定手段と、
前記第1の判別器により正常か異常かの判別ができなかった前記検出結果を画像化する画像処理手段と、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象として第2の判別器を生成する生成手段と、
前記第2の判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う解析手段と、を有する。
【0009】
第二の側面は、少なくとも1つのコンピュータにより実行される解析方法に関する。
第二の側面に係る第1の解析方法は、
解析装置が、
生産設備に設けられた振動センサの検出結果を画像化し、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象にして判別器を生成し、
前記判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う、ことを含む。
第二の側面に係る第2の解析方法は、
解析装置が、
生産設備に設けられた振動センサの検出結果に基づいて当該生産設備の異常判定処理を第1の判別器を用いて行い、
前記第1の判別器により正常か異常かの判別ができなかった前記検出結果を画像化し、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象として第2の判別器を生成し、
前記第2の判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う、ことを含む。
【0010】
なお、本発明の他の側面としては、上記第二の側面の方法を少なくとも1つのコンピュータに実行させるプログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であってもよい。この記録媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。
このコンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されたとき、コンピュータに、解析装置上で、その解析方法を実施させるコンピュータプログラムコードを含む。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0012】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0013】
また、本発明の方法およびコンピュータプログラムには複数の手順を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の手順を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の方法およびコンピュータプログラムを実施するときには、その複数の手順の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0014】
さらに、本発明の方法およびコンピュータプログラムの複数の手順は個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある手順の実行中に他の手順が発生すること、ある手順の実行タイミングと他の手順の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記各側面によれば、生産設備の状態監視を効率よく高精度に行う技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る解析装置を用いた設備監視システムのシステム構成を概念的に示す図である。
【
図2】本実施形態の記憶装置が記憶する振動データと設備情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態の各装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図4】本実施形態の解析装置の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】は画像化前の測定データの時系列データを示す図である。
【
図6】画像処理部により画像化した画像データを示す図である。
【
図7】本実施形態の解析装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図7のステップS101の画像化処理の詳細フローの一例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態の解析装置の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】本実施形態の解析装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態の解析装置における異常判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本実施形態の解析装置の画像処理部の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】本実施形態の解析装置の画像処理部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図14】本実施形態の解析装置の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図15】補正情報30のデータ構造の一例を示す図である。
【
図16】解析部による判別処理の詳細フローの一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図16のステップ
S405で抽出されたデータを用いた判別器の更新処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図18】
図16の状態解析処理のステップS401で正常と判別された場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図19】解析装置の不具合モデル構築処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図20】実施例1の解析装置を説明するためのフロー図である。
【
図21】実施例2の解析装置を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る解析装置を用いた設備監視システム1のシステム構成を概念的に示す図である。
設備監視システム1が監視対象とする設備は、生産設備10であり、本実施形態では、ベルトコンベアを例として説明する。図の例では、ベルトコンベアを監視するための複数のセンサ12がベルトコンベアの移動方向に沿って複数箇所に設置されている。各センサ12は、例えば、振動センサである。また、一方向の振動を検知する振動センサの場合、複数方向の振動を検出するために1箇所につき複数の振動センサを設置してもよい。
【0020】
振動センサから出力される測定データは、振動波形を示す時系列データである。
振動センサは、監視対象の生産設備10に生じた振動を測定する。振動センサは、一軸方向の加速度を測定する一軸加速度センサであってもよいし、三軸方向の加速度を測定する三軸加速度センサであってもよいし、その他であってもよい。なお、複数の振動センサは、同種の振動センサであってもよいし、複数種類の振動センサが混在してもよい。
【0021】
解析装置100は、ネットワーク3を介してGW(GateWay)5と接続され、生産設備10に複数設けられているセンサ12から検出結果を受信する。解析装置100は、記憶装置20に接続される。記憶装置20は、解析装置100が解析する振動データが格納される。記憶装置20は、解析装置100とは別体の装置であってもよいし、解析装置100の内部に含まれる装置であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0022】
実施形態の各図において、本発明の本質に関わらない部分の構成については省略してあり、図示されていない。
【0023】
図2は、本実施形態の記憶装置20が記憶する振動データ22と設備情報24のデータ構造の一例を示す図である。
振動データ22は、振動センサを識別するセンサID毎に、時刻情報と、測定データとが紐付けられている。設備情報24は、設備を識別する設備ID毎に、少なくとも一つの振動センサのセンサIDが紐付けられている。
【0024】
図3は、本実施形態の各装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。各装置は、プロセッサ50、メモリ52、入出力インターフェイス(I/F)54、周辺回路56、バス58を有する。周辺回路56には、様々なモジュールが含まれる。処理装置は周辺回路56を有さなくてもよい。
【0025】
バス58は、プロセッサ50、メモリ52、周辺回路56及び入出力インターフェイス54が相互にデータを伝送するためのデータ伝送路である。プロセッサ50は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ52は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。入出力インターフェイス54は、入力装置、外部装置、外部サーバ、センサ等から情報を取得するためのインターフェイスや、出力装置、外部装置、外部サーバ等に情報を出力するためのインターフェイスなどを含む。入力装置は、例えばキーボード、マウス、マイク等である。出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ、プリンタ、メーラ等である。プロセッサ50は、各モジュールに指令を出し、それらの演算結果をもとに演算を行うことができる。
【0026】
後述する
図4の本実施形態の解析装置100の各構成要素は、
図3に示すコンピュータのハードウェアとソフトウェアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。以下説明する各実施形態の解析装置を示す機能ブロック図は、ハードウェア単位の構成ではなく、論理的な機能単位のブロックを示している。
【0027】
プロセッサ50が、プログラムをメモリ52に読み出して実行することにより、
図4の解析装置100の各ユニットの各機能を実現することができる。
【0028】
本実施形態のコンピュータプログラムは、解析装置100を実現させるためのコンピュータ(
図3のプロセッサ50)に、生産設備10に設けられた振動センサ12の検出結果を画像化する手順、画像化したデータを機械学習処理の対象にして判別器を生成する手順、判別器を用いて生産設備10の異常判定処理を行う手順、を実行させるように記述されている。
【0029】
本実施形態のコンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。記録媒体は特に限定されず、様々な形態のものが考えられる。また、プログラムは、記録媒体からコンピュータのメモリ52(
図3)にロードされてもよいし、ネットワークを通じてコンピュータにダウンロードされ、メモリ52にロードされてもよい。
【0030】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体は、非一時的な有形のコンピュータが使用可能な媒体を含み、その媒体に、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードが埋め込まれる。コンピュータプログラムが、コンピュータ上で実行されたとき、コンピュータに、解析装置100を実現する本実施形態の解析方法を実行させる。
【0031】
図4は、本実施形態の解析装置100の論理的な構成を示す機能ブロック図である。解析装置100は、画像処理部102と、生成部104と、解析部106と、を備える。
画像処理部102は、生産設備10に設けられた振動センサの検出結果を画像化する。生成部104は、画像化したデータを機械学習処理の対象にして判別器110を生成する。解析部106は、判別器110を用いて生産設備10の状態解析処理を行う。
【0032】
振動は、振幅、周波数、および位相の3つの要素からなり、測定データは、変位、速度、および加速度の3つのパラメータで示すことができる。振動センサの測定データは、複数のパラメータで示される複数の振動波形を含む時系列データであるため、そのまま機械学習にかけても特徴を捉えられず、適切な学習モデルを生成することができない。そこで、本実施形態では、画像処理部102により測定データを画像化する。
図5は画像化前の測定データの時系列データを示す図である。
図6は、画像処理部102により画像化した画像データを示す図である。
【0033】
画像処理部102は、生産設備10のセンサ12の検出結果(以下、振動データとも呼ぶ)を取得する。そして、画像処理部102は、取得した振動データをFFT処理してから周波数分割し、そして、得られた振動スペクトラムデータを画像化して画像データを得る。これらの処理により、データ量を圧縮することができ、機械学習処理および判別処理を高速化することができる。
【0034】
実施形態において「取得」とは、自装置が他の装置や記憶媒体に格納されているデータまたは情報を取りに行くこと(能動的な取得)、および、自装置に他の装置から出力されるデータまたは情報を入力すること(受動的な取得)の少なくとも一方を含む。能動的な取得の例は、他の装置にリクエストまたは問い合わせしてその返信を受信すること、及び、他の装置や記憶媒体にアクセスして読み出すこと等がある。また、受動的な取得の例は、配信(または、送信、プッシュ通知等)される情報を受信すること等がある。さらに、「取得」とは、受信したデータまたは情報の中から選択して取得すること、または、配信されたデータまたは情報を選択して受信することであってもよい。
【0035】
判別器110は、生成部104により、画像化されたデータを機械学習処理の対象にして生成される。解析部106は、この判別器110を用いて、生産設備10の状態解析処理を行う。
【0036】
機械学習は、例えば、ディープラーニング(深層学習)を用いることができるが、これに限定されない。判別器110が判別する生産設備10の状態は、例えば、正常か、それ以外の状態である。以後、正常以外の状態は「Unknown」とも呼ぶ。本実施形態では、判別器110は異常状態の判別は行わない。判別器110の機械学習処理については後述する実施形態で詳細に説明する。
【0037】
判別器110の判別結果はオペレータが参照できるように出力されてもよい。出力方法は、例えば、解析装置100のディスプレイに表示してもよいし、解析装置100からプリンタに印字出力されてもよいし、通信回線を介して他の装置(例えば、操作端末等)に送信されてもよい。
【0038】
このように構成された本実施形態の解析装置100の動作について説明する。
図7は、本実施形態の解析装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、画像処理部102は、生産設備10に設けられた振動センサの検出結果を画像化する(ステップS101)。そして、生成部104は、画像化したデータを機械学習処理の対象にして判別器110を生成する(ステップS103)。そして、解析部106は、判別器110を用いて生産設備10の状態解析処理を行う(ステップS105)。
【0039】
図8は、
図7のステップS101の画像化処理の詳細フローの一例を示すフローチャートである。まず、画像処理部102は、センサ12の測定データをFFT処理してから周波数分割し(ステップS113)、得られた振動スペクトラムデータを画像化して画像データを出力する(ステップS115)。ステップS115で得られた画像データは、
図7のステップ
S105で解析部106により判別器110を用いた生産設備10の状態解析処理が行われる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態において、画像処理部102によりセンサ12の測定データが画像化された後、生成部104により画像化された画像データを機械学習処理の対象にして判別器110が生成され、そして、この判別器110を用いて解析部106により生産設備10の状態解析処理が行われる。このように、本実施形態によれば、振動センサの検出結果を機械学習する際に、機械学習処理の対象となる振動波形データを画像化することで、データ量を圧縮できるので、処理負荷を低減するとともに、処理速度を高速化できる。
【0041】
(第2の実施の形態)
図9は、本実施形態の解析装置100の論理的な構成を示す機能ブロック図である。解析装置100は、
図4の解析装置100と同様な画像処理部102と、生成部104と、解析部106と、を備えるとともに、さらに、異常判定部120を備える。
【0042】
異常判定部120は、生産設備10に設けられた振動センサの検出結果に基づいて当該生産設備10の異常判定処理を第1の判別器124を用いて行う。異常判定部120は、第1の判別器124を用いた異常判定処理の結果を出力する。出力された結果は、設備監視システム1において生産設備10の監視処理に使用されてもよい。
【0043】
また、本実施形態の画像処理部102は、画像化対象となる検出結果が、第1の判別器124により正常か異常かの判別ができなかった検出結果である点で上記実施形態の画像処理部102と相違する。生成部104は、このように閾値解析により正常か異常かの判別ができなかった測定データを機械学習処理するための第2の判別器126を生成する。
【0044】
振動センサで計測される振動は、複数の要因からなる複数の振動波形が含まれる。一般に、振動センサから検出される測定データは、高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourie Transform)処理を行うことにより周波数解析が行われる。測定データをFFT処理することにより、特徴的な周波数(ピーク)が検出され、検出されたピークレベルを閾値により正常か異常かを判別することで異常診断することが可能になる。
【0045】
しかし、この閾値解析により正常か異常かの判別ができない場合がある。生成部104は、このように閾値解析により正常か異常かの判別できなかった測定データを機械学習処理の対象として第2の判別器126を生成する。この第2の判別器126は、
図4の判別器110に相当する。
【0046】
「第1の判別器124で判別できない」場合とは、例えば、第1の判別モデル128に登録されている振動波形パターンと検出結果がマッチングしなかった場合、マッチング結果の尤度が所定値以上得られず、設備診断に必要とされる基準以上(例えば、検出率90%以上)の信頼性が得られなかった場合、等である。
【0047】
解析部106は、第2の判別器126を用いて生産設備10の状態解析処理を行う。解析部106は、第1の判別器124により正常か異常かの判別ができなかった検出結果を画像化したデータについて第2の判別器126を用いて生産設備10の状態解析処理を行う。
【0048】
第1の判別器124は、第1の判別モデル128を用いて、正常か異常かを判別する。第1の判別モデル128は、例えば振動スペクトルのパターンマッチングや、閾値判定を用いたモデルである。
【0049】
一例として、第1の判別器124は、振動センサの測定データをFFT処理して得られた周波数分布から、特定周波数のピークレベル、最大および平均ピークレベルの比、S/N比(Signal-to-Noise ratio)、および特定周波数の範囲でのピークレベルの積算値の少なくともいずれか一つについてそれぞれ求め、求めた値に閾値を設定し、閾値の範囲内か否かに基づいて異常判定処理を行う。そして閾値範囲内の場合は、第1の判別器124は、正常と判別し、閾値範囲外の場合は異常と判別する。
【0050】
第1の判別器124は複数の特定周波数を用いて上記した判定処理を行ってもよい。その場合は、第1の判別器124は特定周波数毎に判定結果を出力してもよい。また、第1の判別器124は、複数の特定周波数のうち1つでも閾値を外れた値があった場合に異常と判定してもよいし、複数の特定周波数のうちの所定数以上の特定周波数が閾値を外れた値があった場合に異常と判定してもよいし、複数の特定周波数のすべてが閾値を外れていた場合に異常と判定してもよいし、複数の特定周波数のすべてが閾値範囲内の場合に正常と判定してもよい。また、不具合事象毎に複数の特定周波数の値の組み合わせをモデル化して第1の判別モデル128に登録しておき、第1の判別器124は第1の判別モデル128とのパターンマッチングにより、不具合事象を判別してもよい。判別された不具合事象を、異常判定部120は、対応する不具合事象項目をオペレータに通知してもよい。
【0051】
閾値は自動設定されてもよいし、オペレータによる手動設定で行われてもよい。自動設定の場合は、生成部104は、第1の判別モデル128に登録されている振動特性パターン(周波数分布)について、特定周波数のピークレベル、最大および平均ピークレベルの比、S/N比(Signal-to-Noise ratio)、および特定周波数の範囲でのピークレベルの積算値の少なくともいずれか一つについてそれぞれ求め、正常時と異常時の境界範囲を検出して閾値を設定してもよい。
【0052】
手動設定の場合、生成部104は、第1の判別モデル128に登録されている振動特性パターン(周波数分布)について、特定周波数のピークレベル、最大および平均ピークレベルの比、S/N比(Signal-to-Noise ratio)、および特定周波数の範囲でのピークレベルの積算値の少なくともいずれか一つについてそれぞれ求めた結果をオペレータに提示して、第1の判別器124の閾値の設定をオペレータ操作によりそれぞれ受け付けてもよい。オペレータへの結果の提示方法は様々考えられるが、例として、解析装置100のディスプレイに表示してもよいし、解析装置100からプリンタに印字出力されてもよいし、通信回線を介して他の装置(例えば、操作端末等)に送信されてもよい。
【0053】
第2の判別器126は、生成部104により生成され、上記実施形態の生成部104で生成される判別器110に相当する。生成部104は、第2の判別器126により正常と判別されたデータのみを機械学習させ、正常状態を正規化して第2の判別モデル130を更新する。ここで、正規化とは、正常時の振動センサの測定データの画像化データのパターンをモデル化することである。第2の判別器126は、第2の判別モデル130の範囲から外れたデータを、例えば、「Unknown」として抽出する。つまり、この第2の判別器126を用いて解析部106により、第1の判別器124で判別できなかった検出結果について、さらに、第2の判別モデル130に基づいて、生産設備10の状態が、正常か「Unknown」かが判別される。第2の判別器126は、生産設備10の異常状態は判別しない、正常以外の状態は「Unknown」と判別する。
【0054】
この第2判別器126により「Unknown」と判別されたデータは、オペレータにより参照されて、分析されてもよい。オペレータにより分析された結果は、検出結果の異常判定処理の閾値に反映されてもよい。「Unknown」と判別されたデータの利用方法については後述する実施形態で詳細に説明する。
【0055】
このように構成された本実施形態の解析装置100の動作について説明する。
図10は、本実施形態の解析装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、異常判定部120は、生産設備10に設けられた振動センサの検出結果に基づいて当該生産設備10の異常判定処理を第1の判別器124を用いて行う(ステップS121)。そして、画像処理部102は、第1の判別器124により正常か異常かの判別ができなかった検出結果を(ステップS123のNO)、画像化する(ステップS125)。判別できた場合は(ステップS123のYES)、本処理を終了する。
【0056】
そして、生成部104は、画像化したデータを機械学習処理の対象にして第2の判別器126を生成する(ステップS127)。そして、解析部106は、第2の判別器126を用いて生産設備10の状態解析処理を行う(ステップS129)。
【0057】
また、本実施形態のコンピュータプログラムは、解析装置100を実現させるためのコンピュータ(
図3のプロセッサ50)に、生産設備10に設けられた振動センサ12の検出結果に基づいて当該生産設備10の異常判定処理を第1の判別器124を用いて行う手順、第1の判別器124により正常か異常かの判別ができなかった検出結果を画像化する手順、画像化したデータを機械学習処理の対象として第2の判別器126を生成する手順、第2の判別器126を用いて生産設備10の状態解析処理を行う手順、を実行させるように記述されている。
【0058】
以上説明したように、本実施形態において、異常判定部120により第1の判別器124を用いて振動センサの検出結果に基づく異常判定処理で判別結果が得られなかった場合に、そのときの振動センサの検出結果を画像処理部102により画像化し、第2の判別器126により正常か「Unknown」かが判別される。このように、本実施形態によれば、第2の判別器126には、正常状態に対応する振動センサの検出結果のみを機械学習させ、正常状態について正規化するので、少量多品種や変種変動生産などで、製造条件が常に流動的で不具合事象の情報が積み上がりにくい場合であっても、判別の精度を向上できる。
【0059】
また、上記実施形態と同様に、振動センサの検出結果を機械学習する際に、機械学習処理の対象となる振動波形データを画像化することで、データ量を圧縮できるので、処理負荷を低減するとともに、処理速度を高速化できる。
【0060】
(第3の実施の形態)
図11は、本実施形態の解析装置100における異常判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態は、第1の判別器124を用いた生産設備10の異常判定処理の結果を出力する構成を有する点以外は
図9の解析装置100と同様である。
【0061】
まず、異常判定部120は、生産設備10に設けられた振動センサから振動データを取得する(ステップS301)。そして、異常判定部120は、第1の判別器124を用いて取得した振動データの異常判定処理を実行する(ステップS303)。ここで、振動データはFFT処理された後、異常判定部120の第1の判別モデル128によって正常か異常を判別される(ステップS305)。
【0062】
異常判定部120は、FFT処理して得られた周波数分布から、特定周波数のピークレベル、最大および平均ピークレベルの比、S/N比(Signal-to-Noise ratio)、および特定周波数の範囲でのピークレベルの積算値の少なくともいずれか一つについてそれぞれ求め、閾値を用いてこれらの値が正常か異常かを判別する(ステップS305)。閾値の範囲内の場合(ステップS305のNO)、第1の判別器124は、生産設備10は正常であると判定し(ステップS307)、異常判定部120は、生産設備10は正常であることを示す判定結果を出力する(ステップS311)。
【0063】
閾値の範囲外の場合(ステップS305のYES)、第1の判別器124は、生産設備10は異常状態であると判定し(ステップS309)、生産設備10は異常状態であることを示す判定結果を出力する(ステップS311)。
【0064】
また、第1の判別器124による正常か異常かの判別ができなかった場合(ステップS305の判別不可)、異常判定部120は、画像処理部102に振動データを出力し(ステップS313)、
図10のステップS125に進む。
【0065】
本実施形態では、生産設備10の異常判定処理に第1の判別器124を用い、第2の判別器126は異常判定処理には使用しない。また、第2の判別器126の判別結果は、第1の判別器124の第1の判別モデル128を更新するのに使用されるが、この構成については後述する実施形態で説明する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態において、異常判定部120により第1の判別器124を用いて生産設備10の異常判定処理を行い、異常判定部120は第2の判別器126を生産設備10の異常判定処理には使用しない。生成部104によって更新される第2の判別器126の判別結果を用いて第1の判別器124を更新することができる。この構成によれば、第2の判別器126の判別結果を反映した第1の判別器124を用いて異常判定処理を行うことができるので、判定結果の精度を向上できる。
【0067】
(第4の実施の形態)
図12は、本実施形態の解析装置100の画像処理部102の論理的な構成を示す機能ブロック図である。本実施形態の解析装置100は、画像処理部102において、測定データからノイズを除去する処理を行ってから、画像化処理を行う構成を有する点以外は上記実施形態と同様である。本実施形態の構成は、他のいずれの実施形態の構成と組み合わせてもよい。
【0068】
画像処理部102は、ノイズ除去部112と、画像化処理部114とを含む。ノイズ除去部112は、検出結果に対してノイズ除去処理を行う。画像化処理部114は、ノイズ除去部112によるノイズ除去処理が行われた後の検出結果を画像化する。ノイズ除去により測定データの振動波形が鮮明になる。
【0069】
ノイズ除去処理は、例えば、複数配置された振動センサからの環境ノイズを予め計測して記憶しておき、ノイズデータを元に差分処理することを含む。ただしノイズ除去処理は他の方法で行われてもよい。
【0070】
図13は、本実施形態の解析装置100の画像処理部102の動作の一例を示すフローチャートである。
図13のフローチャートは、上記実施形態で説明した
図8のフローチャートのステップS113およびステップS115に加え、さらにステップS111を含む。
【0071】
ステップS111では、ノイズ除去部112は、測定データのノイズ除去処理を行う。そして、ステップS111でノイズ除去処理されたデータを画像化処理部114がFFT処理してから周波数分割処理し(ステップS113)、得られた振動スペクトラムデータを画像化して画像データを出力する(ステップS115)。ステップS115で得られた画像データは、
図7のステップS103で解析部106により判別器110を用いた生産設備10の状態解析処理が行われる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態において、ノイズ除去部112によりノイズ除去処理されたセンサ12の測定データを、画像化処理部114により画像化する。この構成により本実施形態によれば、上記実施形態と同様に機械学習処理又は判別処理の高速化を図ることができるとともに、さらに、ノイズ除去により測定データの振動波形が鮮明になり、FFT処理および画像化処理の精度が向上し、測定データの解析結果の精度および信頼性が向上する。
【0073】
(第5の実施の形態)
図14は、本実施形態の解析装置100の論理的な構成を示す機能ブロック図である。本実施形態の解析装置100は
、生産設備10の状態解析処理により正常でないと判別されたデータを抽出し、そのデータに基づき第1の判別器124の第1
の判別モデル128を更新する構
成を有する点以外は上記実施形態と同様である。
【0074】
解析装置100は、
図9の解析装置100と同様な画像処理部102と、生成部104と、解析部106と、異常判定部120と、を備えるとともに、さらに抽出部140を備える。
【0075】
抽出部140は、第2の判別器126を用いた状態解析処理で正常でない(「Unknown」)と判定されたデータを抽出する。生成部104は、抽出されたデータに基づく補正情報を受け付け第1の判別器124の第1の判別モデル128を更新する。ここで、補正情報は、不具合事象と振動特性とを紐付けた情報を含む。
【0076】
抽出されるデータとは、「Unknown」と判別された画像化データに対応する、画像処理部102が画像化処理する前の、振動センサから受信した生の振動波形データと、当該データの時刻情報を含む。この「Unknown」と判別された振動データが示す振動は、未だ特定されていない生産設備10の不具合事象により引き起こされている可能性がある。
【0077】
そこで、抽出された振動データを時刻情報とともに、設備監視システム1が有している生産設備10の稼働情報、状態情報、加工物の情報等を用いて、オペレータが人手で分析を行い、当該振動の原因となった不具合事象を特定する。
【0078】
そのため、解析装置100は、抽出部140が抽出したデータを出力し、オペレータに提示する。オペレータへのデータの提示方法は様々考えられるが、例として、解析装置100のディスプレイに表示してもよいし、解析装置100からプリンタに印字出力されてもよいし、通信回線を介して他の装置(例えば、操作端末等)に送信されてもよい。
【0079】
オペレータが特定した不具合
事象に、対応する振動の振動特性情報を紐付けた
図15の補正情報30を、オペレータは操作画面等を用いて解析装置100に入力する。生成部104は、入力された補正情報30を受け付け、第1の判別器124の第1の判別モデル128を更新する。
【0080】
図16は、解析部106による判別処理の詳細フローの一例を示すフローチャートである。解析部106は、
図13のステップS115で出力された画像データを第2の判別器126にかけ、生産設備10の状態解析処理を行う(ステップS401)。第2の判別器126により正常と判別されたデータは(ステップS401の「正常」)、生成部104に受け渡され、正常データとして機械学習処理される(ステップS403)。一方、解析部106は、第2の判別器126により正規化の範囲から外れたデータを(ステップS401の「Unknown」)、抽出する(ステップS405)。
【0081】
なお、
図16のフローを用いて、
図8のステップS115で出力された画像データについても同様に処理してよい。
【0082】
図17は、
図16のステップS405で抽出されたデータを用いた判別器の更新処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、抽出部140は、ステップS405で抽出したデータ(振動データと時刻情報)を出力する(ステップS411)。ここでは、例えば、解析装置100のディスプレイに表示する。そして、オペレータは、ステップS411で表示された振動データを時刻情報とともに、設備監視システム1が有している生産設備10の稼働情報、状態情報、加工物の情報等を用いて分析を行い、当該振動の原因となった不具合事象を特定する。オペレータは、特定した不具合事象と、対応する振動特性情報とを紐付けた情報を作成し、解析装置100の操作画面に従い、第1の判別器124の閾値の補正情報として入力する。
【0083】
生成部104は、入力された補正情報を受け付け(ステップS413)、受け付けた補正情報を用いて第1の判別器124を更新する(ステップS415)。
【0084】
具体的には、受け付けた補正情報に含まれる、振動特性情報と不具合事象とを第1の判別モデル128に登録し、特定周波数のピークレベル、最大および平均ピークレベルの比、S/N比(Signal-to-Noise ratio)、および特定周波数の範囲でのピークレベルの積算値の少なくともいずれか一つについてそれぞれ求め、正常時と異常時の境界範囲を検出して閾値を設定する。あるいは、オペレータが、上記特定した不具合事象に対応する振動特性情報から求められた各値を元に閾値をそれぞれ設定して操作画面を用いて入力してもよい。
【0085】
以上説明したように、本実施形態において、抽出部140により第2の判別器126の「Unknown」データが抽出され、オペレータに提示され、生成部104によりオペレータにより分析された不具合事象と振動特性情報とを紐付けた補正情報が受け付けられ、補正情報に基づき第1の判別器124が更新される。このように、本実施形態によれば、第1の判別器124が判別できなかった測定データについて、さらに第2の判別器126により判別処理を行い、「Unknown」とされたデータを抽出してオペレータが解析し、その結果を第1の判別器124に反映するので、異常判定処理の精度を向上させることができる。
【0086】
また、第2の判別器126には、正常時の情報のみを機械学習させるので、少量多品種や変種変動生産などで、製造条件が常に流動的で不具合事象の情報が積み上がりにくい場合であっても、第1の判別モデル128を更新できるので生産設備10の異常状態の判定精度を向上させることができる。
【0087】
(第5の実施の形態の変形態様)
図14の解析装置100は、
図9の解析装置100の構成に抽出部140を設けた構成としていた。その変形態様として、
図4の解析装置100において、抽出部140を設けた構成としてもよい。
【0088】
解析装置100は、異常判定部120と、抽出部140と、さらに備える。異常判定部120は、検出結果が示す振動センサの振動の特徴解析処理を行い、閾値を用いて生産設備10の異常判定処理を行う。抽出部140は、状態解析処理で生産設備10が正常状態でないと判定されたデータを抽出する。生成部104は、抽出されたデータに基づく補正情報を受け付け、閾値を更新する。補正情報は、不具合事象と振動特性とを紐付けた情報を含む。
【0089】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、
図18は、
図16の状態解析処理のステップS401で正常と判別された場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。この実施形態は、第2の判別器126により正常と判別された検出結果を第2の判別器126の教師データとする構成を有する点以外は上記実施形態と同様である。
【0090】
生成部104は、第2の判別器126を用いた状態解析処理により、正常と判定された検出結果を(
図16のステップS401の正常)、生産設備10の正常状態の教師データとして第2の判別器126の第2の判別モデル130を更新する(ステップS501)。
【0091】
この構成によれば、第2の判別器126を用いた状態解析処理により、正常と判定された検出結果を生産設備10の正常状態の教師データとして第2の判別モデル130が生成部104により更新される。このように、第1の判別器124による異常判定処理において判別できなかった測定データから正常状態の教師データを生成し、第2の判別モデル130を更新することができ、第2の判別器126の判別精度を向上することができる。
【0092】
さらに、上記実施形態の第1の判別器124と、第2の判別器126に加え、解析装置100は、第3の判別器(不図示)を備えてもよい。
図19は、解析装置100が第3の判別器を用いて不具合モデルを構築し、不具合事象を識別する処理手順の一例を示すフローチャートである。第3の判別器は、第1の判別器124で正常と判別された測定データを取得する(ステップS601)。さらに、第3の判別器は、第2の判別器126でUnknownと判別された測定データを取得する(ステップS603)。そして、第3の判別器は、これらのデータを機械学習し、不具合事象を分類したモデルを構築する(ステップS605)。なお、第3の判別器が機械学習する各測定データについても、上記実施形態で説明したノイズ除去処理および画像化処理を行ってよい。
【0093】
さらに、第3の判別器を用いて、生産設備10のセンサ12の測定データが正常か異常かを判定し、さらに、異常の場合に不具合事象を識別する(ステップS607)。
【0094】
また、複数のセンサ12の各々の位置情報を設備情報24に記憶しておき、振動データと位置情報の関係をさらに、機械学習させ、分類モデル202、第1の判別モデル128、および第2の判別モデル130の少なくともいずれか一つに反映させてもよい。
【0095】
さらに、複数のセンサ12の測定データの測定条件(設備種別、環境(温度、湿度)等)等の情報を設備情報24に記憶しておいてもよい。この測定条件、生産設備10の稼働情報に含まれる稼働状態、稼働条件等から近い条件の測定データをグルーピングして、グループ毎に測定データを機械学習させ、分類モデル202、第1の判別モデル128、および第2の判別モデル130の少なくともいずれか一つに反映させてもよい。
【実施例】
【0096】
(実施例1)
図20は、実施例1の解析装置を説明するためのフロー図である。
まず、異常判定部120は、生産設備10のセンサ12から振動データが入力されると、第1の判別器124においてFFT処理を行う(ステップS11)。このとき第1の判別モデル128を用いてパターンマッチング処理により振動特性を特定する。そして、第1の判別器124は振動特性が閾値の範囲内の場合は正常と判定し、閾
値の範囲を外れた場合は異常と判定する。異常判定部120はこの結果を設備監視システム1に生産設備10の異常判定結果として出力する(不図示)。
【0097】
さらに、異常判定部120は、ステップS11で第1の判別器124により正常か否かの判別ができなかったデータを抽出し(ステップS13)、第2の判別器126の機械学習処理の対象として解析部106に受け渡す。
【0098】
解析部106は、第1の判別器124で判別できなかったセンサ12の測定データについてノイズ除去処理を行い(ステップS15)、周波数分析して画像化する(ステップS17)。解析部106は、画像化されたデータを第2の判別器126を用いて判別し(ステップS19)、生産設備10の状態が正常か否かを判別する(ステップS21)。正常と判別された場合(ステップS21のYES)、生成部104は、当該正常と判別された測定データを機械学習し第2の判別器126の第2の判別モデル130を更新する(ステップS23)。
【0099】
一方、正常と判別されなかった(「Unknown」)場合(ステップS21のNO)、抽出部140は、当該Unknownとなった測定データを抽出して出力する(ステップS31)。オペレータは、この抽出されたUnknownなデータを参照し、生産設備10の稼働情報等とともに分析して、不具合事象を特定する。そして、不具合事象と振動特性とを紐付けた補正情報を解析装置100に入力する(ステップS33)。
【0100】
生成部104は、入力された補正情報を受け付け、受け付けた補正情報を元に第1の判別モデル128と閾値を更新する(ステップS35)。
【0101】
このようにして、解析装置100により、第1の判別器124で異常判定できなかった測定データを、第2の判別器126により機械学習することで、正常でないUnknownなデータを抽出し、生産設備10の稼働情報とともにオペレータが分析することで不具合事象を特定し、振動特性と不具合事象を紐付けた補正情報として解析装置100に入力することで、補正情報を元に第1の判別器124の第1の判別モデル128と閾値を更新することができる。
【0102】
(実施例2)
図21は、実施例2の解析装置を説明するためのフロー図である。
この実施例の解析装置100は、第1の判別器124と、第2の判別器126と、に加え、さらに、第3の判別器200を備える。
第3の判別器200は、第1の判別器124により正常と判別された測定データと、第2の判別器126によりUnknownと判別された測定データとを用いて機械学習する(ステップS41)。第2の判別器126は、機械学習により、正常と異常の分類モデル202を構築する。分類モデル202は、不具合事象をクラス分けする。
【0103】
第3の判別器200は、この分類モデル202を用いて、測定データが正常か異常の判別を行うとともに、さらに、不具合事象を識別して特定することができる。
【0104】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
なお、本発明において利用者に関する情報を取得、利用する場合は、これを適法に行うものとする。
【0105】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
1. 生産設備に設けられた振動センサの検出結果を画像化する画像処理手段と、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象にして判別器を生成する生成手段と、
前記判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う解析手段と、を備える解析装置。
2. 1.に記載の解析装置において、
前記検出結果が示す前記振動センサの振動の特徴解析処理を行い、閾値を用いて前記生産設備の異常判定処理を行う判定手段と、
前記状態解析処理で前記生産設備が正常状態でないと判定されたデータを抽出する抽出手段と、をさらに備え、
前記生成手段は、抽出された前記データに基づく補正情報を受け付け、前記閾値を更新し、
前記補正情報は、不具合事象と振動特性とを紐付けた情報を含む、解析装置。
3. 生産設備に設けられた振動センサの検出結果に基づいて当該生産設備の異常判定処理を第1の判別器を用いて行う判定手段と、
前記第1の判別器により正常か異常かの判別ができなかった前記検出結果を画像化する画像処理手段と、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象として第2の判別器を生成する生成手段と、
前記第2の判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う解析手段と、
を備える、
解析装置。
4. 3.に記載の解析装置において、
前記状態解析処理で前記生産設備が正常状態でないと判定されたデータを抽出する抽出手段をさらに備え、
前記生成手段は、抽出された前記データに基づく補正情報を受け付け前記第1の判別器を更新し、
前記補正情報は、不具合事象と振動特性とを紐付けた情報を含む、解析装置。
5. 1.から4.のいずれか一つに記載の解析装置において、
前記生成手段は、前記状態解析処理により正常と判定された前記データを前記機械学習処理の教師データとする、解析装置。
6. 1.から5.のいずれか一つに記載の解析装置において、
前記検出結果に対してノイズ除去処理を行う処理手段をさらに備え、
前記画像処理手段は、前記処理手段による前記ノイズ除去処理が行われた後の前記検出結果を画像化する、解析装置。
7. 1.から6.のいずれか一つに記載の解析装置において、
前記生産設備は、ベルトコンベアであり、
前記振動センサは、前記ベルトコンベアに設けられた複数の振動センサである、解析装置。
【0106】
8. 解析装置が、
生産設備に設けられた振動センサの検出結果を画像化し、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象にして判別器を生成し、
前記判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う、
解析方法。
9. 8.に記載の解析方法において、
前記解析装置が、さらに、
前記検出結果が示す前記振動センサの振動の特徴解析処理を行い、閾値を用いて前記生産設備の異常判定処理を行い、
前記状態解析処理で前記生産設備が正常状態でないと判定されたデータを抽出し、
抽出された前記データに基づく補正情報を受け付け、前記閾値を更新し、
前記補正情報は、不具合事象と振動特性とを紐付けた情報を含む、解析方法。
10. 解析装置が、
生産設備に設けられた振動センサの検出結果に基づいて当該生産設備の異常判定処理を第1の判別器を用いて行い、
前記第1の判別器により正常か異常かの判別ができなかった前記検出結果を画像化し、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象として第2の判別器を生成し、
前記第2の判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う、
解析方法。
11. 10.に記載の解析方法において、
前記解析装置が、さらに、
前記状態解析処理で前記生産設備が正常状態でないと判定されたデータを抽出し、
抽出された前記データに基づく補正情報を受け付け前記第1の判別器を更新し、
前記補正情報は、不具合事象と振動特性とを紐付けた情報を含む、解析方法。
12. 8.から11.のいずれか一つに記載の解析方法において、
前記解析装置が、さらに、
前記状態解析処理により正常と判定された前記データを前記機械学習処理の教師データとする、解析方法。
13. 8.から12.のいずれか一つに記載の解析方法において、
前記解析装置が、さらに、
前記検出結果に対してノイズ除去処理を行い、
前記ノイズ除去処理が行われた後の前記検出結果を画像化する、解析方法。
14. 8.から13.のいずれか一つに記載の解析方法において、
前記生産設備は、ベルトコンベアであり、
前記振動センサは、前記ベルトコンベアに設けられた複数の振動センサである、解析方法。
【0107】
15. コンピュータに、
生産設備に設けられた振動センサの検出結果を画像化する手順、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象にして判別器を生成する手順、
前記判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う手順、を実行させるためのプログラム。
16. 15.に記載のプログラムにおいて、
前記検出結果が示す前記振動センサの振動の特徴解析処理を行い、閾値を用いて前記生産設備の異常判定処理を行う手順、
前記状態解析処理で前記生産設備が正常状態でないと判定されたデータを抽出する手順、
前記生成する手順において、抽出された前記データに基づく補正情報を受け付け、前記閾値を更新する手順、をさらにコンピュータに実行させ、
前記補正情報は、不具合事象と振動特性とを紐付けた情報を含む、プログラム。
17. コンピュータに、
生産設備に設けられた振動センサの検出結果に基づいて当該生産設備の異常判定処理を第1の判別器を用いて行う手順、
前記第1の判別器により正常か異常かの判別ができなかった前記検出結果を画像化する手順、
前記画像化したデータを機械学習処理の対象として第2の判別器を生成する手順、
前記第2の判別器を用いて前記生産設備の状態解析処理を行う手順、を実行させるためのプログラム。
18. 17.に記載のプログラムにおいて、
前記状態解析処理で前記生産設備が正常状態でないと判定されたデータを抽出する手順、
前記生成する手順において、抽出された前記データに基づく補正情報を受け付け前記第1の判別器を更新する手順、をさらにコンピュータに実行させ、
前記補正情報は、不具合事象と振動特性とを紐付けた情報を含む、プログラム。
19. 15.から18.のいずれか一つに記載のプログラムにおいて、
前記生成する手順において、前記状態解析処理により正常と判定された前記データを前記機械学習処理の教師データとする手順をさらにコンピュータに実行させるためのプログラム。
20. 15.から19.のいずれか一つに記載のプログラムにおいて、
前記検出結果に対してノイズ除去処理を行う手順、
前記画像化する手順において、前記ノイズ除去処理が行われた後の前記検出結果を画像化する手順、をさらにコンピュータに実行させるためのプログラム。
21. 15.から20.のいずれか一つに記載のプログラムにおいて、
前記生産設備は、ベルトコンベアであり、
前記振動センサは、前記ベルトコンベアに設けられた複数の振動センサである、プログラム。
【0108】
この出願は、2019年2月5日に出願された日本出願特願2019-019068号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。