(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】Liの回収方法及び回収装置
(51)【国際特許分類】
C22B 26/12 20060101AFI20221206BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20221206BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20221206BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C22B26/12
C22B3/06
C22B3/22
C22B3/44 101Z
(21)【出願番号】P 2021023221
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2022-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】倉持 建汰
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】村岡 弘樹
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-147706(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203888(WO,A1)
【文献】特開2019-160429(JP,A)
【文献】特開2019-011518(JP,A)
【文献】特表2019-526523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 26/12
C22B 3/06
C22B 3/22
C22B 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li分を含む電池滓に酸を添加して浸出液を生成する酸浸出工程と、
Ca分を含む第1添加剤を前記浸出液に添加することにより、前記浸出液を中和して第1処理物を生成する第1添加工程と、
前記第1処理物を濾過して第1処理濾液と第1処理残渣とに分離する第1添加後濾過工程と、
炭酸ナトリウム又は/及び炭酸ナトリウム水和物を含む第2添加剤を前記第1処理濾液に添加して第2処理物を生成する第2添加工程と、
前記第2処理物を濾過してLi分及びNa分を含む第2処理濾液とCa分を含む第2処理残渣とに分離する第2添加後濾過工程と、
前記第2処理濾液を加熱する加熱工程と、
加熱された前記第2処理濾液に炭酸ガスを吹き込むか、あるいは炭酸塩を添加して第3処理物を生成する炭酸化工程と、
前記第3処理物を濾過してNa分を含む第3処理濾液とLi分を含む第3処理残渣とに分離する炭酸化後濾過工程とを有することを特徴とするLiの回収方法。
【請求項2】
Ca分を含む洗浄液により前記第1処理残渣を洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄液と前記第1処理残渣との混合物を濾過して洗浄濾液と洗浄残渣とに分離する洗浄後濾過工程とを有し、
前記第2添加工程においては、前記第1処理濾液と前記洗浄濾液との混合液に前記第2添加剤を添加することを特徴とする請求項1に記載のLiの回収方法。
【請求項3】
Li分を含む電池滓に酸を添加して浸出液を生成する酸浸出装置と、
Ca分を含む第1添加剤を前記浸出液に添加することにより、前記浸出液を中和して第1処理物を生成する第1添加装置と、
前記第1処理物を濾過して第1処理濾液と第1処理残渣とに分離する第1添加後濾過装置と、
炭酸ナトリウム又は/及び炭酸ナトリウム水和物を含む第2添加剤を前記第1処理濾液に添加して第2処理物を生成する第2添加装置と、
前記第2処理物を濾過してLi分及びNa分を含む第2処理濾液とCa分を含む第2処理残渣とに分離する第2添加後濾過装置と、
前記第2処理濾液を加熱する加熱装置と、
加熱された前記第2処理濾液に炭酸ガスを吹き込むか、あるいは炭酸塩を添加して第3処理物を生成する炭酸化装置と、
前記第3処理物を濾過してNa分を含む第3処理濾液とLi分を含む第3処理残渣とに分離する炭酸化後濾過工程とを備えることを特徴とするLiの回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Liの回収方法及び回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、リチウムイオン電池の廃棄物から回収した電池滓に酸を添加して浸出液を生成し、浸出液に水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウム(添加剤)を添加して処理物を生成し、処理物を固液分離して濾液(リチウム溶解液)と残渣とに分離し、濾液に含まれるLi分を炭酸化して回収する技術が記載されている。
【0003】
しかし、下記特許文献1に記載の技術において、添加剤として水酸化ナトリウムを使用した場合、Na分が多量に混入するため、炭酸リチウム製造時のNa分の洗浄負荷が高まる。一方で、添加剤として水酸化カルシウムを用いた場合、炭酸リチウム製造時にCa分がLi分と共に炭酸化され、この濾液から製造した炭酸リチウムに難溶性の炭酸カルシウムが混入する。よって、回収したLi分を有効に利用することが難しくなる。また、特許文献2では、水酸化カルシウムを添加剤とした場合、炭酸化と再溶解、Ca分析出、固液分離によってCa分を除去しており、工程が煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-160429号公報
【文献】特開2019-11518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電池滓に含まれるLi分を添加剤に含まれるNa分及びCa分から分離して回収することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一項目に係るLiの回収方法は、Li分を含む電池滓に酸を添加して浸出液を生成する酸浸出工程と、Ca分を含む第1添加剤を前記浸出液に添加することにより、前記浸出液を中和して第1処理物を生成する第1添加工程と、前記第1処理物を濾過してLi分を含む第1処理濾液と第1処理残渣とに分離する第1添加後濾過工程と、炭酸ナトリウムを含む第2添加剤を前記第1処理濾液に添加して第2処理物を生成する第2添加工程と、前記第2処理物を濾過してLi分及びNa分を含む第2処理濾液とCa分を含む第2処理残渣とに分離する第2添加後濾過工程と、前記第2処理濾液を加熱する加熱工程と、加熱された前記第2処理濾液に炭酸ガスを吹き込むか、あるいは炭酸塩を添加して第3処理物を生成する炭酸化工程と、前記第3処理物を濾過してNa分を含む第3処理濾液とLi分を含む第3処理残渣とに分離する炭酸化後濾過工程とを有する。
【0007】
第一項目によれば、電池滓に含まれるLi分を添加剤に含まれるNa分及びCa分から分離して回収することができる。この点に関して以下において具体的に説明する。
【0008】
まず、第一項目によれば、Caを含む第1添加剤で中和を実施するので、Na塩を用いる場合に比べて安価に中和することができ、また、Liとの分離が困難なNaの混入を避けることができる。Ca塩を含む第1添加剤由来のCaを除去するために第2添加剤として炭酸ナトリウムを使用するが、ここで添加されるNa量は、中和に必要なNa塩の量に比べて少ないので、LiとNaの分離負荷を抑えることができる。
【0009】
また、第一項目によれば、第2添加工程において第1処理濾液に含まれるCa分(第1添加剤に含まれていたもの)のみを効率よく分離することができる。その理由としては、溶解度の高い炭酸ナトリウムを第2添加剤として使用していること、Ca分は室温でも炭酸イオンと反応し、炭酸カルシウムとして沈殿するが、Li分が炭酸リチウムとして生成する温度は50℃以上であることが挙げられる。これにより、第2処理物(第1処理濾液から生成したもの)に含まれるCa分を第2添加後濾過工程において効率よく除去することができる。このようにして、電池滓に含まれるLi分を第1添加剤に含まれるCa分から分離することができる。
【0010】
また、第一項目によれば、炭酸化工程において第2処理濾液に含まれるLi分(電池滓に含まれていたもの)を効率よく炭酸化することができる。これにより、第3処理物(第2処理濾液から生成したもの)に含まれるLi分を炭酸化後濾過工程において効率よく回収することができる。このようにして、電池滓に含まれるLi分を第2添加剤に含まれるNa分から分離することができる。なお、本発明において第2添加剤として使用する炭酸ナトリウムは、水和物であってもよい。
【0011】
本発明の第二項目に係るLiの回収方法は、Ca分を含む洗浄液により前記第1処理残渣を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄液と前記第1処理残渣との混合物を濾過して洗浄濾液と洗浄残渣とに分離する洗浄後濾過工程とを有する。前記第2添加工程においては、前記第1処理濾液と前記洗浄濾液との混合液に前記第2添加剤を添加する。
【0012】
第二項目によれば、第1処理残渣に含まれる水酸化物(第1添加工程において生成した水酸化物)を再溶解させることなく、第1処理残渣に付着しているLi分を洗浄液で洗い落とすことができる。これにより、このLi分は、洗浄濾液に含まれることになる。よって、このLi分と第1処理濾液に含まれるLi分との両方を回収することができる。
【0013】
本発明の第三項目に係るLiの回収装置は、Li分を含む電池滓に酸を添加して浸出液を生成する酸浸出装置と、Ca分を含む第1添加剤を前記浸出液に添加することにより、前記浸出液を中和して第1処理物を生成する第1添加装置と、前記第1処理物を濾過してLi分を含む第1処理濾液と第1処理残渣とに分離する第1添加後濾過装置と、炭酸ナトリウムを含む第2添加剤を前記第1処理濾液に添加して第2処理物を生成する第2添加装置と、前記第2処理物を濾過してLi分及びNa分を含む第2処理濾液とCa分を含む第2処理残渣とに分離する第2添加後濾過装置と、前記第2処理濾液を加熱する加熱装置と、加熱された前記第2処理濾液に炭酸ガスを吹き込むか、あるいは炭酸塩を添加して第3処理物を生成する炭酸化装置と、前記第3処理物を濾過してNa分を含む第3処理濾液とLi分を含む第3処理残渣とに分離する炭酸化後濾過装置とを備える。
【0014】
第三項目によれば、第一項目と同様の効果を生じさせることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、電池滓に含まれるLi分を添加剤に含まれるNa分及びCa分から分離して回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るLiの回収方法の手順を説明するための説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るLiの回収装置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るLiの回収方法及び回収装置について説明する。
図2に示すLiの回収装置100は、
図1に示すLiの回収方法を実施するためのものである。以下においては、電池の廃棄物として、いわゆるリチウムイオン電池の廃棄物を処理する場合を例にとって説明する。
【0018】
図1に示すように、この回収方法は、熱処理工程S1、破砕工程S2、取出工程S3、酸浸出工程S4、第1添加工程S5、第1添加後濾過工程S6、洗浄工程S7、洗浄後濾過工程S8、第2添加工程S9、第2添加後濾過工程S10、加熱工程S11、炭酸化工程S12、及び炭酸化後濾過工程S13を有する。
【0019】
図2に示すように、この回収装置100は、熱処理装置1、破砕装置2、取出装置3、酸浸出装置4、第1添加装置5、第1添加後濾過装置6、洗浄装置7、洗浄後濾過装置8、第2添加装置9、第2添加後濾過装置10、加熱装置11、炭酸化装置12、及び炭酸化後濾過装置13を備える。
【0020】
熱処理工程S1は、リチウムイオン電池の廃棄物W1を熱処理装置1により熱処理する工程である。熱処理は、例えば、過熱水蒸気又は/及び窒素雰囲気で500℃、1時間の条件で実施する。この工程において、廃棄物W1に含まれる電解液を加熱して揮発させることにより廃棄物W1を無害化する。廃棄物W1には、Li分、Ni分、Co分及びAl分などの金属が含まれている。熱処理工程S1においては、廃棄物W1が加熱されて廃棄物W2が得られる。
【0021】
破砕工程S2は、加熱された廃棄物W2を破砕装置2により破砕して廃棄物W3を得る工程である。破砕装置2には、例えば、二軸破砕機及びハンマークラッシャーを使用することができる。
【0022】
取出工程S3は、取出装置3により廃棄物W3から不純物Iを除去して電池滓Mを取り出す工程である。取出装置3には、振動篩等の篩を使用することができる。篩を使用する場合、例えば篩目0.5mm程度の篩を用い、篩通過分が電池滓Mであって篩残分が不純物Iである。電池滓Mは、廃棄物W3に含まれていた正極活物質及び負極活物質を有する混合粉末である。不純物Iは、電池廃棄物W3に含まれていたアルミニウム片を含んでいる。
【0023】
酸浸出工程S4は、酸浸出装置4において電池滓Mに酸Sを添加することにより、電池滓Mに含まれる金属(Li分、Ni分、Co分及びAl分など)を酸Sに浸出させる工程である。酸浸出工程S4においては、電池滓Mと酸Sとの混合液である浸出液Eが生成される。酸Sには、例えば硫酸を使用することができる。酸Sとして硫酸を使用する場合、電池滓Mに含まれる金属を硫酸に効率よく浸出させるために、電池滓Mに過酸化水素を添加することが好ましい。また、酸Sとして硫酸を使用する場合、電池滓Mに含まれる金属を効率よく硫酸に浸出させるために、濃度1.5mol/l以上の硫酸を使用し、浸出液Eを40℃以上に加熱しながら3時間以上攪拌することが好ましい。
【0024】
第1添加工程S5は、第1添加装置5において浸出液Eに第1添加剤A1を添加することにより、浸出液Eを中和して浸出液Eに含まれるNi分、Co分及びAl分の水酸化物を生成する工程である。第1添加工程S5においては、浸出液Eと第1添加剤A1との混合物である第1処理物P1が生成される。第1添加剤A1としてはCa分を使用する。具体的には、例えば水酸化カルシウム又は水酸化カルシウム水溶液を使用することができる。
【0025】
第1添加後濾過工程S6は、第1添加後濾過装置6において第1処理物P1を濾過して第1処理濾液F1と第1処理残渣R1とに分離する工程である。第1処理残渣R1には、Ni分、Co分及びAl分の水酸化物が含まれている。第1処理濾液F1には、Li分、Ca分(第1添加剤A1由来のもの)が含まれている。第1処理残渣R1には、Li分は少し含まれている。第1処理濾液F1には、Ni分、Co分及びAl分の水酸化物はほぼ含まれていない。
【0026】
洗浄工程S7は、第1処理残渣R1を洗浄装置7において洗浄液Cにより洗浄することにより、第1処理残渣R1に含まれるNi分、Co分及びAl分の水酸化物を洗浄液Cに再溶解させることなく、第1処理残渣R1に含まれるLi分を洗浄液Cに溶解させる工程である。洗浄工程S7においては、洗浄液Cと第1処理残渣R1との混合物である洗浄スラリーD1が生成される。ここで、洗浄液Cとしては、Ca分を含む溶液を使用する。具体的には、例えば水酸化カルシウム水溶液を使用することができる。洗浄液Cは、第1処理残渣R1に含まれるMn分などを溶解させないため、pH10以上であることが好ましい。
【0027】
洗浄後濾過工程S8は、洗浄後濾過装置8において、洗浄スラリーD1を濾過して洗浄濾液D2と洗浄残渣D3とに分離する工程である。洗浄濾液D2には、Li分が含まれている。洗浄残渣D3には、Ni分、Co分及びAl分の水酸化物が含まれている。洗浄濾液D2には、Ni分、Co分及びAl分はほぼ含まれていない。洗浄残渣D3には、Li分はほぼ含まれていない。
【0028】
第2添加工程S9は、第2添加装置9において、第1添加後濾過工程S6の第1処理濾液F1と洗浄後濾過工程S8の洗浄濾液D2との混合液に第2添加剤A2を添加することにより、この混合液に含まれるCa分を炭酸化する工程である。第2添加工程S9においては、この混合液と第2添加剤A2との混合物である第2処理物P2が生成される。
【0029】
第2添加剤A2としては、炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム水和物のいずれかを使用するか、あるいは、これらを組み合わせて使用する。ここで、好ましくは、第2添加工程S9において、50℃未満の混合液(より好ましくは20℃以上30℃以下の混合液)に第2添加剤A2を添加する。これにより、この混合液に含まれるCa分を効率よく炭酸化することができる。
【0030】
第2添加後濾過工程S10は、第2添加後濾過装置10において、第2処理物P2を濾過して第2処理濾液F2と第2処理残渣R2とに分離する工程である。第2処理残渣R2にはCa分(炭酸カルシウム)が含まれており、第2処理濾液F2にはLi分及びNa分が含まれている。また、第2処理残渣R2にはLi分はほぼ含まれておらず、第2処理濾液F2にはCa分はほぼ含まれていない。このNa分は、第2添加剤A2由来のものである。
【0031】
加熱工程S11は、後段の炭酸化工程S12においてLi分を炭酸化するため、第2処理濾液F2を加熱装置11により50℃以上(好ましくは60℃以上80℃以下)に加熱する工程である。加熱工程S11においては、第2処理濾液F2が加熱されて高温濾液Hが生成される。
【0032】
炭酸化工程S12は、炭酸化装置12において高温濾液Hに炭酸ガスGを吹き込むことにより、高温濾液Hに含まれるLi分を炭酸化する工程である。炭酸化工程S12においては、高温濾液Hと炭酸ガスGとの混合物である第3処理物P3が生成される。なお、高温濾液Hに炭酸ガスGを吹き込むことに代えて、あるいは、高温濾液Hに炭酸ガスGを吹き込むと共に、高温濾液Hに炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物)を添加することができる。
【0033】
炭酸化後濾過工程S13は、炭酸化後濾過装置13において、第3処理物P3を濾過して第3処理濾液F3と第3処理残渣R3とに分離する工程である。第3処理濾液F3にはNa分が含まれており、第3処理残渣R3にはLi分(炭酸リチウム)が含まれている。第3処理濾液F3にはLi分はほぼ含まれておらず、第3処理残渣R3にはNa分はほぼ含まれていない。
【0034】
次に、本発明の一実施形態に係るLiの回収方法及び回収装置において、洗浄工程の効果を確認した試験例について説明する。なお、以下において、試験例における各工程を上記実施形態と対応させて説明する。また、以下において、特に記載していない事項は上記一実施形態と同様である。
【0035】
[試験例1]
(熱処理工程~酸浸出工程)
リチウムイオン二次電池の廃棄物(電池の廃棄物)から回収した電池滓14.5gに硫酸(濃度2mol/l)100ml及び過酸化水素水(濃度30質量%)5mlを添加して浸出液を生成した。この浸出液を60℃で3時間攪拌した。その後、この浸出液を室温まで放冷した。
【0036】
(第1添加工程)
酸浸出工程における放冷後の浸出液に水酸化カルシウム水溶液を添加して第1処理物を生成した。水酸化カルシウム水溶液の添加は、第1処理物のpHが10.0以上になるまで行った。
【0037】
(第1添加後濾過工程)
第1添加工程の第1処理物を濾過して第1処理濾液と第1処理残渣とに分離した。
【0038】
(洗浄工程)
第1添加後濾過工程の第1処理残渣を水酸化カルシウム水溶液(濃度0.01mol/l、pH12)100mlにより室温下で1時間のケーキ洗浄を実施した。これにより、この第1処理残渣と水酸化カルシウム水溶液との混合物である洗浄スラリーを得た。
【0039】
(洗浄後濾過工程)
洗浄工程の洗浄スラリーを濾過して洗浄濾液と洗浄残渣とに分離した。
【0040】
本試験例においては、次のように定義した第1Li回収率及び第2Li回収率を算出した。第1Li回収率は、「第1処理濾液に含まれるLi分の質量÷浸出液に含まれるLi分の質量×100」とした。第2Li回収率は、「第1処理濾液及び洗浄濾液に含まれるLi分の合計質量÷浸出液に含まれるLi分の質量×100」とした。第1Li回収率は45.6%となった。また、第2Li回収率は90.5%まで高まった。なお、各液の組成は、ICP-AESを用いて測定した。
【0041】
[試験例2]
洗浄工程において、水酸化カルシウム水溶液(濃度0.01mol/l、pH12)100mlにより室温下、1時間のリパルプ洗浄を3回実施した以外は、試験例1と同様に各工程を実施した。第2Li回収率は洗浄1回では79.3%、2回では87.6%、3回では90.2%であった。表1に、各液の組成分析の結果とLi回収率を示す。
【0042】
【0043】
以上のように、上記一実施形態によれば、電池滓Mに含まれるLi分を、第2添加後濾過工程S10においてCa分(第1添加剤A1由来のもの)から分離し、炭酸化後濾過工程S13においてNa分(第2添加剤A2由来のもの)から分離して第3処理残渣R3として回収することができる。また、第1処理残渣R1に含まれるLi分を洗浄液Cに浸出させて回収することにより、電池滓Mに含まれていたLi分をさらに効率よく回収することができる。
【0044】
なお、上記一実施形態においては、熱処理工程S1、破砕工程S2、取出工程S3、洗浄工程S7及び洗浄後濾過工程S8を適宜省略することができる。