(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】インク補給容器
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B41J2/175 131
(21)【出願番号】P 2021140651
(22)【出願日】2021-08-31
(62)【分割の表示】P 2017036333の分割
【原出願日】2017-02-28
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】石澤 卓
(72)【発明者】
【氏名】深澤 教幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 尚己
(72)【発明者】
【氏名】工藤 聖真
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 学
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205895(JP,A)
【文献】特開2012-176587(JP,A)
【文献】登録実用新案第3168889(JP,U)
【文献】国際公開第2017/205895(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111244(WO,A1)
【文献】特開2012-106363(JP,A)
【文献】米国特許第05920333(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留可能なインク貯留室と、該インク貯留室に連通しインクを導入するための
流路を有する針と、該針を挟んで配置される一対の凹部とを備えたプリンターのインク供給ユニットに、前記針を介して
空気を取り込み且つインクを補給するためのインク補給容器であって、
インクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、
前記容器本体部の端部に接続され、前記インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口が形成されたインク出口形成部と、
前記インク出口形成部とねじにより係合可能なキャップと、
を備え、
前記インク出口形成部は、
弾性部材に1つ以上のスリットが設けられたスリット弁であって、前記針が前記インク出口に挿入されることにより開弁し、前記
インク出口から前記針が抜かれることにより閉弁するように作用するスリット弁と、
前記一対の凹部に挿入可能に構成された一対の凸部と、
前記キャップと係合可能なねじ形成部と、
を備え、
前記インク出口は、該インク出口の中心軸方向に延びる筒部に設けられ、
前記一対の凸部の各々は、前記中心軸方向に延び、且つ、前記中心軸方向と交差する
径方向に延びる先端面を有し、前記一対の凸部の各々と前記筒部の外側面との間に
前記中心軸方向を深さ方向とするスリット状の隙間が形成されて
おり、更に、前記一対の凸部の各々は前記径方向における外側の端を構成する側面を有し、前記側面は前記ねじ形成部まで延伸し、
前記キャップは前記ねじ形成部と係合した状態において前記インク出口と前記一対の凸部を覆う、
インク補給容器。
【請求項2】
請求項
1に記載のインク補給容器であって、
前記一対の凸部は、前記中心軸方向において前記先端面より前記容器本体部側で、且つ、前記中心軸方向と交差する方向に延びる位置決め面を有し、
前記凸部が前記凹部に挿入され前記インク出口に前記針が挿入され前記スリット弁が開いた状態で、前記位置決め面は、前記一対の凹部の開口縁と当接する、インク補給容器。
【請求項3】
請求項
1または請求項2に記載のインク補給容器であって、
前記キャップの外周面に複数の突起が等角度間隔で形成されている、インク補給容器。
【請求項4】
請求項
3に記載のインク補給容器であって、
前記突起は前記インク補給容器の転がり防止用に形成されている、 インク補給容器。
【請求項5】
請求項
1~請求項
4のいずれか一項に記載のインク補給容器であって、
前記容器本体部の外周面に複数の容器本体側突起が等角度間隔で形成されている、インク補給容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に供給するインクを内部に貯留するインクタンクに対してインクを補給するインク補給容器及びそのようなインク補給容器を含んで構成されるインク補給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを媒体に吐出して記録を行う記録装置には、インクを内部に貯留したインクタンクがインクを供給可能な状態で接続されている。そして、こうした記録装置においてインクタンク内のインクの残量が僅かとなった場合には、そのようなインクタンクに対して外部からインク補給容器を用いてインクが補給される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクタンクに対するインクの補給作業は、インクの補給不良等を抑制して適切に行う必要があるところ、そうした補給作業は従来から記録装置のユーザーが行っていた。そのため、こうしたインクの補給作業がユーザーにより適切に行われるためには、例えばインク補給容器等において更なる改善が求められていた。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクタンクに対して適切にインクを補給できるインク補給容器及びそのようなインク補給容器を含むインク補給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するインク補給容器は、インク入口流路部と、前記インク入口流路部と連通するインク室と、を有するインクタンクに、インクを補給するインク補給容器であって、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、前記容器本体部の端部に設けられ、前記インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口が形成されたインク出口形成部と、前記インク出口形成部に設けられ、前記インク出口を開閉可能に封止する弁と、前記弁が開弁するときに前記インクタンク側の一部と当接して前記弁を前記インクタンクに対して位置決めする位置決め部と、を備え、前記位置決め部は、前記弁に対して前記容器本体部が位置する側とは反対側に位置し、且つ、前記インク出口の中心軸と交差する方向に延びる位置決め面を有し、前記位置決め面は、前記インクタンクの前記インク入口流路部が前記インク出口に挿入されて前記弁が開いた状態において、前記インクタンク側の前記一部と当接する。
【0007】
この構成によれば、インク補給容器をインクタンク側に移動させ、インク出口にインクタンクのインク入口流路部を挿入して弁を開弁させるとき、位置決め面が、弁よりも先にインクタンク側に移動する。そのため、例えばインク出口にインク入口流路部が挿入される方向に位置決め面の移動を案内可能な構成がインクタンク側に設けられていれば、インク入口流路部を弁に対して誘導し易くなる。また、インク補給容器は、インクタンクへのインク補給時に位置決め面がインクタンク側の一部に当接すると、インク出口の中心軸と交差する方向において姿勢が安定するため、インク補給がし易くなって、インクタンクに対して適切にインクを補給することができる。
【0008】
上記インク補給容器において、前記位置決め面は、前記インク出口の中心軸に沿う方向において前記インク出口よりも前記容器本体部側とは反対側に位置することが好ましい。
この構成によれば、インク補給容器は、そのインク出口にインクタンク側のインク入口流路部を挿入させるとき、位置決め面がインク出口よりも先にインクタンクに接近する。そのため、インク補給容器をインクタンクに接近させたときに、インク出口が他の部材と衝突することを防ぎ易い。また、それにより、インク出口の破損、他の部材へのインクの付着を防ぎ易い。
【0009】
上記インク補給容器において、前記位置決め面は、前記インク出口形成部の端部で前記インク出口を外部に向けて開口形成する筒部の先端に形成されることが好ましい。
この構成によれば、位置決め面をインク出口と共にインク出口形成部の一部である筒部に形成できるので、位置決め面をインク出口とは別の箇所に設けた凸部等に形成するよりも構造を簡単にできる。
【0010】
上記課題を解決する別のインク補給容器は、インク入口流路部と、前記インク入口流路部と連通するインク室と、を有するインクタンクに、インクを補給するインク補給容器であって、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、前記容器本体部の端部に設けられ、前記インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口が形成されたインク出口形成部と、前記インク出口形成部に設けられ、前記インク出口を開閉可能に封止する弁と、前記弁が開弁するときに前記インクタンク側の一部と当接して前記弁を前記インクタンクに対して位置決めする位置決め部と、を備え、前記インク出口は、前記インク出口形成部の一部である筒部に形成され、前記位置決め部は、前記インク出口の中心軸と交差する方向に延びる位置決め面を前記筒部の外側面との間に隙間を設けて備え、前記位置決め面は、前記インクタンクの前記インク入口流路部が前記インク出口に挿入されて前記弁が開いた状態において、前記インクタンク側の前記一部と当接する。
【0011】
この構成によれば、インク補給容器からインクタンクへのインク補給時には、インク出口の中心軸と交差する方向に延びる位置決め面がインクタンク側の一部と当接するため、安定した状態でインクを適切に補給できる。また、インク出口や位置決め面に付着したインクを隙間に引き込み、インクのたれ落ちや外部への汚染を低減する可能性もある。
【0012】
上記インク補給容器において、前記位置決め面は、前記インク出口の中心軸と交差する方向において前記インク出口から遠い側で前記インクタンク側の一部と当接する面積の方が前記インク出口に近い側で前記インクタンク側の一部と当接する面積よりも大きいことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、インク出口にインク入口流路部を挿入させて弁を開弁させるインク補給状態において、インク出口の姿勢の安定性を高めることができる。
上記課題を解決する別のインク補給容器は、インク入口流路部と、前記インク入口流路部と連通するインク室と、を有するインクタンクに、インクを補給するインク補給容器であって、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、前記容器本体部の端部に設けられ、前記インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口が形成されたインク出口形成部と、前記インク出口形成部に設けられ、前記インク出口を開閉可能に封止する弁と、前記弁が開弁するときに前記インクタンク側の一部と当接して前記弁を前記インクタンクに対して位置決めする位置決め部と、を備え、前記位置決め部は、前記インク出口の中心軸と交差する方向に傾斜または湾曲した位置決め面を備え、前記位置決め面は、前記インクタンクの前記インク入口流路部が前記インク出口に挿入されて前記弁が開いた状態において、前記インクタンク側の前記一部と当接する。
【0014】
この構成によれば、インク補給容器からインクタンクへのインク補給時に、インク出口の中心軸に沿う方向及び中心軸と直交する方向の両方向において、インク補給容器を位置決めでき、インク補給を適切に行うことができる。
【0015】
上記インク補給容器において、前記位置決め面は、前記インク出口から前記容器本体部に向かう方向において、前記中心軸から次第に離れる方向に傾斜又は湾曲している。
この構成によれば、インク出口に対してインク入口流路部を挿抜する際、インク補給容器を傾斜又は湾曲した位置決め面に沿って徐々に誘導できる。
【0016】
上記インク補給容器において、前記位置決め部は、前記インク出口形成部及び前記容器本体部の少なくとも一方における外部に露出した部分に備えられることが好ましい。
この構成によれば、インク補給容器のインク出口にインクタンクのインク入口流路部を挿入させるとき、位置決め部を外部から視認し易い。また、位置決め部を容器本体部における外部に露出した部分に備える場合には、インクを収容した容器本体部が位置決めされるため、重量のある部分が位置決めされることになり、インク補給の姿勢が安定する。
【0017】
上記課題を解決する別のインク補給容器は、インク入口流路部と、前記インク入口流路部と連通するインク室と、を有するインクタンクに、インクを補給するインク補給容器であって、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、前記容器本体部の端部に設けられ、前記インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口が形成されたインク出口形成部と、前記インク出口形成部に設けられ、前記インク出口を開閉可能に封止する弁と、前記弁が開弁するときに前記インクタンク側の一部と当接して前記弁を前記インクタンクに対して位置決めする位置決め部と、を備え、前記位置決め部を、前記インク出口の内部に備える。
【0018】
この構成によれば、位置決め部が、インク出口の外部に備えられた場合に比べ、インク出口の内部で保護されるため、破損し難くできる。また、インク出口の内部で位置決め部が弁に近いため、弁をインクタンクに対して精度良く位置決めできる。更に、位置決め部にインクが付着してもインク出口の内部に位置するため、インク補給容器の外部にインクを付着させ難い。
【0019】
上記課題を解決するインク補給システムは、インク入口流路部と、前記インク入口流路部と連通するインク室と、を有するインクタンクと、上記構成のインク補給容器と、前記インク補給容器の前記弁が前記インクタンクに対して前記位置決め部を介して位置決めされるときに前記位置決め部と前記インクタンク側の前記一部との間に位置し、前記位置決め部と前記インクタンク側の前記一部との当接を仲介する位置決め補助部材と、を備える。
【0020】
この構成によれば、インク補給容器からインクタンクへのインク補給時に、位置決め補助部材を用いることにより、種々のインクタンクに対し適切な位置決めを行うことができる。
【0021】
上記インク補給システムにおいて、前記位置決め補助部材は、インクを吸収可能なインク吸収材で構成されることが好ましい。
この構成によれば、インク補給容器の位置決め部がインクタンク側の一部と当接する際の衝撃をインク吸収材により緩和できる。また、インク吸収材によりインクが吸収されるため、インク補給容器を外したときのたれ落ちや飛び散りを低減できる。
【0022】
上記課題を解決する別のインク補給容器は、インク入口流路部と、前記インク入口流路部と連通するインク室と、を有するインクタンクに、インクを補給するインク補給容器であって、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、前記容器本体部の端部に設けられ、前記インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口が形成されたインク出口形成部と、前記インク出口形成部に設けられ、前記インク出口を開閉可能に封止する弁と、前記弁が開弁するときに前記インクタンク側の一部と当接して前記弁を前記インクタンクに対して位置決めする位置決め部と、を備える。
【0023】
この構成によれば、インク補給の際に、インク補給容器の位置決め部がインクタンク側の一部に当接すると、インク出口を開閉する弁がインクタンクに対して位置決めされる。そのため、インク補給がし易くなり、インクタンクに対して適切にインクを補給することができる。
本開示は以下の形態により実現されてもよい。
[形態1] インク入口流路部と、前記インク入口流路部と連通するインク室と、を有するプリンターのインクタンクに、インクを補給するインク補給容器であって、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、前記容器本体部の端部に設けられ、前記インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口が形成されたインク出口形成部と、弾性部材に1つ以上のスリットが設けられたスリット弁であって、前記インク出口に挿入される前記インク入口流路部により開弁し、前記インク出口から前記インク入口流路部が抜かれることにより閉弁するように作用するスリット弁と、前記弁が開弁している状態において前記プリンターと当接して位置決めする位置決め部と、を備え、前記位置決め部は、前記容器本体部に設けられている、インク補給容器。
[形態2] インクを貯留可能なインク貯留室と、該インク貯留室に連通しインクを導入するための流路を有する針と、該針を挟んで配置される一対の凹部とを備えたプリンターのインク供給ユニットに、前記針を介して空気を取り込み且つインクを補給するためのインク補給容器であって、インクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、前記容器本体部の端部に接続され、前記インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口が形成されたインク出口形成部と、前記インク出口形成部とねじにより係合可能なキャップと、を備え、前記インク出口形成部は、弾性部材に1つ以上のスリットが設けられたスリット弁であって、前記針が前記インク出口に挿入されることにより開弁し、前記インク出口から前記針が抜かれることにより閉弁するように作用するスリット弁と、前記一対の凹部に挿入可能に構成された一対の凸部と、前記キャップと係合可能なねじ形成部と、を備え、前記インク出口は、該インク出口の中心軸方向に延びる筒部に設けられ、前記一対の凸部の各々は、前記中心軸方向に延び、且つ、前記中心軸方向と交差する径方向に延びる先端面を有し、前記一対の凸部の各々と前記筒部の外側面との間に前記中心軸方向を深さ方向とするスリット状の隙間が形成されており、更に、前記一対の凸部の各々は前記径方向における外側の端を構成する側面を有し、前記側面は前記ねじ形成部まで延伸し、前記キャップは前記ねじ形成部と係合した状態において前記インク出口と前記一対の凸部を覆う、インク補給容器。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】記録装置の概略構成を透視状態で模式的に示す斜視図。
【
図2】記録装置の筐体内に備えられたインク供給ユニットを示す斜視図。
【
図12】インク補給作業直前のインク補給システムを示す一部破断正面図。
【
図13】インク補給作業直前のインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図14】インク補給作業中のインク補給システムを示す一部破断正面図。
【
図15】インク補給作業中のインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図16】位置決め状態のインク補給システムを示す一部破断正面図。
【
図17】位置決め状態のインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図18】第2実施形態のインク補給容器の部分斜視図。
【
図19】第2実施形態でのインク補給時のインク供給ユニットの部分平面図。
【
図21】第3実施形態のインク補給容器の部分斜視図。
【
図22】第3実施形態でのインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図23】第4実施形態のインク補給容器の部分斜視図。
【
図24】第5実施形態のインク補給容器の部分斜視図。
【
図25】第5実施形態でのインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図26】第6実施形態でのインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図27】第7実施形態でのインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図28】第8実施形態でのインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図29】第9実施形態でのインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図30】第10実施形態でのインク補給システムを示す一部破断側面図。
【
図31】第11実施形態でのインク供給ユニットの斜視図。
【
図32】第11実施形態でのインク補給時のインク供給ユニットの部分平面図。
【
図34】第12実施形態でのインク補給システムを示す一部破断正面図。
【
図35】第13実施形態でのインク補給システムを示す一部破断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、記録装置におけるインクタンクとインク補給容器とを備えるインク補給システムの第1実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、この実施形態の記録装置は、媒体に対してインクを吐出することによって、媒体に画像等の記録(印刷)を行うインクジェット式のプリンターである。また、図面では、上下方向に所定の高さ、左右方向に所定の幅、及び前後方向に所定の奥行を有する記録装置が水平面上に置かれているものとする。そして、各図においては、鉛直線に沿う上下方向、鉛直線と直交して水平面に沿う左右方向、及び上下方向とも左右方向とも直交して水平面に沿う前後方向を矢印で示している。
【0026】
図1に示すように、記録装置21は、左右方向を長手方向とする直方体形状の筐体22を備えている。なお、
図1は、記録装置21における筐体22内を透視した状態で簡略的に図示している。筐体22内における後方寄りの下部には、左右方向を長手方向とする支持台23が、その上面を略水平方向に沿わせるようにして設けられている。媒体の一例である用紙Pは、この支持台23の上面に支持されつつ、搬送方向となる前方に向けて搬送される。また、筐体22内における支持台23の上方位置には、左右方向に沿って延びるガイド軸24が架設され、そのガイド軸24にはインクを吐出する記録ヘッド25を下面側に備えたキャリッジ26が支持されている。すなわち、キャリッジ26は、左右方向に貫通する支持孔27にガイド軸24が挿通された状態で、そのガイド軸24に対して左右方向への往復移動自在に支持されている。
【0027】
また、筐体22内においてガイド軸24の両端の近傍にあたる位置には、駆動プーリー28と従動プーリー29とがそれぞれ回転自在に支持されている。駆動プーリー28にはキャリッジモーター30の出力軸が連結されるとともに、駆動プーリー28と従動プーリー29との間には一部がキャリッジ26に連結された無端状のタイミングベルト31が巻き掛けられている。そして、キャリッジモーター30の駆動によりキャリッジ26がタイミングベルト31を介してガイド軸24にガイドされつつ用紙Pに対する走査方向となる左右方向に沿って往復移動するときに、支持台23上を前方に搬送される用紙Pに対してキャリッジ26の下面側の記録ヘッド25から用紙Pに対してインクが吐出される。
【0028】
また、
図1に示すように、筐体22の前面側において支持台23の前方側となる位置には、筐体22内で支持台23上を搬送されるときに記録ヘッド25からのインクの吐出により記録を行われた用紙Pを前方側に排出する矩形の排出口32が開口している。排出口32には、筐体22内から排出される用紙Pを支持可能な矩形板状の排出トレイ33が、排出方向である前方への出没自在に設けられている。また、排出口32内において、排出トレイ33の下側には記録に用いる複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な給紙カセット34が前後方向への挿抜自在に装着されている。
【0029】
また、
図1に示すように、筐体22における前面であって排出口32よりも左右方向の端部側(
図1では、右端部側)となる位置には、前面と上面が矩形状で右側面が直角三角形状をなす開閉扉35が、その下端に設けられた左右方向に沿う回転軸36を回転中心として前後方向への開閉動作自在に設けられている。この開閉扉35の前面には、矩形状の透明部材からなる窓部37が形成されており、ユーザーは開閉扉35を閉じた状態で筐体22の内部(特に、開閉扉35の前面の裏側)を視認できるようになっている。
【0030】
記録装置21の筐体22内において、開閉扉35の裏側となる位置、すなわち前面寄りで且つ端部寄り(この場合は右端部寄り)となる位置には、記録ヘッド25に対してインクを供給するインク供給ユニット40が収容されている。インク供給ユニット40は、複数(本実施形態では5つ)のインクタンク41~45を含んで一体的に取り扱い可能とされた構造体であり、後で述べるように、各インクタンク41~45にはインクが補給可能とされている。
【0031】
図2及び
図3に示すように、インク供給ユニット40は、前後方向に長い変形箱形状の5つのインクタンク41~45と、各インクタンク41~45の後面側から引き出された5つのインク供給チューブ46と、それらのインクタンク41~45を一括にした状態で組み付けられる直方体形状のインク補給用アダプター47を含んで構成されている。このインク補給用アダプター47は、全てのインクタンク41~45が厚さ方向を左右方向にして横並びに配置された状態において、全てのインクタンク41~45の上部前半部分に切欠形成された段差部48に組み付けられることで、インクタンク41~45と一体化されている。なお、
図1に示すように、インクタンク41~45から引き出されたインク供給チューブ46は、キャリッジ26内に形成されたインク流路(図示略)に接続され、そのインク流路を介して記録ヘッド25に接続されている。尚、インク補給用アダプター47は、インクタンク41~45を覆う筐体22の一部を構成するものであってもよく、インクタンク41~45と一体的に形成されていてもよい。
【0032】
図4及び
図5に示すように、インクタンク41~45は、その内部にインクIKを貯留可能なインク室49を有している。本実施形態の場合、その横並び方向で右端に位置するインクタンク41のインク室49にはブラックインクが貯留される。そして、横並び方向で右端のインクタンク41よりも左側に並ぶ他の各インクタンク42~45のインク室49にはブラック以外のカラー(シアン、マゼンタ、イエローなど)インクが貯留される。また、インクタンク41~45において筐体22の前面の窓部37を介して視認可能とされる前壁部には、インク室49内のインクIKの液面を視認可能とする透明樹脂で形成された視認部50が設けられている。そして、その視認部50には、インク室49内に貯留されるインクIKの液面の上限の目安(インクをインク入口53から溢れさせずに注入可能なインク量の目安の例)を示す上限マーク51と下限の目安(例えば、インクの補給を促す目安)を示す下限マーク52が記されている。
【0033】
図4に示すように、インクタンク41~45において段差部48の水平部分の上側には外部からインク室49内へのインクの流入を可能とするインク入口53が設けられている。インク入口53は、インク室49の内部と外部とを連通する流路54,55を有して鉛直上方に向けて延びるインク入口流路部の一例である針56を含んで構成されている。円筒状をなす針56の内部には、その前後方向の中央位置に上下方向へ延びるように形成された区画壁により二つの流路54,55が区画されている。そのため、本実施形態の流路54,55は、先端開口の高さ及び断面積が略等しく形成されている。なお、インク室49内の後方寄り下部には、インク室49内のインクIKの残量を検出するための残量センサー57が設けられている。尚、残量センサー57は設けられていなくてもよい。
【0034】
図2~
図5に示すように、インク補給用アダプター47は、その上面58が針56の延びる方向と直交(交差)する方向に沿う水平な面とされ、その上面58には下面59まで上下方向に貫通する貫通孔60がインク入口形成部として形成されている。この貫通孔60は、針56が中央に配置される円孔形状のインク入口53と、インク入口53の前後に連なる前後一対の矩形孔部からなり、その下側の開口はインクタンク41~45において針56を上方に向けて突設した段差部48の水平部分により塞がれている。
【0035】
そのため、貫通孔60において、インク入口53を中心とする放射方向でインク入口53の外側となる領域には、下側の開口を塞がれた前後一対の矩形孔部により、針56の延びる方向である上側に開口する前後一対の凹部61が、インク入口53を中心として点対称となるように鉛直下方を深さ方向として窪み形成される。すなわち、インクタンク41~45に一体化されたインク補給用アダプター47において針56を含むインク入口53の外側となる領域には、インク入口53を中心として点対称をなす複数(この場合は前後で対をなす2つ)の凹部61が形成されることになる。なお、この場合において、円孔形状のインク入口53の中心に配置される針56の先端は、インク入口53と凹部61とが含まれる貫通孔60の開口縁となるインク補給用アダプター47の上面58よりも、インク室49側に位置している。すなわち、インク補給用アダプター47の上面58は、針56の延びる方向において該針56の先端よりも外側の位置で該針56が延びる方向と交差する方向に延びている。その一方、インク補給用アダプター47の下面59は、左右方向へ横並びにした複数のインクタンク41~45に対してそれらを一括にして上側から係合するタンク係合部として機能する。
【0036】
また、インク補給用アダプター47の上面58のうち、各貫通孔60の上側の開口縁の周辺部分は、特定の色に着色されている。すなわち、その貫通孔60のインク入口53を介してインクが流入されるインクタンク41~45のインク室49に貯留されているインクの色と同色に着色されている。この点で、インク補給用アダプター47における各貫通孔60の上側の開口縁の周辺部分は、その貫通孔60のインク入口53とインク室49が連通するインクタンク41~45が内部に貯留しているインクに関わる情報を外部に示す第1部分として機能している。因みに、ブラックインクを貯留するインクタンク41のインク室49と連通するインク入口53が配置される貫通孔60の上側開口の周辺部分はブラックに着色される。
【0037】
また、凹部61の内面(具体的には上下方向に沿う内側面)において、その凹部61の上側の開口縁よりも底面側(すなわち、段差部48の水平部分側)となる位置には、水平方向に特徴的な凹凸形状を呈する第1凹凸部(第1キー構造部)62が、凹部61の深さ方向(換言すると、インク入口53の中心軸の方向)に沿って延びるように設けられている。
図2及び
図3に示すように、第1凹凸部62は、複数(本実施形態では5つ)あるインクタンク41~45のインク入口53ごとに設けられる。そのため、インク補給用アダプター47において、各インクタンク41~45と上下方向で各々対応する位置に形成された各貫通孔60における矩形の凹部61には、それぞれ貫通孔60ごとに他の貫通孔60の凹部61の内面に設けられた第1凹凸部62とは異なる第1凹凸部62が形成されている。すなわち、これらの第1凹凸部62は、その第1凹凸部62が形成された貫通孔60内のインク入口53に接続されるインク出口65(
図6等参照)を有するインク補給容器63(
図6等参照)を識別可能とする識別部として機能するものである。尚、「凹部61の上側の開口縁よりも底面側となる位置」とは、開口縁よりも若干でも底面側に後退した位置であればよいことを意味する。
【0038】
そこで次に、インクタンク41~45と共にインク補給システムを構成し、インク残量が少なくなったインクタンク41~45にインクを補給するインク補給容器63について説明する。
【0039】
図6~
図8に示すように、第1実施形態におけるインク補給容器63は、その主体となる円筒状の容器本体部64と、容器本体部64の先端部に設けられ、インク補給容器63内からのインクの流出を可能とするインク出口65が先端に開口形成されたインク出口形成部66と、を備えている。本実施形態のインク出口形成部66は、その先端側の一部が、インク出口65を囲むように付加される別体構成の容器付加部67で構成されている。なお、インク出口形成部66は、容器本体部64の端部に一体で設けられる構成でも別体で設けられる構成でもよい。また、容器付加部67は、インク出口形成部66に付加される別体構成ではなく、インク出口形成部66の先端側に一体的に形成される構成であってもよい。
【0040】
インク出口形成部66のインク出口65は、その周りの容器付加部67も含めて有底筒状のキャップ68により覆われることで、インク補給容器63の保管時には、外部から隠蔽される。すなわち、容器付加部67の円筒状をなす下端部の外周面には雄ねじ部69が形成される一方、キャップ68の内周面には図示しない雌ねじ部が形成されている。そして、容器付加部67の雄ねじ部69にキャップ68の雌ねじ部を螺合させることにより、キャップ68はインク補給容器63の先端部に対してインク出口65を覆うように取着される。
【0041】
なお、容器付加部67は、その外面全体が特定の色に着色されている。すなわち、その容器付加部67が付加される容器本体部64内に収容されているインクの色と同色に着色されている。この点で、インク補給容器63における容器付加部67は、そのインク補給容器63が内部に収容しているインクに関わる情報を外部に示す第2部分として機能している。因みに、ブラックインクを収容するインク補給容器63における容器付加部67の外面はブラックに着色される。また、容器本体部64とキャップ68の各基端部の外周面には、等角度間隔(一例として90度間隔)で複数(本実施形態では4つ)の突起70が形成されている。因みに、これらの突起70は円筒状をなすインク補給容器63の転がり防止を図るために形成されたものである。更に、例えばブラックインクを収容するインク補給容器63の容器本体部64は、他の色のインクを収容するインク補給容器63の容器本体部64よりも太く形成してもよい。その場合、インク出口形成部66はブラックインク用と他の色のインク用と共通の太さ、形状にしてもよい。
【0042】
また、
図6~
図8に示すように、容器付加部67の外周面に雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部よりも上方部分には、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる領域に、インク出口65の中心軸85の方向でインク出口65に対して容器本体部64が位置する方向とは反対方向となる上方に向けて突出する凸部71が形成されている。この凸部71は、インク出口65内にインク入口53側の針56の先端を挿入させるときに、インク補給用アダプター47の上面58の凹部61を第1嵌合部として嵌合可能な第2嵌合部として機能するものであり、インク入口53を前後から挟む一対の凹部61と同様にインク出口65を径方向の両側(図では前後)から挟んで対をなすように設けられている。なお、
図6及び
図7に示すように、凸部71は、インク補給容器63においてインク出口65を中心とする放射方向で容器本体部64の外周面よりも内側に形成されている。
【0043】
図6及び
図9に示すように、各凸部71の外面(
図6及び
図9では左右両側面)には、インク補給用アダプター47の凹部61の内面に形成された第1凹凸部(第1キー構造部)62と係合可能な第2凹凸部(第2キー構造部)72が形成されている。この第2凹凸部72は、凸部71の突出方向(換言すると、インク出口65の中心軸85の方向)に沿って延びるように設けられており、凸部71を凹部61に嵌合させると共に、第2凹凸部72を第1凹凸部62に係合させたときに、インク補給容器63のインク出口65をインクタンク41~45側のインク入口53に接続させる。
【0044】
また、容器付加部67の雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部と第2凹凸部72が形成された凸部71との間には、インク出口65の中心軸85と直交(交差)する平面形状の位置決め部73が、インク出口65をその中心軸85の方向に見たときインク出口65の放射方向外側に位置するように設けられている。すなわち、この位置決め部73は、インク補給容器63の外面の一部である容器付加部67の外面の一部を構成し、インク出口65の中心軸85の方向において凸部71の先端よりも容器本体部64側となる位置に設けられている。そして、この位置決め部73は、インク補給容器63においてインク出口形成部66に付加される容器付加部67に設けられていることから、インク出口形成部66の外側に備えられる構成であるといえる。
【0045】
また、
図9に示すように、インク出口形成部66に形成されたインク出口65内には、そのインク出口65を開閉可能に封止する例えばシリコン膜等の弾性部材からなる弁74が設けられている。なお、弁74は、インク出口65の中心軸85の方向において、位置決め部73の方が容器本体部64側となる位置に設けられている(例えば
図14参照)。そして、この弁74には、その中心を交点として等角度間隔(一例として120度間隔)で交わる複数(本実施形態では3つ)のスリット75が設けられており、それらのスリット75がインク出口65の外側から内側に押し広げられることで開弁するように構成されている。すなわち、常閉弁である弁74は、インク出口65内にインク入口53側の針56の先端が挿入されたときに、その針56の先端で内側に押し広げられて開弁する。
【0046】
そして、その際には、インク出口65の放射方向の外側で位置決め部73がインク入口53及び凹部61を含む貫通孔60が形成されたインク補給用アダプター47の上面58に当接し、インク出口65の中心軸85の方向において弁74をインクタンク41~45に対して位置決めする。この点で、平面形状の位置決め部73は、インク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面として機能する。一方、インク補給用アダプター47の上面58は、インクタンク41~45へのインク補給のためにインク補給容器63のインク出口65の弁74が開弁されるときにインク補給容器63の位置決め部73が当接するインクタンク41~45側の一部であって、平面形状の位置決め部73を受け止める受け面として機能する。
【0047】
図10及び
図11に示すように、インク補給容器63における容器本体部64は、その内部にインクIKを収容可能なインク収容室76を有するボトル形状をなす部材であり、その上端部の頸部77の外周面には雄ねじ部78が形成されている。一方、容器本体部64の上端部に設けられるインク出口形成部66は、容器本体部64の頸部77の外周側に位置する大径部79と、容器本体部64から最も離れた位置でインク出口65を外部に向けて開口形成する筒部である小径部80と、その大径部79と小径部80の間を連結する中間部81とを有している。そして、大径部79の内周面に形成された雌ねじ部82を、容器本体部64の頸部77の外周面に形成された雄ねじ部78に螺合させることにより、インク出口形成部66は容器本体部64の上端部に取着されている。
【0048】
また、インク補給容器63におけるインク出口形成部66にインク出口65を囲むように付加される容器付加部67は、その外周面に雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部が、その下端面をインク出口形成部66の大径部79の上端面に接合される接合部83を構成している。この接合部83は、その内周面の前後方向で対向する面領域がインク出口形成部66の中間部81の前側の外面及び後側の外面と面接触状態となってインク出口形成部66の大径部79に接合される。
【0049】
そこで次に、上記のように構成されたインク補給システムの作用について、インク補給容器63を用いてインク供給ユニット40のインクタンク41~45にインクを補給する際の作用に着目して以下説明する。
【0050】
なお、前提として、
図2に示すように、複数の横並びに配置されたインクタンク41~45のうち一番右側に位置するブラックインクのインクタンク41内のインクの液面高さが視認部50の下部に記された下限マーク52の高さまで低下しているため、以下においては、このインクタンク41にインク補給する場合について説明するものとする。また、インク補給に用いるインク補給容器63にはブラックインクが十分に収容されているものとし、そのインク補給容器63からは、前もってキャップ68が取り外されているものとする。さらに、そのインク補給容器63の凸部71の外面に形成されている第2凹凸部72の形状はインクタンク41へのインク入口53の前後に位置する凹部61の内面に形成されている第1凹凸部62の形状と一致し、凹部61に対する凸部71の挿入に伴い係合可能であるものとする。
【0051】
さて、インクタンク41へのインク補給を行う際、まずユーザーは、筐体22の開閉扉35を
図1に示す閉鎖状態から回転軸36を中心に前方へ回動させて開放状態とする。すると、インク供給ユニット40は、インクタンク41~45内へのインク入口53が形成されたインク補給用アダプター47の上面58が筐体22の外部に露出し、ユーザーは、所望のインク入口53に対して上方からインク補給容器63のインク出口65を接続することが可能となる。
【0052】
そこで、
図12及び
図13に示すように、ユーザーは、インク補給に用いるブラックインクを収容したインク補給容器63を上下逆さまにして、インク出口65がインク補給用アダプター47における一番右側の貫通孔60の上方に位置するように保持する。すなわち、そのインク補給容器63のインク出口65の中心軸85をインク補給対象のインクタンク41のインク入口53の中心軸と位置合わせする。このとき、ユーザーは、手に保持しているインク補給容器63の容器付加部67に着色されている色(第2部分)と、そのときのインク補給対象であるインクタンク41のインク入口53が設けられた貫通孔60の上側の開口縁周辺に着色されている色(第1部分)とを見比べる。そして、それぞれの色が同じ(この場合は、ブラック同士)であれば、今回のインク補給に適合したインク補給容器63を手に保持していると確認し、インク補給における後続作業に移行する。
【0053】
そして、
図12及び
図13に示す状態からインク補給容器63を下降させ、そのインク補給容器63の凸部71をインクタンク41と一体的なインク補給用アダプター47の凹部61に挿入する。すると、その凹部61に対する凸部71の挿入状態の実現により、インク入口53の中心軸に対するインク出口65の中心軸85の一致状態が確保される。なお、この場合において凹部61はインク入口53の中心である針56に対して点対称の位置状態にあるため、凸部71は何れの凹部61に対しても挿入可能とされる。そのため、インク補給容器63をインク出口65の中心軸85を中心にして何度も回転させて凹部61と凸部71との適合した位置関係を確かめる必要もなく、ユーザーは、凹部61に対する凸部71の挿入作業を容易に行い得る。
【0054】
但し、この時点では、凹部61に凸部71が僅かに挿入されただけで、インク入口53の中心に位置する針56の先端も、その凸部71の先端より少し突出したインク出口65の開口内には挿入されているものの、インク出口65の内奥に位置する弁74にまでは至っていない。その理由は、
図13に示すように、凹部61の開口縁が位置するインク補給用アダプター47の上面58と凹部61内の第1凹凸部62の上端との距離L1よりも凸部71の先端とインク出口65内の弁74との距離L2の方が長いからである。そこで、その状態から凸部71を凹部61の深さ方向である下方に向けて更に挿入させると、凸部71の外面の第2凹凸部72が凹部61の内面の第1凹凸部62に係合する。そして、その係合状態を維持しつつ、更に凸部71を凹部61の深さ方向で底面側に向けて挿入すると、インク入口53の針56の先端がインク出口65の弁74の位置にまで至り、その弁74を開弁させる。
【0055】
すなわち、
図14及び
図15に示すように、針56の先端が弁74に対して、スリット75を下方から上方に(つまり、インク出口65の外側から内側に)押し広げることで、弁74を開弁状態とする。その結果、インク補給容器63のインク出口65とインクタンク41のインク入口53の針56とが接続され、インク補給容器63内からインクタンク41内へのブラックインクの補給が行われる。このとき、インク入口53の針56は2つある流路54,55のうち、一方の流路がインクを流通させるインク流路として機能し、他方の流路が空気を流通させる空気流路として機能する。例えば、ユーザーがインク補給容器63を傾けた状態でインク入口53にインク出口65を接続しようとした場合には、その傾ける方向の違いにより、2つの流路54,55のうちインク流路となる流路も変更になる。
【0056】
なお、凹部61内に凸部71を挿入させた後において第2凹凸部72が第1凹凸部62に係合しない場合、その時点で、ユーザーはブラック以外の他の色のインク補給容器63を間違って挿入しようとしていると認識できる。この場合、もし仮に第1凹凸部62の上端が凹部61の開口縁と同じ高さに位置している構成であると、その第1凹凸部62に対する第2凹凸部72の係合が拒否されるだけでなく、凹部61に対する凸部71の挿入も拒否されるため、ユーザーは、凹部61への凸部71の挿入を何度も試みて、いたずらに無駄な作業時間を費やしてしまうこともある。この点、本実施形態では、第1凹凸部62の高さが凹部61の開口縁よりも低いため、凸部71は凹部61に挿入されるときに凹部61の深さ方向で底面側に誘導され易くなり、作業時間が無駄に長くなることも抑制され
る。
【0057】
さらに、
図14、
図16及び
図17に示すように、インク補給容器63のインク出口65内の弁74をインクタンク41(42~45)側のインク入口53の針56が開弁させるとき、インク補給容器63は位置決め部73がインクタンク41(42~45)側の一部であるインク補給用アダプター47の上面58に当接する。すなわち、インク補給容器63は、インク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面として機能する平面形状の位置決め部73とインク補給用アダプター47の上面58との当接により、弁74がインクタンク41(42~45)側の針56に対してインク出口65の中心軸の方向において位置決めされた状態で開弁される。
【0058】
また、その際において、位置決め部73はインク出口65の放射方向外側に位置するため、インク補給容器63はインク入口53にインク出口65を接続させた姿勢が安定的に保持される。また、
図14及び
図15に示すように、インク補給用アダプター47の上面58にインク補給容器63の位置決め部73が当接したとき、インク入口53における針56の基端が位置するインク入口53の底面とインク補給容器63のインク出口65の先端との間には隙間が存在する。そのため、インク入口53の針56の基端が位置する底面にはインクが溜まり易いが、そのように溜まっているインクがインク出口65の先端に付着してインク補給容器63を汚すことも回避される。
【0059】
そして、
図14及び
図16に示すように、インクタンク41に対するインク補給容器63からのインク補給が終了したとき、インクタンク41内のインクの液面高さが視認部50の上限マーク51よりも未だ低い場合には、更に同じブラックのインク補給容器63を用いて上限マーク51まで更に継ぎ足すインク補給を行ってもよい。なお、以上のようなインク補給作業は、ブラックインクのインクタンク41以外の他の色のインクタンク42~45に対する場合も同様に行われる。
【0060】
上記第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)インク補給容器63は、インクタンク41~45へのインク補給時に、インク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面として機能する平面形状の位置決め部73が、インクタンク41~45の一部であるインク補給用アダプター47の上面58に当接する。すると、インク補給容器63は、インク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向において姿勢が安定するため、弁74がインクタンク41~45に対して位置決めされた状態で開弁され、インク補給がし易くなる。したがって、インクタンク41~45に対して適切にインクを補給することができる。
【0061】
(1-2)弁74は、シリコン膜等からなる弾性部材に1つ以上のスリット75が設けられたスリット弁で構成されているため、少ない部品点数で簡単な構造のインク補給容器63を提供できる。
【0062】
(1-3)インク補給容器63をインクタンク41~45に対して針56の延びる方向から2つの流路54,55が並ぶ放射方向に沿って傾けた状態から接続する場合、2つの流路54,55のうちインク補給容器63のインク出口65が先に近づいた側の一方の流路がインク流路として機能し、他方の流路が空気流路として機能する。そのため、ユーザーは、2つの流路54,55のうち何れの流路をインク流路としてもよいので、インク流路とする流路を迷って選ぶようなこともなく、迅速にインク補給作業を行うことができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態も含めて以降の各実施形態は、インク補給容器63の構成の一部が第1実施形態とは異なっており、その他の構成は第1実施形態とほぼ同じである。そのため、以降では第1実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付すことにし、重複した説明は省略する。
【0064】
図18に示すように、第2実施形態のインク補給容器63は、インク出口形成部66の先端部においてインク出口65を外部に向けて開口形成する筒部の一例である小径部80が位置決め部として機能するように構成されている。すなわち、円筒状の小径部80は、インク出口65の中心軸85と直交(交差)する平面形状の先端面を有し、この先端面がインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面84を構成している。
【0065】
位置決め面84は、
図18に示されるように、インク出口65を内周側に形成する小径部80の先端面で構成されている。そのため、位置決め面84は、小径部80におけるインク出口65の開口縁よりも内奥に位置する弁74に対しては、インク出口65の中心軸85に沿う方向において、容器本体部64が位置する側とは反対側に位置している。すなわち、位置決め面84は、インク出口65の中心軸85に沿う方向において、弁74よりも、インク出口65からインクが流出する側(以下、「容器先端側」ともいう。)に向けて突出している。
【0066】
また、位置決め面84は、小径部80においてインク出口65の中心軸85に沿う方向で容器本体部64から最も離れた部位となる先端面で構成されている。そのため、位置決め面84は、このような小径部80の内周側に形成されるインク出口65よりも、インク出口65の中心軸85に沿う方向において、容器本体部64が位置する側とは反対側である容器先端側に位置している。なお、本実施形態における筒部である小径部80は、インクタンク41(42~45)と一体的なインク補給用アダプター47の貫通孔(以下、「タンク側の貫通孔」ともいう。)60において、針(インク入口流路部)56が中央に位置する略円孔形状のインク入口53に嵌合可能な形状をしている。
【0067】
図19及び
図20に示すように、第2実施形態のインク補給容器63からインクタンク41(42~45)にインク補給する際には、インク出口65を内周側に形成する小径部80がタンク側の貫通孔60に上方から挿入される。すなわち、貫通孔60における略円孔形状のインク入口53に、位置決め部として機能する小径部80がインク出口65の中心軸85をインク入口53の中心軸に位置合せして嵌合するように挿入される。
【0068】
このとき、インクタンク41(42~45)側に移動するインク補給容器63は、小径部80の先端の位置決め面84が、インク出口65の内奥の弁74よりも先に、インクタンク41(42~45)側に移動する。そして、インク補給容器63における円筒状の小径部80の外周面(外側面)が、インク入口53の内周面(内側面)を形成する円弧面に対して、インク出口65の中心軸85に沿う方向に摺動する。換言すると、円筒状をなす小径部(位置決め部)80の先端面である位置決め面84は、タンク側の貫通孔60におけるインク入口53の内周面を形成する円弧面に摺動することにより、インク出口65に針56を挿入させる方向に案内される。
【0069】
そして、インク補給容器63の小径部80が、その先端の位置決め面84をタンク側の貫通孔60のインク入口53に挿入させた状態で、貫通孔60の底部に向けて移動する途中においてインク入口53の針56の先端が下方からインク出口65の弁74の位置にまで至ると、その針56が弁74を開弁させる。そして、その状態から、インク補給容器63の小径部80が貫通孔60の底部に向けて更に移動すると、その底部に小径部80の先端の位置決め面84が当接する。すなわち、インク補給容器63は、小径部80の先端においてインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面84がタンク側の貫通孔60の底部と当接するため、姿勢が安定する。その結果、弁74がインクタンク41(42~45)側の針56に対してインク出口65の中心軸85の方向において位置決めされた状態で開弁される。
【0070】
上記第2実施形態によれば、上記(1-2)及び(1-3)の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(2-1)インク補給容器63をインクタンク41(42~45)側に移動させ、インク出口65にインクタンク41(42~45)の針(インク入口流路部)56を挿入して弁74を開弁させるとき、円筒状をなす小径部(位置決め部)80の先端面である位置決め面84が、弁74よりも先にインクタンク41(42~45)側に移動する。そして、その際に小径部80の先端の位置決め面84は、貫通孔60におけるインク入口53の内周面を形成する円弧面に案内され、インク出口65に針56を挿入させる方向へ円滑に移動する。その結果、インク補給時に針(インク入口流路部)56を弁74に対して誘導し易くなる。
【0071】
(2-2)インク補給容器63をインクタンク41(42~45)側に移動させ、インク出口65にインクタンク41(42~45)の針(インク入口流路部)56を挿入して弁74を開弁させるとき、小径部80の先端の位置決め面84が小径部80の内周側のインク出口65よりも先にインクタンク41(42~45)に接近する。そのため、インク補給容器63をインクタンク41(42~45)に接近させたときに、インク出口65が他の部材と衝突することを防ぎ易い。また、それにより、インク出口65を保護でき、他の部材へのインクの付着を防ぎ易い。
【0072】
(2-3)インク補給容器63は、インクタンク41(42~45)へのインク補給時に位置決め面84がタンク側の貫通孔60の底部に当接すると、インク出口65の中心軸85と交差する方向において姿勢が安定する。そのため、インク補給がし易くなり、インク補給容器63はインクタンク41(42~45)に対して適切にインクを補給することができる。
【0073】
(2-4)インク補給容器63は、位置決め面84をインク出口65と共にインク出口形成部66の一部である小径部(筒部)80に形成できるので、位置決め面84をインク出口65とは別の箇所に設けられた凸部等の一部に形成するよりも構造を簡単にできる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図を参照しながら説明する。
図21に示すように、第3実施形態のインク補給容器63は、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる位置からインク出口65の中心軸85に沿う方向において容器先端側に向けて突出する凸部71が位置決め部として機能するように構成されている。すなわち、この凸部71は、インク出口65の中心軸85と直交(交差)する平面形状の先端面を有し、この先端面がインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面84を構成している。
【0075】
凸部71は、
図21に示されるように、弁74が内奥に位置するインク出口65を内周側に形成する小径部80よりも、インク出口65の中心軸85に沿う方向において、容器本体部64が位置する側とは反対側である容器先端側に突出している。そのため、凸部71の先端面である位置決め面84は、インク出口65及び弁74よりも、インク出口65の中心軸85に沿う方向において、容器本体部64が位置する側とは反対側である容器先端側に位置している。
【0076】
また、凸部71は、インク出口形成部66の一部分である容器付加部67における外部に露出した部分に設けられている。すなわち、凸部71は、インク補給容器63においてインク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる部分に設けられている。そして、凸部71の平面形状は、インクタンク41(42~45)の貫通孔60において中央に位置する略円孔形状のインク入口53に前後方向から連なる略矩形状の凹部61に嵌合可能な形状をしている。そして、円筒状の小径部80の外周面(外側面)と、この外周面と対向する凸部71の外側面との間には、小径部80の先端面や凸部71の先端面(位置決め面84)に付着しているインクを毛管現象により引き込み可能なスリット状の隙間86が形成されている。なお、この第3実施形態の場合、第1実施形態でインクタンク41(42~45)の貫通孔60における凹部61の内側面に形成されていた第1凹凸部62は設けられていない。
【0077】
図21に示すように、第3実施形態のインク補給容器63からインクタンク41(42~45)にインク補給する際には、インク補給容器63の先端の凸部71及び小径部80がタンク側の貫通孔60に上方から挿入される。すなわち、タンク側の貫通孔60内の凹部61に凸部71が挿入され、これに続いて、貫通孔60内のインク入口53に小径部80が挿入される。
【0078】
このとき、インクタンク41(42~45)側に移動するインク補給容器63は、凸部71の先端の位置決め面84が、小径部80のインク出口65及びその内奥の弁74よりも先に、インクタンク41(42~45)側に移動する。そして、インク補給容器63における凸部71の外側面がタンク側の貫通孔60の凹部61の内側面に対し、インク出口65の中心軸85に沿う方向に摺動する。換言すると、凸部71の略矩形状の先端面である位置決め面84は、貫通孔60における凹部61の内側面に摺動することにより、インク出口65に針56を挿入させる方向に案内される。
【0079】
そして、インク補給容器63の凸部71が、その先端の位置決め面84をタンク側の貫通孔60の凹部61に挿入させた状態で、貫通孔60の底部に向けて移動する途中においてインク入口53の針56の先端が下方からインク出口65の弁74の位置にまで至ると、その針56が弁74を開弁させる。そして、その状態から、インク補給容器63の凸部71が貫通孔60の底部に向けて更に移動すると、その底部に凸部71の先端の位置決め面84が当接する。すなわち、インク補給容器63は、凸部71の先端においてインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面84が貫通孔60の底部と当接するため、姿勢が安定する。その結果、弁74がインクタンク41(42~45)側の針56に対してインク出口65の中心軸85の方向において位置決めされた状態で開
弁される。
【0080】
また、インク出口65から漏れ出たインクが小径部80の先端面から放射方向の外側に向けて拡がるように流れた場合には、小径部80の外周面(外側面)と凸部71の外側面との間の隙間86に毛管現象によって引き込まれる。そのため、インク出口65から漏れ出たインクが小径部80の先端面に残存したり、凸部71の先端面である位置決め面84に付着したりして、固化することが抑制される。
【0081】
上記第3実施形態によれば、上記(1-2)、(1-3)及び(2-3)の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(3-1)インク補給容器63をインクタンク41(42~45)側に移動させ、インク出口65にインクタンク41(42~45)の針(インク入口流路部)56を挿入して弁74を開弁させるとき、凸部71の先端面である略矩形状の位置決め面84が、弁74よりも先にインクタンク41(42~45)側に移動する。そして、その際に凸部71の先端の位置決め面84は、タンク側の貫通孔60における略矩形状の凹部61の内側面に案内され、インク出口65に針56を挿入させる方向へ円滑に移動する。その結果、インク補給時に針(インク入口流路部)56を弁74に対して誘導し易くなる。
【0082】
(3-2)インク補給容器63をインクタンク41(42~45)側に移動させ、インク出口65にインクタンク41(42~45)の針(インク入口流路部)56を挿入して弁74を開弁させるとき、凸部71の先端の位置決め面84が小径部80の内周側のインク出口65よりも先にインクタンク41(42~45)に接近する。そのため、インク補給容器63をインクタンク41(42~45)に接近させたときに、インク出口65が他の部材と衝突することを防ぎ易い。また、それにより、インク出口65の破損、他の部材へのインクの付着を防ぎ易い。
【0083】
(3-3)インク出口65から漏れ出て小径部80の先端面に付着したインクや、位置決め面84に付着したインクについては、小径部80と凸部71との間の隙間86に引き込むことにより、インクの垂れ落ちや外部への汚染を低減することができる。
【0084】
(3-4)先端に位置決め面84を有する凸部71はインク出口形成部66における外部に露出した部分、すなわちインク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる位置に設けられている。そのため、インク補給容器63のインク出口65にインクタンク41(42~45)の針(インク入口流路部)56を挿入させるとき、位置決め部として機能する凸部71及びその先端の位置決め面84を外部から視認し易い。
【0085】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図を参照しながら説明する。
図23に示すように、第4実施形態のインク補給容器63も、第3実施形態の場合と同様に、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる位置からインク出口65の中心軸85に沿う方向において容器先端側に向けて突出する凸部71が位置決め部として機能するように構成されている。すなわち、この凸部71も、インク出口形成部66の一部分である容器付加部67における外部に露出した部分に設けられ、その先端面がインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面84を構成している。そして、その凸部71と小径部80との間には、同様にスリット状の隙間86が形成されている。
【0086】
但し、第4実施形態における凸部71は、第3実施形態における凸部71とは異なり、その先端面である位置決め面84の形状が、略矩形状ではなく、略T字状をなしている。すなわち、第4実施形態における位置決め面84は、インク出口65を中心とする放射方向へ直線的に延びる部分と、その放射方向へ直線的に延びる部分の放射方向外側の端部から左右両側へそれぞれ直線的に延びる部分を有している。そのため、位置決め面84は、インク出口65の中心軸85と交差(この場合、直交)する方向においてインク出口65から遠い側の面領域の方が、インク出口65に近い側の面領域よりも、インク出口65を中心とする放射方向と直交する方向(接線方向)での幅が大きい。換言すると、第4実施形態における位置決め面84は、インクタンク41(42~45)の貫通孔60に挿入された場合に、インク出口65の中心軸85と交差(この場合、直交)する方向においてインク出口65から遠い側で貫通孔60の底部と当接する面積の方が、インク出口65に近い側で当接する面積よりも大きくなるように形成されている。したがって、第4実施形態のインク補給容器63は、位置決め面84の形状が相違することに基づく作用効果以外は、基本的に第3実施形態のインク補給容器63の場合と同様の作用効果を奏する。
【0087】
上記第4実施形態によれば、上記(1-2)、(1-3)、(2-3)、(3-1)~(3-4)の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(4-1)凸部71がインクタンク41(42~45)の貫通孔60に挿入された場合において、インク出口65の中心軸85と交差(この場合、直交)する方向で、インク出口65から遠い側で貫通孔60の底部と当接する面積の方がインク出口65に近い側で当接する面積よりも大きくなる。そのため、インク出口65に針(インク入口流路部)56を挿入させて弁74を開弁させるインク補給状態において、インク出口65の姿勢の安定性を高めることができる。
【0088】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図を参照しながら説明する。
図24及び
図25に示すように、第5実施形態のインク補給容器63も、第3及び第4実施形態の場合と同様に、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる位置からインク出口65の中心軸85に沿う方向で容器先端側に向けて突出する凸部71が位置決め部として機能するように構成されている。すなわち、この凸部71も、インク出口形成部66の一部分である容器付加部67における外部に露出した部分に設けられ、その先端面がインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面84を構成している。そして、その凸部71と小径部80との間には、同様にスリット状の隙間86が形成されている。
【0089】
但し、第5実施形態における凸部71は、第3及び第4実施形態における凸部71とは異なり、インク出口65の中心軸85に沿う方向での容器先端側への突出高さが小径部80よりも低くなっている。すなわち、この第5実施形態における位置決め面84は、インク出口65及び弁74よりも、インク出口65の中心軸85に沿う方向において、容器本体部64が位置する側である容器基端側に位置している。
【0090】
図25に示すように、第5実施形態のインク補給容器63からインクタンク41(42~45)にインク補給する際には、タンク側の貫通孔60内のインク入口53に小径部80が挿入され、これに続いて、貫通孔60内の凹部61に凸部71が挿入される。そして、この場合は、インク補給容器63の凸部71が、その先端の位置決め面84をタンク側の貫通孔60の凹部61に挿入させる前段階で、インク入口53の針56の先端が下方からインク出口65の弁74の位置にまで至り、その針56が弁74を開弁させる。
【0091】
そして、その状態からインク補給容器63の凸部71が貫通孔60の凹部61内を底部に向けて移動すると、その凸部71の先端の位置決め面84が凹部61の内側面から上下方向に延びるリブ状に設けられた第1凹凸部62に当接する。この点で、第1凹凸部62は、インク出口65の内側の弁74をインクタンク41(42~45)に対して位置決めする際にインク補給容器63の位置決め面84と当接する当接部として機能する。そのため、インク補給容器63は、凸部71の先端においてインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる位置決め面84が貫通孔60内で第1凹凸部(当接部)62と当接して姿勢が安定する。その結果、弁74がインクタンク41(42~45)側の針56に対してインク出口65の中心軸85の方向において位置決めされた状態で開弁される。
【0092】
上記第5実施形態によれば、上記(1-2)、(1-3)、(3-3)、(3-4)の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(5-1)インク補給容器63は、インクタンク41(42~45)へのインク補給時に位置決め面84がタンク側の貫通孔60内の第1凹凸部(当接部)62に当接すると、インク出口65の中心軸85と交差する方向において姿勢が安定する。そのため、インク補給がし易くなり、インク補給容器63はインクタンク41(42~45)に対して適切にインクを補給することができる。
【0093】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について図を参照しながら説明する。
図26に示すように、第6実施形態のインク補給容器63も、第3~第5実施形態の場合と同様に、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる位置からインク出口65の中心軸85に沿う方向で容器先端側に向けて突出する凸部71が位置決め部として機能するように構成されている。すなわち、この凸部71も、インク出口形成部66の一部分である容器付加部67における外部に露出した部分に設けられ、その凸部71と小径部80との間には、同様にスリット状の隙間86が形成されている。
【0094】
但し、第6実施形態における凸部71は、第3~第5実施形態における凸部71とは異なり、インク出口65の内側の弁74を開弁するときにインクタンク41(42~45)側の一部と当接する位置決め面が凸部71の先端面で構成されていない。すなわち、この第6実施形態における凸部71は、インク出口65を中心とする放射方向で外側に面する外側面(又は外周面)の一部が、インク出口65の中心軸85と交差する方向に傾斜している。そして、このように傾斜した凸部71の外側面(又は外周面)の一部により位置決め面84が構成されている。なお、位置決め面84は、インク出口65の中心軸85と交差する方向に湾曲している構成でもよい。
【0095】
この場合、位置決め面84は、インク出口65の中心軸85に沿う方向において、容器先端側とは反対側(すなわち、容器本体部64が位置する側)である容器基端側に向かうにつれてインク出口65の中心軸85から次第に離れる方向に傾斜した錐面や斜面などで構成されている。そして、凸部71が先端からタンク側の貫通孔60に挿入されたとき、その傾斜した位置決め面84の面領域の一部がタンク側の貫通孔60の開口縁に対して楔効果を発揮して当接するように形成されている。
【0096】
図26に示すように、第6実施形態のインク補給容器63からインクタンク41(42~45)にインク補給する際には、タンク側の貫通孔60内のインク入口53に小径部80が挿入され、これに続いて、貫通孔60内の凹部61に凸部71が挿入される。そして、この場合は、インク補給容器63の凸部71における傾斜した位置決め面84が貫通孔60の開口縁などに当接する前段階で、インク入口53の針56の先端が下方からインク出口65の弁74の位置にまで至り、その針56が弁74を開弁させる。なお、小径部80を貫通孔60のインク入口53に挿入するにあたり、凸部71の外側面の傾斜した位置決め面84を貫通孔60の開口縁にあてがった状態から位置決め面84に沿って徐々に誘導することも可能である。
【0097】
そして、その状態からインク補給容器63の凸部71がタンク側の貫通孔60の凹部61内を底部に向けて移動すると、その凸部71の外側面の傾斜した位置決め面84が貫通孔60の開口縁に当接する。この場合、インク補給容器63は、位置決め面84がタンク側の貫通孔60の開口縁に対して、インク出口65の中心軸85に沿う重力方向及びその重力方向と直交する水平方向において位置決めされる。そのため、インク補給容器63は、凸部71の外側面で傾斜した位置決め面84が貫通孔60の開口縁と当接して姿勢が安定する。その結果、弁74がインクタンク41(42~45)側の針56に対してインク出口65の中心軸85の方向において位置決めされた状態で開弁される。
【0098】
上記第6実施形態によれば、上記(1-2)、(1-3)、(3-3)、(3-4)の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(6-1)位置決めのためにインクタンク41(42~45)側の一部と当接する位置決め面84がインク出口65の中心軸85と交差する方向に傾斜(又は湾曲)している。そのため、インク補給容器63からインクタンク41(42~45)へのインク補給時に、インク出口65の中心軸85に沿う方向(重力方向)及び中心軸85と直交する方向(水平方向)の両方向において、インク補給容器63を位置決めでき、インク補給を適切に行うことができる。
【0099】
(6-2)インク出口65に対して針(インク入口流路部)56を挿抜する際、インク補給容器63を傾斜(又は湾曲)した位置決め面84に沿って徐々に誘導できる。
(第7実施形態)
図27に示すように、第7実施形態のインク補給容器63も、第6実施形態の場合と同様に、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる位置からインク出口65の中心軸85に沿う方向で容器先端側に向けて突出する凸部71が位置決め部として機能するように構成されている。すなわち、この凸部71も、インク出口形成部66の一部分である容器付加部67における外部に露出した部分に設けられ、その凸部71と小径部80との間には、同様にスリット状の隙間86が形成されている。
【0100】
但し、第7実施形態における凸部71は、第6実施形態における凸部71とは異なり、その凸部71がタンク側の貫通孔60内の凹部61に挿入されたときに、外側面に有する傾斜した位置決め面84が、貫通孔60の開口縁に当接可能には形成されていない。すなわち、凸部71は、その外側面の位置決め面84が、凹部61の内側面から上下方向に延びるリブ状に設けられた当接部として機能する第1凹凸部62の上端に対して楔効果を発揮して当接するように形成されている。なお、位置決め面84は、インク出口65の中心軸85と交差する方向に湾曲している構成でもよい。
【0101】
そのため、
図27に示すように、第7実施形態のインク補給容器63からインクタンク41(42~45)にインク補給する際も、第6実施形態の場合と同様に、タンク側の貫通孔60内のインク入口53に小径部80が挿入され、これに続いて、貫通孔60内の凹部61に凸部71が挿入される。そして、この場合は、インク補給容器63の凸部71における傾斜した位置決め面84が貫通孔60の内側面の第1凹凸部(当接部)に当接する前段階で、インク入口53の針56の先端が下方からインク出口65の弁74の位置にまで至り、その針56が弁74を開弁させる。なお、この第7実施形態でも、小径部80を貫通孔60のインク入口53に挿入するにあたり、凸部71の外側面の傾斜した位置決め面84を貫通孔60の開口縁にあてがった状態から位置決め面84に沿って徐々に誘導することも可能である。
【0102】
そして、その状態からインク補給容器63の凸部71がタンク側の貫通孔60の凹部61内を底部に向けて移動すると、その凸部71の外側面の傾斜した位置決め面84が貫通孔60の内側面の第1凹凸部(当接部)に当接する。そして、この場合も、インク補給容器63は、位置決め面84がタンク側の貫通孔60の第1凹凸部(当接部)に対して、インク出口65の中心軸85に沿う重力方向及びその重力方向と直交する水平方向において位置決めされる。そのため、インク補給容器63は、凸部71の外側面で傾斜した位置決め面84が貫通孔60の内側面の第1凹凸部(当接部)と当接して姿勢が安定する。その結果、弁74がインクタンク41(42~45)側の針56に対してインク出口65の中心軸85の方向において位置決めされた状態で開弁される。
【0103】
上記第7実施形態によれば、上記(1-2)、(1-3)、(3-3)、(3-4)、(6-1)及び(6-2)と同様の効果を得ることができる。
(第8実施形態)
図28に示すように、第8実施形態のインク補給容器63も、第6実施形態の場合と同様に、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる位置からインク出口65の中心軸85に沿う方向で容器先端側に向けて突出する凸部71が位置決め部として機能するように構成されている。すなわち、この凸部71も、インク出口形成部66の一部分である容器付加部67における外部に露出した部分に設けられて、インク出口65を中心とする放射方向で外側に面する外側面(又は外周面)に位置決め面84が設けられている。
【0104】
但し、第8実施形態における凸部71は、第6実施形態における凸部71とは異なり、その外側面に設けられた位置決め面84が、インク出口65の中心軸85と交差する方向に傾斜ではなく湾曲している。この位置決め面84も、インク出口65の中心軸85に沿う方向において、容器先端側とは反対側(すなわち、容器本体部64が位置する側)である容器基端側に向かうにつれてインク出口65の中心軸85から次第に離れる方向に湾曲した錐面や斜面などで構成されている。そして、凸部71が先端からタンク側の貫通孔60に挿入されたとき、その湾曲した位置決め面84の面領域の一部がタンク側の貫通孔60の開口縁に対して楔効果を発揮して当接するように形成されている。なお、位置決め面84は、インク出口65の中心軸85と交差する方向に傾斜している構成でもよい。
【0105】
図28に示すように、第8実施形態のインク補給容器63からインクタンク41(42~45)にインク補給する際も、第6実施形態の場合と同様に、小径部80のインク出口65にインク入口53の針56が先ず挿入されて、弁74が開弁される。その後、タンク側の貫通孔60の開口縁に対して、インク補給容器63の凸部71の外側面における湾曲した位置決め面84が当接し、その状態においてインク補給が行われる。
【0106】
上記第8実施形態によれば、上記(1-2)、(1-3)、(3-3)、(3-4)、(6-1)及び(6-2)と同様の効果を得ることができる。
(第9実施形態)
図29に示すように、第9実施形態のインク補給容器63は、第1~第8実施形態の場合と異なり、位置決め部及び位置決め面が、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の内側に設けられている。すなわち、第9実施形態のインク補給容器63は、インク出口形成部66において、内周側にインク出口65を形成する筒部である小径部80とその基端側に連なる中間部81との間に隔壁87が形成され、この隔壁87により位置決め部が構成されている。隔壁87の中央部分でインク出口65の中心軸85が通る位置には、インク出口65をインク収容室76に連通する連通孔88が貫通形成されている
。
【0107】
そして、隔壁87において、インク出口65の中心軸85に沿う方向で容器先端側に位置する壁面により位置決め面84が構成されている。この位置決め面84は、インクタンク41(42~45)側の針(インク入口流路部)56の先端面が面接触状態で当接可能となるように、インク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる平面形状に形成されている。
【0108】
図29に示すように、第9実施形態のインク補給容器63からインクタンク41(42~45)にインク補給する際には、タンク側の貫通孔60内のインク入口53に小径部80が挿入され、インク入口53の針56の先端が下方からインク出口65の弁74の位置にまで至ると、その針56が弁74を開弁させる。そして、その状態からインク補給容器63をインクタンク41(42~45)側へ更に移動すると、そのインク出口65の内部の隔壁87に形成された平面形状の位置決め面84が針(インク入口流路部)56の先端面に当接する。そのため、インク補給容器63は、インク出口65の内部にインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる平面形状に設けられた位置決め面84が針(インク入口流路部)56の先端面と当接して姿勢が安定する。その結果、弁74がインクタンク41(42~45)側の針56に対してインク出口65の中心軸85の方向において位置決めされた状態で開弁される。
【0109】
上記第9実施形態によれば、上記(1-2)及び(1-3)の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(9-1)位置決め部(この場合、隔壁87)及び位置決め面84が、インク出口65の外部に備えられた場合に比べ、インク出口65の内部で保護されるため、破損し難くできる。また、インク出口65の内部で位置決め部(この場合、隔壁87)及び位置決め面84が弁74に近いため、弁74をインクタンク41(42~45)に対して精度良く位置決めできる。更に、位置決め部(この場合、隔壁87)及び位置決め面84にインクが付着してもインク出口65の内部に位置するため、インク補給容器63の外部にインクを付着させ難い。
【0110】
(第10実施形態)
図30に示すように、第10実施形態のインク補給容器63も、第9実施形態の場合と同様に、位置決め部及び位置決め面が、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の内側に設けられている。すなわち、インク出口形成部66の小径部80と中間部81との間に形成された隔壁87で位置決め部が構成され、その隔壁87において、インク出口65の中心軸85に沿う方向で容器先端側に位置する壁面により位置決め面84が構成されている。また、隔壁87の中央部分には、インク出口65をインク収容室76に連通する連通孔88が貫通形成されている。
【0111】
但し、第10実施形態における位置決め面84は、第9実施形態における位置決め面84とは異なり、インク出口65の中心軸85と交差する方向に傾斜している。すなわち、この位置決め面84は、インク出口65の中心軸85に沿う方向において、容器先端側に向かうにつれてインク出口65の中心軸85から次第に離れる方向に傾斜した錐面や斜面などで構成されている。そして、弁74を開弁させた針(インク入口流路部)56の先端面が下方から当接するとき、その傾斜した位置決め面84の面領域の一部が針(インク入口流路部)56に対して楔効果を発揮して当接するように形成されている。
【0112】
上記第10実施形態によれば、上記(1-2)、(1-3)及び(9-1)と同様の効果を得ることができる。
(第11実施形態)
図31~
図33に示すように、第11実施形態のインク補給容器63と共にインク補給システムを構成するインク供給ユニット40は、インク入口53が普段は閉塞される構造である。すなわち、このインク供給ユニット40は複数のインク入口53ごとにレバー状のキャップ支持部材90を備えている。キャップ支持部材90の基端部は、インク補給用アダプター47の上面58にインク入口53の中心軸と交差する方向(水平方向)に延びるように設けられた回動軸91に回動自在に支持されている。各キャップ支持部材90の長手方向における中央よりも先端側にはインク入口53に嵌合可能な形状をした弾性キャップ92が設けられ、キャップ支持部材90は、この弾性キャップ92が普段はインク入口53に嵌合した閉塞状態にある。
【0113】
そして、
図31及び
図32に示すように、インク補給時には、弾性キャップ92がインク入口53に嵌合して閉塞状態にあるキャップ支持部材90が、その先端の曲折した取手部93に手を掛けたユーザーにより、弾性キャップ92がインク入口53から離間させられる開放状態に傾動される。なお、
図31に示すように、複数のキャップ支持部材90の上方を一括して覆うユニットカバー100を更に開閉自在に設けてもよい。また、弾性キャップ92は例えばエラストマー等の弾性材料で形成され、キャップ支持部材90は例えば、ポリスチレンやABS樹脂等からなる、弾性キャップ92より剛性の高い材料で形成される。
【0114】
図32及び
図33に示すように、第11実施形態のインク補給容器63は、インク出口形成部66において容器先端側に位置する肩部分が位置決め部を構成し、その肩部分においてインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる平面形状の面が位置決め面84を構成している。この位置決め面84の中央部分からは、内周側にインク出口65を形成する筒部である小径部80が容器先端側に向けて突出している。
【0115】
こうした第11実施形態のインク補給容器63からインクタンク41(42~45)にインク補給する際には、まず、インク補給対象のインクタンク41(42~45)のインク入口53を弾性キャップ92が閉塞しているキャップ支持部材90を開放状態にする。そして、開放されたインク入口53の針(インク入口流路部)56にインク補給容器63のインク出口65を挿入させる。すると、インク入口53の針56の先端が下方からインク出口65の弁74の位置にまで至り、その針56が弁74を開弁させる。そして、その状態からインク補給容器63をインクタンク41(42~45)側へ更に移動すると、インク出口形成部66の肩部分に形成された位置決め面84がキャップ支持部材90の上面に当接し、インク補給容器63及びそのインク出口65の弁74をインクタンク41(42~45)に対して位置決めする。すなわち、キャップ支持部材90が、インク補給容器63の位置決め面84とインクタンク41(42~45)側の一部(貫通孔60など)との間に位置し、それらの当接を仲介する位置決め補助部材として機能する。
【0116】
なお、この場合において、位置決め面84が当接するのは、インク補給対象のインクタンク(例えばインクタンク43)と隣り合う他のインクタンク(例えばインクタンク42,44)のインク入口53を弾性キャップ92で閉塞しているキャップ支持部材90の上面である。このように、両隣のキャップ支持部材90の上面に位置決め面84を当接させることにより、広い当接面積が確保される。また、タンク側の貫通孔60が形成されるインク補給用アダプター47の上面58が、例えば傾斜していたり段差があったりして、位置決め面84を当接させるには適さない場合には、一定の平面部を有するキャップ支持部
材90が位置決め補助部材として利用される。
【0117】
上記第11実施形態によれば、上記(1-2)及び(1-3)の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(11-1)インク補給容器63からインクタンク41(42~45)へのインク補給時に、位置決め補助部材(この場合は、キャップ支持部材90)を用いることにより、種々のインクタンク41(42~45)に対し適切な位置決めを行うことができる。
【0118】
(第12実施形態)
図34に示すように、第12実施形態のインク補給容器63も、第11実施形態の場合と同様に、インク補給時には、インク補給対象のインクタンク41(42~45)の隣りの他のインクタンクのインク入口53を弾性キャップ92で閉塞しているキャップ支持部材90の上面に位置決め面84が当接するように構成されている。すなわち、開放されたインク入口53の針(インク入口流路部)56にインク補給容器63のインク出口65を挿入させると、その針56が弁74を開弁させる。そして、その状態からインク補給容器63をインクタンク41(42~45)側へ更に移動すると、位置決め面84がキャップ支持部材90の上面に当接する。
【0119】
但し、第12実施形態の場合は、第11実施形態とは異なり、インク出口形成部66ではなく、それよりも容器基端側の容器本体部64の肩部分を位置決め部とし、その容器本体部64の肩部分においてインク出口65の中心軸85と直交(交差)する方向に延びる平面形状の面が位置決め面84を構成している。そのため、インク補給時には、インク収容室76を有する容器本体部64の重量が、位置決め補助部材として機能するキャップ支持部材90に直接に加わるため、インク補給容器63は安定した姿勢で位置決めされる。
【0120】
上記第12実施形態によれば、上記(1-2)、(1-3)及び(11-1)と同様の効果を得ることができる。
(第13実施形態)
図35に示すように、第13実施形態のインク補給システムでは、インク補給容器63の容器先端側に突出した凸部71の先端面が位置決め面84を構成している。そして、インク補給時には、タンク側の貫通孔60に挿入された凸部71の先端面である位置決め面84とタンク側の貫通孔60の底部との間に位置決め補助部材としてインク吸収材89が位置するように構成されている。このインク吸収材89は、例えばスポンジ等の弾性部材からなり、インク補給容器63の凸部71とタンク側の貫通孔60の底部との間で緩衝材としても機能する。また、このインク吸収材89は、その厚さを調整することにより、インク出口65に対する針(インク入口流路部)56の挿入時の深さを調整する機能も有する。
【0121】
上記第13施形態によれば、上記(1-2)、(1-3)及び(11-1)の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(13-1)インク補給容器63の位置決め面84がインクタンク41(42~45)側の一部と当接する際の衝撃をインク吸収材89により緩和できる。また、インク吸収材89によりインクが吸収されるため、インク補給容器63を外したときのたれ落ちや飛び散りを低減できる。
【0122】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・
図18~
図20に示す第2実施形態において、容器付加部67は省略してもよい。
・内周側にインク出口65を形成する小径部80は、タンク側の貫通孔60におけるインク入口53の内面の形状に応じて、必ずしも円筒状に限らず、角筒状であってもよい。但し、小径部80の内周側のインク出口65は、開口形状が円形である方が好ましい。
【0123】
・
図21~
図23に示す第3及び第4実施形態において、凸部71の容器先端側に突出する高さは、小径部80よりも突出しているならば、その高さは実施形態における高さに限定されない。
【0124】
・第4実施形態において、位置決め面84を構成する凸部71の先端面の形状は、インク出口65の中心軸85と交差する方向においてインク出口65から遠い側でインクタンク41(42~45)側の一部と当接する面積の方がインク出口65に近い側で当接する面積よりも大きいならば、実施形態における略T字状に限定されない。例えば、略Y字状や三角形状などでもよい。
【0125】
・
図24及び
図25に示す第5実施形態において、凸部71の容器先端側に突出する高さは、小径部80よりも突出していないならば、その高さは実施形態における高さに限定されない。
【0126】
・
図26に示す第6実施形態において、傾斜した位置決め面84は、凸部71の先端まで延びていてもよい。
・
図27に示す第7実施形態(及び
図25に示す第5実施形態)において、凹部61の内側面に位置決め面84に対する当接部として形成された第1凹凸部62は、リブ状以外に突起状などでもよい。
【0127】
・
図29及び
図30に示す第9及び第10実施形態において、インク出口65の内部に設けられる位置決め面84は、中央に連通孔88が形成された凹球面であってもよい。
・第3~第7実施形態において、スリット状の隙間86の幅は、毛管現象が発揮される幅であれば、実施形態における幅に限定されない。
【0128】
・インク入口53の針(インク入口流路部)56が有する2つの流路54,55は、2つ以外の複数の流路構成でもよい。
・インク補給容器63は、インク出口形成部66と容器本体部64が一体の構成でもよく、位置決め部及び位置決め面84は、容器付加部67ではなく、インク出口形成部66や容器本体部64に設けてもよい。
【0129】
・
図31~
図34に示す第11及び第12実施形態において、インクタンク41(42~45)側の一部と位置決め部との当接を仲介する位置決め補助部材は、インク出口形成部66に付加される容器付加部67で構成してもよい。
【0130】
・
図35に示す第13実施形態において、位置決め補助部材はインク吸収材89に限らず、例えば樹脂製のスペーサーでもよい。
・インク補給容器63のインク出口65の弁74は、1つ以上のスリット75ならば、3本に限らず2本や4本など他の複数本のスリット75が設けられたものでもよい。また、スリット75が設けられたスリット弁に限らず、スリット75無しで、針56に下方から押されて開弁方向に変位する構成の弁であってもよい。
【符号の説明】
【0131】
21…記録装置、22…筐体、23…支持台、24…ガイド軸、25…記録ヘッド、26…キャリッジ、27…支持孔、28…駆動プーリー、29…従動プーリー、30…キャリッジモーター、31…タイミングベルト、32…排出口、33…排出トレイ、34…給紙カセット、35…開閉扉、36…回転軸、37…窓部、40…インク供給ユニット、41~45…インクタンク、46…インク供給チューブ、47…インク補給用アダプター、48…段差部、49…インク室、50…視認部、51…上限マーク、52…下限マーク、53…インク入口、54,55…流路、56…針(インク入口流路部)、57…残量センサー、58…上面、59…下面、60…貫通孔、61…凹部、62…第1凹凸部(当接部)、63…インク補給容器、64…容器本体部、65…インク出口、66…インク出口形成部、67…容器付加部、68…キャップ、69…雄ねじ部、70…突起、71…凸部、72…第2凹凸部、73…位置決め部、74…弁、75…スリット、76…インク収容室、77…頸部、78…雄ねじ部、79…大径部、80…小径部(筒部)、81…中間部、82…雌ねじ部、83…接合部、84…位置決め面、85…中心軸、86…隙間、87…隔壁、88…連通孔、89…インク吸収材(位置決め補助部材)、90…キャップ支持部材(位置決め補助部材)、91…回動軸、92…弾性キャップ、93…取手部、100…ユニットカバー、P…用紙、IK…インク、L1,L2…距離。