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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】液晶配向剤
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20221206BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221206BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20221206BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08L101/00
C08L79/08 Z
C08L83/04
G02F1/1337 520
G02F1/1337 530
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021171834
(22)【出願日】2021-10-20
(62)【分割の表示】P 2020035049の分割
【原出願日】2016-01-15
(65)【公開番号】P2022017359
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2015082707
(32)【優先日】2015-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】菅野 尚基
(72)【発明者】
【氏名】秋池 利之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敬
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝人
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-046054(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167885(WO,A1)
【文献】特開2013-166925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0093586(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08L 101/00
C08L 79/08
C08L 83/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体成分と、特定溶剤と、を含有し、
前記特定溶剤はN,N-ジメチルプロピレン尿素である液晶配向剤。
【請求項2】
前記重合体成分として、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記特定溶剤の含有割合が、液晶配向剤中の溶剤の全体量に対して1~80重量%である、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶素子としては、電極構造や、使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式のものが開発されており、例えばTN型やSTN型、VA型、面内スイッチング型(IPS型)、FFS型、光学補償ベント型(OCB型)等の各種液晶素子が知られている。これら液晶素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性等の各種特性が良好である点から、ポリアミック酸やポリイミドなどが使用されている。
【0003】
液晶配向剤において、重合体成分は溶剤に溶解されており、液晶配向剤を基板に塗布し加熱することにより液晶配向膜が形成される。ここで、液晶配向剤の溶剤としては、重合体の溶解性が高い有機溶媒、例えばN-メチル-2-ピロリドンやγ-ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒が一般に使用される。また、液晶配向剤を基板に塗布する際の液晶配向剤の塗布性(印刷性)を良好にするために、非プロトン性極性溶媒と共に、例えばブチルセロソルブなどといった、表面張力が比較的低い有機溶媒が併用されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
【0004】
液晶配向剤を基板に塗布する方法としては、スピンコート法やオフセット印刷法、インクジェット法など種々の方法が適用される。例えばオフセット印刷法は、APR(登録商標)などの樹脂からなる印刷版に液晶配向剤を塗布し、印刷版により液晶配向剤を基板上に転写する転写印刷装置を用いて一般に行われる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-97188号公報
【文献】特開2010-156934号公報
【文献】特開2001-343649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶配向剤の塗布性の改善を目的として一般に使用されているブチルセロソルブは、APR樹脂を膨潤させやすい傾向にある。そのため、ブチルセロソルブを含む液晶配向剤をオフセット印刷により基板に塗布する場合に、印刷版への塗布が繰り返し行われることによって印刷版が膨潤し、印刷性が低下することが懸念される。また、液晶配向剤の溶剤成分としては、連続して印刷を行った場合にも印刷機上に重合体が析出しにくく、印刷性(連続印刷性)が良好であることが求められる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、印刷版を膨潤させにくく、かつ印刷性が良好な液晶配向剤を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討した結果、溶剤として特定の有機溶媒を使用することにより上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤が提供される。
【0009】
本発明は一つの側面において、重合体成分と、特定溶剤と、を含有し、前記特定溶剤はN,N-ジメチルプロピレン尿素である液晶配向剤を提供する。
【0010】
液晶配向剤の溶剤成分として上記の特定溶剤を用いることにより、印刷版が膨潤しにくい液晶配向剤を得ることができる。また、連続して印刷を行った場合にも印刷機上に重合体が析出しにくく、印刷性を良好にすることができる。
【0011】
本発明の液晶配向膜は、上記特定溶剤を含む液晶配向剤を用いて形成されていることから、均一な塗膜を形成できるとともに膜質が良好である。また、上記液晶配向剤を用いて液晶素子を製造した場合、製造プロセスにおいて印刷不良を減らすことができ、結果として製品の歩留まり向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
【0013】
<重合体成分>
本発明の液晶配向剤は重合体成分を含有する。重合体の主骨格は特に限定されず、例えばポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどの主骨格が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを含むことを意味する。
【0014】
特定溶剤による印刷性の改善効果が高い点で、液晶配向剤の重合体成分は上記の中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なお、液晶配向剤の調製に際し、重合体としては1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
[ポリアミック酸]
本発明におけるポリアミック酸は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。
【0016】
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の合成に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、3-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルナン-2:3,5:6-二無水物、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、4,9-ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン-3,5,8,10-テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0017】
合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、電気特性を良好にできる点、及び特定溶剤を含む溶剤に対する重合体の溶解性をより高くでき、印刷性の改善効果をより高くできる点で、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましい。また、脂環式テトラカルボン酸二無水物の中でも、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、及び1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むものであることが好ましく、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、及び1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むものであることが特に好ましい。
【0018】
テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、及び1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種を含む場合、それら化合物の合計の含有量は、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、10モル%以上であることが好ましく、20~100モル%であることがより好ましい。
【0019】
(ジアミン)
ポリアミック酸の合成に使用するジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらジアミンの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;脂環式ジアミンとして、例えば1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などを;
【0020】
芳香族ジアミンとして、例えばp-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6-ジアミノピリジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミン、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-6-アミン、3,5-ジアミノ安息香酸、コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、4-(4’-トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ヘプチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-(4-ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4-ジアミノ-N,N―ジアリルアニリン、4-アミノベンジルアミン、N-[4-(2-アミノエチル)フェニル]ベンゼン-1,4-ジアミン、N-[4-(アミノメチル)フェニル]ベンゼン-1,4-ジアミン、桂皮酸構造含有ジアミン及び下記式(D-1)、
【化1】
(式(D-1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-又は*-NH-CO-(但し、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、R及びRIIは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0~2の整数であり、cは1~20の整数であり、nは0又は1であり、mは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはなく、Xが*-NH-CO-の場合、nは0である。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。なお、これらのジアミンは、1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
上記式(D-1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D-1-1)~式(D-1-4)のそれぞれで表される化合物などが挙げられる。
【化2】
【0022】
ポリアミック酸の合成に用いるジアミンは、芳香族ジアミンを、全ジアミンに対して30モル%以上含むものであることが好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましく、80モル%以上含むものであることが特に好ましい。
【0023】
(ポリアミック酸の合成)
ポリアミック酸は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることによって得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2~2当量となる割合が好ましい。分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して20重量部以下とすることが好ましい。
【0024】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は-20℃~150℃が好ましく、反応時間は0.1~24時間が好ましい。
反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。特に好ましい有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m-クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール及び下記に示す特定溶剤よりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒(例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテルなど)との混合物を使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1~50重量%になる量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0025】
[ポリイミド]
本発明におけるポリイミドは、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、40~99%であることがより好ましく、50~99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0026】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01~20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01~10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0~180℃であり、反応時間は、好ましくは1.0~120時間である。
【0027】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。その他、ポリイミドは、ポリアミック酸エステルのイミド化によって得ることもできる。
【0028】
[ポリアミック酸エステル]
本発明におけるポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸とエステル化剤(例えば、メタノールやエタノール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールなど)とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを、有機溶媒中、適当な脱水触媒(例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムハライド、リン系縮合剤など)の存在下で反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを、有機溶媒中、適当な塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウムなど)の存在下で反応させる方法、などによって得ることができる。
液晶配向剤に含有させるポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。なお、ポリアミック酸エステルを溶解してなる反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステルを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0029】
以上のようにして得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10~800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15~500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
本発明の液晶配向剤に含有させるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500~100,000であることが好ましく、1,000~50,000であることがより好ましい。
【0030】
[ポリオルガノシロキサン]
本発明におけるポリオルガノシロキサンは、例えば加水分解性のシラン化合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水及び触媒の存在下において、加水分解又は加水分解・縮合することにより得ることができる。
【0031】
ポリオルガノシロキサンの合成に使用する加水分解性のシラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(3-シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等の窒素・硫黄含有アルコキシシラン化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有アルコキシシラン化合物、などを挙げることができる。加水分解性シラン化合物は、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、「(メタ)アクリロキシ」は、「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」を含む意味である。
【0032】
上記の加水分解・縮合反応は、上記の如きシラン化合物の1種又は2種以上と水とを、好ましくは適当な触媒及び有機溶媒の存在下で反応させることにより行う。反応に際し、水の使用割合は、シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは1~30モルである。使用する触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基(例えばトリエチルアミンやテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなど)、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。触媒の使用量は、触媒の種類、温度などの反応条件などにより異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えばシラン化合物の合計量に対して、好ましくは0.01~3倍モルである。使用する有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどが挙げられ、これらのうち、非水溶性又は難水溶性の有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒の使用割合は、反応に使用するシラン化合物の合計100重量部に対して、好ましくは50~1,000重量部である。
【0033】
上記の加水分解・縮合反応は、例えば油浴などにより加熱して実施することが好ましい。その際、加熱温度は130℃以下とすることが好ましく、加熱時間は、0.5~12時間とすることが好ましい。反応終了後において、反応液から分取した有機溶媒層につき、溶媒を除去することによりポリシロキサンを得ることができる。
【0034】
TN型、STN型又は垂直配向型の液晶表示素子用の液晶配向剤に適用する場合、ポリオルガノシロキサンの側鎖に、液晶配向性基や光配向性構造を有する基などの特定基を導入してもよい。これら特定基を側鎖に有するポリオルガノシロキサンを合成する方法は特に限定されないが、例えば、エポキシ基含有シラン化合物、又はエポキシ基含有シラン化合物とその他のシラン化合物との混合物を加水分解縮合してエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成し、次いで、得られたエポキシ基含有のポリオルガノシロキサンと、上記特定基を有するカルボン酸とを反応させる方法などが挙げられる。エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応は公知の方法に従って行うことができる。
【0035】
ポリオルガノシロキサンは、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500~100,000の範囲にあることが好ましく、1,000~30,000の範囲にあることがより好ましく、1,000~20,000であることが更に好ましい。ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が上記範囲にあると、液晶配向膜を製造する際に取り扱いやすく、また得られた液晶配向膜は十分な材料強度及び特性を有するものとなる。
【0036】
本発明の液晶配向剤において、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる重合体の含有割合(2種以上含有する場合には合計量)は、液晶配向剤中の重合体成分の合計量に対して、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。また、本発明の効果をより好適に得る観点から、重合体成分としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。液晶配向剤中におけるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの合計の含有割合は、液晶配向剤中の重合体成分の合計量に対して、40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。
【0037】
<溶剤>
本発明の液晶配向剤は、重合体成分が、溶剤中に分散又は溶解してなる液状の組成物である。当該液晶配向剤は、溶剤として、リン原子を有する溶剤(以下、「リン含有溶剤」ともいう。)、N,N-ジメチルプロピレン尿素、テトラヒドロ-4H-ピラン-4-オン、テトラメチレンスルホキシド、3-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、及び下記式(10)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種である特定溶剤を含有する。
【0038】
【化3】
(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。式(2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、炭素数2~4のアルカンジイル基である。式(3)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基である。式(10)中、R11~R13は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。)
【0039】
[リン含有溶剤]
リン含有溶剤は、少なくとも1個のリン原子を分子内に有する化合物であれば特に限定されないが、下記式(p-1)~式(p-4)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【化4】
(式(p-1)~(p-4)中、X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子である。Rは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、Rは、水素原子又は1価の有機基である。ただし、RとRとが相互に結合して環を形成していてもよい。Rは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、窒素原子に結合する2個のRが相互に結合して窒素原子とともに1価の窒素含有複素環基を形成していてもよい。ただし、R及びRは同時に水素原子にならず、R及びRは同時に水素原子にならない。m,n,k及びjは、それぞれ独立に1~3の整数である。m,n,k,jが2又は3の場合、式中の複数のR,Rは互いに同じでも異なってもよく、m,n,k,jが1の場合、式中の複数のRは互いに同じでも異なってもよい。)
【0040】
ここで、本明細書において「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。また、本明細書において「有機基」とは、炭素原子を含む基を意味し、構造中にヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0041】
上記式(p-1)において、Rの炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、スチリル基等のアラルキル基、などが挙げられる。Rは、これらの中でも炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。
【0042】
の1価の有機基としては、例えば炭素数1~10の1価の炭化水素基、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間にヘテロ原子含有基を含む基、当該炭化水素基とヘテロ原子含有基とが結合した基、これらの基の少なくとも1個の水素原子を置換基で置き換えた基、シアノ基、ホルミル基などが挙げられる。
ここで、ヘテロ原子含有基とは、ヘテロ原子を有する2価以上の基を意味し、例えば-O-、-CO-、-COO-、-CONR-(Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、以下同じ。)、-NR-、3価の窒素原子、-NRCONR-、-OCONR-、-S-、-COS-、-OCOO-、-SO-等が挙げられる。置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基等が挙げられる。Rは、上記の中でも、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6若しくは7のアリール基であることが好ましい。
【0043】
の炭素数1~6のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。2個のRが相互に結合して形成される1価の窒素含有複素環基としては、窒素含有複素環が有する窒素原子に結合する水素原子を取り除いた基などが挙げられる。当該窒素含有複素環の具体例としては、例えばピロリジン環、ピペリジン環等が挙げられ、これらの環部分に例えばハロゲン原子、アルキル基等の置換基を有していてもよい。Rは、好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。X及びYは酸素原子であることが好ましい。m,n,k及びjは2又は3が好ましく、3がより好ましい。
【0044】
リン含有溶剤としては、印刷性の改善効果がより高い点で、上記式(p-1)~式(p-4)のうち、上記式(p-1)で表される化合物及び上記式(p-3)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、上記式(p-1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0045】
リン含有溶剤の好ましい具体例としては、例えば下記式(p-1-1)~式(p-1-7)、式(p-3-1)及び式(p-3-2)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化5】
【0046】
リン含有溶剤としては、印刷性がより良好である点で、上記の中でも、上記式(p-1-1)~式(p-1-4)及び式(p-3-1)のそれぞれで表される化合物が特に好ましい。なお、リン含有溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
[上記式(1)で表される化合物]
上記式(1)において、Rの炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。上記式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば4-ホルミルモルホリン、4-アセチルモルホリン等が挙げられ、中でも4-ホルミルモルホリンであることが特に好ましい。なお、上記式(1)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
[上記式(2)で表される化合物]
上記式(2)において、Rの炭素数1~6のアルキル基の例示は、上記式(1)のRの説明を適用することができる。Rの炭素数2~4のアルカンジイル基としては、例えばエチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。上記式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば3-メチル-2-オキサゾリドン、3-エチル-2-オキサゾリドン、3-イソプロピル-2-オキサゾリドン、N-メチル-2-オキサジナノン等が挙げられ、中でも3-メチル-2-オキサゾリドンであることが特に好ましい。なお、上記式(2)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
[上記式(3)で表される化合物]
上記式(3)において、R~R10の1価の有機基としては、例えば炭素数1~10のアルキル基、当該アルキル基の炭素-炭素結合間にヘテロ原子含有基を含む基、当該アルキル基とヘテロ原子含有基とが結合した基、これらの基の少なくとも1個の水素原子を置換基で置き換えた基などが挙げられる。ヘテロ原子含有基及び置換基の具体例については、上記式(p-1)中のRの説明を適用することができる。なお、R~R10は、互いに同じでも異なっていてもよい。R~R10は、好ましくは水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は-COR(Rは、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基)である。R及びR10の一方は、-CORであることが好ましい。
【0050】
上記式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば2-フルアルデヒド、3-フルアルデヒド、5-メチル-2-フルアルデヒド、5-メチル-3-フルアルデヒド、4-メチル-2-フルアルデヒド、4-メチル-2-フルアルデヒド、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒド等が挙げられ、中でも5-メチル-2-フルアルデヒドであることが特に好ましい。なお、上記式(3)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
[上記式(10)で表される化合物]
上記式(10)において、R11~R13の炭素数1~3のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。上記式(10)で表される化合物の具体例としては、例えばラクトアミド、N,N-ジメチルラクトアミド、N,N-ジエチルラクトアミド、N-メチル-N-プロピルラクトアミド、N-エチルラクトアミド、N-イソプロピルラクトアミド等が挙げられ、中でもN,N-ジメチルラクトアミドが特に好ましい。なお、上記式(10)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
特定溶剤としては、印刷性(特に連続印刷性)がより良好である点で、上記の中でも、リン含有溶剤、N,N-ジメチルプロピレン尿素、上記式(1)で表される化合物、及び上記式(2)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なお、特定溶剤としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
[その他の溶剤]
本発明の液晶配向剤は、特定溶剤以外の溶剤(以下、「その他の溶剤」ともいう。)を含有していてもよい。その他の溶剤の具体例としては、例えばN-エチル-2-ピロリドン、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(t-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドン、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ヘキシルオキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、イソプロポキシ-N-イソプロピル-プロピオンアミド、n-ブトキシ-N-イソプロピル-プロピオンアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。なお、その他の溶剤は、上記のものを1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0054】
特定溶剤について、液晶配向剤に含有させる溶剤の全部を特定溶剤としてもよいし、一部を特定溶剤としてもよい。特定溶剤の含有割合(2種以上使用する場合にはその合計量、以下同じ)は、液晶配向剤に含有させる溶剤の全体量に対して、好ましくは1~80重量%であり、より好ましくは5~70重量%であり、更に好ましくは10~60重量%であり、特に好ましくは20~60重量%である。
【0055】
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、上記の如き重合体成分及び溶剤を含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物、官能性シラン化合物、光重合性化合物、界面活性剤、充填剤、消泡剤、増感剤、分散剤、酸化防止剤、密着助剤、帯電防止剤、レベリング剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの配合割合は、配合する化合物に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で適宜設定することができる。
【0056】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得にくくなる。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が低下する傾向にある。
【0057】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンコート法による場合には固形分濃度1.5~4.5重量%の範囲が特に好ましい。オフセット印刷法による場合には、固形分濃度を3~9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12~50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1~5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3~15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10~50℃であり、より好ましくは20~30℃である。
【0058】
<液晶配向膜及び液晶素子>
本発明の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶素子は、上記の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶素子における液晶の駆動モードは特に限定されず、TN型、STN型、IPS型、FFS型、VA型、MVA型、PSA型などの種々の駆動モードに適用することができる。本発明の液晶素子は、例えば以下の工程1~工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の駆動モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各駆動モードに共通である。
【0059】
[工程1:塗膜の形成]
先ず、基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1-1)TN型、STN型、VA型、MVA型又はPSA型の液晶素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、それぞれの基板における透明性導電膜の形成面上に液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In-SnO)からなるITO膜などを用いることができる。
【0060】
液晶配向剤の塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。その後、溶剤を完全に除去する目的で、また必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80~300℃であり、ポストベーク時間は、好ましくは5~200分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μm、より好ましくは0.005~0.5μmである。
【0061】
(1-2)IPS型又はFFS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板の電極形成面と、電極が設けられていない対向基板の一面とに液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、膜厚等については上記(1-1)と同様である。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。
上記(1-1)及び(1-2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって、液晶配向膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。
【0062】
[工程2:配向能付与処理]
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向能付与処理としては、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで塗膜を一定方向に擦るラビング処理、塗膜に対して偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向処理などが挙げられる。一方、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。VA型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜は、PSA(Polymer sustained alignment)型の液晶表示素子にも好適に用いることができる。
【0063】
[工程3:液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、(1)液晶配向膜が対向するように間隙を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止する方法、(2)液晶配向膜を形成した一方の基板上の所定の場所にシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げる方法(ODF方式)等が挙げられる。製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0064】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレステリック液晶、カイラル剤、強誘電性液晶などを添加して使用してもよい。
【0065】
PSA型液晶表示素子を製造する場合には、液晶と共に光重合性化合物を注入又は滴下する点以外は上記と同様にして液晶セルを構築する。その後、一対の基板の有する導電膜間に、直流又は交流の電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。また、光重合性化合物を含む液晶配向剤を用いて基板上に塗膜を形成した場合、上記と同様にして液晶セルを構築し、その後、一対の基板の有する導電膜間に、直流又は交流の電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する工程を経ることにより液晶素子を製造してもよい。
【0066】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0067】
本発明の液晶素子は種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビなどの各種表示装置や、調光フィルム等に用いることができる。また、本発明の液晶配向剤を用いて形成された液晶素子は位相差フィルムに適用することもできる。
【実施例
【0068】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0069】
合成例における各重合体溶液の溶液粘度、ポリイミドのイミド化率、重量平均分子量、及びエポキシ当量は以下の方法により測定した。
[重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)]所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調整した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[ポリイミドのイミド化率]ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH-NMRを測定した。得られたH-NMRスペクトルから、下記数式(1)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1-A/A×α)×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[重合体の重量平均分子量Mw]以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
[エポキシ当量]JIS C 2105に記載の塩酸-メチルエチルケトン法により測定した。
【0070】
<重合体の合成>
[合成例1:ポリイミド(PI-1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてp-フェニレンジアミン(PDA)8.6g(0.08モル)及び3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル(HCDA)10.5g(0.02モル)を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)166gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は90mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7重量%の溶液とし、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作によって脱水閉環反応に使用したピリジン及び無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約68%のポリイミド(PI-1)を26重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は45mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリイミド(PI-1)を得た。
【0071】
[合成例2:ポリイミド(PI-2)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.5g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA7.6g(0.07モル)、HCDA5.2g(0.01モル)及び4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)4.0g(0.02モル)、をNMP157gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は110mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7重量%の溶液とし、ピリジン16.6g及び無水酢酸21.4gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約82%のポリイミド(PI-2)を26重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は62mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリイミド(PI-2)を得た。
【0072】
[合成例3:ポリイミド(PI-3)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物(BODA)24.9g(0.10モル)、ジアミンとしてPDA8.6g(0.08モル)及びHCDA10.4g(0.02モル)を、NMP176gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は103mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7重量%の溶液とし、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約71%のポリイミド(PI-3)を26重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は57mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリイミド(PI-3)を得た。
【0073】
[合成例4:ポリイミド(PI-4)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として、TCA110g(0.50モル)及び1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン160g(0.50モル)、ジアミンとして、PDA91g(0.85モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン25g(0.10モル)及び3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン25g(0.040モル)、並びにモノアミンとしてアニリン1.4g(0.015モル)を、NMP960gに溶解し、60℃で6時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP2,700gを追加し、ピリジン390g及び無水酢酸410gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなγ-ブチロラクトンで溶媒置換することにより、イミド化率約95%のポリイミド(PI-4)を15重量%含有する溶液約2,500gを得た。この溶液を少量分取し、NMPを加え、ポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は70mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリイミド(PI-4)を得た。
【0074】
[合成例5:ポリイミド(PI-5)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA8.6g(0.08モル)、DDM2.0g(0.01モル)及び4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル3.2g(0.01モル)を、NMP324gに溶解し、60℃で4時間反応を行い、ポリアミック酸を10重量%含有する溶液を得た。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP360gを追加し、ピリジン39.5g及び無水酢酸30.6gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換し、イミド化率約93%のポリイミド(PI-5)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取して測定した溶液粘度は30mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリイミド(PI-5)を得た。
【0075】
[合成例6:ポリイミド(PI-6)の合成]
使用するジアミンを、3,5-ジアミノ安息香酸(3,5DAB)0.08モル及びコレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン(HCODA)0.02モルに変更した以外は、上記合成例1と同様の方法によりポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は80mPa・sであった。
次いで、上記合成例1と同様の方法によりイミド化を行い、イミド化率約65%のポリイミド(PI-6)を26重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は40mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリイミド(PI-6)を得た。
【0076】
[合成例7:ポリアミック酸(PA-1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CB)200g(1.0モル)、ジアミンとして2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル210g(1.0モル)を、NMP370g及びγ-ブチロラクトン3,300gの混合溶媒に溶解し、40℃で3時間反応を行い、固形分濃度10重量%、溶液粘度160mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリアミック酸(PA-1)を得た。
【0077】
[合成例8:ポリアミック酸(PA-2)の合成]
使用するテトラカルボン酸二無水物を、ピロメリット酸二無水物(PMDA)0.9モル及びCB0.1モルとし、ジアミンを、PDA0.2モル及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DDE)0.8モルとした以外は上記合成例7と同様の方法により、固形分濃度10重量%、溶液粘度170mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリアミック酸(PA-2)を得た。
【0078】
[合成例9:ポリアミック酸(PA-3)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA7.0g(0.031モル)、ジアミンとして下記式(R-1)で表される化合物13g(TCA1モルに対して1モルに相当する。)を、NMP80gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(PA-3)を20重量%含有する溶液を得た。このポリアミック酸溶液の溶液粘度は2,000mPa・sであった。なお、下記式(R-1)で表される化合物は、特開2011-100099号公報の記載に従って合成した。次いで、このポリアミック酸溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリアミック酸(PA-3)を得た。
【化6】
【0079】
[合成例10:ポリオルガノシロキサン(APS-1)の合成]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により、洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、反応性ポリオルガノシロキサン(EPS-1)を粘調な透明液体として得た。この反応性ポリオルガノシロキサン(EPS-1)について、H-NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。得られた反応性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは3,500、エポキシ当量は180g/モルであった。
次いで、200mLの三口フラスコに、反応性ポリオルガノシロキサン(EPS-1)を10.0g、溶媒としてメチルイソブチルケトン30.28g、反応性化合物として4-ドデシルオキシ安息香酸3.98g、及び触媒としてUCAT 18X(商品名、サンアプロ(株)製)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た溶液を3回水洗し、有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶剤を留去することにより、液晶配向性ポリオルガノシロキサン(APS-1)を9.0g得た。得られた重合体の重量平均分子量Mwは9,900であった。
【0080】
[合成例11:ポリオルガノシロキサン(PS1)の合成]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、p-スチリルトリメトキシシラン31g、テトラヒドロフラン70g、トリエチルアミン33g及び脱イオン水25gを加え、室温で混合した。次いで、還流下で撹拌しつつ、60℃で3時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、ジエチレングリコールジエチルエーテル60gを加え、加熱濃縮を行った。固形分濃度が30%になるまで濃縮することで、ポリシロキサン(PS1)のジエチレングリコールジエチルエーテル溶液を得た。
[合成例12,13]
仕込み原料を下記表1に示すとおりとした以外は、合成例11と同様の合成方法で、ポリオルガノシロキサン(PS-2)及び(PS-3)のジエチレングリコールジエチルエーテル溶液を得た。得られたポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwを下記表1に併せて示した。
【0081】
【表1】
【0082】
なお、表1において、原料シラン化合物の略称は、それぞれ以下の意味である。
STTMS:p-スチリルトリメトキシシラン
ECETMS:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
PTMS:フェニルトリメトキシシラン
【0083】
[参考例1]
<液晶配向剤の調製>
重合体としてポリイミド(PI-1)を用い、これに溶剤としてリン酸トリメチル(PTM)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶剤組成がPTM:NMP:BC=20:40:40(重量比)、固形分濃度6.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤(S-1)を調製した。なお、液晶配向剤(S-1)は、主に垂直配向型の液晶表示素子の製造用である。
【0084】
<印刷版の膨潤特性の評価>
上記液晶配向剤(S-1)を用いて、APR版の膨潤しやすさ(膨潤特性)について評価を行った。APR版は、紫外線照射部分が硬化する液状感光性樹脂によって形成された樹脂版であり、液晶配向膜印刷機の印刷版に一般に使用されている。液晶配向剤とAPR版とを接触させた場合にAPR版が膨潤しにくいということは、印刷時に液晶配向剤がAPR版に浸み込みにくく、印刷性が良好であることを意味する。膨潤特性の評価は、液晶配向剤中にAPR版を1日間浸漬し、浸漬前後でのAPR版の重量変化を測定することにより行った。このとき、APR版の重量の増加率(膨潤率)が4%未満の場合に、APR版が膨潤しにくく良好(○)、増加率が4%以上の場合に、APR版が膨潤しやすく不良(×)と評価した。その結果、この例では、膨潤率が3.5%であり、膨潤特性「良好(○)」であった。膨潤率は下記数式(2)を用いて算出した。
膨潤率[%]=(W-W/W)×100 …(2)
(数式(2)中、Wは浸漬前のAPR版の重量であり、Wは浸漬後のAPR版の重量である。)
【0085】
<印刷性の評価>
上記で調製した液晶配向剤(S-1)につき、基板への印刷を連続して行った場合の印刷性(連続印刷性)について評価した。評価は以下のようにして行った。まず、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷機(株)製、オングストローマー形式「S40L-532」)を用いて、アニロックスロールへの液晶配向剤(S-1)の滴下量を往復20滴(約0.2g)の条件にて、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に印刷した。基板への印刷は、1分間隔で新しい基板を用いながら20回実施した。
続いて、液晶配向剤(S-1)を1分間隔でアニロックスロール上にディスペンス(片道)し、その都度、アニロックスロールと印刷版とを接触させる作業(以下、空運転という)を合計10回行った(この間、ガラス基板への印刷は行わない)。なお、この空運転は、液晶配向剤の印刷を意図的に過酷な状況下で実施するようにするために行った操作である。
10回の空運転の後、続いてガラス基板を用いて本印刷を行った。本印刷では、空運転後、基板を30秒間隔で5枚投入し、印刷後のそれぞれの基板を80℃で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃で10分間加熱(ポストベーク)して、膜厚約80nmの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察することにより印刷性(連続印刷性)を評価した。評価は、空運転後の本印刷1回目から重合体の析出が観察されない場合を連続印刷性「良好(○)」、空運転後の本印刷1回目では重合体の析出が観察されるが、本印刷を5回実施する間に重合体の析出が観察されなくなる場合を連続印刷性「可(△)」、本印刷を5回繰り返した後においても重合体の析出が観察される場合を連続印刷性「不良(×)」とした。その結果、この例では連続印刷性「良好(○)」であった。なお、印刷性が良好な液晶配向剤では、連続で基板を投入している間に重合体の析出が良化(消失)することが実験により分かっている。また更に、空運転の回数を15回、20回、25回に変更し、それぞれについて上記と同様にして液晶配向剤の印刷性を評価したところ、この例では、空運転を15回及び20回としたときには「良好(○)」、25回のときには「可(△)」であった。
【0086】
[参考例2~31及び比較例1~5]
使用する重合体、並びに溶剤の種類及び組成を、それぞれ下記表2に記載のとおり変更した以外は、上記参考例1と同様の方法により液晶配向剤(S-2)~(S-31)及び(SR-1)~(SR-5)をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤について、上記参考例1と同様にして印刷版の膨潤特性及び印刷性を評価した。それらの結果を下記表2に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
表2中、重合体成分として2種の重合体を使用したもの(参考例18~31)については、使用した重合体の全体量100重量部に対する各重合体の使用割合(重量比)を併せて示した。各液晶配向剤のうち、(S-2)~(S-17)、(SR-1)~(SR-5)は主に垂直配向型、(S-18)~(S-23)は主にTN型、(S-24)は主にIPS型の液晶表示素子の製造用であり、(S-29)~(S-31)は主に光配向法による垂直配向型液晶表示素子の製造用、(S-25)~(S-28)は主にPSA方式の液晶表示素子の製造用である。表2中、溶剤組成の数値は、液晶配向剤の調製に使用した溶剤の合計量に対する各化合物の配合割合(重量比)を示す(以下の表3~表5についても同じ)。溶剤組成の記号はそれぞれ以下の意味である。
a:リン酸トリメチル
b:リン酸トリエチル
c:ヘキサメチルリン酸トリアミド
d:N-メチル-2-ピロリドン
e:N-エチル-2-ピロリドン
f:γ-ブチロラクトン
g:γ-バレロラクトン
h:δ-バレロラクトン
i:N,N-ジエチルアセトアミド
j:ブチルセロソルブ
k:ジエチレングリコールジエチルエーテル
l:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0089】
[実施例32、33、40及び参考例34~39、41~52]
使用する重合体、並びに溶剤の種類及び組成を、それぞれ下記表3に記載のとおり変更した以外は、上記参考例1と同様の方法により液晶配向剤(S-32)~(S-52)をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤について、上記参考例1と同様にして印刷版の膨潤特性及び印刷性の評価を行った。それらの結果を下記表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
表3中、重合体成分として2種の重合体を使用したもの(実施例40及び参考例41~43、50~52)については、使用した重合体の全体量100重量部に対する各重合体の使用割合(重量比)を併せて示した。また、各液晶配向剤のうち、(S-32)~(S-39)、(S-44)~(S-49)は主に垂直配向型、(S-40)~(S-43)、(S-50)~(S-52)は主にTN型の液晶表示素子の製造用である。表3中、溶剤組成の記号はそれぞれ以下の意味である。d及びjは上記表2と同じである。
m:N,N-ジメチルプロピレン尿素
n:4-ホルミルモルホリン
o:3-メチル-2-オキサゾリドン
p:テトラヒドロ-4H-ピラン-4-オン
r:テトラメチレンスルホキシド
s:3-メチルシクロヘキサノン
t:4-メチルシクロヘキサノン
【0092】
[参考例53~56]
使用する重合体成分、並びに溶剤の種類及び組成を、それぞれ下記表4に記載のとおり変更した以外は、上記参考例1と同様の方法により液晶配向剤(S-53)~(S-56)をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤について、上記参考例1と同様にして印刷版の膨潤特性及び印刷性の評価を行った。それらの結果を下記表4に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
表4中、重合体成分として2種の重合体を使用したもの(参考例55,56)については、使用した重合体の全体量100重量部に対する各重合体の使用割合(重量比)を併せて示した。また、各液晶配向剤のうち、(S-53)、(S-54)は主に垂直配向型、(S-55)、(S-56)は主にTN型の液晶表示素子の製造用である。表4中、溶剤組成の記号はそれぞれ以下の意味である。d及びjは上記表2と同じである。
q:5-メチル-2-フルアルデヒド
u:N,N-ジメチルラクトアミド(下記式(10-1)で表される化合物)
【化7】
【0095】
[実施例57~60]
使用する重合体、並びに溶剤の種類及び組成を、それぞれ下記表5に記載のとおり変更した以外は、上記参考例1と同様の方法により液晶配向剤(S-57)~(S-60)をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤について、上記参考例1と同様にして印刷版の膨潤特性及び印刷性の評価を行った。それらの結果を下記表5に示す。なお、表5中、重合体成分の欄の数値は、使用した重合体の全体量100重量部に対する各重合体の使用割合(重量比)を示す。溶剤組成の記号(d,m,j)は上記表2及び表3と同じである。
【表5】
【0096】
上記の結果から、上記特定溶剤を含む液晶配向剤(参考例1~31、34~39、41~56及び実施例32、33、40、57~60)はいずれも印刷版を膨潤させにくく、連続印刷性も良好であることが分かった。これに対し、上記特定溶剤を含まない比較例のものは、膨潤特性及び連続印刷性のいずれかが実施例、参考例よりも劣る結果であった。