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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】気泡発生装置、及び液体濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20221206BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20221206BHJP
   B01F 23/231 20220101ALI20221206BHJP
【FI】
B01D65/02 520
C02F1/44
B01F23/231
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021209802
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2020157702の分割
【原出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051575
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】野口 寛
(72)【発明者】
【氏名】中川 彰利
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 輝武
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/146611(WO,A1)
【文献】特開2018-079442(JP,A)
【文献】特開2020-065976(JP,A)
【文献】実開昭63-136728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 65/02 - 65/06
C02F 1/44
B01F 23/23 - 23/2375
C02F 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯留し、且つ前記液体中に供給される気体を前記液体の上方に貯留する気体貯留室と、前記気体貯留室の上部に連通して下方に向けて延びた後、折り返して上方に向けて延びる折り返し路と、前記折り返し路を経由した気体を気泡として放出する複数の気泡放出口とを、複数の前記気泡放出口のそれぞれから気泡を間欠的に放出する気泡発生装置であって、
前記気体貯留室と前記折り返し路との組を1つだけ備え、
複数の前記気泡放出口のそれぞれに連通する気泡放出室を備え、
前記折り返し路が、前記気体貯留室に連通する第1連通口と、前記折り返し路の折り返し点よりも気体進行方向の下流側で前記気泡放出室に連通する第2連通口とを備え、
複数の前記気泡放出口のそれぞれの開口面積が互いに同じであり、
それぞれの前記開口面積の合計が、前記第2連通口の開口面積よりも小さい
ことを特徴とする気泡発生装置。
【請求項2】
複数の前記気泡放出口のそれぞれが、上方に向けて開口し、且つ、一直線上に並ぶ態様で配置され、
前記折り返し路が、前記第1連通口から下方に向かう下降部と、下方から上方に向けて折り返す折り返し部と、前記折り返し部から上方に向かって前記第2連通口に至る上昇部とを備え、
前記下降部、前記折り返し部、前記上昇部、及び前記気泡放出室のそれぞれの形状が、複数の前記気泡放出口の並び方向に沿って延在する形状であり、
前記第1連通口及び前記第2連通口のそれぞれの形状が、前記並び方向に沿って延在する形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の気泡発生装置。
【請求項3】
前記折り返し部の下壁に、下方を向く開口を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡発生装置。
【請求項4】
膜部と、前記膜部に囲まれる中空とを有し、液体中に配置された状態で前記中空に吸引力を受けることで、外部の液体を、前記膜部を通じて前記中空内に取り込んで濾過する濾過膜と、
前記濾過膜の下方に配置され、前記濾過膜に向けて気泡を放出する気泡発生装置と
を備える液体濾過装置であって、
前記気泡発生装置が、請求項1乃至3の何れか1項に記載の気泡発生装置である
ことを特徴とする液体濾過装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡発生装置、及びこれを用いる液体濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を濾過膜によって濾過する液体濾過装置においては、濾過膜の目詰まりを抑制するために、スクラビングによって濾過膜の表面から汚濁物質を引き剥がすことが一般的に行われる。スクラビングは、気泡発生装置によって濾過膜の下方から濾過膜に向けて気泡を放出し、気泡によって過膜の表面付近の液体を激しく揺動させる方法である。
【0003】
気泡発生装置としては、気体貯留室と、これの上部に連通する折り返し路と、複数の気泡放出口とを備えるものが知られている。気体貯留室は、内部に液体を貯留し、且つその液体中に供給される気体を液体の上方に貯留する。折り返し路は、気体貯留室の上部に連通して下方に向けて延びた後、折り返して上方に向けて延びる。折り返し路を経由した空気は、複数の気泡放出口のそれぞれから気泡として放出される。
【0004】
かかる構成の気泡発生装置として、特許文献1に記載のガススパージャが知られている。このガススパージャは、ハウジングと、折り返し路としての導管と、カバーとを備える。ハウジング内には、仕切板によって仕切られた気体貯留室が設けられる。気体貯留室の上部には、2つの穴(気泡放出口)を備えるカバーが固定される。折り返し路としての導管は、アルファベットの「U」のような形状になっている。また、導管は、管内での気体流動方向における一端に第1開口を有し、他端に第2開口を有する。第1開口は、気体貯留室の上部に連通する。気体貯留室から第1開口を通じて導管内に進入した気体は、導管の「U」の形状に沿って移動した後、第2開口を通じて導管から送り出される。その後、気体は、カバーに設けられた2つの穴のそれぞれから気泡として放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-47532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
気泡により、濾過膜の全体に対して均等なせん断力を付与する、あるいは、並列に配置された複数の濾過膜のそれぞれに対して互いに同程度のせん断力を付与するためには、複数の気泡放出口のそれぞれから互いに同程度の大きさの気泡を放出することが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載のガススパージャにおいては、2つの穴(気泡放出口)のそれぞれから互いに同程度の大きさの気泡を放出することが困難である。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の気泡放出口のそれぞれから互いに同程度の大きさの気泡を放出することができる気泡発生装置、及びこれを用いる液体濾過装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、内部に液体を貯留し、且つ前記液体中に供給される気体を前記液体の上方に貯留する気体貯留室と、前記気体貯留室の上部に連通して下方に向けて延びた後、折り返して上方に向けて延びる折り返し路と、前記折り返し路を経由した気体を気泡として放出する複数の気泡放出口とを、複数の前記気泡放出口のそれぞれから気泡を間欠的に放出する気泡発生装置であって、前記気体貯留室と前記折り返し路との組を1つだけ備え、複数の前記気泡放出口のそれぞれに連通する気泡放出室を備え、前記折り返し路が、前記気体貯留室に連通する第1連通口と、前記折り返し路の折り返し点よりも気体進行方向の下流側で前記気泡放出室に連通する第2連通口とを備え、複数の前記気泡放出口のそれぞれの開口面積が互いに同じであり、それぞれの前記開口面積の合計が、前記第2連通口の開口面積よりも小さいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の気泡放出口のそれぞれから互いに同程度の大きさの気泡を放出することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る液体濾過装置を用いる水処理施設の概略構成を示す図である。
図2】同液体濾過装置の膜モジュール及び気泡発生装置を示す斜視図である。
図3】同膜モジュールの膜エレメントとソケット管とを示す斜視図である。
図4】同液体濾過装置の気泡発生装置を示す斜視図である。
図5】同気泡発生装置の断面図である。
図6】同気泡発生装置の平面図である。
図7】稼働していない状態の同気泡発生装置を示す断面図である。
図8】バッチ処理における第1期の状態の同気泡発生装置を示す断面図である。
図9】バッチ処理における第2期の状態の同気泡発生装置を示す断面図である。
図10】バッチ処理における第3期の状態の同気泡発生装置を示す断面図である。
図11】バッチ処理における第4期の状態の同気泡発生装置を示す断面図である。
図12】実験によって得られた振動量と時間との関係を示すグラフである。
図13】実施例に係る気泡発生装置を示す斜視図である。
図14】同気泡発生装置を示す断面図である。
図15】バッチ処理の第2期における同気泡発生装置の状態の一例を示す断面図である。
図16】変形例に係る気泡発生装置を示す斜視図である。
図17】バッチ処理における第1期の状態の同気泡発生装置を示す断面図である。
図18】バッチ処理における第2期の状態の同気泡発生装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図を用いて、本発明を適用した液体濾過装置の一実施形態について説明する。実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、各図において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、各図に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0012】
図1は、実施形態に係る液体濾過装置を用いる水処理施設の概略構成を示す図である。この水処理施設は、原水タンク1、濾過処理水槽2、処理水タンク3、制御装置4、原水ポンプ5、第1水位センサー6、原水移送管7、処理水移送管8、吸引ポンプ9、第2水位センサー11、第3水位センサー12等を備える。また、水処理施設は、ブロワー13、空気供給管14、架台15、膜モジュール20、気泡発生装置30等を備える。
【0013】
原水タンク1内には、液体としての原水(処理前水)Wが貯留される。原水タンク1に設置された超音波センサー等からなる第1水位センサーは、原水タンク1内の原水Wの水位(水面の高さ)を検知して、検知結果を水位信号として制御装置4に送信する。原水タンク1内に設置された原水ポンプ5は、原水タンク1内の原水Wを吸引、吐出して、原水移送管7を通じて濾過処理水槽2に送る。原水ポンプ5として、水中ポンプからなるものを例示したが、陸上ポンプからなるものを用いてもよい。
【0014】
濾過処理水槽2は、鉄筋コンクリート製の水槽である。濾過処理水槽2内には、液体濾過装置50が設置される。液体濾過装置50は、架台15、膜モジュール20、及び気泡発生装置30を備え、その全体が濾過処理水槽2内の原水Wに浸かっている。ブロワー13は、吸引口から吸引した気体としての空気を、吐出口を通じて空気供給管14に吐出する。空気供給管14に吐出された空気は、液体濾過装置50の気泡発生装置30に供給される。濾過処理水槽2に設置された第3水位センサー12は、濾過処理水槽2内の原水Wの水位を検知して、検知結果を水位信号として制御装置4に送信する。
【0015】
吸引ポンプ9は、処理水移送管8と、膜モジュール20内に設置された後述の膜エレメントとを介して、濾過処理水槽2内の原水Wを吸引する。吸引された原水Wは、膜エレメントによって濾過されて処理済水Wとなった後、処理水移送管8を通じて処理水タンク3に送られる。処理水タンク3に設定された第2水位センサー11は、処理水タンク3内の処理済水W2の水位を検知して、検知結果を水位信号として制御装置4に送信する。
【0016】
なお、吸引ポンプ9の代わりに、水頭圧を利用して吸引力を発生させるポンプを使用してもよい。吸引の手段は、特に限定されない。
【0017】
処理水タンク3の水位が上限に達しておらず、且つ所定の運転実行条件が成立している場合、制御装置4は、吸引ポンプ9とブロワー13とを作動させて、原水Wの濾過処理を実行する。但し、運転実行条件が成立していても、原水タンク1内の原水Wの水位が下限以下になっている場合、及び濾過処理水槽2内の原水Wの水位が下限以下になっている場合には、制御装置4は、濾過処理の実行を中止する。なお、ブロワー13の役割については、後述する。
【0018】
図2は、実施形態に係る液体濾過装置(50)の膜モジュール20及び気泡発生装置30を示す斜視図である。同図において、Zは、重力方向を示す。以下、各図を用いて液体濾過装置(50)の構成について説明するが、「上下方向」と言う場合には、「上下方向」は、各図に示される膜モジュール20、気泡発生装置30の姿勢にかかわらず、膜モジュール20と気泡発生装置30とが対向する方向を意味する。また、「上方」と言う場合には、「上方」は、各図に示される膜モジュール20、気泡発生装置30の姿勢にかかわらず、「上下方向」に沿って上側に向かう方向を意味する。また、「下方」と言う場合には、「下方」は、各図に示される膜モジュール20、気泡発生装置30の姿勢にかかわらず、「上下方向」に沿って下側に向かう方向を意味する。また、「水平方向」と言う場合には、「水平方向」は、各図に示される膜モジュール20、気泡発生装置30の姿勢にかかわらず、「上下方向」に直行する方向を意味する。
【0019】
膜モジュール20は、角筒状の筐体21と、複数の膜エレメント22とを備える。複数の膜エレメント22は、板状の形状になっており、筐体21内において「水平方向」に沿って間隔で一直線上に並ぶ態様で配置され、筐体21の内面によって保持される。
【0020】
箱状の気泡発生装置30は、膜モジュール20の「下方」(直下)に配置される。気泡発生装置30は、2つの管接続部31を側板に備え、それらの管接続部31のそれぞれには、上述の空気供給管(図1の14)が接続される。
【0021】
図3は、膜エレメント22と、ソケット管16とを示す斜視図である。膜エレメント22は、濾過膜23と、4つの保持部材24とを備える。実施形態に係る液体濾過装置(50)においては、濾過膜23として、板状の平膜からなるものを用いるが、濾過膜23の種類は、平膜に限られず、中空糸膜など、他の種類であってもよい。濾過膜23の材質は、PVC(ポリ塩化ビニル)やPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの有機材料でもよく、アルミナ、コージライト、炭化ケイ素、その他の金属酸化物の一種類または複数種類から構成されるセラミックでもよい。また、濾過膜23は、有機膜とセラミック膜とを複合した複合膜であってもよい。
【0022】
濾過膜23は、上下方向に延在する複数の中空23aを備える。それらの中空23aは、濾過膜23の短手方向に所定の間隔で並び、中空23aの上端は「上方」に向く開口になっている。
【0023】
濾過膜23の上端部には、ソケット管16が装着される。また、ソケット管16には、上述の処理水移送管(図1の8)が接続される。吸引ポンプ(図1の9)が作動すると、濾過膜23の表面に吸引力が発生し、濾過膜23の周囲に存在する原水(図1のW)が濾過膜23の無数の微細孔を通じて中空23a内に吸引される。このとき、原水Wは濾過されて、原水W中の汚濁物質が濾過膜23の表面に残る。
【0024】
4つの保持部材24のそれぞれは、濾過膜23の角付近に固定された状態で、筐体(図2の21)の内面に設けられた係合部に係合する。
【0025】
膜モジュール20の「下方」に設置された気泡発生装置30は、「上方」の膜モジュール20に向けて気泡を放出する。放出された気泡は、原水W中を浮上し、膜モジュール20の筐体21の下端の開口を通じて筐体21内に進入する。その後、気泡は、複数の濾過膜23の下端に到達し、濾過膜23によって複数に分断された後、互いに隣り合う濾過膜23の間の領域(以下、「膜間領域」と言う)に進入する。「膜間領域」において浮上する気泡は、濾過膜23の表面付近の原水Wを激しく揺動させて、濾過膜23の表面に付着した汚濁物質を引き剥がす。
【0026】
なお、筐体21の形状は、図示のように、複数の膜エレメント22の四方を囲む形状であるが、筐体21内から気泡が大きく漏れ出さないような形状であれば、筐体21の側面の一部に開口を備える形状であってもよい。
【0027】
図4は、気泡発生装置30を示す斜視図である。気泡発生装置30の天板32には、矩形状の長穴が形成されている。この長穴を覆うように、矩形状のカバー板32bが天板32に固定されている。カバー板32bには、6つの真円状の気泡放出口32aが一直線上に並ぶ態様で形成されている。気泡発生装置30は、底板を備えておらず、気泡発生装置30の下端に、「下方」に向けて大きく開口する下端開口39を備える。
【0028】
図5は、気泡発生装置30の断面図である。また、図6は、気泡発生装置30の平面図である。気泡発生装置30は、第1気体貯留室33、第2気体貯留室34、気泡放出室35、第1折り返し路36、第2折り返し路37等を備える。
【0029】
図5における一点鎖線は、天板32の中心線Lcである。気体としての空気からなる気泡を放出するふ6つの気泡放出口32aのそれぞれは、その中心を天板32の中心線Lcに位置させ、且つ「上方」に向けて開口する態様で配置される。気泡放出室35は、6つの気泡放出口32aの「下方」(直下)に配置され、且つ6つの気泡放出口32aのそれぞれに連通する。
【0030】
図6に示されるように、気泡放出室35の形状は、6つの気泡放出口32aの並び方向に沿って延在する細長形状である。図5に示されるように、第1折り返し路36は、前述の並び方向と直交する方向における一方側で気泡放出室35と隣り合う。また、第2折り返し路37は、前述の並び方向と直交する方向における他方側で気泡放出室35と隣り合う。以下、6つの気泡放出口32aの並び方向と直交する方向を単に「並び直交方向」と言う。
【0031】
第2折り返し路37の構造は、中心線Lcを基準とした第1折り返し路36の線対称となる構造である。第1気体貯留室33は、「並び直交方向」の一方側で第1折り返し路36に隣接する。また、第2気体貯留室34は、「並び直交方向」の他方側で第2折り返し路37に隣接する。第2気体貯留室34の構造は、中心線Lcを基準とした第1気体貯留室33の線対称となる構造である。
【0032】
第1折り返し路36は、第1連通口36dから「下方」に向けて延びる下降部36aと、「上方」に向けて折り返す折り返し部36bと、「上方」に向けて延びて第2連通口36eに通じる上昇部36cとを備える。第2折り返し路37も、同様の下降部37a、折り返し部37b、及び上昇部37cを備える。
【0033】
図7は、稼働していない状態の気泡発生装置30を示す断面図である。同図においては、見易くするために、気泡発生装置30の断面におけるハッチングが省略されている。稼働していない状態の気泡発生装置30においては、図示のように、気泡発生装置30の内部空間の殆どが、原水Wで満たされている。
【0034】
気泡発生装置30は、気泡放出口32aから気泡を間欠的に形成することが可能である。以下、気泡放出口32aから気泡が放出されてから、次に、気泡放出口32aから気泡が放出される直前までを、バッチ処理と言う。
【0035】
図8は、バッチ処理における第1期の状態の気泡発生装置30を示す断面図である。気泡発生装置30に接続された2つの空気供給管14のうち、一方は、第1気体貯留室33の下部で開口して、第1気体貯留室33内の原水Wに空気を供給する。また、他方は、第2気体貯留室34の下部で開口して、第2気体貯留室34内の原水Wに空気を供給する。
【0036】
バッチ処理の第1期において、2つの空気供給管14のうち、一方によって原水W中に供給された空気は、原水W内を浮上して第1気体貯留室33の上部に貯まる。このようにして第1気体貯留室33の上部に貯まった空気の一部は、第1連通口36dを通じて第1折り返し路36の下降部36aに進入する。第1気体貯留室33、及び第1折り返し路36の下降部36aでは、空気の貯留量の増加に伴って、原水Wの水位が下降する。第1気体貯留室33の内の原水Wの水位と、第1折り返し路36内の原水Wの水位とは、ほぼ同じである。
【0037】
第1気体貯留室33では、原水Wの水位の下降に応じた量の原水Wが、気泡発生装置30の下端開口(図4の39)を通じて気泡発生装置30の外部に流出する。また、第1折り返し路36の下降部36aでは、原水Wの水位の下降に応じた量の原水Wが折り返し部36bに進入する。この進入に伴い、ほぼ同量の原水Wが第1折り返し路36の上昇部36c内を上昇し、第2連通口(図5の36e)を通じて気泡放出室35に進入する。この進入に伴い、ほぼ同量の原水Wが、気泡発生装置30の下端開口又は気泡放出口32aを通じて気泡発生装置30の外部へ流出する。
【0038】
第1気体貯留室33及び第1折り返し路36における空気や原水Wの挙動について説明したが、第2気体貯留室34及び第2折り返し路37における空気や原水Wの挙動も同様である。
【0039】
図9は、バッチ処理における第2期の状態の気泡発生装置30を示す断面図である。バッチ処理の第2期では、第1期に比べて、第1気体貯留室33、第1折り返し路36の下降部36a、第2気体貯留室34、及び第2折り返し路37の下降部37aのそれぞれにおける空気の貯留量が増加し、且つ原水Wの水位が下降する。
【0040】
バッチ処理の第2期の終了間際では、第1折り返し路36において、下降部36aの空気が、折り返し部36b内に進入し、且つ折り返し部36bの折り返し点を超える。
【0041】
図10は、バッチ処理における第3期の状態の気泡発生装置30を示す断面図である。第3期では、折り返し点を超えた空気が、第1折り返し路36の上昇部36c内を高速で上昇して第2連通口36eに至り、更に、気泡放出室35と、気泡放出口32aとを通じて、気泡発生装置30の外部に出る。このような空気の挙動と同期して、第1気体貯留室33内の空気が、第1連通口36dを通じて第1折り返し路36の下降部36aに進入し、下降部36a内を高速で下降する。
【0042】
第1気体貯留室33及び第1折り返し路36内における空気の挙動について説明したが、第2気体貯留室34及び第2折り返し路37内における空気の挙動も同様である。気泡放出口32aの上方では、第1折り返し路36から気泡放出室35を介して外部に出た空気と、第2折り返し路37から気泡放出室35を介して外部に出た空気とが一体となって、円状の横断面の空気集合体が形成される。
【0043】
気泡放出口32aの上方において、前述のような大きな空気集合体が形成されるのは、以下に説明する理由による。
即ち、気泡放出室35内での気泡放出口32aに向かう上昇空気の流れが、上昇部(36c,37c)から第2連通口(36e,37e)を通じて気泡放出室35に進入する空気の流れよりも速いとする。この場合、気泡放出室35内の空気の移動速度が、第2連通口(36e、37e)から気泡放出室35に流入する空気の移動速度よりも速いことになる。すると、気泡放出室35に負圧が生じる。この負圧により、気泡放出室35内の原水Wが空気に引き込まれて、空気と原水Wとの気液混合流を発生させる。この結果、折り返し路(36,37)から第2連通口(36e,37e)を通じて気泡放出室35に進入した空気が気液混合流によって分断されて、大きな気泡に成長しなくなってしまう。
【0044】
気泡放出室35内の空気の移動速度が、第2連通口(36e、37e)から気泡放出室35に流入する空気の移動速度よりも速くなる原因の一つとして、折り返し部(36b、37b)の流路抵抗が挙げられる。
【0045】
そこで、実施形態に係る気泡発生装置30は、2つの気体貯留室(33,34)、及び気泡放出室35のそれぞれの下端に、下方を向く開口としての下端開口(図4の39)を備える。2つの気体貯留室(33、34)と、気泡放出室35とは、それぞれの下部で互いに連通しているので、下端開口(図4の39)は、2つの気体貯留室(33,34)、及び気泡放出室35の共通の開口として機能する。厳密に区分けをすると、下端開口(図4の39)の全域のうち、第1気体貯留室33の直下の領域が、第1気体貯留室33の下端で下方を向く開口であり、第2気体貯留室34の直下の領域が、第2気体貯留室34の下端で下方を向く開口である。また、気体放出室35の直下の領域が、気体放出室35の下端で下方を向く開口である。
【0046】
気泡放出室35内の空気が、気泡放出口32aを通じて外部に放出され始めると、折り返し部((36b、37b)の付近に存在する空気が、流路抵抗により、先行する空気よりも僅かに遅い速度で移動し始める。すると、気泡放出室35内において、僅かな負圧が発生するが、図10において太矢印で示されるように、空気よりも下方に存在する原水Wが、上方に存在する空気に対して上方に向かう力を付与する。このとき、気泡放出室35の直下において、気泡発生装置30の下方に存在する原水Wが、下端開口(図4の39)を通じて気泡発生装置30の内部に進入しようとすることで、前述の力をサポートする。同時に、2つの気体貯留室(33、34)のそれぞれにおいて、空気よりも下方に存在する原水Wが、上方に存在する空気に対して第1連通口(36d、37d)を通じて折り返し路(36、37)内に押し込む力を付与する。このとき、2つの気体貯留室(33、34)におけるそれぞれの直下において、気泡発生装置30の下方に存在する原水Wが、下端開口(図4の39)を通じて気泡発生装置30の内部に進入しようとすることで、前述の力をサポートする。
【0047】
以上の結果、2つの折り返し路(36、37)のそれぞれの内部の空気が、気泡放出室35内の先行する空気にスムーズに追従して、第2連通口(36e、37e)を通じて気泡放出室35内に速やかに流入する。よって、実施形態に係る気泡発生装置30によれば、後続の空気を、先行する空気から分断させることなく、先行する空気と連ならせた状態で、スムーズに気泡放出口32aに向けて移動させ、大径の気泡として気泡放出口32aから放出させることができる。
【0048】
但し、第2連通口(36e、37e)の開口面積と、気泡放出室35の水平方向の断面積との比率が不適切であると、気泡放出室35内における第2連通口(36e、37e)の付近で大きな負圧が集中して発生する。このように負圧が集中して発生すると、気泡放出室35内における第2連通口(36e、37e)の付近において、空気との界面に存在する原水Wが、空気に引き込まれて混入する。そして、混入した原水Wが、後続の空気を、先行する空気から分断させて、気泡を小径化させてしまうおそれがある。
【0049】
そこで、実施形態に係る気泡発生装置30では、気泡放出室35の水平方向の断面積が、第1折り返し路36の第2連通口36eの開口面積と、第2折り返し路37の第2連通口37eの開口面積との合計に比べて、同等以上の大きさになっている。かかる構成では、気泡放出室35内において、第2連通口(36e、37e)の出口付近で発生し始める負圧が、その出口付近に集中することなく、気泡放出室35内において出口付近から遠ざかるように水平方向に伝搬して均一化される。このため、空気は、気泡放出室35の第2連通口(36e、37e)の出口付近で原水Wを引き込むことがない。すると、図示のように、「外部先行空気」と、「内部後続空気」と、2つの折り返し路(36,37)のそれぞれの内部の空気と、2つの気体貯留室(33,34)のそれぞれの内部の空気とが、分断することなく、一体的に連なって移動する。この結果、実施形態に係る気泡発生装置30は、図11(第4期)に示されるように、径の大きな気泡を気泡放出口32aの上方に形成して濾過膜(図3の23)に向けて放出することで、濾過膜の表面から汚濁物質を効率よく引き剥がすことができる。
【0050】
上述のように、気泡放出室35の下端に設けられた開口は、下端開口(図4の39)の全域のうち、気泡放出室35の直下の領域である。つまり、気泡放出室35の下端に設けられた開口の開口面積は、気泡放出室35の水平方向の断面積と同じである。かかる構成では、気泡放出室35内において、気泡の放出時に、空気の下方に存在する原水Wにより、上方の空気を上方に向けて押し上げようとする力を、断面方向の一部に集中させることなく、均一化させることが可能である。これにより、空気との界面付近に存在する原水W1の空気による引き込みをより確実に抑制して、気泡の大径化をより確実に図ることができる。
【0051】
また、上述のように、気体貯留室(33、34)の下端に設けられた開口は、下端開口(図4の39)の全域のうち、気体貯留室(33、34)の直下の領域である。つまり、気体貯留室(33、34)の下端に設けられた開口の開口面積は、気体貯留室(33、34)の断面積と同じである。かかる構成では、気泡放出口36からの気泡の放出時に、気体貯留室(33、34)内において、空気の下方に存在する原水W1により、上方の空気を上方に向けて押し上げようとする力を、断面方向の一部に集中させることなく、均一化させることが可能である。これにより、空気との界面付近に存在する原水Wの空気による引き込みを抑制することで、気体貯留室(33、34)から折り返し路(36、37)への原水Wの流入を抑えることができる。
【0052】
なお、6つの気泡放出口32aのそれぞれにおける開口面積の合計が、2つの第2連通口(36e、37e)の開口面積の合計よりも小さい場合、空気が気泡放出口32aを通過する際に、空気の移動速度に変動が起こる。しかし、気泡放出室35の空気の大部分は、気泡放出口32aに向けて安定した速度で上昇するので、第2連通口(36e、37e)からの空気の流入速度よりも速い速度で上昇することはない。このため、原水Wとの界面で空気が原水Wを引き込むことはない。
【0053】
同図においては、1つの気泡放出口32aの上に形成される空気集合体が示されるが、図示されていない他の気泡放出口32aの上にも、同様の空気集合体が形成される。それらの空気集合体の大きさは、ほぼ同じである。ほぼ同じ大きさの空気集合体が形成されるのは、次に説明する理由による。
【0054】
即ち、実施形態に係る気泡発生装置30では、6つの気泡放出口32aのそれぞれの開口面積が互いに同じになっている。また、気泡発生装置30では、6つの気泡放出口32aのそれぞれにおける開口面積の合計が、第1折り返し路36の第2連通口36eの開口面積と、第2折り返し路37の第2連通口37eの開口面積との合計に比べて、小さくなっている。かかる構成では、空気が個々の気泡放出口32aを通過するときの流路抵抗が高くなり、気泡放出室35内の空気が個々の気泡放出口32aの付近で停滞する。この停滞により、気泡放出35内に貯留されている空気全体の圧が均等化され、個々の気泡放出口32aにおける単位時間あたりの空気通過量が互いにほぼ同じになる。よって、気泡発生装置30によれば、6つの気泡放出口32aのそれぞれから互いに同程度の大きさの気泡を放出することができる。
【0055】
なお、気泡放出口32aの形状は円形に限定されず、矩形などの他の形状であってもよい。また、図示の気泡発生装置30では、6つの気泡放出口32aを備えるカバー板32bを天板32に固定しているが、天板32自体に複数の気泡放出口を設けてもよい。但し、カバー板32bを天板32に固定する構成では、カバー板32bの交換により、気泡放出口32aの径や配置間隔を容易に調整することができる。
【0056】
実施形態に係る気泡発生装置30は、気体貯留室を2つ(33,34)備えるが、気体貯留室の数は2つに限られず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、気泡発生装置30は、折り返し路(36,37)として、板状の隔壁で形成される形状のものを備えるが、形状は特に限定されない。第1連通口(36d,37d))、第2連通口(36e,37e)、下降部(36a,37a)、折り返し部(36b37b)、及び上昇部(36c,37c)を備えるものであれば、どのような形状であってもよい。
【0057】
図4に示されるように、気泡放出口32aは、「上方」に向けて開口する。かかる構成では、「上方」とは異なる方向に向けて開口する気泡放出口を備える構成に比べて、気泡放出口の周壁によって「外部先行空気」を「内部後続空気」から切断してしまうという現象を生じ難くなることから、より大きな径の気泡を形成することができる。
【0058】
図6及び図10に示されるように、2つの折り返し路(36,37)のそれぞれにおける下降部(36a,37a)、折り返し部(36b,37b)、及び上昇部(36c,37c)の形状は、6つの気泡放出口32aの並び方向に沿って延在する形状である。また、気泡放出室35の形状も、6つの気泡放出口32aの並び方向に沿って延在する形状である。また、2つの折り返し路(36,37)のそれぞれにおいて、第1連通口(36d,37d))及び第2連通口(36e,37e)のそれぞれの形状も、6つの気泡放出口32aの並び方向に沿って延在する形状である。
【0059】
かかる構成では、前述の並び方向に設置される複数の濾過膜(図3の23)における互いに隣り合う濾過膜の間(以下、「膜管領域」と言う)に、個々の気泡を進入させることが可能である。「膜間領域」に進入した気泡は、両脇の濾過膜のそれぞれに対してスクラビングによって十分なせん断力を付与して、それぞれの濾過膜の表面から汚濁物質を良好に引き剥がすことができる。
【0060】
既に述べたように、気泡発生装置30は、気体貯留室と折り返し路との組を複数備える(第1気体貯留室33と第1折り返し路36との組、及び第2気体貯留室34と第2折り返し路37との組)。それぞれの組の折り返し路(36,37)は、それぞれの第2連通口(36e,37e)で共通の気泡放出室35に連通する。かかる構成では、複数の気泡放出口32aのレイアウトに応じて、複数の組のそれぞれを配置することで、気泡放出室35内に貯留される空気全体の圧の均一化を図って、個々の気泡の大きさの均一化を図ることができる。例えば、実施形態に係る気泡発生装置30では、2つの組(気体貯留室及び折り返し路)の一方を、気泡放出口32aの「並び直交方向」の一方側に配置し、他方を「並び直交方向」の他方側に配置するレイアウトにしている。このようなレイアウトによれば、気泡の「並び直交方向」の一方側と他方側とで大きさの均一化を図ることができる。
【0061】
実施形態に係る気泡発生装置30では、各図に示されるように、2つの気体貯留室(33,34)の下部と、気泡放出室35の下部とが互いに連通している。また、気泡発生装置30は、2つの気体貯留室(33,34)、及び気泡放出室35のそれぞれ下方に、下方を向く開口としての下端開口(図4の39)を備える。かかる構成では、図11において太矢印で示されるように、気泡が気泡放出口32aを離れる際に、気泡の下方において、外部の原水Wが下端開口(図4の39)から内部に取り込まれて、気泡放出口32aに向けて上昇する。この上昇により、気泡放出口32aから離れた気泡がスムーズに浮上することで、気泡の下方の原水Wが気泡の上昇にスムーズに追従しないことによる気泡の分断の発生を抑えることができる。
【0062】
加えて、前述の構成の気泡発生装置30によれば、図11に示される第4期から、図8に示される第1期に移行する際に、折り返し路の下降部(36a,37a)の水位を速やかに上昇させて、水位の上昇の遅れに起因する小径気泡の発生を抑えることができる。具体的には、第4期では、図11に示されるように、折り返し路の下降部(36a,37a)の水位が折り返し部(36b,37b)の入口付近まで下がっている。この状態で、空気供給管14から供給される空気が気体貯留室(33,34)の上部の空気を介して、下降部(36a,37a)内の空気を押し下げると、下降部(36a,37a)内の空気が折り返し部(36b,37b)に進入して折り返し点を超える。すると、空気量の少ない小径の気泡が気泡放出口32aから放出されてしまう。このため、第4期の終了間際においては、下降部(36a,36b)と、下降部よりも水位の高い気体貯留室(33,34)とで、速やかに水位の均等を図って、下降部の水位を速やかに上昇させることが望まれる。
【0063】
そこで、実施形態に係る気泡発生装置30では、第4期の終了間際において、下端開口(図4の39)を通じて内部に取り込んだ原水Wにより、図11の太矢印で示される原水Wの流れを促す。これにより、気泡放出室35から第第2連通口(36e.37e)を通じて上昇部(36c,37c)に進入し、更に上昇部を下降するという原水Wの流れを促す。加えて、気体貯留室(33,34)内の原水Wを、下端開口(図4の39)を通じて外部に流出させることで、気体貯留室内の水位の下降を促す。これらの結果、気泡発生装置30によれば、下降部(36a,37a)内の水位を速やかに上昇させて、水位の上昇の遅れに起因する小径気泡の発生を抑えることができる。
【0064】
図5に示されるように、折り返し路(36,37)の折り返し部(36b,37b)は、下降部(36a,37a)及び上昇部(36c37c)の底としても機能することから、非稼働時に、下降部及び上昇部内の原水W中の固形物が沈殿する。例えば、砂、シルト、微生物の塊などからなる固形物である。それらの固形物が、折り返し部(36b,37b)の下壁(底壁)に固着し、固着物が徐々に成長していくと、折り返し部(36b,37b)の閉塞を引き起こすおそれがある。
【0065】
そこで、実施形態に係る気泡発生装置30は、図5に示されるように、「下方」を向くを、折り返し部)の下壁に備える。気泡発生装置30は、折り返し部(36b,37b)内で沈殿した固形物を、その開口(36f,37f)を通じて折り返し部の外に排出することで、固形物の固着による折り返し部の閉塞の発生を抑えることができる。
【0066】
なお、図10に示されるバッチ処理の第3期において、折り返し部(36b,37b)内の空気が開口(36f,37f)から漏出したり、折り返し部の下方に存在する原水Wが開口から折り返し部内に進入したりして、気泡の大径化を阻害するおそれがある。しかしながら、本発明者らの実験によれば、開口(36f,37f)を設けた構成であっても、開口の大きさを適切に設定することで、開口を設けない構成と同様に、大径の気泡を発生させることができた。
【0067】
なお、実施形態に係る液体濾過装置(50)では、6つの気体放出口32aのそれぞれから互いに均等の大きさで放出された気泡が1つに連なって長い大きな1つの気泡になった後、複数の濾過膜(23)によって分断されてから「膜間領域」に進入する。
【0068】
本発明者らは、実施形態に係る液体濾過装置(50)と同様の構成の試験装置を試作して、気泡を利用したスクラビングによる濾過膜(図3の23)の振動量を測定する実験を行った。ろ過膜の振動量の測定値が大きいことは、膜表面付近の原水Wの揺動量が大きく、スクラビングによるせん断力が高いことを示唆する。よって、振動量の測定によって、膜表面のせん断力を間接的に評価することができる。
【0069】
図12は、上述の実験によって得られた振動量と時間との関係を示すグラフである。このグラフにおいて、急激に振動量が上下に変化している時間帯は、気泡が濾過膜(23)の表面付近の原水Wを揺動させている時間帯である。グラフからわかるように、試験装置においては、約8秒間隔で気泡発生装置(30)から気泡が放出される。
【0070】
振動量の急峻なピークは、大径の気泡によって濾過膜(23)の表面に瞬時に強いせん断力を付与していることを示す。この実験結果により、実施形態に係る気泡発生装置(30)から大径の気泡を一定周期で瞬時に放出させて、濾過膜(23)の表面に強いせん断力を付与して良好なスクラビングを実現し得ることが確認できた。
【0071】
次に、実施形態に係る気泡発生装置(20)に、より特徴的な構成を付加した実施例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係る気泡発生装置(20)の構成は、実施形態と同様である。
【0072】
図8に示される実施形態に係る気泡発生装置30において、2つの空気供給管14における一方と他方とで、空気の供給速度に差があるとする。すると、次のような不具合を引き起こすおそれがある。即ち、第1折り返し路36の折り返し部36bと、第2折り返し路37の折り返し部37bとのうち、一方において他方よりも先に内部の空気が折り返し点に達して、その空気の供給だけによる小径の気泡が気泡放出口32aから放出される。その後、他方の内部の空気が折り返し点に達して、その空気の供給だけによる小径の気泡が気泡放出口32aから放出される。これにより、小径の気泡が、大径の気泡を放出する場合の周期よりも短い周期で気泡放出口32aから放出され、濾過膜(23)の表面の清掃不良を引き起こすおそれがある。
【0073】
図13は、実施例に係る気泡発生装置30を示す斜視図である。また、図14は、実施例に係る気泡発生装置30を示す断面図である。実施例に係る気泡発生装置30は、第1気体貯留室33の上部(より詳しくは天端)と、第2気体貯留室34の上部(より詳しくは天端)とを連通させる連通管38を備える。
【0074】
図15は、バッチ処理の第2期における気泡発生装置30の状態の一例を示す断面図である。図示の例では、第2気体貯留室34に対する空気の供給速度が、第1気体貯留室33に対する空気の供給速度よりも速くなっている。にもかかわらず、第1気体貯留室33、第1折り返し路36の下降部36a、及び第2折り返し路37の下降部37aのそれぞれにおいて、原水Wの水位は互いにほぼ同じになっている。
【0075】
空気供給量の違いにより、第2気体貯留室34では、第1気体貯留室33に比べて空気の貯留量が瞬間的には増加するが、この増加により、第2気体貯留室34内の空気の気圧が、第1気体貯留室33内の空気の気圧よりも高まる。すると、第2気体貯留室34内の空気が、低圧側の第1気体貯留室33に移動して気圧差を解消する。この結果、第1気体貯留室33、第1折り返し路36の下降部36a、及び第2折り返し路37の下降部37aのそれぞれにおいて、原水Wの水位が同じ高さに調整される。
【0076】
かかる構成の気泡発生装置30によれば、第1気体貯留室33と第2気体貯留室34とで空気の供給速度が異なることによる濾過膜(23)の表面の清掃不良を回避することができる。
【0077】
なお、実施例に係る気泡発生装置30では、4つの継手によって連通管38を分解可能な構成にしているが、第1気体貯留室33の上部と、第2気体貯留室34の上部とを連通させる構造でれば、連通管38をどのような構造にしてもよい。また、図14においては、便宜上、連通管38の構造を簡略化して描いている。
【0078】
連結管38により、第1気体貯留室33の天端と、第2気体貯留室34の天端とを連通させる構成について説明したが、連通の位置は天端に限られない。例えば、図16に示されるように、第1気体貯留室33の高さ方向における中間部と、第2気体貯留室34の高さ方向における中間部とを連通させてもよい。この場合、図17に示されるように、2つの気体貯留室(33、34)のうち、空気供給速度がより速い方(図示の例では第1気体貯留室33)の空気のレベルが連結管38の位置まで下がるまでは、2つの気体貯留室における空気の貯留量に差が生じる。しかし、空気供給速度がより速い方の気体貯留室の空気のレベルが連結管38の位置まで下がった後には、図18に示されるように、2つの気体貯留室(33、34)の空気貯留量が等しくなる。2つの気体貯留室(33、34)の連通位置は、折り返し部(36b、37b)よりも上であればよい。
【0079】
本発明は上述の実施形態及び実施例に限られず、本発明の構成を適用し得る範囲内で、実施形態及び実施例とは異なる構成を採用することもできる。本発明は、以下に説明する態様毎に特有の作用効果を奏する。
【0080】
〔第1態様〕
第1態様は、内部に液体(例えば原水W)を貯留し、且つ前記液体中に供給される気体(例えば空気)を前記液体の上方に貯留する気体貯留室(例えば第1気体貯留室33、第2気体貯留室34)と、前記気体貯留室の上部に連通して下方に向けて延びた後、折り返して上方に向けて延びる折り返し路(例えば第1折り返し路36、第2折り返し路37)と、前記折り返し路を経由した気体を気泡として放出する複数の気泡放出口(例えば気泡放出口32a)とを備え、複数の前記気泡放出口のそれぞれから気泡を間欠的に放出する気泡発生装置(例えば気泡発生装置30)であって、複数の前記気泡放出口のそれぞれに連通する気泡放出室(例えば気泡放出室35)を備え、前記折り返し路が、前記気体貯留室に連通する第1連通口(例えば第1連通口36d37d)と、前記折り返し路の折り返し点よりも気体進行方向の下流側で前記気泡放出室に連通する第2連通口(例えば第2連通口36e,37e)とを備え、複数の前記気泡放出口のそれぞれの開口面積が互いに同じであり、それぞれの前記開口面積の合計が、前記第2連通口の開口面積よりも小さいことを特徴とするものである。
【0081】
かかる構成においては、気体が個々の気泡放出口を通過するときの流路抵抗が高くなり、気泡放出室内の気体が個々の気泡放出口の付近で停滞する。この停滞により、気泡放出内に貯留されている気体全体の圧が均等化され、個々の気泡放出口における単位時間あたりの空気通過量が互いにほぼ同じになる。よって、第1態様によれば、複数の気泡放出口のそれぞれから互いに同程度の大きさの気泡を放出することができる。
【0082】
〔第2態様〕
第2態様は、第1態様の構成を備え、且つ、複数の前記気泡放出口のそれぞれが、上方に向けて開口し、且つ、一直線上に並ぶ態様で配置され、前記折り返し路が、前記第1連通口から下方に向かう下降部(例えば下降部36a,37a)と、下方から上方に向けて折り返す折り返し部(例えば折り返し部36b,37b)と、前記折り返し部から上方に向かって前記第2連通口に至る上昇部(例えば上昇部36c,37c)とを備え、前記下降部、前記折り返し部、前記上昇部、及び前記気泡放出室のそれぞれの形状が、複数の前記気泡放出口の並び方向に沿って延在する形状であり、前記第1連通口及び前記第2連通口のそれぞれの形状が、前記並び方向に沿って延在する形状であることを特徴とするものである。
【0083】
かかる構成では、「上方」とは異なる方向に向けて開口する気泡放出口を備える構成に比べて、気泡放出口の周壁によって「外部先行空気」を「内部後続空気」から接断してしまうという現象を生じ難くなることから、より大きな径の気泡を形成することができる。
また、第2態様によれば、「膜間領域」に進入した気泡が、両脇の濾過膜のそれぞれに対してスクラビングによって十分なせん断力を付与して、それぞれの濾過膜の表面から汚濁物質を良好に引き剥がすことができる。
【0084】
〔第3態様〕
第3態様は、第2態様の構成を備え、且つ、前記気体貯留室と前記折り返し路との組を複数備え、それぞれの組の前記折り返し路が、それぞれの前記第2連通口で共通の前記気泡放出室に連通し、前記合計が、それぞれの前記第2連通口の開口面積の合計よりも小さいことを特徴とするものである。
【0085】
かかる構成によれば、複数の気泡放出口のレイアウトに応じて、複数の組のそれぞれを配置することで、気泡放出室内に貯留される空気全体の圧の均一化を図って、個々の気泡の大きさの均一化を図ることができる。
【0086】
〔第4態様〕
第4態様は、第3態様の構成を備え、且つ、複数の前記気体貯留室の下部と、前記気泡放出室の下部とが互いに連通し、複数の前記気体貯留室、及び前記気泡放出室のそれぞれ下方に、下方を向く開口(例えば下端開口39)を備えることを特徴とするものである。
【0087】
かかる構成においては、気泡が気泡放出口を離れる際に、気泡の下方において、外部の液体が開口から内部に取り込まれて、気泡放出口に向けて上昇する。この上昇により、気泡放出口から離れた気泡がスムーズに浮上することで、気泡の下方の液体が気泡の上昇にスムーズに追従しないことによる気泡の分断の発生を抑えることができる。
【0088】
〔第5態様〕
第5態様は、第3態様又は第4態様の構成を備え、且つ、複数の前記気体貯留室が、前記折り返し部よりも上の高さ位置で互いに連通することを特徴とするものである
【0089】
かかる構成によれば、バッチ処理の終期から次のバッチ処理の初期に移行する際に、折り返し路の下降部の水位を速やかに上昇させて、水位の上昇の遅れに起因する小径気泡の発生を抑えることができる。
【0090】
〔第6態様〕
第6態様は、第1態様~第5態様の何れかの構成を備え、且つ、前記折り返し部の下壁に、下方を向く開口を備えることを特徴とするものである。
【0091】
かかる構成によれば、折り返し部内で沈殿した固形物を、折り返し部の下壁の開口を通じて折り返し部の外に排出することで、固形物の固着による折り返し部の閉塞の発生を抑えることができる。
【0092】
〔第7態様〕
第7態様は、膜部(例えば濾過膜23の中空以外の部分)と、前記膜部に囲まれる中空(例えば中空23a)とを有し、液体中に配置された状態で前記中空に吸引力を受けることで、外部の液体を、前記膜部を通じて前記中空内に取り込んで濾過する濾過膜(例えば濾過膜23)と、前記濾過膜の下方に配置され、前記濾過膜に向けて気泡を放出する気泡発生装置とを備える液体濾過装置(例えば液体濾過装置50)であって、前記気泡発生装置が、第1態様~第6態様の何れかの気泡発生装置であることを特徴とするものである。
【0093】
かかる構成によれば、濾過膜を気泡発生装置から放出した大径の気泡によって良好にスクラビングすることができる。
【符号の説明】
【0094】
20:膜モジュール、 21筐体、 22:膜エレメント、 23:濾過膜、 23a:中空、 30:気泡発生装置、 32:天板、 32a:気泡放出口、 33:第1気体貯留室、 34:第2気体貯留室、 35:気泡放出室、 36:第1折り返し路、 36a:下降部、 36b:折り返し部、 36c:上昇部、 36d:第1連通口、 36e:第2連通口、 36f:開口、 37:第2折り返し路、 37a:下降部、 37b:折り返し部、 37c:上昇部、 37d:第1連通口、 37e:第2連通口、 37f:開口、 38:連通管、 39:下端開口、 W:原水(液体)

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