(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20221206BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F28F1/32 X
F28F1/02 A
F28F1/32 J
F28F1/32 P
(21)【出願番号】P 2021509484
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013238
(87)【国際公開番号】W WO2020196592
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2019062121
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島野 太貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 政利
(72)【発明者】
【氏名】前間 慶成
(72)【発明者】
【氏名】仲田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】岡 孝多郎
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-127595(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038652(WO,A1)
【文献】実開昭48-015660(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/02
F28F 1/30 - 1/32
F25B 39/00 - 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の流れ方向と垂直な方向に積層された複数の扁平管と、
前記複数の扁平管のうちの第1の扁平管と、前記第1の扁平管に隣り合う第2の扁平管と、前記第1の扁平管が挿入される第1扁平管挿入部と、前記第2の扁平管が挿入される第2扁平管挿入部と、を有する複数のフィンと、を備え、
前記複数のフィンのうちの第1のフィンは、前記第1扁平管挿入部
における前記第1の扁平管の厚さ方向の
一方の内周縁に、前記第1のフィンと隣り合う第2のフィンとの間にフィンピッチをあけるための切起し片が形成され、
前記第1扁平管挿入部の前記一方の内周縁に対向する他方の内周縁に、当該他方の内周縁を前記厚さ方向に切り欠いた切欠き部が形成され、
前記切起し片は、前記フィンピッチと同じ長さの立上げ部と、前記立上げ部の先端で折り返されて前記第2のフィンに当接する折返し部と、を有
し、
前記立上げ部と前記折返し部の少なくとも一方には、前記切欠き部に対応する部分が含まれる、熱交換器。
【請求項2】
前記第1のフィンには、前記第1扁平管挿入部
と前記第2扁平管挿入部との間における前記切欠き部に隣り合う位置に、前記フィンの剛性を高めるフィン補強部が設けられている、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記フィン補強部は、前記一方の内周縁に沿う方向に延びる一辺を有し、当該一辺から前記第2のフィン側へ向かって当該一辺にわたって連続して突出し、
前記一辺の長さは、前記一方の内周縁に沿う方向に対する前記切欠き部の長さよりも大きい、
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記フィン補強部は、膨出構造、突出構造又はコルゲート構造のいずれかである、
請求項2
または3に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に複数の流路孔を有する扁平管(伝熱管)の両端が、一対のヘッダに接続されており、複数の扁平管への冷媒の分流がヘッダ内で行われる構造を有する熱交換器が知られている。複数の扁平管は、冷媒の流れ方向に垂直な方向に対して積層される。そして、扁平管の両端に接続される一対のヘッダ間には、複数のフィンが配列されており、複数のフィンに各扁平管が接続されている。この熱交換器では、複数のフィンによって、扁平管の内部の流路孔を流れる冷媒と、複数のフィンの間を通過する空気との間で熱交換する。
【0003】
例えば、
図5に示すように、熱交換器5Aのフィン111Aは、通風部112Aの一部を切り欠いた扁平管挿入部113Aを有する。扁平管11は、フィン111Aの扁平管挿入部113Aに挿入される(熱交換器5Aは、
図5の紙面に直交する方向に複数のフィン111Aが配列されている)。扁平管11の内部には、冷媒が流れる複数の流路孔10Aが設けられている。
【0004】
ここで、隣り合うフィン111A同士の間のフィンピッチP1を確保するために、
図6に示すように、フィン111Aの一部を切起し片114Aとして利用し、切起し片114Aを、隣り合うフィン111Aに接触させることによってフィンピッチP1を確保する構造が知られている。切起し片114Aは、フィン111Aから起こした立上げ部115Aと、立上げ部115Aの先端を折り返した折返し部116Aと、を有する。切起し片114Aを形成することで、フィン111Aにおいて、長さW1にわたって切り欠かれた部分を切欠き残余部C1とする。
【0005】
この切欠き残余部C1に相当する部分、つまり切起し片114Aを形成する位置としては、
図7に示すようにフィン111Aの通風部112Aに切起し片114Aを形成する例がある。しかし、この例の場合は、フィン111A間の流通する空気の通風抵抗や、フィン111Aの表面に付着する凝縮水の排出性の観点から好ましくない。これに対し、
図8に示すようにフィン111Aの扁平管挿入部113Aに切起し片114Aを形成する例がある。この例の場合、切起し片114Aは、扁平管11に接する位置に、扁平管11の長手方向に沿って配置されるので、フィン111A間の通風の妨げにならず、凝縮水の排出性を低下させない(例えば、特許文献1参照)。通常、扁平管挿入部113Aは、フィン111Aの一部をプレス加工等によって切り欠いて形成される(
図9参照、
図9中の黒部分が取り除かれる)。しかし、特許文献1では、扁平管挿入部113Aの少なくとも一部を取り除かずに切欠き残余部C1として残し、切欠き残余部C1を、通風部112Aと垂直な方向に折り曲げることで切起し片114Aとして用いている(
図8参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構造では、切欠き残余部C1、つまり、通風部112Aに対いて折り曲げて起こされる切起し片114Aの長さが、扁平管11の厚さに対応する扁平管挿入部113Aの幅の範囲に制限される。このため、特許文献1では、扁平管11の厚さが、要求されるフィンピッチP1よりも小さい場合、切欠き残余部C1を十分に確保できないので、切起し片114Aが、隣り合うフィン111Aに届かず、隣り合うフィン111A同士の間のフィンピッチP1を適正に確保できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、扁平管の厚さにかかわらず、所望のフィンピッチを確保可能な熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示する熱交換器の一態様は、冷媒の流れ方向と垂直な方向に積層された複数の扁平管と、複数の扁平管のうちの第1の扁平管と、第1の扁平管に隣り合う第2の扁平管と、第1の扁平管が挿入される第1扁平管挿入部と、第2の扁平管が挿入される第2扁平管挿入部と、を有する複数のフィンと、を備え、複数のフィンのうちの第1のフィンは、第1扁平管挿入部における第1の扁平管の厚さ方向の一方の内周縁に、第1のフィンと隣り合う第2のフィンとの間にフィンピッチをあけるための切起し片が形成され、第1扁平管挿入部の一方の内周縁に対向する他方の内周縁に、他方の内周縁を前記厚さ方向に切り欠いた切欠き部が形成され、切起し片は、フィンピッチと同じ長さの立上げ部と、立上げ部の先端で折り返されて第2のフィンに当接する折返し部と、を有する。立上げ部と折返し部の少なくとも一方には、切欠き部に対応する部分が含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、扁平管の厚さにかかわらず、所望のフィンピッチを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る熱交換器が適用される空気調和機の構成を説明する図である。
【
図2A】実施形態に係る熱交換器を説明するための平面図である。
【
図2B】実施形態に係る熱交換器を説明するための正面図である。
【
図3】実施形態に係る熱交換器のフィンを説明する側面図である。
【
図4】実施形態に係る熱交換器のフィンを示す、
図3におけるE-E断面図である。
【
図5】関連技術の熱交換器において、フィンの扁平管挿入部を説明する図である。
【
図6】関連技術の熱交換器において、フィンの切起しを説明する図である。
【
図7】関連技術の熱交換器において、フィンの切起しがフィンの通風部に設けられた例を示す図である。
【
図8】関連技術の熱交換器において、フィンの切起しが扁平管挿入部に設けられた例を示す図である。
【
図9】関連技術の熱交換器において、扁平管挿入部の切欠き部を示す図である。
【
図10】実施形態に係る熱交換器のフィンにおいて、フィン補強部の一つの変形例を説明する図である。
【
図11】実施形態に係る熱交換器のフィンにおいて、フィン補強部の他の変形例を説明する図である。
【
図12】実施形態に係る熱交換器のフィンにおいて、切欠き部の一つの変形例を説明する図である。
【
図13】実施形態に係る熱交換器のフィンにおいて、切欠き部の他の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0013】
(空気調和機の全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器5が適用される空気調和機1の構成を示している。
図1に示すように、空気調和機1は、室内機2と、室外機3と、を備える。室内機2には、室内用の熱交換器4が設けられている。室外機3には、室外用の熱交換器5のほかに、圧縮機6、膨張弁7、四方弁8等が設けられている。
【0014】
暖房運転時には、室外機3の圧縮機6から吐出された高温高圧のガス冷媒が、四方弁8を介して室内用の熱交換器4に流入する。
図1中の黒塗り矢印の方向に冷媒が流れる。暖房運転時には、室内用の熱交換器4が凝縮器として機能し、空気と熱交換した冷媒が凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機3の膨張弁7を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり、室外用の熱交換器5へ流入する。室外用の熱交換器5は蒸発器として機能し、外気と熱交換した冷媒がガス化する。その後、低圧のガス冷媒は、四方弁8を介して圧縮機6に吸入される。
【0015】
冷房運転時には、室外機3の圧縮機6から吐出された高温高圧のガス冷媒が、四方弁8を介して室外用の熱交換器5に流入する。
図1中の白抜き矢印の方向に冷媒が流れる。冷房運転時には、室外用の熱交換器5が凝縮器として機能し、外気と熱交換した冷媒が凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機3の膨張弁7を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり、室内用の熱交換器4へ流入する。室内用の熱交換器4は蒸発器として機能し、空気と熱交換した冷媒をガス化する。その後、低圧のガス冷媒は、四方弁8を介して圧縮機6に吸入される。
【0016】
(熱交換器)
本実施形態の熱交換器は、室内用の熱交換器4及び室外用の熱交換器5に適用可能であるが、以下の説明では、暖房運転時に蒸発器として機能する、室外機3の熱交換器5に適用するものとして説明する。なお、室外機3の熱交換器5は、
図1に示すような平型として使用しても良く、
図1においてL型に形成されて使用しても良い。通常、L型の熱交換器5は、平型に形成された熱交換器5を曲げ加工することで得られる。具体的な製造工程は、表面にロウ材が塗布された部材で平型の熱交換器5を組み立てる組立工程と、組み立てられた平型の熱交換器5を炉に入れてロウ付けするロウ付け工程と、ロウ付けされた平型の熱交換器5をL型に曲げ加工する曲げ工程と、を経てL型の熱交換器5が製造される。以下、本発明の熱交換器について、平型の熱交換器5として説明する。
【0017】
図2Aは実施形態に係る熱交換器5を説明するための平面図である。
図2Bは実施形態に係る熱交換器5を説明するための正面図である。扁平管11は、
図2A、2Bに示すように、上下方向に対して扁平な形状を有しており、冷媒が一対のヘッダ12間を流れる方向(扁平管11の長手方向)に沿って設けられているとともに、扁平管11の短手方向に沿って空気が流通する。扁平管11の内部には、扁平管11の長手方向に沿って冷媒が流れる複数の流路孔10Aが、空気流通方向(扁平管11の短手方向)に並んで形成されている。熱交換器5は、扁平管11の側面のうち、扁平管の11長手方向に沿って幅広となる面同士が対向するように上下方向(冷媒の流れ方向に垂直な方向)に配列された複数の扁平管11と、扁平管11の両端に接続された左右一対のヘッダ12と、扁平管11と交差する方向に配置されて各扁平管11と接合された複数のフィン111と、を備えている。複数の扁平管11について、上下方向に互いに隣り合う2つの扁平管11のうち、図中の上側の扁平管11を第1扁平管11Aと称し、図中の下側の扁平管11を第2扁平管11Bと称することがある。熱交換器5には、これらのほかに、空気調和機1の他の要素との間をつなぎ、冷媒が流れる冷媒配管がヘッダ12に接続されている(不図示)。
【0018】
扁平管11は、空気が通過するための間隔S1をあけて上下方向に並列に配置され、扁平管11の両端部が一対のヘッダ12に接続される。具体的には、
図2Bにおいて、左右方向に沿う複数の扁平管11を上下方向に、空気が流通する所定の間隔S1をあけて配列し、各扁平管11の両端部をヘッダ12に接続している。
【0019】
ヘッダ12は、円筒形状に形成されており、ヘッダ12の内部に、熱交換器5に供給された冷媒を複数の扁平管11の各々に分岐させて流入させたり、複数の扁平管11の各々から流出した冷媒を合流させたりする冷媒流路(不図示)が形成されている。
【0020】
フィン111は、熱交換器5の正面から見て、平板状に形成されており、扁平管11と交差するように扁平管11の長手方向に積層して配置されている。複数のフィン111は、空気が通過するための隙間S1をあけて並列に配置されている。上下方向に沿う複数のフィン111が、扁平管11の長手方向(
図2Bの左右方向)に対して所定のフィンピッチPで配列されている。
【0021】
(フィンの要部)
次に、本実施形態に係る熱交換器5のフィン111の要部について、
図3及び
図4を用いて説明する。なお、
図3及び
図4は、後述するフィン111の扁平管挿入部113の周辺を拡大して図示するとともに、扁平管11については図示を省略している。本実施例での切起し片114は、立上げ部115と、立上げ部115の先端を折り返した折返し部116と、を有する。
【0022】
図3に示すように、フィン111は、通風部112と、複数の扁平管挿入部113と、複数の切起し片114と、を備えている。通風部112は、各扁平管挿入部113の間に設けられている。扁平管挿入部113は、切起し片114の一部を形成する部分(切欠き残余部C1)を除いて、フィン111の一部をプレス加工等によって切り欠いて形成される。切起し片114は、フィン111の切欠き残余部C1に相当する部分と、扁平管挿入部113において切起し片114が起こされた内周縁と対向する内周縁の通風部112側の一部からなる切欠き部C2に相当する部分と、で構成される。切欠き部C2は、扁平管挿入部113に連続する貫通部分である。複数の扁平管挿入部113について、上下方向に互いに隣り合う2つの扁平管挿入部113のうち、
図3中の上側の扁平管挿入部113を第1扁平管挿入部113A(第1の扁平管11Aに対応)と称し、
図3中の下側の扁平管挿入部1131を第2扁平管挿入部113B(第2の扁平管11Bに対応)と称することがある。
【0023】
切起し片114は、扁平管挿入部113の第1辺120(
図3中で、上側の内周縁)において折り曲げられる。切起し片114全体を構成する領域Cは、フィン111のうち扁平管挿入部113の切欠き残余部C1に相当する部分と、第1辺120に対向する第2辺121(
図3中で、下側の内周縁)側の通風部112の一部を切欠いて形成される切欠き部C2に相当する部分と、を指す。立上げ部115の長さは、扁平管挿入部113の内周縁から立上げ部115が立ち上がる方向における長さであり、フィンピッチPと同じ長さに形成されている(
図4参照)。切欠き残余部C1の長さは、第1辺120から第2辺121までの長さW1であり、切欠き部C2の長さは第2辺121から最も距離の大きい輪郭(円弧状の切欠き部C2の下端)までの長さW2である。換言すると、切起し片114全体を構成する立上げ部115と折返し部116を合わせた長さは、長さW1に長さW2を加えた長さWとなる。
【0024】
なお、
図3では、切起し片114が、扁平管挿入部113における
図3中の上側の内周縁である第1辺120に設けられているが、もちろん、
図3中の下側の内周縁である第2辺121に設けられてもよい。つまり、切起し片114は、扁平管挿入部113の第2辺121から起こして形成されてもよい。
【0025】
切起し片114を、フィン111から折り曲げて切り起こした状態の断面は、
図4に示すとおりである。
図4は、隣り合うフィン111同士のフィンピッチPと切起し片114の関係について示している。
図4中の上側のフィン111に示す符号は、
図4中の下側のフィン111にも同様に適用される。なお、本実施形態の構造を示す
図4では、従来の構造を示す
図6と比較するために、便宜上、切欠き部C2を通風部112の一部として図示する。
図4に示すように、第1のフィン111a(
図4中の下側のフィン111)において、扁平管挿入部113の切欠き残余部C1に相当する部分と、扁平管挿入部113における通風部112側の切欠き部C2に相当する部分と、を有する切起し片114が、扁平管挿入部113の第1辺120(
図4中、右側の内周縁)において折り曲げて形成されている。
【0026】
前述した従来の構造における切起し片114A(
図6参照)では、切起し片114Aを構成する、フィン111Aの領域Cは、扁平管挿入部113Aの切欠き残余部C1に相当する部分(長さW1)と一致することとなる。このため、従来の構造におけるフィンピッチP1は、切欠き残余部C1に相当する部分(長さW1)の範囲内に制限される。したがって、この切欠き残余部C1に相当する部分(長さW1)は、扁平管11の厚さ寸法に実質的に相当する。そのため、所望のフィンピッチP1が扁平管11の厚さ寸法よりも大きい場合、切欠き残余部C1に相当する部分(長さW1)だけでは切起し片114Aの長さが不足することとなる。
【0027】
これに対し、本実施形態に係る切起し片114は、
図4に示すように、切起し片114を構成する第1のフィン111aの領域Cが、扁平管挿入部113の切欠き残余部C1に相当する部分(長さW1)に、通風部112側の一部である、第2辺121側に設けられる切欠き部C2に相当する部分(長さW2)を加算した長さWを有する。このため、所望のフィンピッチPが扁平管11の厚さの寸法よりも大きい場合であっても、切起し片114が切り起こされたときに、扁平管11の厚さに対応するフィンピッチP1に距離P2を追加できるので、所望のフィンピッチPを確保することができる。
【0028】
ここで、切起し片114には、必ずしも折返し部116を設けていなくてもよいが、切起し片114の潰れを防ぎ、フィンピッチPを更に確実に確保するため、切起し片114が、折返し部116によって隣り合う第2のフィン111bに面接触することが好ましい。
【0029】
なお、
図3及び
図4において、切欠き部C2に相当する部分(長さW2)の長さ全てが折返し部116に相当していることを示しているものではない。所望のフィンピッチPと、扁平管挿入部113の切欠き残余部C1に相当する部分(長さW1)つまり扁平管11の厚さに応じて、切欠き部C2に相当する部分の長さW2は適宜設定されればよく、所望のフィンピッチPに応じて、切欠き部C2に相当する部分が、立上げ部115の一部と折返し部116とを構成してもよい。
【0030】
また、切欠き残余部C1に相当する部分および切欠き部C2に相当する部分は、図示されている形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0031】
図3を参照して、フィン補強部117について説明する。フィン111は、切欠き部C2を形成することに伴って低下した剛性を高める必要がある場合、
図3に示すように、フィン補強部117を更に備えてもよい。
【0032】
フィン補強部117は、扁平管挿入部113の第2辺121側の通風部112に、切起し片114の一部として切り起こされた領域Cの一部である切欠き部C2の近傍に設けられている。フィン補強部117は、例えば、円弧状の凸形状をなす膨出構造、角部を有する凸形状をなす突出構造又はそれらを複数並べたコルゲート構造のいずれかとすることができる。
図3では、屋根型の突出構造を例示しているが、フィン補強部の形状を限定しない。また、フィン111には、伝熱性を高めるために膨出構造、突出構造やコルゲート構造などが設けられる場合があるが、これらの構造をフィン補強部117として利用してもよい。
【0033】
(実施形態の効果)
本実施形態では、上記のように、切起し片114が、扁平管挿入部113の第1辺120側で折り曲げて切り起こされる切欠き残余部C1に相当する部分と、第1辺120に対向する第2辺121側の通風部112の一部であって、切欠き残余部C1に相当する部分と一体的に切り起こされる切欠き部C2に相当する部分とによって構成される。これにより、扁平管11の厚さにかかわらず、所望のフィンピッチPが扁平管11の厚さよりも大きい場合であっても、扁平管11の厚さよりも大きい切起し片114を、扁平管挿入部113の内周縁に形成できる。したがって、扁平管11の厚さよりも大きい所望のフィンピッチPを確保可能な熱交換器5を提供することができる。
【0034】
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。以下にいくつかの変形例を説明するが、変形例はこれらに限られるものではなく、また、これらの変形例を合理的な範囲内で組み合わせることが可能である。
【0035】
例えば、熱交換器5のフィン111において、フィン補強部117は、
図10及び
図11に示す変形例のように形成されもよい。
図10は、フィン補強部117が切欠き部C2の形状に沿うように形成された例を示している。機械的強度が小さくなっている切欠き部C2の周囲にフィン補強部117が設けられることにより、フィン111の機械的強度を高めることができる。なお、ここでは、半円形の切欠き部C2に沿うように円弧状のフィン補強部117を形成しているが、後述するように、切欠き部C2の形状は、切欠き部C2の形状に応じた所望の形状に形成されればよい。
【0036】
図11は、切欠き部C2に対向するフィン補強部117の対向面117aが、上下方向に対して一方向に傾斜するように形成された例を示している。扁平管挿入部113に挿入された扁平管11に隣り合う隙間が空くことになる切欠き部C2には、凝縮水が溜まりやすい。しかし、切欠き部C2とフィン補強部117にわたって凝縮水が付着した場合、フィン補強部117の対向面117aが傾斜していることにより、対向面117aに沿って凝縮水が流れやすくなるので、フィン111からの凝縮水の排出性を高められる。
【0037】
次に、熱交換器5のフィン111において、切欠き部C2は、
図12及び
図13に示す変形例のように形成されてもよい。
図12は、切欠き部C2の内周縁が鋭角部θを有するように切り欠かれた例を示している。鋭角部θは、例えば、上下方向に沿う鉛直辺と、上下方向に対して傾斜する傾斜辺とによって形成される。切欠き部C2が、鋭角部θを有する形状に形成されることにより、切欠き部C2に溜まった凝縮水が鋭角部θに集中し、鋭角部θから凝縮水を排出しやくなるので、フィン111からの凝縮水の排出性を高められる。さらに、この例では、切欠き部C2の傾斜辺と、第2辺121とがなす角度が小さくなるので、切欠き部C2が、扁平管11を扁平管挿入部113内に挿入する際のガイドとしても作用するので、熱交換器5の組立性を向上することができる。
【0038】
図13は、切欠き部C2の内周縁と、扁平管挿入部113の第2辺121との境界に円弧状の面取り(R面取り)が形成された例を示している。このように境界に角を形成しないことにより、切欠き部C2の内周縁と、第2辺121とがなす角度が小さくなるので、切欠き部C2が、扁平管11を扁平管挿入部113内に挿入する際のガイドとしても作用するので、熱交換器5の組立性を向上することができる。なお、境界には、C面取りが形成されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…空気調和機
2…室内機
3…室外機
4…熱交換器(室内)
5…熱交換器(室外)
6…圧縮機
11…扁平管
111…フィン、111a…第1のフィン、111b…第2のフィン
112…通風部(フィンの)
113…扁平管挿入部(フィンの)
114…切起し片(フィンの)
115…立上げ部(切起し片の)
116…折返し部(切起し片の)
117…フィン補強部(フィンの)、117a…切欠き部に対向するフィン補強部の対向面
C…切起し片を構成するフィンの領域、C1…切欠き残余部(扁平管挿入部の)、C2…切欠き部(通風部の)
W…切起し片の長さ(W1+W2)、W1…C1の長さ、W2…C2の長さ
P…フィンピッチ、P1…C1に対応するフィンピッチ、P2…C2により追加できる距離
θ…鋭角部(切欠き部の)
R…R面取り(切欠き部の内周縁と扁平管挿入部の第2辺との境界)